遊馬「さっぱり分かんねえ」 (22)
九十九家にて……
遊馬「そもそも何で正月明けから勉強なんてしなくちゃいけないんだよ」
小鳥「そんなの今の今まで冬休みの宿題に手を付けてなかった遊馬が悪いんじゃない」
遊馬「仕方ねえじゃん。冬休みはクリスマスに大晦日、正月とイベントだらけだったんだからさ。
それで何時宿題なんかする暇があるっていうんだよ?」
小鳥「私はもう終わってるけどね」
遊馬「大体おかしいぜ。冬休みは夏休みよりずっと短いのに何で宿題だけは同じくらいの量なんだよ?
せめて校長先生をデュエルで倒したら宿題の量が減るとかなら良いのに」
小鳥「馬鹿な事言ってないでさっさと手と頭を動かしなさい。文句言ってても宿題は減らないわよ?」
遊馬「つーか、宿題写させてくれって言ってお前を呼んだのに、何で俺自力で解かされてんだ?」
小鳥「当たり前でしょ? 宿題は本来自分の力で解くものなんだから」
遊馬「でもちょっとくらい見せてくれたって良いじゃん」
小鳥「だーめ。まずは何でも自分の力でやってみないと。宿題を写すのは簡単だけどそれってただ怠けているだけなのよ?
遊馬は怠け者になりたい訳?」
遊馬「いや、そんな事は言ってねーけど……」
小鳥「ならやりなさいよ。それに何事にも逃げずに挑む、かっとビングは遊馬の信条でしょ?
この宿題からも逃げないで、かっとビングで挑みなさいよ」オデコツン
遊馬「くっ、かっとビングを持ち出されたら何も言えねえじゃねえか」
小鳥「ほら、早く続けて。分からない事は教えてあげるから」
遊馬「ちぇ、分かったよ……う~ん、早速ここが分からねえんだけど?」
小鳥「えっと、それは……もう、この前教えてあげたとこじゃない。教科書のここ、ここの公式を使うのよ」
遊馬「ああ、これか……じゃあ、えっと……こうやって、こうか?」カキカキ
小鳥「そうそう。前から思ってたけど遊馬って馬鹿なのに計算だけはわりと早いし正確よね」
遊馬「そんなさも当たり前みたいな感じで馬鹿とか言うな」
遊馬「まあデュエルしてるとライフの増減とか攻撃力の変化で結構計算する事が多いからな。そのおかげかな?」
小鳥「へーデュエルも少しは勉強の役に立ってるのね」
遊馬「おう、特に150単位の計算なんか得意だぜ」
小鳥「やけに中途半端な単位ね」
遊馬「後カードの名前で英語も覚えられるんだ。サクリファイスとかセメタリーとかはデュエルモンスターズで覚えたし」
小鳥「何だか偏った英単語ばかり覚えてそうな気がするわ」
遊馬「つまりデュエルは楽しいだけじゃなく、やってるだけで勉強にもなるすげーもんなんだ。
だからデュエルさえやっていれば学校の勉強なんてする必要は……」
小鳥「ない訳ないでしょ。はい、次の問題解く」
遊馬「畜生」
遊馬「くそーやれどもやれども宿題が終わらない……もう勉強し過ぎて頭がヤババナイトだぜ」
小鳥「そういう冗談が言えるならまだ大丈夫よ。
しっかりやっておきなさいよね、休み明けのテストの範囲はその宿題の中から出るんだから」
遊馬「はぁ!? 休み明けからテストなんてあるのか? 俺そんなの聞いてないぞ!」ビックリボー
小鳥「ちゃんと終業式の時に右京先生が言いました。遊馬が忘れてるだけよ」
遊馬「こんだけ宿題あってさらにテストもあるとか鬼畜過ぎるだろ?
くそ、こうなったらアストラルに頼んで委員長辺りの答案をこっそり……」
小鳥「こら、堂々とカンニング計画を口にしないの」
小鳥「そういえば今日はアストラルの姿が見えないんだけど?」キョロキョロ
遊馬「気付くのおせーよ。アストラルなら今鍵の中だ。まーた何か難しい事考えてるらしい」
小鳥「明里さんも春お婆ちゃんも出掛けてるのよね?」
遊馬「ああ、ついでにオボミの奴も居ないぞ。何か年に一度のオボット同士の寄り合いがあるんだと」
小鳥「じゃあ今家には私と遊馬の二人だけ、か」
遊馬「そうなるな……って何だよ? 急にニヤついて何かおかしいのか?」
小鳥「別にニヤついてなんかないわよ」
小鳥「でも何だか久しぶりね、遊馬と二人きりって」
遊馬「そうか?」
小鳥「そうよ。特に最近は遊馬、アストラルと何時も一緒だし」
遊馬「あー、まああいつとは離れたくても離れられねーからな。たまに口煩い時とかにはどっか行っちまえって思うぜ」
小鳥「そんな事言って……実際にアストラルが居なくなったら遊馬、泣いちゃうんじゃないの?」
遊馬「馬鹿言え。そんな訳ねえだろ」
小鳥「そうかしら」
遊馬「そうだよ」
小鳥「でもアストラルを除いても遊馬の周りって前よりずっと賑やかになったよね」
遊馬「そうだな。俺は賑やかなのが好きだから嬉しいぜ」
小鳥「私も。だけどそのせいって訳でもないけど……これから遊馬とこんな風に二人きりで話す機会も減りそうだね」
遊馬「そうか? そんな事は無いと思うけどな」
小鳥「何で?」
遊馬「だって小鳥とはこれから先も長い間一緒に居ると思うからさ、二人だけで話す機会もそれなりにあるだろ?」
小鳥「……遊馬ってたまにそういう事をさらりと言うよね」
遊馬「そういう事って何だよ?」
小鳥「うん、分かってるから。遊馬がそういう意味で言った訳じゃない事くらい分かってるから。
伊達に長い間幼馴染やってないから」
遊馬「ますます意味が分からねえ……ていうかお前何か顔赤くないか?」
小鳥「……赤くなんかないもん。遊馬の気のせいよ」
遊馬「いや、どう見ても俺の前髪みたいに赤く……」
小鳥「だから赤くなんてなってないって言ってるでしょ!」ユカドン
遊馬「何で切れんだよ!?」
小鳥「とにかく遊馬は宿題の続きをやりなさい。しっかり勉強しとかないと思いの外早く私と離れる事になるかもしれないわよ?」
遊馬「何で勉強しないとお前と離れるんだ?」
小鳥「高校生になる時には受験があるの。同じ高校受けても遊馬が落ちたら別々の学校になるじゃない」
遊馬「あーでもお前が隣に居ないのは何か想像出来ないんだよな。
受験はかっとビングすれば大丈夫だと思うし多分心配ないだろ」
小鳥「遊馬の天然たらし!」
遊馬「良く分からねえけど何か酷い事言われた気がする」
…………
遊馬「や、やっと終わった……何かもう一生分の勉強をした気がする」グッタリチュア
小鳥「終わったのは数学だけだけどね。まだ国語も英語も理科も社会も残ってるわよ?」
遊馬「あのさ、特にムズい国数英の内一つをクリアしたんだからさ、残りは写させてくれるという方向には……」
小鳥「ならないから頑張ってね。でもさすがに疲れたみたいだし少し休憩しよっか。コーヒーでも入れて来てあげる」
遊馬「あーなら俺はデュエルコーヒーで」
小鳥「砂糖とミルク多めね。分かった」
………
小鳥「遊馬、コーヒー入れて……あれ?」
遊馬「Zzz……」
小鳥(寝ちゃってる……まあ何だかんだ文句言いながらもお昼からずっと宿題してたもんね)
小鳥「……とりあえず風邪引いちゃいけないから毛布だけは被せとかないと」ヨイショ
遊馬「Zzz……むにゃ」
小鳥(何だか幸せそうな寝顔ね。楽しい夢でも見てるのかしら?)ジィー
遊馬「むにゃ……かっとびゅんぐだぜ、おれ……むにゃむにゃ……」
小鳥(夢の中でまでかっとビングしてるの? もう、遊馬らしいわね)クスッ
遊馬「うにゃ……ことりぃ……」
小鳥(あれ、今私の名前を……もしかして遊馬の夢に私が出てるの?)
遊馬「むにゃ……だから……むにゃ……なんて……むにゃむにゃ……」
小鳥(な、何て言ってるのか気になるわね。もう少し耳を近付けてみようかな?)キキミミー
遊馬「むにゃ……」ガシッ
小鳥「へ? きゃあ!?」
グイッ……ダキッ
小鳥(ひ、引きずり込まれた? ゆ、遊馬に抱きしめられてる!?)ドキドキ
遊馬「むにゃむにゃ……マシュマロ~ン……」ハグハグッ
小鳥(ゆ、遊馬ったら完全に寝ぼけて……ちょ、そんなとこ触ったら駄目だってば!?///)
小鳥(早く離れないと……って、遊馬ってこんな力強かったの? 全然振りほどけないんだけど!?)ジタバタ
小鳥(こ、このままじゃ色んな意味で危険だわ。こうなったら耳元で大声で叫んで……)
遊馬「……小鳥」ボソッ
小鳥「!」ビクッ
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