蛍「私はあの人を目で耳で、五感全てで求めてて」 (15)

蛍(今日はパパのICレコーダを借りました)

蛍(そして今、この中にはみんなの声が入ってます)

蛍(イヤホンをして、そっと再生ボタンを押す)

蛍(そしてもう一つ、みんなで撮った写真)

蛍(写真の中の私は先輩と仲良く手を繋いでいて)

蛍(自分なのに、なんだか羨ましいな)

蛍(聞こえて来る声が、段々写真と混ざっていく)

蛍(ちょっと前までしていたことなのに、自分の中にあるものはどんどん薄くなって)

蛍(先輩の香りを思い出す、ほんのり思い出す)

蛍(先輩の体温を思い出す、心地好かった記憶)

蛍(たりないタリナイ、なにもかもが薄すぎて、足りない)

蛍(早く、明日が来ないかな)

蛍(先輩といるときだけが満ち足りる)

蛍(先輩といないときは、切なくなるばかりだから)

蛍(明日はまだまだやって来ない)

蛍(新しい一日)

蛍(先輩に会うためだけにあるこの一日)

蛍(学校に行くために支度をする)

蛍(出掛ける間際、ちょっぴりおっきめのこまぐるみ一つ抱きしめて)

蛍「行ってきます先輩……んっ」

蛍(唇をこまぐるみの口に、そっと優しく押し当て)

蛍(ひとつ)

蛍(ふたつ)

蛍(みっつ)

蛍「……よしっ! 今日も頑張ろっ!」

蛍「パパー! ママー! 行ってきまーす!」

蛍(決して届かないほど高く透き通るような青い空)

蛍(白い化粧をした村の景色)

蛍(頬から染み込んでいく寒さは、じわりじわりと熱に浮された私の心を落ち着かせてくれる)

蛍(バスが来る音がする)

蛍(一本早いこのバスは、生徒が乗る時間のバスではないと思う)

蛍(一呼吸)

蛍(口から伸びた白い靄が消えるのを見届けて私はバスに乗り込む)

蛍(誰もいない学校)

蛍(音は私以外から鳴ることもない)

蛍(軋む床を踏み締めていつもの教室に入る)

蛍(最近の私は特に危ない)

蛍(今も、誰も来ないと、私しかいないと安心しきっている)

蛍(誰かが来たら、音で気が付く、だから)

蛍(なにをしても、私を咎める人はいない)

蛍(そう、安心しきった私は、生徒の席に座る)

蛍(先輩が置いて行っていた荷物、きっと忘れたんだろうな)

蛍(数学のドリルから、わずかな先輩の香りを求めて鼻を押し付ける)

蛍(吸って)

蛍(神経を研ぎ澄ます)

蛍(先輩の香り、見付けた)

蛍(一旦息を吐き出したら)

蛍(深く、深く、吸い込む、先輩の香りを全て吸い込むように)

蛍(トクン)

蛍(先輩を感じ胸が高鳴る)

蛍(でも、紙から仄かに香る程度ではやっぱりタリナイ)

蛍(鼓動一回、たったそれだけ)

蛍(もっと心を揺さ振らないと、私の胸はときめかない)

蛍(激しい揺さ振りをかけるために)


蛍「……んぅっ、あっ、ふぁっ」


蛍(早い成長期を迎えた体は、最適なんだと思う)


蛍「やぁっ、んんっ、せんぱっ、乳首はっひゃあんっ!」


蛍(言葉と快感で、心を騙す)

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