久「自動車部の活動をはじめるわよ!」(213)
この物語はフィクションであり、
登場する人物・地名・団体名は
すべて架空のものであり、原作とも異なります。
車の運転は交通ルールを守り、
安全運転を心がけましょう。
このSSは咲-Saki-の(一部)3年生ズが、大学に入って自動車部を作り自動車競技の全国大会を目指すお話です。
専門用語が多々出てくるので、車ネタが分からない人は正直楽しめないかもしれませんが、見て頂けると幸いです。
※一人称・二人称・関西弁がすごく怪しいです。
※実際の大学生活は全く分からないので、高校生活の延長線だと思ってください。
※初SSですので、その他指摘などがあれば宜しくお願い致します。
-とある大学-
怜(大学に入るため、竜華達と東京に上京してきたはええけど……)
竜華「……」
セーラ「……」
菫「……」
宥「……」フルフル
怜(知り合い率高すぎやろ……)
「それでは本日はここまで、後日レポートを提出するように」
竜華「んー、疲れたわー。怜ー!セーラ!帰ろー!」
怜「せやな」
セーラ「今いくでー」
-帰宅中-
竜華「そういえば怜、なんのサークルに入るか決めたん?」
怜「いや、何も考えておらへん」
セーラ「やっぱ麻雀やろ」
怜「麻雀か……」
怜「……麻雀はしばらくええわ……あのインハイ以来一巡先も見えへんしな」
怜「三軍レベルのうちが打っても、大した活躍できへんやろ……」
竜華「怜……」
セーラ「ま、大学生活は始まったばっかりや、のんびり考えればええねん」
竜華「せや!ゆっくり考えよ!ほら、コンビニで新商品売っとるで!行こ!」
セーラ「ここは俺がおごったるでー」
-コンビニ前-
???「な、お前なんでここにおるんや!」
セーラ「げえっ!洋榎!」
洋榎「げえっとはなんや、げえっとは!喧嘩売っとんのかセーラ」
セーラ「なんやと!」
洋榎「なんや!?」
竜華「落ち着きぃセーラ!」
恭子「主将も落ち着いてくださいよ」
由子「のよー」
洋榎「はん、まぁええわ。喧嘩ならいつでも買うで、どういう訳か皆同じ大学みたいやしな」
セーラ「そいつは好都合やな、いつでも勝負ができるっちゅーことか」
恭子「もう、同じ大阪上京組なんやから仲良くしましょうやー……」
由子「のよー……」
竜華「セーラもええ加減にせな、ほら!コンビニ入るで!」
竜華「ほな、これからよろしゅうなー」
恭子「ええこちらこそ、またガッコで」
ファミファミファミーマファミマミマー
「いらっしゃいませー」
怜「竜華と同じのでええよ」
竜華「わかったで。セーラは何買うんー?」
リューカー、コレウマソヤナイー? エー!コッチノホウガオイシイデ!
怜「……」
怜「ふう……」
怜(ふたりとも、明らかにウチに気を使こうとる)
怜(ホントは麻雀やりたいんやろな……)
怜(ウチもホントは麻雀をやりたいんや……)
怜(もう一度みんなと全国の舞台に立ちたいと思うとる……)
怜(せやけど、今のウチに……麻雀は……)
怜(それにもう、みんなに心配かけたりさせるのは嫌や……)
怜(……)
怜(竜華達長いな……まだ決まらんのかいな)
怜(竜華達の会計が終わるまで雑誌でも読むか……)
怜(えーと、WEEKLY麻雀TODAYに月刊ネットマージャンに……)
怜(これはなんやろ……プレイドライブ?) ※
怜(……車雑誌か)
怜(車といえば、ウチも免許持っとるんよな……)
怜(大学生になったら必要になるからって、オカンに無理矢理取らされたんやっけな)
怜(せや、皆でドライブ行ったり旅行するのも楽しそうやな)
怜「ちょっと見てみよ」
※プレイドライブ : 国内自動車競技専門誌
怜(……)ペラッ
怜(……)ペラッ
怜(なんやこれ……)ペラッ
怜(……)ペラッ
怜(車ってこんな動きするんかいな)
怜(しかもコレ、殆どが女性やないか)
怜(すごいわ……こんな競技もあるんやな……)
怜(これはなんやろ……)
怜(――全日本学生ジムカーナ選手権?) ※
※全日本学生ジムカーナ選手権 : 大学生・大学院生のみが参加できる自動車競技。咲-Saki-風に言えばインター
ハイみたいなもの
※ジムカーナ : 広場でパイロンの周りをくるくる回ったりスラロームをしたりする自動車競技
竜華「怜ー!何読んどるんー?」
怜「りゅ、竜華!?はは、なんでもないで!」バッ
竜華「ん~?怪しいで~?」
怜「ホンマ、なんでもないから!それより何買うたん?」
竜華「それがなぁ~、セーラったらねるねるねる○を何個も買うてなー」
セーラ「好きなんやからええやろー」
竜華「だからって20個は買いすぎやろ!」
怜「それは買いすぎやなぁ……」
セーラ「お、俺の金なんやからええやろ!」
ハハハ キャハハ ワハハー
???「……へぇ」
‐  ̄ ̄ ̄ 、
/ / \
´ ´ / ヽ ヽ
/ / // / ヽ ヽ
/ / // i{ /i } ', ',ヽ
| ,' !ハ{ ! ! / }! /ハ }レ} l
| | |ト-l-、_ハl, { }_レ!7´/| ! l
| | ハ__ヽヽハヽi ノノ__レ_ノl V l
| | l /イ⌒ヾ ` ´ イ⌒ヾヽ', V│
| ハヽ 廴_ノ 廴_ノ ´人 ∨!
