モバP「減給!?」 (27)

ちひろ「お給料、減らされたらしいわね」

P「ええ、さっき社長から直接言われて……くそっ、どうしてこんなことになったんだ」

ちひろ「……当然の結果だと思うけど」

P「え? この俺の仕事ぶりに何か問題でも?」

ちひろ「問題大有りよ。自覚が無いのなら、先週の『仕事ぶり』とやらを振り返ってみなさい」

【月曜日】


P「おはようございまーす」

ちひろ「全然早くないわ。もうお昼よ」

P「やることないから午後出勤でもいいかなって」

ちひろ「営業して、営業! まずは仕事を作るところからでしょ!?」

P「はーい」

P「ところで、ちひろさんが俺に敬語使わなくなって随分経ちますね」

ちひろ「あなたなんかに敬語なんて、もったいなくて使えないわ」

P「ひでぇ……」

ちひろ「自業自得って言葉、知ってる?」

P「吾輩の辞書にはございませんなぁ」

ちひろ「さぞかしその辞書は薄っぺらなんでしょうね」

P「そう、僕のスケジュールのようにね」

ちひろ「………………」

P「うーん、ツッコミすら貰えないとは……」

【火曜日】


P「今日もやることないなー」

ちひろ「田中ァ! 暇なら営業しなさい、挨拶回りとか!」

P「呼び捨てとかやめてくださいよ。俺の上司ってわけでもないのに」

ちひろ「誰のせいよ、誰の!」

P「じゃあ俺も呼び捨てにするぞ、ちひろ」

ちひろ「……ちょ、調子に乗るんじゃないの」

P「異性に呼び捨てにされた経験の無いちひろ。その時、動揺が走ったーー」

ちひろ「変なモノローグつけないで!!」

紗南「田中さん、MH4やろっ!」

ちひろ「ちょっと、紗南ちゃん」

P「紗南……お前、ナメてんのか?」

紗南「えっ……」

ちひろ「そうよ、事務所でゲームなんて……」

P「今のトレンドはGTA5だろ!!」

ちひろ「そうじゃないでしょうがァァァァァァ!!」

紗南「そういえばこの間発売したんだよね! でもあたし、まだ買ってない……」

P「フッフッフ……」ガサゴソ

紗南「あっ、カバンに手を……まさか!?」

P「ジャーン!!」つ[GTA5]

紗南「やったぁぁぁ! 田中さん大好き!」

P「俺もまだ未開封なんだよ。早速やろうぜ!」

ちひろ「仕事! 後生だから仕事してぇ!!」

【水曜日】


ちひろ「はい、これ」

P「なんですか、この紙」

ちひろ「あなたの今日のスケジュールよ。あまりに無計画に行動してるから、私が立ててあげたの」

P「はあ……どうも。えーっと……」


 <スケジュール(水曜日)>
09:00     出社
09:00-12:00 メール消化、営業活動
12:00-13:00 昼休み
13:00-15:00 挨拶回り、顧客打合せ
15:00-17:00 レッスンの監督・指導
17:00-19:30 トレンド調査、新規契約検討
19:30-20:00 日報作成
20:00     退社


P「……………」

P「……………」ガサガサ

ちひろ「まずはこの通りにやってみて、もし厳しいところがあれば……」

P「仁奈ー、紙ヒコーキ飛ばして遊ぼうぜー」

仁奈「やるでごぜーます!」

ちひろ「あからさまに捨てるんじゃないの!」

P「捨ててません。ただの紙を空飛ぶ希望に昇華させただけです」

ちひろ「カッコつけて誤魔化そうとしても無駄だから」

P「20時退社とかむーりぃ……定時で帰りたいよう」

ちひろ「ワガママ言わない!」

【木曜日】


ちひろ(ハァ、今日も電車は満員……通勤ラッシュって最悪……)

ガタンゴトン... ガタンゴトン...

ちひろ(うぅ、狭い……男の人だらけだし、汗の臭いもキツいし……)


さわさわっ...


ちひろ「ッ!?」

ちひろ(い、いやっ……お尻、触られてる……! もしかして、痴漢!?)

ちひろ(いったい誰が……!)チラッ

P「あ、おはようございます」

ちひろ「……おはよう。痴漢かと思ったじゃない」

P「ははは。ちひろさん、俺と同じ電車だったんですね」

ちひろ「そうみたい。田中くん、今日は重役出勤じゃないのね」

P「早起きしたんで早めに出社してみました」

ちひろ「早めどころか、これでも始業時刻ギリギリよ。あなたがいつも遅すぎるの」

P「ちひろさんのお尻を触れるなら毎日早起きするのもアリですね」

ちひろ「とか言って、明日も寝坊するんでしょう?」

P「でしょうね」

P「……さて。せっかく始業時間に間に合ったんだし、今日は仕事でもするか」

ちひろ「…………熱でもあるの?」

P「失礼ですね。たまには仕事しないと給料泥棒になっちゃうじゃないですか」

ちひろ「普通は『毎日』仕事するものよ。一応言っておくけど」

P「よーし。じゃあ資料でも作るか」

ちひろ「でも、ついに勤労精神に目覚めたのね……私、嬉しいわ」

P「よし、ちひろさん。この資料のレビューお願いします」

ちひろ「え、もうできたの? なんだ、やればできるじゃない……」


 <城ヶ崎美嘉を泣かせる10の言葉>

①未央を蹴落してデレラジに出演した気分はどう?
②誰にでも股開きまくってんだろ。一発くらいヤらせろよ。
③妹の方が先にCD化したことについて一言どうぞ。


P「まだ3つなんですけど、結構いい線いってると思うんですよね」

ちひろ「そっか。うん、やり直した方がいいわね」

P「資料を?」

ちひろ「それ以前に、もっと色々やり直した方がいいと思うわ。常識とか」

【金曜日】


P「ヒマじゃのう」

ちひろ「………………」

P「おっ、橘。宿題やってるのか」

ありす「はい。集中したいので邪魔しないでくださいね」

ちひろ「偉いわねぇ。どこかの社内ニートも見習って欲しいわ」

P「…………」

ありす「…………」カリカリ...

ちひろ「…………」カタカタ...

P「……ンッン~。勉強、みてやろうか?」

ちひろ「邪魔するなって言われたでしょ! せめて他人の妨害だけはしないで!」

ありす「……では、ここが分からないのですが」

P「ん~…………」

ありす「………………」

P「……これは高校レベルだな。ちょっと俺にもわからん」

ちひろ「えっ」

ありす「えっ」

P「そもそも、なぜたかし君と兄貴は池の周りを歩いているんだ?」

ありす「……そう言われても」

P「ま、できないものはしょうがない。それよりウイイレやろうぜ!」

ちひろ「ちょっ……」

ありす「あの、私は宿題を終わらさなくてはいけないので」

P「そんなの後でもできるだろ。ほら、やるぞ」

ありす「でも……」

P「……あー、そっか。橘はポケモン強いけど、ウイイレはクソ弱いもんな。悪い悪い」

ありす「…………はい?」

P「じゃあ紗南でも呼んで……」

ありす「待ってください」

ありす「今、なんて言いました?」

P「んー? 別にー?」

ありす「……いいですよ。ぐうの音も出ないくらい、完勝してみせます」

P「あっ、ハンデつけてやろうか?」

ありす「いりません!」

ちひろ「ねぇ、仕事…………」

P「ほら、ちひろさんも早く」

ちひろ「私もやるの!?」

P「ウイイレは8人でできるんですよ。紗南に仁奈に、晴も呼んでウイイレパーティーですね」

ちひろ「仕事……」

P「コミュニケーションも仕事のうちですよ?」

ちひろ「………………」



ちひろ「……しょうがないわね」

P「やったー!」

ありす「ちひろさんまで……」

ちひろ「一回だけ! 一回だけよ!?」

【現在】


P「あの後、結局夜通しやってましたよね」

ちひろ「……そ、それは置いといて。そんな勤務態度だと減給になるのも当然でしょう?」

P「あー、だから二人とも……」

ちひろ「そうよ…………え? 二人?」

P「あれ……社長から聞いてませんか? ちひろさんも減給って……」

ちひろ「えっ!?」

ちひろ「ど、どうして私まで!?」

P「子供を家に帰さずに、一緒に夜通しゲームしてたのがまずかったみたいです」

ちひろ「……そんな。ただでさえ事務員は安月給なのに……」

P「なんと言えばいいか……まあ、頑張ってくださいね」

ちひろ「あなたのせいでしょう!!」


    <通達>
以下の者、減給三ヶ月の処分とする。

    田中、千川



おわり

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