―夜の事務所―
P「どうした?貴音?」
貴音「その……お、御手洗いに行くので……」
P「あ、ああ、行って来い」
貴音「あの……」
P「?どうした?」
貴音「……ついてきていただけないでしょうか?」
P「……は?」
貴音「その……御手洗いまで一緒に行っていただけたらと」
P「……えーっと」
貴音「ひ、響が悪いのです!」
P「……何かされたのか?」
貴音「それはもう!誰かから聞いたという怪談話を嬉々として語るのです!」
貴音「わたくし、もう怖くて怖くて……」
P「……止めてくれって言えば良かったじゃない」
貴音「……あのように嬉しそうな響の話を
遮ることなどわたくしにはできません」
P「あっそう」
貴音「あの……いかがでしょう……?」
P「分かった分かった。ついて行ってやるよ」
貴音「あ、ありがとうございます!」
P「すっごいいい笑顔」
P「じゃ、行こうか」
貴音「あ、あの、あなた様」
P「ん?」
貴音「その……手を、繋いで頂けると、大変ありがたいのですが」
P「……」
貴音「あなた様?」
P「トイレってすぐそこだぞ?」
貴音「ええ」
P「別に、そんなことしなくても」
貴音「……あなた様は、わたくしを見捨てるおつもりですか……?」
P「ああ、泣くな、泣かないでくれ。ほら、手」
貴音「ありがとうございます、あなた様」ぎゅ
P(そんなに強く握らなくていいと思うが)
貴音「あ、あなた様。もう少し強く握り返して下さいませ」
P「お、おう」
P「しかし響も、貴音が苦手なことを知ってるんだから、もう少しこう手心というか」
貴音「わたくしが怖がるので面白いのでしょう」
貴音「一度、亜美や真美にも話したようですが、期待外れの反応だったようです」
P「どんな話なんだ……」
P「さ、着いたぞ。行って来い」
貴音「はい……」
P「……じゃあ俺は戻るから」
貴音「!!」
P「なぜ驚く?」
貴音「あの……わたくしてっきり、扉の前で待っていて頂けるものだとばかり……」
P「いや、でも、お前、恥ずかしいだろ?」
貴音「それはもう」
P「だから戻るよ」
貴音「……」ぎゅ
P「……涙目で見つめないでくれ……」
―トイレ―
P「あー、それでな、俺の学生時代は……」
P(なんでこんな話を)
貴音「あ、あなた様!言葉を途切れさせないでくださいませ」
P「おう、すまんすまん」
P「それでな、生徒会長の……」
貴音「……あ、あの……」
P「どうした?」
貴音「恥ずかしくて……その……」
貴音「……出ません……」
P「じゃあやっぱり俺戻るよ」
貴音「あ、あなた様、見捨てないで!!」
P「大げさだなあ」
P「ふーむ、どうしたものか」
P「よし、じゃあ面白い話でお前をリラックスさせるか」
P「あるとき、アメリカの学校で先生が生徒に質問しました。
『ワシントンが桜の木を切ったことを正直に話したとき、
彼の父親はすぐに許しました。何故だか分かりますか?』
そしたら、生徒はこう答えました。
『はーい。ワシントンはまだ斧を持っていたからだと思います』」
P「Hahahaha」
貴音「わしんとん?」
P「……俺が悪かったよ」
P「ふーむ、ではどうしたものか」
貴音「あの、急いでお願いします」
P「よーし、それじゃあこれしかあるまい」
P「俺が小学生の頃、花子さん、というのが流行ってな」
貴音「花子さん?何やらかわいらしい響きですね」
P「ああ」
P「基本的に、花子さんはトイレに住んでるんだ」
貴音「なんと!それは苦労していますね……」
P「そうだな。苦労していると言えば苦労しているんだろう」
P「ただまあ、花子さんがトイレにいると、皆落ち着いて用が足せないだろ?」
P「だから、普段は花子さんは出てこないんだ」