| /、l 、 lノ\\
| /i ヽ " " / i ヽヽ
,' / l \ ヽ ' イ j 人 ヽ
/ /∧ ヽ ヽ ヽ> _ イ \' ノ ノノヽ )
γ´⌒´ハ ノヽ⌒ヽ
 ̄ ̄ ( /\ /⌒\
──────────── | ノ^ | |///// \
───────────── _--_ ,ゝ ヽ \ / ̄ ̄ ̄ ̄.\
|\ \ /\ :jjjj>二二) | 「ゝ ´ ̄ ̄ `ヽ「ヽ
|三\ /===┬ /〈 ̄ ソ |┤ , , .: .: .: 、i_|
──────────── |三 |( ヽ ヽ ヽ-´ | .!、i<|、|、|、ト大i,ノ| |
)三/|_ヽ ゝ/)ゲンツキ! .リ.○ ○'ク | / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
───────────── /三 \ ゝ ヽ _ ./.∧iゝ"丶フ _"ノi ハ.|< ホーwwwwwwwwwwwwww
────────── (\ゝ二_\ ヽ ヽ  ̄/ \/ Vリ ヽ Wリ \____________
\\\_ \ ヽ ( ) _ / |;||' / ̄ヽ
───────────── \\\ヘ \ /_ / /ヽヽヽ /|:|__|、ヽ.ヽヽ
──────────── |.| |0二\\,'ー-,'ゝノ|()ニ/////|| |:0.|.:||ゝ ||: | |
───────────── ゝゝ_/ /{r^ttヽニニ(ニ,ノノノノヽヽ 二_ノ/.//
ゝー ノ_ノー‐^ ゝー‐ノノノ
-帰宅-
怜「ふう、ただいま」
怜「……」
怜「夕飯は……さっき食べたから別にええか……」
怜「ネットでもしよ」ポチッ
怜(……)
怜(……あれや)
怜(別に気になる訳やないけど……)カチカチッ
怜(暇つぶしに検索するぐらいならええやろ……)カチカチッ
怜(――全日本学生ジムカーナ選手権っと)カタカタッーン!
怜(うお……結構あるな……)
怜(女子の部なんかもあるんか……なになに、例年に比べて女子の参加が大幅増加……)
怜(本年度はついに男子の参加者を大幅に超える見込み……すごいなぁ)
怜(お、動画もあるんやな、見てみよ)カチカチッ
怜(……)
怜(……!)
怜(これは……)
-翌日-
「えーこのようにして……であるからにして~~」
怜(……)
怜(あかん、講義の内容が全然入ってけぇへん……)
怜(昨日見た動画が頭から離れへん……)
怜(あんなの始めて見たわ……)
怜(しかも不思議と目が離せんかった……)
怜(まるでフィギュアスケートのように美しく……)
怜(天使が踊っているかのように綺麗で……)
怜(参加者達の目は輝いてて……)
怜(すごく……かっこええと思った……)
怜(結局、あれから動画を見まくってしもたわ……)
「……じ……ん」
怜(全日本学生ジムカーナ選手権……)
「……さん」
怜(ウチは……)
「園城寺さん!」
怜「え、は、はいっ!えと、どなたですか」
「ごめんなさい。私は竹井、竹井久よ」
怜「竹井…て、あんた清澄の!なんでここにおるん!?」
久「いやーまぁ色々あってね。そんな事よりも園城寺さん、もう講義終わったわよ?」
怜「うわ、ホンマや。全然聞いておらんかった。」
久「ふふ、良ければあとでノート写させてあげるわ」
怜「ホンマか!そいつは助かるわ!」
久「でも条件として……そうね、園城寺さんこの後暇かしら?」
怜「怜でええよ。まあ、暇やけど」
久「そう?じゃあ私も久でいいわよ。少し付き合ってくれるかしら?」
怜「……?」
-中庭-
怜「……」
久「……」
怜(どこ行く気なんやろ、このまま行くと駐車場やけど……)
久「……」
久「ねぇ、怜」
――あなた、コンビニで車雑誌読んでなかった?
怜(!?)
怜「な、なんのことや……」
久「昨日の帰り、たまたま見ちゃったのよね。貴方が洋榎達と一緒にいる所」
怜(こいつ……見とったんか)
怜「……べ、別に、最近免許を取ったからちょっと手に取って読んだだけや」
久「……へぇ」ニタァ
-駐車場-
久「着いたわ。さあ、乗って」
怜(この真っ赤な車……確か……)
怜「この車、久のなんか?」
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3519146.jpg.html
久「ええ、サバンナRX-7……FC3Sが私の愛車よ」
怜「そうなんか」
怜(昨日動画でちらっと見たわ)
怜(しかしこうして間近で見ると……)
怜(めっちゃ綺麗やな……20年以上も前の車らしいのに)
怜(最近の車なんかよりも全然かっこええしな……)
久「……」
久「良かったら運転してみる?」
怜「ファッ!?」
-車内-
怜(……) フォォォォ
怜(……結局ウチが運転する事になってもーたが)
怜(……なんやこれ)
怜(ハンドルは重いしクラッチも重い……)
怜(ミッションも入りづらいし……)
怜(しかもシートはめっちゃ低いし……教習車と全然違うやないか……)
久(……)
久(すごいわ……この子)
久(免許取りたての子って、違う車に乗ると大抵はエンストしたりギクシャクしたりするものだけど……)
久(この子は何事もないように動かしている……)
久(特にFCのような癖が強く、2000回転以下が使い物にならない車で……)
久(もしかしたら……この子……)
久「あ、そこのスーパーを左に曲がって頂戴」
怜「わかった」
-広場-
久「ここよ」
怜(めっちゃ山の中に来てしもーたけど……)キィィ
怜(ここはなんや?広い駐車場みたいやけど……)
怜(駐車場って割には人気がなさすぎるし、今まで人が来た痕跡すらなさそうや……)
怜(真ん中に赤いパイロンが一つ置いてあるのが不自然やけど……)
怜(ま、まさか!山奥に連れ込んでウチに酷い事するつもりなんか!?エロ同人みたいに!)
怜(そういえば聞いたことあるで、清澄の部長はとんでもない女タラシやて!)
怜(アカン、このままやとウチやばいんとちゃう!?)
怜「あ、あの、やっぱウチ」
久「じゃあ、運転交代ね」
怜「へ?」
久「……」バタム
怜「……」
怜(な、なんや、やっぱりこのままどこか行くんかな)
怜(アカン、完全に逃げ遅れた)
久「ねぇ、怜。正直に答えて頂戴」
怜「な、なんや……」
久「あなた……車が好きなの?」
怜「へ?」
久「コンビニで雑誌を読んでいた時もそうだったけど、私の車を見てる時も何か考えていたし」
久「何より、あなたの運転がとても免許取りたてとは思えないもの」
怜「あ、あー……」
怜(いきなり何を言い出すかと思えば、なんや……車が好きかて?)
怜「そ、その前に一つええか?」
久「なにかしら?」
怜「う、ウチに酷い事をしたりせえへんよな……?」
久「へ?酷い事……?」
怜「こんな山の中に連れてきて……そ、その……」///
久「……ぷっ」
久「あはははっ やだ、今までそんな事考えてたの?」プークスクス
怜「わ、笑い事やないで!」///
久「んもう!しないわよ、そんなこと!」クスクス
怜「っ……じゃあ、何の用があってここに来たんや」
久「あー……」
久「……」
怜「なんや、やっぱり言えない事でもするつもりやったんか?」
久「……そう……ね、私の話を聞いてくれるかしら」
久「私はさ、去年のインターハイで全国優勝して以来、麻雀に冷めてしまったの」
久「嫌いになった訳ではないのよ?麻雀は今でも好きよ」
久「ただ、あれ程熱を入れていた麻雀も目的を達成してしまえばこの有様ね」
久「インハイを終え麻雀部を引退した後、私が配を握ることは無くなってしまった」
久「そんな時、なんとなく自動車免許を取ってみたの。長野だと車はあった方が便利だし」
久「そして、車に乗るようになってからは世界が変わったわ」
久「車が自分の手足となって、いつでも好きな時間に遠い場所へ連れて行ってくれるの」
久「知人のツテで今の車に乗るようになってからは、更に車にハマったわ」
久「ほら、長野って山道が多いでしょ?クネクネした道が多くてね」
久「そこを思いっきり攻めるのよ、心臓が飛び出そうなくらいのスピードでね」
久「私はとにかく夢中になったわ……毎晩のように車で山を攻めに行って……」
久「……かつて麻雀をしていた時のように、夢中になれる物が私には出来た」
久「今の私にとって、車というのは無くてはならない大切な存在になったわ」
怜「……」
怜「それが……ウチをここに連れ出す理由になるんか?」
久「……」
久「……私は思ったの。大好きな車で、みんなと全国の舞台に立ちたい」
久「みんなと一緒に成し遂げたいのよ。もう一度。車を通じて全国に行きたいの」
久「全国へ行くには、あなたの力が必要なのよ、怜」
怜「……」
怜「なんで……」
怜「なんで自分なん……?」
怜「ウチは免許取りたてやで……」
怜「大した技術もなきゃ自分の車すら持ってへんのに……」
久「いいえ、あなたにはセンスがある」
久(免許取り立ての子があんなスムーズに車を運転出来るわけないじゃない)
久(技術とかテクニックとか、そういう問題じゃないわ)
久(たった少し乗っただけでその車のクセを理解し、対処する)
久(そのとんでもない吸収力……これをセンスと呼ばずになんと言うのかしら)
久「――そして何より」
久「あなたは車が好き。そうよね?」
怜「……」
久「……」
怜「……わからんのや」
久「え?」
怜「わからんのや、ウチが車を好きなんかどうなんか」
怜「確かに興味はあるで、自分の知ってる車とは全く違う動きをして」
怜「美しく綺麗で、それでいて輝いていて。この世界にもあんな物があるなんて思ってもみなかったわ」
怜「自分もあんな風になれたらって……楽しいやろなって思ったわ……」
久「……」
怜「……でも」
怜「それで車が好きかと聞かれても、わからんのや」
怜「昨日今日でその世界を知ったウチには……わからないことだらけや……」
怜「そりゃな!ウチだって竜華たちとまた全国に行きたいわ!」
怜「でも麻雀はもう出来へん!一巡先も見えへんのや!!」
怜「麻雀に冷めて次は車で全国やて?アホか!出来るかそんなん!」
怜「だいいち別世界やろ、あんなん。ウチには出来へんわ!!」
怜「なりたくてもなれないものなんて、世の中沢山あるんや!」
怜「ウチに出来るわけないっ!出来へんのや!」
久「……」
久「……そう」
久「……ねぇ怜、シートベルトつけて頂戴」
怜「えっ」
久「こっちの赤い方……4点式シートベルトね」 ※4点式シートベルト : 競技などで使うかっこいいシートベルト。
怜「ひ、久……?」
久「怜……あなた、ウチには出来ないって言ったわよね」
久「なりたくてもなれないものなんて、沢山あるって」
久「その言葉は、決して正しくないわ」
久「出来ないとか出来るわけないとか……そういう言葉は出来ない人間が言うものじゃない」
久「”やろうとしない”人間が言うものよ」
久「私は出来るわ。何故なら”やろうとする”人間だからよ」
怜「久……」
久「……しっかり掴まってなさい、舌噛むわよ」スチャッ
怜「ひ、久……何をする気や……」
久「見ていて怜、私が証明してあげる」ゴグッ
久「私もあなたも、決して出来なくなんかはない」ォォン ォォン
久「そしてこれは、私もあなたも”やれる”ものなのよ!」フォォォン ンォォォオオ!
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3519429.jpg
怜「――――ッ!!」
ォォォオオ!! ギューーッ ギュアァ
怜「―――ッ」
怜(な、なんやこれ!)
怜(身体が重力で押し潰れそうや……!)
