美希「ふーん、新しいプロデューサー?」(221)

今から即興で少しゆっくり書くよ

美希「なんだか久しぶりに聞いたの。うちってあんまりお金がないんだよね?」

社長「う、うむ……それが今回、こちらの厳しい提示を飲んでくれた新人プロデューサーがいてね。さぁ、入ってくれたまえキミィ!」

ガチャ

P「――こんにちは。新しく入ったPです」

美希「こんにちはー。なんだか冴えない人って感じだね」

社長「こ、こら星井君!」

P「ははは、正直な子ですね」

社長「いや、すまんねキミ……こんな子だが、確かな才能を持った子なのだよ。よろしく頼む」

P「ええ……」

美希「あふう……」

P「さて……とりあえず自己紹介をしてもらえるかな星井さん」

美希「自己紹介? もう書類でミキのこと知ってるんでしょ? あふぅ……」

P「紙に書ける情報だけな。君がどういう人間なのかを俺はまだ知らないから、教えてくれないか」

美希「んー……ミキは、星井美希だよ? それ以上言うことないって思うな」

P「なるほど。実にわかりやすいね」

美希「ミキのことより、アナタはなんでわざわざうちの事務所に来たの? こんな貧乏事務所よりいいとこあるはずなの」

P「……いろいろ事情があってね。たまたま条件付きで雇ってもらえたんだよ」

美希「条件?」

P「ああ。星井美希という候補生を立派なアイドルにする、という条件だ」

美希「それって、ミキをトップアイドルにするってこと?」

P「目標としては、な。嫌なのか?」

美希「んーよくわかんないの。ミキは、キラキラできるアイドルになってもいいかなーって思って始めたの」

P「つまり星井さんは、明確な目標があってアイドルを目指しているわけではないんだね?」

美希「……そう言われたらそうなのかも。ミキ的には、みんなの前でキラキラできればイイかなーってカンジ」

P「なるほど、よくわかったよ。とりあえず、これからは俺が重点的に星井さんのプロデュースを担当することになる。頑張ろうな」

美希「ほどほどに頑張ってね。ミキはあんまり努力とか頑張るとかって好きじゃないの」

P「そうか。俺もあんまり張り切るのは嫌いだよ」

美希「プロデューサーさんなのに変なの。今までのヒトはみーんな『もっと頑張れ!』って言ってきたのに」

P「社長から聞いてるよ。ここのアイドルはみんな地道に活動を続けてるけど、一人だけやる気のないのがいるってな。今まで何人もの新人プロデューサーが手に負えずに投げ出してきたそうだね」

美希「ミキ的には、みんなが勝手に辞めちゃっただけなの」

P「ま、そうともとれるな。今回俺が星井さんの担当になったのも、ほかに担当できる人がもういないからだそうだ」

美希「ふーん……」

P「だから、別に俺は星井さんをどうしてもプロデュースしたくて選んだわけじゃない。星井さんも気楽に構えていてくれて構わないよ」

美希「……ねぇ、さっきから苗字でばっかり呼ばないでほしいの。ミキのことは美希って呼んでいいよ。社長にも気をつかってほしくないの」

P「そうか、伝えておくよ。これからよろしくな美希」

美希「あふぅ……よろしくねー」

-数日後-

レッスンスタジオ

トレーナー「はいっ、そこでターン、ステップツー!」

美希「~♪」

トレーナー「うん、上出来ね。でも美希ちゃん、もう少し表情に締まりがないとダメよ?」

美希「はーい」

トレーナー「じゃあ、今日のレッスンはここまでにしましょう」

P「……」

美希「ふうっ。ミキ、どうだった?」

P「上々だ。確かに社長の言ってた通り、素質は抜群だな」

美希「ミキのこと見直した?」

P「まだ何もこなしてないだろう。今日はこれから営業に行く。準備ができたらきなさい」

美希「ふーん。わかったの」

某TV局

P「――こちらがうちの新人の、星井美希です。どうかよろしくお願いします」

ディレクター「ああ、765さんのね。あそこは埋もれてるけど、いい子が多いからね」

P「恐縮です。さぁ美希、ご挨拶を」

美希「えっと、星井美希なの。よろしくね、ディレクターさん」

コツン!

