凛「№39」 (184)

モバP「ブスだなー」の続編ということでお願いします。

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「それでもみくはやってない!!」

№39の女の子はそう叫んだ。




事務所


凛「オーディション?」

P「ああ」

未央「3人で?」

P「そうだ」

卯月「3人揃ってですか?」

P「いや。受かるのは1人だけだ。3人のうち誰かが受かればいい。下手な鉄砲も数撃ちゃ何とかだ」

未央「なんか納得いかない理由だなー」

卯月「まあまあ。それで、何のオーディションなんですか?」

P「学園物ドラマのアイドル役だ。役者でも良かったらしいんだが、
ぜひ本物のアイドルを使ってみたいという監督の思いつきで、
面白いと思って3人ともオーディションに応募してみた」

凛「面白いって…」

P「面白いだろ。役者としてもアイドルとしても力が試されるんだぞ?
しかも出番が結構ある役だ。受かればテレビに出れるし、何より知名度が上がる。
あの事務所の本物のアイドルだってな」

未央「テレビかー。地上波に私の活躍が流れちゃうのかー。…面白いね、面白いよプロデューサー君!」

P「まだ何も決まってもない。お前が一番先に落ちそうだ」

未央「酷いなー」

卯月「あはは…。それで、何かコンセプトというか、監督さんが求めてるものはあるんですか?」

P「いいところに気付いたな。本田より島村の方が残りそうだ」

未央「ぶーぶー」

凛「テレビとなると求められるものも多そうだね」

P「まあそうだな。アイドル性が求められるわけだ。容姿もそうだが、何よりも歌唱力が一番だ。
ダンスシーンがあるなら、その要求に応えられるだけのスキルも必要だ」

卯月「演技力はいいんですか?」

P「今回演技力は特に求められていない」

凛「なんで?」

P「ドラマ内のアイドルは新人という設定だそうで、配役も新人アイドルを使いたいということだ。
演技力はそこそこあればいいという話らしい。何よりもフレッシュ感が一番だそうだ」

未央「なら私も大丈夫そうだ!演技はちょーっと自信ないから…」

P「ま、そのうち演技力が必要な時が来るかもしれん。今の内から基本ぐらいは覚えておくのは悪くない」

卯月・未央・凛「はーい」

P「あと監督がそのアイドル役に求めているのは、自分らしさ、だそうだ」

凛「自分らしさ?」

P「ああ。キャラ作りせず、そのままの自分を表現して、その中で監督のイメージと合致した人を採用するらしい」

卯月「自分らしさですか…」

P「難しいか?」

卯月「オーディションはいつからですか?」

P「2週間後に一次選考が始まる。まず歌とダンス審査の予定だ。
課題曲とダンスがあるからまずはそれを叩き込む。
その中である程度、そのままの自分がなんなのかを形作ってあるといい」

凛「2週間後って、結構急なオーディションだね。大丈夫なの?」

P「臨機応変に歌やダンスに対応できる人材が欲しいそうだ。まだ2週間はいい方だ。
二次選考は一次選考の1週間後にあるが、無理難題が出る可能性がある」

未央「うへー。でもなんか乗り切ったら力つきそうだね!」

P「そのために受けさせるというのもある。経験しないと分からないことばかりだ。
経験を積むという意味で、失敗していい。落ちたら盛大に笑ってやる。
俺に笑われるのが嫌なら精一杯頑張ることだな」

未央「意地でも受かってその鼻っ柱をたたき折ってやる!」

卯月「でもやるからには受かるために頑張らなきゃ!」

凛「…自分らしさ、か」

P「今日からトレーニングもオーディション用に変更してある。
きついトレーニングになるが、嫌だったら早々にギブアップしていいぞ」ハハハ

未央「べーっだ!」

P「初日は俺も見学させてもらう。先にレッスンスタジオに行ってるからなー」

凛「ほら未央、早く着替えに行くよ」ガシッ

卯月「頑張ろー!」

未央「おー!」ビシッ

凛「…おー」ヤレヤレ

レッスンスタジオ


トレ「歌は今までのレッスンから考えれば簡単な部類に入ります。
あとはそこにどれだけ自分らしさを籠められるかが大切です。
次のレッスンまでにある程度の自分らしさを籠めて仕上げてください。ダンスも同じです」

卯月・未央・凛「はい!」

トレ「ダンスは少し難しいところもあります。映像もありますから、それを見てしっかり復習するように。
今日はこれまでです。しっかりクールダウンして、風邪をひかないように気を付けてください」

卯月・未央・凛「お疲れ様でした!」

バタン


卯月「凛ちゃーん、未央ちゃーん!!さっきの難しいところのステップ教えてー!」ダキッ!

未央「よしよし、本田先生が手取り足取り教えてあげよう♪」

卯月「本田先生、お願いします!!」

凛「私タオルと水持ってくるね」

卯月「ありがとー!!」

未央「さ、それじゃあ行くよー」

卯月「うん!」

バタン

社長「お、プロデューサー君、レッスンの調子はどうかね?」

P「お疲れ様です。初日ですが、あまり良好とは言えません。
今回のオーディションはそれなりにレベルの高い女の子たちが選考に来るみたいなので、今のままではまずいでしょう」

社長「そうか。しかし、是非受かってほしいものだね。
この前の静岡ライブよりももっと多くの人の目に映るチャンスだからねえ」

P「ですね。オーディション合格の3人の親御さんはどうでしたか?」

社長「うむ、あとは学校や寄宿先の手配、その他手続きを済ませれば納得してもらえるだろう」

P「もっと大きくなれば寮でも建てて、さらにスカウト活動も」

社長「夢が膨らむね。ただそのためには一つずつ着実にやっていかねばね」

P「もちろん。まずはこの目の前にいる3人をどうにかして、その次に新たな3人の育成ですね」

社長「ああ。しかしどうだね、彼女たちはかなり良くなっていないかい?いい眼をしているよ。
3人とも同じ眼をしている。とても魅力的だ」

P「事務所に来た時に見た腐った眼がよくここまで良くなったものです」

社長「君のおかげかな?」

P「さあ?でも良い眼をしている仲間と仕事が出来るというのは彼女たちにとっていいことです」

凛「あ、社長。お疲れ様です」

社長「お、渋谷君、お疲れ様。どうだね調子は?」

凛「卯月がちょっと遅れてますが、歌やダンスはそこまで難しくないので、順調と言えば順調です」

社長「では何が問題かね?」

凛「…問題ですか?」

社長「今の口ぶりだと何かしら引っかかる所があるんだろう?」

凛「それは…」

P「自分らしさか?」

凛「…はい」

社長「今回のテーマだったね。そんなに難しい事かい?」

凛「…自分らしさって、今まであんまり考えたことなくて。
卯月や未央は可愛かったり明るかったり、二人らしい色があるからいいなって思うけど、
私にそんなものがあるのか分からなくて」

社長「ふむ。まあ他人が君はこういう人間だと言って、それが本当にそうだったとしても、
自分自身がそう思えなければ自分らしさとは言えないのも事実だ。
だから私が見ている渋谷君の一面を言っても意味が無いかもしれない」

凛「誰にでもいろんな面があって、それら全てを表現なんて出来ないなって、そんなことを考えるんです」

P「深く考えすぎだと思うけどな。ま、時間はまだある。
それに島村や本田がいるんだ、あいつらから聞くのも一つの手だ」

社長「うむ。君は1人ではない。仲間がいるというのはいいことだ」

凛「…はい」

社長「しかも君たちは皆同じ眼をしている。仲間というか、ライバルであり親友であるそんな眼をしているよ。
だから何も心配することはない。答えは自分の中ではなく、彼女たちの中にあるかもしれないよ?」

凛「2人の中、ですか」

社長「いかにも。彼女は君以上に君を見ていてくれる存在なはずだ。
戦ったら手ごわいライバルかもしれんが、困った時には頼りになるよき仲間だ」

凛「はい」

社長「では、私は営業とスカウトに行ってくるとしよう。何かあったら相談しにきなさい」ヒラヒラ

凛「ありがとうございます」

P「俺が言うより真実味があるな」

凛「そうだね。あ…あんたが言うより遥かに温かい言葉だったよ」

P「そいつは上々」

凛「ねえ」

P「なんだ?」

凛「同じ眼って何?」

P「そのまんまの意味だ」

凛「そんなに私たちは同じ眼をしてるの?」

P「そうだな。まあ眼に限ったことだけじゃない。
社長ぐらいになれば眼を見たら分かるんじゃないかと思うがな。
何せ自分がこれだ!と思った人間しかスカウトしてこないんだから、相当に眼力があるはずだ。
眼を見ただけで分かるのも、あながち嘘とは言えない」

凛「じゃあ、あんたは何を見て同じだと思うの?」

P「オーラというと嘘くさくなるが、気というか、雰囲気というか、
ああこいつらは真剣なんだな、強い人間なんだなっていう気持ちを感じるな。
特に眼から感じることが多いのは事実だ」

凛「ふーん」

P「お前もそういうのを感じ取れるようになれ」

凛「…なんで?」

P「本物か偽物か、それを見極める力はアイドルじゃなくても必要な力だ。
アイドルである以上、誰かと戦って、結果を出さなければいけない。
戦う相手が本当に強い相手なのかどうか自分で判断出来れば、
自分がどれだけ頑張らなければこいつには勝てないというのが分かるだろう?」

凛「そんな風に思ったことないよ」

P「それが全てじゃないが、これから俺らは多くの敵と戦わなくてはならない。
戦わずに俺たちが目指す場所へは行けない。
いずれは765プロのアイドルたちがいるところを越えていかなければいけない。
その時には彼女たちともその場所をめぐって戦わなければいけない。
相手を見て、どれだけの人間かを判断することは結局のところ、
自分自身が今どれだけのレベルなのかを確認できる最良の方法になる」

凛「…」

P「そういう眼を今から養っておけ。
まずは目の前にいる2人からそういうものを感じるトレーニングをするのがいいだろう」

凛「…うん。じゃ、自主練に戻るから」

P「19時までには終われるように、島村と本田にダンス教えとけよ」

凛「未央も?」

P「ああ。じゃ、事務所に戻る。帰るときに声かけろ」

凛「…はい」




卯月「凛ちゃーん!!さっきのステップ教えてー!!」

未央「私もー!!」

凛「…未央が教えてたんじゃないの?」

未央「ちょーっと教えるのが難しくてさー」

凛「ふぅ…じゃあ始めから一つずつ確認しながらやろうか」

卯月「はーい!」

未央「渋谷大先生、お願いします!!」

凛「はいはい」

またゆるりと更新できればと思います。おやすみなさい。

ガチャ


凛「終わったよ」

P「お疲れ。調子はどうだ?」

未央「もうへろへろ…。車で駅まで送ってー」

P「悪いが今日は忙しくて手が離せない。千川さんが帰る予定だから一緒に駅まで行ってもらってくれ」

ちひろ「流石に遅い時間は危ないですしね」

卯月「お仕事ですか?」

P「お前らがオーディションに落ちた時の仕事を作っておかないといけないからな」

未央「絶対受かってやるからなー!!」

P「威勢だけは認めるが、受かるのは1人だ。誰かが受かったとしても、2人は必ず落ちる。
それが分かってるんだから仕事は作っておいて当然だ」

未央「むー!!」

卯月「…」

凛「?」

ちひろ「さ、遅くなる前に帰りましょう♪」

凛「そうだね」

ちひろ「戸締りお願いしますね」

P「はい。お疲れ様でした」



バタン




P「ふう…」

帰り道


凛「あのさ…」

未央「うん?」

卯月「何々?」

凛「…私ってどんな風に見える?」

未央「どんな風にというと?」

凛「えーっと…」

ちひろ「オーディションの件ですか?」

凛「…うん」

卯月「自分らしさって、考えてみると難しいよね」

未央「どう表現すればいいのかも難しいんだよねー」

卯月「私らしさっていっぱいあるような気がするし、それを歌とダンスに籠めるって大変ですよね」

未央「うんうん。元気で明るくて可愛いくて、ちょーっとナイーブな未央ちゃんを表現するって難しいよ」

凛「そうだね、未央は元気で明るくて可愛くてナイーブな女の子だもんね」

未央「しぶりーん、棒読みだよー」

卯月「ふふっ。でも凄く未央ちゃんらしいと思うな」

未央「私らしさってきっとこれだけじゃないと思うけど、
私が私であるために必要なものってそれぐらいなんじゃないかなって思ったからさ」

ちひろ「未央ちゃんは可愛いですもんね♪」

未央「か、可愛いのは撤回でもいいかなー…あはは」

凛「卯月はどんな感じ?」

卯月「なんか堂々と自分らしさはこうです!って言うの、恥ずかしいよね」

凛「自称で可愛いって言えるのは凄いよね」

未央「」

ちひろ「若者の特権ですよ♪」

凛「これでちょっと恥ずかしくなくなったでしょ?」

未央「酷くない!?」

卯月「そうだね♪」

未央「しまむーまで!!」

卯月「ふふっ♪私はね、夢に向かって全力で走るのが私らしいかなって思うんだ」

凛「いつも頑張ってる卯月らしいね」

卯月「えへへ…。それでね」

未央「うん?」

卯月「私、今回のオーディション、2人に絶対勝ちます!」

未央「お!突然の宣戦布告!」

凛「どうしたの?」

卯月「私ね、天海春香さんと、自分と約束したんです。沢山の人を笑顔にするって。
それを叶える為に、もっともっと努力しなきゃいけないんです」

凛「うん」

卯月「そのためには、目の前にあるチャンスを逃しちゃいけないって、そう思うんです。
だから、2人とは親友だし、大切な仲間だけど、負けたくないライバルなんです。
私らしく、頑張って戦おうと思います!」

未央「もとより私も負けるつもりはないよ!同じ事務所だからと言って手加減は無しだ!」

凛「未央は手加減なんて出来るの?」

未央「んー、出来ない♪」

凛「私も二人には負けないつもり。手加減なんてしない。手加減して勝てるような相手じゃないし」

卯月「同じ事務所にライバルがいるって、すっごく素敵なことだよね」

未央「うんうん♪でも、この中の誰か2人は涙を呑むことになるのかー。恨みっこは無しだよ!」

凛「もちろん」

卯月「です♪」

ちひろ「それで、凛ちゃんは自分らしさが何か見つかりそうですか?」

凛「わかったような、わからないような、そんな感じです」

未央「まだ時間はあるからね。ゆっくり考えて、自分がこれだ!って思う自分らしさを見つければいいのだよ」

卯月「なんで偉そうなの」フフッ

凛「そうだね。少し楽になったよ。ありがとう」

未央「いえいえ。いつでも相談してきなさい♪」

卯月「うんうん。ライバルだけど、親友だからね♪」

凛「うん。それじゃ、私はここで。また明日」

未央「じゃあねー」

卯月「また明日ー」

ちひろ「気を付けてくださいねー」





卯月「凛ちゃん、まだ時間かかりそうだね」

未央「余計に悩んじゃったような顔だったね」

ちひろ「そんな顔してましたか?」

卯月「はい」

未央「何となーく、ね」

ちひろ「やっぱり3人は仲良しですね」

未央「あれは相当時間がかかると見た!」

卯月「何か手伝えないかなあ」

ちひろ「2人は凛ちゃんの事をどんな子だと思いますか?」

未央「うーん、クールなんだけど、実は情熱家で」

卯月「大人びてるところがあると思ったら、可愛い面が顔出したりして」

未央「そうそう。しぶりんはほんといろんな面があるから一言で言い表すのは難しい気がする」

ちひろ「全部そろって凛ちゃんって感じですもんね」

卯月「でも可愛いって言ったら否定しそうですよね」

未央「『べ、別に私、可愛くなんてないから』って、ちょっと照れながらいいそうだなー」

ちひろ「わかります」フフッ

卯月「可愛いのも凛ちゃんらしいけど、それを表現したくなさそうですね」

未央「…そうだ!!」

卯月「急にどうしたの!?」

未央「未央ちゃん、いいこと思いついちゃったよー♪」

ちひろ「?」



ゴニョゴニョゴニョ



卯月「それいいと思います!どうでしょう、ちひろさん?」

未央「どうでしょう?」

ちひろ「うーん、よほど難しいものでなければ出来なくはないと思います。
費用は社長を言いくるめて経費でどうにかなりそうですが、時間が問題です」

未央「時間は…プロデューサー君にも手伝ってもらってどうにかしよう!」

卯月「忙しそうだったけど、そんな時間あるのかなあ?」

ちひろ「とりあえず計画だけ伝えておけばいいと思います。
プロデューサーさんを頼るのは最終手段と思っておいて、とにかく出来るところまでやってみましょう」

未央「よーし、頑張るぞー!!」

卯月「おー!!」

ちひろ(若いっていいなぁ…)

