あずさ「惚れ薬ですか?」 (144)

あずさ「うんうん。私もそういうものに憧れた時もあったわね」

あずさ「えっ?本当にあるんですか?」

あずさ「あらあら~。もうっ、プロデューサーさん。私をからかってませんか?」

あずさ「これが...?惚れ薬?迷いが...消える薬?」

あずさ「やっぱり、運命の人に飲ませる...んでしょうか?え?私が飲むんですか?」

あずさ「はい...じゃあ...いただきます...」

あずさ「...」

変な夢だった。
プロデューサーさんが、私に惚れ薬を飲ませる夢。

あずさ「なんてロマンチックな夢...」

自分はまだまだ乙女でいていいってことでしょうか?

あずさ「あっ...いけない、もうこんな時間」

今日は午前中からプロデューサーさんと一緒に撮影のお仕事。

あずさ「ふふっ...プロデューサーさん、また私が道に迷ったら来てくれるかしら?」

私が道に迷った時、プロデューサーさんはすぐに来てくれる。
それがとても嬉しい。

あずさ「迷惑かけてるのはわかってるけど、迷子になるとつい嬉しくなっちゃうのよね」

あずさ「プロデューサーさんが、来てくれるから」

あずさ「別に狙ってるわけじゃなくて...」

仕事としては迷子にならないようにしないといけないんだけど、迷子になればプロデューサーさんに会えるから直したくない...

あずさ「って、私ったら朝から何を考えて...」

あずさ「とにかく、早く出ましょう。遅刻するといけないわ」

あずさ「あら?」

あずさ「あらあら...」

自分でも驚いている。

あずさ「まさか、事務所までまっすぐ来れるなんて...」

そう。毎朝迷子になる道なのに、今朝は迷わずに来れたのだ。

あずさ「...うんっ、いいことあるかも?」

...

あずさ「おはようございます~」

P「おはよう...あれ?あずささん?今朝はずいぶん早いですね」

あずさ「ええ。いつも通りに出たはずなんですが...」

P「いつも通り?ってことは、いつもこんなに早く?」

あずさ「はい。私、事務所に来るまでに迷子になるんです。それで、迷子になってもいいように早く出るようになって」

P「なるほど...迷子前提で朝起きるわけですか...」

あずさ「お恥ずかしいです」

P「ん、ということは今日は迷子に?」

あずさ「ええ!ならなかったんです!」エッヘン

P(おおう、でかい胸をさらに張って...)

P「すごいですね。迷子、なおるといいですね」

あずさ「やっぱり、プロデューサーさんとしてはなおってほしいんでしょうか?」

P「うーん...そうですねぇ、俺としても、探すのはなかなか疲れますよ?」

あずさ「えっ...」

ドキリとした。
私の迷子を、この人はどう思っているだろう。
私は嬉しい。あなたに会えるから。
けどもしあなたが、迷惑と思っていたら...

P「あっ!いえいえ、迷惑という意味ではなくて、仕事に影響があると困るということです。ごめんなさい。誤解させるような言い方して」

もう一度ドキリとした。
まるで、私の心を読んだような言い方。

あずさ「そう、ですよね。仕事に影響があると困りますし...」

P「ええ。ですから、なおることは大いに賛成ですよ」

あずさ「でも、事務所までの道を覚えただけかもしれませんね?」

P「ようやく、ですか...ははは」

あずさ「まだ知らないところでは迷うかもしれませんよ?その時は、ご迷惑でなければ助けてくれますか?」

P「はい。いつでも呼んで下さいね」

プロデューサーさん、優しい人。
私の元にかけつけて、手を取ってくれて、迷いを正しく導いてくれる...

あずさ(例えて言うなら...王子様、かしら?)

つい顔が赤くなる。

P「でも」

あずさ「え?」

P「本当に、迷惑ではないですからね。道に迷って、助けを求めてくるのがあずささんらしいというか...いや、これだと言い方が悪いかな。とにかく、迷ったら遠慮なく呼んでくださいね」

プロデューサーさん。
本当に。本当に、優しい人。

あずさ「はい。ありがとうございます」

P「それに...」

あずさ「それに?」

P「あずささんを迎えに行くと、不思議とその帰りに隠れたお店とか見つけちゃうんですよね」

P「なんていうか、怪我の功名?」

あら...言われてみれば確かにそうかも。

あずさ「うふふ...この間行ったカフェ、また行きましょうか?」

P「ええ。一緒に行きましょうか。あずささん、一人だとあそこまで行けないでしょう?」

あずさ「あら...うーん、そうかもしれないですね」

この人の言葉は、私をドキドキさせてくれる。
迎えに行くとか、いつでも呼んでとか、一緒に行こうとか。
考えすぎかしら?

あずさ「...あらあら。年末の占い、一位だわ~」

あずさ「えーと...素直になれて、進むべき道がわかる...?」

(あずさ「迷いが...消える薬?」)

あら...そういえば、そんな夢を見たんだっけ。
今朝たまたま、迷わずに事務所まで来ることができた。それだけでも、とても大きな進歩だと思う。

...

P「よし、あずささん。そろそろ行きましょうか」

あずさ「はい」

...