美希「たっ! 何するのー?」

P「目上の方には敬語くらい使いなさい」

美希「むー、男のヒトならミキの可愛さで許してくれるの! ねっ、ディレクターさん?」

ディレクター「ははは、人懐っこい子だね」

P「すみません、まだ中学生で礼儀もなっていませんが。きっと素晴らしいパフォーマンスをお見せできます」

ディレクター「うん、それじゃとりあえず今度のオーディションに出てもらおう。期待してるよ美希ちゃん」

美希「ありがとうございますなのー!」

P「よろしくお願いします」

P「まずは次のオーディションに合格して、TV放映でデビューすること。それが美希の第一歩だ」

美希「ミキなら平気だよ? すぐにプロデューサーに、キラキラしてるとこ見せてあげるの」

P「そいつは楽しみだ」

美希「あはっ!」

………………

数日後

美希「――プロデューサー! オーディションに受かったの!」

P「ああ、ちゃんと見てたぞ。おめでとう」

美希「ねぇねぇ、ミキ、キラキラできてたよね?」

P「美希はどう思う?」

美希「とっても楽しかったの!」

P「そうか。その調子で頑張れよ」

美希「うん、頑張りすぎずに頑張るの!」

しばらくして――

事務所

P「おはようございます」

小鳥「あ、おはようございますプロデューサーさん」

P「音無さん、美希はまだきていませんか?」

小鳥「いえ、まだですけど……」

P「今日は昼から一緒に営業回りのはずなんだが……電話してみるか」

prrrr……

美希『もしもしー?』

P「美希、今どこにいる? もう仕事の時間だぞ」

美希『ミキ、公園にいるの。今日はお仕事の気分じゃないの』

P「……どこの公園だ?」

美希『えっとねー……』

………………

公園

美希「――あ、プロデューサーなの」

P「仕事サボってなにしてるんだ?」

美希「んー……ちょっと疲れちゃったから、カモ先生とお話ししてたの」

P「カモ?」

美希「なの。カモ先生はね、プカーって浮いて、気ままに過ごしてるの。ミキはカモ先生みたいに、のんびり気ままに生きていたいの」

P「……そうか」

美希「アイドルも好きだけど、ミキ頑張るのは好きじゃないの。プロデューサーも言ってたよね?」

P「ああ。それで?」

美希「ミキは別に頑張ってアイドルになりたいわけじゃないの。別に無理して頑張らなくてもミキはキラキラできるし、彼氏だって作れるの」

P「ほう」

美希「アイドルとしてデビューできてテレビにも出て、ミキ的には十分キラキラできたから。だからね、もうアイドルはいいかなーって」

P「……」

美希「だって、アイドルをやめても、ミキは今のままでも十分魅力的だもん」

P「そうか?」

美希「えっ……?」

P「今の美希に魅力があるとは思わんがな」

美希「そ、そんなことないもん! ミキ、学校でもすぐ男の子から告白されるし」

P「それがどうした。ガキっていうのは、ちょっと容姿が整っていたらすぐ言い寄ってくるもんだ」

美希「ミ、ミキはかわいいから当然なの!」

P「可愛いだけの女の子ならお前以外にもいくらだっているさ。うちの事務所にだって」

美希「~~っ!!」

P「やる気がないから努力もせずに、仕事もサボって、生まれ持った容姿にだけ頼るのが魅力的だと思うのか?」

美希「なんなのなの! プロデューサーは別にイケメンでもなんでもないくせにっ!!」

P「ああ。だから、頑張るしかないんだよ」

美希「っ……!?」

誕生日にすればよかった④

P「出会いがしらに美希に言われたのが事実だ。冴えない男だよ俺は。今までもろくな人生を歩んできたわけじゃない」

美希「そ、そんなのミキは知らないの……」

P「まぁ話しても楽しくないから何も言わないけどな。俺みたいな人間が『キラキラ』するにはな、頑張るしかないんだよ」

美希「……」

P「カモ先生のように生きていけたら素晴らしいと思う。でも人間は理不尽だ」

P「美希には生まれながらに、ほかの人が欲しくても手に入れられないような才能がある。普通の人の何倍も、いや何百倍もキラキラできる素質がある」

P「だがそれは素質だ。磨かなければ、ちょっときれいな石ころのままだ。何も魅力的じゃない。少なくとも俺はそう思うね」

美希「ミキは、石ころなんかじゃないの……」

P「そう思うなら自分で自分を磨いてみるんだな。はっきり言って、今の美希には俺だって告白しようと思わないよ」

美希「!!」

P「……どうしても仕事がしたくないというのなら、もう社長に話をつけてくるよ。星井美希はダメだってね」

美希「っ……」

P「美希が自分を輝かせたいなら、俺は君を全力でサポートする。これからどうするのか、自分の頭で考えなさい」クルッ……

美希「……うぅ」ブルブル

数日後

事務所

社長「キミィ……美希君はどうなっているんだね? 最近姿を見せないが」

P「彼女の意志を尊重しています。我々ではどうにもできませんよ」

社長「しかし、彼女ほどの逸材を失うのは……」

P「……おそらくは、心配ないと思いますよ」

ガチャ……

美希「……おはようございます、なの」

小鳥「あ……美希ちゃん!」

社長「おお美希君! 心配していたのだよ。もう、大丈夫なのかね?」

美希「……」スタスタ

社長「み、美希君?」

P「……」

美希「……」ピタ

      /!/{  / ヾ--r
   _  /     ̄    <_
 _>`´    >>P  ___<_
  >    r‐'" ̄ ̄ ノ ̄ ̄`ヽ、―ニ 二
/ ,    |  `ヽ/ ´`ヽ _  三,:三ー二
 ̄/    |   ノヽ--/ ̄ ,    ` ̄ ̄ ̄
 / /⌒ヽ,|  ミ }  ...|  /!
 レ l d     _}`ー‐し'ゝL _
  | ヽ、_,   _,:ヘr--‐‐'´}    ;ー------
  |/|  \   ノ`ヾ:::-‐'ーr‐'"==-