翌日 事務所


未央「ってことなんだけど、どう!?」

卯月「出来ますか?」

P「出来なくはないだろうが、使えなかったときは無駄骨になるぞ?」

未央「その時はその時考えよう!」

P「はあ…。予算の方は社長に相談してみる。お前らの進行具合で失敗する可能性がある。
なるべく早く仕上げろ。そしたらあとは千川さんと俺でどうにかやってみる」

卯月「本当ですか!?」

P「嘘をついてどうする。ただし、少しでもレッスンに影響が出たら即中止だからな」

未央「そんなへましないよ!」

P「お前が一番心配だ」

バタン


凛「おはようございます」

未央「!…それじゃあ色々よろしくね!しぶりんおはよー♪」

凛「?おはよ」

卯月「おはよう凛ちゃん♪さ、着替えに行きましょう」

凛「?」

未央「レッスンレッスン♪



P「ふぅ…」

とりあえずここまでで。

時系列的には、トレ「安部さんが立ったまま気絶してます!」のちょっと前ぐらいです。

遊戯王は分からないのですみません。おやすみなさい。

レッスンスタジオ


トレ「では今日はこれまで。島村さん、本田さんは自分らしさをもっとダンスと歌に籠められるように、
とにかく基本の歌とダンスをマスターしてください」

卯月・未央「はい!」

トレ「渋谷さんは自分らしさを見つけられるように努力してください。まだ時間はあります。
ダンスと歌は完璧に近いので、焦らずじっくりと自分らしさを探してください」

凛「…はい」

トレ「お疲れ様でした」

卯月・未央・凛「お疲れ様でした!」

未央「よし!」

卯月「うん!」

凛「どうしたの?」

未央「ふっふっふ。ダンスと歌が完璧なしぶりんとの差を埋めるために、
しまむーと共闘することを決めたのさ!」

卯月「勝つためには努力あるのみです!」

凛「何それ」フフッ

未央「ということで、今日から私たち2人は秘密特訓を行います!
しばらくは一緒に帰れないから、そこんとこヨロシク!!」

卯月「ヨロシク!!」

凛「わかった。寂しいけど、強者の余裕を見せつける為にも今日は早く帰るよ」

未央「私も寂しいよぅ…」

卯月「ううぅ…」

凛「頑張ってね。私も自分らしさを頑張って探すから」

卯月「頑張ってね!!」

未央「相談のるからね!!」

凛「ありがと。じゃあまた明日」


バタン



未央「よーし、それじゃあ」

卯月「早速取り掛かりますか!」

未央「おう!」


事務所


凛「お疲れ様」

P「お疲れ。2人は一緒じゃないのか?」

凛「うん。2人で秘密特訓だって」

P「そうか。どうだ、自分らしさは見つかったか?」

凛「…全然。考えれば考えるほどわかんなくなってる」

P「お前にはまだ早い課題だったかな」

凛「ねえ…あんたから見たら私はどんな風に見える?」

P「それを聞いてどうする?」

凛「どうせあんたの事だから、ろくな答えが返ってくるとは思ってないから、興味本位で聞いてみただけ」

P「よく分かってるじゃないか。
とは言ったものの、所属アイドルがアドバイスを求めているのに、無視するほど酷い人間でもない」

凛「…」

P「俺は今一つお前がどういう人間かわからん」

凛「えっ?」

P「今一つわからんと言ったんだ」

凛「聞こえてるよ」

P「そういうことだ」

凛「全くアドバイスになってないよ」

P「そうか?」

凛「今の質問に対しては、もっと具体的な答えを言うのが的確なアドバイスなんじゃないの?」

P「答えを言ってそうでしたかという結論を出させるのは嫌いでな」

凛「あんたは答えを知ってるの?」

P「知ってる知ってる。ちょー知ってる」

凛「…」

P「つれないなあ」

凛「だったらもっとまともなアドバイスをしてよ」

P「至って真面目に答えたぞ?」

凛「…もういいよ」

P「暗くなる前に帰れよ。駅まで送ってやろうか?」

凛「…いい。お疲れ様」

P「おー」


バタン




ちひろ「あんなアドバイスでよかったんですか?」

P「ええ。具体的にしたら勘違いしそうで。あいつらしい答えを見つけるのが一番です」

ちひろ「優しいんですね」

P「俺はいつでも優しいですよ?」

ちひろ「ソウデスネー」

P「さて、2人はどうしたか」

ちひろ「あの計画、どうにか出来るものですかね?」

P「資金があれば出来ないこともないでしょうが、なかなかそうもいかないでしょう?」

ちひろ「この前の静岡ライブでだいぶ使っちゃいましたからね」

P「この際社長も巻き込んで何とかやってみるしかないでしょう」

ちひろ「社長ってそんな技能あるのかしら?」

P「俺だってそんなもん無いですよ。あとはどれだけ時間に余裕が出来るかだけです」

ちひろ「2人にかかってるってことですね」

P「そういうことです」

翌日


バタン!!


未央「おはよーございます!!プロデューサー!!こんなのはどう!?」

卯月「おはようございます!!出来ますか!?」

P「おはよう。朝からうるさい」

未央「すみません…」

P「出来るか出来ないかは千川さんと相談してからだ。とりあえず見せてみろ」

未央「こんな感じってどうかな?」

卯月「凛ちゃんらしさを詰め合わせてみたのを何案か作ってみたんですけど…」

P「…これを昨日の今日で仕上げたのか?」

未央「昨日しまむーの家にお泊りして、寝る間を惜しんで考えたよ♪」

卯月「おかげでまだ眠くて…」

P「わかった。千川さんと相談して連絡する。今日はこれから学校だろ?」

未央「時間ギリギリー」

P「駅まで送ってやる。車の前で待ってろ」

卯月「ありがとうございます♪」

事務所


P「こんな具合ですが、現実的に見てどれが出来そうですか?」

ちひろ「うーん、3番目のであれば何とか出来るんじゃないかと思います」

P「手間がかかりそうですが、そうでもないんですか?」

ちひろ「この中では一番早く作れると思いますよ」

P「素人にはどうにも分からない世界なので、そこは千川さんにお任せします。
というか、目を通した時にこれが一番いいかなと思ったので、特に言うことはありません」

ちひろ「了解しました。あとは必要なものを集めるのと色々な準備が必要なので、
時間を見つけてどうにかしたいと思います」

P「何か手伝えることはありますか?」

ちひろ「うーん、費用的なことと、材料の調達がネックです」


バタン


社長「おはよう。何がネックなんだい?」

P「おはようございます。社長、タイミングばっちりです」

社長「?」

社長「ふむ、そういうことなら一枚噛ませてもらおう。
作業は私には無理そうだから、費用は私のポケットマネーで負担しよう」

ちひろ「本当ですか!?」

P「ありがとうございます!」

社長「協力しないわけないじゃないか。あと、材料なら私の知り合いの所に行ってみるのがいいだろう。
あそこなら色々揃っている。私のつけで買えるように連絡を入れておくよ。時間を見つけて行ってくるといい」

ちひろ「流石社長、顔が広い♪」

社長「この業界に長いこといるからね。そういう付き合いもあるのさ。
それでは私は彼女たちに会いに静岡に行ってくる」

P「よろしくお願いします」

社長「うむ。留守中会社を頼むよ」

ちひろ「はい♪」

P「気を付けてください」

社長「では行ってくるよ」


バタン

P「細かい材料の吟味は千川さんにお任せしてもいいですか?」

ちひろ「お任せください♪お昼に行ってみようと思います。
プロデューサーさんは今日外に出る予定はありますか?」

P「いえ、今日も事務所で仕事予定です」

ちひろ「ではお昼から留守番お願いします。なるべく早く帰ってこようとは思いますが」

P「了解です。よろしくお願いします。…あいつらにメールしておくか」

オーディションの日が近づいてきた。それでもまだ私は自分らしさが見つかっていない。
卯月も未央も自分らしさを交えながらレッスンに取り組んでいる。

私だけが足踏みしている状態。自分らしさってなんだろう。
…あいつは私の事をわからないと言った。
プロデューサーだっていうのにわからないとはどういうことだろう。


凛「どういうことだろうね、ハナコ」

ハナコ「?」

凛「なんでもないよ。さ、散歩に行こう」

ハナコ「わん!!」

色々ある私の中で、私らしい私はどれだろうか。
こうして散歩して、のんびりしている私も私。トレーニングで必死になっている私も私。
沢山私はいる。でも、どれか一つをピックアップして私だと言っても、私らしくないなと思う。

結局のところ…あいつが言ったように、今一わからないのが正直なところだ。
私が分からないのだから、他人にはもっと理解出来ないのだろう。

「ちょっといいかにゃ?」

だからと言って何も考えないわけにはいかない。時間はあまりない。

何か一つこれだというものを決めて、それを表現してみるのもいいかもしれない。
例えばなんだろう。卯月や未央より冷静で、落ち着いているということを私らしさにしてみてはどうだろうか。

「えーっと…、聞こえてるかにゃ?」

落ち着いているのが私らしいというのはどうにも照れくさい。
アイドルなのに落ち着いているというのもいかがなものだろうか。

でも一つそれを念頭に置いてやってみよう。それでしっくりこなかったら、また違う面を押し出してみよう。

「すみません!!!」

凛「ひゃい?!」

「やっと気づいてもらえたにゃ」

にゃ?

「気ままに歩いてたら道に迷ってしまったにゃ。駅ってどっちかにゃ?」

凛「えっと…その道まっすぐ行って交番を右に曲がれば駅が見えます」

「ありがとにゃ♪」ブンブン

凛「いえ…」

あれは…、なんだろう?同い年ぐらいだと思うけど、にゃ?にゃってなに?猫?
世界にはいろんな人がいる。それを目の当たりにするとなかなか反応に困る。
あの人は、そういう人なんだろう。猫な人。あそこまで極まってる人って凄いな。


凛「あんな風にはなれないな…」

ハナコ「?」

ひっそり更新。おやすみなさい。

レッスンスタジオ


トレ「それでは今日はここまで。島村さん、本田さんはだいぶ
自分らしさが出てきたダンスや歌になってきたように思います」

未央「やりー♪」

卯月「特訓の成果が出てますね♪」

トレ「渋谷さんも少しずつ自分らしさを出せているような気がしましたが、自分らしさは見つかりましたか?」


凛「まだ何となくな段階ですが、それなりには…」

トレ「オーディション初日まであと2日です。
私がとやかく言って渋谷さんらしさが決まるわけではないのであまり多く口出しはしませんが、
自分らしさを見つけるということは、このオーディションだけではなく、
これからの人生においてもとても大切なことです。これを機にじっくりと考えてみてください」