車内

P「ん?あずささん、それは...地図ですか?」

あずさ「はい。お邪魔する建物の地図を事前に見ておくんです。そうすると、建物の中で迷わないような気がして」

P「へぇー。効果はどれほど?」

あずさ「全然だめ、ですね~。むしろ頭の中でこんがらがっちゃいます」

P「あはは...じゃあ、むしろ見ない方がいいんじゃないですか?」

あずさ「うーん...見ておくといいような気はするんですけど...」

P「まぁ、迷ったら呼んでください!かっ飛んで行きますから」

それは、私のためかしら?それとも仕事のため?

P「そろそろですね。今日は撮影とインタビューですよ」

迷わないように手をつないでてください、とか言ってしまおうか?

P「あずささん?」

あずさ「えっ、あら、ごめんなさい。ちょっとボーッとしてて...」

P「今日は撮影とインタビューですよ」

あずさ「はい。がんばります~」

スタッフ「765プロのプロデューサーさんと、三浦あずささんですね。スタジオは3階です」

P「はい。よろしくお願いします」

スタッフ「それで、歩きながらですみませんけれども、出演に一部変更がありまして。プロデューサーさんに許可を...」

P「はい...」

スタスタ

...

スタッフ「だいたいそんな感じです。スタジオはここですね」

P「はい...ってあずささん!」

あずさ「はい?」

P「あ、あれ?」

あずさ「どうしたんですか?プロデューサーさん」

P「え、いやぁスタッフの方と話をしながら来たから、あずささん迷子になってるかなと思って...」

あずさ「あら...言われてみれば、今まではこの距離でも迷子になってたのに...」

P「今日は調子が良さそうですね」

あずさ「うふふ。この調子で収録もがんばってきます」

P「はい。これが終わったらインタビューですから、迎えに来ますね!」

...

収録オツカレッシター

P「あれ...?あずささんは?」

スタッフ「三浦あずささんですか?さっき出て行きましたよ?」

P「いつも通り、俺を待たずに出て行ったか...こりゃ迷子になってるな...」

P「あずささーん!どこですかー!」

...

P「うーん...探してるけどいないな...インタビュー始まるまでそんなに時間がなくなってきたぞ...」

P「仕方ない。インタビューは少し遅れると伝えに行こう」

インタビュー収録スタジオ

ガチャ
P「すみません!あの...」

あずさ「あら?」

P「あれ?」

P「あずささん?まさかさっきの収録スタジオから直接?」

あずさ「あ、はい~」

P「迎えに行くって言ったじゃないですか...」

あずさ「あっ!ああ、ごめんなさい」

P「いえいえ。間に合ったならいいんですよ...」

P(しかし、さっきのスタジオから結構離れてるのに...よく来れたな...?まさか方向音痴、なおってる?)

スタッフ「じゃあ、インタビュー始めましょうか」

あずさ「はい。よろしくお願いします~」

...

オツカレッシター

あずさ「みなさんお疲れ様です~」

P「さて、あずささん。帰りましょうか」

あずさ「はい~」

P「で、あずささん。駐車場まで行けますか?」

あずさ「あら?うーん...こっちでしょうか?」

P「ちょっと、駐車場まで歩いてみてください。ついていきますから」

あずさ「やってみますね!」

...

P「ついた...」

あずさ「あらあら~今日は本当に調子がいいわ~」

P「ちょっ...とすみません」

ピト

あずさ「!?」

あずさ「あ、あの...プロデューサーさん?おでこに手を当てて...どうしたんですか?///」

P「いや...熱でもあるのかなぁって思って...」

あずさ「もう!プロデューサーさん。私が道を間違えないことがそんなに珍しいですか?」

P「これ程までに正確だと...逆に心配になりますよ」

あずさ「うふふ。そういう日もあるってことかしら?」

次の日

あずさ「あらあらあら~?」

P「あずささん...」

小鳥「計測タイム、24分。このタイムはつまり...」

律子「道に迷わずに、スーパーまで行って帰ってきたというの...!?」

P「あずささん!なおったんですよ!方向音痴が!」

あずさ「あ、あらあら~?そうなのかしら?」

小鳥「下のコンビニにも行けなかったあずささんが...!」ウルウル

P「よし、じゃあ午後の現場にも歩いて行きましょう!ついていきますから!」

...

律子「それで、どうなんです?あずささん」

P「ああ。ここ一週間見ていたが、完璧だ。なおったんだよ。方向音痴が」

律子「ふぅ...一安心、ってとこですか?」

P「うーん...まぁ、ひょろひょろ変なところに行かなくなったので嬉しいですかな?」

律子「今後の近場の仕事なら、一人で大丈夫でしょうか?」

P「この調子なら大丈夫だ」

律子「そうですか。なら今後は、できるだけ一人で行けるようにしてもらいましょうか」

P「そうですねぇ...」

カフェ アズーサ

あずさ「あらあら~。方向音痴、本当になおったのかも...」

あれからずっと、迷わずに事務所まで来れるようになっている。
お気に入りのカフェにだって迷わない。
もちろん、仕事の時に迷わないことが何より嬉しい。

あずさ「でも、今日も一人、か...」

いつもなら、助けに来たプロデューサーさんと飲むお茶。
迷ったを半分口実にして、プロデューサーさんとお茶を飲むことが楽しみだった。

あずさ「うーん、素直に一緒に行きましょう?って誘えばいいのに...」

あずさ「なかなか、恥ずかしくて...」

自分が迷った時、走って助けに来てくれる。あの感覚が、好きだったのに。

あずさ「方向音痴、なおってよかったのかしら...?」

つい、そう思ってしまう。

...

