P「インクが切れた」(88)
P「何本目だろう……」
P「すいません小鳥さん、ペン貸してくれませんか?」
「……」
P「……社長と出かけてるんだっけ。律子もいないし」
P「みんなも仕事だし」
P「仕方ない。どこかに買いに行くか……」
・・・
P「うう、寒い……」
P「いつの間にこんなに寒くなったんだろう。つい最近まで夏だと思ってたのに」
P「……」
P「春もそうやって来るんだろうな」
P「いつのまにか雪が降って、クリスマスが来て、正月が終わって……」
P「……クリスマスは、雪歩の誕生日か」
P「たまにはデパートまで足を延ばしてみようか。買い物ついでにプレゼントを見たいし」
P「ちょっと遠いけど」
・・・
P「雪歩にプレゼント……」
P「やっぱりお茶っぱかな」
P「……」
P「……そういえば最近雪歩のお茶を飲んでないな」
P「仕方ないよな。忙しくて事務所に居られないし」
P「……お茶はやめておこう。きっと余らせてしまうから」
P「……」
・・・
P「化粧品……」
P「プレゼントに贈るのはどうなんだろう。香水なら大丈夫かな」
P「……これ、貴音が広告してるメーカーの奴か」
P「……やっぱり、綺麗だな」
P「……」
P「ラーメン食べに行く約束、したのいつだっけ」
P「……今更誘っても困らせるだけか。そもそも最近ラーメン自体食べて無いらしいし」
P「飽きちゃったのかな。それとも他の何かに心が移ったのか」
P「……そんな話、しないから分からないけど」
P「……」
・・・
『『お昼やっすみは♪ ウキウキwatching♪』』
P「亜美と真美か」
P「そういえば今日は二人で揃ってお昼の番組だったな」
P「司会の人にも可愛がられてるみたいでよかった。イタズラも程度を控えてるみたいだし」
P「……最後にイタズラされたの、なんだっけ」
P「ああそうだ。携帯に落書きされたんだった。でっかいサイン」
P「……」
P「……機種変する前の話だったか」
P「どこにやったんだっけ、前の携帯……」
P「……」
・・・
『ウイスキーが♪ お好きでしょう♪』
P「お酒か」
P「社長が好きなのはこれだったよな。小鳥さんもよく飲んでた」
P「ああ、でもあずささんにキツい酒は飲ませられないか」
P「じゃあ、こっちかな。こっちの甘いお酒の方が……」
P「……」
P「……いや。どうせ忙しくてみんなで飲む機会なんて無いか」
P「家にビールがあるし、今日はそれでいいよな……」
P「……」
・・・
P「久しぶりに本でも買って帰ろうかな」
P「……真が表紙になってる」
P「女性誌だけど。まあいいか」
P「……」
P「可愛く撮れてる。流石プロのスタイリストは……」
P「いや、違うよな。真だって最近はもっと女の子らしくなってきたんだ」
P「自覚は無いんだろうけど」
P「……俺がすることはなさそうだ。こう言うのは女の子だけでやらせた方が上手くいく」
P「……」
・・・
P「響のコラムもあるんだっけ」
P「……」
P「初めの頃は文章でも訛っててよく怒られてたよな」
P「……怖い編集者さんだった」
P「でも、そのお陰で仕事の幅も広がった……」
P「……完璧っていうのも。もう強がりじゃないんだよな」
P「ほんと。よく出来た子だよ」
P「……」
・・・
P「……千早の写真集もある」
P「よく笑えてる」
P「宣材写真ですらまともに笑えなかったのに」
P「……本当に楽しそうに笑うようになった」
P「よかった……」
P「……」
P「もう、心配いらないな」
P「……」
P「心配、いらないんだよな……」
・・・
P「たまには自分で晩ごはんを作ろうか」
P「……ああ、そうだ」
P「やよいに教えてもらった奴でも作ってみよう」
P「……それか、材料だけ買ってやよいの家にお邪魔するのも」
P「……」
P「……やめておこう。本当に邪魔になってしまうから」
P「肉を買って行ってもお節介にもなりやしない」
P「家族の時間は大切にしてあげないと」
P「……」
・・・
P「アクセサリーか。来るたびに美希にせがまれてたっけ」
P「これとか、似合いそうだな。たまには……」
P「……ん」
P「……星井美希デザイン」
P「ああ、雑誌の取材ついでに自分でとってきた仕事だっけ」
P「だったら、当然向こうから貰ってるか。俺が買ってやるまでもなく……」
P「……」
P「……前に来た時、何か買ってあげれば良かったのかな」
P「どうなんだろう」
・・・
P「……」
P「すごいな。伊織があんなに大きな広告になってる」
P「服のせいかな。随分大人っぽく見える」
P「……服のせいだよな」
P「……どうなんだろう。最近大人しいし。竜宮でやってるうちに色々と思うところもあるのかも」
P「久しぶりにオレンジジュースでも買ってやるか……」
P「……」
P「銘柄、どれだっけ」
P「……忘れちゃったよ。買わないうちに」
P「……」
・・・
P「そろそろ帰るか。なんだかひどく疲れた」
P「……甘い物でも買おう」
P「……これ」
P「春香のクッキーか。製菓会社の企画もの」
P「……」
P「春香といっしょにレシピを作ったっけ」
P「……これにしよう」
P「……」
P「……懐かしい味がするかもしれない」
P「……」
・・・
・・
