暗黒地竜メディウス率いるドルーア帝国によって
祖国アリティアを追われた王子マルスは、辺境の島国タリスへと落ち延びた。
マルス「人々が殺され、国が滅びようという時に、
ぼくは王子だというのになにもすることができなかった……」
マルス「ジェイガン、ぼくはもっと強くなって必ずアリティアに戻る!」
ジェイガン「マルス王子……」
マルスは自らの無力さを恥じ、常軌を逸したトレーニングを己に課した。
それからおよそ二年──
二年という月日は、人を変貌させるには十分すぎる時間であった。
【第1章 マルスの旅立ち】
~ タリス王国 ~
マルスたちアリティア騎士団は、タリスの東にある砦に駐屯していた。
マルス「……ぬぅっ!?」ピクッ
ジェイガン「どうされましたか、マルス王子」
マルス「数百の殺気がこの国に迫っている……おそらくは海賊だな。
クックック、いい退屈しのぎになりそうだ」
一方、海賊たち──
ガザック「野郎ども、いよいよタリスに乗り込むぜ!」
ガルダ兵「おーっ!」
ガザック「城の奴ら全員ぶっ殺して、お宝を──」
ゾ ク ッ ・ ・ ・
ガザック「なんだ、今の悪寒は!?」
ガルダ兵「ガザックさん、あの島には鬼が……鬼がいますぜ!」
ガザック「あれはタリスじゃねェ……鬼ヶ島だ!」
海賊たちは引き返した。
マルス「くっ……海賊どもめ、なぜだか知らぬが引き返しよったわッッッ!
せっかく、ぼくの力を試す好機だったというのに……」ビキビキッ
ジェイガン「落ち着いて下さい、マルス王子」
ジェイガン「海賊と戦えなかったくらい、なんだというのです。
マルス王子は、これからもっと大きな敵と戦わねばならないのですから」
マルス「大きな敵?」
ジェイガン「お父上を裏切ったグラ王国、強大な竜騎士を擁するマケドニア王国、
大陸最強の騎士カミュのいるグルニア王国……」
ジェイガン「──そして、暗黒地竜メディウスのドルーア帝国……」
マルス「メディウスか……是非とも肉を喰らってみたいッッッ!」ジュルリ…
マルス「すまなかったな、ジェイガン。
ぼくとしたことが、少々取り乱してしまった」
マルス「──ところで、モロドフの姿がないがどうした?」
ジェイガン「モロドフ伯は、長期休暇で旅行に行くそうです」
マルス「そうか」
タリス城──
シーダ「マルス様、海賊を追い払ってくれてありがとう!」
マルス「気にするな、シーダ。あとで体で返してくれればよい」
シーダ「もう、マルス様ったら!」
タリス王「──えぇと、国を出たらまず、ガルダの港町に行かれるとよろしかろう。
あと優秀な傭兵であるオグマをお貸ししよう」
(助けなどいらないと思うが)
オグマ「オ、オグマです」
マルス「クスクスクス……なかなかの使い手のようだ。
戦争が終われば、いずれキサマともやり合いたいものだ」ジュルリ…
オグマ(俺、いらない気がするんだが……)
【第2章 ガルダの海賊】
~ ガルダの港町 ~
村人「ありがとうございます、マルス王子」
マルス「ぬうっ!?」
村人「マルス王子が近づいただけで、首領ゴメスをはじめとした
海賊たちはみな逃げたり足を洗ったり自首したりで……
おかげでガルダの海賊は滅びました」
村人「あ、あと指名手配を受けていた詐欺師が逮捕されたらしいです」
マルス「お、おのれぇぇぇッッッ!」ビキビキビキッ
村人「ヒィィィィッ!?」
マルス(くそっ、またしても戦うことができなかった……)
ジェイガン「マルス王子、落ち着きましょう」
ジェイガン「サムスーフの山には、サムシアンと呼ばれる山賊の根城があります。
山賊の中には、ナバールという名うての剣士もいるとのこと。
手始めにそこを襲撃いたしましょう」
マルス「うむ」
【第3章 デビルマウンテン】
~ サムスーフ山 ~
タッタッタ……
ジュリアン「レナさん、大丈夫か?」
レナ「ええ……」ハァハァ
ジュリアン「山のふもとにアリティア軍が来ているらしい。
そこまで逃げればなんとか──」
ズシン…… ズシン……
ジュリアン&レナ「!?」
マルス「ほう……こんな山奥で盗賊と修道女が逢引きとはな……。
なかなかお熱いではないか……クックック……」
ジュリアン&レナ「~~~~~ッッッ!」
マルス「安心しろ、ぼくはナバールとかいう剣士とやり合いに来ただけだ。
キサマらのジャマをするほど野暮ではない」
マルス「ん? 女、なんだその杖は」
レナ「こ、こ、これは、ワープの杖と申しまして……」ガタガタ
マルス「ほう、貸してみろ」スッ
カキィィィィンッ!