凛「…はい」

トレ「では各自クールダウンを行って風邪をひかないように。お疲れ様」

卯月・未央・凛「はい!お疲れ様です!」


バタン

未央「でー、しぶりんはどんな自分らしさを表現したのかなー?」

卯月「気になります!」

凛「…言わなきゃ駄目?」

未央「心配してるんだぞー?」

卯月「話したらもっと方向性が決まるかも知れませんよ?」

凛「…卯月や未央より冷静で、落ち着いているということを意識してやってみたよ。
上手くいったかは分からないけど、それなりに形になってなかった?」

未央「…うーん」

卯月「確かに凛ちゃんらしいと言えば凛ちゃんらしいんだけど…」

凛「駄目だったかな?」

卯月「何て言えばいいのかな」

未央「ほら、私たち2人がいる時だったらそれでもいいかもしれないけどさあ」

卯月「そうそう!自分らしさって、もっと自分でいいんだよ?」

未央「そうだ!もっと自分でいけー!!」

凛「もっと自分って何?」フフッ

卯月「凛ちゃんは凛ちゃんだから、私たちの事は頭に入れない方がいいのかな」

未央「しぶりんがしぶりんらしくいられるのは、私たちがいる時だけなの?」

凛「それは違うと思うけど…」

未央「だとすれば、今しぶりんが考えてる自分らしさって、ちょーっと違うんじゃない?」

卯月「私たちがいてもいなくても、凛ちゃんらしい凛ちゃん像があるはずです!」

凛「…それが分からないんだよね」

未央「オーディションまで時間ないけど、オーディション中に表現できるようになればいいんじゃない?」

凛「…今の所はそうするしかないかな。でも、全然表現できる気がしないよ」

卯月「きっと大丈夫だよ!凛ちゃんだもん」

未央「そうそう!しぶりんだもん!出来るよ♪」

凛「何それ」

未央「何だろうねー。でもさ、しぶりんだったら出来ちゃうって思うんだよ。ね、しまむー」

卯月「ねっ♪」

凛「無責任だなあ」

卯月「今日は久しぶりに3人で帰りましょう♪」

未央「賛成ー♪駅前のケーキ屋よってこー!」

凛「…オーディション」

未央「…甘いものはオーディション終わってからにします」

凛「それが賢明だよ。さ、早く着替えよ」

卯月・未央「はーい♪」

事務所

ガサガサ

バタン

凛「お疲れ様」

未央「お疲れー♪」

卯月「お疲れ様です」

P「おう、お疲れ。今日はもう終わりか?」

凛「うん。久しぶりに3人で帰るよ」

P「了解。まだ時間も早いから送迎は出来んが、寄り道せずに帰れよ」

未央「うっ…」

P「オーディション初日まであと2日だ。各々の状況はトレーナーさんから聞いているが、
おおむね順調で何より。オーディションは今自分たちがどのレベルにいるのかを確認出来るいい機会だ。
明日は午後からレッスンとチェックの軽いメニューで終わらせる予定だが、
今日もしっかりと休んでオーディション初日を迎えるように各自調整すること」

卯月・未央・凛「はい」

P「ではまた明日の午後、遅刻の無いように。お疲れ」

卯月・未央・凛「お疲れ様です」


バタン


ちひろ「ギリギリセーフ!」

P「足音には気を付けましょう。というか隠す必要があるのかわかりません」

ちひろ「まあまあ♪さあ、続きに取り掛かりましょう!」

P「はーい」



2人がいるから私らしくいられると思っていたけど、それだけじゃない。
どれだけ悩んでも、結局私らしさは分からない。私は何なのだろう。
結局結論は出ないまま、オーディションの日を迎えてしまった。


オーディション会場前


P「3人の内誰かが受かればそれで万々歳のオーディションだが、
初日で落とされるようなことがあった場合、分かってるだろうな?」

未央「そんなヘマしないよーっだ!」

P「お前が一番心配だが、周りを見渡した限りじゃあ、今日のオーディションで落とされる方が難しそうな感じだな」

卯月「見て分かるんですか?」

P「何となくな。まあくれぐれも気を抜かないことだ。まずは自分自身との戦いだ。
オーディションが進むにつれて、自分だけではなく周りとの戦いにもなってくる。
そういった経験を積むのも大切なことだ。色々感じながらオーディションに臨むように」

卯月・未央・凛「はい!」

P「終わったら連絡をくれ。迎えに来る。不測の事態もあるかもしれん。
そんな時は慌てず、いつものレッスンを思い出して、心を落ち着けるように。
…と、時間だ。健闘を祈る」

未央「よーし、会場の視線を全部奪っちゃうよ!」

卯月「頑張りましょう!!」

凛「うん」

オーディション会場


面接官「それではこれよりオーディションを始めます。
監督から、まずは体力があることと言う要望がありました。
まずは体力測定を受けてもらい、合格点に満たなかった人はその場で不合格となります!」


未央「いきなり体力測定かー。でも体力には未央ちゃん自信あり♪」

卯月「トレーナーさんに沢山しごかれましたしね。ここは余裕で通過したいところです!」

凛「確かにこれは自分が今どのレベルにいるのかを図るいいチャンスだね」

卯月「頑張りましょう!」

未央「おー!プロデューサーの鼻っ柱を叩き折ってやるぜ!」

凛「さ、準備しよう」

卯月・未央「おー!」








未央「ありゃ、意外に余裕だったね」

凛「だね。もうちょっときついのかと思ったけど」

卯月「それだけ普段のレッスンがきつかったってことですね…」

未央「思い出しただけで気持ち悪くなるようなレッスンだったしね…」

凛「何かアナウンスがあるみたいだよ」

面接官「皆様お疲れ様です。疲れた状態で申し訳ありませんが、その状態でダンス審査を行います。
ダンス審査は4回行います。試験官が見て回り、不合格の方には声を掛けます。
4回終了した時点で残った方が一次選考の合格となります」


未央「ここからダンス審査かー、厳しいねー」

凛「ギブアップする?」

未央「余裕余裕♪」

卯月「どこを見て不合格が決まるのかなあ」

凛「手を抜いたらそれだけで駄目かもしれないよ」

未央「そうと決まれば1回1回全力だ!頑張ろー!」

卯月「おー♪」

凛「…おー」







面接官「お疲れ様です、今残っている方が一次選考合格者です。
二次選考は1週間後に行います。合格者の方は書類を受け取りに来てください。
また、二次選考は歌唱力と演技審査になります」


未央「いやー、何とかなったね」

凛「流石にちょっと足に来たね」

卯月「でも無事3人とも一次選考通過ですね♪」

未央「通過しなかったらプロデューサーに何言われるかわかったもんじゃないしね」

凛「あいつに連絡しておくから、2人は先に準備しておいて」

卯月「じゃあお願いします」

未央「しぶりんも早くねー」

凛「うん、すぐ行くよ」

プルルルルル・プルルルルル・プルルルルル ピッ


P『渋谷か、お疲れ。どうだった?』

凛「うん、3人とも一次選考通過したよ」

P『今日結果が出たのか。今から迎えに行く。クールダウンをしておくように、2人にも伝えておいてくれ』

凛「わかった」

P『どうだ、自分たちのレベルがちょっとは分かったか?』

凛「体力があるっていうことだけは分かったよ」

P『基礎は大切だからな』

凛「何となく、あんたが朝、落ちるのが難しいって言ってた意味が分かった気がしたよ」

P『お前らはしっかりレッスンを積んできたんだ。面構えで違うのはわかるさ』

凛「そうだね。それじゃあ準備してるから、送迎よろしく」

P『20分ぐらいで到着予定だ。ちょっと待ってろ』

凛「うん」

ピッ

トントン


???「ふっふっふ」

凛「ん?」

???「君はいい眼をしているにゃ!」

凛(…にゃ?どこかで…)

みく「みくは君が一番のライバルだと思ったにゃ!!」

凛「えーっと、どちら様ですか?」

みく「前川みくだにゃ♪ってあれ?この前どこかで会ったかにゃ?」

凛「この前どこかで道を聞かれたような…」

みく「そうにゃ!!その節はありがとうございました」

凛「別にいいけど。それでライバルって何?」

みく「今日のダンスを見て、この中で最後まで争うことになるのは君だと確信したにゃ」

凛「ダンス見ただけで分かるんだ」

みく「ダンスとその眼にゃ。強くていい眼をしているにゃ。
そういう眼をしている子に一度負けてるから、きっと君も強いんだと思うにゃ!」

凛(この子もいい眼をしてる。卯月や未央と同じ眼)

みく「それじゃあみくは帰るにゃ。ところでお名前は?」

凛「渋谷凛」

みく「凛チャン。覚えたにゃ!二次選考もよろしくにゃー♪」ブンブン

凛「よろしく…って行っちゃった。早く卯月たちの所に戻らなきゃ」












凛(…あ、あれみくにゃんか)

車内


P「3人ともお疲れ。無事一次選考通過出来て何よりだ。これで落ちたりしたら俺の責任問題になってたところだ」

未央「落ちてた方がよかったかなー?」

P「勘弁してくれ。給料が無くなる」

未央「それは残念♪」

P「ま、何よりお疲れ。家まで送っていく。
家に帰ったら今日のオーディションのレポートを書くこととストレッチを必ずやること」

未央「レポートやだよー」

P「嫌ならレッスンがきつくなるだけだ」

未央「頑張ります!」

卯月「今日はプロデューサーさん、お仕事いいんですか?」

P「今日の仕事はお前らを送ることだ。疲れてたら寝てていいぞ」

未央「じゃあお言葉に甘えて!」

卯月「少し寝させてもらいます♪」

P「お前は寝なくていいのか?」

凛「ちょっとだけ休む」

P「そうしろ。お前の家が一番最後だから、ゆっくり休め」

凛「うん」





P「本田、明日は午後から仕事が入ってるのわかってるな?」

未央「ばっちり。学校行ってから事務所に13時集合!」

P「OK、遅刻厳禁だ」

未央「了解!送迎ありがとねー」





P「島村、着いたぞ」

卯月「はい、ありがとうございます」

P「明日は午前に別のオーディションがあるから遅刻しないようにな」

卯月「はい!それではお疲れ様です♪」




P「さっきから何難しい顔してんだ?」

凛「別に」

P「そうか」

凛「…」

P「今日は何とかなったが、今のままだと最後まで残れなさそう、とか考えてんのか」

凛「…」

P「自分らしさがまだ見つからない」

凛「…うん」

P「その答えはお前の中にしかないから、俺から何も言うことはない。
ただ、オーディションに落ちたとしても、結果として自分らしさを見つけるために
必要なことだったならそれはそれでいいぞ」

