淡「アコ。早く脱いで」憧「くっ……」(231)

淡「わかってるよね?」

憧「……」

淡「アコがいうこと聞かなかったら阿知賀の大将さん……、潰すから」

憧「やめてっ!」

淡「へー。必死」

憧「なんでも言いなりになるからシズに酷いことするのだけは……」

淡「大丈夫、私の好みはテルーみたいに目の鋭い子」

淡「そしてあなたの目はテルーやスミレよりも更に私好み」

淡「アコをはじめて見たとき、まったくもって私の理想そのままで驚いたんだよ」

淡「アコが言いなりになってくれるなら悪いようにはしないから、ね?」チュッ

憧(シズ……)

淡「綺麗な身体……」

憧「……」

淡「ふふ。ほっぺがリンゴみたいにまっかっか」

憧「あっ、赤くなんてなってない!」

淡「意地はっちゃって」

憧(あたしがシズ以外の相手に赤面するなんて、そんなの、ありえない!)

淡「……」チュッ

憧「きゃっ!?」

淡「あはは。きゃっ、だって。可愛いー!」

憧「……」

淡「ほっぺのリンゴにチューしただけなのにねー。うぶなんだー」

淡「ね、アコ……」

憧「何よ」

淡「このままじゃ不平等だから私も脱ぐね」

憧「好きにすればいいじゃない。どうせあたしに拒否権はないんだし」

淡「ま、そうなんだけどね」バサッ

淡「それでもせめて少しでも心の距離を近付けたくて」バササッ

憧(……肌、白いなぁ)

淡「あー。アコが私の身体じろじろ見てるー」

憧「はぁ!? だだ、誰がそんな!」

淡「やーい、エロエロー!」

憧「あんたにだけは言われたくない!」

淡「抱き付くよ」

憧「っ……」

淡「胸がドキドキいって、ほっぺがリンゴで、まるで私より憧の方がこの状況に夢中みたいだね」

憧「誰が……。シズのことがなければ絶対こんなことしないわよ」

淡「ふふん。説得力ない」

憧「……」

憧(目を閉じて、想像するんだ)

憧(あたしを抱き締めてるのは大星淡なんかじゃない。シズだ)

憧(あたしはシズに抱かれてるんだ。シズに……)

淡「私は、お・お・ほ・し・あ・わ・い、だよ」

憧「……」

淡「あなたをはじめて抱いている女は大星淡。タカカモシズノじゃない」

淡「現実逃避っていうんだよ、そーいうの」

淡「アコ。私の口にチューして」

憧「いちいち聞かなくても好きにすれば」

淡「違う違う、そうじゃないの。ただキスするんじゃ足りないよ」

淡「私は、アコから私にチューして欲しいんだ」

憧「あたしからあんたに……?」

淡「うん。ねー、いいでしょ?」

憧(嫌だ嫌だ嫌だ)

憧(自分からこいつにキスするだなんて、そんなの……)

淡「大将戦……、忘れてないよね」

憧「この卑怯者!」

憧「……」チュッ

淡「ふふっ。アコにキスされちゃったー」

淡「アコ、知ってる?」

淡「はじめては一度だけなの」

淡「この先アコがどんなに願おうが、大金を積もうが、タイムマシーンを発明したって……」

淡「アコのファーストキスは私。もうくつがえらない」

憧「……んなこと、わかってんのよ」ギリッ

淡「怒ってる怒ってる。でも怒った目も可愛いよ」

憧「……」

淡「嫌なヤツだよね、私。ごめんねアコ、こんなんで」

憧「謝るぐらいなら終わりにしてよ」

淡「それはダーメ。悪いことだとわかりつつも止められないのが恋なんだよ」

憧「恋……?」

憧「こんな最低のやり方で、しかも面識もまだほとんどないのに! これのどこが恋だっていうのよ!」

淡「そっかー。アコは恋ってものを綺麗な宝石かなにかと勘違いしてるんだー」

淡「恋なんてのはね。人間が自分とドーブツを差別するために産み出したまやかしなんだよ」

憧「……」

淡「ほら。アコはこんなに濡らしてるでしょ」サワッ

憧「ちょっ、やだっ!」

淡「私もおんなじ。アコを目の前にして、胸が高まって、あそこが落ち着かないの」

淡「恋っていうのは人間の中のドーブツ部分に過ぎないんだよ」

淡「だから理性じゃ御せないし、理由がめちゃくちゃでも恋できるの」

淡「どうやら憧のドーブツ部分は私に興味津々みたい」ナデナデ

憧「だとしても……、あたしは、シズ一筋だから」

淡「一途なんだね」

憧「ずっと好きだったから……」

淡「へー」

淡「じゃ、私のこと、ずっと好き以上の好きにさせてあげる」

憧(シズ……)

淡「だいたいさ、不公平なんだよねー」チュッ

憧「何がよ……」

淡「アコみたいにキラキラした世界を信じて生きていられる子がいるってのに、片や私は……」

憧「あんたは?」

淡「……ねえアコ。想像できる?」

淡「少し前まで仲良しだった相手から嫌われる気持ちが」

憧「……?」

淡「アコは大好きな相手に話しかけても無視されるようになったことがある?」

憧「ない、けど……」

淡「ズルいよそんなの。なんで私だけ」

淡「私はただ自分を見てほしかっただけなのに……」

憧(さっきから何を言ってるのこの子?)

憧(支離滅裂すぎる、けど……。なんでだろう、何か……)

淡「私だってアコみたいにあの人のことずっと好きでいたかった」チュッ

憧「……」

淡「麻雀が上手くなれば誉めてくれたから、そのために頑張ったりして」チュッ

憧「……」

淡「それが何、ある一線を越えたら化け物呼ばわり」

淡「だから私、人間の中のドーブツしか信じないの」

淡「損得とか利害とか理性とか、そんなのよりこっちの方がよっぽど信用でるよ」

淡「だからドーブツ部分が大好きだって囁いたアコに恋しようと思ったの」

淡「恋はドーブツ。綺麗なキラキラなんかじゃない」

憧「……事情はよくわかんないけど。あんたの話聞いててわかる部分もあったよ」

淡「えっ?」

憧「あたしも気を惹くための努力が上手くいかずに悲しくなることはあるから」

淡「私とアコとじゃ事情が違うよ。一緒にしないで」

憧「それでも得体の知れなかったあんたの中に共感できる部分が見つけられたのは事実だしさ」

淡「……」ガジッ

憧「いたっ!?」

淡「なんか見透かしたような言い方されるとムカつく」

憧「あーもう……。痣になってる……」

淡「……痛いことしてごめんね。謝るから私のものになって」ギュッ

憧「だからあたしはシズに」

淡「無理だよ。どうせ叶わないって」

憧「だとしても……」

淡「こんなにビチャビチャなのに一途気取って」スリスリ

憧「……っ!!」

淡「アコ。私アコならずっと好きでいられそうだよ」

淡「だからアコも私のこと好きになって」

淡「アコ……、アコ……」スリスリ

憧(凄く必死に、あたしの太ももへアソコをこすりつけて)

淡「私、もうっ……、こういう恋しか……、でき、ないの……」スリスリ

憧(必死にあたしにすがりつこうとして……)

淡「だからアコ。最後の拠り所をっ……、否定、しないで……」スリスリ

淡「アコ……」スリスリ

憧(なんだか他人事じゃないみたい)

憧(あたしだって、明らかに片想いだと分かりつつもシズに振り向いてもらおうと、必死で……)

憧「淡」ギュッ

淡「アコ……?」

憧「やっぱり根っこは同じなのよ。あたしとあんたは……」ギュッ

淡「私、抱き締めてなんて命令してないよ」

憧「そうね」

淡「なのに抱き締めてくれるの?」

憧「うん。嫌だった?」

淡「嫌じゃない、けど……」

憧「じゃあいいでしょ」

淡「……うん」ギュッ

憧「……」

淡「……ふふ、アコ落ち着いてるふりしてるけど心臓がマッハで動いてる。やっぱ一年坊だねー」

憧「あのねー。こちとらいっぱいいっぱいだっての。っていうかあんたも一年だし」

淡「うん。同じだね」

淡「なんだかドーブツのドキドキよりあったかくなってきた……」

淡「アコー」ギュウッ

憧「……」

淡「アコはシズノが好きなんだよね?」

憧「うん」

淡「じゃあ私は?」

憧「そうね。姑息な手を使うし、むりやりファーストキス奪ったし、嫌い……」

淡「……」

憧「……になりそうなものなんだけど、不思議とそんなこともないかな」

淡「物好きだね」

憧「あんた歯に衣着せないわよねー……」

淡「でも今はその物好きに感謝!」チュッ

憧「わっ!? そ、そういう不意打ちはやめてったら!」

淡「アコ……。シズノはアコにこんなことしてくれる?」

憧「それはまだ、だけど……、いつかはきっと」

淡「私ならアコにちゃんと応えてあげられるよ? いつかもきっともつかないよ?」

憧「あたしは……」

淡「淡ちゃんが好きです?」

憧「そう、アワイが……、って何言わせようとしてんのよ!」

淡「あはは、ノリ突っ込み」

憧「あたしはさ。何度も言った通りシズが好きなの。この気持ちは裏切れないよ」

淡「ふーん。でもその選択って、アコの中にある別の気持ちは裏切ることになるよね」

憧「別の気持ち……?」

淡「そ。私を欲しがる気持ち」

憧「ばっ! そ、そんな気持ちなんて!」

淡「ない、とは言わせないよ。だってアコ、ドキドキしてるんだもん」

憧「うっ……」

淡「アコが綺麗な恋を好きなのはわかったよ」

淡「でもね。キラキラの恋心と、ドキドキするエッチな気持ちと、そこに尊いとか劣るとかいう違いは無いと思うの」

淡「だから……、エッチな気持ちに身を任せちゃおうよ。そしたら私、アコ一筋になってあげるから」

淡「アコの牌譜。こっそり研究したんだ」

憧「あたしの牌譜を?」

淡「そしてわかったことが一つ! アコは不確実な賭けよりも、手近な現実を選ぶ!」

憧「いや。それは麻雀に限ったことだから」

淡「ううん、違うよ。牌譜はその人の人格や価値観まで写すの」

淡「期待値よりも目先の確実を選ぶ。アコ、そういうとこあるでしょ?」

憧「それは……」

淡「マウストゥーマウス!」チュッ

憧「むぐっ!?」

淡「今一番アコのそばにいるのは私だよ」

淡「アコのエッチなムラムラに一番応えてあげられるのも、私だよ」

淡「アコ……。ここまで言っても求めてくれないの? 私は――」

憧「淡……」ムニッ

淡「あ……」

憧「淡、あたし……」ムニムニ

淡「えへへ。私の太もも気持ちいいでしょ?」

憧「うん……」ムニムニ

淡「憧から私に触ってくれて嬉しい」

淡「アコ、アコ……」チュッチュ

憧「あたしこんなことしていいのかな?」チュッ

淡「身体がしたがってることはしていいことなんだよ」チュッ

憧「そう……、なの?」

淡「そうだよ。初志貫徹の美徳なんて後付けの価値観」

淡「人間の本音を一番よく知ってるのは身体なんだから」クリッ

憧「ま、待って! そっちは、本当に恥ずかしい……」

淡「でも気持ちいいんでしょ?」クリクリッ

憧「……うん」

淡「かわいいよアコ。だから面倒なもの全部投げ捨てて、私に飛び込んでよ」

淡「今、アコの身体が本当に欲しがってるのは、シズノじゃなくて私なんだから」

淡「胸の脇のとこ、舌でつついてくれる?」

憧「……」ツンツン

淡「ふふっ。こうされるの好き」ナデナデ

憧「ちゅー……、ちゅっ」

淡「あのさ、アコ……、んっ。ここは2回戦までぇ……、選手控え室としてっ、使われてた部屋なんだ……」

憧(どうしてこのタイミングでそんなことを?)チュッ

淡「だからインハイ団体戦が終わるまで……、はっ、飽き部屋なん、だけど……」

淡「カギを開けっぱなしなら、私達以外の誰が入ってきてもおかしくないよね」

憧「へ?」



がちゃ



穏乃「憧……?」

憧「しっ、シズ!? なんでここ、に……」

穏乃「えーと、呼ばれて……、ととっ、とにかく! 失礼しました!」

ばたん

憧「あ……」

淡「アコ。私の牌譜、見たことある?」

淡「麻雀をする時、普通の人にとって見渡す世界は雀卓の上だけになる」

淡「だけど私は違う」

淡「私は雀卓の外側を、世界の外側を、宇宙を、躊躇わずに利用できる」

淡「ちょうど今みたいに、ね。私は遠慮も容赦もしないんだよ」

淡「アコが欲しいの」

憧「……」フラッ

淡「そんな上着だけはおってどこいくつもり?」

憧「あた、し……、追いかけてシズに説明しなきゃ……」

淡「なんて説明するの?」

憧「それは……」

淡「脅されてキスしてましたー。ペッティングしてましたー」

淡「そんな説明であの子の心は元通りになると思う?」

憧「……」

淡「今、アコの手の中にあるのは全部危険牌」

淡「振り込む相手は……、私」ギュッ

憧「あ……」

淡「恨んでくれてもいいけど離さないんだから」ギュッ

憧「ぐすっ、ぐすっ……」

淡「泣いてもいいけどこっちを見て」

憧「あたしっ……、シズのことずっと好きだったのに……」

淡「好きならむくわれるとは限らないんだよ。自分から動かなきゃ」ナデナデ

淡「まあもう遅いんだけどね」

憧「……ぐすっ」

淡「でも大丈夫。アコには私がいるから」サワッ

憧「あっ」

淡「好き好き」サワサワッ

憧「うっ……、く……」

憧「淡……」ギュッ

淡「アコ」ギュッ

淡「たくさんチューしよ?」

憧「うっ、うん……」

淡「えいっ。ちゅっちゅっちゅ」

憧「……ちゅっ」

淡「ちゅっちゅっ」

憧「ちゅっ……」

淡「えへへー。きちんとアコからもキスしてくれて嬉しいよ」

憧「そういうことあんま口に出して言わないでよ……」

淡「やーだよん。アコの頭がふわふわしてるうちに淡ちゃん大好きって気持ちを定着させたいんだもん」

淡「こう見えて私だって必死なんだからね?」

淡「ね、アコは私の身体で何がしたい?」

憧「えっ?」

淡「たまにはアコの方からしたいことを選んでよ。なんでもいいよ」

憧「……」

淡「あ、でも、あんまり痛いのとかは怖い……、かな」

淡「アコのためならできる限りは頑張るけど」

憧「じゃあ、太もも……」

淡「太もも?」

憧「あたしと淡の太ももをすりすりってしたい……」

淡「なるほど。アコは太ももフェチと!」

憧「……うん」

淡「そういえばさっきも私の太ももさわさわしてきたもんね」

淡「好きなんだね、女の子の太もも」

憧「はっ……、はっ……」スリスリ

淡「気持ちいいね」スリスリ

憧「うん……」スリスリ

淡「私、思ったんだけどね」

憧「……?」スリスリ

淡「アコがシズノのこと好きだったのって、あの子がいつも太もも出す格好だったからなんじゃない?」