    ヽ/l/|` ー------r‐'"    ̄ ̄
      |└-- 、__/`\-:、
     __,ゝ,,_____/ \_」 \

小鳥「み、美希ちゃん? ど、どうしたの怖い顔で……」

美希「ミキ、決めたの」

社長「ま、まさか美希君!? アイドルをやめるのはもっとよく考えてからでも――」

美希「プロデューサーがミキにメロメロになるまで、ミキはアイドルをやめないの!」

小鳥「ええっ!?」

社長「なぁっ!?」

P「それは、どういうことだい美希?」

美希「ミキがなんの魅力もないわけがないの! プロデューサーだってミキのキラキラしてる姿をもっといっぱい見たら、もうミキから目が離せなくなるの!」

P「ほう……大きく出たじゃないか。だったら証明してもらわないとな」

美希「今すぐお仕事を探しに行くの! ぜーったいプロデューサーにだって告白させてみせるの!」

社長「こ、告白ぅ!? キミィ、そんなスキャンダラスなことは……!」

P「大丈夫ですから社長。当分はそんなことありえませんよ」

美希「むっかーなの!! 今に見てるがいいのー!!」

美希「――ねぇプロデューサー、ミキの下着見たくなぁい?」

P「そんなに下着に興味があるならランジェリーのCMでも探してみるか」

美希「違うの! ミキがプロデューサーのために脱いであげてもいいっていてるの!」

P「俺のためにひと肌脱いでくれるのか。じゃあ早速業績アップのために営業だ」

美希「もーっ! この朴念仁!」ポカポカ

P「難しい言葉知ってるな。頭まではキラキラしていなかったか」

美希「なんなのなの!! バカプロデューサー!」

………………

美希「うぅー、今日は全然お昼寝できてないの……」

P「いくらでも仕事をとってきていいと言ったのは美希だぞ」

美希「休養は必要なの! このままじゃミキ死んじゃうの!」

P「そうか。じゃああの有名なお菓子屋さんのいちごババロアCMはキャンセルで」

美希「や! 絶対行くの!」

P「じゃあ頑張れ」

美希「頑張るのと眠いのとは話が違うの!」

美希「――プロデューサー、ミュージックターミナルのオーディションに受かったの! すごいでしょ!」

P「やるじゃないか。あの番組に出られたら一躍有名アイドルだぞ」

美希「ね、ミキすごいでしょ? 見直した?」

P「そうやってすぐに調子に乗らなければな」

美希「むー、いつまでたってもつれないの」

………………



数ヶ月後

美希「おはようございますなのー!」

小鳥「おはよう美希ちゃん! 前に撮った美希ちゃんが表紙に載ってる雑誌、届いたわよ!」

美希「ホント!? ……わっ、ホントにミキが表紙なの!」

社長「いやぁ、美希君の勢いのおかげでこの事務所も有名になってきたよ! ほかのアイドル達もキミに負けないつもりで頑張っているし、いい調子だね!」

美希「えへへ……そうなの、プロデューサーは?」

小鳥「今日はまだ来ていないわよ。でもおかしいわね、いつもはもう来てる頃なのに……あら、電話だわ」ガチャ

美希「(これなんかすごくかわいく撮れてるの。きっとプロデューサーも惚れ直すに違いないの!)」

小鳥「えっ!? ……はい、はいわかりました。社長には伝えておきますので。ゆっくり休んでくださいね」チン

社長「誰からかね?」

小鳥「それが……プロデューサーさん、熱出して動けないそうなんです」

美希「えっ……」

社長「なんと……いや、考えてみればこのところ彼は毎日働きづめだったな。やはり無理がたたってしまったか……」

美希「ね、ねぇ小鳥。プロデューサー大丈夫なの?」

小鳥「さぁ……明日また出社するって言ってたけど」

社長「仕方がない、今日のところは私が美希君の方も面倒を見よう。今日は……ラジオ番組の収録だね」

美希「で、でもプロデューサーは?」

社長「なに、また私の方から具合を聞いておくよ。美希君は仕事に集中してくれたまえ」

美希「はいなの……」

収録スタジオ

DJ「はぁい、というわけで今日のゲストは今もっともHOTなアイドル、星井美希ちゃんでした~!」

美希「みんな、バイバイなの~!…………ふぅ」

DJ「美希ちゃん、どうかしたのかい? なんだかいつもより調子悪そうだったけど」

美希「だ、大丈夫なの! それじゃ、お疲れ様でしたなの~!」

美希「……」

美希「次は、雑誌のグラビア撮影なの」



撮影スタジオ

カメラマン「う~ん! いいね美希ちゃん、今日はいつもと雰囲気違う!」

美希「そ、そうなの! 今日のミキは大人の魅力ってカンジ?」

カメラマン「なんか切なそうな表情がいいね! 『魅力的すぎて困っちゃう』みたいな?」

美希「あははっ……」

美希「(なんでだろう……褒められてもあんまりキラキラしないの)」

翌日

美希「おはようございますなの」

小鳥「あ、おはよう美希ちゃん」

P「よ。おはよう美希」

美希「!! プロデューサー、もう大丈夫なの!?」

P「すまんないきなり仕事サボって。ちょっと休んだらすぐに治ったよ」

美希「もう、勝手におサボりしちゃだめなの! ミキに偉そうなこと言えないの!」

P「悪い悪い。お前と一緒にいすぎて怠け癖が付いたかな」

美希「憎まれ口が治ってないのー!」

小鳥「ふふっ、美希ちゃんたらプロデューサーさんがきた途端にはしゃいじゃって」

P「そうだ、この前の美希の雑誌を見たんだけどな」

美希「あ、ホント!?」

P「ありゃダメだ。腑抜けた顔じゃ本当に脳みそまでキラキラになっちゃうぞ」

美希「なんなのなのー!!」

数ヶ月後

事務所

社長「いやぁ、キミが美希君をプロデュースしてくれたおかげで事務所が軌道に乗り始めたよ。まったく感謝のしようもない」

P「ありがとうございます……ということは、そろそろ新しいプロデューサーを雇う余裕も出てきたんですよね?」

社長「うむ、さすがにこのままキミと私だけできちんとアイドル達をプロデュースするのも限界だからね。ここらでまた募集を始めようと思う」

P「でしたら、一つご相談があるのですが……」

………………

収録スタジオ

美希「お疲れ様でしたなのー!」

P「おう、お疲れ美希。生放送なのによく二時間も頑張ったな」

美希「ミキに不可能はないの! そろそろプロデューサーもミキの魅力が分かってきたでしょ?」

P「そうだな。ようやくガラス玉程度には光るようになってきたか」

美希「むー。ちょっとプロデューサーは見る目がないって思うな。でもいずれミキがトップアイドルになったら、自分の愚かさに気づくに違いないの!」

P「ん……そのことなんだがな、美希」

美希「?」

 /   , ,ィ ハ i、 、     !   /''⌒ヽ-─‐- 、     、ー'´         \ .イ   , ,ィ ハ i 、 .   |
 /イ  ,ィ/l/ |/ リuヽlヽト、 |   ゝ ,、.___,  \  >       ,       !  | ,ィ/l/ l/ uハlヽトiヽ. |
  イ /r >r;ヘj=:r‐=r;<ヽ│  「 ./       u \  |  ≧  , ,ィ/ハヽ\   |   |/゙>r;ヘ '-‐ァr;j<`K
  r、H   ┴'rj h ‘┴ }'|ト、  |./        ヽ |  1 イ/./ ! lvヾ,.ゞ、 ! .ry   ┴ 〉   └'‐ :|rリ
  !t||u`ー-‐ベ!` ` ー-‐' ルリ r|´゙>n-、ヽ-rj='^vヽ _レ「゙f.:jヽ ーT'f.:j'7`h |t|.   ヾi丶     u レ'
  ヾl.     fニニニヽ  u/‐'  :|r|  ー "j `ー ′ h゙リ {t|!v ̄" }  ` ̄  !リ ヾl u  iニニニヽ   /| ゴクリ…
    ト、  ヽ.   ノ u,イl.    ヾ! v  ヾ__ v イ‐' ヾl   ヾ_  v ./'    ト、  、__丿u ,イ ト、
   ,.| : \  `ニ´ / ; ト、    ト.、u L_ フ , ' |.    ト、u ヾー `> /.|.   ,| ::\     / ; / \
-‐''7 {' ::   ` ー '  ,; ゝ:l`ー- ⊥:`ヽ. __ / ,' |    | :\   ̄ /,' ト、_ /〈 ::  ` ー '   ,'/   「
  /  \ ::       , '/  :|     `'''ー- 、 , ' '>-,、.._ノ ::  `ー '   /,.イ   \::     /      |
 /     \    /     |        | ヽ-‐'´ _,.ヘ<  _::   _,. イ/ |     ,.へ、 /´\       |

P「俺は美希の担当を外れることになった」

美希「…………え?」

P「もちろん明日からいきなりってわけじゃない。今度、新しいプロデューサーを募集することになってな。そいつが来たら俺は美希の担当を交代しようかと思ってる」

美希「な、なんなのそれ! 聞いてないの!」

P「そりゃこの前社長に話したばかりだからな。心配するな、引き継ぎのケアはちゃんと――」

美希「そんなんじゃないの! プロデューサー言ったよね!? ミキが頑張るなら全力で助けてくれるって!」

P「……ああ、言ったよ」

美希「ミキはプロデューサーを見返すためにアイドルを続けてきたの! そんなんじゃ意味ないの! それとももう愛想が尽きたの!?」

P「落ち着け。俺は美希を見捨てるわけじゃないよ。ただ、お前は俺のやり方だけで終わるにはもったいない器を持ってるからだ」

美希「そんなのっ」

P「聞け美希。言ったよな、美希には誰にもない素晴らしい才能があるって。それを開花させてお前が本当に輝くためには、一つのところにとどまってちゃいけないんだよ」

美希「……うん」

P「お前も知ってのとおり、俺はたまたま雇ってもらえただけの、ただの冴えない三流プロデューサーだ。ここまで美希が成長してこれたのは、まぎれもなく美希自身の力なんだ」