凛「…落ちてもいいの?」

P「積極的に落ちろとは言わないが、落ちたとしても、お前にとって良いものが得られたのならそれでいい」

凛「でもオーディションも仕事も結果が全てでしょ?落ちたらそれで終わりでしょ」

P「結果が全てじゃない。結果は全てだ」

凛「へ?」

P「それにだ、結果も出せてないお前が偉そうなことを言うな。そういうのは結果を出してきた奴が言う言葉だ」

凛「…そうだけど」

P「俺はそんな風には考えないが、そう考える人間もいる。
それはそいつが考え抜いて出した答えだ。お前はまだその段階にはいないし、
そんなことを考える前に目の前のオーディションを全力でやることを考えろ」

凛「…」

P「そういえば会場にライバルになりそうな子はいたか?」

凛「みくにゃんにライバル宣言されたよ」

P「おお!みくにゃんも受けてたのか。それは中々厳しいオーディションになりそうだ」

凛「そんなに凄いの?」

P「本田とライブバトルした時に見ただけだが、あの子はお前らと同じ眼をしてる」

凛「みくにゃんもそんなこと言ってたよ。いい眼をしてるって」

P「あれから時間も経ってるし、もっと強くなってるかもしれないな」

P「っと、到着だ。お前は明日は一日オフだからしっかり勉学に勤しむように」

凛「はい。じゃ、お疲れ様」

P「お疲れさん。さーて、帰って仕事だ」

―――――――――――――――――――――


結果が全ての世界において、過程はないがしろにされる。
過程がもてはやされるのは、結果を出した人がトップに立った時、
どれだけの過程を経てこの境遇にいるのかを振り返るとき。
またはトップから落ちて、こんなことをしていたから転がり落ちたんだという証拠のように突き付けられたときだけ。

だから、そこに至るまでの過程がどのようなものだったとしても、
結果を出し続け、常にトップでいればいい。そういうものかもしれない。

みくの過程はどうだろう。大阪から東京に出てきて、地下アイドルとして活躍、
少しだけ賑わいを見せ、光を浴びるも、名も無いアイドルに負け、また暗い地下アイドルの道を戻っている。

それはそれでいい。みくを見て、喜んでくれる人たちがいるならそれでいい。
でも、それでも、一度浴びた光が暖かくて、またその光に包まれたい気持ちは抑えられない。
それがどれだけ大変な事かはよく知っている。大変だからこそ、その光は甘美で、マタタビのように引き寄せられる。

みくには何が足りないのだろう。努力?運?実力?今のところ申し分ないと自負しているが、
無名のアイドルに負けるぐらいだから、実のところ足りないものだらけなのも確か。

あの勝負は非常に良いものだった。あんなにライブ会場が盛り上がったのは、大阪でも東京でも初めての事だった。
みく自身も、多分一番のパフォーマンスだったと思う。結果もかなりギリギリの勝負だった。

今の彼女はもう無名という訳でもなく、アイドルとしてデビューしている。
そんな彼女とギリギリの勝負をしたみくは今どうだろう。
結局結果を出せなかった負け犬、いや、負け猫なのかもしれない。

ステージ磨きをしていると色々物事を考えられて、今のみくを見つめることが出来るいい時間。
今日もピカピカで気持ちがいい。

どうしたものかと一思案。何が足りないのかと思うと、
やはりみくを輝かせてくれる人、もしくは事務所が必要だと思う。

今までセルフプロデュースで頑張ってきたものの、やっぱり限界がある。

色々な事務所からスカウトされたこともあった。
猫のように自由に出来るのが一番と思って今まで来たけれど、
みくを受け止めてくれる事務所を探すのもいいんじゃないかと思う。

たまたま765プロのオーディションがあったというのがきっかけだけど、
登るなら大きな山の方が大変だけど、結果を残せるはず!

書類審査の倍率が高いのは予想出来るけど、そればっかりはもう審査の人の目に留まるのを祈るしかない。
でも書類審査を乗り越えれば、後はもうみくの独壇場!
歌もトークも、ダンスもプロポーションだってかなり自信あり!

書類審査は見事に通過。
エントリー№は38。惜しい。でもきっと、それはあと一つ足りない今の自分を暗示しているようだ。
みくが輝くためにはあと一つ足りないという啓示のようなもの。そう思っていた。






「合格者は・・・エントリー№39番!」







ただ一つだけなのに、その一つの違いがどれだけのものか、想像もつかなかった。

そうしてまた今日もステージの床を磨いている。いつか輝けるその時を夢見ながら。

再びチャンスが巡ってきたのはライブに来てくれたファンの方から、
ドラマでアイドル役のオーディションがあるから受けてみたらと言われたこと。

もしこれに受かれば、きっとどこかの事務所が放っておかないはず。
チャンスはそう何度も転がってはこない。どんなことをしても、絶対に受かってみせる。



―――――――――――――――――――――

オーディション会場


面接官「まず初めに、体力審査で人数を大分絞れたので、五次選考が最終選考になります。
今日の二次審査では歌唱力と演技力を見させてもらいます。
三次選考では面接、そして四次選考ではランダムに組み合わせた人どうしでダンスと歌を見させてもらいます。
最終選考の内容はまだ未定ですが、万全の準備で臨んでください。今日は三次選考まで行う予定です」


凛「結構過密スケジュールだね」

卯月「撮影をそろそろ始めたいっていう話みたいですね」

未央「四次選考で同じ組になっても恨みっこなしでよろしくー♪」

凛「しっかり目の前の事やらないと足元すくわれるよ?」

未央「もちろんまずは目の前のことを全力でやるけどさ、きっと3人全員通過できると思うからさ♪」

凛「何を根拠に…」

卯月「あれだけ一杯レッスンしてるんです、ちょっとやそっとのオーディションじゃあ負けませんよ♪」

未央「そうそう♪しぶりんももっと自信持ってやってこうよー」

凛「まあ、簡単に不合格になるのも格好悪いね」

未央「よーし、今日も頑張っていこー!」

卯月「おー♪」

凛「おー」




凛「なんか割とあっさり二次選考も三次選考も進んだね」

卯月「監督さん面接いませんでしたね」

凛「聞いたかもしれないけど、四次選考で自分らしさを表現しながらやってくださいってさ」

未央「聞いたよー。しぶりん大丈夫?」

凛「…多分」

卯月「まだ四次選考まで時間あるし、最後まで頑張って考えよう!」

凛「うん、そうする」

卯月・未央(…)

四次選考前日 事務所


未央「それで、例の物は完成したかね?」

P「何様だ」

未央「ほら、明日は遂に四次選考でしょ?しぶりん昨日の時点でもまだ決まってなかったからさあ」

卯月「どうにかなりませんか?」

P「千川さんと何とかやってるんだがな、明日までの完成は厳しいのが現状だ」

未央「…そっか」

卯月「忙しい中ありがとうございました…」

P「ま、明日無事に渋谷が通過すればいいことだ。それより自分の心配をしたらどうだ?」

未央「そりゃあ自分も心配だけどさあ」

卯月「ライバルですけど、大切な友達です。心配になりますよ」

P「心配するのはいいが、そんな上の空でオーディション受けて、さらに酷い内容を晒してみろ。
渋谷はどう思う。『私の事が心配で2人はオーディションの出来が酷かったんだ』って思うかもしれないんだぞ?」

卯月「それは…」

P「ライバルであり友達であるなら、自分のことを全力でやりきれ。
なあなあな関係がお前らのライバル意識を作ってるわけじゃないだろ。
常に負けたくないとか、全力で勝負が出来る相手だと思ってるからライバルであり、友達でいられるんだろ?」

未央「うん!」

P「じゃあそれを実行しろ。あいつだってお前らに負けたくないと思っているし、お前らも同じだろ。
だったらやらなきゃいけないことは一つだ。
心配する暇があるなら、渋谷が度肝を抜くようなパフォーマンスを出来るように、
今から集中して明日に備えろ。こっちの方は何とか最終選考に間に合わせられるように努力する。それでいいだろ」

卯月・未央「はい!」

P「ま、これで渋谷が四次選考通過しなかったら全く意味ないけどな」ハハハ

卯月・未央「もー!!!」

オーディション会場


面接官「それでは組み合わせを発表します!」

未央「いよいよだね!」

卯月「うー、ドキドキします…」

凛「誰となっても全力でやるだけだよ。リラックスしなきゃ」

凛(…結局何も決まらないままここまで来ちゃった)


№55 ■■■・・・№71 ☆☆☆

№39 前川みく・・・№69 ○○○

№29 ◆◆◆・・・№89 △△△

№9 ●●●・・・№122 □□□

№13 島村卯月・・・№14 本田未央

№26 ★★★・・・№70 ДДД

№12 渋谷凛・・・№68 ◇◇◇

№86 ▼▼▼・・・№212 ◎◎◎

未央「あちゃー!」

凛「恨みっこなしだったね」

卯月「未央ちゃんが相手でも負けません!」

未央「私も負けないよー!秘密特訓した仲だけど、一歩も譲らないからね!って、みくにゃんがいる!!」

凛「結構目立ってたと思うけど気付かなかったの?」

未央「いやー、あんまり周り見てなくて」

卯月「凛ちゃんは大丈夫?」

凛「わかんないけど、やってみるしかないかな」

未央「…結局見つからなかったんだね」

凛「今日はこの前のレッスンの時みたいに、冷静で落ち着いているってことを考えてやってみるよ」

卯月「出来ることを精一杯やり切りましょう!」

未央「おー!」



贔屓目無しに見ても、2人の歌とダンスは完璧だと思う。
卯月らしさも、未央らしさも存分に出ていて、これが島村卯月であり本田未央なんだなと、
歌とダンスだけで十分に感じることが出来たし、それが伝わってくる内容だった。