怜(身体が前後左右にあっちこっち行きよる……!)
久「……ッサイドターン……ッいくわよ!」
怜(――ッ!!!)
怜(――身体が持っていかれるッ!)
怜(景色がすごい速さで横に流れよった……!)
怜(それに車のこんな音、聞いたことあらへん……!)
怜(……怖い)
怜(……車が叫んでいるかのようや)
怜(いや違う……これは叫んでいるというより……)
――咆哮や
――車の想いと久の想いが共鳴して 直接ウチに伝わってくる――
怜(……)
怜(……ウチにも”やれる”んやろか……)
ォォォ―ッ
-駅前-
久「ここで良かったかしら?別に家まで送ってもいいんだけど」キィィ
怜「い、いや……ここでええわ……寄る所もあるし……うぷっ」キモチワルー
久「ご、ごめんなさいね、ちょっと調子に乗りすぎちゃったみたい」テヘ
怜「はは……ほんま頼むで……」ガチャ バタム
久「……」
久「ねぇ、怜」
怜「……なんや?」
久「……いいえ、なんでもないわ」
怜「……」
怜「久」
久「……なに?」
怜「……」
怜「……また明日な」
久「……ええ、また明日!」ブォォン...ンォォォン...
怜「……」
怜「……はは」
怜「心臓がまだバクバク言っとるわ……」
怜「麻雀で緊張した事は多々あったけど、それとはまた違う……」
怜「こんな経験初めてやな……」
怜(これは緊張でもない、単に心拍数が上がっただけでもない……)
怜(”コーフン”や)
怜(ウチはなんだかんだ言って、楽しかったんや……)
怜(見たこともない景色、聞いたこともない音、受けたこともない感覚)
怜(全てが新鮮で……)
怜(全てに魅入られた……)
怜「……」
怜「はーっ……全く、久のやつ。とんでもない事してくれよって……」
怜(忘れられる訳ないやろ、あんな事させられたら……)
――ウチにも”やりたい”事が出来てしもうた
-翌日-
「では、今日はここまで。幸せだなぁ……僕は昼休み前のこの瞬間が一番幸せなんだ……」
怜(結局……)
怜(あれからロクに寝ないで、車のことを沢山調べてもうた……)
怜(お陰様で眠いわ)
竜華「とーきー!今日はもうおしまいやろー!帰ろー!」
怜「竜華か……」
竜華「怜ーって、どうしたん!その顔!隈ができとるで!」
怜「ちょっと寝ずに調べ物をな」
竜華「んもー、いくら身体の調子がよくなったからって、無茶はあかんよー?」
怜「はは、すまんな、気をつけるわ」
「失礼、君が園城寺 怜か?」
竜華「……誰やあんた、ウチの怜に何の用や」
怜(別に竜華のとちゃうけどな)
「すまない、私は加治木。加治木ゆみだ」
怜(加治木……どっかで聞いた事あるな)
竜華「で、その加治木さんが怜に何の用や」
ゆみ「そうだな……竹井 久からの呼び出し……と言えばわかるか?」
怜(久!)
竜華「竹井 久……?あの清澄のか?」
ゆみ「そうだ、まぁ詳しい事は話せないが」
竜華「……」
竜華「怜、帰ろ。ちょっとコイツ怪しいで」
怜「……」
怜「すまん竜華、約束があったの忘れとったわ。一緒に帰れへんわ」
竜華「!と、怜!そんなー!!」
怜「すまんな竜華、埋め合わせはそのうちするから、今日はホンマ堪忍な」
怜「わざわざどうもです、加治木さん」
ゆみ「構わないさ、私も丁度呼ばれているんだ、一緒に行こう」
トキー!アカーン イカントイテー!
-駐車場-
ゆみ「……」
怜「……」
ゆみ「少し車で移動する事になる。さ、乗ってくれ」
怜「わかった」
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3519566.jpg
怜(この車は確か……CP9A……ランサーエボリューションⅥか)
-車内-
ゆみ「……」ォォ
怜「……」
怜「……加治木さん。あんたも久に誘われたんか?」
ゆみ「……誘われたというのは何の事だ?」
怜「すっとぼけても無駄やで、こんなけったいな車に乗りよって」
怜「一緒に車の全国へ行こうって言われたんとちゃう?」
ゆみ「……」
ゆみ「……君はどうするつもりなんだ?」
ゆみ「見たところ、免許は持っていても車を持っているようには思えないが」
怜「……」
怜「ウチは――」
-同時刻 駅前-
菫「……」ソワソワ
菫「よ、よし、待ち合わせ時間の15分前だな」
菫「それで……待ち合わせ場所は……」
「菫ちゃん……?」
菫「!? ゆ、宥!? 随分と早いんだな!」///
宥「菫ちゃんこそ……まだ15分前だよ?」
菫「いや、待ち合わせの15分前到着は基本だ。むしろ遅いくらいだ」フンス
宥「ふふっ……菫ちゃんらしいね……」
菫「///」テレリコ
菫「そ、それで、用事というのは?」アセアセ
宥「うん……菫ちゃんには知っておいて欲しい事があるの……」
宥「一緒に来てくれる……?」
-コンビニ駐車場-
菫「……コンビニ?」
宥「ううん……少し車で移動するの」
菫(車……?)
宥「……」ペタペタッ
宥「うんっ……まだタイヤはあったかい……」
宥「それじゃあ……行こっか」
菫「あ、ああ……」
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3519606.jpg
菫(車って……コレの事を言っているのか?)ガチャ
菫「うおっ!?」
菫(な、なんだこれは……車内がまるで公園にあるジャングルジムみたいだ……)
宥「ご、ごめんねっ……乗り辛くて……」
菫「い、いや、驚きはしたが問題ない……」
菫(なんなんだこれは!!)
ブォン...ォォォオオオ....
