京太郎「あんた誰だ」菫「恋のキューピットだ」(143)

京太郎「は?」

菫「二度も言わせるな、恋のキューピットだ、通りすがりのな」

京太郎「き、キューピットって羽が生えてて弓矢を持ってるあの……」

菫「そうだ」

京太郎「……でも貴方は羽も生えてないし弓矢も持ってな――――」

菫「馬鹿者、普段は閉まっているだけだ」

バサァッ

京太郎「うおっ!?」

菫「……」バサッバサッバサッ

京太郎「は、羽が生えた……」

菫「どうだ?」

京太郎「どうと言われても……」

菫「これで証明できただろう」

京太郎「貴方が……その、《恋のキューピット》だということを?」

菫「そうだ」

京太郎「……それで、なんで貴方が俺のところに?」

菫「……お前はバカか?」

京太郎「えっ?」

菫「恋のキューピットの仕事と言えば一つしかないだろう」

京太郎「……あー」

菫「お前の恋を叶えに来た」ドヤァ

京太郎「……」

菫「この私が来たからには、速攻で!」

菫「――――君の思い人のハートをシャープシュートしてみせよう」

京太郎「お、思い人と言われても……」

菫「?」

京太郎「そんな人思いつきませんよ」

菫「……何?」

菫「待て、お前ひょっとして好きな人がいないのか?」

京太郎「え、ええ」

菫「……」ウムム

菫(……妙だな、私のレーダーでは確かにこの男から反応があったんだが)

菫「……うーむ」

京太郎「あのー」

菫「む、なんだ」

京太郎「俺、そろそろ行っていいですか?これから買い出しもあるので」

菫「待て待て待て」

菫「何度も言うが私は恋のキューピットだ、目的達成の為には私はお前のそばにいなくてはならない」

京太郎「そばにって……これから部活なんですよ?貴方をいきなり連れてったら迷惑かかるでしょう」

菫「心配するな、私は他人には見えないのだ」

京太郎(またお約束な……)

菫「とにかく、お前から恋愛オーラを感知した以上、成就するまで協力させてもらうぞ」

京太郎「はぁ……」

京太郎(まぁ、この人美人だしちょっとは役得か)

京太郎(……それにしても)

菫「ん?私の顔に何か着いてるか?」

京太郎「どっかで見たことあるような……」

菫「はぁ?」

京太郎「えーと、んーと、うむむむ…………あ!」

京太郎「思い出した!白糸台の弘瀬菫!」

菫「……」

京太郎「アンタ、白糸台の弘瀬菫だろう!?」

菫「違うな」

京太郎「はい?」

菫「白糸台の弘瀬菫と恋のキューピットの私は別人だ」

京太郎「そりゃどういう……」

菫「ここに降りてくる時に彼女の容姿を借りたんだ」

京太郎「降りてくる?」

菫「天界からな。ちょうどテレビ中継やってたし」

京太郎「て、天界って……」

菫「まぁそういうことだ」

菫「それより買い出しとやらに行かなくてもいいのか?」

京太郎「え?……やべっ!そうだった!早く帰らねーと部長にどやされる!」ダダダダッ!