憧「えっ……?」

淡「つまりー。けっきょくシズノへの気持ちも、根本たどればエッチ心に繋がるってわけ」

憧「違う! あたしはただ純粋に!」

淡「でもどうせシズノでオナニーしたことあるんでしょ?」

憧「それ、は……」

淡「そうだ。妄想の中でシズノにしたこと、全部私に再現してよ」

淡「そしたらきっと絶対もっと気持ちよくなれるよ?」

憧「あんたはあたしのシズへの気持ちまで踏みにじろうというの……?」

淡「だってアコのこと全部まとめて好きになりたいんだもん」

淡「私ならアコのこときちんと受け止めてあげるよ」

淡「だから恋を私で上書きしちゃおうよ……、ね? ムラムラしてるんでしょ?」

憧「淡……」

淡「愛してるよ」チュッ

憧「……たしも」

淡「ん?」

憧「なっ、なんでもない!」

淡「そうー?」

憧(ああもう、なんなのよあたしは!)

憧(淡相手にドキドキして、これじゃまるで本当に気持ちを上書きされちゃったみたい……)

憧(淡……、淡……)

憧「本当に、何してもいいの?」

淡「うん。アコがシズノにしたかったことは全部して」

憧「それなら足を大きく開いてくれる?」

淡「えっ!? それはー……、さすがに恥ずかしいような……」

淡「でっ、でもアコのためだもんね! わかった開くよ!」

憧「……」スッ

淡「って、わーっ!? 何そんなに顔近づけてるの!?」

憧「ちゅっ」

淡「あ、あの……、私のアソコ、臭くない? 形とか大丈夫かな?」

憧「うーん。エッチな匂いかな」

淡「それって嫌な匂い……?」

憧「ううん。そんなことない」チュッ

淡「よかったぁ……」

憧「それに形も可愛い」チュッ

淡「えへへ……。そ、そうかな」

憧「ちゅっ、ちゅ、ちゅっ」

淡「……」

憧「どう、かな? 気持ちいい?」

淡「うーん。ぎこちない感じだしまだあんまり気持ちよくはないかなー」

憧「うっ……」

淡「でもね。代わりにとっても幸せな気持ちだよ!」

憧「幸せな気持ち?」

淡「うん。アコに女の子の部分をたくさんキスしてもらって、とってもキュンキュンするの」

憧(ぐっ。不覚にも可愛いと思ってしまった……)

淡「ところでアコ。妄想の中では、アコはキスするだけだったの?」

淡「自分がシズノにされる妄想はしなかった?」

憧「まったくしなかったとは、言わないけど……」

淡「つまりしたんだね。シズノにまん……、えっとあの、アソコをキスされる妄想」

憧「うん……」

淡「じゃ、私が代わりにキスしてあげる!」

憧「い、いいってそんな! ハズいって!」

淡「いいからいいから。ほら、足を開いて?」

憧「……うん」

淡「わっ。ぬらぬらしてる! アコ興奮してるねー」

憧「だだだって! 仕方ないでしょこの状況じゃ!」

淡「ぺろっ」

憧「ひゃっ!?」

淡「へー。憧ってもしかして敏感?」

憧「かも、しれない……」

淡「エッチな身体だこと」

憧「言わないでよ、もうっ……」

淡「ちゅっ、ちゅっ」

憧(自分のアソコに淡が吸い付いて……)

淡「ちゅ。ちゅぅー、ちゅ」

憧(変な気分)

憧(だんだん淡が愛しくなって……)

憧(ハッ! 違う違う! あたしシズが……、シズが……)

憧(……こんなことしておいて、今さらシズが好きなんて言う資格あたしにあるのかな?)

淡「かぷっ」

憧「んっ……」

淡「ちゅー、かぷっ」

憧「やっ……、やぁ……」

TELLLLL TELLLLL

憧(あ、え……? 電話?)

憧「ごめん、ちょっと待って」

憧(携帯、携帯、と。相手は……、シズ!?)

淡「出ないで」

憧「え?」

淡「シズノの電話に出ないで」

憧「や、それは……」

淡「出ないで」ギュッ

憧「あ、淡っ!?」

淡「私だけ見てよ」クニクニ

憧「ちょっ! 指が中に入ってきて……」

淡「ちゅーっ」

憧「んぐ!?」

憧(キス、今度は舌まで入れられちゃった)

淡「ん、んっ……! んっ!」

憧(たくさん舌が絡んでくる……。淡は、電話からあたしの気を反らそうとこんなに必死で……)

TELLLLL TELLLLL

憧(もしかしたらまだ引き返せるかもしれない……)

TELLLLL TELLLLL

憧(シズは自分からあたしと対話しようとしてくれている)

TELLLLL TELLLLL

憧(だから今ならまだ……、でも)

淡「アコ……」ギュッ

憧(淡はこんなにも一生懸命あたしに抱き付いてきて……)

憧(あたしは……)

TELLLLL TELLLLL

憧「……」

TELLLLL TELL カチッ…

淡「電話、切っちゃったの……?」

憧「うん」

淡「私のために?」

憧「……うん」

淡「アコーっ!」ギュッ

憧「淡……」

淡「えへへ、アコぉ、嬉しいよ……」

憧「うん」ギュッ

憧(ああ。これでもうあたしは本当に選んじゃったんだな)

憧(さよならあたしの初恋……)

淡「アコー、貝合わせって知ってる?」

憧「ああ、うん」

憧(いつかシズと……、なんて考えたこともあったから)

淡「あのね。私、貝合わせがやってみたいの」

淡「あんまり気持ちよくないって話も聞くけど……」

淡「でもね! それ以上に、アコと私の大事なとこくっ付け合いたいなって思うんだ!」

憧「わかった。してみよう」

淡「うん!」

淡「こうやって向かい合って、足を重ねて……」

憧「うーん。位置を合わせるのってけっこう難しいね」

淡「そだねー。んしょ、んしょっと」ピトッ

憧「あっ……」ヌルッ

淡「うわー! こうやって合わせるだけでなんだかエッチな感じ!」

憧「あはは、たしかに。……ドキドキしてきた」

淡「私もドキドキで叫びたいぐらいだよ」

淡「ただ、この姿勢だと上の口同士ではキスできないねー」

憧「それは後からだってできるよ」

淡「うん! そうだよね!」

淡「これが終わっても、私アコとキスできるんだよね……?」

憧「うん」

淡「じゃ、じゃあ! シズノに手出しするって脅しがなくなってからは?」

憧「脅しがなくなってからも……、できるよ、キス」

淡「やったー!」

憧「喜んでるところあれだけど、あたしが口だけで調子の良いこと言ってるとか思わないの?」

淡「思わない。だってアコは嘘も建前も嫌いな子だもん」

憧「どうしてそんなこと断言できるのよ」

淡「ふふっ。それも牌譜からわかるって言ったらどうする?」

憧「いやいや、牌譜心理学はなんでもありかい」

淡「でしょー、凄いでしょ! ……なんてね。さすがにこれはジョーダン」

淡「アコがそういう嘘を嫌いそうだってのは、本人を見てればなんとなくわかるよ」

憧「んなこと嬉しそうに言われたら……、ますます裏切れなくなるじゃない」

淡「やったね嬉しい誤算だ」

淡「……さ、動くよ」

自分でほ

憧「んっ……、んっ……」ヌルヌル

淡「なんかっ……、気持ちいとこが上手く、こすれあう、ね……」クチュクチュ

憧「そう、ね……」ヌルヌル

室内に湿った音が響く。
息づかいが熱を帯びていく。

淡「もしかしてっ……、私と、アコって……」

憧「あっ、あっ……」ヌルヌル

淡「身体の相性バッチリなんじゃないかなぁ……?」

憧「そう……、かもっ」ヌルヌル

淡「なんだか私よりアコの方が夢中で腰を動かしてるね」

憧「だっ、て……」ヌルヌル

淡「かわいい。好き」

その淡の言葉に、胸の中で血潮がひときわ大きく波打つ。

憧「ううっ……」クチュッ

跳ねるような水音がして、更に大きな快楽が下腹部へと広がる。

淡「アコっ……、アコっ……」ヌルヌル

淡はあたしの太ももを掴んで姿勢を安定させると、より強い力で股間をこすり付けてきた。
無理やり自分の身体を使われるような感覚に、気持ちの昂りがますます勢いを増していく。

憧「あっ……、……ぁ」

堪えようとしても、自分のものとは思えないような細く絞る声が漏れでてくる。

憧「あわっ、い……」クチュクチュ

淡「うっ……、ん……」クネクネ

憧「あた……、しっ」ヌルヌル

淡「はっ、はあっ……、はあっ……」スリスリ

憧「あわいの、ことっ……」ヌルヌル

淡のことが好き。
そう口にした瞬間、淡の身体が小さく震えた。

淡「ううっ」ピチャピチャ

淡の達した震えが身体から直に伝わってくる。

淡「ごめん、ね……、アコぉ……」

事後。
絶頂の感覚に頬を染めながらも、淡は泣いていた。

淡「アコを手に入れるためにひどいやり方して……、そのくせ一人で先にいっちゃって……、ごめんね……」

憧「だい、じょうぶ……」

淡「え……?」

憧「淡がいった時の震えで、あたしも……、一緒にいけたから」

淡「……ふぇぇ」

憧「ちょっと淡!?」

淡「アコぉ……、好きだよアコぉ……」ギュッ

憧「……うん。あたしも」ギュッ

淡「気持ちよかったね……。もう一回する?」

憧「うーん。ちょっと疲れたかな」

淡「私もー。じゃ、晩御飯食べにいこうよ!」

憧「あ、それならちょっと部のみんなに連絡いれなきゃ」

淡「シズノに電話かけるの……?」

憧「……」

淡「かけるんだね……」

憧「大丈夫」

憧「もう……、割りきった、から」

淡「ウソ」

憧「……今は嘘でも、本当にするから」

淡「そっかー……。わかった。アコを信じる!」

「あ。もしもしシズ?」

「うん。あの人とは……、妙に気が合って、恋人みたいな関係になっちゃった」

「え? そんなの嫌だ、って……」

「そんなこと言われても……、もう、遅い、よ……」

「……」

「うん。ありがとう」

「……ごめんね」

「そうそう。晩御飯、外で食べてくるから玄達にも伝えておいてくれる?」

「うん……。大丈夫、ちゃんと帰るから……」

「またね。バイバイ」

淡「……」

憧「どうして淡が沈んだ顔するのよ」

淡「だってアコ、泣いてるから……」

憧「……」

淡「ごめんね、アコ。ごめんね」

憧「……淡」

淡「アコ……。それでも私、アコが欲しいの……」ギュッ

淡「はじめはただ好みってだけの理由だった」

淡「でも今は、私の全部がアコを求めてるの……」

憧「うん……。それはあたしも」

憧「今はちょっと、大人になる痛みに泣いてるだけ、だから……」

憧「後悔はしてない、よ……」

淡「本当?」

憧「うん……」

淡「よかったぁ……」

――――


インターハイ会場の外に出ると辺りはすっかり日も落ちていた。
生まれ育った阿知賀とは違う、どこか無機質な風景。

「アコー、暗くて道がよく見えなーい」

淡はわざとらしくおどけながら腕を深く絡めてきた。
ひときわ小柄なシズとは違うその高さに、自分の選択の意味を改めて知る。

「ここの空は星がほとんど見えないんだよね」

「うん」

「星といえば……、もしも今流れ星が見えたら、アコはなんてお願いする?」

「願い事? そうね、あたしの願いは……」

「願いは?」

私の、願いは――、

シズと駆けずり回った山。
水遊びした河原。
何度も一緒に通った部室。

全部全部、追い払って。

「……ずっと淡といっしょに、かな」

「わー! 私もおんなじ!」

都会の夜風はほんの少しだけ大人の匂いがした。
このほろ苦い空気を浴びて、きっと夢見がちな少女だったあたしも変わっていくのだろう。
胸の痛みを夕食の考え事で無理やり追い出したりなんかして――


おわり

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