ヒソヒソ ネェ イマノッテ ホラ
やえ「どしたー」
「あ、小走さん……」
やえ「あれか?マフラーの子とその仲間か?」
やえ「マフラーの子が、車のタイヤ触ってる時に見えたんだよ」
――すごいタイヤカス
やえ「ありゃ相当走ってる」
「……」
やえ「まぁ心配しなさんな、私は小3の時から(タイヤに)ヒビすらできない」
――ニワカは相手にならんよ
-宥 車内-
宥「……」ォォォ
菫「……」
菫(き、気まずい……)
菫(妙に緊張して汗もびっしょりだ……)
宥「……」
菫(何か……会話は無いのか!)
菫「と、ところで宥、この車は……借りてきたのか?」
宥「あっ……え、えっとね……私の車なの……」
菫「そ、そうなのか……」
菫(このジャングルジムみたいな車が宥の車だって……?)
菫(勘弁してくれ、何かの冗談だろ……)
菫「す、すごいじゃないか、いくら大学生とはいえ、自分の車を持っているなんて」
宥「……う、うん、山に囲まれた所に住んでたから……車が無いと大変なの」
菫「ああ、こっちと違って阿知賀は車必須みたいだしな」
宥「うん……それに車があれば、いつでもあったかく出来るし……」
菫(さっきからやけに暑いと思ったら、暖房入れてたのか……)
-ゆみ 車内-
怜「――だから、ウチは正直になろうって決めたんや」
ゆみ「……そうか」
怜「加治木さんはどうなんや、ただ久に誘われたからって理由だけでは無さそうやけど」
ゆみ「……」
ゆみ「……そうだな、君になら話してもいいだろう」
ゆみ「私と久は、麻雀の地区予選で競い合った学校同士でね」
ゆみ「麻雀の合同合宿などを経て、それ以来仲良くさせて貰ってはいるんだが……」
ゆみ「ある時、久が麻雀を辞めたという話を聞いてな」
ゆみ「直接、久に問いただしてみたら他にやりたい事が出来たなんて言うもんだ」
怜「……”クルマ”か」
ゆみ「ああ、久の話を聞いていた私は、気がついたら久の隣に乗っていた」
ゆみ「最初は理解できなかった、久が何故こんなものをってね」
ゆみ「……」
ゆみ「……久は」
ゆみ「学生の自動車競技大会で優勝して、それを足掛かりにプロを目指すんだそうだ」
ゆみ「それには私の力が必要だと……一緒にやってほしいと」
怜「……それで誘いに乗ったんか?」
怜「あんたは賢そうな人間やと思ったけど、案外ちょろい人間やな」
ゆみ「……」
ゆみ「……そうだな、実に馬鹿げていると思うよ」
ゆみ「私はその時免許すら持っていなかったし、車の知識も皆無だった」
ゆみ「……」
ゆみ「でも」
――久なら 本当にやってくれるんじゃないかって――
-広場-
久「……」
久「来たわね……」
ォォン..ブォン!
ゆみ「すまない、待たせた」ガチャ
怜「……」バタム
久「大丈夫よ、こっちもさっき来た所だから」
ゆみ「そうか、福路はまだ来てないのか?」
久「美穂子は車を受け取ってから来るそうだから、もう少ししたら来るんじゃないかしら」
ゆみ「そうか、ならあとは松実さんだな」
久「そうね」
怜(松実さん……?松実さんも来るっちゅーことか?)
久「怜もいらっしゃい、待ってたわ」
怜「あ、ああ、昨日ぶりやな」
久「ふふ、そうね。ま、積もる話は全員揃ってからにしましょ」
ゆみ「噂をすればなんとやら……だな、来たみたいだぞ」
ォォ...ォォン...!
宥「遅れてごめんなさい……」ガチャ
菫(あれは……清澄の竹井?それに千里山の園城寺まで)バタム
ゆみ「気にするな、こっちも今来た所だ」
久「こんにちは、松実さん。……ところで隣にいるのは」
菫「弘世 菫だ。インハイでは世話になったな」
久「ええ、その節はどうも」
怜「まさかあんたらも久に……」
菫「……?なんのことだ?」
久「いいえ、私が呼んだのは松実さんだけだけど……」
宥「ううん……菫ちゃんは私が連れてきたの……全部知っておいてほしいから……」
久「……なるほど、そういうことね」
菫「なにがなんだか……お前達はここで何をやっているんだ……?」
久「そうね、丁度もう一人も来たみたいだし、そろそろ本題に入りましょうか」
怜(もう一人……?)
ァァァァ...ウァァン...!
美穂子「ごめんなさい、私が最後かしら」ガチャ
ゆみ「気にするな、それより脚はもういいのか?」
怜(あれは……)
菫(風越の福路……?)