あずさ「ただいま戻りました」

P「喫茶店から迷わずに来れましたか?」

あずさ「はい~」

律子「すごいじゃないですか!すっかりなおったんですね?」

あずさ「そういうこと、なんでしょうか?」

P「これであずささんの送迎が楽になる...」

律子「こちらとしては、ものすごくありがたい...」

数日後。

律子「あずささん!竜宮はスタジオ5です!一人で行けますか?」

あずさ「はい。多分大丈夫です」

...

P「ごめんなさいあずささん...ここまで、一人でお願いできますか?」

あずさ「わかりました~」

...

あずさ「...最近、送り迎えが少なくなってるような気がするわ...」

あずさ「一人で行けるようになって...任されているということかしら...」

あずさ「はぁ...プロデューサーさんに送ってもらいたいなぁ」

亜美「えっ?兄ちゃんの送り迎え?」

あずさ「ええ。どのくらいあるのかなーって思って」

亜美「そうだなぁ...遠いところならもちろん送ってくれるけど、近場なら歩いて行ってくれーとか、タクシー呼ぶぞーとかあるよ」

あずさ「あら、そうだったの」

亜美「そうだよー。あずさお姉ちゃんは迷子を掲げて毎日兄ちゃんに送り迎え...羨ましいことですなぁ」

あずさ「少し前までは、そうだったわ~」

亜美「...ああ、そっか。最近、方向音痴なおったって言ってたもんね?」

亜美「まぁ、亜美の兄ちゃん送り迎えはそんな感じだよ!」

あずさ「なぁんだ。私だけじゃなかったのね。みんな、一人で行ったり、タクシー使ったりして」

あずさ「私、少し贅沢だったかしら...」

でも、プロデューサーさんに送り迎えしてほしい。楽をしたいわけではない。

迷子になって、プロデューサーさんと歩いて、知らないカフェでも発見して。
そんな毎日の休憩が、すごく楽しかった。

前々から方向音痴をなおさなきゃとは思っていたけど、いざなおると少し寂しい。

あずさ「あの、プロデューサーさん」

P「なんですか?」

あずさ「午後の撮影...送って行ってもらえませんか?」

P「ああ、すみません。別の仕事入ってて...近場だから、一人で行ってもらおうと思ってたんですけど」

あずさ「あ...あら、そういうこと、ですか」

P「?...あずささん?何か?」

あずさ「あっ、いえいえ~大丈夫です~」

その日の午後も、迷うことなく現場についた。
でも、カメラマンさんに笑顔が少し硬いと怒られちゃった。

...

帰り道。

あずさ「...わざと、迷ったって言えば...プロデューサーさん...」

あずさ「...いけない。そういうこと、しちゃダメ...」

ピッピッ

P『もしもし?あずささん?どうかしましたか?』

あずさ「あっ...えーっと...」

P『もしかして、道に迷いました?』

あずさ「...」

P『あずささん?』

あずさ「...いえ、迷ってはいません」

あずさ「...ただ、少しだけお茶しませんか?」

P『今から、ですか?』

あずさ「...ご迷惑でなければ」

P『......ごめんなさい。この後、用事が...』

ピッ

あずさ「そう...よね。プロデューサーさんだって忙しいし...」

あずさ「私だけのプロデューサーさんじゃないんだから」

私だけのプロデューサーさんだったら、どんなに嬉しいことか。
毎日仕事に一緒に行って、一緒にお茶して、一緒に帰って...
って、最後のは結婚してからかな...

あずさ「あら...いけない。私ったら、また何を考えて...」

今となっては、道が分かることが憎い。

あずさ「...少しだけ、嘘、ついちゃおうかな...」

次の日

あずさ「すみませんプロデューサーさん。久しぶりに道に迷っちゃったみたいで...」

P『ええっ!本当に久しぶりですね...わかりました。今どこです?』

あずさ「はい~。えーと、近くにカフェアズーサがあります~」

P『.........わかりました。今すぐ行きますので、動かずに待っててください』

嘘をついてしまった。
気分としてはロミオとジュリエットだったのだが、電話を切ってから罪悪感が襲ってきた。

あずさ「ちょっとだけ。ちょっとだけ、許して...」

彼とカフェでのんびりしたい。
少しだけ嘘をついて、少しだけいい時間を過ごしたかった。

...

P「いやぁ、あずささん、方向音痴なおったと思ってたんですけどねぇ」

あずさ「うーん...急にわかんなくなっちゃって...困りました」

P「そういえば...今日の撮影は...」

あずさ「ええ。監督さんが...」

...

