美少女「私……弱虫でいくじなしだから、こんなことにでもならないと一生言えなかったかもしれないけど」
美少女「あなたのことが好きなの! だから……行かないで、俺くん!!」
俺「……俺が行かなきゃ、世界がやばい。この世が無くなるのはお前も困るだろう?」
美少女「私の中の世界は、あなたでできてるの。あなたがいない世界なんて、どうなっても構わない!」
俺「ヒューウ、恋は盲目だねぇ。盲目ついでに俺のこの決意にも目を瞑ってもらいたいもんだ」
美少女「私……真剣なんだよ?」
俺「……お前の気持ちは分かる。俺はイケメンで頭も運動神経も良く面白い上に優しくてシャレオツで……」
美少女「だったら!」
トンッ
美少女「うっ……」クラッ
俺「大切なもののためなら迷わず命をかけられる。そういうところに……惚れたんだろ?」
美少女「バ……カ……」
ドサッ
俺「やれやれ……自分で決めたとは言え、辛い立場だ。言ったら揺らいじまいそうで……最後まで、言えなかったよ」スッ
俺「……好きだったぜ、美少女。この世の誰よりも」chu
数日後
美少女「俺くん好き・・・・・愛してる・・・・・絶対セックスする・・・・・」ダッダダダダダダダ!!!!!!!!
俺「あの子元気にしてるかなあ」
俺「……さて」
俺「行くか」ザッ
TV『巨大隕石はもう地球にかなり迫っています! これにはお手上げです!』
TV『んーぅ、良い方向に捉えると今日はもう何をしても良い日ということになりますねぇー』
俺「時間がないな……ん?」
幼馴染「……」
俺「来てたのか」
幼馴染「行っちゃうの……?」
俺「……もう社会人なんだ。仕事がありゃ、行くさ」
幼馴染「……」ギュッ
俺「おぉぅっ……」
幼馴染「……」ギューー
俺「……んぅ」ポリポリ
俺「止めてんのかい?」
幼馴染「……悪あがき」
俺「まいったな……動けん」
幼馴染「……覚えてる?」
俺「ん?」
幼馴染「私に好きな人ができて……告白して…………失敗して」
幼馴染「泣いてる私を、俺君は黙って抱きしめてくれたよね」
俺「……あったな、そんなこと」
幼馴染「あの時からかな。私……本当に好きな人が俺君だって気付いたの」
俺「……」スッ
幼馴染「分かってる。気絶させるんでしょ?」
俺「……」
幼馴染「止めないよ。俺君の行く道は。だからこれが最後の悪あがき」
幼馴染「俺君との最後の思い出は……せめてその胸の中で……」
トンッ
俺「……」
俺「あの時から、か。やれやれ、鈍感だなぁ」
俺「俺はもっと前から、お前のこと……」
幼馴染「俺……君……」
ドサッ
俺「……この世の誰よりも、愛してたぜ」chu
俺「さて」
俺「……行くか」ザッ
隕石「ゴゴゴゴゴゴゴ」
俺「かなり近付いてきてるな。こりゃあ早く行かねーと」
妹「お兄ちゃん」
俺「……」
妹「行かないで……」
俺「妹……」
俺「分かってるだろ? 兄ちゃんが行かないと、隕石が……」
妹「……そう、だよね」
妹「じゃあ私も行く!」
俺「おいおい、空も飛べないくせに何言ってんだ」
妹「でも……」
俺「俺にしかできない仕事なんだ。それよりお前には、お前にしかできない仕事を頼みたい」
妹「私にしか……できない仕事?」
俺「そうだなぁ……俺が隕石をボカーンとぶち壊して見事生還できたら、だ」
俺「おかえりなさい、って言ってほしいな」
妹「……それだけ?」
俺「ああ、それだけだ。それだけで……地球救った疲れも吹っ飛ぶだろうよ」
妹「うん……分かった! 待ってるね、お兄ちゃん」
俺「フッ……良い子だ」
トンッ
妹「何故ッ……」
ドサッ
俺「じゃあな妹、この世の誰よりも愛してたぜ」chu
俺「さて隕石は……」
俺「……」チラッ
委員長「……」
俺「ちょっとくらいなら……大丈夫かな」
委員長「俺君、行ったらダメ」
俺「悪いな、行かなきゃダメなんだ」
委員長「こんなの、校則違反よ……本来なら、授業中じゃない」
俺「今日は休校だ。誰も学校になんて……」
委員長「……休校は、終わりじゃないから」
俺「ん?」
委員長「休校が終わったら……また学校は始まるから……だから!」
委員長「帰ってきなさいよ……クラスの誰一人、無断欠席なんてさせないんだから……!」
俺「フューウ……委員長にゃあ、逆らえねぇな」
委員長「絶対よ、絶対……」ポロッ
委員長「あ……」ポロポロ
俺「お、泣いてんのかい?」
委員長「バ、バカ! あ、あなたのせいだからね!!」クルッ
委員長「私を泣かせた罰として、帰ったら一生かけて償ってよね。じゃ、じゃあね!」スタスタ
俺「ふっ……」ニッ
俺「……」
俺「……」ダッ
トンッ
委員長「うっ」
ドサッ
俺「じゃあな委員長……この世の誰よりも愛してたぜ」chu
あ、ミスった社会人設定なのに委員長出しちゃった
俺「……しかしまいったな。さっき嘘ついちまった」
俺「幼馴染相手に社会人とか言ったけど……よく考えたらまだ高校生だった」
俺「ったく、俺も相当混乱しちまってんなァ。ま、どうせ死ぬんだ。別にいいか」
後輩「死なせませんよ」
俺「!」
俺「空手部の……後輩か。女の。どうした?」
後輩「先輩には何度も勝負を挑んで……その数だけ軽くあしらわれ負けてきました」
後輩「今までに999敗……でもまだ私は諦めてませんよ」
俺「懲りないねぇ。……育てた身としては、嬉しい限りだ」
後輩「今日あなたを気絶させれば、あなたは死にに行かない。全力でいきます」スッ
俺「勘違いしてるかもしれんが……俺が行かなかったら行かなかったで隕石落ちて俺含む皆死ぬんだぜ?」
後輩「聞こえません。集中してるので」
後輩「でやぁ!」シュッ
パシィ
俺「……拳に迷いがある。それじゃあ俺は倒せねぇよ」
後輩「……かないませんね、あなたには」
俺「大丈夫、もうすぐお前が地球上でナンバーワンになるよ」
後輩「ずるいですよ……先輩……」
トンッ
後輩「うっ」
俺「また、俺の勝ちだったな」
後輩「うう……二つの意味で……」
後輩「せんぱい……め……」
ドサッ
俺「じゃあな後輩。この世の誰よりも愛してたぜ」chu
モミッ
俺「よし」
俺「そろそろ、行くか」ザッ
隕石「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」
俺「もう地球まで5mってとこか……ギリギリだな」
俺「もう完全に間に合わないような気がするが……もしかしたら急げば間に合うかもしれな」
ストーカー「男くん」
俺「……」
俺「お前は……誰だ」
ストーカー「私よ」
俺「そうか……」
トンッ
ドサッ
俺「……」
俺「……」
俺「この世の誰よりも愛してたぜ」chu
俺「今思いっきりジャンプすればなんとか……」
恋人「俺っち!!」
俺「!」
俺「恋人……」
俺「もう黙って行かせてくれ。手を伸ばせば触れるくらいの距離まで来てるだろ、隕石」
恋人「ダメ……男くんが死んじゃったら……私も死ぬ!」
俺「……やれやれ」
トンッ
恋人「っ……!」
俺「ごめんな、急いでるんだ。お前ならきっと俺より良いパートナーを……」
ドゴォッ
俺「!?」
恋人「……」ニッ
俺「かはっ……」
俺(まさか俺の攻撃を咄嗟にガードし……反撃を!?)
恋人「私を今までのコたちと一緒にしないでよね。だって私……」
恋人「あなたの彼女だもん」
俺「……手強い」ツー
俺(まいったな……どう攻略する……?)
俺「はぁっ!」ビュッ
恋人「おわっと」サッ
恋人「脇が甘いよ!」ビュンッ
俺「っぶね……!」タンッ
ドカッ バキッ ドドドド シュババッ チュドーーーーーーーーン ガガガガ
俺「今隕石落ちた」
恋人「隙あり!」ビュッ
俺「ぐっ……」サッ
俺(やばいな……最初の一撃分体力面でこっちが不利。そこをどう補うか……)
俺「! やばっ、立ちくらみ……!?」
恋人「もらったぁぁああああああ!!!!」
ドゴォォォォ!!
俺「ッ……」グッ
俺「……ん?」パチッ
俺「!!」
恋人「な……」クラッ
ドサッ
俺「お……お前……」
俺「美少女……!」
美少女「これでもう……大丈夫だね」
俺「お前、気絶してたんじゃ……」
美少女「一瞬気絶したけど……起きたの。私、強いもん」
美少女「私、俺くんのことが好き。好きだから……俺くんにつり合う女になるために努力したよ」
美少女「整形はもちろん、勉強もしたし、お笑いの研究もしたし……強くもなった」
俺「……ありがとうな、助かったよ」
美少女「ふふ、どういたしまして」
俺「俺は……試したかったのかもしれないな」
美少女「えっ?」
俺「何人も気絶させて……俺はきっと待ってたんだ」
俺「お前みたいな女が現れるのを」
美少女「俺君……」
俺「終わってみりゃ、何も残らない事件だったな。隕石も思ったより小さかったし」
美少女「もともと小さいとふんでたけどね私は。専門家は遠近法で小さく見えるだけとか騒いでたけど」
俺「ははっ……笑っちまうよな」
美少女「ねぇ……本当に、何も残らなかったのかな?」
俺「ん?」
美少女「私の思い、そして愛……あなたの心には、残らなかった?」
俺「……へへ、何も残らない……か」
俺「まーた、嘘、ついちまってたみてぇだなぁ」
美少女「俺くん……!」
俺「好きだ美少女。今までよりも、ずっと……この世の誰よりも」
数年後
俺「巨大隕石……か。この距離ででかく見えるってことは遠近法とか関係無しにでかいんだろうな」
???「行くの?」
俺「ま……俺が行かねーと、地球がやばいからな」
俺「お前も行くだろ? ……美少女」
???「もうっ、今は違うでしょ」
妻「妻、って呼んでよ、俺君」
俺「ははっ、悪い悪い」
俺「今の俺たちの力なら……あれくらいの隕石、無傷で壊せるよな」
妻「もし怪我しても、私の能力『愛の治癒(ラヴ・チュー)』で治してあげる」
俺「そうだな……もう、何も心配いらないな」
妻「行こ、俺君」
俺「ああ」
未知なる宇宙へ!
~fin~
小指がしびれて変な感覚になったのでここらで終わります
個人的には実に良い純愛SSだと思いました
ここでネタバレすると、これはフィクションです
もし純愛に見えなかったなら、その理由は本当の俺が童貞であるからに他なりません
恋なんて知りません
ご愛読ありがとうございました
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