美穂子「ええ、ショックが完全に抜けきっちゃいましたから、思い切ってクスコのZero-1を組んでみました」 ※
菫(足……?ショック……?何を言っているんだこいつらは)
怜(思い出したわ、長野から個人戦出場していた風越女子の福路美穂子や)
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3519730.jpg
怜(車はEK9 シビックタイプR……ライト形状とバンパーから察するにおそらく後期やな)
怜(見た目とは違って、結構ガチな人なんやな)」
久「さて、これで全員揃ったわね」コホン
久「本題に入る前に、初顔合わせの人がいるみたいだし簡単な自己紹介でもしておきましょうか」
※ショック : サスペンションのバネ。
久「私は竹井久、長野の清澄高校出身!今日は皆さんをお会いできて光栄だわ!」
美穂子「福路美穂子です、長野の風越女子出身です。みなさん、よろしくおねがいします」
ゆみ「同じく長野の鶴賀学園出身、加治木ゆみだ。二人とは地区大会決勝戦以来の付き合いでな、よろしく頼む」
怜「大阪の千里山女子出身、園城寺怜いいます。よろしゅう」
宥「あ、あのっ……奈良の阿知賀女子学院から来ました……松実宥です。よろしくお願いします」
菫「……」
菫(えっ、私も言うのか?)チラッ
宥「……」コクリ
菫「……あー、コホン」
菫「白糸台高校出身、弘世菫だ。宥……松実さんに連れてこられて来た訳だが……これは一体何の集まりなんだ?」
久「……そうね、では本題に入りましょうか」
久「単刀直入に言うと、皆には自動車部に入って欲しいの」
菫「自動車部……?」
怜「そんな部活あったかいな……」
久「ええ、今は無いんだけど、数年前まではこの大学にあったみたいなの」
久「それで皆には、自動車部を作るにあたって部員になってほしいのよ」
菫「……自動車部とやらを作って、竹井は何をするつもりなんだ?」
久「……当然、目指すのよ」
――全日本学生大会
――全国優勝を
怜「……全日本学生ジムカーナ選手権か」
菫「えっ?」
久「ええ……まぁジムカーナに限らず、フィギュアでもラリーでもダートラでもドリフトでもいいんだけど」 ※
久「やるからには、当然ジムカーナで優勝を目指したいわね」
※ジムカーナ : サーキットや広場にてパイロンでコース作り、タイムを競う競技。大学の自動車競技ではダートラと共に定番。
※ダートラ : 舗装されていない(土や砂利)サーキットを走行し、タイムを競う競技。
※ラリー : 2人1組で決められた道路区間を指定された時間に誤差の無いよう走る競技。学生大会も少ないながらちゃんとある。
※ドリフト : 車を意図的に滑らせて美しさを競う競技。個人で参加ができる全日本学生ドリフト大会というものがある。
※以上簡単な競技説明、詳しい解説は各自ググって頂くか大学自動車部あたりで。早稲田のは分かりやすいです。
菫「……あー……そもそも、その”じむかーな”というものが分からないんだが」
久「そうね……まぁ詳しい説明は後でするけど、簡単に言えば自動車競技の一種よ」
菫「自動車競技……というのは……あれか、峠を猛スピードで走ったりする……」
ゆみ(それはローリング族じゃないのか……?)
美穂子(最近見かけなくなりましたよね、ローリング族)
怜(居なくなったんならそれはそれでええんちゃうの?)
久「……え、えっと……それは全く違うんだけど」
久「自動車競技って言うのはもっと合法的で封鎖されたクローズドコースで行うものよ」
菫「ああ、昔TVでやってた”えふわん”というものか?」
久「厳密には違うけれど、まあ大体そのようなものだと思ってくれていいわ」
菫「……」
菫「…………るな」
久「え?」
菫「……ふざけるな!」
久「なっ!?」ビクッ
菫「自動車競技だと?そんな危ないものに、宥を関わらせてたまるものか!」
菫「もし万が一、宥が大怪我でもしたらどうするんだ!!」
ゆみ「お、おい」
菫「第一、なんで宥がそんなものをやらなきゃならんのだ!」
菫「お前の自己満足に、私の宥を巻き込まないでくれ!!」
菫「私は認めんぞ!!」
宥「……」ワナワナワナ
美穂子「……」
怜「……」
久「……」
久「弘世さん……あなた、松実さんの恋人なのよね?」
菫「……そ、そうだ!だからなんだと言うのだ!」
久「……」
久「弘世さん……松実さんは……」
菫「黙れ!貴様の言葉は信用できん!」
菫「お前らがなんと言おうと、宥はそんな事をするわけないし、させない!」
宥「……」カタカタ
菫「宥、もう帰ろう。こいつらといるとロクな目に合わない」
菫「それと、こいつらとはもう二度と関わらない方がいい」
宥「菫ちゃん……」ガクガク
久「……」
菫「お前らも金輪際、二度と宥に関わるな」ギロッ
宥「菫ちゃん……!」
菫「なあに、宥。君が気にする事はない、こんな連中の話に耳を傾けるだけ無駄だ」
菫「さあ、帰ろう」
宥「菫ちゃん!!」
菫「っ……」ビクッ
宥「……菫ちゃん」
宥「気持ちは嬉しいけど……」
宥「私ね……やるよ……ううん、やりたいの……」
宥「私……好きだから……車が」
菫「ゆ……う……」
宥「私ね……もっと上手くなりたいんだぁ……」
宥「私は……お家のお手伝いもあまりできないし……」
宥「麻雀でもあまり活躍できないから……」
宥「せめて……大好きな車だけでも上手くなって……」
宥「……もっともっと活躍して……有名になって……」
宥「旅館の宣伝がしたいの……」
久「松実さん……」
宥「そ、それにねっ……みんなと一緒になって」
宥「全国を目指すっていうのも……」
宥「すごく……楽しそう……」ポワァッ
菫「……」
ゆみ「……」
怜「……」
怜「……」
怜「ウチは……ほんのつい最近、車に興味を持ったばかりやけど」
怜「自分のやりたい事を……やればええと思う」
怜「それがどんなに危険な物であっても……」
怜「自分自身の気持ちに、嘘はつけへんもんな」ニコッ
宥「……うん……うん……!!」
久「……」
久「弘世さん、ジムカーナというのは本来こういった広い場所でやる競技なの」
久「広い場所でやるうえに、速度も大して出せないからとても安全な競技なのよ」
久「そのうえ、低い速度でいろんな挙動を体験することも出来るから、車の運転で万が一が起こった時の対処方法も
学べるの」
久「ジムカーナを極めておけば、より普段の運転が安全になるわ」
久「それでも貴方は、やりたいという恋人の意見を押しのけて、自分の意見を押し付けるのかしら」
菫「ぐ……」
久「ね?」
宥「菫ちゃん……」
菫「……」
菫「私は……」
菫「私は……認めたわけじゃない」
ゆみ「こ、こいつ!」
菫「でも!」
「「!?」」
菫「……宥が本当に好きで、どうしてもやりたいというのであれば」
菫「私は……止めない」
宥「……!菫ちゃん……!」パァアッ
菫「……」///
美穂子(イイハナシデスワー)ポロポロ
怜(うわ、マジ泣きかいな)
怜(……)
怜(でも……)
怜(これが恋人の正しい反応なんやろな……)
怜(もしも自分が同じ立場やったら……少なくともいい気はせえへん)
怜(……)
怜(竜華……)
怜(ウチがジムカーナをやる言い出したら、竜華は……どう思うんやろか)
怜(……)
-駅前-
宥「……」ブォン...ォン...キィィ
菫「……じゃあ、ここで」ガチャ
宥「……うん」
菫「……」
宥「…‥菫ちゃん」
菫「……なんだ?」
宥「……菫ちゃんは、私が自動車部に入ったら嫌なの……?」
菫「……」
宥「……」
菫「その……なんだ……」
菫「嫌……という訳じゃない……ただ」
菫「出来れば、こういう趣味の事をもっと早く宥の口から聞きたかった……かな」
宥「……ごめんなさい」
菫「いや、いいんだ」
宥「……私ね」
菫「……?」
宥「菫ちゃんにも、入ってほしいんだぁ……自動車部」
菫「私がか……?」
宥「うん……きっと楽しいよ」
菫「しかしな……私は車に関しては無知だ、車もなきゃ免許もない」
宥「うん……それでも」
宥「それでも……一緒にやりたいの」
菫「……」///
宥「そ、それにねっ?共通の話題が増えると、きっと楽しいよっ」
宥「私……好きな人と車の話をするの……夢なんだぁ……」
菫「……宥」
菫「そう……だな。考えておこう……」
宥「うん……!」
菫「……じゃあ、また明日」
宥「うんっ……またねっ」
ォォン....ォォォオオ....
菫「……」
菫(ふぅ……甘いな私は)
菫(あんな言い方されたら、断るに断れないじゃないか)
『私……好きな人と車の話をするの……夢なんだぁ……』
菫「……」
菫(……全く)
菫(……かつてはシャープシューターと呼ばれた私も)
菫(恋人の前では、ただの乙女だな……)フッ
菫(……)
菫(ふふっ)
菫「さぁて、銀行で貯金を下ろしてこないとな……」
菫「これから教習所に通うんだ、参考書も探さないとな」フフッ
-久 車内-
久「……今日は来てくれてありがとね」ォォォ
怜「なんや突然」
久「……もしかしたら来ないんじゃないかって思ってたから」
怜「あほか、昨日あれだけの事をしておいてよく言うわ」
久「だからこそよ、あれだけの事をしたんだもの」
久「いくらジムカーナが安全と言っても、車を操作するのは人間」
久「大きなミスをすれば、それだけで大きな事故にもなりかねないわ」
久「……弘世さんが言っていた事もごもっともね」
怜「……」
怜「弘世さんか、今回の事どう思とるんやろな」
久「……」
久「そうね、誰だって恋人を危ない目に合わせたくないわ」
久「自分の知らない所で危ない事をしていたら、誰だって心配になるもの」
怜「……」
久「……それでも」
久「私は松実さんに……いえ、弘世さんにも、自動車部に入ってほしいと思ってるわ」
怜「……」
怜「…‥そうか」
怜「しかしまぁ、松実さんがやりたいなんて言い出すとは思ってもなかったわ」
久「そう?」
怜「せやろ、松実さんみたいな人が自動車競技をやるなんて普通思わへんやろ」
久「そうね、でも彼女すごい速いのよ?」
怜「そうなん?」
久「……彼女、松実さんは不思議なドライバーでね」
久「彼女が車を運転すると、何故かタイヤが暖まりやすいのよ」
久「もちろん、どの状況下でもタイヤがすぐに暖まるという事でも無いのだけど」
久「ジムカーナのように、タイヤが冷えた状態でアタックする競技では、彼女の不思議な能力が必要不可欠だわ」
久「技術面も問題なし、冷え性……というのが少し気になるけど、運転中にヒーターをつけるぐらいなら無問題だわ」
久「彼女が自動車部に入ってくれるなら、すごい戦力になる……!」
-アパート前-
久「ここでいいかしら?」
怜「ええよ、わざわざここまで送ってくれてありがとな」
久「いいわよ、怜の住んでいる場所もわかったし」
怜「……ストーカー紛いな事はやめろ?」
久「しないわよ。どちらかと言えば、私はされる方だもの」
怜「言ってろ」
怜「……」
怜「なあ、明日はどないするん」
久「え?」
怜「明日も、今日みたいに集まるんか?」
久「……」
久「そうね、明日はいいわ」
久「やらなきゃいけない事もあるし」
怜「……?」
-部屋-
怜「……」
怜「ふぅー……」
怜(今日も色々あったなぁ……)
怜(弘世さんが怒った事も驚いたけど、松実さんにもやるって言い出した事も驚いたわ)
怜(人は見かけによらへんなぁ……)
怜(……)
怜(……ふわ……)
怜(なんか急に眠くなってきたわ……)
怜(……そういえば……昨日から……全然……)
怜(……寝て……なかった……)
怜(わ……)スピー
怜(……)zzz
-翌日 食堂-
竜華「とーきー!こっちやでー!」
怜「すまんな、待たせたわ」
セーラ「気にすんな。それよりはよ食べよ、腹減ってしゃーないわ」
竜華「んもう、セーラはさっきからそればっかやなぁ」
怜「はは、セーラは食いしんぼやなぁ」
怜(今日は1限から講義やったけど、ぐっすり眠れたせいで調子ええわ)
怜(久々に竜華達とのお昼やし、たまにはのんびりするのもええやろ)
「お、いたいた。とッ……園城寺さん!」
怜(……?ひ、久!?)