貴音「なるほど、思慮深い人物なのですね」
P「ああ。でな、花子さんを呼び出すには、ちょっと手順が必要でな」
P「トイレのドアを3回たたいて、花子さん、遊びましょ♪」
P「って言う風に歌わなくちゃいけないんだ」
貴音「まあ、他人を呼び出すならば、その程度の礼儀は必要というもの」
P「……」
貴音「それで、花子さんとやらを呼び出すと、どのような遊びを?」
P「頭から食われる」
貴音「は?」
P「頭からバリバリと食われる」
P「あれ?腹からだったかな?」
貴音「あ、あなた様……!」
P「で、食われた人間は、いなかったことになる」
貴音「……え?」
P「存在自体消えてしまうんだそうだ」
P「不思議なもんだな。それで、誰かいなくなっても騒ぎにならないんだ」
P「これが『恐怖の花子さん』の話だ」
貴音「ひ、ひいい……」
P「さて」
貴音「あ、あなた様……?」
P「……」トン
貴音「あなた様!!」
P「……」トン
貴音「や、止めてくださいまし!!」
P「……」トン
P「花子さん♪」
貴音「ひ、ひいい……」チョロロロロロ
P「お、出た出た」
貴音「うう……思えば短い人生でした……」
貴音「さようなら……」
P「っていう、パソコンのゲームがあってな?」
>>49
もってる
貴音「……?」
P「あー、えっと、今の話は作り話ってことだ」
貴音「あ……」チョロロロロロロ
P「安心した?」
>>52
早くしろー!!間に合わなくなっても知らんぞー!!
―Pの席に戻ってきました―
貴音「あなた様!!酷すぎます!!」
P「悪かったって。でも、
ああでもしないと、お前いつまでたってもできなかったろ?」
貴音「それにしても!わたくしがどんなに……どんなに……!」
P「だからごめんって」
貴音「生きた心地がしませんでした!」
P「悪かったよ。この埋め合わせはいつかしよう」
貴音「きっと……ですよ?」
P「ああ、分かった分かった」
―そのちょっと後―
P「さてと、じゃあ、そろそろ帰るか。貴音、送っていくよ」
貴音「ええ」
P「あ、でも、ちょっとトイレに……」
貴音「……」ティン!
貴音「あなた様、わたくしもついて行きます!」
P「え?」
貴音「そして、先ほどの仕返しをするのです!」
>>59
ほう
P「……」
貴音「そういたしますと、そこに人魂が……ひええ……」
P(自分で話してて怖いのか)
貴音「あ、あなた様?怖かったら悲鳴をあげてもいいのですよ……?」
P「あ、俺、そういうの結構平気なんだよ」
貴音「な、なんという精神力!やはりわたくしはあなた様に見出されて正解でした」
P「……ははは、そりゃどうも」
P「しかし、お前、一人でトイレの外にいてよく平気だな?」
貴音「……あ……」
P(気づいていなかったか)
貴音「あ、あなた様!何か、何か話をしてくださいまし!!」ガタガタ
P「んー……」
P「よし、それじゃあ、『赤マント』の話をするか」
貴音「あ、赤マント?何やら雄々しい響きです」
P「ああ、昔あるところにな……」
終わり
いま貴音はトイレ待機状態じゃなくて、
その状態で怪談を聞くってことは>>59の状況になるってことじゃないのかい!?
あと赤マントをちゃんとトイレにまつわる怪談だと知ってるひとがいてなんか嬉しくなった
>>75
実は赤マントはトイレの花子さんにとって代わられるまで
代表的な学校トイレの怪談で、戦前から語られていたという説もある
ちなみに、人食い花子さんのゲームは実際にあります
赤マントか赤い紙か学校トイレの怪談の原型はどっちかみたいな議論も
あるはずなんだけど、そういう研究って進んでるんだろうか
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