ホームランボールが如く、ジュリアンは山のふもとに吹っ飛んだ。
マルス「なるほど、ワープしよったわ」
レナ「ジュリアーンッ!!!」
マルス「心配するな、多分死んではおらん。
修道女なら杖が使えるだろう、あとで治療してやるがよい。
そうすれば、より親密な仲となれるであろう」
ジェイガン「戦争の最中に恋路のアシストを行うとは、さすがはマルス王子」
マルス「褒めるなジェイガン、照れるではないか」ニヤッ
ナバール「かわいそうだが、死んでもらうぜ──!?」
マルス「ほう、キサマがナバールか。
“紅の剣士”と称される剣豪、是非とも戦いたいと思っておった」
ナバール「い、い、いや……俺はナバールではない」
マルス「ちがうのか」
ナバール「アイツが……ナバールだ」スッ
ハイマン「え!?」
マルス「ふむ……剣士なのに斧とは変わった奴よ、いざ勝負!」ズイッ
ハイマン「ひ、ひぃぃぃっ!」
ゴキャッ
マルス「……つまらぬ、一撃で終わってしまった」
マルス「よし、ナバールではない剣士よ、キサマは仲間にしてやろう」
ナバール「ど、どうも……」
【第4章 オレルアンの戦士達】
~ オレルアン王国 ~
ハーディン「オレルアンにアリティア軍が入ったらしい。
彼らと合流するまで、なんとか持ちこたえるのだ!」
ウルフ「はっ!」
ザガロ「はい!」
ロシェ「はいっ!」
ビラク「やらないか」
ハーディン「彼らと力を合わせれば、城をマケドニア軍から奪回することも可能──」
ズシン…… ズシン……
ハーディン「!?」
マルス「キサマらが狼騎士団と、“草原の狼”ハーディンか」
ハーディン「~~~~~ッッッ!?」
ハーディン「こ、これはこれはマルス王子、
我々が協力し合えば、打倒ドルーアも夢では──」
マルス「ほざくな、下郎」
ハーディン「え?」
マルス「草原の狼だと……バカめ!」
マルス「キサマなどぼくがこの国に来なければ、とっくの昔に死んでいた!
つけあがるなよハーディン!」
ハーディン「あ、あの」
マルス「そういえば、キサマはニーナが好きらしいな」
ハーディン「え!?」
マルス「だが、キサマのような田舎育ちのターバンを、
由緒正しきアカネイア王女が相手にすると思っているのか?」
ハーディン「な、なんだと……」
マルス「よしんば結婚できたとしても──
キサマのようなターバンは一度も体の関係すら許してもらえず、
酒に溺れて暴君にでもなるのがオチよ!」
ハーディン「う、う、う……」
マルス「身の程を知れ! この腐れターバンが!」
ハーディン「うわぁぁぁぁぁ~~~~~ッッッ!!!」バリバリバリ…
ハーディンは皇帝にクラスチェンジした!
ハーディン「あ、あれ……?」
マルス「クックック、キサマの中に眠れる力を覚醒させてやったのだ……。
感謝するがよい」
ハーディン「ありがたき幸せ!」バッ
ジェイガン(また一人……強力なしもべが誕生した……!)
ジェイガン「マルス王子、マリク殿が来ております」
マルス「おお、マリクが!?」
マリク「! ──お、お久しぶりです。ず、ずいぶんと……たくましくなられましたね」
マルス「うむ、キサマこそな」
マリク「カダインで会得した風魔法エクスカリバーで、お役に立ってみせます!」
マルス「よし、ぼくに撃ってみろ。
最強の風魔法とも称されるエクスカリバー、是非体験してみたかった」
マリク「え!?」
マルス「全力で撃て。手加減を感じたなら、この場で半殺しにする」
マリク「わ、分かりました……エクスカリバー!」
ズババァッ!
マルス「ふむ、いい感じにヒゲが剃れた」ツルツルッ
マルス「よしマリク、今日からお前はぼく専属のヒゲ剃り係だ。よいな」
マリク(ウェンデル先生、ぼくはヒゲ剃り係になれました……!)
マチス「ついでに俺も仲間になったよ」ニコッ
【第5章 ファイアーエムブレム】
ハーディン「オレルアン城を一人で取り戻してきました。
あとついでに司祭と盗賊を仲間にしてきました」
マルス「ようやく、自分のケツを自分で拭けるようになったようだな。
せっかく皇帝になったのだから、オレルアン帝国の建設を許す」
ハーディン「ありがとうございます」
ニーナ「あ、あの……マルス王子」
マルス「なんだ、ニーナよ」
ニーナ「覇者のあかし、ファイアーエムブレムです。
これがあれば、あなたも宝箱を開けられるように──」スッ
マルス「覇ッッッ!」
バキャアッ!
ファイアーエムブレムは粉砕された。
ニーナ「~~~~~ッッッ!」
マルス「ぼくを見くびるなよ、ニーナ」
マルス「宝箱如き、己の腕力だけでこじ開けられるわッッッ!」
【第6章 レフカンディの罠】
~ レフカンディの谷 ~
ミネルバ「あの、ハーマイン将軍」
ハーマイン「なんだ、ミネルバ王女」
ミネルバ「に、逃げてもいいでしょうか?」
ハーマイン「う、うむ……わしも逃げたいと思っていたところだ。
わしにも妻と子供がいるからな」
ミネルバ「しかし、私が敵前逃亡などしたらマリアは──」
ハーマイン「多分大丈夫だろう、逃げてもだれも文句などいうまい」
~
マルス「レフカンディは伏兵をするには絶好の地形だが、
どうやら伏兵はいないようだな」
ジェイガン「おそらく兵を配置し忘れたのでしょうな」
村──
バヌトゥ「わしはマムクートのバヌトゥじゃ」
マルス「マムクート!?」
マルス「あの竜に変身するという伝説の種族かッッッ!
よし、今すぐ変身しろ! ぼくと勝負だッッッ!」メキメキ…
バヌトゥ「い、いや、火竜石という石がないと竜にはなれんのじゃ」
マルス「チィッ……!」ギリッ
マルス「よいかバヌトゥ、火竜石を入手したらぼくと勝負しろッッッ!