久「っと、食事中だったかしら」
怜「い、いや、これから食べるとこやけど……」
竜華「あ、あんた……清澄の……!何しに来たんや」
久「そう睨まないでよ、ちょっと園城寺さんに話があるだけよ」
竜華「はぁ?そう言って怜を連れ出して、酷い事をするつもりとちゃうやろな?」
久(私ってどんなふうに見られてるのよ……)
怜「そ、それで話ってのは?」
久「そうそう、ちょっと園城寺さんを借りるわね~」ガシッ
怜「お、おい、ちょっ」
竜華「ちょ、何勝手に……!ああん、とーきー!」
-廊下-
久「ごめんなさいね、お友達との食事中に」
怜「いや、まだ食べる前やったからええけど……それで、話とはなんや?」
久「そうそう、これ」パラッ
怜「……なんやこれ、同好会申請書?」
久「自動車部の申請書よ。新しく部活動を作るには、同好会を作って昇格する必要があるから、まずは同好会ね」
怜「やらなきゃいけない事ってこれかいな……ん?なんか知らん人の名前が書いてあるけど」
久「蒲原さんね。昨日は来てなかったんだけど、ゆみと同じ高校の出身の人でね。手伝ってくれるそうよ」
怜「へー。あ、弘世さんの名前も書いてあるな」
久「ああ、彼女ね。松実さんが危険な目に合わないようにって」
怜「昨日散々言っておいてこれかいな」
久「ま、部員が増えてくれる事に変わりはないわ。それじゃあ、怜も書いてくれる?」
怜「わかった」カキカキ
久「……」
久「うん、大丈夫ね。ありがとっ」
怜「ええってことよ、それで次の活動はいつするんや」
久「そうね……今はとりあえず、部活動に昇格する為の部員を確保しなきゃならないから……」
怜「部活になるには何人必要なん?書いてある人数だけでも7人やけど」
久「同好会から部活動に昇格するには、最低でも11名、顧問1名が必要になるわ」
怜「あと4人やな……」
久「そうね、出来れば早めに活動したいけど、今は部員の確保が最優先だわ」
怜(部員の確保……か、竜華たちに頼めば入ってくれそうやけど……)
怜(いや、それはアカン。竜華たちをウチの我侭に付き合わせたくない)
怜(それに、竜華たちに知られたら反対されるに決まっとる)
怜「……すまんな、部員の確保は力になれそうにないわ」
久「いいのよ、これも部長……っと、これから会長になるのかしら?ま、私の役目だから」
久「お昼まだだったんでしょ?ごめんなさいね、時間取らせちゃって」
怜「かまへんよ」
久「あ、これ連絡先ね。何かあったら連絡頂戴」サッ
-食堂-
竜華「あ!怜戻ってきた!とーきー!!」
怜(そんな大声で手ェ振らんでもええわ、恥ずかしいっちゅーねん)
怜「途中で抜けてすまんな、さ、食べよ」
セーラ「もう先に食っとるで。あ、これウマイでー」ホレ
怜「ん……」パク
怜(お、美味いなコレ……)モグモグ
怜(……そういえばここ最近バタバタしすぎて、ちゃんとしたご飯食べるの久しぶりやなぁ)モグモグ
竜華「それで怜、話ってなんやったん?あれ清澄の竹井さんやろ~?」
怜(一人暮らしの自炊は大変やけど、たまには自分で料理作ろかなー)モグモグ
怜「んー?あー、ちょっと同好会の話で……」モグモグ
怜(……ハッ!?ウチ何を言うとん)
竜華「ど、同好会やて!?なんや怜、サークルに入ったん!?」ガタン
セーラ「水臭いで怜ー、なんで言ってくれへんのー?」
怜(い、いかん、とにかく誤魔化した方がええな)
怜「ど、同好会ちゃうで!その……あれや!どう航海するっちゅー……」
竜華「……」
セーラ「……」
怜(アカン)
竜華「……」
竜華「怜、誤魔化さんといて」
竜華「うちら友達やろ?正直に話してくれるよね?」
怜(これはやってしまいましたなぁ)
怜(どうしよ……)
竜華「……」
セーラ「……」
怜「……」
怜「……」ハァ
怜「わかった……ちゃんと話すわ」
竜華「怜……」
怜「……でも」
怜「今はお昼や、さっきからお腹減ってしゃあないわ」
怜「帰る時に、な」
竜華「……」
竜華「……うん、絶対やで?」
怜「……ああ」
-帰宅中-
怜「……」
竜華「……」
セーラ「……」
竜華「……それで怜、話してくれるんよね?」
怜「……ああ」
怜(これはもうダメかもわからんわ)
怜「……実はな、自 「おーおー、なんや、セーラ達やないか」
セーラ「……なんや、洋榎かいな」
洋榎「なんやとはなんや、やんのか!」
セーラ「なんやと!」
洋榎「なんや!」
恭子「もう、お二人方やめてくださいよ!」
由子「のよー」
竜華「なんやあんたら、ウチら忙しいねん。用があるなら後にしい」
洋榎「なんやつれへんのー、暗い雰囲気醸し出しとったからうちが和ましたったってのにー」
セーラ「いらんお世話やっちゅーねん」
洋榎「なんやと!」
セーラ「なんや!」
恭子「まぁまぁ、セーラさんも主将も落ち着いてくださいよ」
恭子「でも何があったんです?」
竜華「怜がなぁ、隠し事しとるみたいなんよ」
怜「えっ」
洋榎「隠し事するっちゅーことは、何か後ろめたい事があるからやろ」
竜華「そ、そうなん!?怜!!」
怜「い、いや、それは」
怜(アカン、全くもってその通りやわ)
恭子「それは確かにそうですね、隠し事自体は別に問題ありませんが」
恭子「後ろめたい事をしとるということは、何か悪いことをしとる可能性もあります」
洋榎「どれ、このうち愛宕洋榎に全部話してみぃ!どんなに悪いことでもウチが全部聞いたるで!」
怜(……)
怜(ここまで…‥やな……)
怜「……わかった。全部話すわ」
途中で寝ちゃってすみません。
保守や支援ありがとうございます。少し外出するので、夕方前にまた投下していきます。
長編化するかどうかは分かりませんが、長くなりそうならSS速報も検討してみます。
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