それに引き替え私は、2人の中にいた時の私を表現しただけにとどまった。
2人よりもはるかに劣ったパフォーマンスだったと思う。
これが自分らしさなのか分からないまま、私は歌うに任せ、踊るに任せた。

だから、結果を聞いたとき、納得がいかなかった。


事務所


未央「まさか二人とも不合格とは、なかなか厳しい世の中ですなあ」

卯月「やっぱり凛ちゃんは凄いです…」

凛「全然だよ。ほんと、全然…」

P「これじゃあ誰が受かったのかさっぱりわからんな」

凛「…」

P「とりあえず島村に本田、お疲れ。今日はゆっくり休め。
島村は明日この前のオーディションが進んでいるからその予定で動くぞ」

卯月「はい…」

P「本田、お前は明日一応レッスンが入っているがどうする?」

未央「ちょっと体調悪くなりそうだからお休みでもいい?」

P「わかった。トレーナーさんには連絡しておく。ゆっくり休むように」

未央「はい」

P「渋谷は次の最終選考に向けて明日もレッスンだ」

凛「…はい」

P「じゃ、今日はもう上がっていいぞ。ゆっくり休んで、明日から気持ちを切り替えて行動するように」

卯月・未央・凛「はい」




どれだけ鏡に向かっていても、答えは出てこない。
それでも何か見つかるはずだと思ってひたすらに踊り続ける。何か聞こえてくるかもしれないと思って歌う。
それでも何も見えないし聞こえてこない。

何故私が最終選考に残ったのだろう。私らしさが伝わったというのだろうか。
私は卯月・未央と比べて冷静で落ち着いているということを打ち出してオーディションに臨めばいいのだろうか。

それは私じゃない。それだけが私じゃない。じゃあ私らしさってなんだ。
どれだけ考えたって、悩んだって、歌ったって、踊ったって、何一つ見えてこない。私は何だ。

私は私らしくありたいと思ったことが無いのかもしれない。
そうだとすれば、自分らしさなんていくら考えても出てこない。

私は私の芯が無いんだと思う。それがあいつが言うところの今一つわからんということなのかもしれない。
それでも、私には譲れないものがあるはずだ。それがなんなのか、私には分からない。
それが分かった時、自分らしさはこれだと言えるんだと思う。それが私には分からない。


最終選考前日 事務所


凛「お疲れ様」

P「おう、お疲れ」

凛「…明日の打ち合わせだと思ったんだけど、なんで2人もいるの?」

未央「連れないこと言わないでよー。せっかく明日のしぶりんの為にと思ってきたんだからさあ」

凛「それは嬉しいけど、明日の朝でもいいんじゃない?」

卯月「ふっふっふ」

凛「な、何?」

未央「明日の朝では駄目な理由がここにあるのだよ!ちひろさん、お願いします!!」

ちひろ「じゃーん!!!」バサァ

凛「えっ…何これ?」

卯月「凛ちゃんの為に、私たちからのプレゼントでーす♪」

未央「しまむーと一緒にデザインして、社長の資金援助の下、
ちひろさんとプロデューサー君が作ってくれた、明日の為だけの特別な衣装だよ!」

凛「い、衣装?」

ちひろ「久しぶりに頑張ってみました!サイズはばっちり図ってあるから大丈夫なはずですけど、
最終チェックの為に早速着てみてください♪」

凛「え、ちょ、ちょっと!」ズルズル

卯月・未央「いってらっしゃーい♪」

ちひろ「うーん、ばっちりです!」

未央「うん、イメージ通り!」

卯月「似合ってますよ♪」

凛「は、恥ずかしい…」

未央「そう?カッコいいよ!」

卯月「それでいて可愛くもあります♪」

ちひろ「2人の印象通りに作れてよかったです。あ、社長に写真送るので一枚撮らせてくださいね」パシャ!

未央「本当にありがとうございます!」

卯月「忙しい中ありがとうございました」

凛「あ、ありがとう、ございます…」

P「最終選考の内容が来たが、監督と番組スタッフの前で歌とダンスの審査。
最大限に自分らしさを表現してほしいとのことだ」

未央「この衣装はね、私としまむーがしぶりんらしさをイメージしてデザインを考えたんだよ!」

卯月「カッコよくて、可愛くて、綺麗な凛ちゃん、そんなイメージだよね♪」

凛「…あ、え、えっと」

未央「私たちが思ってるしぶりん像だから、しぶりんがそれだけじゃないのは知ってるけど、
ちょっとでもしぶりんの力に慣れたらなって思って企画したんだ」

卯月「私たちもオーディションだったから、デザインぐらいしか出来なくて、
ちひろさんとプロデューサーさんにはかなり迷惑を掛けちゃいましたけど」

凛「えっと、その、ありがとうございます」

ちひろ「いいえー。久しぶりに裁縫が出来て楽しかったですし♪」

P「あんまりなれないことはしない方がいいと言うことが学べてよかったよ」

凛「…」

P「衣装も決まってあとはお前の気持ちが固まればいいだけだ。
泣いても喚いても明日が最終選考。自分を見つめて、最後に出てきた答えをぶつけられるように、それだけを考えろ」

凛「…はい」






時には励ましてくれて、時には怒ってくれて、こんなに優しい人たちに囲まれて、私は幸せ者だ。

オーディション会場


面接官「最終選考を始めたいと思いますが、渋滞にはまってしまい監督がまだついていません。
二時間後に到着予定ですので、それまでに準備をお願いします」


P「…二時間後か」

凛「どうしたの?」

P「いや、島村をオーディションに送らなきゃいけないんだが、オーディション開始を待ってると時間が間に合わん」

凛「私は大丈夫だよ。昨日沢山エールをもらったし」

P「不測の事態も考えられるから、なるべく離れたくはないんだが」

凛「それよりも卯月を無事に送ることの方が大切だよ」

P「…何かあったら必ず連絡すること。いいな」

凛「はい。気を付けていってらっしゃい」

P「ああ。終わったら連絡をくれ。健闘を祈る」

凛「頑張るよ。卯月にも頑張ってって言っておいて」

P「了解。また後でな」

凛(…頑張るよ)






みく「凛チャーン!!」ダキッ!

凛「うひゃぁ!」

みく「にゃはは!いい反応にゃ♪」

凛「急に後ろから抱きつかないでよ」

みく「やっぱり凛チャンは残ったにゃ。みくの眼に狂いは無かったにゃ」

凛「…偶然だと思うよ」

みく「そんなことないと思うけどにゃあ。それでも、偶然を掴める人と掴めない人がいるのは確かにゃ。
みくはこのチャンスを逃すわけにはいかないにゃ」

凛「…」

みく「みくは今まで全部1人でやってきたにゃ。結果が良くても悪くても全部自分のせい。
どんなことをしてもこのオーディションに受かって、さらに飛躍をするにゃ!」

凛「どんなことをしてもって…」

みく「1人で全部やるってことは、全部自分のせいになるにゃ。結果が全てで、それ以外は0と同じ」

凛(…私はどう思えるんだろう。結果が全てでそれ以外は0なの?
卯月や未央はきっと結果が全てなんて考えないんだろうな。私にはまだわかんないよ)






???「…」

みく「おー、なんか凄い衣装にゃ!」

凛「事務所のみんなが作ってくれたんだ。ちょっと恥ずかしいけど、思いが籠ってて、温かい」

みく「…」

凛「前川さん、今は事務所に所属してないの?」

みく「気ままな猫だからね♪」

凛「そっか。気ままなのもいいと思うけど、事務所って言うのもいいと思うよ。友達も、ライバルも出来るよ」

みく「みくの最大のライバルは自分自身にゃ!」

凛「前川さんは自分を持ってるんだね。私は自分がライバルだなんて、そんな風に自信を持って言えないな」

みく「…」

凛「もし何か思うところがあったらうちの事務所に顔出してみたらどう?
社長は気に入った人スカウトする癖がある変な人だけど、いい人だし、
事務員の人も…トレーナーさんもいい人だから」

みく「検討しとくにゃ」

凛「じゃあちょっと体温めてくるよ。監督さんもう少し遅れるみたいだし」

みく「みくももう少ししたら準備し始めるにゃ。凛チャンには負けないにゃ!」

凛「よろしくね」







???「…」

面接官「監督があと20分ぐらいで到着予定です!監督が到着し次第最終選考を始めます。
各自準備運動や衣装の用意などをお願いします!
衣装の分かりやすい位置に自分の№を安全ピンでとめておいてください」


…始まる。結局私らしさは分からないままここまで来てしまったけど、今出来ることを精一杯やりきる。
それが私に出来ることだ。みんなから貰った思いがあるから、きっと大丈夫。大丈夫…。






みく「ひ、酷い…」



そんな大切な思いは無残にも切り裂かれてしまった。

№71「あら、CGプロの渋谷さんじゃない、どうしたの、浮かない顔して?」

凛「…」

№70「あら渋谷さん、今日はこんな衣装を着てオーディションを受ける予定だったの?」フフフ

凛「…」ギリッ!