P「さぁ。帰りましょうかあずささん」

あずさ「はい。すみませんプロデューサーさん。迎えに来てお茶までご一緒してもらって」

P「...いえ、いいんですよ」

...

あずさ「ただいま戻りました~」

P「ただいま」

後日

...

あずさ「うふふ...もう一度くらい、お茶に誘ってもいいかしら...」

あずさ「あ、プロデューサーさん?えーと...」

...

P「お茶ですか?」

あずさ「ええ。すぐそこに喫茶店が...」

P「すみません。今日はダメです」

あずさ「えっ...」

P「すみません。帰りましょう。あずささん」

あずさ「は...はい...」

...

なぜだろう。今のプロデューサーさん、少し怖かった。

自分を叱るような、そんな声をしていた。
考えすぎなのかもしれない。

また迷ったと嘘をついて、たまたま断られた。きっと、ただそれだけのはず...

あずさ「...」

事務所の前に着いた。

P「...やっぱり、あずささん。迷ってないじゃないですか」

あずさ「...えっ?」

心臓が止まるかと思った。

P「ほら、俺はずっとあずささんの後ろを歩いてきたんですよ。気付きませんでしたか?」

あずさ「あ...」

考え事をしていて、全く気がつかなかった。

P「いえ。これでどうというわけではありません。さぁ、あずささん」

私は、事務所に入るプロデューサーさんの背中を見つめるしかできなかった。

...

あれから、嘘はついてない。
プロデューサーさんに見破られただろうか。面倒な女だと思われてないだろうか。
それが怖くて、プロデューサーさんにろくに話しかけてない。
ましてや、お茶の誘いなどできるはずがない。

あずさ「...はぁ」

真美「どったの?調子悪そうだよ?」

あずさ「あら...?あ、ううん。なんでもないのよ?」

真美「そっかなー?ま、無理しちゃダメだよ!」

あずさ「ええ。ありがとう真美ちゃん」

少し雑誌でも読もうと立ち上がると、プロデューサーさんと目があってしまった。

P「...」

あずさ「...」

目を、そらしてしまった。

...

あずさ「...」

あれから、元気が出ない。仕事も少しだけ、スランプかもしれない。

あずさ(でも、どうしたらいいのかしら...)

P「あずささん」

あずさ「っ、はっ、はい」

P「...少し、屋上に行きませんか?」

あずさ「はい...」

何の用だろうか。何を言われるんだろうか。
きっと決まってる。仕事のこと。

...

P「ずいぶん、寒くなりましたね」

あずさ「...はい」

P「あの、この前のことなんですけど」

あずさ「!」

この前のこと。この前のことだ。もう、プロデューサーさんに言われる前に謝ろう。

あずさ「あ、あの...プロデューサーさん。この間は、本当にごめんなさい...」

P「え?あ、いや、その事じゃなくて...」

あずさ「え?」

その事じゃない?

P「その、最近あずささん、元気ないみたいで。俺のせいもあると思って、謝ろうと思いまして」

どうして?どうしてあなたが謝るの?
自分勝手で悪いのは全部、私なのに。

P「なんていうか、あずささん。最近迷っていませんか?」

あずさ「最近...?」

P「道に、という意味ではなく、自分に、です」

あずさ「...」

P「俺、言ったじゃあありませんか。迷ったら、呼んでくれって」

あずさ「!」

P「何かに迷ったら、遠慮なく呼んでくださいよ。プロデューサーなんですから」

P「最近のあずささんは、道に迷わなくなりましたよね。あれで、必然的に会う時間、話す時間ってのが少なくなって...」

そうだ。
そのせいで、私はつまらない嘘を。

P「...だから、俺、寂しかったんです」

あずさ「...え?」

P「楽しかったんです。あずささんを迎えに行って、お茶することが」

P「...ほら、少し前に前に俺をお茶に誘いましたよね?」

P「あれ、実は迷子にはなってなかったんじゃないですか?」

あずさ「...」コクン

P「あの時、よく考えてみれば、やっぱりあずささんもちょっぴり休憩がしたかったんじゃないかって...」

P「でも最近は仕事も多くて...」

あずさ「やっぱり、プロデューサーさん。優しい人ですね」

P「...」

あずさ「そうです。私、嘘つきました。ごめんなさい」

正直に謝ると同時に、涙が出てきた。

あずさ「私、プロデューサーさんとお茶、一緒にいたくて...嘘を...」

あずさ「プロデューサーさんの言うとおりなんです。最近、方向音痴がなおって、前みたいにプロデューサーさんと会える時間が減って...」

あずさ「だから、嘘をついてでも来て欲しかったんです」

P「...でもほら、竜宮のみんなとか、律子とかいますし...」

違う。
気付いて。
もどかしくて、つい。

あずさ「プロデューサーさんじゃないと!」

あずさ「あなたが、いいんです」

言ってしまった。

P「...」

あずさ「...」

急に耳が熱くなった。

あずさ「ご、ごめんなさい。私ったら何を...」

あずさ「ごめんなさいプロデューサーさん。私...」

P「...ごめんなさい。あずささん」

どうして謝るの?
あなたはなにも悪くない...

