花京院「ここが学園都市か…」 (22)

僕に『こいつ』が発現したのはいつのことだっただろう

物心ついた時からこいつは当たり前のように傍に立っていた

時々テレビに出る霊能力者や超能力者に僕のこれと同じようなものがいるのか分からないが少なくとも身近な人間にこいつが見える人はいなかった

両親にはこいつの事を話した事はあったが信じてはくれなかった(誰だって自分の子供に「ぼくは超能力を持っているんだよ」と言われてはいそうですかと信じないだろう。ぼくだって同じ立場に立ったらそうする)

ただ、強引に信じさせる方法はいくらでもあった。簡単だ遠く離れたものを両親の目の前で動かすだけでいい

だけど、ぼくにはそれが出来なかった

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理由はただ怖かったからだ

もし両親が超能力なんていう物を持つ『ぼく』を受け入れてくれなかったら

傍らに立ち続ける『こいつ』を受け入れてくれなかったら

そう想像するだけで幼いころのぼくは恐怖に震え、泣き、原因が分からない両親を困らせていた

それから今日に至るまで僕は人前でこの能力を発揮することはなかった

だが、これからは違うのかも知れない

これから僕が過ごす事になる『学園都市』でわ



―花京院典明は踏み出す― 学園都市


「こんな時期に転校だなんて花京院ちゃんは不安かも知れないですけど何も心配することはありませんよー」

「……」

「ウチのクラスはパーな子が多いですけど本当は良い子ばっかりですからねー花京院ちゃんも直ぐに打ち解けれますよ?」

「………あの」

「はい?」

「…先生も何かの能力を持っているんですか?」

「あはは!残念ですけど先生は能力者じゃないんですよ、基本この学園都市では学生や子供しか超能力は発現しませんからね」

「はァ…」

嘘だろう?何の能力も持ってないのにこの若さとは…(若い所かまるで小学生だ)
頭脳は大人、身体は子供なんて漫画やアニメの世界だけだと思ってたが…
学園都市という所は僕の常識が通用しない所らしい

「と、いっても目に見える程の能力を出せる子はそんなにいないんですよ」

へぇ、それはなんだか意外だ
この都市の住人はアメコミヒーローよろしく能力をバリバリ使うと『外』では聞いていたんだが

「漫画のような能力を使える子はこの街でもエリートですからねー花京院ちゃんみたいなレベル4なんてウチの学校じゃ珍しいんですよ?」

レベル

この街では個人の能力の強さをレベル分けしているらしい
この街に7人しかいない最高位レベル5は単身で軍隊と張り合えるそうだ

僕のような能力開発を受けていないにも関わらず能力を使えるものをこの街では『原石』と呼ぶらしい(厳密には原石の連中とも僕の能力は違うらしいが)

「所で先生」

「はい?」

「“ちゃん”は止めてもらえませんか?」

「止めません」

……止めませんか

「ハイ、着きました! ここが、花京院ちゃんがこれから高校生活を過ごすクラスですよ」

「…はい」

「それでは、花京院ちゃんは廊下で待機です。HRが始まってしばらくしたら呼びますから、笑顔で入ってきてくださいね?」

「分かりました」


ここが僕のクラスか…

友達になってくれる人はいるだろうか?
『こいつ』を、受け入れてくれるだろうか

そう考えていると先生の呼ぶ声がして、僕は教室に踏み出していった

今日はここまでー

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