№70「こわーい、そんな目でにらんだら嫌よ?」

№212「そういえばさっき人がいない時に前川さんが控室に入ってたの見ましたよ!」

みく「なっ!」

№71「あら怖い。でも前川さん勝つためには何でもするって言ってたもんね」クスクス

№70「結果が全てですもんね。人の衣装を破いたって何にも思わないんでしょうね」

№29「酷いです…そこまでして受かりたいんですか!!」

みく「…」

みく「確かに勝つためには何でもするにゃ。結果も全てにゃ」

№70「自白したってことでいいのかしら?」クスクス

№71「前川さん失格でいいんじゃないかしら。こんな人と一緒にオーディションなんか受けたくないわ」

みく「それでも…」






みく「それでもみくはやってない!!」





№70「何のアリバイもないのに声を荒げないで!目撃証言だってあるのよ?」

№71「私たちがスタッフさんに直談判して失格にしてあげるから」ウフッ

みく「ちょっと!!」

№70「渋谷さんもその衣装じゃ今日のオーディションは棄権した方がいいわ。残念だけど」クスクス

みく「人の話を、きk「監督もうそろそろ到着です!会場に集合してください」

№71「あらもうこんな時間。じゃあ会場でお会いしましょう♪」

№70「早く着替えないと遅れちゃうわよ、し・ぶ・や・さん」クスクス

みく「…凛チャン、みくは…」

凛「…大丈夫、前川さんがやったなんてこれっぽっちも思ってないから」

みく「で、でも!」

凛「前川さんはね、私の大好きな人たちと同じ眼をしてる。強くて、真剣で、真っ直ぐな眼。
そういう人はね、絶対こんなことをしない。こんな事をして勝っても絶対に喜ばない、そんな人」

みく「…みくは、勝つためにはどんなことでもするって言ったにゃ。
でも、そんな汚い真似は絶対にしない。結果は全てにゃ。
結果を出すために経てきた過程は、自分が胸を張って誇れるものでありたい。
だから、そんなこと絶対にしない!!」

凛「…この衣装はね、私のライバルが私の為に考えてくれた衣装なんだ。
自分たちの衣裳なんて全く考えてなかったのに、私の為だけを思って作ってくれた衣装なんだ。
そんな人たちと同じ眼をしている前川さんがこんなことするはずがないんだよ」

みく「でも、衣装…」


私は負けない。こんな格好悪いやり方でしか勝つことのできない人間なんかに負けるわけにはいかない。
いつだって、卯月と未央に胸を張って並べる強い人間でいたい。

だから私は正々堂々戦う。衣装がどれだけ破かれても、私を支えてくれる人たちの思いは変わらない。

私は、誰よりも強いアイドルになる。それが私らしさなのかは分からない。
でも、私が出来る全てはそれだけだ。自分のやったことを誇れる、そんな強いアイドルに。


凛「前川さん、衣装着るの手伝ってくれない?」

みく「こ、この衣装を着るの?」

凛「大切な衣装だから」

みく「わ、分かったにゃ!」

凛(卯月、未央…私、負けないよ)

プルルルルル・プルルルルル・プルルルルル ピッ


P『どうした?』

凛「今からオーディション」

P『何があった』

凛「衣装破かれた」

P『…すまない。俺のスケジュール調整ミスだ』

凛「違うよ、そういう人間がたまたまいただけだ」

P『それで、代わりの衣装は』

凛「破かれた衣装着てやるよ」

P『…』

凛「私らしさって、結局わからなかったけど、衣装を破かれて、私がどうしたいのかって考えたら、
それが答えでいいのかなって思ったんだ」

P『…自分がどうありたいか、その思いを貫き通す力ってのが自分らしさじゃないかと俺は思っている』

凛「…私もそう思う。そう思える」

P『そうか。なら、お前が思う自分らしさを表現すればいい』

凛「落ちるかもしれないよ?」

P『結果が全てじゃない、結果は全てだ。全力でやってこい。それだけだ。
なるべく早くそっちに向かう。終わったら連絡しろ』

凛「うん。かましてくる」

P『ぶちかませ』


ピッ

オーディション会場


面接官「それではエントリー№12渋谷凛さんお願いします」

凛「はい!」

№70「やだ、あの子ジャージじゃない」ヒソヒソ

№71「あれしか着る服無かったんじゃない?」クスクス


監督「えーっと、渋谷君、君らしさってのはそのジャージ姿も含めてってことでいいのかな?」

№70・№71「クスクス」





私は…負けない!!



監督「ちょっ!急に脱ぐな!!失格だ失格!!って酷い衣装だな、おい!ふざけてんのか!!」

凛「ふざけていません。音楽お願いします」

監督「ちょっ!!」

誰が見ても、彼女のパフォーマンスはドラマの新人アイドル役には似つかわしくなかった。
監督だけでなく、控えていた子たち全てが彼女の全てに魅せられた。
そして彼女たちは自分との実力差をまざまざと見せつけられることになる。

伸びやかに歌う声も、キレのあるダンスも、艶やかな目配せも、飛び散る汗でさえも、
彼女の魅力を引き立てるアクセントになる。
ぼろぼろに切り裂かれた衣装が、彼女の強さを誇らしげに讃えているみたいだった。

あっという間に彼女の時間は終わってしまい、会場は暫く無音のまま過ぎていく。


凛「ありがとうございました。体調が優れないので今日はここで失礼させていただきます。よろしくお願いします」

彼女はそう言って会場を後にした。

ありえない行動も、彼女の後姿を見ていると、なんだかそうするのが当たり前のような気がしてしまう。
堂々として、凛々しくて、誰も声を掛けられなかった。



その後は惨憺たるものだった。誰もが彼女のパフォーマンスに引っ張られ、
お粗末極まりないものになってしまった。


ただ1人を除いて。

プルルルルル ピッ


凛「…終わったよ」

P『会場前にいる。ゆっくりでいいぞ』

凛「もう準備終わったからそっち行く」

P『了解』


ピッ


2人にこの衣装は見せたくないな。家に持って帰って、何とか直してみよう。
でも、どんな顔して2人に会えばいいんだろう。気が重い…。

卯月「凛ちゃーん!!」

未央「しぶりーん!!!」


悩んでる暇は無いみたい。


未央「大丈夫!?怪我はない?!」

卯月「他の荷物は大丈夫だった!?」

凛「だ、大丈夫だから」

未央「ほんとに!?」

卯月「痛いところがあったら言ってください!」

凛「大丈夫だって。怪我もないし、他の荷物も問題ないよ」

卯月「よかったー…」

未央「よーし、それじゃあ犯人捕まえに行くとしますか!!」

卯月「ですね!!」

凛「ちょ、ちょっと!」

P「止まれ。そっちは俺が片づけてくる。お前らは車の中で待機」

未央「でも!!」

P「でもじゃない。そういうのは俺の仕事だ。お前らの仕事は車で待機」

卯月「うー!!」

凛「2人ともありがとう。ちょっと疲れたから車で休ませて」

卯月「…はい」

未央「しっかり物申してくるんだぞー!!」

P「はいよ」

車内


卯月「うっ…うぅ…」グスッ

未央「ほんとーにもう!!とっちめてぎったんぎったんにしてやりたい!!」

凛「…2人ともごめんね、折角私の為に考えてくれた衣装、ちゃんと着てあげられなくて」

卯月「うぅぅ…」

未央「あー!もう!!ほんとにもう!!!」


バタン


P「待たせた」

未央「で!どうだったの!?」

P「何もないさ。ただ状況を聞いて、こちらの話をしてきただけだ。
それでオーディションがどうこうなるというようでもなさそうだ」

未央「何それ!?」

P「大人の事情とお金が絡んでるんじゃないかとは思うが、そればっかりは推測の域を出ないから明言できん」

卯月「…そんなのって」

P「ま、そういうこともある。綺麗なだけの業界じゃない。そういう汚い部分もある。
それが明るみに出るか出ないかの違いだ」

未央「そんなのあんまりだよ!!」

P「ああ、あんまりだ。あんまりだが、それから学ぶこともある。
お前らもこうやって成り上がっていきたいというのならお手本にすればいい。
そうではなく、そんな風には死んでもなるもんかという材料にするにもお前ら次第だ」

未央「そんな生き方絶対するもんか!」

卯月「そんな方法で勝っても全然嬉しくありません!」

P「じゃあその思いを貫いてくれ。俺もそうありたいと思っている。
それにな、結局そういう奴らにはそれ相応の結果しか返ってこないものさ」

凛「…」

P「それじゃあ帰るか。シートベルトしろよ」

事務所


凛「じゃあ私は今日の反省会してから帰るよ」

未央「大丈夫?」

卯月「待ちましょうか?」

凛「ありがとう。でも長引くかもしれないから、次は一緒に帰ろう」

未央「了解!」

卯月「今日はゆっくり休んでくださいね♪」

凛「うん。2人とも気を付けて。今日はありがとう」

ちひろ「それじゃあ私は2人を駅まで送ってきますね」

P「お願いします」


バタン

凛「…」

P「腕なら10分100円で貸してやるぞ?」

凛「…じゃあ胸借りる」

P「胸なら無料で貸してやろう」


トン


凛「…卯月が泣いてくれたし、未央が怒ってくれたからそれだけで気分がすっきりしてたんだけどさ」

凛「…やっぱり悔しいよ。怒りたいよ」グスッ

凛「衣装だって綺麗なまま着たかったし、大切にとっておきたかった」

凛「…ほんとはあいつらが泣いて謝るまで殴ってやりたかったよ」

凛「こいつらが犯人で、こんな奴ら落としてくださいって、思いっきり叫びたかったよ」

凛「…でも、それ以上にあいつらには絶対負けたくないって、そう思った」

凛「ドラマの事とか忘れて、私が出来ることを出し切ったよ」

凛「…これでよかったのかな?」

P「まだそこが甘い」

凛「?」

P「自分が自分でいられる選択肢は、いつも自分が選べ。自分の決断を信じろ。
あまりにも変な方向に行きそうになったら軌道修正してやる」

凛「…私らしかったのかな」

P「お前がそうしたいって、強く思ってそうしたなら、お前らしかったんだろう。
そのつつましやかな胸を張ればいいさ」

凛「…サイテー」

P「それだけ言えれば大丈夫そうだな」

凛「…うん」

凛「それでも、やっぱりあの衣装はちゃんと着たかったな。卯月にも未央にも恩返ししなきゃいけないし」

P「あの2人はそんなこと一切考えてないだろうがな。まあそう思うなら、
あいつら以上に活躍して、あいつらを引っ張ってやることだな」

凛「頑張るよ」

P「社長と千川さんにもお礼を言っとくんだな。特に千川さん、かなり時間使ってたみたいだしな」

凛「あ…あんたは?」

P「俺は別に何にもしてない。千川さんの手伝いをしてただけだ。
門外漢がむやみやたらと手を付けるのはよくないということがよく分かった」

凛「オーディション…受かってるかな」

P「結果はそれまでのお前の全てを積み重ねて出来た結晶だ。
お前が今回のオーディションでどれだけのことが出来たは分からないが、
その過程を経てたどり着いた結果が、自分らしく出来ていて、納得のいくものなら、
落ちていようが受かっていようがどちらでもいい。今回はそういうことを考えさせるために受けさせたようなもんだしな」