菫「……大変そうだな、お前も」


……


京太郎「ああー、やっと全部買い終わった……」

菫「少し持つか?」

京太郎「んにゃ、いいすよ、別に」

菫「そうか……」

京太郎「……」テクテクテクテク

菫「……」フワフワフワフワ

京太郎「……羽があるって羨ましいですね」

菫「は?」

京太郎「俺も貴方みたいに自由に空を飛びたいで―――――ん?」

菫「?どうした?急に立ち止まって」

京太郎「あれは……確か」

「…………」テクテクテクテク

京太郎「おーい、すみませーん!」

「……ん?」

京太郎「どうしたんですか?こんなところで」

「貴様は…………済まん、名が思い出せない」

京太郎「須賀ですよ、須賀京太郎。清澄の麻雀部です」

「……ああ、あの雑用の!」

京太郎「ざ、雑用って……」ガーン

菫「……おい須賀よ、彼女は誰だ?」

京太郎「ああ、彼女は――――」ボソボソ

京太郎「龍門渕高校の天江衣さんですよ」

菫「ふむ、なるほど」ボソボソ

衣「?どうかしたか?雑用」

京太郎「あ、いや別になんでもな――――って雑用って言うのはちょっと……」

衣「む、そうか。ならば…………えーと、んーと」

京太郎「……須賀です、須賀京太郎」

衣「ならきょーたろーだな」

衣「改めてよろしく、きょーたろー」

京太郎「こちらこそ……それで、どうしてここに?」

衣「ん、ああ。むしょーに咲と打ちたくなってな、来た」

京太郎「そ、そうですか……」

菫「おい須賀よ」ボソボソ

京太郎「?なんですか?」ボソボソ

菫「彼女はいくつなんだ?」ボソボソ

京太郎「えーと……俺の一つ上です」ボソボソ

菫「は?」ボソボソ

京太郎「だから、俺の一つ上です」ボソボソ

菫「……どう見てもランドセルが似合う年齢にしか見えないのだが」ボソボソ

京太郎「俺も始めて見た時そう思いましたよ……それに、ちゃんと見た目通りいい人ですから安心してください」ボソボソ

菫「わかった」ボソボソ

衣「おいきょーたろー」

京太郎「は、はい!」

衣「先刻からどうした?様子が可笑しいぞ?」

京太郎「あ、あはは、別になんでもないですよ」

衣「むむむ……」

京太郎「それより、清澄に行きたいんでしょう?案内しますよ」

衣「ああ、済まないが頼――――」

シュンッ!

「探しましたよ、衣様」

菫「!?」

衣「あ、ハギヨシ!」

京太郎「師匠!」

菫(こ、こいつ……一体どこから……!)

ハギヨシ「目を離した隙に迷子になられてしまうなんて……心配しました」

衣「べ、別に衣一人でも清澄に行けたぞ!」

ハギヨシ「ふふっ、そうですね……おや京太郎君奇遇ですね。こんにちは」

京太郎「ええ、師匠。こんにちは」

ハギヨシ「その手に持たれた袋を見るに……買い出しですか?」

京太郎「ええ、その通りです」

菫「おい、須賀よ」ボソボソ

京太郎「?」ボソボソ

菫「この男は誰だ?」ボソボソ

京太郎「俺の師匠です」ボソボソ

菫「なるほど、わからん」ボソボソ

京太郎「そこの衣さんの執事なんですよ、見た目通り」ボソボソ

菫「ふむふむ、成る程成る程」ボソボソ

京太郎「炊事洗濯掃除……ありとあらゆるスキルがパーフェクトな俺の自慢の師匠です」ボソボソ

菫「把握した」ボソボソ

ハギヨシ「しかしそれだけ大きな荷物を持たれて……大変でしょう?」

京太郎「あはは、もう慣れましたよ」

衣「雑用根性か、ふふ、素晴らしいな」

ハギヨシ「衣様、そんなことを言われてはなりませんよ……よろしければ私が少しお持ちしましょうか?」

京太郎「え、本当ですか?ありがとうございます」

ハギヨシ「ふふ、これも執事――――いえ、師匠の務めですから」ニコリ

京太郎「……ははっ、師匠には到底かないそうにありませんよ」

ハギヨシ「精進あるのみ、ですよ」

京太郎「押忍!熟知してます!」

菫「……」フワフワフワフワ

菫「……ん?」

ピピピピピピピピピ……

菫(これは……恋愛反応?)

菫(今、須賀から発信されたのか……)

菫(なんだ、やっぱりいるじゃないか、好きな人)

菫「……」

菫「………………んん?」

菫(おいおいおいおい、ちょっと待てちょっと待てちょっと待て)

菫(て事は何か?須賀はもしかして――いや、もしかしなくても、だ……まさか、いや、そうに違いない)

菫(そう、須賀は……)

菫「ロリコンなのか!!!!!!!」

京太郎「?どうかしましたか?」ボソボソ

菫「い、いや、なんでもないっ気にするな」ボソボソ

京太郎「そ、そうですか…………ところで」ボソボソ

菫「?」

京太郎「天使なんですから、念話の一つや二つ出来ないんですか?」

菫「…………」

菫【……すまん、忘れてた】

京太郎【ええー……】

京太郎【こんな便利なものがあるなら最初に言ってくださいよ!】

菫【すまん、本当ど忘れしてた】

京太郎【まったくもう……】

京太郎「あ、それよりハギヨシさん達は歩きですか?」

ハギヨシ「ええ、衣様がこの町を少しみて回りたいとおっしゃられたので」

京太郎「ははっ、何もないでしょう?ここ」

衣「そんな事ないぞっ!すべての場所には様々な良さがあるっ!この町もしかりだ!」

京太郎「……そういうもんなんですかね?」

衣「そういうものだ!」

ハギヨシ「衣様のいう通り、そういうものですよ」

京太郎「へぇ……あ、見えて来ましたね。うちの高校」

菫「ほう、あれが……」

菫(……)

菫(……しかし)

菫(まさか須賀がロリコンとは……たまげたなぁ)

菫(今回が私の初任務だというのになんてことだ……なんてことだ……)

菫(これは難題になってきたぞ)

菫(私の脳内のバイブル(りぼん、マーガレット、などなど)にはそんな話書いてなかった気が……どうだったっけか)

菫(くっ!だがやるしかないか!)