P「...俺も、全く同じ気持ちだったんです」

あずさ「...え?」

P「でも、あの日まで自分がそういう気持ちだって自分で気がついてなくて...」

あずさ「あ、あの...どういう...」

P「だから、俺も、あずささんと一緒にいたいってことです」

嘘。
プロデューサーさん、気を使って嘘を言っちゃダメですよ。

あずさ「え...あ...」

P「あずささん。今はハッキリと言うことはできませんけど...」

そう言うと、彼はそっと私の手を取って。

P「もし貴女がこれから何かで迷った時、俺を呼んでもらえますか?」

あずさ「ぁ...」

声が全く出ない。
顔も耳も凄まじく熱い。

P「さ、さぁ、戻りましょうか...」

彼の手が私の手から離れようとする時、私は手を握り返した。
そして、力強く。

あずさ「プロデューサーさん。私は...私は、あなたが好きです。好きなんです」

P「...はい」

あずさ「お、お返事は...」

P「今は、お返事できません」

あずさ「...むぅ、まだ迷ってるんですか?」

P「うーん...あずささんも、まだアイドルですし...」

もちろん、私もお返事は待ちますよ?
今はまだ、アイドルとプロデューサーだから。

あずさ「...でも、プロデューサーさん」

P「はい?」

あずさ「次言う時は、迷わせませんよ?」

そう言って腕に抱きつくと、彼は少しだけ微笑んで。

P「ええ。迷う気もありませんよ」

私に言った。



三浦あずさの場合。おわり

貴音「ふむ、惚れ薬...ですか」

貴音「存じております。わたくしの古都にも伝説の秘薬として伝えられて...」

貴音「え?これが、惚れ薬?」

貴音「まさか。秘薬がこのような所に...」

貴音「そんな子供だまし...」

貴音「しかし...」


...

貴音「あなた様、お茶です」

P「おお貴音か。お前がお茶とは珍しい」

貴音「これはわたくしの都より送られてきたお茶ですので、是非あなた様にと」

P「なるほど...ふむ、ゴーヤ茶みたいな味だな...」

貴音(響のゴーヤ茶、持ってきて正解でした...)

P「うん。おいしかったよ。ありがとう」

貴音「いえ。あなた様の活力になればと思い」

貴音(飲ませてしまった...いえ、わたくしはあのような子供だましを信じているわけではなく...)

五分後

P「...」カタカタ

貴音(...)ソワソワ

貴音(本当に、聞いているのでしょうか...)ソワソワ

響「はいさ...おはようだぞー!」

P「おう響。おはよう」

貴音「響。少しこちらへ」

響「貴音もはいさい!」

...

貴音「響、惚れ薬を知っていますか?」

響「惚れ、薬?ああ...あの本とかでよく見るやつか?」

貴音「はい。飲ませた殿方は「めろめろ」になるという例の...」

響「あんなの、あるわけないさー。空想上のモノだよね!」

貴音「確かに。簡単に人の心を動かすもの...到底あるとは思えません」

響「それがどうしたんだ?」

貴音「もし」

響「ん?」

貴音「もし、あるとしたら...響ならどのように使いますか?」

響「うーん、もしあるとしたらか...やっぱり、好きな人に使うべきだな!」

貴音「好きな人。わたくしもそう思います」

貴音「ありがとうございます。わたくしの行動は間違っていないようです」

響「えっ?貴音?あ、行っちゃった」

...

P「...」

貴音「...」

P「...ん?お?貴音、どうした?」

貴音「あっ...いえ、何でもありません」

P「ん...そうか」

P「...」

貴音「...」ソワソワ

貴音(先ほどのお茶...効いていればそろそろ...)

P「あ、あの...貴音さん...後ろでフワフワされても...どうかしましたか?」

貴音「ふわふわ?いえ、その...先ほどのお茶、いかがでしたか?」

P「ああ、さっきのお茶か。すごくおいしかったよ」

貴音「それだけ、ですか?」

P「えっ?」

貴音「っ!ち、違。あ、いえ。違うのです...」

P「貴音?」

貴音「いえ...なんでも、ありません」

P「...」スッ

ナデナデ

貴音「あっ」

P「美味しかったよ。ありがとう」

貴音「え、えへ...っ!ど、どういたしましてでございます!」

P「日本語おかしいぞ...」

...