・
P(765のみんなは今や文句のつけようもなくらいに売れっ子集団だ)
P(テレビをつければそこにいる。雑誌を開けばそこにいる。街を歩けばそこにいる)
P(いつでも会えるアイドル達)
P(でも)
P(でも俺がいつでも会えていたアイドル達は……)
P(……もう、どこにに行っても会えない)
・
・・
・・・
P「ただいま戻りました……」
律子「あっ、プロデューサー!」
律子「もう。どこに行ってたんですか? 事務所をほっぽり出して」
P「律子。戻ってたのか」
P「ペンのインクが切れたから。買いに行ってただけだよ」
律子「へえ、で、そのペンはどこに?」
P「……あ」
律子「プロデューサー……」
伊織「もう、しっかりしてよね」
亜美「そーだよ兄ちゃーん! そうやってボケっとしてると」
真美「こんな風に携帯も取られちゃうかも!」
P「あ、返せよ」
亜美「うあうあー! これチョ→新しい機種じゃん!」
真美「これはイタズラせずにはいられませんなあ!」
P「おい、お前ら……」
伊織「にひひっ、間抜けな方が悪いのよっ」
P「……」
伊織「……何よ、ニヤついて」
P「……いいや」
伊織「?」
響「もしかしてプロデューサー、疲れてる?」
P「歩いたからな。でもなんとも無いよ」
響「……本当?」
P「……本当だって」
やよい「プロデューサー! 元気がないなら無理しちゃダメですよ!」
やよい「いつでも私の家に来てください! 美味しいごはん作ってあげますよ!」
P「邪魔になるだろ? 気にする事無い」
やよい「そんなことありませんよぉ! 弟達だって会いたがってます」
P「……ありがとうな」
真「元気がないなら、逆に体を動かすのも一つですよ!」
真「営業周りで歩いてるからxっつて、運動したことにはなりませんしね」
P「はは、そうだな」
雪歩「でも、やっぱりゆっくりするのが一番ですよ」
雪歩「お茶、どうぞ」
P「ああ、ありがとう……」
高木「みんな、ただいま」
小鳥「プロデューサーさん! お土産にいいお酒貰って来ましたよ!」
あずさ「あらあら小鳥さん、みんなの前でお酒のお話はちょっと……」
P「あははは……」
× 営業周りで歩いてるからxっつて
○ 営業周りで歩いてるからって
美希「ハニー!」
P「うわっ、と……!」
美希「久しぶりのハニーなの……」
P「おい、お茶がこぼれるだろ」
美希「それでもハニーならなんとかしてくれるはず!」
P「あのなあ……」
貴音「美希、あまり迷惑をかけてはなりませんよ」
美希「ぶー……」
P「助かったよ」
貴音「それはそれは」
P「……貴音、少し近くないか?」
貴音「約束を守らぬ方への戒めですよ。ずっとお待ちしていましたのに」
P「約束って……。ああ、ラーメン……」
P「今更過ぎると思って遠慮してたんだ」
貴音「今更なことなどありません。今からでも、いつでもいいのです」
P「……悪かった」
千早「プロデューサー……」
P「ああ、千早。あの写真集、よかったよ」
千早「えっ! あ、あれを見たんですか……」
P「うん。笑顔がよかった」
千早「笑顔、ですか」
千早「……」
P「そうそう。そんな感じの」
千早「……からかわないでください」
P「そんなつもりはないよ」
P「……」
・・・
・・
・
春香「プロデューサーさん!」
P「春香」
春香「ちょっと、疲れてます?」
P「静かな事務所に慣れちゃったから」
P「こう騒がしいと、少しな」
春香「でも、嬉しそうです」
P「……そう?」
春香「はい!」
P「そっか。そうかもな」
P「……いや。その通りだ。騒がしい方が、いい」
P「それで、どうして今日はみんな揃ってるんだ?」
春香「それは……」
春香「……あの、プロデューサーさん」
P「うん?」
春香「渡したいものがあるんです」
P「俺に?」
春香「はい」
春香「これ……、万年筆なんですけど」
春香「プロデューサーさん、いつもペンのインク切らしてますから」
春香「ボールペンだと手も疲れて大変だろうって」
春香「みんなで一緒に選んだんですよ!」
P「……」
春香「だから、これはみんなからのプレゼントです!」
春香「えへへ……」
「いつも私達のためにありがとうございます!!」
P「……」
春香「プロデューサーさん?」
P「……ありがとう」
P「ありがとう……大事にするよ」
P「大事に……」
春香「プロデューサーさん?」
春香「……泣いてるんですか?」
P「……」
P「……」
医師「16時21分、ご臨終です…」
小鳥「そんなっ…!」
高木「惜しい人物をなくした…」
P(いつでも会えるわけじゃない)
P(けど)
P(……いつまでも一緒だ)
おわり
以上です
読んでくれた人と支援保守してくれた人に感謝
オチが弱くて申し訳ない……
SSも終わったということで小鳥さんはお持ち帰りしますね
乙
前書いた作品とかあるの?
>>67
先週書いたやつなら…
春香「プロデューサーさん! カーナビですよ! カーナビ!」
真「冬が来るまで」
P「さらにとりとめのない話」
前のSSまで読んでくださってありがとうございます
次も頑張ります
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