菫(キューピットスミレ!狙い撃つぞ!)

……

ガチャッ

京太郎「ただいま帰りましたー」

「あ、京ちゃん。おかえりーっ」

「犬!遅いじぇ!」

「あら、お帰り……少し遅かったんじゃないの?」

「そんなら少しは扱いゆるうした方がええんじゃないかのう……」

京太郎「ああ、ただいま、咲。それにみんなも」

京太郎「んで部長、言われたとおり買ってきましたよ」

京太郎「――――それと、ゲストです」

咲「ふぇ?ゲスト?」

衣「咲ーーーーっ!」

ぴょーーーんっ!

咲「え……衣ちゃん!?」

「天江さん?!」

「ど、どうしてここに……」

衣「それはもちろん打ちに来たからだぞ!ののか!」

和「ええー……」

久「ま、そういう事ね」

咲「そういう事って……」

衣「それじゃあ早速打とう!今すぐ打とう!」

まこ「咲と和と……あと一人はどうするかのう」

久「んー……なら私が」

優希「いや!私が打つじぇ!タコスパワーも充電したし!」

京太郎「え?……ってお前!あんだけあったのにもう食ったのか!」

優希「ふふん!私の胃袋は底なしだじぇ!」

京太郎「太るぞ」

優希「!!なにを~~っ!」ポカポカポカポカ

京太郎「うわっ!いてっ!叩くなって!」

優希「うるさいうるさいうるさいっ!犬なんてこうだじぇっ!」ポカポカポカポカ

京太郎「ああもう叩くなって!……っで、でもお前やっぱたくさん食った方がいいな!」

優希「んむ?」

京太郎「いっぱい食って成長しなくちゃなんねーし!」

優希「……おのれ犬!ゆ゛る゛さ゛ん゛!!!!!お前は今すべてのまな板族を敵にまわしたのだぁっ!!!」

京太郎「……身長の話だこらーーーー!!!」ぐわっ!

優希「えっ!?あっ!こら!そんな乱暴に頭くしゃくしゃするなーーーー!」

京太郎「うるせー!お前が勘違いしたのがいけないんだろーー!」くしゃくしゃくしゃ

優希「う、うひぇひぇひぇひぇ!やめろーくすぐったいじぇ!!」

まこ「……相変わらずお前らは騒がしいのぅ」

久「まぁ少しは騒がしい方がウチらしいわ
ね。あなたもそう思うでしょ?和」

和「そう言われても、よくわかりませんよ」

咲「…………いいなぁ」ボソッ

衣「むむむむ!早く打つぞっ!」

咲「えっ、あっ、うん!」

和「あの二人はほっといても問題ないでしょう」

咲「え、えーっと、あと一人はどうするの?」

衣「ふむ……」

久「ふふっ、もちろん私よ!腕がなるわねー!」

まこ「まぁ待ちんさい、ぬしぁワシらの大将じゃけんのう、ここはワシにまかせんしゃい」

久「あら、私は中堅よ?」

まこ「部長っていうことじゃ!……二人はあんなんやから」

京太郎・優希「」ワーワーギャーギャー

まこ「ここは我が部の名参謀たるこのワシが……」

衣「……よしっ!決めたぞっ!」

まこ・久「「!!」」

衣「きょーたろー!一緒に打とう!!」


「「「「えっ?」」」」

京太郎「だいいちおまえはいっつもそうやってーーーー」

優希「むむ!お前は私の犬なんだじぇ!だからーーーー」

ワーワーギャーギャー

菫「……」

菫【……おい須賀よ】

京太郎「だからーーーーんあ?」

菫【ご指名だぞ】

京太郎「は?」

衣「きょーたろー!私と打とう!」

京太郎「……ええっ!?」

衣「ほらほら早く早くっ!」

久「……どうして須賀君を?」

衣「そんなこと決まっている!清澄の雑用の実力を知るためだ!」

咲「き、京ちゃん!頑張ってね!」

和「まぁトばないことを目標にしましょう」

京太郎(……プ、プレッシャー!)


んで。


京太郎「ぐわああああああああああ――――ッ!!!!!!!」

優希「ス、スガダイーーーーン!!!」

京太郎「お……お……お……!」

優希「しっかりしろ!犬!傷は浅いぞ!」

京太郎「へへ……燃え尽きちまったぜ……真っ白に……よ」

優希「くっ!今救急車を!」

京太郎「おい……優希さんよ……」

優希「し、喋るな犬!もう、喋るな!」


京太郎「故郷の母さんに……伝えてくれや……」

京太郎「今まで世話ぁしてくれてありがとうってな……」

優希「い、犬……」

京太郎「それと……最後に……一服……させてくれや……」

優希「い、犬……!」

スッ(ココアシガレット)

京太郎「へ……へ……結局禁煙……失敗しちまった……な……」

京太郎「……」ガクン

優希「い、犬?……お、おい犬!目を開けるんだ!犬!

優希「い、犬…………京太郎……きょうたろおおおおおおおおおっ!!!!!!!」


久「南場まで持たなかったわねー」

まこ「まぁしゃーない」

和「自然の摂理ですね」

咲「きょ、京ちゃーん?だいじょうぶー?」

菫(なんだこれ)

ウワーン!キョータロー!
ハイハイサンモンシバイハソコマデニシトキナサイ
ブチョウ!ノリワルイジェ!

衣「……」

衣(や、やってしまった……!)

衣(また……また衣は人を壊して……!)

衣(う……うう……ううう……!)

京太郎「だああああああらっしゃあ!!!!」

がばあっ!

衣「!!」

京太郎「……ふぅ」

京太郎「……いやー!コテンパンにやられちゃいましたよ!」

衣「へっ?」

京太郎「衣さん、本当に強いんですね!」

衣「え?え?えっ?」

京太郎「飛ばないように飛ばないようにと頑張ってはみたんですけどねー」

咲「結局とんじゃったね」

京太郎「う、うるへー、わかってらっ」

衣「お、お前」

京太郎「ん?」

衣「きょーたろーは私と打って、壊れたりしないのか?」

京太郎「へ?」

衣「こ、衣と打っててもう麻雀なんて打ちたくなくなったりはしないのかっ!?」

京太郎「……」

京太郎「……俺の雑用と咲達のしごきを受けまくったこの心なら、平気のへーですよ」

まこ「負け犬根性丸出しじゃのう」

久「まったくね」

優希「右に同じだじぇ」

京太郎「ぐ……!」

衣「で、でも……」

京太郎「そうっ!」

衣「」ビクッ!

京太郎「咲のリンシャン責任払い!優希の東場爆発!部長の悪待ち!和の完璧デジタル引っ掛け!まこ先輩のチンイツを食らったこの俺なら!」

京太郎「このぐらい……!」

京太郎「屁の突っ張りも効かんですよ!!!」

和「トびましたけどね」

京太郎「ぐうっ!」グサッ

咲「自慢にならないねー」

京太郎「ぐうううっ!」グササッ!

京太郎「お、お前らなぁっ!」

衣「…………」シュン

京太郎「…………」

京太郎「……ですから」ポンッ

衣「!!」

京太郎「今度ここに遊びに来た時も、また打ちましょうね?」ナデナデナデ

衣「…………うんっ!!」にぱっ

久「微笑ましいわねぇ」ボソボソ

まこ「まったくじゃ」ボソボソ

優希(……ううー)

和(咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん)


咲「…………」ムッ


菫「っ!!」ビビクンッ!

菫「……」

ビビビビビビビビビビ……!

菫(強い恋愛反応が……今彼女から!)

菫「……」

菫「……」そ~っ

咲「…………」

咲「……羨ましいなぁ、衣ちゃん……」ボソッ

菫「……」

菫(……ははあ、成る程な)

咲「私も頭、撫でてもらいたいなぁ……」ボソボソッ

菫(彼女はおそらく、須賀のことを――――――んん?)

菫(よく調べてみればこの部室、恋愛反応が数個ある)



菫(須賀から一つ)

菫(この少女から一つ)

菫(あの元気な天真爛漫娘からひとつ)

菫(ピンク女から―今まで気づかなかったのが不思議なくらいに―馬鹿でかい反応がひとつ)

菫(……めちゃくちゃ濁っているが)

菫(そして)

菫(生まれたばかりの、小さい反応が、ひとつ)

菫「…………」

菫(……これは)

菫「面白くなりそうだ、な」

菫(だから……見届けさせてもらうぞ?須賀?)

これにて、おしまい

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