貴音「ふぅ...わたくしとしたことが...少々取り乱してしまいました」

貴音「惚れ薬、効いているにしろいないにしろ、なでていただいたことはこの上なく幸福」

貴音「それだけでも、価値があったというもの...」

バサッ

貴音「...む、雑誌が落...」

『気になる男性を振り向かせろ!恋の大特集!』

貴音「...なるほど...」

貴音「今のわたくしは振り向くのを待っている状況」

貴音「ですがそれだけでは足りぬ、と申しますか」

貴音「それも当然のこと...惚れ薬、他力本願ではいずれつまづくと言うもの」ペラ

貴音「たまにはこのような書物もいいものです。自分にない考えを与えて...」ペラ

貴音「!...これは...」

『いつもと口調を変えてみよう!ちょっとした違いに彼はドキドキ!?』

貴音「...」

P「...」

貴音「あ、あの...」

P「ん?あ、貴音か。ヒマなのか?」

貴音「...う、うん。暇だよ」

P「!?!!?!???!?」

貴音「れ、れっすんまで時間あり...あって、暇...と言う、ていうか...何して、るのかなって...」

P「た、貴音?どうした?」

貴音「...だめです。やはりこのような喋り方は...」トボトボ

P「貴音...?なんだ?新しい役作りか...?」

貴音「...適材適所。普段との差に戸惑うとありますが、普段と差がありすぎるのは不自然...」

貴音「しかし自ら動かねば何も動きません。次は...」

『ツンツンしたあとデレろ!おでこを出せ!』

貴音「成る程...つん、でれ...」


貴音「あなた様。もうすぐお昼になります。そろそろ休憩されては?」

P「ん?おお、もうそんな時間か。ありがとな貴音。気を使ってくれて」

貴音「別に、あなたのためではありませんから...」テレ

P「ん?」

P「貴音。ラーメン食いに行くか?」

貴音「...いえ、わたくしは先約がありますので...」

P「ああ、そうか。じゃあ一人で行くかな...」

貴音「おや、あなた様、お一人で?」

P「ん?まぁ、一人だな」

貴音「そうですか...では、わたくしもついていきましょう。別に、あなた様が寂しそうだからとかそういう意図はありません」

P「お、おう」

...

貴音「ふぅ、にんにくあぶらましましからめ...よき心地でした」

貴音「しかし、つんでれの効果もさほど感じられません...」

『あっ、あんたのためじゃないんだからね!』

貴音「...このように、先ほどの軽い言葉と組み合わせると効果がある、ということなのでしょうか...」

...

P「...」書類ガサガサ

貴音「あっ、あの、ぷろでゅうさぁー」

P「んえ?」

貴音「これ、その...ちょこ、作ったんだけど...」

P「今日はどうした貴音...」

貴音「べっ!べつにあんたのために作ったわけじゃなくて。たまたまあまったから」

P「貴音さん。棒読みですよ貴音さん」

『手作りお菓子にキュンとくる!』

貴音「ふむ...言葉、つんでれ、手作り菓子...三つを組み合わせても特に何もありませんでした」

貴音「やはりぷろでゅうさぁはわたくしになど興味が...」

貴音「いえ。ここで諦めてはいけません。継続は力なり」

『気になる人のメルアドゲット!毎日メールしよう!』

貴音「......ふむ...」

...

P「うーん...貴音の企画にあんなのあったかな...?」

貴音「あなた様」

P「お、おう。今度はなんだ?」

貴音「めぇるあどれすを教えてほしいのです」

P「メールアドレス?貴音、携帯持ってるのか?」

貴音「めぇるあどれすとは携帯電話のことですか?」

P「えーと...携帯ってのは...」

...

貴音「なんと便利な...」

P「携帯持ってなかったのか...今までどうやって連絡を?」

貴音「とっぷしーくれっとです」

P「ですよね」

P「じゃあ、携帯買いにいくか?必要か?」

貴音「必要と思ったことはありませんが、便利とあらば持ってみたいものです」

P「よし、買いに行こう」

貴音「はい」

『気になる人を買い物に誘え!』

...

貴音「どれを選べばよいのやら」

P「うーん、中身は同じようなものだから見た目で決めればいいと思うぞ」

貴音「では、これにしましょう」

P「ん?それは...俺のと同じやつか?」

貴音「はい」

P「それでいいのか?」

貴音「はい。おそろい、です」

P「でもその携帯、電話とメール以外できないぞ?」

貴音「多くを持つものは失うものも多いものですよ?」

P「うん...なんだかよくわからないけど貴音がいいと言うなら」

...

貴音「なるほど。使い方はわかりました」

貴音「めぇるあどれすも記憶させました。次はいよいよめぇるを...」

『恋のメール術100連発!』

貴音「ふむ」

...

ピロリーン

P「ん?貴音か」

『こんにちは!貴音で~す☆Pさん登録しなきゃ、めっ!だぞ☆』

P「なんだこれ」

P「貴音、なんだこれは」

貴音「めえるです」

P「うん。そうなんだけど、何この内容」

貴音「だめ...でしたか?」

P「うーん...だめじゃないけど...最近どうしたのかなあって思って...」

貴音「変でしょうか?」

P「いやいや、変ではない...うーん、ま、いいや。これからは連絡はそれに送るからな?」

貴音「はい。お待ちしております」

...

貴音「...変に思われてしまったでしょうか...」

『気になる人が「いつもと違う」と感じてるかも!?でも大丈夫!あなたのことが気になってる証拠!』

貴音「ふむ!」

貴音「...ふむ!」

貴音「次です。めえるの次は...」

『デコメにチャレンジ!』

貴音「でこめ?」

貴音「でこめ...でこめは...」

貴音「でこめは...これではできない...」シュン

...

