蛍(今日はパパのICレコーダを借りました)
蛍(そして今、この中にはみんなの声が入ってます)
蛍(イヤホンをして、そっと再生ボタンを押す)
蛍(そしてもう一つ、みんなで撮った写真)
蛍(写真の中の私は先輩と仲良く手を繋いでいて)
蛍(自分なのに、なんだか羨ましいな)
蛍(聞こえて来る声が、段々写真と混ざっていく)
蛍(ちょっと前までしていたことなのに、自分の中にあるものはどんどん薄くなって)
蛍(先輩の香りを思い出す、ほんのり思い出す)
蛍(先輩の体温を思い出す、心地好かった記憶)
蛍(たりないタリナイ、なにもかもが薄すぎて、足りない)
蛍(早く、明日が来ないかな)
蛍(先輩といるときだけが満ち足りる)
蛍(先輩といないときは、切なくなるばかりだから)
蛍(明日はまだまだやって来ない)
蛍(新しい一日)
蛍(先輩に会うためだけにあるこの一日)
蛍(学校に行くために支度をする)
蛍(出掛ける間際、ちょっぴりおっきめのこまぐるみ一つ抱きしめて)
蛍「行ってきます先輩……んっ」
蛍(唇をこまぐるみの口に、そっと優しく押し当て)
蛍(ひとつ)
蛍(ふたつ)
蛍(みっつ)
蛍「……よしっ! 今日も頑張ろっ!」
蛍「パパー! ママー! 行ってきまーす!」
蛍(決して届かないほど高く透き通るような青い空)
蛍(白い化粧をした村の景色)
蛍(頬から染み込んでいく寒さは、じわりじわりと熱に浮された私の心を落ち着かせてくれる)
蛍(バスが来る音がする)
蛍(一本早いこのバスは、生徒が乗る時間のバスではないと思う)
蛍(一呼吸)
蛍(口から伸びた白い靄が消えるのを見届けて私はバスに乗り込む)
蛍(誰もいない学校)
蛍(音は私以外から鳴ることもない)
蛍(軋む床を踏み締めていつもの教室に入る)
蛍(最近の私は特に危ない)
蛍(今も、誰も来ないと、私しかいないと安心しきっている)
蛍(誰かが来たら、音で気が付く、だから)
蛍(なにをしても、私を咎める人はいない)
蛍(そう、安心しきった私は、生徒の席に座る)
蛍(先輩が置いて行っていた荷物、きっと忘れたんだろうな)
蛍(数学のドリルから、わずかな先輩の香りを求めて鼻を押し付ける)
蛍(吸って)
蛍(神経を研ぎ澄ます)
蛍(先輩の香り、見付けた)
蛍(一旦息を吐き出したら)
蛍(深く、深く、吸い込む、先輩の香りを全て吸い込むように)
蛍(トクン)
蛍(先輩を感じ胸が高鳴る)
蛍(でも、紙から仄かに香る程度ではやっぱりタリナイ)
蛍(鼓動一回、たったそれだけ)
蛍(もっと心を揺さ振らないと、私の胸はときめかない)
蛍(激しい揺さ振りをかけるために)
蛍「……んぅっ、あっ、ふぁっ」
蛍(早い成長期を迎えた体は、最適なんだと思う)
蛍「やぁっ、んんっ、せんぱっ、乳首はっひゃあんっ!」
蛍(言葉と快感で、心を騙す)
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません