P「真美が電動歯ブラシでオナニーしてた」 (43)
P「いやね、あれはたしか1日前……いや、2日前だったかなぁ」
P「カラッと乾いた空気とひんやりとした風が吹く夜でしてね」
P「お月様がまーるく輝いてるんだけどなんだかうす気味悪いんだよねぇ」
P「こう、時折雲でお月様が隠れてね、ちょうど事務所の前に着いた時も雲が半分ぐらいかかってたかな」
P「事務所の窓を半分だけ暗闇に落とすようにね、ぼぉーっとね隠れてるんですよ」
P「その時気づいたんだけど事務所の前の街灯が壊れてたんだね、だから暗かったんだ」
P「それでなんか薄気味悪いなーって思ってすこーし早歩きになって事務所前まで来たのよ」
P「外も寒かったし人通りもなかったから早く事務所の中で暖まりたいと思ってですね」
P「いつものように階段を登ろうかと思ったんだけどね、なんか様子がおかしいんだ」
P「さっきまでカラッと乾いてた空気が急にじめーっと湿ってるような感じでさ」
P「こんな風通しのいい場所なのになんだろうと思ってね、ふっと振り返るともうお月様が全部隠れてるの」
P「その時にはもういやーな感じが全身を駆け巡ってね、なんだろう経験則っていうのかな」
P「この階段を登ったらきっと何かあるぞ、って本能が教えてくれるの、今日はこのまま帰りなさいよーって教えてくれるような」
P「今思えば帰ればよかったんだけどね、登っちゃったんだよ、階段。これが間違いだったんだよねぇ」
P「コツン……コツン……」
P「あたり一面静かでね、しーーんとしてるんだ」
P「自分の足音だけが響いててね、なんかいつもよりも余計に響いてる気がしたんだよねぇ」
P「よく考えればその通りでさ、その日はもううちの事務所以外だれもいなかったんだ」
P「あ、765プロっていうのは雑居ビルの中に入っててね、ちょーどみんなお休みだったんだね」
P「相変わらずいやーな空気が肌にまとわりつくんだけどさ、俺も事務所に行かないといけないから仕方なく進んでたんだ」
P「1フロア……1フロア……って登って行っていくんだけどね、いつもはこんなに息切れしないのにさ」
P「その日に限ってドキドキしちゃってねぇ……まるで肩に誰かが乗ってるような」
P「もしくは誰かが足を引っ張ってるようなね、コツン……コツン……って足音は乾いて響くのに足取りは重くてねぇ」
P「思わずお守り代わりにポケットにしまっておいたやよいのパンツを握っちゃいましたよ」
P「でね、ここからがまた不思議でね……そうそう、ふと時計を見るともう23時を回っててさ」
P「こんな時間に事務所にいるのって小鳥さんぐらいだから静かなもんだと思ってたんですよ」
P「いや、あの人も一人で仕事してる時はすごく真面目なんですよ、ココだけの話」
P「っと、話がそれちゃいましたね、それでね、一段一段登るんだけどなーんか変な声が上の方から聞こえるんだよね」
P「女の人……いや、女の子かな、小鳥さんにしては若い、子供の声……しかも、あっ、とか、んっ、とかうめいてるような声がさ」
P「これはさすがにただ事じゃないぞって思ってさ」
P「俺も改めて身構えちゃってさ、その時に飲み込んだ生唾の音が体の中から響いてくるんだ」
P「ゴクッ……って、人間が緊張すると生唾を飲み込むってのは本当だったんだねぇ」
P「でも俺もこういう場面ってたくさん出くわしてるからさ、一応冷静になろうって思ってね」
P「スマホの懐中電灯であたりを照らしてみたんだけど、やっぱり誰もいないみたいんだ」
P「もちろん影も探してみたけど影も無くてね、となるとやっぱりさっきの声は事務所からかな……って思ったの」
P「ほっとした反面、やっぱり事務所に何かあるぞ?って思ったらさ」
P「怖くなってきちゃってねぇ……普段は何もないところでこういうことに出くわすとホント怖いんだよね」
P「だってほら、廃墟とかお墓とか、いかにもってところはあらかじめ準備していくけどさ」
P「普段から行き慣れているところでまさかこんなことになるなんて思わないからさ」
P「自分を落ち着かせるためにね、ふーーってひとつ深呼吸してみたんだけどね」
P「やーっぱり聞こえるんだ、あん……とか……んん……とかさ」
P「子供の霊っていうのは本当に怖いんだ、今までいろんな霊を見てきたけど、子供、しかも女の子の霊はね、うん……」
P「よっぽど行くのをやめようかと思ったんだけどね、この状況で引くのも逆に怖くなっちゃってね」
P「再びゆーっくりと登り始めたんですよ」
P「一段一段登るたびにね、はっきりと声が聞こえるようになってくるんです」
P「ああ……とか……うん……とか」
P「一歩ずつ踏み出すたびに疑念が確信に変わっていくんですね」
P「そうそう、こういう時に焦ると逆によくないんですね」
P「ゆーっくり、ゆーっくりと登っていくんです、じゃないと霊がびっくりしちゃって大変なことになりますから」
P「いつの間にか自分の足音すらしてなくてねぇ、もうほんとに無音の世界に女の子の声だけが響いてるんです」
P「だんだんと声が大きくなってきてね、ついに事務所の扉の前まで来たんですよ」
P「ドアノブに手をかけようかと思ったんですけど、ちょっと外から様子をうかがおうかと思ってですね」
P「ドア越しに耳を当てて澄ましてるとね、さっきまで聞いてた声がはっきりと聞こえるんですよね」
P「あっ……とか、時折んんっ、みたいな苦しそうな声もあげたりしてね」
P「あー、これはよっぽどつらいんだろうなー苦しいんだろうなーって」
P「そう思いながら声を聞いてたんだけど、どうにも声がおかしい」
P「霊の声にしてはやたらとはっきりとしてるし、声に張りもあるんだよね」
P「それでもう一度ドアに耳を当ててよーく聞いてみたんだ」
P「するとね、驚いたことに私分かっちゃったんですよ、この声は真美だな……って」
P「でもそうなるとますますおかしいんだ」
P「俺、人の気配ってものにものすごく敏感でね、気を研ぎ澄ましてみたんだけど真美の気配しかないんだよね」
P「これはもしかして真美が霊に乗っ取られてるんじゃないかと思ってさ、それもう戦慄したね」
P「自分の働く事務所でアイドルが霊に体を乗っ取られてるとか、ふつう考えられないからさ」
P「バタン!ってドアを開けて入ろうかと思ったけど、やっぱり霊に対して急な行動は危ないんだよね」
P「万が一真美に大変なことがあってもいけないから、今一度耳を澄ませて中の様子をうかがってみたんだ」
P「するとね、うめき声に混じって変なノイズの音がするんだ」
P「ブブブ……ブブブ……」
P「なんだろうなー、おかしいなーってさ」
P「そして改めてこれはただ事じゃないぞ、って思ったんだよね」
P「さすがにこれ以上このままってわけにもいかないから俺も意を決して中に入ろうと」
P「ガチャ……」
P「あれ、ドアノブってこんなに重かったっけ?って言うぐらい手が動かなくてねぇ」
P「しかも自分も手のひらにびっしょり汗かいちゃってたから余計にドアノブがひんやりしてねぇ……」
P「ギィィ……って音を立てながらゆーっくりとドアを開けてみたんだよね、そしたらさ……」
P「あきれ顔の律子が待っていたんだよ!」
P「お風呂入ってくる」
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