凛「…」

P「例えば他人の服を破いてでも結果を求めて、その過程を含めてお前が結果を受け止められるなら、
それもそれでいいとは思う」

凛「それはちょっと…」

P「でもな、そんな汚い過程を経て出来た結果なんて、誰かに見せられるようなものじゃない。
どこかで破たんするし、汚い過程を経て出てきた結果を受け止められるだけの強さが無ければ、
どこかで自分のやってきたことが嫌いになるし、自分を信じられなくなる」

凛「…うん」

P「結果が全てじゃない。お前が通ってきた道全てが結果になる。
お前が今日したみたいに、胸を張って自分らしい結果はこれだと思う行動が出来たなら、
それはきっと誰かに伝わるし、次の結果を作る大切な過程になる」

凛「何となく、わかるかな」

P「もちろんこれは俺が今まで生きてきた中でたどり着いた結論だ。
人それぞれ考え方があって、正しさなんて普遍じゃない。それでも、だ」

凛「?」

P「自分らしくありたいと思う強い気持ちは、人にも時代にも左右されない不変のものとして自分の中にあり続ける」

凛「…」

P「そういうものが自分の中にあれば、自分を信じて進んでいける」

凛「…今日は、少しだけ自分を信じれたと思う」

P「ならそれで十分だ。オーディションに落ちようが受かろうが、
お前らしさを表現して全てを出し切ったなら結果なら、その結果が次に繋がる」

凛「そっか」

P「さて、もういい時間だ。暗くなる前に帰れ。
仕事が残ってるから送ってはいけないが、千川さんを待つか?」

凛「いい。1人で帰りたい気分」

P「わかった。気を付けて帰れ。あと明日は休みにしてある。ゆっくり休め」

凛「うん、あ…っと」

P「ん?」

凛「あr…」

P「何だよ」

凛「あ、ありがとう…」

P「おう」

凛「ありがとう…」

P「わかったわかった」

凛「ありがとう…プ、プロデューサー…」

P「おう」



バタン!!



凛(…んー!!!)



バタン


P「ふぁー」ノビー

ちひろ「いやー、暗くなるのが早くなりましたね」

P「お帰りなさい」

ちひろ「ふふ、大きなあくび。連日の徹夜がたたりましたね?目が真っ赤ですよ♪」

P「流石に寝不足です。今日は早く帰って寝るとします」

ちひろ「そうしてください。今日は私も早く帰る予定ですし。
あ、さっき凛ちゃんが顔真っ赤にしながら駅に走っていきましたけど、何したんですかー?」

P「さあ?恥ずかしいことでも言って赤面したんじゃないんですか?」

ちひろ「じー…怪しい」

P「さて、今日はこれで失礼します。また明日」

ちひろ「あ、逃げないでくださいよー!」

P「お疲れ様でーす♪」


バタン


ちひろ「もう!!」

事務所 明後日


バタン!


未央「おっはよー!」

P「おはよう」

ちひろ「おはようございます♪」

卯月「未央ちゃんおはよ♪」

未央「お、しまむー上機嫌だね。なんかいいことあった?」

卯月「ふっふっふ、それがですね…」

未央「むむむ?」


バタン

凛「おはようございます」

ちひろ「おはようございます♪」

未央「お、しぶりんおはよー!」

卯月「凛ちゃんおはよー♪」

凛「なんか上機嫌だね?」

卯月「分かっちゃいます?ふっふっふ」

凛「何?」

未央「わかんないけど、しまむーに何かいいことがあったのは確かだね」

凛「プロデューサー、何かあったの?」

未央「…ん??」

卯月「!?」

ちひろ「!!」

P「ああ、同時進行でやっていたオーディションの結果が今日出たんだがな」

未央「…ということは!!」

卯月「はい♪ラジオのアシスタンのお仕事が決まりました!」

凛「おー」

ちひろ「これから毎週卯月ちゃんの声がラジオで聞けると思うと、なんだか素敵ですね♪」

卯月「うへへへ」

P「本田にも雑誌のモデルの仕事を取ってきた。明日の午前中打ち合わせだ」

未央「了解です!…って言うかしぶりん?」

凛「な、何?」

卯月「何って、ねぇ♪」

ちひろ「うふふ♪」

P「?」

バタン!!

???「にゃーっはっはっは!!」

未央「誰だ!!…て、みくにゃん!?」

みく「げっ!あの時の!!」

凛「来たんだね」

P「友達になったのか?」

凛「前川さん、どこにも所属してないって言ってたから、うちに顔出したらって話してたんだ」

卯月「こんにちは♪」

みく「どうもにゃ♪」

P「それで、何か御用ですか?」

みく「実は、どこかみくを受け止めてくれる寛大なプロダクションはないかにゃーと思って、
ふらーっと立ち寄ってみたにゃ。この前の凛チャンを見てたら、
このプロダクションってすっごく素敵だにゃって思ったから来てみたにゃ!」

P「そうですか。ただ、私は前川さんの事をライブで少し見たぐらいで、どれぐらい実力があるのか…」

凛「実力は結構あると思うんだけど、どうかな?」

未央「うーん、確かに前のライブは接戦だったしね」

卯月「人が増えると楽しくていいですね♪」

みく「うーん、例えばー、とあるドラマの新人アイドル役が決まってる
無所属の女の子っていう肩書があったらどうかにゃー?」フンス!

P「よーし、乗った!」

みく「やりー♪」

未央「早っ!」

P「まあもともとスカウトしようと思ってたからな」

卯月「なんと!」

P「とはいっても、社長の判断を仰いでからの決定だが…」ダッダッダッダ!! 




バターン!!




社長「ティーンと、来たよー!!」

P「よーし前川、今日から一緒にアイドルの頂点目指すぞ!」

みく「まっかせにゃさーい!!」

未央「色々展開早すぎぃ!!」

卯月「賑やかになりそうですね♪」

ちひろ「色々準備しなくちゃいけませんね!」

プルルルルル・プルルルルル ピッ


ちひろ「はいCGプロ千川が承ります。はい、少々お待ちください。プロデューサーさん、外線1番です」

P「どうも。お電話代わりました。はい、はい。本当ですか!?はい、はい!ありがとうございます!
明日ですか?明日は午後からであれば大丈夫です。はい、はい。いえ、こちらこそよろしくお願いいたします!」


ガチャ


P「ふう…」

未央「どしたの大声出して」

卯月「何かいいことでしたか?」

P「渋谷にテレビCMのオファーだ」

凛「えっ?」

P「この前のオーディションの監督さんが紹介してくれたみたいで、明日の午後から打ち合わせだ」

ちひろ「凛ちゃんの姿がテレビで見られるんですね!!」

未央「うー、しぶりんがどんどん先に進んでく…」

卯月「絶対負けませんからね!!」

みく「やっぱり面白そうなプロダクションにゃ♪みくもみんなに負けないように頑張るにゃ!」

凛「早く追いついてね」

未央「なんて上から目線!!よーし、しまむー、みくにゃん!さっそくレッスンに直行だ!!」

卯月「はい!!」

みく「がってんにゃ!!…ってみく何にも用意が無いにゃ!!」

未央「大丈夫大丈夫、スタジオにジャージとかあるから!」

みく「えっ、ええー!!!ちょっと、Pチャーン!!!」ズルズル

P「実力知りたいしな、みっちりレッスンして来い」

みく「えーーーー!!」

凛「ふふ」

P「繋がっていくもんだろ?」

凛「そうかもね」

P「お前らがこれからどんなふうに成長してくのか、楽しみだよ」

凛「これからも…しっかり見守っててね、プロデューサー」

P「ま、お前らに愛想尽かされないよう努力しよう」

凛「そうだね、じゃ、私もレッスン行ってくるね」

P「おう、頑張ってこい」

凛「うん、行ってきます」

何気ない会話の棘が取れていく感触がする。

少しずつ心の氷が解けていく。それは本当に小さな変化かもしれない。
それでも、その変化を受け入れられるようになってきた。

少しずつ、私は走り出す。小さな一歩が、また次の一歩を踏み出させる。
少しずつ、私は私になる。まだ遠く届かないけれど、きっといつか届く。

その日を夢見て、今はただ走り続ける。一緒に。



終わり

見てくださった方がいればありがとうございます。

NWと島村さんで続きを書ければと思いますが、
その前にだりなつが書きたいです。
そして奈緒が出ない。

おやすみなさい。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年07月17日 (金) 08:31:44   ID: ynRDnvLj

続き、待ってます!

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