貴音「あ、あなた様...」

P「ん?今度は...手紙か?」

貴音「はい。めぇるです」

P「...?どれどれ」

P「...なんだこの手書きの...これはデコメか...」

貴音「はい。わたくしの携帯電話ではでこめたるものができない様子。ならばと思い、手書きで...」

P「努力は買おう。ありがとう」

貴音「なかなかの評価でした」

貴音「さて、次は...」

『メールを何日か続けたら、いよいよ行動!お昼ご飯に誘ってみよう!』

貴音「なんと、何日か続けないといけないと...」

貴音「いいえ。待つことはできません!」

貴音「あなた様!お昼ご飯にらぁめんでも!」

P「もう4時だけど...」

貴音「あ...」シュン

P「それにさっきもラーメン食べたぞ...」

貴音「うぅ...」

亜美真美「「ただいまー!」」

P「おう、おかえり」

亜美「おっ!お姫ちん!」

真美「ありゃ?真美たちの雑誌読んでる?」

貴音「はい」

亜美「気になる男性を振り向かせろ、恋の大特集?」

真美「んっふっふ~、お姫ちんも恋かな?」

貴音「そう...これは紛れもなく恋!」

亜美「ありゃ、隠さないね」

真美「お姫ちんは前から隠さない人だよね」

貴音「それで、これを順に実践しているのですが...いまいち効果が感じられません」

真美「なるほどねぇ」

亜美「ねぇお姫ちん、それって兄ちゃんに?」コソコソ

貴音「さすが双海亜美...鋭い」コソコソ

真美「そりゃ見てれば気がつくけどね...お姫ちんわかりやすいし」コソコソ

貴音「して、どうすればいいでしょうか?」コソコソ

真美「ふふん。真美に任せんしゃい。お姫ちん耳かして!」

真美「こうすればいい...」コソコソ

貴音「ひゃあ、耳がくすぐったい...」

真美「...ということ。わかった?」

貴音「わかりました。やってみましょう」

亜美「えっ、どんなの?亜美にも教えてよ!」

真美「よし、亜美!真美たちは帰るよっ!」

亜美「えっ!?真美、待ってよー!」

...

P「真美たちは何しに来たんだ...?」

貴音「あなた様、わたくしたちも帰りましょう」

P「おう。そうだな」

亜美「ねぇ真美!どんな作戦だったのー!」

真美「んっふっふ。では特別に教えてあげよう!」

...

P「それにしても、今日はどうしたんだ?いつもと違うことをしてみたかったとか?」

貴音「はて...何かしたでしょうか?覚えがありません」

P「はは。まぁ、いいや」

...

真美「お姫ちんはね、雑誌に惑わされすぎなのさ!」

亜美「まぁ、そうだろうね」

P「うう、今日も寒いな...」

貴音「あなた様。こうも寒いと温かいものを食べないと風邪をひきますよ?」

P「ははは。そうだな。じゃあ、晩飯でも食べに行くか?」

貴音「はい。ご一緒します」

...

真美「そのままの君でいて作戦!」

亜美「なんだ。じゃあそのままでいいってことじゃーん」

真美「ま、いつもの様子だと兄ちゃんもお姫ちんが好きそうだし...」

亜美「気持ちで押せってことかね?」

P「まぁ、なんだ。今日もいろいろあったけど」

P「やっぱり貴音は、そのままがいいな」

貴音「!」

P「口調変えたり、携帯欲しがったり...でも、貴音はその口調で、いつものようにラーメン食ってれば...そういう貴音が、俺は好きだな」

貴音「あなた様...いけずです」

P「さぁ、食べに行こうか」

貴音「はい!」





四条貴音の場合。おわり

素直な伊織ちゃん編



伊織「惚れ薬...」

伊織「...」

伊織「ふん、こんなもの。ただの子供だましよね」

伊織「この伊織ちゃんが惚れ薬なんていう魔法みたいなものを信じるわけないじゃない!!」




伊織「ちょっとあんた、これ飲みなさいよ」

P「お?伊織か。ありがとうな」ごくごく

伊織「ええ。この伊織ちゃんの差し入れのオレンジジュースよ?ありがたく飲みなさい」

P「すまんなぁ。書類が忙しくてかまってやれなくて」

伊織「なっ、なに言ってるのよ...別にかまってほしくなんか...」

P「まぁ、とりあえずもう少し待っててくれ」

伊織「いいわ。雑誌でも読んでるから」

10分後

伊織(はぁ...なんか落ち着いたらつまんなくなってきたわ)

伊織(薬が効いてるかんじもないし...)

伊織「ま、あんなもの信じてるわけじゃないわ」

伊織(鈍感。ずっとアプローチしてるのに気づかないなんて...)

伊織(仕事でミスばっかりして、外でペコペコして...)

伊織(ほんと、なんでこんな奴好きになってるんだか)

伊織「ねぇ」

P「ん?」

伊織「私、ってどう?」

P「えらくアバウトな質問だな」

伊織「暇なのよ。答えて」

P「そうだな...アイドルとしては順調に成長してる。スタッフの人たちにトゲトゲしく接しなくなったのが大きいかな」

伊織「...そう」

アイドルとして、ね

私は、もっと私を見て欲しいのに。
アイドルとしてでなく、私として。

伊織「あんた、私のプロデューサーなんだから」

P「ん?」

伊織「しっかりしなさいよね」

P「いきなりどうした...まぁ、心配するな。俺がトップアイドルに連れてってやるよ」

私が連れてってほしいのは、あんたの隣よ。

伊織「そう、ね」

...