約束だッッッ!」
バヌトゥ(火竜石が見つからんことを祈ろう……)
ジェイガン「さて次はいかがなされますか?」
マルス「たまには休養も必要だ。ワーレンで豪遊といくか!」
【第7章 港町ワーレン】
~ ワーレンの港町 ~
シーザ「マルス王子、町の外にある砦には大量のグルニア兵が待機しております」
マルス「なんだと!? くそっ、豪遊できると思ったのに──」
マルス(砦といえば……朝ぼくがジョギングのついでに立ち寄って、
そこにいた兵士どもを全滅させたが──まだ兵がいたのか)
ラディ「おいシーザ! 今見てきたら、砦の部隊が壊滅してた!」
シーザ「そんなバカな!? いったいどうして──」
マルス「むむむ……どうやら第三の勢力がいるようだな」ゴクッ…
ジェイガン「気を引き締めねばなりませんな」
カチュア「マルス王子!」バッサバッサ
マルス「なんだキサマは?」
カチュア「私は白騎士団のカチュアと申します」
(なんて威圧感なのかしら……ペガサスから見下ろしているのに、
まるで見下されているような……ッッ)
カチュア「我らが主、ミネルバ様はドルーアの軍門に下ることを望んではおりません。
ですが、妹君マリア様を人質にとられているのです」
カチュア「マリア様はディール要塞に囚われの身となっております。
どうか、マリア様の救出にご協力下さい」
マルス「なるほど、キサマらが第三勢力だったか。
砦の敵を壊滅させてくれて、感謝する」
カチュア(なんのことかしら……?)
マルス「礼といってはなんだが、マリアとやらの救出、協力しよう。
ついでにキサマはぼくの愛人にしてやろう、クックック……」
シーダ「私一人じゃ、とても相手しきれないの。よろしくね」
カチュア「~~~~~ッッッ!」
【第8章 プリンセス・ミネルバ】
~ ディール要塞跡地 ~
マリア「お姉様!」
ミネルバ「マリア、無事だったのね!」
マリア「うん、マルス王子が壁を破壊して助けに来てくれたの!」
ミネルバ「……ところで、ここには要塞があったはずだけど……記憶違いかしら?」
マリア「えぇと……マルス王子が持ち上げて、海に捨てちゃった」
ミネルバ「!?」
~
ニーナ「ディール要塞を30秒で海に沈めるなんて、さすがマルス王子ね。
それではいよいよアカネイア王都、パレスに向かいましょう」
マルス「うむ」
【第9章 ノルダの奴隷市場】
ジェイガン「マルス王子」
マルス「どうした」
ジェイガン「パレス周辺を固めるドルーア軍の長、ショーゼンは火竜族のマムクートです。
くれぐれもお気をつけ下さい」
マルス「マムクート……ッッッ!」ビキビキッ
マルス「ぼくの拳が、竜に通用するか……ついに試される時が来たのだな!」
ジェイガン「一応ドラゴンキラーなる剣もありますが」
マルス「不要ッッッ! 太古の昔より、男同士の勝負は拳だと決まっておる!
老いたか、ジェイガンッッッ!」
ジェイガン「フ……私としたことが、余計なお世話でしたな」
~ ノルダの町 ~
マルス「ぼく以外の全人類は、皆等しくぼくの奴隷だというのに──
奴隷商とは滑稽ッッッ!」
奴隷商人「ヒィィィッ! お許しを──」
ゴキャッ
マルス「ん……ガキよ、なぜキサマは逃げぬのだ?」
リンダ「マルス様、私を仲間にして下さい!」
マルス「ぼくの軍にガキはいらん」
リンダ「私は大司祭ミロアの娘です!」
マルス「血筋など関係ない、求めるものは実力のみ」
リンダ「私は……最強の魔法オーラを使えます!」
マルス「ほう……ならばぼくにオーラとやらを撃ってみろ!
もし手加減を感じたなら、半殺しにするッッッ!」
リンダ(マルス様が死んじゃったらどうしよう……でもやらないと私が死ぬし──)
リンダ「オーラッ!」
シュィィィィンッ!
マルス「ふむ……心地よい」
リンダ「!?」
マルス「よし、キサマはぼく専属のマッサージ係にしてやろう」
マリク「ぼくはヒゲ剃り係のマリクさ。これからよろしくね、リンダ」
リンダ(お父様、私はマルス王子のマッサージ係になりました……)
ジェイガン「マルス王子、あちらの村でジョルジュとかいう
ハンサムガイを仲間にしてきました」
マルス「順調だな、ではいよいよマムクートと決戦といくかッッッ!」
モニュ…… モニュ……
ジェイガン「いかがですか、火竜のお味は」
マルス「ふむ……悪くない」モニュ…
マルス「肉質はやや硬いが、火竜というだけあってかなりの熱量を持っており、
食い応えがある」モニュ…
マルス「ワインが欲しくなるな」モニュ…
ジェイガン「戦場ですので、我慢して下さい」
マルス「下っ端竜でこの美味さならば──メディウスは極上の味であろう。
ますますメディウスを喰らう日が楽しみになったわッッッ!」
マルス「ハーッハッハッハッハッハッッッ!!!」
【第10章 アカネイア・パレス】
~ パレス城内 ~
ミディア「ものすごい殺気が、この牢屋に迫っています……」
ミディア「いよいよ我々もこれまでなのかもしれません」
ボア「うむ、だが諦めてはならぬぞ、ミディア。
おぬしが死んでしまっては、アストリアが悲しむ」
ミディア「はい……」
ボゴォンッ!
ミディア&ボア&トーマス&トムス&ミシェラン「!!!???」
マルス「捕虜どもよ、救出にきたぞ」
ミディア(青い髪!)(鬼!?)(アストリア)(生き延びる)(死んだふりッ)バタッ
マルス「全員、倒れている……」
マルス「くっ、すでに処刑されてしまったというのか……!
すまぬ、アカネイアの勇士たちよ……ッッッ!」
マルス「死んだふりとはな、ぼくを熊と一緒にするとはひどいではないか」
ミディア(いやアンタ、熊よりデカイし怖いから……)
ミディア「しかし、ドルーアの司令官ボーゼンは強敵です。
くれぐれも──」
マルス「もう倒した」
ミディア「え」
マルス「ボルガノンとかいう、トーストも焼けぬような魔法を使ってきよったが、
あまりの弱さに呆然としてしまったわ!」
マルス「フハハハハハハハハハッ!!!」
ジェイガン「フッ……さすがはマルス王子、ジョークも一流ですな」
マルス「笑えよ、ミディア」
ミディア「~~~~~ッッッ!」
ニーナ「ありがとう、マルス王子」
ニーナ「ようやくアカネイアを取り戻すことができました」
ニーナ「これはアカネイアに伝わる三種の神器の一つ、パルティアです。
どうか受け取って下さい」
マルス「ふむ弓か……ちょっと引いてみるか」ギリギリ…
ブチィッ!
マルス「脆いッッッ! 壊れてしまいよったわ!」
ニーナ「なんとなく、こうなるだろうなと思っていました」
ジェイガン「ようやくあなたも、マルス王子に順応してきたようですね」
ハーディン「ところでこの玉座、なかなか座り心地がよいですな。
なんというか、悪い皇帝になった気分です」
マルス「フハハハハ、似合っているぞ、ハーディン」
【第11章 悲しみの大地・グラ】
~ グラ王国 ~
ジェイガン「グラ国王ジオルは、お父上コーネリアス王を裏切った憎き敵……。
容赦をしてはなりません」
マルス「ふむ……だが、ジオルは本当に父の仇なのだろうか?」
ジェイガン「どういう意味です?」
マルス「……いずれ分かる」
ジェイガン「あ、あとさっき白騎士団のパオラ殿とカチュア殿が合流されました。
ミディア殿も無事アストリア殿を説得できたようです」
マルス「そうか」
村──
カミュ「!?」ビクッ
マルス「なんだキサマは」
カミュ「君が……マルス王子か」
マルス「うむ」
カミュ「これを」スッ
マルス「これはトロンの書ではないか」
カミュ「ドルーアのボーゼンが持っていたものだが、元々ボア──」
マルス「ぬんッ!」ベリベリッ
カミュ「!?」
マルス「あいにくぼくは魔道士ではない……愚か者がッッッ!」
カミュ「~~~~~ッッッ!」
マルス「だが、キサマはなかなかの使い手のようだ。
どうだ、今から軽く殺し合いでもせんか」
カミュ「い、いや、忙しいので」
マルス「そうか」
ジオル「ついにここまで来おったか、アリティアのこせがれめ。
すぐに父親のもとに送ってやろう」
マルス「ぬんッッッ!」
ドゴォッ!
ジオル「ぐ、ぐふっ……!」ドサッ
マルス「ジオルよ、最後に答えろ」
マルス「父上……コーネリアスは本当に死んだのか?」
ジオル「フフフ……巨凶アリティア王家の血を継ぐあやつが……
わしに裏切られたくらいでくたばるわけがなかろうて……」
マルス(やはりな……)
ジオル「こ、これ以上はなにもいえん……さっさと殺せ……」
マルス「安心しろ、全力を以って葬ってやろう……覇ッッッ!」
グシャアッ!
マルスはジオルの頭を踏み砕いた。
ジェイガン「マルス王子、これはいったい──」
マルス「分からぬ」
マルス「分からぬことをいくら考えても仕方あるまい。
このままアリティアに入ってもいいが、カダインには魔王ガーネフがいるはず。
まずはヤツを始末するッッッ!」
【第12章 魔道の国カダイン】
~ カダイン ~
マルス「キサマがガーネフか……」
マルス「マフーとかいう敵の動きを封じる魔法を使うらしいな。
面白い、やってみせいッッッ!」
ガーネフ「ふぉふぉふぉ、馬鹿力に自信があるらしいが、
力だけでは我が暗黒魔法マフーは破れぬぞ」
ガーネフ「マフー!」ウォォォォン
マルス「どうした、早くやってみせろ」ズンズン
ガーネフ(あれ? お、おかしい! なんで動けるのじゃ?)ウォォォォン
マルス「早くやれッッッ! マフーをッッッ!」ズンズン
ガーネフ(え、ちょっと待って、どういうことなの)ウォォォォン
マルス「やれッッッッッ!!!」ズンッ
ガーネフ「ふぉ、ふぉふぉふぉ……わしも忙しいのでな。さらば!」シュンッ
マルス「き、消えた……ッッッ!」
マルス「おのれぇ……!」
マルス「ぼく如きには、マフーを使うまでもないということか!?」
マルス「…………」ビキビキッ
マルス「ぬああああッッッ!!!!!」
ズ ン ッ ッ ッ ! ! !
カダインが、揺れた。
ジェイガン(無理もなかろう)
ジェイガン(手を抜かれ、しかもまんまと逃げられてしまうとは……。
マルス王子にとってはこれ以上ない屈辱であろう……)
アリティア王子、マルス。
初めての敗北……!
【第13章 アリティアの戦い】
牢屋に捕らわれていたチェイニー氏は語る。
チェイニー「いやァ~すごかった。
俺は変身能力に目をつけられ、ドルーアに捕らわれてたんだけどさ」
チェイニー「マルス王子が壁に拳で穴を開けて、助けてくれたんだ」
聖騎士アラン氏は語る。
アラン「うむ……砦には大量の増援部隊がいたのだが──
マルス王子の前に10秒で壊滅してしまった」
アラン「え、10分の間違いじゃないかって? ……いや、10秒だ。
ついでにツボを突いてもらって病気を治してもらった」
勇者サムソン氏は語る。
サムソン「アリティア城を占領していたホルスタットは知勇兼備の名将だった。
しかし、マルス王子の拳によって、一瞬で粉砕されてしまった」
サムソン「全く関係ないが、グラ王国のシーマ王女はなかなかの美女だと思う」
【第14章 スターロード・マルス】
アリティア城内──
モーゼス「フハハハハ、よく来たなマルス! わしは魔竜モーゼスじゃ」
モーゼス「キサマの母リーザはすでにこの手で殺し、
姉エリスはガーネフにくれてやったわ」
モーゼス「さあ、かかってくるがいい!」グオオオオ…
マルス「あの母上が、キサマ如きにやられるわけがなかろうて」
ゴキャッ
モーゼス「ガ、ガハッ……!」ドサッ
モーゼス「クッ……メディウスサマ、リーザサマ、オユルシヲ……」ガクッ
マルス「おのれ……! 父上に母上、なにを企んでおるのだッッッ!」
ワアァァァァァ……!
ジェイガン「ご覧下さい、王子。国民たちがあんなに……」
「マルス王子万歳!」 「スターロード万歳!」 「英雄アンリの再来!」
マルス「クスクスクス……」
マルス「聞け、愚民どもッッッ!」
マルス「黒騎士カミュ、竜騎士ミシェイル、暗黒司祭ガーネフ、
そして地竜王メディウス!」
マルス「全てをこの拳で葬り去り──ぼくが天に立つッッッ!」
マルス「キサマらは覇王となったぼくに、未来永劫ひざまずくのだッッッ!」
ワアァァァァァ……!
ジェイガン(マルス王子、こんなに立派になられて……!)
【第15章 マムクート・プリンセス】
~ ラーマン神殿 ~
ジェイガン「マルス王子、この神殿には恐ろしい女神がいると聞きます。
そして神殿を侵す者を、焼き尽くすと──」
マルス「面白い……」ニィッ
マルス「ぼくの拳と女神の炎、どちらが上かッッッ! ──いざ尋常に勝負!!!」
ジュリアン「王子、星のオーブと光のオーブを取ってきました」
マルス「ご苦労だったな、ジュリアン」
マルス「ほう、これは美しい……」ニギッ
グシャッ!
光のオーブは砕けてしまった。
マルス「……やむをえん。その辺に落ちていたゴミで代用するか」
チキ「だ、だめ……私に近寄らないで……」
マルス「あいにく飛び道具は持ち合わせてはおらんのでな」ズンズン
マルス「クックック、さぁ勝負だ、神竜よ!」
チキ(この鬼みたいな人が怖くて、ガーネフの術は解けたけど……。
どうしよう、このままじゃ確実に殺されちゃう……!)
マルス「神竜の肉……このマルス、是非とも食してみたいッッッ!」ジュルリ…
チキ(──そうだ!)シュルルル…
マルス「む!?」
マルス「神竜が消えよった! おのれぇ……逃げよったか!?」キョロキョロ
チキ「こ、こんにちは……」ガタガタ
マルス「──む、なぜこのようなところにガキがいるのだ?」
チキ「マルスの鬼……お兄ちゃん、よ、よろしくね」ガタガタ
マルス「ほぉ~う、なかなか礼儀正しいガキではないか。
親はいったい何をしている! ジェイガン、手厚く保護してやれッッッ!」
ジェイガン「はっ!」
チキ(た、助かった……)ホッ
【第16章 ブラックナイツ・カミュ】
~ グルニア王国 ~
ニーナ「できればカミュ将軍とは戦って欲しくないのですが──
あなたにこんなこといっても無駄でしょうね」
マルス「無駄だ」
マルス「グラディウスを持ったカミュは天下無敵と聞く……。
どちらかが死ぬまで、決着はつかんだろう」
マルス「さしものぼくも、今回ばかりはカミュ一人に集中したい」
マルス「ゆえにカミュ配下の黒騎士団は──我が軍最精鋭に任せるッッッ!」
アリティア同盟軍最精鋭五名──
マルスの雌 シーダ!
シーダ「全員、愛の力でやっつけてみせます!」
タリスの傭兵 オグマ!
オグマ「正直、マルス王子一人で十分だと思う」ボソッ
元山賊 ナバールではない剣士!
ナバール(ナバールってバレたら、俺はいったいどうなるんだ……)
草原の皇帝 ハーディン!
ハーディン「逆らう者は全て殺す!」
マルスの愛人 カチュア!
カチュア「頑張ります!」
ジェイガン「──黒騎士団は一騎残らず壊滅したもようです。
あとシーダ様がロレンス将軍を仲間にしたそうです」
マルス「フッ、さすが我が最強のしもべたちだ。
ならばぼくも、カミュなどに負けてはおれんな」
バッサバッサ……
エスト「こんにちは、マルス王子! 私は白騎士団のエストです!」
マルス「ほう。──で、手に持っている剣は?」
エスト「これは三種の神器の一つ、メリクルソードです!
これがあれば、カミュ将軍のグラディウスにも対抗できます!」
マルス「クスクスクス……では我が手刀とどちらが鋭いか、試してみるか」
マルス「ぬうんッッッ!」ブンッ
バキャァンッ!
エスト「~~~~~ッッッ!」
マルス「なにが神器だ、とんだナマクラではないか」
ジェイガン「王子、おみごとです」
グルニア城──
マルス「キサマがカミュか」
カミュ「そうだ」
マルス「このマルス、是非ともキサマと立ち合いたいと常々思っておった!
──いざ勝負!」ズンッ
カミュ(見れば見るほど、人間離れした肉体だ……。
だが、この神器グラディウスが通用しないはずがない!)
ズガァッ!
グラディウスが、マルスの胸に突き刺さった。
カミュ「すまない、マルス王子──」
カミュ「!?」
──否、切っ先は皮膚で止まっていた。
マルス「どうした? 無防備な敵に槍を突き刺すのはさすがに抵抗があったか?
