真美「心誤」 (72)


――注意

百合でエロです。
苦手な方はそっ閉じまたはブラウザバック推奨です。
大丈夫という方はのんびりお付き合いいただけると幸いです。


書きためがありますので次から投下していきます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1388727032


真美「おはおは~!」

午後、事務所の扉を開け元気良く中へ飛び込む。
プロデューサーと事務員であるピヨちゃんが笑顔で迎え入れてくれた。
静かな事務所でソファーに座り雑誌をめくる。

私は765プロダクションという芸能事務所でアイドルをしている。
まだ駆け出しだが最近ではプロデューサーの頑張りもあり少しずつではあるが知名度も上がってきた。

真美「亜美は今日も大変そうだなぁ…。」


壁に掛けられたホワイトボードを見ると横線一本で上下に分けられた下半分はほぼ真っ白なのに対し上半分は真っ黒に埋まっていた。
私の双子の妹が所属するユニット、竜宮小町のスケジュールはほぼ毎日埋まっている。
姉である私の方は、レッスン漬けの毎日からは脱却しつつある程度だった。

雑誌に目を通していると見覚えのある人物が載っていた。
亜美と同じ竜宮小町に所属しているあずさお姉ちゃんだった。

真美「あ、あずさお姉ちゃん載ってたんだ。」

事務所に乱雑に置かれていた雑誌を無作為に選んで雑誌に載っていたという事が嬉しくなり顔が綻ぶのが自分で分かる。

???「ただいまもどりました~。」


事務所の扉が開き声がする方に目線を動かすと今まさに雑誌に載っている人物がそこに立っていた。

真美「お帰り、あずさお姉ちゃん!」

あずさ「あら真美ちゃん、ただいま。」

声をかけると柔らかな笑顔で返してくれた。
見ているだけで胸が暖かくなるのを感じる。

亜美「たっだいま~。帰ってきたよん!」

その後ろからシュシュで右の髪をちょこんとまとめた妹、亜美がひょっこり顔を出した。


真美「あ、亜美もいたんだ。お帰り~。」

亜美「うん、今日はあずさお姉ちゃんと一緒だったから一緒に帰ってきたんだ~。」

真美「そうなんだ。」

仲の良い2人を見て、胸がちくりと痛むのを感じた。
そう、分かってる。
自分があずさお姉ちゃんの事を好きで、その思いは届かなくて。
そして亜美が、私の欲しいモノを持っているという事。


亜美「じゃあ亜美達は報告も終わったし行くけど真美はどうする?」

真美「真美はこれから現場があるから2人で帰りなよ~。」

あずさ「まぁそうなの…。残念ね。」

亜美「そっか~、まぁお仕事じゃちかたないね。」

真美「へへへ、ごめんね2人とも。また今度ね!」

亜美「うん、じゃあまた後でね真美。」

仲良く事務所を後にする2人を見送り現場に行く準備をする。
今日は割と楽な部類な現場だ、しっかりやろう。


夜、仕事が終わり帰宅すると、玄関に亜美の靴がなかった。
親に聞いてもまだ帰ってないと言う。
電話をしても繋がらないとのことだ。
一体何処に行っているのだろうか。

心配して電話をかけようかと思った所で玄関の扉が開き亜美が帰ってきた。

亜美「たっだいま~。」


真美「亜美…。」

亜美「およ、どしたの真美?」

真美「どうしたのじゃないよ!こんな時間まで何してたの!?」

亜美「あぁ、ちょっとあずさお姉ちゃんと遊んでてね…」

靴を脱ぎ脇をすり抜けようとした時にふわりと嗅ぎ覚えのある匂いを感じた。
自分の家のじゃないシャンプーの、覚えのある匂い。
これは、あずさお姉ちゃんの――――――。


亜美からあずさお姉ちゃんのシャンプーの匂いがするということは、亜美は今さっきまであずさお姉ちゃんの家にいて、シャワーを浴びる必要があったということだ。

真美「待ってよ亜美!」

背後に去り階段を登ろうとした亜美の袖を掴む。

亜美「え?」

引っ張られた勢いでバランスを崩し、頭上に亜美が落ちてくる。
ごつんと鈍い音がして、そこで意識が途絶えた。


―――――み…!…き…よ…ま…!おき…まみ!!