...

伊織「ねぇ」

P「ん?」

伊織「私、ってどう?」

P「...ん?さっきと同じ質問か?」

伊織「いいえ」

P「...」

伊織「私よ。私。アイドルでなく、私」

P「伊織自身...か」

伊織「...」

P「そう、だな...」

P「水瀬財閥のお嬢様。どえらい権力を持った家族を見返すためアイドルに...」

伊織「それはただのプロフィールよね」

P「でも、本当は弱くて、泣き虫で、素直じゃない」

伊織「...」

P「楽しくてもあまり口には出さない。楽しいことは人に譲る方だよな。それと、本当に努力する時には自分の力で成し遂げようとする。手本にしたいところだよな」

P「それと、仲間にすごく優しい。特にやよいに優しいけども、年上にも優しいってのはなかなかできないぞ」

伊織「なによ。私のことちゃんと見てるんじゃない」

P「当たり前だろ。俺はプロデューサーだぞ」

伊織「そうね」

...

伊織「ねぇ」

P「なんだ?」

伊織「あんた、人から好きって言われたことある?」

P「あるぞー」

伊織「ん!?あるの?」

P「あるぞ」

伊織(あ、あるって...焦るな私。落ち着くのよ)

伊織「だっ...誰からよ」

これでもし、その人と付き合っていたら...

P「やよい」

やよい?まさか...

伊織「あんた...」

P「おいおい、そんな蔑んだ目をするな。もやしパーティの時に高槻家に言われたんだよ」

伊織「ああ、なんだそういうことね」

P「ああ」

伊織「えーと...その他には?」

P「ないな」

伊織「そう。ま、あんたなんてそんなもんよね」

ちょっと焦ったけど、意外と私のことを見ててくれている。

伊織「あんたは、私のことよく見てるわね」

P「そうだぞ」

何よ...私だけでいいじゃない。と、まぁ。そういうわけにもいかないわよね...

伊織「そういうとこ、私は好きよ」

P「...ああ、ありがとな」

伊織「...」

P「...」

伊織「...返事は?」

P「え?いや、ありがとうって...」

ああ...この人は本当に。

伊織「ああもう...そうじゃなくて...もういいわ」

プイと外を向く。

P「...本気か?」

伊織「本気。あんたが...その...」

伊織「す、好きよ。文句ある?」

P「おおぅ...」

伊織「...何よ、そのマヌケな声」

P「いやぁ...そういうの、伊織にはまだ早いかなって...」

伊織「早くない!」

P「でも...ありがとうな」

伊織「断ってるの?それ」

P「なんとも、言えない」

そうよね。当然。

伊織「...」

伊織「じゃあ、トップアイドルになったら聞いてくれるの?」

P「なってから言えよ」

伊織「ふん。言うじゃない。でも、それにはあんたが必要なのよ?」

P「わかってるさ」

伊織「それに何?仕事でミスばっかりして、外でペコペコして」

P「うっ...それは...」

伊織「情けないったらありゃしないわ。私がしっかりしてれば、ペコペコせずに済むんでしょ?」

P「そういうわけじゃ」

伊織「いいわ。恋人とは支え合うものよ」

P「もう恋人なの?」

伊織「私が一方的に思ってるだけよ。あんたは好きに振る舞いなさい」

伊織「それとも何?答えも出さずにこの伊織ちゃんから逃げようっての?」

P「それはたぶん...無理だな」

伊織「わかってるじゃない」

伊織「当然、あんたの意見も聞くわよ。嫌なら断っても」

P「いやぁ...まぁ、待って欲しいかな...」

伊織「にひひ、あんた、顔に出てる。分かりやすすぎよ」

P「お互い様だ」

P「こういう時俺は、素直になれなくて、不器用なんだよ」

まるでいつもの私見たいね。似た者同士。

伊織「だから私もがんばるって。どーせあんた一人じゃ無理なんだから」

P「そうだな。さて...今日の仕事行きますか」

伊織「ええ。連れてって?運転手さん」

P「運転手、かよ...」

伊織「あら、違うかしら?」

P「うーん」

伊織「トップアイドルのステージに連れてってくれる、伊織ちゃんの運転手よ?」

P「...なるほどね。じゃあ、おとなしくついてこいよ?」

伊織「どうかしら」

P「暴れると事故起こすぞ」

伊織「...どうかしら」

P「今日の仕事だって、頂点への第一歩だぞ」

伊織「今更、そんな分かりきってるわよ」

P「わかってるならよろしい」

伊織「今日も頑張るから...見ててよね?」

P「ああ。見てるさ」

伊織「ずっと?」

P「ずっとな」

伊織「約束よ?」

P「約束だ」

伊織「にひひっ。じゃあ、行きましょう!」


水瀬伊織の場合。おわり

終わりです。
春香ちゃん舐めたいです。

春香「惚れ薬」
亜美「惚れ薬...?」

もあわせてどうぞ。

支援ありがとうございました。

また次でも支援してくださると嬉しいです。

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