美希「そんなことないの! ミキは――」

P「だから美希。もっとキラキラするために、俺みたいなオジサンは捨てていけ。俺はちゃんと後ろから美希を見続けているから」

美希「……」

P「本当に俺を見返したいなら、お前が最高に輝けるその頂点までいってしまえ。美希にはその力がある」

美希「……じゃあ、約束するの!」

P「ん?」

美希「もしミキがホントのトップアイドルになったら、負けを認めてプロデューサーが告白するの! 『ミキは世界一魅力的な女の子でした』って認めるの!」

P「いいとも。乗ってやろう」

美希「絶対約束なの! 指切りするの!」

P「はいはい……指切りげんまん」

美希「ウソついたらおにぎり千個おーごるなの!」

P「おいおいなんだそれ」

美希「ふふふ、ミキ流の指切りなの!」

………………

数日後

社長「――さて、話は聞いていると思うが、美希君に新しいプロデューサーが付くことになった」

新P「えっと、新Pです! 精一杯頑張るのでよろしくお願いします!」

美希「ふーん……あんまり頑張らないでいいと思うな」

新P「えっ?」

社長「はっはっは! 美希君も今までの彼と離れるのはさびしいかもしれんが、これも新しい可能性を拓くためだ。新P君は若いが有能なプロデューサーだから、安心して任せたまえ!」