遠慮はいらぬ、本気で来いッッッ!」
カミュ「~~~~~ッッッ!」
マルス「どうした、カミュ!」
カミュ(い、いかん……どうすれば……!)ガサゴソ
カミュ(ん、ポケットの中になにか入っている……これは!?)スッ
カミュはポケットの中に入っていた仮面を装着した。
マルス「ぬっ!? カ、カミュが消え、仮面の騎士が現れおったッッッ!」
シリウス「わ、私は……シリウスだ」
マルス「シリウスよ! カミュがどこに行ったか知らぬか!?」
シリウス「カミュは……えぇと、君はまだ未熟だからということで、
勝負を中断してどこかに行ってしまったよ……うん」
マルス「なんだと!?」
マルス「おのれぇ……! このぼくが情けをかけられるとは……!」
マルス「カミュめ……次に見つけたら、両手足、首、胸、腹と
全身を七つのパーツに引き裂いてくれるわッッッ!」
マルス「そしてアカネイア、アリティア、グルニア、マケドニア、オレルアン、
グラ、タリス、全ての城門に各パーツを晒してやるッッッ!」
シリウス(もう一生仮面は取らない方がいいな……)
~
マルス「ニーナよ、残念ながらカミュとは決着をつけられなかったが、
シリウスとかいう仮面の騎士を仲間にした」
マルス「カミュの代わりに、キサマにくれてやろう」
ニーナ「いりませんよ、こんな変な人」
シリウス「…………」
【第17章 天空を駆ける騎士】
~ マケドニア王国 ~
ミシェイル「マルスめ……我が竜騎士団全軍をもって相手してくれる!」
マケドニア兵「ミシェイル様、大変です!」
ミシェイル「騒がしいぞ、どうした」
マケドニア兵「飛竜が……怯えて一匹残らず逃げてしまいました!
飛竜の谷まで行ってしまったので、もう捕まえるのは無理かと……」
ミシェイル「…………」
ミシェイル「逃げるか」
マケドニア兵「そうですね」
ミシェイル「我が夢、破れたり……。許せ、マケドニアの民よ……」
村──
ガトー「おおマルス王子、わしは大賢者ガトーじゃ」
ガトー「光のオーブと星のオーブがあれば、
ガーネフのマフーをも打ち破る魔法を作ることができる」
マルス「ほう……ガーネフには煮え湯を飲まされたことがある。
ならばこのオーブ、くれてやる」
マルスは星のオーブとゴミを渡した。
ガトー「うむむ……ふんっ!」
ガトー「完成した。これぞ“スターダスト・エクスプロージョン”じゃ!」
ガトー(あれ? スターライトじゃなかったっけ? まあいいか)
マルス「ところでガトーよ、ガーネフは今どこにいるのだ?」
ガトー「奴は幻の都テーベで、おぬしらを待ち構えているじゃろう」
ガトー「じゃが安心せい、わしのワープで──」
マルス「いらぬ」
ガトー「え?」
マルス「キサマのワープとぼくの足なら、ぼくの足の方が速い!」
マルス「肩に担ぐぞ、ジェイガン!」ヒョイッ
ジェイガン「はっ!」
ズドドドドドッ!
ガトー(あんなに速く走れるんなら、もうさっさとドルーア行けよ……)
【第18章 悪の司祭ガーネフ】
~ 古代都市テーベ ~
ここ幻の都テーベでは、日夜地獄の遊戯が行われていた。
ガーネフ「ギャアアアアアッ!」ドサッ
エリス「はい、オームの杖」ポワァァァ…
ガーネフ「も、もう、死なせてくれい……」グスッ
エリス「ダメです」
エリス王女の手によって、ガーネフは殺されては復活させられ、を
何度も何度も繰り返されていたのである。
マルス「やめんか、姉上!」
エリス「あら……思ったより遅かったわね、マルス」
マルス「復活の杖で命を弄ぶという暴虐……許せぬ!
さっさとガーネフの身柄をこちらに引き渡せッッッ!」
エリス「弟が姉に命令するというの?
いいでしょう、姉より優れた弟など存在しないということ──
証明してあげましょうッッッ!」
マルス「覇ッッッ!!!」
エリス「姉(シ)ッッッ!!!」
ズドォンッッッ!
ジェイガン「両者の拳が正面衝突した!」
ゴゴゴゴゴ……
ガーネフ「い、いかん! 衝撃でこのテーベの塔が崩壊する!」
ズオアァァァッ!!!
テーベの塔は跡形もなく崩れ去った。
マルス「わずかにぼくの拳が勝ったようだな、姉上」
エリス「……仕方ありませんね。ガーネフはあなたにくれてやりましょう」
ジェイガン「いやはや、お二人とも、おみごとな戦いでした」
ガーネフ「ようやく悪魔(エリス)から解放される……。
お礼といってはなんだが、これは神剣ファルシオンじゃ」スッ
マルス「ふん、こんなものはいらん」
グシャッ!
ファルシオンは粉砕された。
ガーネフ「え!?」
マルス「ぼくはキサマに敗れた恨みを忘れてはおらん。
ガーネフ……キサマはぼく専属のサンドバッグ係に決定だ」
ガーネフ「ヒ……ヒィィィィィッ!」
【第19章 マムクートの王国】
~ ドルーア帝国 ~
マリク「ぼくはヒゲ剃り係のマリク」
リンダ「私はマッサージ係のリンダ」
マリク&リンダ「よろしく!」
ガーネフ「ど、どうも。わしはサンドバッグ係のガーネフじゃ」
マリク「マルス王子は死なない程度に殴るのもうまいから、頑張ってくれよ」
リンダ「あなたはお父様の仇だけど、エリス様に100回以上殺されたっていうし
オーラでの半殺しくらいで許してあげるわ」
ガーネフ(だれか助けて……)
マルス(ふんガーネフめ。司祭同士、早くも友ができたようだな)ニタァ…
ジェイガン「あの城が暗黒地竜メディウスのいるドルーア城です」
マルス「長い戦いであったが──
ようやくここまでやって来たのだな……クックック」
マルス「あとはぼくがメディウスを倒せば、戦争は終わりを告げる」
マルス「ようし、ぼくはさっそく城に飛び込む。外の配下どもは任せたぞ!」
バッ!
マルスは500メートル以上ジャンプすると、上空から一気にドルーア城へと突撃した。
【第20章 選ばれし者達】
ドルーア城内──
ズガァンッ!
天井を破壊して、マルスが現れた。
マルス「キサマがメディウスか……喰いたかったぞ」ニィッ
メディウス「来よったか、小僧」ニィッ
マルス「さあ、地竜石とやらで地竜になるがよい!」
メディウス「……ふふふ」ポイッ
マルス「キサマ……ッッ! なぜ地竜石を捨てたッッッ!?」
メディウス「知れたこと……わしにとって地竜に戻るということは
むしろ相手を気遣っているということだ」
メディウス「それに男同士の戦いに、神剣だの闇のブレスだのは邪道……。
男なら──拳(コレ)しかあるまいッッッ!」グッ
マルス「さすがは地竜王と呼ばれる男よ……勝負ッッッ!」
──ズゴォンッ!
ズゴォンッ!
ガラガラガラ……
ドルーア兵「な、なんだっ!?」
オグマ「ドルーア城が……」
ナバール「崩れた!」
ハーディン「いや、崩れたガレキの中でだれかが戦っているぞ!」
カチュア「あ、あれは……っ!」
ニーナ「マルス王子!」
ズドンッ! バキィッ! ドズゥッ! ドゴォッ! ベキィッ!
マルス「覇ァッッッ!」
メディウス「地ィッッッ!」
ドゴォン!!!
互いに防御を捨てた、全力での殴り合い。
周囲の兵士たちは戦うことも忘れ、二人の戦いに釘付けとなった。
ドゴォッ! ズドッ! グシャッ! メキッ! ボゴォッ!
ゼムセル「メディウス様がこれほど苦戦するとは……!」
バゴォッ! ガンッ! ベシッ! ドンッ! ドボォッ!
ガトー「さすがじゃ、マルス王子」
ガスッ! メシャアッ! ベチィッ! ガゴッ! ボスッ!
ガーネフ「こいつら化け物か……!?」
メキャッ! ギャドッ! ガキィッ! ズンッ! メチィッ!
エリス「大きくなったわね……マルス」
ドグァッ! ズシンッ! ガゥンッ! ザクッ! ズギャアッ!
だが──
メディウス(わしの双肩には、長年迫害を受けてきた竜族たちの
命運がかかっておるのだ……)
メディウス(──断じて負けられん!!!)
ガゴォンッ!
メディウス渾身のアッパーが、マルスを高々と打ち上げた。
マルス「ぐ、はぁ……ッッ!」
ドッザァッ……!
マルス(強い……! これがメディウス……! 体が、動かん……ッッッ!)
メディウス「キサマの力を、わしの竜族の誇りが上回ったようだな」
メディウス「光に守られしアリティアの王子よ、我が拳で永遠の闇に眠るがよいッッッ!」
大の字で倒れたマルスに、二人の人間が近づく。
ジェイガン「マルス王子」ザッ
シーダ「マルス様」ザッ
マルス(な、なんだ……!? まさかぼくを励ましに──!?)
ジェイガン「倒れられるとは、情けない」
シーダ「しょせん私の夫になる器ではなかったようですね」
マルス「クッ……!」
メディウス(全力を尽くしたリーダーに、あのような言葉をかけるとは……。
やはり人間とは薄汚い生き物よ……)
マルス「クッ……クックック……さすがはジェイガンとシーダ」
マルス「ぼくを奮起させるコツを心得ておるわッッッ!」ガバァッ
メディウス「なんだとッッッ!?」
ジェイガン「さすがです、王子」
シーダ「まだまだ元気でしたね、マルス様」ニコッ
マルス「メディウス……今こそ見せてやろう」
マルス「ぼくが光の王子といわれる、所以(ゆえん)をッッッ!」ビリビリッ
上半身の服を破り捨てると、マルスはメディウスに背中を向ける。
メディウス「こ、これは……ッッ!」
メディウス「背中に──ファルシオンの剣ッッッ!?」
マルスの背中の筋肉が、神剣ファルシオンのような形状となっていた。
マルス「神剣ファルシオンは、この筋肉をモデルにした紛い物に過ぎぬ。
代々アリティア王家の血筋に受け継がれし、最強の筋肉。
これぞ、真なる“神拳ファルシオン”なのだッッッ!」
メディウス「~~~~~ッッッ!」
メディウス「面白い、神拳ファルシオンから放たれる最強の拳……。
このわしに喰らわせてみいッッッ!」
マルス「いわれなくともなッッッ!」
ズ ド ォ ン ・ ・ ・
ビラク「──決着だ」
マルス「ほう、まだ生きておったか」
メディウス「ぐ、ぐふっ……さすがだ……さあ、トドメを刺すがよい」
マルス「ふん、ぼくとキサマは全力で殴り合った……すなわち、友だ。
友を殺す者は、もはや友ではなかろう」
メディウス「!」
マルス「キサマの奮闘に免じ、竜族の権利や住む土地は保証しよう。
安心しろ、我が背中にかけてだれにも文句はいわせぬ。
今後、キサマらを迫害する人類を見かけたら、ぼくが滅殺する」
マルス「もっともキサマらがぼくらに攻撃してきても、同様だがな」
メディウス「…………」
メディウス「わしの……完敗だ!」
暗黒戦争、これにて終結!