亜美「起きてよ真美!」

体を揺すりながら覗き込む“自分の顔”を見て完全に目が覚める。

真美「……え!?あ、ま、亜美!?え、でも真美の顔…?」

亜美「訳わかんないけど、起きたら亜美が亜美に覆いかぶさってて亜美が真美になっちゃってたんだよぉ~!」

真美「え?え?何どういうこと?」

亜美「だから亜美と真美が入れ替わったっぽいって事!!」

真美「え?…えぇぇぇぇ!!?」

昔見たドラマみたいなことが、今こうして自分の身に起こってしまったのが信じられない。
信じられないのだが、起こってしまったのだから受け入れるしかないのが現実だ。


亜美「ど、どうしよう…。」

真美「パ、パパ達に相談してみる?」

亜美「でも、そんな事したらお仕事が…」

真美「だからって…!」

亜美「律っちゃんなら話せばわかってくれ…ないか。」

ふと、悪魔の囁きが頭の中に響く。


――――このままでもいいのではないか。
亜美は自分に無いものを持っている、アイドルとして成功して、その上あずさお姉ちゃんまで。
自分はいつも、我慢して、見送るしかできなかった。
このままでも、いいのではないのか!?

そして私は…。


真美「暫く、様子を見よう。」

亜美「真美?」

悪魔の囁きを受け入れることにした。

真美「多分、ここで真美達が考えても答えは出ないと思う。」

亜美「お仕事は…?」

真美「このままお互いのフリをするのがいいんじゃない?」

  「それか“真美”が真美のフリしてるフリして“亜美”が亜美のフリしてるフリでもする?」


亜美「‥‥‥‥‥‥。」

真美「どうする?」

亜美「亜美は…。」

深く考え込む亜美。

亜美「…わかった、真美が亜美のフリしてよ。」

真美「…うん、わかった。」


亜美は、私が亜美になることを承諾してくれた。
私が亜美としてアイドルをするのはもう随分と久しぶりの事。
昔と違って今の亜美は売れっ子アイドル竜宮小町双海亜美なのだ。
差は付けられたが歌も踊りも、家で亜美とやっているから引けは取らないと自負している。

翌朝、亜美に成りきって事務所へ向かう。
亜美の服を着て、亜美の荷物を持って家を出る。
スケジュールは亜美から聞いてバッチリ。


真美「おはおは~!」

律子「おはよう亜美。」

真美「およ、律っちゃんだけ?」

律子「伊織とあずささんはもうすぐ来るわよ。」

その言葉を皮切りに扉が開き竜宮小町のメンバーが事務所に集まった。

あずさ「おはようございます~。」

伊織「おはよう律子、あずさ、亜美。」

真美「2人ともおっはろ~ん。」

律子「さて、それじゃあ今日も頑張りましょうか!」


気合の掛け声と共に事務所を後にし現場へと向かう。
今日はイベントゲストのお仕事。

律子「それじゃあ、いつも通りに頑張ってちょうだい!」

そう言って離れていく我らが竜宮小町のプロデューサー。

伊織「良い?律子はいつも通りって言ったけどそれじゃあ物足りないわ!」

  「いつも以上に私達のパフォーマンスを見せつけてやるのよ!」

あずさ「足を引っ張らないように頑張るわね~。」

真美「ま…亜美ならダイジョーブ!余裕っしょ!」

その日のイベントは結果から言えば大成功。
観客の反応も良く、クライアントも喜んでくれた。


律子「お疲れ様、良かったわよ。」

真美「んっふっふ~。そ~でしょそ~でしょ。」

伊織「……当然でしょ!」

あずさ「…」

律子「あずささん?」

あずさ「…えっ?」

律子「どうしたんですか?なんだかボーッとしてるように見えましたけど…。」


あずさ「あ、あらあら~。どうしたのかしら私ったら。」

伊織「まぁ、あずさがボケっとしてるのはいつものことじゃない。にひひっ♪」

あずさ「まぁ、ひどいわ伊織ちゃんたら…。」

律子「まぁまぁ。無事に終わったんだから次の現場に向かいましょう。」

真美「は~い!」

この日は結局3現場を周り終わる頃には外は薄暗くなっていた。


あずさ「はぁ、今日も疲れたわね…。」

真美「お疲れあずさお姉ちゃん!」

あずさ「あら亜美ちゃんもお疲れ様。」

真美「今日は大変だったね~。」

あずさ「…そうね。」

真美「どしたの?考え事?」

あずさ「いえ、何でもないのよ。」

真美「そなの?ん~、何かあったら亜美に相談してね?」


あずさ「ふふふ、ありがとう亜美ちゃん。」

微笑みを向けるとあずさお姉ちゃんは頭を撫でながら抱きしめてくれた。
とても柔らかくて、いい匂いがする。

あずさ「ねぇ、亜美ちゃん。今日も、ウチに寄っていかない?」

突然の誘いに心臓が跳ねた、鼓動が高まり頬が熱くなる。


真美「いいの?」

あずさ「いいも何も、私が来て欲しいのよ。」

真美「じゃあ、うん。わかった。」

願ってもない誘いに飛びつき気持ちが高揚する。

あずさ「それじゃあ行きましょうか。」

反省会を事務所で行い、それが終わると手を引かれその場を後にする。
若干道に迷いつつも無事あずさお姉ちゃんの住むマンションに到着した。


あずさ「いらっしゃい亜美ちゃん。」

開錠して扉が開く、先に中に入ったあずさお姉ちゃんが迎え入れてくれた。

真美「おっ邪魔しま~…んっ!?」

部屋に入り扉を閉めた所でいきなり唇に柔らかな感触を感じた。
直後、口内に侵入してくる異物に驚き目を見開く。

真美「ん…ぷぁ…あ、あず…おね…ん…っ」

あずさ「ん~。んふっ…はぁ…。」

突然の出来事と行為の気持ちよさに頭がのぼせたようにぼーっとする。

真美「あずさ…お姉ちゃん?」

あずさ「うふふ~、今日も気持ちいい事、しましょうね…。」


綺麗な顔が淫靡な微笑みに変わり、柔らかな体に包まれて玄関から寝室へ抱きかかえられながら移動する。

あずさ「亜美ちゃん…可愛いわ…。」

ベッドの上に寝かせられ、あずさお姉ちゃんが再び私の唇を喰む。

真美「ふぁ…ん…ちゅ…。」

鼓動が高まり、唾液と吐息が交じり合う。
昂った衝動が限界に達し、頭の中で何かが弾けるのが分かった。


あずさ「うふふ…きゃっ!」

私の上に乗っていたあずさお姉ちゃんの肩を押し、組み伏せる。
太ももの間に自分の膝を差込み肩を押さえたまま強引に唇を奪う。

あずさ「亜美…ん…ちゅっ…はぁ…亜美ちゃ…!」

喰んだ唇から離れると間に橋が掛かっているのがわかった。
そこから首筋に唇を移し、吸いつつ舌を這わせる。


あずさ「ひぁっ…亜美ちゃ…ん…だ…めぇ…どうしたの…?きょ…は…。」

困惑した声をあげるあずさお姉ちゃんを更に攻める。

あずさ「ひぅ…!ちょっ…んぅ…いつもと…ちがっ…あっ!」

いつも…?
つまり、こうしてあずさお姉ちゃんと肌を重ねる事を亜美は何度か経験しているという事で、そこでまた自分の中で劣情が燃え上がるのを感じた。

強引に衣服を剥ぎ取り、その豊満な乳房を隠す下着が顕になる。
フロントホックを外し胸が完全に姿を現した。
柔肉を突き弾力で指が押し戻される。
指を胸に食い込ませ、そのたわわに実った乳房を楽しむ。


あずさ「亜美…ちゃん…っ焦…らさ…ないでぇ…!」

緩やかな快楽にしびれを切らせたあずさお姉ちゃんが切なげな声を上げる。
その言葉に口角がつり上がった。

あえて触れずに取っておいた果実の先端を指先で転がす。

あずさ「~~~~ッッ」

限界まで欲していた体が指先一つでうねり、乱れる。

真美「ごめんね…もう我慢できないや…。」


衝動が抑えきれず小さく、しかし固くそそり立つ乳首を口に含み、まるで飴玉のように舌でころころと転がす。

あずさ「くっ…はっ…あぁっ!あみちゃ…んんっ!…はぁっ!…もっとぉ…!」

ぴちゃぴちゃと水音を立てながら乳房の頂点を攻め立て、乱暴に揉み、吸う。

あずさ「あっ…みちゃん…!…そん…もっ…やさ……くぅっ!」

真美「はむっ…気持ちいいの?…あずひゃおねぇひゃん…?」

あずさ「うん゛…はっ…あぁ!いい…のぉ…とっても…気持ち…いいわぁ…っ!」


私の愛撫であずさお姉ちゃんが悦んでいる。
その事実に胸が躍り下腹部に熱が集まるのを感じる。
左の乳房を口で喰み、右の乳首を右手で弄ぶ。
空いた左手を自らの秘所にあてがうと、糸引く淫液が手にこびり着く。
そのままあずさお姉ちゃんを攻めながら秘所を慰める。

真美「ふっ…んっ…あむ…ちゅるっ…ふぁ…っ」

あずさ「はぁ…はぁ…んっ!」

攻め続けられて目がとろんと虚ろになったあずさお姉ちゃんはとっても妖艶で綺麗だった。
淫靡な匂いが部屋に充満し、頭が何も考えられなくなる。


あずさ「ねぇ…あっ…みちゃん…そろ…そ…ろ…ね?」

上半身だけ素肌が顕になっているあずさお姉ちゃんが、足をもじもじと動かしていた。

真美「あずさお姉ちゃん…どうして欲しいの?」

この期に及んでシラを切ってみる。

あずさ「意地悪しないでぇ…。ねぇ、お願い、切ないの…。」

目に涙を浮かべ寵愛を請う姿がとても淫らでまた劣情が燃え盛る。

真美「それじゃあ自分で下も脱いでよ。」

そう言い放つと立ち上がりジーンズに手をかけずり下ろし、ブラジャーと同じ黒紫のレースのついたショーツが姿を現す。


真美「エッチな下着だね。」

あずさ「は、恥ずかしい…。」

ショーツに手をかけた所で股間に顔をうずめ舌を動かす。

あずさ「ひっ…あぁぁぁぁっっ!!!」

膝をガクガクと震わせ崩折れるあずさお姉ちゃん。

真美「んぷっ…はぁ…。」

あずさ「はぁ~っ…はぁっ…はぁ~っ…!」


力なくベッドに倒れるあずさお姉ちゃんのショーツを脱がせる。
汗と愛液が混じり、すえた匂いが鼻腔を刺激する。

ぐったりとしたあずさお姉ちゃんのてらてら光る秘所に再び舌を這わせる。

あずさ「ふぁっ…!?…まっ…あみちゃ…ひぁ…!!まって…!!」

真美「んふ…ちゅ…はぁ…んぅ…。」

私の唾液とあずさお姉ちゃんの愛液が淫らな水音を響かせる。
舐めながら自分を慰め、高揚していく。


あずさ「まって…あっ…さっき…いっ…ぁあっ…くっ…ばっかり…か…らぁ…。」

どうやら先ほどショーツ越しに舐めた時に達してしまったようだ。

真美「ん…ぁん…あむ…ちゅ…。」

あずさ「ん…だめ…また…んんんんんッッ!!!!」

腰が大きく跳ねた。
膝が笑い、ベッドに体を沈ませる。

真美「ん…ちゅ…ん…んんんっ!!」

劣情が限界まで高まり、自らも達する。
カクカクと膝が小刻みに震えあずさお姉ちゃんの肢体に覆い被さる。

柔らかな温もりに包まれ、そこで意識が途絶えた。


――

――――

――――――


目が覚めると裸のままのあずさお姉ちゃんが横で気持ちよさそうに寝息を立てている。
時刻は日付が変わってだいぶ経った頃。
今からだと電車も動いていない。

携帯電話を取り出すと両親と亜美から連絡が来ていた。
さらには律っちゃんと兄ちゃんからも。

それぞれに侘びのメールを入れ、のそのそとベッドから這い出てカバンからお茶を取り出し一口飲む。
飲んだ所で背中に重みと温もりと柔らかさが押し付けられた。
背後からあずさお姉ちゃんが抱きついてきたようだ。


あずさ「あ~みちゃんっ。うふふ~。」

真美「あずさお姉ちゃん…。」

あずさ「今日はいつもより積極的だったわね~。」

背中に体を預け頬を赤らめながら情事の感想を述べるあずさお姉ちゃん。

真美「えへへ、何か、抑えが効かなくってさ…嫌だった…?」

あずさ「そんなことないわ。」

否定してから私の耳を甘噛みしてきた。
思わず体がびくりと反応する。


噛むだけではなく舌を入れられあずさお姉ちゃんの吐息と唾液のぴちゃぴちゃという音が脳を直接刺激する。
片耳を指で塞がれたせいで水音だけが脳内で鳴り響いているような錯覚を覚える。

真美「ふぁ…あずさ…おね…ちゃぁん」

あずさ「とぉ~っても…」

口を離して耳元で囁かれる。




―――――気持ち良かったわよ…。



翌朝、あずさお姉ちゃんの家から事務所に向かう。
コンビニで下着を買って事務所のトイレで履き替える。

亜美「真美!」

真美「亜美…。ダメだよ大きな声で名前呼んじゃ。今真美なのは亜美の方なんだから。」

亜美「あぅ…。ゴメン。」

指摘に怯む亜美。


亜美「それより昨日はどうしたの!?電話しても出なかったし!」

真美「あずさお姉ちゃんと“遊んでた”ら寝ちゃってさ…。ごめんね、亜美。」

顔が驚愕に歪む亜美。

亜美「どうして…?」

真美「誘われたから。」

唇を噛み、悔しさを顕にする亜美。

真美「それじゃあ真美…ううん、“亜美”はお仕事に行くね。」

悔しがる“真美”を尻目に現場へと向かう。
アイドルとしての地位と、想い人と結ばれた喜びで今日の私はとても気分が良かった。
今の私ならば何をやっても上手くいく。
そう思っていた。
しかし。




―――――崩壊はあっけなく訪れる。




それから幾日か経過した日だった。

律子「さぁ、今日は全国オーディションよ!日本中に名前を売るビッグチャンスだからしっかり頼んだわよ!」

伊織「まっかせなさい!このスーパーアイドル伊織ちゃんにかかればどうってことないわよ!」

あずさ「うふふ、これは気合を入れなくちゃいけませんね~。」

真美「…亜美にお任せだYO~!!」

檄を飛ばして楽屋を後にする律っちゃん。

全国オーディションで合格者は1組、狭き門な分得られる実績もでかい。
かつて経験したことの無い大きな舞台に体が震える。


あずさ「亜美ちゃん、大丈夫?顔色が良くないわ~。」

伊織「大丈夫なの?亜美。あんたらしくもない。」

真美「へ、平気平気!チョーでかいステージだからちょっと緊張しちゃってさ…。」

伊織「ふ~ん、アミューズメントミュージックの時より緊張してるじゃない。」

真美「そ、そかな…?」

あずさ「そうねぇ、あれより大きな仕事の時はあんまり緊張してるようには見えなかったけれど…。」

真美「いやいや、キンチョーくらい亜美でもするYO!」

アイドルとして数歩先にいる亜美と、まだまだ駆け出しの私では圧倒的に踏んだ場数が違っていた。
小さな現場であれば乗り越えられても、こんなに大きな現場では経験値がそもそも足りていない。

そこを、2人に疑問を持たれたのだ。


伊織「震えてるじゃない、本当に大丈夫なの…?」

あずさ「亜美ちゃん…。」

真美「あ、亜美なら大丈夫だよ!」

伊織「アンタがいいならいいんだけど…。」

あずさ「えぇ…。」

去勢を張り、作り笑いを浮かべる。


律子「準備できた…って亜美!?あんたなんて顔してんのよ!?」

打ち合わせを終えた律っちゃんが楽屋へ戻ってきた。

真美「へ?」

律子「もうすぐ本番だってのに、どうしちゃったの!?」

真美「いや、亜美は…」

立ち上がろうとしたが膝に力が入らずその場に力なく倒れる。

あずさ「亜美ちゃん!」

駆け寄ってきたあずさお姉ちゃんに抱き抱えられた所で視界が黒く塗りつぶされた。


目が覚めた時、既に収録は終わっていた。

真美「ん…。」

伊織「目が覚めた?」

真美「いお…りん?」

あずさ「大丈夫?」

真美「あずさ…お姉、ちゃん。」

律子「気がついたようね。」

真美「律っちゃん…。」

伊織「単刀直入に聞くわね。」

医務室と思しき部屋のベッドに横たわる私と見下ろす3人。


あずさ「あなたは…真美ちゃんね?」

真美「………亜美だよ。」

伊織「その言葉を、この状況で信じられると思う…?」

律子「あんたが倒れて、今日の収録をどうしたか、わかるかしら?」

あずさ「……“真美”ちゃんを、呼んだのよ。」

心臓が跳ねた、早鐘を打った様に鼓動が早く、大きくなり嫌な汗が吹き出る。
部屋の隅には亜美の姿があった。

真美「っ…!」


あずさ「真美ちゃんを呼んで、代わりに入ってもらって確信したの。」

   「この子は亜美ちゃんだって。」

伊織「この前の現場から何となく違和感を感じてたのよ。」

  「歌も踊りもいつも通り、でも、どこか噛み合ってないような違和感を。」

あずさ「えぇ、三人だけど二人でステージに立っているような感じが…。」

真美「…。」

あずさ「私が感じた違和感は、それだけじゃあないんだけれど…。」


律子「ステージが終わって真美を問い詰めたわ。」

伊織「それで…」

亜美「ごめん、全部話しちゃった。」

真美「亜美…。」

律子「あんた達、本当に入れ替わってる…のよね。」

亜美「うん。」

律子「はぁ…。どうして黙ってたのよ!」


亜美「…ごめんね、律っちゃん。」

あずさ「亜美ちゃん…。」

伊織「全く、どうしてこんな大事なことを…。」

亜美「うん、ごめんいおりん。」

真美「真美が言い出したんだよ、このままでいようって。だから、亜美は悪くないよ…。」

あずさ「あm…真美ちゃん。」

真美「このままでいれば、真美の欲しいものが全部手に入るから、だから…。」

亜美「亜美だって、それを受け入れたんだもん。真美にいっつも我慢させてるんじゃないかって、だから…。」


あずさ「律子さん、少し三人で話してもいいですか?」

律子「あずささん…?」

伊織「…行きましょう、律子。」

律子「伊織!…分かったわ、あずささんよろしくお願いします。」

いおりんと律っちゃんが部屋から出ていく。
医務室には私とあずさお姉ちゃんと亜美だけが残った。


あずさ「真美ちゃん。どうして、このままでいようと思ったの?」

真美「亜美になったら、今とは違う景色が見れると思ったから…。」

亜美「真美…。」

あずさ「それだけ…?」

真美「…真美だって…。あずさお姉ちゃんの事…。」

あずさ「…。」

亜美「真美…。」


真美「そうだよ、真美は無いものねだりで今の状況を作ったんだよ。」

あずさ「そんな…」

真美「いいんだよ、入れ替わっただけでどんなこともできる気になって」

  「挙句皆に迷惑をかけて。」

亜美「真美…。」

真美「あずさお姉ちゃん、ごめんなさい。」

あずさ「真美ちゃん…。」

真美「亜美にも、酷いことしちゃったね。本当にゴメン。」


亜美「…。うん、そうだよ。」

あずさ「亜美ちゃん…!?」

亜美「この間帰ってこなかった日、あずさお姉ちゃんと何してたの?」

不意の指摘にあずさお姉ちゃんの顔が赤くなる。

あずさ「そ、それは…あぅ///」

亜美「答えてよ、真美。」

真美「え~っと、まぁ。気持ち、いいこと?」

亜美「やっぱり…。ずるいよ!亜美だって…。」

あずさ「あ、亜美ちゃん…///」


真美「しょうがないじゃん!誘われたんだから!」

あずさ「ま、真美ちゃん…///」

口論をしていたら扉が開き律っちゃん達が戻ってきた。

律子「大丈夫ですか?」

伊織「話はまとまった?って、あずさ、顔が赤いわよ?」

律子「一体何が…?」

あずさ「な、何でもないのよ!?ね?」

怪訝な顔の二人がこちらを見た。


真美「二人ともごめんね、パパとママに話して元に戻る方法を探すよ。」

亜美「真美…。」

真美「今日わかったんだ、突然竜宮小町に入ってもダメなんだって。」

  「真美は真美で、亜美は亜美なんだ。」

そう、いきなり大きな舞台に立とうとしてもそこに至るまでの下積みがなければ成功なんてできやしない。

真美「真美は真美として、トップアイドル目指すよ。」


その日、家に帰り両親に入れ替わった経緯を話して緊急入院することになった。
様々な検証の果てに、どうにか私は双海真美に戻る事が出来た。

私は相変わらずそこそこの知名度のアイドルを続け。
亜美も相変わらず、いや、以前にも増して輝きを放っている。

真美「たっだいまぁ。」

それから数日が経った事務所。
現場から帰ってくると、ピヨちゃんが迎えてくれた。

いつかのようにソファで雑誌をめくっていると事務所の扉が開いた。


あずさ「ただいまもどりました~。」

真美「あずさお姉ちゃん…。おかえりっ。」

亜美「亜美もいるよん!」

真美「お、亜美おかえり!」

あずさ「ねぇ、真美ちゃん。この後は何か予定、ある?」

真美「え?」

亜美「あずさお姉ちゃんの家でこれから遊ぶんだけど、真美も一緒に行かない?」

真美「いい…の?」

あずさ「えぇ、良かったら3人で“遊び”ましょう?」


遊ぶという言葉の裏に隠された意味を汲み取り体が熱くなるのを感じた。
事務所を後にして、あずさお姉ちゃんの家を目指す。
先を歩く亜美の後ろに私とあずさお姉ちゃんがついていく形で歩く。

真美「ねえあずさお姉ちゃんって亜美と…その…。」

あずさ「えぇ、そうよ。」

真美「いいの?真美が入っても?」

率直な疑問をぶつける。
ふわりと微笑んだあずさお姉ちゃんが耳元に顔を近づけ囁いた。


あずさ「あの日の夜が忘れられなくて…。」

吐息混じりの声が耳朶を打つ。

亜美「二人とも何してんの~?おいてっちゃうよ~?」

気づいたら立ち止まっていたらしく、亜美との距離がだいぶ開いてしまった。

あずさ「あらあら、ごめんなさい亜美ちゃん。今行くわね~。」

数歩進んでこちらを振り返ったあずさお姉ちゃんが手を差し出した。

あずさ「行きましょう、真美ちゃん。」

その笑顔を快楽に歪める姿が脳裏に蘇り、胸が高鳴る。
差し出された手をとって逸る気持ちを抑えて歩き出す。
快楽の園へ。


Fin

終わりです。
正月の真昼間からすいませんでした。

ご気分を害された方申し訳ありません。
お目汚し失礼いたしました。

書き忘れてました。
タイトルは

こころあやまる

と読みます。
いつも読みにくいタイトルですみません。
では失礼します。

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