美希「わかったの。よろしくね、新しいプロデューサーさん」

………………

新P「えーと、P先輩から美希さんの活動方針は聞いています。早速ですが、今日は新しい番組のオーディションを受けてもらいます」

美希「ミキ」

新P「え?」

美希「ミキはミキなの。敬語もかた苦しいから、ヤ」

新P「そ、そうでs……そうか。じゃあ美希、これから狙っていく売り込み方法なんだけど……」

美希「……」

レッスンスタジオ

トレーナー「はい、ここですぐ踏み込んでっ、ワンッツー!」

美希「よっ、なのっ」

トレーナー「いいわね、その調子! じゃあ次のフレーズは――」

美希「ミキ、ちょっと疲れちゃったの」

トレーナー「え?」

新P「こらこら美希、勝手なこと言っちゃダメだ。レッスンできる時間も限られてるんだから」

美希「でもこれ以上やっても集中できないの。もうこの曲は全部踊れるし……」

新P「それでもすこしでも確実にしておかないと、いざという時に失敗するぞ? ほら、もうちょっと頑張るんだ!」

美希「わ、わかったの……ふぅ」

某TV局

新P「さぁ、今日は深夜のトーク番組のオーディションだ!」

美希「トーク番組?」

新P「ああ! オーディションで特別枠に入れたら、歌のステージまで用意されるからな」

美希「へぇ……うえっ!」

新P「どうした?」

美希「この番組、ミキの嫌いなオジサンが出てるの……いっつもミキの胸ばっかり見てくるの」

新P「うーん……でもその人は、芸能界では有名な人なんだ。ちゃんと仲良くしておかないと」

美希「ヤ! ミキこの番組出たくないの!」

新P「ええっ!? わがまま言うんじゃない美希! 嫌でも我慢しないと、名前を売り出すことはできないぞ!?」

美希「ミキは有名になりたいんじゃなくてキラキラしたいの! このオジサンの近くにいたらキラキラできないの!」

新P「トップアイドルになるためには必要なことなんだ! ここで我慢して頑張らないと!」

美希「うう……わ、わかったの……」

収録スタジオ

大物芸能人「さて、今日のトークゲストはアイドルの星井美希ちゃんです」

美希「よろしくおねがいしますなの」

大物芸能人「いやー実は何回か美希ちゃんとは共演したことがあるんですけどねぇ。ホントにかわいいのよこの子」

美希「あはっ、そんなことないよー?」

大物芸能人「もうね、体つきが中学生じゃないよね。年齢詐称とかしてないだろうなぁ~?」

美希「ミキは中学生ですなの! だからあんまりオジサンな人には、ミキは年下すぎると思うなー」

大物芸能人「ほほー。じゃあ僕は美希ちゃんの彼氏にはなれないのかな? んん?」

美希「あはは……ミキ的には、かっこいいオジサンが好きってカンジ?」

大物芸能人「おっ、じゃあ僕もアプローチしちゃいますか! ハハハハ!」

美希「(早く終わってほしいの……)」

美希「あふぅ……もう疲れたの」

新P「お疲れ様。さぁ、最後に大物芸能人さんにご挨拶に行くぞ」

美希「えっ、ウソだよね!?」

新P「上下関係はきちんとしておかないと、芸能界ではトップになれないぞ。ちゃんと大物芸能人さんと仲良くしなきゃ」

美希「ヤ、ヤなの! あの人何回もミキを誘ってくるから行きたくないの!」

新P「我慢しなさい! トップアイドルになるんだろう!?」

美希「ヤなものはヤなの! ミキ帰るっ!」ダッ

新P「あ、こら美希!!」

………………



公園

カァー カァー カァー……

美希「はぁ……また戻ってきちゃったの……」

美希「仕事熱心なのはいいけど、ミキに押し付けないでほしいの……」

美希「カモ先生、ミキやっぱりダメなのかなぁ……」

美希「なんだか最近ちっともキラキラしてないの……やることは何にも変わってないのにね」

美希「こんなんじゃ、プロデューサーを見返してやるなんてできないの……でも、もう疲れちゃったよ」

P「じゃあ少し休むか?」

美希「えっ……」

P「やれやれ……変わらないな美希は。俺が甘やかしすぎたのかな」

美希「な、なんでここにいるの?」

P「新Pの奴から捜索届け、美希が逃亡したってな。俺だってほかのアイドルの面倒見てるんだが」

美希「う……そんなの、プロデューサーが勝手にやってるだけなの」

P「そうだな。で、なにが嫌になったんだ?」

美希「……それは」

P「……なるほど。そりゃ俺でも嫌だな確かに」

美希「なの! ヤ、って言ってもあの人全然聞いてくれないの! 『わがまま言うな、我慢しろ』って!」

P「やりたくないものはやりたくないもんな」

美希「まったくなの! ……プロデューサーは、ミキがやる気になる仕事をいっぱい持ってきてくれてたの。ミキがやりたくない仕事は、すぐキャンセルしてくれたの」

P「そんなことないけどな。必要な仕事は美希を焚き付けてでもやらせてたぞ」

美希「それでミキがやる気になればいいの! そしたらミキはキラキラできるの! でもあの人はっ!」

P「あいつもいきなり売れっ子アイドルを任せられてあせってたんだろうな。今度俺からもう少しゆっくりやるよう言っておくよ」

美希「ちゃんと言っといて欲しいの。あやうくまたアイドル辞めるとこなの」

P「……今は?」

美希「今は……なんでかな。また頑張ろうって思えてきたの。不思議だね、プロデューサーと話してただけなのに」

P「しっかりしろよ。こんな風にまたサボりに戻ってくるようならいつまでもガラス玉のまんまだぞ」

美希「わ、わかってるの! 今日だけなの! っていうか、プロデューサーもサボり共犯なの!」

P「おっとばれたか。実は最近また休みが取れなくてな」

美希「もうっ……あのね。ミキも、これからはホントにちゃんと頑張るから。見ててね?」

P「ずっと見てるよ。俺は星井美希ファンクラブの会員№1だぞ?」

美希「あはっ、そうだっけ?」

P「まぁファンクラブつくったのが俺だから当たり前なんだけどな」

美希「なんか釈然としないの……」

P「……さぁ、お互いこんなとこで立ち止まってる場合じゃないだろ。早く戻りなさい」

美希「うん…………ありがとなの、プロデュ――」



ドサッ・・・・・・



美希「……え」

ちょっとだけ外すの。
必ず書くから、保守してほしいかなーって

ピー ポー ピー ポー……

――ご家族の方はいらっしゃいますか

――わからないの

――ご本人との関係は

――ミキのプロデューサーなの

――緊急の手術が必要です 心臓がかなり弱っています

――プロデューサーは助かるの 助けて お願いします お願いします



………………

翌日

某病院

美希「……」

小鳥「美希ちゃん……きっと大丈夫だから」

社長「あっちの病棟のようだ。彼がいるのは……」

ピッ…… ピッ…… ピッ……

P「……」

美希「あ……」

小鳥「プロデューサーさん……」

医師「関係者の方ですか?」

社長「はい。先生、彼の容態は……?」

医師「正直に申し上げて、あまりよくありません。突発性……というより、慢性の心不全が急変したようですな」

美希「シンフゼン……?」

医師「心臓の機能が極端に低下していたんですよこの人は。どうやら、かなり前から病状を抱えていた模様です」

小鳥「う、うそ……だって少し前まであんな元気に」

社長「か、彼は以前から心臓を患っていたと?」

医師「日常生活でただちに支障が出るようなことはなかったのでしょう。とはいえ、少し無理をすれば危険な状態だったはずです。何もご存じなかったのですか?」

社長「か、彼は健康診断では異常がないと言っていたのに……なぜそんな嘘を!」

ピッ…… ピッ…… ピッ……

美希「……プロデューサー」

P「……」

美希「起きてよ。サボってたらミキみたいになっちゃうの」

P「……」

美希「起きてよっ……おきてったら……」ギュウ

P「……」

美希「……っひっぐっ……! ぇんじしてよぉっ……うぅぅぅうっ……!」トスン……

医師「……彼はこの後も入院して様子を見るべきです。最悪の場合、移植が必要なレベルだ」

社長「く……浮かれきって彼の状態を見抜けなかった私の責任だ……!」

小鳥「それなら私にだって責任はあります、社長……」

医師「とにかく、意識が回復したらまたご連絡します」

美希「うぅぅぅ……うえぇぇぇっ……」

P「……」

事務所

新P「――そんな……先輩が、入院……」

社長「うむ……申し訳ないが、これからまた私と二人でアイドルのプロデュースに当たらねばならん」

新P「しかし、美希が……」

社長「いや……彼女だけはしばらくの間、芸能活動を中止させてあげよう。事務所としても手痛いが、今の美希君に無理をさせるわけにはいかん……」

新P「わ、わかりました……」

………………

小鳥「どうして隠し事なんてしてたのかしら、プロデューサーさん……」

美希「……知らないの」

小鳥「美希ちゃん……」

美希「ねぇ……ミキが悪いのかな。体のこと何にも知らずに、全部プロデューサーにやらせたミキが悪いのかな」

小鳥「……美希ちゃん、自分を責めちゃダメよ」

美希「でもっ、もとから頑張るのは嫌いだってプロデューサー言ってたのに……! ミキがサボってばっかりだからプロデューサーに無理させたの! なんでミキ、こんなバカなの……!」

小鳥「自分の病状を誰にも話していなかったんだから、美希ちゃんが分からなくても仕方ないわ。……今は、プロデューサーさんが目覚めるまで休んでいなさい」

美希「でもミキが頑張らなかったからっ――」

小鳥「ダメよ。アイドルはいちばん大切な人に笑顔を見せられなくちゃいけないの。今の美希ちゃんにそれができる?」

美希「っ……」

小鳥「……きっと大丈夫。プロデューサーさんが起きたら、みんなでお説教してあげましょ。ね?」

美希「……うん。わかったの……」

………………



数日後

某病院

美希「――ハァッ、ハァッ」

新P「ま、待て美希! 病院で走っちゃ――」

ガラッ!!