ザンッ!
コーネリアス「フハハハハッ!」
リーザ「オホホホホッ!」
マルス「父上と……母上ッ!?」
コーネリアス「よくぞそこまで成長した……。
やはり夫婦で“死んだフリ”をしたのは正解だったな」
マルス「やはり生きていたか……ッッ!」ギリッ
コーネリアス「うむ、お前はアリティア王家の中でもトップクラスの才能を持ちながら
甘さゆえに神拳ファルシオンを覚醒できずにいた」
コーネリアス「だからジオルの策にかかって殺されたフリをしていたのだ。
我々がいると、お前はいつまでもたっても成長できんからな」
マルス「~~~~~ッッッ!」
マルス「下りてこいッッッ! 今すぐ勝負してやるッッッ!」
コーネリアス「ふっ、メディウス如きに手こずるようでは、
まだまだ我々の足元にも及ばぬ。なぁ、リーザよ」
リーザ「えぇ、おそらく10秒足らずで勝敗は決してしまうわ」
マルス(くぅ……ッッ! 否定できぬッッッ!)
コーネリアス「マルスよ、この大陸はお前にくれてやろう」
コーネリアス「そしていつの日か、お前が人類からも竜族からも真なる王として
認められるようになったら──」
コーネリアス「相手をしてやろう」
マルス「面白い……! 父上、ぼくはいつか必ずキサマを超えてみせるッッッ」
コーネリアス「いい貌(かお)だ」
コーネリアス「楽しみにしているぞ! あ、あとエリスにもよろしくな」
フハハハハ……! オホホホホ……!
ニーナ「終わりましたね、マルス……」
マルス「うむ」
マルス「だが全てが終わったわけではない。
いずれ、ぼくは父上たちと決着をつけねばならない」
マルス「この束の間の平和を──共に堪能するとするか、シーダよッッッ!」
シーダ「はいっ!」
ジェイガン「めでたしめでたし、ですな」
後日談──
マルス アカネイア大陸最強の“覇王”となり、日々職務に取り組む。
シーダ 城からは毎夜のように、彼女のあえぎ声が聞こえるという。
ジェイガン 最近ゲートボールにはまっているらしい……。
カイン アリティア騎士団団長となり、マジメに働く。
アベル マルスの許可を得て、エストとパオラと重婚した。
ドーガ 力士になった。
ゴードン 鉄道会社を設立する。
オグマ 傭兵を続ける。時折シーダを貸してもらっているらしい……。
サジ 木を切りすぎて、環境保護団体から嫌がらせされる。
マジ 明日から本気(マジ)になる、が口癖。
バーツ 海賊王になるため、どこかに旅立った。
カシム 母親の病気は治ったが、裁判で懲役5年が確定。
レナ ジュリアンに心を盗まれ、結婚する。
ジュリアン トイレの後手を洗わないが、盗賊からは足を洗った。
ナバール いつマルスに自分がナバールだとバレるかビクビクしている。
マリク 相変わらずヒゲ剃り係だが、油断していたらエリスに童貞を奪われた。
ハーディン オレルアン帝国初代皇帝として、マルスに尽くす。
ウルフ 狼騎士団団長として、マジメに働く。
ザガロ 落馬したトラウマで、ハンターになった。
ロシェ ハーディン親衛隊に志願し、レベル20になった。
ビラク 今日も公園のベンチに座っている。
マチス ついにレナに絶縁された。
ウェンデル ジェイガンとライブの杖でゲートボールをしている。
リカード 自宅を空き巣に入られたらしい……。
バヌトゥ ついに火竜石を見つけたが、マルスが怖いので燃えるゴミの日に捨てた。
シーザ ワーレンの港町で漁師になった。
ラディ シーザよりすごい漁師になった。
マリア 海に沈んだディール要塞の主になった。
ミネルバ マケドニア王女として、平和にやっている。
リンダ マルス専属マッサージ係として、日々働いている。
ジョルジュ ドルーア軍の敵スナイパーに、大陸一の弓使いの座を奪われる。
ミディア アストリアと結婚した。新婚旅行先は竜の祭壇。
ボア ボーゼンに奪われたトロンの書を探しているが、未だに見つからない。
トムス 彼はいつもミシェランと一緒である。
ミシェラン 正直トムスのことをうざがっている。
トーマス ゴードンの鉄道会社の副社長となる。
アストリア ミディアと結婚し、サラリーマンになった。
カチュア マルスの愛人として、日々頑張っている。
パオラ 分身の術を覚え、一人でトライアングルアタックが可能になった。
チェイニー 金が尽きたので、道具屋でアルバイトを始めた。
アラン 病気は治ったが、今度は水虫に悩まされる。
サムソン どさくさに紛れ、シーマと結婚した……。
チキ マルスに怯えながらも、幸せに暮らしている。
エスト アベル、パオラらと楽しく暮らしている。
ロレンス 将軍をやめ、火薬の知識を生かして花火職人となった。
エリス 時折マルスと組み手を行う。戦績は五分五分。
計46名 戦死0名 逮捕1名
その他の面々──
ニーナ アカネイア王国の女王となり、マゾな国民たちを鞭でしばいている。
シリウス いい加減仮面を取りたいが、マルスが怖いので取れない。
ミシェイル 逃亡生活の末、飛竜の谷の蛮族と意気投合した。
ガトー 氷竜神殿で増殖を開始した。
ガーネフ サンドバッグ係として、毎日マルスに殴られている。
メディウス 竜族たちを従え、平和に暮らしている。
彼らの手によって、アカネイア大陸は空前の発展を遂げたという──
~Fin~
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません