女「コロネってさ、どうやって食べるのが正解なの?」
友「どうでもええがな」モグモグ
女「どうでもいいことはないでしょ!」
友「どうでもいいことはないってことはないでしょ」ムグムグ
女「友ちゃんはどうやって食べるの? コロネ。ちょっと実践してみてよ」
友「むぐ? もう食べちゃったよ。あったかいコーヒーおいちい」ズズズー
女「わたしのあげるからやってみてよ」
友「いいの?」
女「どうぞ」
友「さすが女ちゃん! 神さまだね! レット・ゼア・ビィ・ライト! 一生ついていく!」
女「わたしはダイエット中だからね」
友「太るってつらいね。わたしは食べても太らない体質だから分からないけど」
女「友ちゃんってけっこう性格悪いよね」
友「そうだね」ズズズー
女「それで、どうやって食べるの?」
友「ええと、まずはこのほそい方の先っちょをちぎります」ブチィッ
女「え」
友「そしたらこのちぎったやつを、ふとい方の先にねじ込んで蓋をする」グリグリ
女「ああん」
友「それで、ほそい方から食べる。そしたら中身がこぼれなくて済むよ」ムグムグ
友「これでコロネなんかイチコロね!」ドヤァ
女「あ、うん」
友「イチコロね!」ドヤァアアアアア
女「うん、17点かな」
友「採点厳しすぎない?」
友「それで、どう? この食べ方」
女「すごくいいよ。友ちゃんって実は天才なんじゃないかって思ったよ」
友「うれしい」テレテレ
女(かわいい)
友「あんたはどうやって食べるの?」
女「どうって、こうぐるぐるほどきながら、もぐもぐと、ね?」
友「え」
女「え」
友「ほどいちゃうの?」
女「うん」
友「コロネを」
女「うん」
友「服を脱がせるみたいに」
女「いやん」
友「じゃあカレーライスってさ、どうやって食べる?」
女「どうやってって、どういうこと?」
友「混ぜる? 混ぜない?」
女「混ぜないよ?」
友「世の中ってむずかしい」
女「?」
友「まあ、正解なんてないってことだね。マナーも何もないよ」
女「そっかあ」
友「コロネもたい焼きも同じ。好きなように食べればいい。おわり!」
女「いや、たい焼きは尻尾からでしょ?」
友「いや、べつに何でもいいんじゃないの」
友「それに、たい焼きの食べ方のスタンダードは頭からじゃないの?」
女「いや、尻尾でしょ」
女「友ちゃんはどうやって食べるの?」
友「わたしは背中から」
女「え」
女「背中? 背中って、背びれのところ?」
友「そりゃそうでしょ」
女「猫みたいな食べ方だね。かわってる」
友「コロネほどいちゃう子に『かわってる』だなんて言われたくないかな」
女「いや、あれはふつうだよ」
友「『ふつう』っていったい何なんだろう」
女「友ちゃんってたまにむずかしいこと言うよね」
友「思ったことを言ってるだけだよ」ズズズー
女「こういう時はグーグル先生に訊くのがいちばんだよね」
友「いい時代になったよね。あ、コーヒーおかわりください」
女「わたし達20年も生きていない小娘なのに、時間の流れを実感しちゃうね」
友「そうだね」
女「ええと、なに調べるんだっけ。忘れちゃった。波動関数だっけ?」
友「なにそれ。時間の流れって怖い」
友「調べるのはたい焼きの食べ方でしょ。なに、波動関数って」
女「お手持ちのスマホでグーグル先生に訊いてみるといい」スッスッスッ
2分後
友(コーヒーおいしい)ズズズー
女「ねえ友ちゃん、おもしろい話を見つけたよ」
友「ふうん。どんな?」
女「たい焼きの食べ方で性格が分かるんだって。心理テストみたいな」
友「おもしろそう」
女「でしょ」
友「それで、どうなの?」
女「尻尾から食べるのは、慎重派で、些細な事にも気を払う気配りのきく人」
友「へえ」
女「プラトニックな恋に憧れるロマンチスト、でも鈍感な一面もあり、だってさ」
友「案外あたってるんじゃないの?」
女「そうかな?」
友「プラトニックな恋に憧れるロマンチスト、でも鈍感な一面もあり、ってところが、とくに」
友「あんたからはそんな感じがする」
女「へえ。ところで、プラトニックって何?」
友「グーグル先生に訊けばいいよ」
友「それで、背中から食べるのはどうなの?」
女「ちょっと神経質だけど、ものすごく甘えん坊」
友「うん?」
女「静かな落ち着いた雰囲気が好き。友ちゃん本読むのとか好きだよね」
友「うん、まあ」
女「寂しがりやだけど孤独が好き。感受性が強く、涙もろい、だって」
友「コメントしづらい」
女「あたってるよね」
友「どこが」
女「ものすごく甘えん坊なところとか。ほら、友ちゃん、お兄ちゃん大好きだし。ブラコンだし」
友(なんでそんなこと知ってるんだよぉ……)
女「寂しがりやだし。ほら、むかしお泊まりの時に」
友「分かった。分かったからもうやめて……はずかしいよぉ……」
女(かわいい)
女「涙もろいってところも。ほら」
友「もうやめて……」グスッ
友「コロネもたい焼きも同じだなんて言わなきゃよかった」
女「でもそれは正解だったよね」
友「そういうことになるのかなあ」
ヘーイヘーイ マーイマイ ロッケンローキャンネヴァーダーイ
友「ニール・ヤング?」
女「電話だ」
女「もしもし?」
友(なんで着信音がヘイ・ヘイ、マイ・マイなんだよ)
女「お母さん? うん……うん、分かった。今から?」
友「……」ズズズー
女「分かった。じゃあね」
友「お母さん、なんて?」
女「クリスマスの料理作るの手伝ってほしいって」
友「家に帰るの?」
女「うん」
友「そっか」ショボン
女「友ちゃんはどうするの?」
友「わたしもうちに帰ろうかな……」
女「家にお兄ちゃんはいない?」
友「誰もいないと思う」
女「」ピコーン
女「うち来る?」
友「いいの?」パァアアアア
女(かわいい)
女「いいよ」
友「ありがと。一生ついていく」
女「いっしょにひっそりとクリスマスを過ごしましょう」
友「そうしましょう」ウキウキ
アリガトウゴザイマシター
女「寒いねえ」
友「そうかな」
女「肺が凍っちゃいそう。雪も降ってきたよ」
友「ハッピー・クリスマスだね」
女「ホワイト・クリスマスじゃなくて?」
友「ハッピー・クリスマス」
女「そうだねえ」
女「やっぱり寒い。でも手袋もカイロもないよ」
友「手でも繋ぐ?」スッ
女「誘ってるの? カモンベイビーブルーなの?」
友「なんでやねん」
女「冗談だよ」ギュッ
友「……」ギュッ
女「友ちゃんの手、あったかいね」
友「心が冷たいからね」
女「ふーきっくづぁほーりんざすかーい」
女「そーざっへーぶんずうくらいおーぶぁみー」
女「ふーすとーうざそーうふらむざさん」
女「いーなうぉーうかまんだねっざすぃーむす」
友「へたくそ」クスクス
女「れっぜーびーるぁーぶ」
友「れっぜーびーるぁーあーぶ」
あ、おわりです
なんだこれ
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