美希「プロデューサーッ!?」

医師「シッ。病院ではお静かに。先ほど意識が回復されましたよ」

小鳥「プロデューサーさん、美希ちゃんがきましたよ」

P「嫌でも声でわかりますよ……落ち着きのない女の子はモテないぞ美希」

美希「プ……プロデューサーァっ!!」ガバッ

社長「こっこら美希君!?」

新P「ハァハァ……って何してるんだ美希!?」

P「美希……苦しい。殺す気か」ギュウウウ……

美希「殺すわけないの!! 絶対殺させないの!!」ギュウウウ

医師「コホン……そのままだと本当に死んでしまいますよ」

P「美希、離れなさい」

美希「うう~……」シブシブ

社長「やれやれ……しかし一時はどうなることかと思ったよ」

小鳥「もうプロデューサーさんの容態は安定したんですか? その、移植とかの話は……」

医師「ええ、そのことについてですが……」

医師「おそらく、この状態の心臓では日常生活に支障が出てくるでしょう。とはいえ、幸いにも移植するほどの限界状態というわけでもありません」

新P「と、いうことは……?」

医師「手術で補助機関を取り付けます。いわゆる人工心臓です」

美希「それでプロデューサーは治るの?」

医師「いえ、治るわけではなく、手術で心臓機能を補助するだけ。今までのような無理は厳禁です」

小鳥「……つまり職場復帰は難しい、と?」

医師「お宅らは芸能事務所でしょう? 営業に奔走させるのは不可能だと思ってください」

社長「となると、実質上の引退ということになるのか……」

新P「そんな……」

P「……まぁ、仕方ないです。みんなに言わずに無理してたのは俺ですから」

社長「キミ、どうしてそんなことを……?」

P「…………すみませんが、それについてはまず美希に話をさせてください。後から社長やみんなにもお教えします」

美希「プロデューサー……?」

………………

美希「……」

P「わざわざ出払わせちゃって悪いな……さて、なにから話そうかな」

美希「それって、つらいお話?」

P「俺にとってはつらいというか、ただの経験談だよ。三十路近くのオジサンの、楽しくない話だ」

美希「ミキ、ちゃんと聞いてるの」

P「ん……そうだな、まず俺は生まれた時から心臓が弱かった。いわゆる病弱な子供だったんだよ」

P「って言っても入院とかはしてなくて、普通の生活はできたぞ? ただ、普通の小学生みたいに外で走り回ったり、体育活動に参加したりもできなかった」

P「冴えない顔、痩せた体、おまけに引っ込み思案ときたもんだから、友達なんて全然できやしない。大学で何人か知り合いもいたが、すぐ疎遠になっちまった」

P「生まれつきあんまり目立つもの持ってなかったんだよ。親も大学卒業のころには二人とも病気で死んじゃってな……とにかく働かなきゃダメだった」

P「ところがどっこい、こんな紙切れみたいな人間はどこに行っても必要とされない。体に鞭打って泥のように働いてもやりがいはない。おまけに無理がたたって、心臓が一気に弱り始めた」

P「もうその時点であきらめたよ。頑張ることに疲れた。もうなんでもいいから、のんびり気ままにやりたいことをやろうと思った」

P「大学まで親が行かせてくれたのには感謝してる。世の中のあり方をそこで勉強できた。だからかな、普通の会社で働いたりしても意味がないと思った」

美希「それで765プロに……?」

P「ここを見つけたのは偶然だよ。ただ、安月給だがアイドルと真摯に向き合ってくれる人間を募集していると聞いてね。いまどきそんな馬鹿正直な芸能事務所はないから、面白そうで一発契約してもらった」

P「で、後は美希に出会って今に至る。実際、好き放題やらせてもらってたから楽しかったよ」

美希「そ、そんなのどうでもいいの! なんで病気のこと隠してたの!?」

P「……最初はわざわざ隠すつもりはなかった。かわいい子がいたらプロデュースさせてもらって、体が追い付かなくなったらさっさと病気のことを話して引退すればいい。その程度の考えだったんだよ」

美希「……かわいい子ってミキのこと?」

P「現金な耳だな……まぁ、そうだ。最初はああ言ったけど、ホントは俺自身が最初から美希を選んでた」

美希「そ、そうだったんだ……」

P「まぁ正直に言うと、生まれつきの幸福だけで生きてるやつがどんな面なのか見てみたかったんだけどな」

美希「それって結構ひどいの!」

P「ははは……案の定ゆとりのお嬢さんだと思ったが、これが意外と根性のあるヤツでな。やめたきゃやめろと言ったら途端に食いついてきた」

美希「ミキだってあそこまで言われたら悔しいの!」

P「そうだな。でも、頑張ることにあまり意味を見いだせないってとこが、理解できてね。それでも頑張ろうと食らいついてきた美希が……」

美希「?」

P「美希が、だんだんと魅力的に思えてきた。どれだけ俺が認めようとしなくても、必死に自分を輝かせようと頑張る美希がな」

美希「プロデューサー……」

P「かんたんな話だ。美希が俺に、必死になって頑張る意味を教えてくれたんだよ。だから……言い出せなくなった」

P「俺が病気のことを話して、美希が頑張る意味を失わせちゃいけないと思った。だから体がダメにならないうちに、新しいプロデューサーを育てることした……まぁ、あんまりうまくいかなかったみたいだが」

美希「そんなの……話してくれたって」

P「俺がいきなりぶっ倒れて活動休止してたのは誰だっけ?」

美希「それはっ……! 仕方ないの!」

P「今回は悪かったよ……ただ、俺が病気のこと隠してたのは、美希に弱みを見せないため。それだけだ。下らない意地で申し訳ない」

美希「……まだ、終わってないの」

P「ん? なにがだ?」

美希「ミキがキラキラして、プロデューサーを見返す約束なの。ミキ、それまで絶対アイドル辞めないって決めたもん」

P「……けど、もう俺はリタイアだ。こんな体じゃもう……」

美希「プロデューサーも頑張ってよ!」

P「!」

美希「ミキ、言ったよね。これから本当にがんばるって! ミキだって、頑張るのはヤ! でもプロデューサーにキラキラしてるのを見せるために頑張るの! だからプロデューサーも頑張ってミキを見てて!」

P「美希……」

美希「じゃないと……ミキ、ホントにダメになっちゃうの……プロデューサーがいないと、ダメなのっ……」ブルブル

P「……そうか。やっぱり俺が見てないとダメなんだな」

美希「プロデューサー……」

P「仕方ないやつだな。そんなんじゃいつまでたっても俺を見返せないぞ?」

美希「いいの! いつまでかかっても絶対ミキに振り向かせるの!」

P「まったく……おちおち死ねやしない」

美希「あはっ、ミキの目が黒いうちは死なせないの!」

………………

数週間後

事務所

P「――なんだかすみません社長、居座るみたいな真似してしまって……」

社長「なに、このままキミがいなくなったら美希君までアイドルをやめてしまいかねないからね!」

小鳥「それに、事務員だって大切な仕事ですよ?」

新P「俺もまだまだ先輩に教わることがありますし……特に美希のことで」

P「ははは、じゃじゃ馬だからなぁ……おっと噂をすれば」

タタタタ…… ガチャン!

美希「ハニー! 退院おめでとうなのーっ!」ガバッ

P「はいはいありがとう……ぁ?」

小鳥「変わらないわねこの子は……ん?」

美希「あれ? ハニーどうして車椅子なの?」

新P「後遺症があるらしくて、しばらくこのままだそうなんだが……美希、それより今」

美希「大変なの! じゃあハニーのお仕事はどうするの?」

社長「ああ、彼にはしばらくうちの事務員をやってもらおうと……なぁ、美希君いま確かに」

美希「そうなんだ! あはっ☆ じゃあまた毎日会えるね!」

P「うん、それはいいんだが美希……なんだよ『ハニー』って」

美希「? ハニーはハニーだよ? ミキのハニーなの」

小鳥「な、なんやてぇええええええ!?」ドンガラガッシャーン!

P「ちょっと待て。いつから俺とお前はそういう関係になったんだ」

美希「だってこの前ハニー、ミキと一緒にいてくれるって言ったの」

社長「キ、キミィ! スキャンダラスだよ!」

P「待て待てそんなこと言ってないぞ。美希が俺がいないとダメになるって……おい、まさかお前」

美希「ミキ的には、あれはミキの彼氏になってもいいって返事だと思うな」

新P「そ、そんなめちゃくちゃな!」

P「このガキ……いいのか? こんな不健康なおっさんよりもっと年頃の相手がいるだろうに」

美希「年頃の相手はみんなガキだって言ったのはハニーなの」

P「いやそれはそうだが……はぁ、まぁいいか」

小鳥「ええんかいぃぃいいい!?」ドンガラガッシャーン!

社長「キ、キミィ! いくらなんでもアイドルとプロデューサーは……」

P「心配ありませんよ。中学生の子供が背伸びしたがってるだけです」

美希「むー! 恋人にそんな言い方ないって思うな!」

P「一方的な恋人なんぞあるものか。……本気にしてほしかったら、トップになって俺を見返してからにしなさい」

美希「上等なの! 新しいプロデューサーさん、早速お仕事にいくの! 早くハニーにもミキをハニーって呼ばせるの!」

新P「ぐぐぐ……なんだろうこの腹の底から湧いてくる怒りは」

P「その力を営業にぶつけてくれ。もう美希に遠慮することはないぞ」

美希「行ってきますなのー!」バタバタ……

………………

うそ…全部消えたの…
こんなのってないの…
ちょっと待っててほしいの…

テンション下がったから晩御飯食べてくるの…
エピローグまで書くから保守は任せたの…

うっうー!もやし食べて元気モリモリですよー!
再開かなーって!

ブロロロロロ……

新P「あのなぁ美希、冗談でもああいうこというのは……」

美希「冗談なんかじゃないの」

新P「え?」

美希「ハニーがいたら恥ずかしいから言えないけど……ミキね、少し前までホントにダメな子だったの」

美希「ただ過ぎていく毎日に飽き飽きして……刺激が欲しくてキラキラしてたの。でもそれだけ。何にも頑張らなくても全部うまくいくのが、ホントは楽しくなかったんだと思うな」

美希「……でもハニーがやってきて、『お前に告白されたいとは思わない』って言ったの。あんなこという男のヒト初めてだったの! 新しいプロデューサーさんも、ミキに告白されたらうれしいって思うよね?」

新P「いやまぁ……そりゃこんな魅力的な女の子に言われたら」

美希「ううん。ハニーはね、『お前は全然魅力的じゃない』とも言ったの。もうそれでミキ、頭にキタの! 絶対ミキに惚れさせて、夢中にさせてやる! って」

新P「美希らしいというかなんというか……自信に満ち溢れた反抗の仕方だな」

美希「でも……気づいたら、夢中にさせられてたのはミキの方だったの。あんな冴えない顔のオジサンなのに、ハニーは結構小悪魔だったの」

新P「……ってことは、一刻も早くトップアイドルになって先輩を見返さなきゃいけないな!」

美希「なの!」

新P「よーし、こうなったら俺も先輩を見返してやるぞ! 俺の手で美希をトップアイドルにして、一緒にあっと言わせてやろう!」

美希「うんうん、新しいプロデューサーさんも頑張るの!」

新P「ははは、がんばったら俺も美希を惚れさせることができるかな?」

美希「あ、それはないの」

新P「そ、即答だな……いや別にいいんだけどさ」

………………

P「やれやれ美希にも困ったもんだ」

小鳥「ふふふ、まんざらでもないくせに」

P「……正直、俺が美希の足を引っ張るんじゃないか不安です。もともと大した目的もなかったのに、こんなに入れ込んじゃって……何やってるんですかね」

小鳥「大丈夫です。美希ちゃんて、ああ見えて強い子なんですよ?」

P「ええ、知ってます……じゃないと、惚れこんだりしませんよ」

小鳥「あらやだ」

P「今の内緒ですからね」

社長「キミィ、くれぐれも気を付けたまえよ? ……ここでスキャンダルにでもなれば、将来にさしつかえるからね! はっはっは」

――数年後……

某病院

P「っく……」グググ……

医師「うん、大分回復してきましたね。杖を突きながらであれば一人でも歩けるようになるよ」

P「そ、そうですか……ふぅ」

医師「まぁ心臓に負担をかけるような無茶は禁物ですが……ずいぶん頑張りましたね」

P「ええ……じゃじゃ馬の世話をするには、このままじゃやっていけないんで」

医師「というと、あの金髪アイドルの子?」

P「星井美希ですよ。ご存じないですか?」

医師「ああ、テレビとかは見ないけど名前を聞いたことありますよ。へぇ、まさかその子と結婚でもするのアナタ?」

P「ははは……さぁ、どうなるんでしょうか」

………………

病院前

ガラガラ……

P「さて……そろそろ結果が出るころかな」

prrrr……

P「きたか……もしもし?」

美希『あ、ハニーィ!! ミキね! ミキねっ!!』

P「落ち着け。どうだった?」

美希『あのねあのね!! IU大賞なの! ミキがだよっ!! ミキがトップアイドルなの!!』

P「……そうか。おめでとう美希」

美希『うん!! あ、プロデューサーあっちに止めて! ちょっと待っててねハニー!』ピッ

P「ん?」



「――ハニーーーーっ!!」

美希「ハニーっ!」ガバッ

P「!? 美希、お前授賞式は……っていうかその恰好なんだ!? ウェディングドレスじゃないか!」

美希「そんなの抜け出してきたの! あのね、これはステージ衣装なの!!」

P「ステージって、いったい何の……」

美希「決まってるの! ハニーとの結婚式なの!」

P「……お前ねぇ」

美希「あのねハニー! ミキ、ずーっと頑張ってきたの! ハニーに魅力的だと思ってもらえるようにいっぱい頑張って、ホントにトップアイドルになったの!」

P「……」

美希「今のミキ、キラキラしてる? 今のミキ、魅力的だと思う? ねぇ!」

P「……はぁ。負けたよ美希には」

美希「ホント!? あのね、じゃあじゃあ、約束通り――」

P「美希」

美希「な……なにハニー?」

P「お前は世界で一番魅力的な女の子だよ。本当に、世界一きれいだ」

美希「ぁ……う……うっう……」

P「お、おい美希。なんで泣くんだよ」

美希「だ、だって……ハニーがっ……初めてミキのこと、認めてっ……ううう」

P「やれやれ……予定と違うじゃないかこれじゃあ」

美希「え……?」

P「……美希。俺はキミが好きだよ。いや、本当は何年も前から好きだった」

美希「は、はにぃ……」

P「美希のおかげで、俺の人生までキラキラしてたと思う。いままでありがとう。本当によく頑張ったな」

美希「う、ううん……ミキもハニーのおかげで頑張れたの。ハニーがいてくれたから、世界で一番キラキラしてる女の子になれたの」

P「そうか」

美希「……ハニー、あの、あのね、ミキね」

P「待て待て、それくらいは俺に言わせなさい」

美希「え?」

P「……美希。俺と結婚してくれるかい? 俺もキミがいないとダメなんだ」

美希「……~~~!!!!!」ギュウ

P「うぐ! み、美希?」

美希「するの! ミキもハニー大好きなの! 愛してるの!!」スリスリ

P「小動物かお前は……こりゃまだまだ大人として認めるわけには」

小鳥「いい~~じゃないですかぁ、いままで我慢してたんですから!」

P「お、音無さん!?」

小鳥「見せつけちゃってくれますねェプロデューサーさん! ええ、とうとう華の二十代を失ったこの鳥の横で幸せになるがいいわ!」ジー……

P「わかりましたからカメラ回さないでくれますか」

社長「やれやれ、こうなることは予想していたとも。寿退社だよキミィ!」

P「社長まで……今の見てたんですか?」

新P「あの雰囲気で顔出せるわけないじゃないですか!」

P「それもそうか」

美希「あはっ、みんなミキたちの結婚お祝いしてくれるんだね!」

P「美希、一度離れなさい。苦しい」

美希「ヤ! 正式にハニーのハニーになった以上はもう離れないの! いままで甘えなかった分、たっぷりとハニー成分を注ぎ込んでやるの!」

P「そんなにハニーが好きならハチミツ買ってやる」

美希「もう! 減らず口は永遠に治らないの!」

社長「さぁさぁ、今日は事務所でキミたちの結婚式だ! 私もやけくそだよ、存分に幸せになりたまえ!」

小鳥「このDVD焼き増ししてみんなに見せびらかしてやるピヨー!」

新P「小鳥さん、もうピヨって歳じゃあ」

小鳥「あぁん!?」

P「まさか、美希に出会ってこんなことになるとは」

美希「ミキも最初は全然考えもしなかったの。ハニーはただの冴えない人だったの」

P「言ってくれるな。まぁ事実だが」

美希「ハニーは運がいいの。こんな可愛くて魅力的な女の子と両想いになれるオジサンなんてそうはいないの」

P「……うん、まったくだな」

美希「あはっ、やっとハニーも素直になってきたね!」

P「ついでに減らず口も言ってやろうか?」

美希「あーあーミキには聞こえないのー」

P「愛してるよ美希」

美希「……!! ハニー! いまなんて」

P「さて、事務所に帰ろうか」

美希「ああん、ハニー待ってー! もう一回言ってー!」


 おしり

おかしいの…
即興で三時間くらいで終わらせるはずだったの…
なんなのなの…

それじゃみんな、バイバイなのー☆

おまけいるー?

しょうがないから書いてあげるの。あふぅ

~おまけ~

P「――おーい美希ー?」

美希「なにー?」

P「ちょっと電球が切れたみたいでな。取り替えてくれないか?」

美希「電球は?」

P「いつものとこ」

美希「ないの」

P「ありゃ、切らしてたか。買いにいかないと」

美希「でもミキ、メーカーとか知らないよ?」

P「うーん、電気屋まで遠いからな……仕方ない、車椅子持ってきてくれ」

美希「ダメなの。今日は時間もあるし、歩いていこ?」

P「頑張るのは嫌いなんだが」

美希「頑張るの!」

P「はいはい……」

P「ずいぶんあったかくなってきたな。そろそろ春か」

美希「春香はいないよ?」

P「違う。去年の今頃か、美希がトップアイドルになって、いきなり引退しちゃったのは」

美希「だって、ミキがアイドル続ける理由がなくなっちゃったんだもん」

P「もう少しやる気にはならなかったのか?」

美希「うーん、プロデューサーとは、ハニーを見返してやるんだって勢いづいてたから一緒に頑張れたけど。根本的にあの人ちょっと苦手なの。ミキはもっと気ままに生きたいの」

P「真とか響とは意気が合いそうだけどな。雪歩も確かやりにくそうにしてた気がする」

美希「……雪歩は男のヒトが苦手だから仕方ないの」

P「まだ苦手なのかな。俺が見てた時は距離を置いてたからよくわからなかったが。亜美や真美なんかはからかいがあるって言って――」

美希「……」ガンッ

P「うおっ、いきなり松葉杖を蹴るんじゃない。こけるだろ」

美希「奥さんの前でほかの女の子の話ばっかりするハニーが悪いの」

電気屋

P「えーと……あったあった」

美希「ハニー、これ見て!」

P「なんだ。マッサージチェアか」

美希「これがあれば日頃の疲れも吹き飛ぶの! ハニーはオジサンだから肩こり腰痛に苦しんでるでしょ?」

P「余計なお世話だ。ほれいくぞ」

美希「相変わらずつれないの……あ、あれミキがCMに出てたヤツなの!」

P「なんのCMだ」

美希「えっとね、わき毛とすね毛の――」

P「元アイドルがそういう言葉つかうんじゃない」

美希「なんなのなの!」

P「ついでだし晩御飯の用意も買いに行くか。何食べたい?」

美希「ハニー」

P「お前ハチミツおにぎりな」

美希「あれだけはやってはいけないの!」

P「やったことあるのか。どうだった」

美希「あれだけはやってはいけないの!」

P「なるほどよくわかった……あれ、ここ工事中か」

美希「裏道に回るしかないの」

P「それにしても、最近はあんまり外でも美希だって気づかれないな」

美希「元トップアイドルがこんな冴えないオジサンといるとはだれも思わないの」

P「……減らず口だけは一人前になってきたな」

美希「誰かさんのおかげなの」

美希「……あ」

P「しまったな。こっちは石段の道だったか」

美希「ハニー大丈夫? 支えてあげるね」

P「ああ、頼む」

コツ… コツ…
コツ… コツ…

P「……ごめんな」

美希「なにが?」

P「生まれつきこんな体で」

美希「ミキだって生まれつき美人さんなの。だから仕方ないの」

P「なるほど。じゃあ仕方ないな」

美希「それにミキだってごめんなの。さっきマッサージチェアに座ってたらハニー即死だったの」

P「お前わかってて誘ったのか……」

美希「言ってから気づいたの。あはっ☆」

美希「……あのね」

P「ん?」

美希「もしハニーが動けなくなっても、ミキが一緒にいてあげるからね」

P「……ありがとう」

美希「だからね、もしミキがしわしわのおばあちゃんになっても、ハニーも一緒にいてね」

P「俺がまだ生きてたらな」

美希「あはっ。小鳥がね、憎まれ口が得意な人は長生きするって言ってたから大丈夫なの」

P「だったら美希も長生きするだろうな」

美希「誰かさんのおかげでね」

P「このガキめ。手に負えん奴だ」

美希「頑張って生きてる甲斐があるでしょ。ハニー♪」

おまけおしり

あふぅ
それじゃ今度こそバイバイなのー☆

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom