商人?いいえ何でも屋です。 (256)

注意
オリジナル パクリ多し 遅筆 地の文 etc




ミャア....ミャア....

ウミネコが今日ものんきに泣き声を上げながら空を行く。
いや、行くという表現は適切ではないかも知れない。彼らは何代も前からここに住みそして死んでいったのだから。

「いい風だ。そろそろ来るかね……」

岬を一望できるこの高台はこの辺りの海が一望できる。
この辺りは決して海上交通量が多いわけではない。首都からの定期便は1ヶ月に2本しか来ないし、何より陸路を行くほうが楽なのだ。
ここへ船で来ようというものは大方が大規模な荷物を抱えた大型の貨物船か
もしくは対岸の―といっても距離はかなりある―小さな村からの客ぐらいだろう。
定期便は昨日出たところだ。あと2週間はこない。

海上には普段は漁師の船がまばらにいる程度だが、水平線からのっそりと小さな点がこちらに向かってくるのがわかる。
定期船を除けばこの近辺に就航している最大の船。
エルヴィン・マストラ号。対岸との渡し船だ。
特徴的なマストは水平線から見ただけでも男に待ち人が来たことを知らせた。




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一方エルヴィン・マストラ甲板上では

「旦那、岸がみえてきやした後三時間もすればサントヘルマンですぜ」
「あぁ、わかった。」

この国では見ない風体の男。船員もその足作りから行商人かきこりの類だとしかわからない。
おそらくは前者であろう。出稼ぎのきこりはその国の者から見てどこの者かわからない格好はしていない。
そのような遠くまでは出稼ぎには出ないだろう。

「さって、今日はいい天気だしゆっくり甲板で昼寝も悪くない」

フードを深くかぶり甲板に寝転がる。
春の日差しと心地よい潮風が甲板を占領していた。

「あっ!こんなところにいたんですね!もぅ探したんですから」

甲板に寝転がる男に少女が声をかける。

「何だ?俺がどこにいようと勝手だし、勝手についてきたのはあんたの方だ」
「そりゃ、そうですけど……今日こそは教えてもらいますよ!あの秘術を!」
「だから秘術でも何でもないって言ってるだろうが。それにアレは一族の秘伝だ他者に漏らすことはできん」

「いいじゃないですか、ケチ」
「いいか、お嬢ちゃん。俺は仕事だからやっただけだ。誰もあんたを助けるためじゃない」
「別にわかってますそれぐらい。あと私は今年で22です。お嬢ちゃんなんかじゃありません。
 今年で帝立大学をちゃんと卒業した立派な大人です!」

「自分が子供だといわれてムキになるならそれは子供だと宣言しているのと同じだ」
「なんですか!話をそらさないでください!それにあなたのほうが年下でしょう?」
「さぁ、どうかね?」

むすっと膨れる少女に見向きもせず、甲板に横になったまま男はじっとしている。
その傍で少女もあきらめたように踵を返す。

「そういや、あんたの実家はあの港から近いのか?」
「えっ、ええ山を二つ越えたところですから三日もあれば……今日はあそこで一泊してですから四日後には帰れますね」
「じゃあ五日だな」
「えっ?」
「五日だ、出発は一日遅れることになる。」
「何でですか?」
「嵐がくる」

雲ひとつない空を見上げながら答える男に不思議そうな顔を返す。
だが、この得体の知れない男の言がなぜかあたりそうな気もする。少女は心の端でそう感じた。


――港

「よぉ、予定通りだな。まぁここらじゃよほどのことがない限りは遅れるなんてことはねぇが」
「まぁな、ちょっと予定外のことは起きたが時間には間に合わせた。」
「予定外ねぇ、珍しいこともあるもんだ」

船から下り、顔を合わせると軽い会話を交わす二人。片方は先ほどまで甲板に立っていた男
もう一人は岬の見える丘でに立っていた男。

「もうっ、先に行かないでってアレほど言ったのに」

「コレが予定外かい?ルイ?」
「あぁ、不本意ながらな」
「不本意って何ですか!こんなかわいい子がついてくるんですよ!お得じゃないですかってはじめまして。この人の知り合いですか?」

「知り合いですか?じゃねぇよ俺はこいつの旅連れだ。お嬢ちゃんこそ誰だい?」
「私はアリアンノ・カルノーです。帝立大学を今年ちゃんと卒業したんですからお嬢ちゃんじゃありません」
「あぁ、そうかい。んでこいつとはどういう?」
「ただアッチで夜盗に襲われたのを助けてやっただけだ」

「ほ~珍しいことをするんだな。なんだ?好みか?」
「もう少し熟れたほうがいいな、何よりまな板は好みではない」
「なっ」

「それに、付きまとわれてほとほと困ってる。何とかしてくれ」
「いいねぇ、見た目が若いってのは。で、こいつのどこに惚れたんだ?」

「違います。ただ、少し珍しい魔法を使うのでそれを見せてもらいたいだけです!それに私は名乗ったんですからソッチも名乗ったらどうですか?」
「おっと失礼、俺はモンドってんだ。んでコッチはルイテルだ」
「おい」
「いいじゃねぇか減るもんじゃなし。それにどうせマトモに名乗っちゃいねぇんだろ?」

「必要がないからな」

船着場の荷役の喧騒の中、3人は奇妙な自己紹介を交わした。
それから時を待たずして、ルイテルとモンドは町へと向かう。それをアリアンノが追いかける。
ルイテル本人は不本意そうな顔をし、モンドは不適な笑みを浮かべながら。
二人は何も言わず、アリアンノが付いてくるのをただ黙っていた。


カランカランとドアを開けると宿屋の店主が元気に声をかけてくる。

「らっしゃい、三人かい?」

「二人だ」
すばやく帰すルイテルそこにモンドが割ってはいる。
「あぁ、すまねぇ三人でいいぜ。部屋、空いてるかい?」
「この宿が満室になるように見えるかい?ま、満室になるのは嵐がきて船が足止め食らったときぐらいさ」
「なら、明日は満室だな」
「変なこと言うねぇ。確かに今は船が来てるが、こんなにいい天気だってのに?」

窓の外を見ながら主人は笑って見せた。

「店主、こいつの言うことは信じておいたほうがいいぜ?けっこうあたる」
「ホントかい?お客さんなんだい?占い師かなんかかい?」
一泊おいてルイテルが答える

「なに、ただの行商人だ。満室になると言って悪いが二部屋頼むぞ」
モンドとアリアンノに目配せをする。その顔には『あきらめた』と書いてある。

「だが、宿代までは出さんからな。自分でまかなえ」
「それぐらい持ち合わせはありますよっ!」


――数時間後

「本当に嵐がきやがった。さっきまであんなに晴れてたってぇのに」
宿屋の店主がぼやいているころ、食堂では件の三人が卓を囲んでいた。

「で、結局俺はまだどうしてこうなってるか聞いてねぇんだがなぁ?ルイ」
「だからさっきも言っただろう」
モンドのときにルイテルが帰す。

「あのなぁ『ヒシャヒシャヤキトリ』『アレソレいのしし』でわかるわけねぇだろ」
「ん?事情を説明するときの魔法の言葉だと聞いたが違うのか?」
「それを言うなら『カクカクシカジカ』『コレコレウマウマ』だっつの!しょーもない覚え方しやがって」
「ふむ、そうか。次からはそうする」

黙々とまでは行かずとも目の前の皿からルイテルの口へと食べ物が放り込まれていく。
大げさな身振り手振りでそれを負けじと帰すもただの漫才にしかならない。

「んで、結局何があったんだ?予定じゃこんなオマケはついてこなかっただろ?俺はまぁ華があるのはいいことだと思うが」
「オマケって何ですか!オマケって!」
「お前以外の何かに聞こえたのならば耳の医者に行けばいい」
「そういうことじゃないです!もっと言い方ってモノがあるんじゃないですか?」

オマケ扱いをされたアリアンノが一人声を荒げる。
「そうだな、まぁ詳しく話をすると。船にのる二日前だから今から五日前だな……」

「知ってのとおり俺はあの時、向こう側――ポートスミス――の森の中にいた。」

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