ほむら「1人で過ごすイブも悪くないわね」 (270)
―ほむらの家―
ほむら「こうやって好きなだけコタツに入ってられるし」
ほむら「テレビも本も見放題」
ほむら「暖房完備で室温快適」
ほむら「ゆうべのカレーにコンビニのチキン」
ほむら「デザートは2切れニーキュッパのコンビニケーキ……」
ほむら「…………」モグモグ
ほむら「……悪くないわ……全然悪くないんだから……」
ほむら「……はあぁ……」
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まどか『あ、ほむらちゃん……え? パーティー? わたしと?』
まどか『……ご、ごめんね……その、とっても嬉しいんだけど……』
まどか『その……向こうに住んでたときはずっと、クリスマスは家族だけで過ごすことにしてたから……』
まどか『だから今日も……え! あ、ううん! 全然! 嫌とかそういうんじゃ全然……うん……』
まどか『ごめんね……今度また、さやかちゃん達も一緒に……』
まどか『あれ? ほむらちゃん? ちょっ……ま、待ってほむらちゃん! ねぇ!』
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ほむら「……そのまま、上を向いて家に帰ってきたのよね……涙がこぼれないように」
ほむら「…………はぁぁぁ…………」
ほむら「まどか……何でそういうとこだけアメリカナイズドされてるのよ……
別にクリスチャンでも何でもなかったでしょう……?」
ほむら「…………」
ほむら「…………飲もう……」キュポン
ほむら「…………」コポコポコポ
ほむら「…………」ゴクッゴクッ
ほむら「っぷぁー……」
ほむら「やっぱりいいわね……ラトゥールの40年物は……
……本当はその辺に売ってたワンコインのやつだけど」
ほむら「未成年がどうとか知ったこっちゃないわ……悪魔は法では縛れない……ふふふ」
ほむら「…………」
ほむら「…………」グビッグビッ
ほむら「うぃひー……あー……」
ほむら「あぁー…………」
ほむら「……………………」
ほむら「……まどかを解放して……やっと私とまどかのスウィートメモリーが始まると思ったのに……」
ほむら「美樹さやかにはことあるごとに敵視されるわ、クラスでは何となく避けられるわ、
まどかにすら少し距離を置かれるわ……」
ほむら「挙句の果てには、私が魔獣達の親玉みたいな誤解が広まってるし……」
ほむら「……何よ……こちとらまどかとクリスマスしてバレンタインして大安吉日したいがために
悪魔になっただけなのよ……」
ほむら「まどかを……人間に戻して……一緒にトロ甘な毎日を送りたいだけだったのに……何で……」
ほむら「…………」グビッグビッグビッ
ほむら「……あぁ……まどか……あなたが家族で健全健康なクリスマスを過ごしてる間に……」
ほむら「私はこんなにも……こんなにも堕落して……ひっく」
ほむら「…………」モグモグ
ほむら「……罰なの……? 私への罰だとでも言うの……? この状況が……」
ほむら「……ふざけないでよぉ……やりたいようにやって……何がダメなの……うぅ……」
ほむら「何が愛よぉ……こんな……こんなの……あああぁぁぁ……」
ほむら「ああぁぁぁぁ……」グビッグビッ
ほむら「…………」
ほむら「……うぃー……」
ほむら「……あー……お風呂……」
ほむら「…………でも……あぁー……」
ほむら「…………もうちょっと、もうちょっとだけ……」コポコポ
―1時間後―
ほむら「でれってっててーてってぇん!」
ほむら「あれっはっ! 誰っだっ! 誰っだっ! 誰っだっ!」
ほむら「あれっはっ! ほむっらっ! ほむ~らちゃぁ~ん♪ ほむ~らちゃぁ~ん♪」
ほむら「ひっく……うっふふふ……
今よぉ! 地母神アセトと堕天使アルデヒドを悪魔合体ぃ!」
ほむら「召喚……魔王アルチュー……くふ……ふっふふふ……」
『……ずいぶんご機嫌だね、ほむらちゃん』
ほむら「ええそりゃもう、元気百倍! ホムパンマ――え?」
『まったくもう……せっかく久しぶりに会えたのに、こんなへべれけになっちゃって……』
ほむら「え……え? ちょっと……この声……まさか、でも……」
『身体はまだ子供なんだから……無理したらよくないよ、ほむらちゃん』
ほむら「……ま……どか……?」
円環『ぴんぽーん! ほむらちゃんの最高にして唯一の友達、鹿目まどかだよ!』
ほむら「まどかああぁぁぁぁぁあぁぁあぁ!!」ガタッ
ほむら「嘘!? 何で!? ご家族とパーティーでしょう!? え、何!? 私と聖夜を過ごすためにわざわざ!?
というかどこ!? どこにいるのまどか!? 声が、声しか聞こえない! まどかのソプラノだけが耳小骨に!」
円環『落ち着いて、カームダーンだよほむらちゃん』
ほむら「それとも何、飲み過ぎてとうとう幻聴が……!? そんな……ああでも、たとえまやかしでもまどかと過ごし――」
円環『――わたしはね、厳密に言えば……この世界にいる"鹿目まどか"とは違うの』
ほむら「……え?」
円環『……ほむらちゃんが引きちぎっちゃったせいで、わたしの『人格』と『円環システム』は真っ二つに分かれたよね?
今喋ってるわたしは……ほむらちゃんがちょっとだけ取りこぼして、『円環システム』にこびりついた……わたしの最後の心なんだよ』
ほむら「……うん……うん?」
円環『……簡単に言うとね、神様のほう』
ほむら「!! そ、そんな……あの時、確かにまどかの心だけを……!」
円環『いやだから、それはさっき……まあいいや。
とにかく、ね! ほむらちゃん、大変なの! わたし、もしかしたら消えちゃうかも……!』
ほむら「――! え……!?」
円環『ほむらちゃんが色々やんちゃしてはしゃいじゃったせいで、わたしに対する信仰心がどんどん薄れてきちゃってるんだよ!
特に近頃は、やれクリスマスだのサンタだのって異教の風習にうつつを抜かして……』
ほむら「いや、別にそれは私のせいじゃ……」
円環『堕落! これ以上ない堕落だよこんなの!
こんな調子がずーっと続いたら、わたしも何やかんやで力が無くなって、この心ごと完全に消滅しちゃうかもしれないの!』
ほむら「! そ、そんな……そしたら魔女が……!」
円環『そう……もう二度と、みんなを迎えにいけなくなっちゃう……!
ほむらちゃん……わたし、そんなの嫌だよ……せっかく、わたしが覚悟してまで願ったのに……!』
ほむら「ええ、ええ……! そうね、その通りよまどか!」
円環『まあそもそも、誰かさんが大人しく円環されてたら、こんなことにはならなかったんだけどね』
ほむら「う…………」
円環『とにかく! 円環システムを守るためにも、そしてほむらちゃんに責任を取らせるためにも!
ほむらちゃん! ちょっとやってほしい任務があるんだけど、いいよね?』
ほむら「に、任務……? わ、分かったわ……私にできることなら、何だって……」
円環『……ありがとう、ほむらちゃん。それじゃあ……はい、これ』ポンッ
ほむら「……? これは……黒い、サンタ帽……?」
円環『……ほむらちゃん。ほむらちゃんには今から……この堕落しきったイベントを台無しにしてほしいの』
ほむら「――は!?」
円環『どんな方法でもいいよ。とにかく、このクリスマスをメチャクチャにして……
悪辣極まったその瞬間! このわたしがババーンと登場! 悪いほむらちゃんをやっつける!』
ほむら「え……え?」
円環『みんなは改めて、このわたしの威光にひれふし、あつい信仰心を取り戻す……そういう流れでいきたいんだよね』
ほむら「……つまり、その……あれよね? サクラというか……やらせというか」
円環『そんなしょっぼい役目じゃないよ。人々の信仰心を試す、神様のしもべ……
そう! ほむらちゃんは今夜、『サタンさん』になるんだよ!』
ほむら「サタン……さん……」
円環『……ほむらちゃん、今は悪魔なんでしょ? 悪魔なら、幸せそうな人たちを黙って見てるなんてできないよね』
ほむら「…………ひっく……」
円環『ね? ほむらちゃんはすっごく頑張ってたのに、ほむらちゃんだけ辛いなんて駄目だよ。
わたしやほむらちゃんの頑張りを知らない人たちが幸せなんて、そんなの絶対おかしいよね……?』
ほむら「……私は……私は……」
円環『……それとも、ほむらちゃん?
……このわたしのお願い、聞いてくれないのかなぁ……ぐすっ』
ほむら「喜んでやらせていただくわ、まどか」キリッ
円環『だよね! 信じてたよほむらちゃん! さすが、私の最高の友達!』
ほむら「ええ、もちろん……! あなたのためなら、私はどんなヨゴレ仕事だって……! うっぷ……」
円環『そうと決まればほむらちゃん……いや、大天使サタンさん、出動!
さぁ、その黒帽子を被って、汚れた風俗を撃ち滅ぼすのだぁー!』
ほむら「う……え、ええ……とりゃぁぁぁ――っ!!」ダダダダダッ
円環『…………』
円環『……よかった』
円環『『声しかしないのに、どうやってババーンと出てくるつもりなの?』、とか聞かれなくって……』
円環『……がんばってね、ほむらちゃん』
円環『……誰より何より、わたしのために……』
―外―
ほむら「ふっふふふ……」
ほむら「私はサタン、裁きのサタン……まどかに仕える素敵な悪魔……」
ほむら「ほむほむ悪魔形態、オーン!」ポワーン
ほむら「――!!」ブルッ
ほむら「……さ……さぶ……」
ほむら「ああ……でもおかげで、酔いが少し……」
ほむら「……あ、そうだ、帽子帽子……」キュポッ
ほむら「……さて、と……まどかにああ言われたとはいえ、さすがにあんまり大それたことはできないわね」
ほむら「殺しや犯しは流石に無理……なんかこう……そこそこそれっぽい嫌がらせを……」
ほむら「……そうね。やっぱり、この街に蔓延してる、幸福度数200%のムードをブチ壊すとしましょうか」
ほむら「…………そう言えば、巴マミあたりはムードやら何やらを大事にしてそうね」
ほむら「…………」ニヤッ
ほむら「……そうだわ、まずはマミの所に――」
QB「マミがどうかしたのかい、暁美ほむら」
ほむら「……でも、この寒さであそこまで歩くのは……羽で飛ぶのは疲れるし……」
QB「……聞こえてるかな? ほむら」
ほむら「……そうね……何かこう、それっぽくて楽な乗り物が……」
QB「……これがシカトという現象か。君たちの年頃は本当に陰湿だね……」
ほむら「……あら、キュゥべえ。いたの? 雪に紛れたイクラかと思ったわ」
QB「目の部分だけしか無いじゃないか」
ほむら「……あ、キュゥべえ。ちょっと命令があるのだけど」
QB「せめて『お願い』と言ってほしいなあ」
ほむら「……大至急、私が乗れるソリを用意しなさい。もちろん、空を飛べるタイプの奴よ」
QB「……君はこの星の航空力学を誤解しているね」
ほむら「じゃああなた達が浮かせなさい。ついでに牽引して。余裕でしょう? 宇宙生物の科学力なら」
QB「……逆らっても無駄なんだろう?」
ほむら「分かってるじゃない」
QB「……君に個体を壊されるのは、正直無駄以外の何物でもない。もったいないしね。
……分かったよ、ソリだね。用意しておくよ」
ほむら「今すぐ出しなさい」
QB「いや、それは……」
ほむら「出来るの? 出来ないの?」
QB「出来ないなぁ、正直な所」
ほむら「……使えないわね。まあいいわ。私は今からマミの家に行く。
私がそこを立ち去るまでに、ちゃんと用意して持って来なさい」
QB「はいはい……ああ、そうだ。そもそもマミに何のよ――」
ほむら「ていっ」バッ
パタパタパタパタ…
QB「……自分で飛べるじゃないか、全く……」
―マミの家・室内―
コンポ『ジョーイトゥーザワー ザローイーズカーム』
マミ「はい、できた! 特製・クリスマスチーズケーキ!」
なぎさ「わぁーっ!」
マミ「ちょうどグラタンも焼き上がったし、そろそろご飯にしましょう。
なぎさちゃん、スプーンとサラダのお皿持っていってくれる?」
なぎさ「はい! あ、キャンドルはどうしますか?」
マミ「私が着けるわ。なぎさちゃんにはまだ危ないでしょう?」
なぎさ「む……なぎさもそれぐらいなら余裕なのです!」
マミ「ふふっ、もう……」
―屋外―
ほむら「思ったとおりね……賛美歌にツリーにクリスマスキャンドル……」パタパタ
ほむら「巴マミはムードや格好を第一に考える性格……最初の標的として相応しいわ」パタパタ
ほむら(……それにしても、まさかあの子も一緒とはね)
ほむら「……あ……不味いわ、羽が……羽がそろそろ……」パタッパタッ
ほむら(やっぱり飛ぶのは辛いわ……やたら背中が痛くなるし、酔ったせいで方向が怪しいし……)
ほむら(とっととソリ持って来なさいっての、あの白饅頭……)
―室内―
なぎさ「いただきまーす」
マミ「いただきます」
なぎさ「んむんむ……おぉ……これは……チーズとマカロニの夢のコラボぉ……!」モグモグ
マミ「こらこら、もの入れたまま喋らないの」
なぎさ「んぐんぐ……」ゴクン
なぎさ「はー……やっぱりマミは料理の申し子、輝けるチーズの星なのです」
マミ「ふふっ、もう、何それ……
……あ、なぎさちゃん。ご両親にはちゃんと連絡したのよね?」
なぎさ「はい! パパもママも、マミによろしくって言ってました」
マミ「……でも、残念だったわね。ご両親がどちらもお仕事なんて」
なぎさ「……この時期、色々忙しいですから……あ、でも! お正月にはちゃんとお休みしてくれるのです!
それに、今日はマミとお泊りだし……えへへ」
マミ「……そうね。私も……
ご飯が終わったら、一緒にお風呂入りましょうか」
なぎさ「はい!」
―屋外―
ほむら「…………」
ほむら「……幸せそうね、巴マミ……」
ほむら「すぐ死んだり発狂してたりした、あの頃とは比べ物にならないくらい……」
ほむら「…………」
ほむら「……悪いけど、そのしやわせムードもこれまでよ……」
ほむら「来なさい、偽街チルドレン!」
偽街の子供達「ヤー ヤー」
ほむら「アルファーは玄関から、ブラボーは窓へ。チャーリー、デルタ、エコーは別命あるまで、ここの死角で私と待機。
いいわね? 作戦開始っ!」
偽街の子供達「ヤー! ザーイエッザー!」
―室内―
ピーンポーン
マミ「あら? ……はーい」
偽街A『コンバンワー、サガーキュービンレスー』
マミ「はーい! ……えーっと、ハンコハンコ……」
なぎさ「宅急便ですか?」
マミ「みたいね。……もしかして、サンタさんからかしら?」
なぎさ「そんな夢の無いシステムのサンタさん嫌なのです」
マミ「ふふっ、そうよねぇ……」タッタッタ
コン、コン、コン
なぎさ「……ん?」クルッ
偽街B『アケテー アケテクレー』コンコンコン
なぎさ「……な、何だろ……窓から、なにか……」テクテク
―屋外―
マミ「すみません、お待たせして――」ガチャッ
なぎさ「マミー、窓に何か――」ガラッ
ほむら「今よ! ゴー!」
偽街CDE「ヤーッ!」ビュンッ
―室内―
偽街C「スィーディー!」カチャカチャ
偽街D「バーゥム!」ガサガサ
偽街E「キャーッァ!」ドサッ
偽街A「ア、ハンコカサインココニオナシャース」
マミ「はーい。……っと」ポン
偽街B「ラースックリッスマス♪ ゲビュマイハー♪」
なぎさ「え!? な、なんで外からワムが……」
偽街CDE「ミッジョンエフゥーツ!! ヤフゥ――!!」ビュンッ
偽街A「! ア、ジャドモ、アリアトヤシター」ビュン
マミ「お疲れ様です」
偽街B「! フーンフンフーン、フフフフーン♪」ビュン
なぎさ「ちょ、ちょっと! そっからもう覚えてないんですか!?」
―屋外―
ほむら「よし……ちゃんと仕掛けてきたみたいね」
偽街の子供達「ヤーヤー」
ほむら「とくと堪能しなさい、巴マミ、百江なぎさ……このサタンさんからの素晴らしいプレゼントを!」
―室内―
なぎさ「……? 何だったんだろう、さっきの歌……」クルッ
なぎさ「…………」
なぎさ「……!? ……!!?」ゴシゴシ
マミ「よいしょ、よいしょ……ふぅ、結構重いわね、これ……差出人も書いて……な――」
マミ「…………」ドサッ
マミ「…………!!?」
なぎさ・マミ「……な、な……な……」
なぎさ・マミ「なんじゃこりゃぁああぁ――――!!?」
マミ「何!? 何で!? 何でツリーが枯れ木になってるの!?
しかもてっぺんにドクロ……何!? 何でどうしてザッツホワイ!?」
なぎさ「きゃ、キャンドルもなんか変なのに変わってるのです!
何ですかこのヤギ頭男は! 何で頭の上でチョロチョロ!?」
マミ「――! あ、こ、このCD……よく聴いたらクリスマスソングじゃなくなってるわ! これストーンズのCDよ!」
なぎさ「スティッキーフィンガーズですか!?」
マミ「いえ、ベガーズ・バンケットね。『悪魔を憐れむ歌』の」
なぎさ「あぁー! よく見たらツリーのイルミネーションも全部紫に!」
マミ「ジンジャーエールが全部モンスターエナジーになってるわ!」
なぎさ「いつの間にかテレビの前にナイトメア・ビフォア・クリスマスのビデオがぁー!」
マミ「クリスマスカードのサンタさんがみんな墨塗りに……!」
なぎさ「聖書の上によく分からない魔導書がぁ!」
マミ「あ、それは元々あったわよ」
なぎさ「な、何で……何で、こんな……うぅぅ……」
ガタッ! ゴトッ!
なぎさ「ひっ!?」
マミ「あ、あの荷物……う、うご――」
ガタゴトガサガタッ!!
なぎさ「ひぃぃぅわあぁぁぁあん!!」ガタガタ
マミ「こ、こんな……こんな退廃的な嫌がらせができるのは……まさか……!」
マミ「……」ギリッ
マミ「なぎさちゃん! すぐにコート着て!」
なぎさ「えっ!? ど、どこか行くのですか!?」
マミ「……問い詰めに行くのよ。あの悪魔さんをね!」ダッ
なぎさ「あっ、ちょ、マミ! グラタンは!? ケーキは!?」
マミ「あとでチンすれば大丈夫よ! ほらっ、急いでなぎさちゃん!」
なぎさ「く、クリスマスが……クリスマスがぁぁー…………」
―屋外―
ガチャッ!
「許されぬわ……これは許されざるわよ、暁美さぁぁぁぁん!」ダダダダ
「うわぁぁぁぁ――ん! 待って! 待ってマミぃぃ――!」
ほむら「……ふふ……」
偽街A「プリッズミーッチューゥ! フォックゲーンマーイレーイッ♪ オオゥイエー」
偽街BCDE「ウッウー! ウッウー! ウッウー! ウッウー!」
ほむら「いいわ……いいわこれ……どす黒く、そしてスカッとしてくる……!」
ほむら「これが悪魔! これがサタンさん! いいわね……たまにはこういうのも……」
QB「ほむら、ソリを持ってきたよ」ズルズル
ほむら「遅いわよ……まあ、丁度ここを出る所だったし、あなたにしては割と……」
子供用ソリ「」
QB「…………」
ほむら「…………」ベチンッ
QB「きゅぶぇッ」ベコッ
ほむら「……誰がこんなこじんまりした奴を持ってこいと?」
QB「き、近所の玩具店にちょうどこれが……でも、これはなかなか良い品だよほむら。
ほら、ヒモ付きだし……それに雪だけじゃなくて、落ち葉や砂利道でも問題なく滑られ――あいたっ」
ほむら「いい!? 大人用の、オモチャじゃないちゃんとしたのを持って来なさい! 然るべき場所で手に入る奴よ!
大体、こんなので飛んだらグラグラじゃないの!」
QB「……注文はできるだけ具体的にね。聞かなかったからって、相手が全部慮ってくれてると思ったら大間違――」
ほむら「とっとと行きなさい! ったくもう、また飛んでいくしか無いじゃないの……!」パタパタ
QB「次はどこに行くんだい」
ほむら「え? あ、そうね……次は……」
ほむら「…………」ニヤッ
ほむら「……そうね、次はやっぱり、あのバカップルかしら」パタパタ
QB「……? 情報が少なすぎるね。そして抽象的すぎ――」
ほむら「調子に乗って同棲までやっちゃって……いいわ、このサタンさんが精神的に殴りに行ってあげる」
偽街の子供達「ヤー ヤーヤー ヤーヤーヤーヤー」
QB「あ、ちょっと、ほむら!」
―さやかの家・リビング―
杏子「さやかー、その板チョコのとこくれよー」
さやか「えー、さっきちゃんと話したじゃん。あんたにサンタさんの砂糖あげるからって」
杏子「バッカ野郎! こんな小さいサンタさんを噛み砕けるわけないだろ!」
さやか「おやぁ? 食べ物粗末にしちゃっていいのかなー?」
杏子「ぐぅっ……」
美樹父「ははは、いいじゃないかさやか。チョコだったらおやつ代わりに買っといた奴がたくさんあるから」
さやか「……んもう……わかったわよ、その代わり、サンタの砂糖は貰うからね」ヒョイ
杏子「サンキュー! ……んー! やっぱウマい……!」モグモグ
さやか「…………」ボリボリボリボリ
杏子「……容赦なく噛み砕くなぁ、お前……」
美樹母「ホントにねぇ、何でこんなに図太く育っちゃったのかしら」
さやか「おーおーおー、この繊細美少女さやかちゃんに対して何たる言い草!」
杏子「なーにが繊細だよ、アンタがそうならあたしはド繊細だっての」
さやか「どの口がほざいてんのよ、ほれほれー」グニグニ
杏子「あっオイ! ったくもう、こんにゃろー!」グニグニグニ
両親「…………」ニコニコ
―屋外―
ほむら「……ふん、相変わらず友情でも恋慕でもない、ぬるま湯な関係に浸っているわね」
ほむら「あなた達は覚えていないでしょうけど……もともと、殺し合う仲だったのよ」
ほむら「……どうやら、ロマンチックさよりも家族団欒が優先みたいね。ツリーも申し訳程度の奴だし」
ほむら「……いいでしょう。その団欒ムード、灰燼に帰してくれるわよ」
ほむら「――偽街チルドレン!」
偽街の子供達「ヤー!」
ほむら「今度はβ作戦で行くわ。アルファ、ブラボーはブツを用意後、全力で焚くこと!
チャーリー以下はその間、ご両親の部屋の改装にかかりなさい!」
偽街の子供達「ヤー!」
ほむら「作戦開始っ!」ガラッ
偽街の子供達「ヤーッ!」
ほむら(……不用心ね。部屋の鍵くらい締めときなさいよ……)
―リビング―
ガラッ
杏子「ん?」
美樹母「どうしたの、杏子ちゃん」
杏子「いや……今何か……あれ?」
美樹父「さやかぁー、注いで注いでぇー」ウィーッ
さやか「もう、飲み過ぎだよお父さん……」
美樹父「あー……何か良い匂いしてきたなぁー……」ポワーン
美樹母「え? ……あ、本当……」クンクン
杏子「何だろこれ……お香か何かか?」
さやか「うち、そんなのあったっけ……」
美樹父「…………」ポワーン
美樹母「…………」ポワーン
杏子「……? おじさん? ねぇ、おばさん?」
美樹父「……さやか、杏子ちゃん……ごめんね、俺ちょっと飲み過ぎちゃって……」ヨロヨロ
美樹母「……ちょっと、お父さんを寝かせてくるからね。自分のお皿下げたら、2人でお風呂にでも入ってきなさい」
さやか「え? あ、うん……」
美樹父「ごめんなぁ……お前……ふふ……」ヨタヨタ
美樹母「いいのよもう……ふふっ……」テクテク
さやか「……?」
杏子「……な、なぁ……さやか……」
さやか「え? ……あれ、杏子……なんかぁ……顔、赤く……」
杏子「えっ? そう、かな……いや……お前だって……」
さやか「そ、そう……? あ―……何だろ……何か……ぽーっと……」ヨロッ
杏子「っとと……お、おい、大丈夫か」
さやか「…………」
杏子「……さやか?」
さやか「……ねぇ、杏子ぉ……杏子ってさぁ……」
杏子「うん……?」
さやか「……手……けっこうすべすべしてるんだね……」スリスリ
杏子「…………」
杏子「……………………」
杏子「……そう、かなぁー……」
さやか「そうだよぉー……」スリスリ
杏子「んなことねーよぉー……さやかの方がすべすべじゃんかよー」ナデナデ
さやか「あーもー……んふふ……」プニプニ
杏子「えへへぇ……さやかぁー……」モミモミ
偽街AB「ヒューヒュー!」モクモク
―屋外―
ほむら「……ふふふ……この私が心血を注いで完成させた、
ほむほむ印のアロマキャンドル(催淫剤入り)……」
ほむら「我ながら、恐ろしい兵器を作ってしまったわ……今度特許でも取ろうかしら」
偽街CDE「ヤー!」
ほむら「おかえりなさい。ご両親の方は?」
偽街CDE「ヤー……」ニヤッ
ほむら「……そう、御苦労さま。次はアルファ、ブラボーと合流して、さやか達のいるリビングを改装して」
偽街CDE「ザーイエッザー!」ダッ
ほむら(……ほらほら、もっと情熱的に絡みあいなさい! 聖夜はまだまだこれからよ……!)
偽街C「……デバガメ?」
偽街E「デバガメ……」
―室内―
杏子「さやかぁー……んんー」ハムハム
さやか「あっ……あーんもうー、がっつきすぎー」ペロペロ
杏子「さやかがいけないんだぞぉー、あたしをこんなにしたさやかが悪いんだー……」プチップチッ
さやか「ばかー……」
杏子「ほれほれー、ボタンがどんどん外れてくぞー! ひとーつ……ふたーつ……」プチップチッ
さやか「きゃーっ、たべられちゃうー! 悪いオオカミさんにねぶりつくされちゃうー」
杏子「さやかはブラもかわいいなぁ……ほんのり水色……あれ? ピンク? あれ……?」
さやか「ああほら、電気がピンクだから……」
杏子「ああー……いつの間に模様がえしたんだー? さやかぁー」モミモミ
さやか「んっ、あっ……やっ、し……知らないよぉ……んんっ……」
支援
杏子「え……? じゃあ、あの鞭とかローソクとか、よく分かんない三角のやつは……」レロレロ
さやか「えっ……あっ! やっ、やぁ……おへそやらぁ……」
杏子「はぁっ……はぁっ……な、なんか……熱くなってきたな……暖房、止め……」
さやか「え? 杏子も……ぬいじゃえばいいじゃん……」
杏子「……あ、そっか……そーだよな……」
さやか「ほらほら、おきがえちまちょうねー、あんちゃーん」グイグイ
杏子「あっ……やっ、さ、やか……」
さやか「はーい、ばんざーい……パーカーぬげないよー……」
杏子「ば、ばんざーい……」
さやか「……隙ありぃ……!」レロッ
杏子「ひゃぁああぁんっ!」ビクンッ
さやか「……おいしい……杏子ぉ……おいしいよぉ……」レロレロレロ
杏子「や、だめっ、わきだめっ……っあ……!」
―屋外―
ほむら「…………」
ほむら「……何か……」
ほむら「もの凄く腹が立ってきたわ……何よあいつら……」
偽街の子供達「ヤー!」
ほむら「……あ、おかえりなさい」
ほむら「……ま、いいわ。……そろそろ仕上げね」
ほむら「……思い知るがいいわ、さやか、杏子。今までどんな恥ずかしい夢に浸っていたか……」
ほむら「いい? 合図で一斉に手を叩くのよ」
偽街の子供達「ヤーヤー」
ほむら「いくわよ? いっせーのーでっ!」
ほむら・偽街「」 パンッ!!
―リビング―
さやか「――!」ハッ
杏子「――!」ハッ
さやか「…………」
杏子「…………」
さやか「……えーと、あの……杏、子? 何で上に……て言うか、下着に……」
杏子「お、お前こそ……何であたしの下……に……」
さやか「…………」
杏子「…………」
2人「――ぎゃあああぁぁあぁぁあああああぁぁ!!??」
支援
さやか「えぁっ!? い、いやっ、ちょっ、ひゃぁあああっ!!」バン
杏子「な……ななな、なんなんなんなんなあああああ」ガタガタガタ
さやか「なっ、なっ、なっ、なんてことしてくれてんのよぉ! このヘンタイ! ドヘンタイ! 鬼畜スケベエ!」
杏子「ち、違うっ! 違うって! そっちこそ何しよーとしてたんだよ、このぉ!」
さやか「あーあーあー! まさかあんた、普段からあたしをそんな目で……!」
杏子「ばっ……ふ、ふざけんじゃねぇ! あたしはなぁっ! こ、こ、こんな爛れた……!」
さやか「何これ!? 何がどーなってるのよ! 泥酔レイプ!? 野獣と化した同居人!?」
杏子「れっ!? れ、レイプとか言うなぁ! 違うから! 絶対違うからな!
そもそもなぁ、明らかに何かおかしいって、コレ! 記憶はあやふやだし、頭も何か痛いし……」
さやか「――! まさか……魔獣!?」
杏子「! そうだ……確かに、こんなワケ分かんない事態を起こせるのは……!」
さやか「じゃ、じゃあ……あたしたちのすぐ近くに……
――! あ……お、お父さん! お母さんっ!」ダッ
杏子「あ、おい! さやかっ!」
支援
―両親寝室前―
ダッダッダッダッダ…
さやか「お父さん! お母さん! 大丈――」ガラッ
美樹父「うぉおおぉぉっ! ぉおおっ! おおぁあっ!」パンパン
美樹母「あっ、あっ! あんっ! ああぁっ! きてぇ! あなたぁき……て……え――」
美樹父「……? どうし――あ……」
さやか「」
美樹父「」
美樹母「」
さやか「き――」
さやか「きゃああぁあぁあぁぁあぁああ!!!」
美樹父「おおおわぁぁあぁあぁあああぁああぁ!!??」
美樹母「ええぇえああぁぁあぁぁぁあああぁあ!?!」
杏子「さやかぁ! どうしぎゃあああぁぁぁぁああぁぁあああ!!?」
美樹父「んのぉあああぁあぁあぁああぁああああぁぁ!!!」
美樹母「ひぃええぁぁああぁああぁあぁぁぃいあええぁぁ!?!?!」
さやか「いやああぁぁぁぁぁぁぁああぁぁあぁぁあぁぁ!!!」
杏子「うっぎゃあぁぁああああぁぁああぁぁああぁぁぁあ!!!」
美樹父「早う閉めんかい!」
さやか「すみません!」ピシャッ
デビほむ……
自分がまどかにしたいからっていって
なんちゅうことをしでかしたんだ(笑)
さやか「……はぁー……はぁー……」
杏子「…………」
「な、なんでさやかが……」
「あなた! いいからとっとと服……!」
さやか「…………」
杏子「…………」
ガラッ
美樹父「…………」
美樹母「…………」
さやか「…………」
美樹父「……あー、そのな、さやか……」
美樹父「……駄目だぞ、ノックはきちんとしなきゃ」
さやか「弁解の第一声がそれかコラァ!」
美樹父「いーんだよ! 俺だって男じゃ! たまにはやりたくもなるわ畜生!」
美樹母「そうよそうよ! 最近すっかりご無沙汰だったんだから!」
さやか「やめてやめてぇー聴きたくない! 親の性事情とか知りたくない!」
杏子「……うぁー…………」ゲンナリ
美樹父「やかましい! 大体2人とも、何だその格好は!
下着だけとか、はしたないにもほどが……」
美樹父「……あっ」
さやか・杏子「……!?」
さやか「い、いやそのこれは……違う! 違うから! 何が違うって言われると困るけど、その……」
美樹父「……へーぇ……そっか……」
美樹母「……まさか、ねぇ……」
美樹父「ああ……もうそこまで……」
杏子「いやあの……ち、違うって! 何!? 何その眼差しは!? ちょっとおじさぁん!」
美樹父「……そっかー……何ていうかなぁ……複雑……」
美樹母「あら、当人同士が納得してるんでしょ? だったら……」
さやか「してない! 全く持って納得してない! てか出来てない!」
杏子「お、おじさん、おばさん! その、ええと……正直、あまりにも説明が――」
>>128
理解ある親だな(笑)
ピンポーン…
偽街A『ヤートウンユレスー』
ドサッドサッドサッ!
さやか「!? な、何、今の……」
杏子「玄関からだ……!」ダッ
―玄関―
花輪『祝 ご結婚おめでとう 悪魔一同
美樹さやか
杏子』
さやか「」
杏子「」
美樹母「あっらぁー……あらあらあら、まーまーまー」
美樹父「おお、夫婦茶碗にティーセット、ベッドカバーにダブルベッド!
凄いなコレ、ティーセットなんかウェッジウッドだぞ!」
さやか「…………」ワナワナ
美樹母「でもこの花輪、全部ヒガンバナじゃない。縁起悪いわねぇー、もう」
美樹父「なぁーに、なかなかケレン味があるじゃないか。なぁ、さや――」
さやか「~~ッ!」ガチャッ
杏子「あ、おいさやか! どこ行くんだよ、おい!」ダッ
さやか「……分かった……全部分かった……まどかに相手にされないから、あたしに八つ当たりってわけ……!
もうダメ。もーう完全に切れた……」
さやか「…………仕置きつかまつったらぁ! バカほむらぁぁぁぁぁ!!」ダダダダダ
杏子「ほむら!? いや、さやか……おいっ! さやかぁぁぁああ!!」ダッダッダッダ
―屋外―
「でぁりゃぁぁぁこらぁぁぁあ!」
「さやかぁー! 服! 服! ほらっ!」
ほむら「……いぇーい」パン
偽街の子供達「イェーイ」パン
ほむら「ざまあ無いわね、美樹さやか。これからクリスマスを迎える度に、両親と同居人の濡れ場を思い出しなさい」
ほむら「……これでだいたい顔見知りは終わったわね。さてと、次は……」
QB「……ほむら、ほむら。ソリを持ってきたよ」ズルズル
ほむら「時間だけはピッタリね。今度はちゃんとまともなソリ……を……」
ボブスレー「」
ほむら「…………」ボガッ
QB「ぴぎィっ」ベシャッ
ほむら「……この白痴饅頭が。何べん言えば分かるのよ、ええ?」グリグリ
QB「だ、だって……大人用って……ちゃんと然るべきルートで手に入れたんだよ?
わざわざ長野まで行ったんだ」
ほむら「こんなスピード注意なブツに乗っといて、サタンもサンタも無いでしょうが!
だいたいこれ4人用よ! 私とまどかと……あら大変、もう席がないわ」
QB「普通に半分も空いてるじゃないか」
ほむら「『美樹さやか、悪いけどこのボブスレー2人用なのよ』……ふふっ、ふふふ……」
QB「……で、結局どうなんだい? これで満足してくれるかな?」
ほむら「馬鹿言わないで。いい、次が本当に最後のチャンスよ。
本物のサンタが乗るような、木でできた広いソリを持って来なさい!」
QB「それを最初に言ってほしかったよ……そうとう酔っぱらってるね、君は」
支援
ほむら「いいから! とっとと行きなさい! 多分フィンランドあたりにゴロゴロ落ちてるから!
次も変なの持ってきたら、中の肉くり抜いて『身無しかるかん』にしてやるわよ」
QB「分かった、分かったよ……サンタのソリだね」
ほむら「ああもう、結局飛ぶしかないじゃないの……」パタパタ
ほむら「…………」
チカチカ
チカッピカッ
ほむら「……街の……灯り……」
ほむら「…………」
ほむら「……目障りにも程があるわ、ねぇ?」
―映画館―
恭介「志筑さん、今日は何がリバイバルだっけ?」
仁美「ええと……最初はホームアローンで、次に実写の方のクリスマスキャロル……で、最後にシザーハンズですわね。
やっぱりクリスマス特集なだけあります」
恭介「へえー、知ってるのホームアローンぐらいしか無いなぁ……」
仁美「上条君、映画はあまりご覧には……?」
恭介「うん、ほとんどクラシックとバイオリンだし……あ! でも『アマデウス』は見たことあるよ!」
仁美「まぁ……あ、そろそろ始まりますわよ」
カタカタカタカタ…
『ブァーン プォーン ブァーン プォーン……』
仁美「……?」
恭介(うわー、すごい山道だなぁ……)
仁美(いや……あら……?)
『A STANLEY KUBRICK FILM
JACK NICHOLSON』
仁美「いやあの、ちょっと、これ……」
『 THE SHINING 』
仁美「やっぱりシャイニングじゃないですか!」ガタッ
『アアァ――!! アー! アー! アアアア――!!!』
『ヒァイーズ ジャーニーィィ!!』
恭介「ぇあっ」ビクッ
仁美「しかも順番メチャクチャぁ!」
―映写室―
スタッフ「ん゛ー! ん゛ー!」ジタバタ
偽街C「ポップコーンイカガスカー」
偽街E「ジブリー ジブリミタイー」
ほむら「…………」ニヤッ
支援
―繁華街―
キャバ嬢「ショウくん……どーいうこと、これ」
ショウさん「い、いやあの……その……」
OL「きょ、今日は私とって……何で、何で……!」
ショウさん「あ、あのね、だからその……」
ホスト「ま、マズイっすよショウさん……何で全員に約束なんか……」
ショウさん「し、知らねーよ! 何でか勝手に……!」
女子大生「ずーっと嘘吐いてたってわけ……!? あ、あたしが一番好きだって……なのに……!」
和子「弄んでたんですね!? 色々言っておきながら、ホントは行き遅れだって馬鹿にしてたんでしょう!?」
ショウさん「ち、ちが……何でよ? 何で、こ、こんなぁぁ……!」
偽街A「ア、モシモシー? ウン、ソウソウ、アンタノカレシネェ……」
偽街B「アソバレテンダヨ、オマエー!」
偽街D「『カ、ク、サ、ン、キボウ』……」ポチポチ
ほむら「ふふ……ふふふふふ……」
―見滝原中心街―
店員「おい誰だ! ウチのフライドチキンを全部竜田揚げに換えたのは!」
女「いやあぁぁ! カラスが! なんかキモいカラスがツリーにびっしり!!」
男「え!? だ、男女のカップルお断り!? そ、そんなぁ……もう16件目……」
イベント司会「山下達郎さん呼んだんだぞ! なんでグループ魂が来るんだよ!」
中沢「……あぁ……街に出てきても虚しいだけ……」
ほむら「……ああ、爽・快……! 街が混沌に包まれている……!」
ほむら「クリスマスに浮かれていいのは私とまどかだけよ……反省するがいいわ、この不信心者ども!」
ほむら「……それにしても、遅いわね、神まどか……結構大きく騒がせたと思うんだけど」
支援
「――! い、いたわ! あそこのビルの上!」
「おどりゃぁワレこのクソ悪魔ぁ―――!! 降りてこんかいこんダボォ――!!」
「落ち着けさやか!」
ほむら「……来たわね、ジャリガールズ……」
ほむら「あら、どうしたのかしら雁首揃えて? フライドチキンならどこも売り切れよ」
さやか「じゃぁーかしぃ! アンタが色々やらかしてくれたおかげでねぇ……
こちとら一生もんのトラウマが出来ちゃったわよ!」
マミ「なぎさちゃんなんて泣いちゃったのよ! せっかく……せっかく寂しくないクリスマスになると思ったのに……!
どう責任取るっていうの、暁美さん!」
杏子「……何か理由があるってんなら、一応聞くだけ聞いてやる」
ほむら「……理由? そんなもの……決まっているわ。
……まどかへの信仰を忘れたあなた達に、神の鉄槌を下したまでよ!」
唯一ほむらの干渉を受けていない中沢
>>165
ほっちが最強ということで
……うっ(涙)
杏子「……おい、また例の妄想だぞ」ヒソヒソ
さやか「あーもーあったま来た! みんなの幸せなイブをブチ壊そうなんて、絶対絶対に許さないんだから!」
マミ「今日こそは! こってりみっちり悔い改めて貰うわよ、暁美さん!
2人とも、変身を!」バッ
さやか「はいっ!」バッ
杏子「おうっ!」バッ
~ただいま変身バンク中~
ほむら(……相変わらず暇ね……この時間)
ほむら(前に変身中に攻撃したら、凄まじい剣幕で怒られたし)
ピュワーン!
ほむら(あ、終わった)
3人「ピュエラマギ・ホーリートリオ!」ババァーン
ほむら(……何でこの辺だけ、結界の時と同じなのかしら)
マミ「愛に溺れた哀しき悪魔よ……聖なる光を受けるがいいわ!」
ほむら「ほざきなさいっ!」ビュン
ほむら(……よし、あとはまどかの登場を……!)
円環『……うんうん、上手くやってくれてるね。ほむらちゃん』
円環『……さーて、と。わたしもそろそろ、“わたし”の方に……』
―まどかの家―
まどか「ごちそうさまでした!」
知久「はい、おそまつ様」
詢子「まどか、アメリカからカード来てたけど、読んだか?」
まどか「うん! ウェンディちゃんにベーべちゃんに、あとスタン君とカイル君とケニー君に、それから……」
詢子「あっはっは! 相変わらずモテモテだなぁ」
まどか「そ、そんなんじゃないよー、んもう……」
円環『――どか、まどか……』
まどか「ん?」
円環『まどか、まどか……聞こえますか、まどか……』
まどか「え……? ママ?」
詢子「うん?」
支援
まどか「いや……今、呼ばなかった?」
詢子「え? いや、全然」
円環『まどか、まどか……ママではありません……わたしです、まどか……』
まどか「え……だ、誰? 誰なの……!?」
円環『――私は……神……』
まどか「…………え……!?」
円環『……あなたたちが……ヤハウェとかアドナイとか黄色禿とか呼んでいる、あの唯一神……
…………それに、おおかた近い存在です…………』
まどか「え、い、いやいや……嘘……」
円環『……ところで、まどか……今、見滝原は危機に瀕しています……』
まどか「――え?」
支援
円環『一匹の哀れな悪魔が、この聖なる夜を台無しにしようと、街で暴れ回っているのです……』
まどか「あ、悪魔って……」
知久「……ど、どうしたんだい、まどか……」
詢子「お、おい……どっか痛いのか……?」
円環『テレビを……ケーブルの4チャンネルを点けるのです、まどか……』
まどか「え? あ、はい!」ピッ
TV『――のように、現在見滝原市のセンター街では、クリスマスを狙った悪質なテロ行為が……』
TV『ボガァーン! ドギャァーン!』
ほむら『当たらない! まったくもって当たらないわね!
泡立て器の握りすぎで、銃の持ち方も忘れたのかしら!?』ビュンビュン
まどか「ぶっ―― え!? ええぇ!?」
支援
TV『ご……ご覧のように、謎の女性が空を飛びながら……え、MNNでは引き続き、この独占実況中継を……
え!? きゃああぁぁっ! ば、爆――』
まどか「」
詢子「うわっ、すっげえなぁー……特撮、じゃなさそうだし……」
タツヤ「ほむあー! ほーむーあー!」
知久「わっととと、駄目だよタツヤ、シチューこぼしちゃ……」
まどか「え……いや、ちょっと……ほむら、ちゃん……!?」
円環『……見たでしょう? 彼女は、あなたに嫌われたと思いこんで、あのような凶行に及んでいるのです……』
まどか「そ、そんな……」
円環『…………このままでは、この街のクリスマスはお釈迦。
みんなの抱く夢と希望が、すべて粉々になってしまうでしょう……!』
まどか「だ……駄目だよ……ほむらちゃん……そんな……」
支援
支援
円環『……ですが、まどか。……あなたの言うことであれば、あの狂いきった悪魔も問答無用で頷くでしょう。
…………私の力を、あなたに授けます……どうか、この街のクリスマスを守――』
まどか「ほむらちゃんっ……!」ダッ
ガチャン! バダン!
詢子「!? ちょ……まどか! おいッ!」
円環『…………言うまでもなかったか。さすがは“わたし”、だね』
円環『……これで、仕込みはすべておしまい』
円環『…………最高の“バースデープレゼント”……しっかり味わってよね、ほむらちゃん?』
―見滝原郊外・上空―
シャンシャンシャンシャン…
QB「……全く……考えてみれば、どこに行くのか全然聞いてなかったよ」
QB「どこに行ったのかな、ほむら……せっかく本物からソリを借りてきたのに……」
QB「……重力操作も結構神経使うのに……全く……」
QB「……うん?」
ドカァーン! ボガァーン!
QB「あれは……市街の方かな……」
―見滝原中心街―
ほむら「ほらほらほらぁ、悪魔羽飛ばし!」ビュンビュンビュン
杏子「ぐぅっ……!」
さやか「杏子!」
ほむら「――他所見は禁物よ。悪魔レーザー!」バビューン
さやか「あぁあぁ――っ!」
マミ「こ……このっ……!」
ほむら「……だから、トロいと言っているでしょう?
――眠りなさい。悪魔M134!」ダダダダダダダ
マミ「きゃぁああぁぁあぁぁあぁっ!!」
ほむら「……他愛もないわね。力の半分も出さずに済みそうよ」
ほむら(……本当は、結構ギリギリだったけど……)
さやか「……う……うう……」
杏子「く……そぉ……!」
マミ「……美樹……さん……佐倉……さ……」
ほむら(……まだかしら、神の方のまどか……いい加減勝っちゃうわよ、私)
ほむら「……諦めなさい。そもそも、クリスマスなんて何がめでたいのよ?」
ほむら「キリスト教徒でもないくせに、やれケーキだのチキンだのプレゼントだの……
周りが浮かれてるだけで、たいして考えもしないで便乗して……浅はかだとは思わないの?」
ほむら(……とりあえず、適当にくっちゃべって時間を稼ぐしか……)
支援
杏子「……ぐ……うぅっ……」ヨロッ
杏子「……悪いな……あたしはさ……結構気に入ってるんだよ……クリスマスって……」
ほむら「……あら、まだ立てたのね」
杏子「……そりゃ……親父たちは……結局、ケーキの一つも食えずにいっちまったけど……
それでも……それでもさ……」
さやか「……そう、だよ……」ヨロッ
杏子「――!」
さやか「あんたは……自分が楽しくないのを、周りのせいにしてるだけ……」
さやか「……負けるもんか……あんたなんかに……!
誰かの幸せを認められない奴になんて、あたしたちは絶対に負けないんだからっ……!」
マミ「……魔法少女は……奇跡を起こす存在……」ヨロッ
マミ「みんなが奇跡を願う、この夜に……私達は絶対に負けられない!」
ほむら(……不味いわね、勝ちパターンに入られたわ……)
支援
シュルルルル……
パシッ! パシッ!
ほむら「っ!? こ、これは……マミのリボン!?」
マミ「転んでもただじゃ起きないわ……足元がお留守ね、悪魔さん!」
ほむら「し、しまった……! てっきり、単に与太話をしてるだけだと――」
3人「ぉぉぉおおおおおおお!!」
ほむら「……あ――」
杏子「必殺……疾風! 迅雷ィィィッ!」ギュォォォ
さやか「スクワルタァァ……トォ―――レッ!!」ズバァァン
マミ「――――ティロ…………フィナァァァ――レッ!」ドッゴォン
ほむら「あ……ああ……ああぁぁあああぁぁあぁぁぁっ!!」
支援
ほむら「」ボロッ
杏子「……勝てた、な……今回も、何とか……」
さやか「」ズンズンズン
マミ「あ、ちょっと、美樹さん!」
さやか「……今度という今度は本当に怒ったわよ。土下座ぐらいじゃ絶対に――」
まどか「待って! さやかちゃんっ!」タッタッタ
さやか「!」
マミ「か……鹿目さん!?」
ほむら「――!」ピクッ
ほむら「……ま……ど……」
まどか「ほむらちゃん、ほむらちゃんっ!」タタタタッ
ほむら(……ああ……耳当てにニット帽のまどかも可愛い……)
ほむら(…………そう言えば……)
ほむら(……何しているのよ、神まどかの方……もうコテンパンじゃない、私……)
まどか「ほむらちゃ―― !!」
まどか「…………」ヨロッ
杏子「……?」
まどか「…………」
まどか「…………」テクテク
ほむら「……? まど……か……」
まどか「……てぃひひっ、ごめんね、ほむらちゃん。ちょっと、よろけちゃって」
ほむら「…………ま……ど……わ、た……」
まどか「動かないで、ボロボロだよ。……大丈夫。大丈夫だからね、ほむらちゃん」
ほむら「…………?」
ほむら(……な、何……? この『まどか』……何か……)
まどか「……ああ……こんなに怪我しちゃって……でもね……
私が来たからには……もう大丈夫だよ、ほむらちゃん……」ダキッ
ほむら「――!」
ほむら(あ、ああ……まどか……まど……か……)
まどか「――――つかまえた」
ギュルルルルルルルッ!!
ほむら「……!? な――」
さやか「! な、何アレ……赤い、リボン……!?
――っ! ううっ……!」
杏子「さ、さやか! どうしたんだよ、おい!」
さやか「あ……頭が……ううぅ……な、何……なによ、これぇ……っ!」
まどか「……てぃひひ、さやかちゃんの方も始まったみたいだね……」
マミ「か、鹿目さんっ!? どういう事なの、これ……!」
まどか「……マミさんには言っても分からないと思うなぁ……ね? ほむらちゃん」ニヤッ
ほむら「あ――うぁ……え……?」
まどか「……大変だったんだよ? ほむらちゃんが、わたしの世界改変の力まで盗んで行っちゃうから」
まどか「ほむらちゃんのすぐそばに“わたし”がいなきゃ、わたしが復活できなくなっちゃったんだもん」
ほむら「な……何……を……」
支援
まどか「――ほむらちゃんが悪いんだよ? あんなやり方で、私を人間に戻そうとするから」
まどか「だからわたしも……手段を選んでられなくなっちゃった♪」
ギュオンギュオンギュオンギュオンギュオン!
杏子「な、何だ……何がどうなって……!」
マミ「時空が……時空が歪んでいる――!?」
まどか「……でも、ほむらちゃんもチョロいよね。あんなアヤしい嘘に、コロッと騙されちゃうんだもん」
まどか「お陰でコテンパンにされちゃって、その上リボンで亀甲縛り!
もうどうあがいたって、わたしの復活の邪魔はできないよねぇ?」
ほむら「だ……駄目……まど……まどか……!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
まどか「メリィークリスマァース! ニセのわたし!
ハッピィーバースデーィ! ほんとのわたし!」
まどか「さぁ民草よ、刮目しなさい!
女神まどか様、堂々の復活だよ!」
ギュワン! ギュワンギュワンギュワンギュワンギュワン!
ほむら「あ……あ……ああぁあぁ……っ……!」
さやか「うぅ……まど……か……」
杏子「……何なんだ……何なんだよ、畜生……!」
マミ「――始まるのよ……女神の転生が……!」
杏子「さっきからやけに楽しそうだなオイ!」
バァァァ――――ン!
神まどか「究極女神様(アルティミットゴッデス)・まどかの誕生だぁ―――っ!!」デデーン
神まどか「ふんっ!」
ほむら「あ――あ、あぁぁ―――」
マミ「あ、あれが……あれが、『円環の理』――!」
杏子「……で、でかい……色々と……」
さやか「! ま、まどか……その姿は……
あー駄目だ、出かかってる……頭の後ろのへんまで出かかってるのに……もう……!」
支援
神まどか「てぃひひ……あとはゆっくり、ゆっくりと……お空に向かって上がるだけ……
あの雲の峰を越えた所に、新しい世界が浮いてるんだよ!」フワフワ
ヒュウゥゥゥ…
神まどか「きゃっ……風強いなぁ、もう……
まだちょっと不安定だし、ちょっとの刺激も正直――」
ほむら「まどか……やめて……お願い……! そんなこと……あなたはまた……ずっと、孤独にっ…………!」
神まどか「ダメダメダメダメ、だぁ~~あぁ~~めっ!
わたしは自分でこれを選んだんだもん。『寂しいからやーめた!』なーんて、通るわけないじゃない」
ほむら「そん……な……でも……!」
神まどか「…………それに。
……寂しかったのはわたしじゃなくて……ほむらちゃんの方でしょう?」
ほむら「っ――!」
神まどか「……大丈夫、大丈夫。世界を作りかえたら、いの一番に……ほむらちゃんを迎えにいってあげるから。
ほむらちゃんも私も、ずーっと一緒に……この宇宙を支配し続けるんだよ」
ほむら「……でも……でも……!」
支援
さやか「……しょ、正直……まるで、ついていけないけど……」
マミ「……つまり……暁美さんは、あの鹿目さんに騙されて――?」
杏子「おいっ、ほむら! 何が……何が起ころうとしてる!?」
ほむら「まどかが……まどかが、いなくなっちゃう……!」
さやか「!」
マミ「……!」
杏子「な――」
ほむら「こ、このままじゃ……聖なる女神が復活して、悪魔の支配する世界が滅びて……!」
さやか「……話だけなら、すごくいいことに思えるんだけど……」
ほむら「まど……か……やだ……やだよぉ……これじゃぁ私……何のために、こんな…………」
まどか「いいよいいよぉ! 現在上空約40メートル! このまま一気に円環を――」フワフワフワ
シャンシャンシャンシャンシャン……
まどか「……ん?」
マミ「何かしら、この音……」
ほむら(……す……鈴……?)
まどか「何だろ……ま、いいや。それぇーっ、もうすぐ新世か――」
ゴ ン ッ !
まどか「!?!!?!」グラッ
マミ「え――」
杏子「な……」
さやか「あ――」
ほむら「……う……嘘……」
QB「……うん? 何かぶつけたかな……あ、ほむら! サンタのソリ持ってきたよ、ソリ!」
ほむら「キュゥべえぇぇぇぇ―――っ!!!」
神まどか「きゅ……きゅぅ……」
神まどか(だ、駄目……意識が……憑依を保てな――)
ピョルン
まどか「」 ヒュ――ッ
円環『ああーっ! せっかく合体したのに!』
ほむら「! まどかぁぁっ!」ビュンッ
ガシッ!
まどか「……ぅ……うぅん……」
ほむら「まどか……まどかぁっ……」グスッ
円環『……しょうがないなぁ。……今回は諦めるしかなさそうだね』
円環『けどね! このわたしの意識が続く限り、わたしは絶対に諦めない!
何度だって“わたし”を取り戻しにいくんだから! アイルネバーギブアップだよ!』
円環『…………』
円環『……それじゃあ、またね。ほむらちゃん……。
その時まで……“わたし”を、よろしくね』ヒュンッ
支援
ほむら「…………」スーッ
さやか「まどかっ!」ダダダッ
ほむら「……大丈夫よ。眠っているだけ……」
ほむら「…………」
マミ「……?」
ほむら「……っ……うう……ぁぁああぁ……!」
ほむら「……ごめんね……ごめんねぇ……まど、かぁ……」
ほむら「うぅぁ……ああぁ……ああぁぁあぁぁ…………」
まどか「…………」
杏子「…………」
さやか「……事情は……何となく分かったけどさ。でも……」
マミ「……そうね。あれだけ好き放題やったんだもの……分かるわよね?」
ほむら「…………」
杏子「……まあ、首切れなんて言わないけどさ。せめて……」
ほむら「……ゅ……ぇ……」
さやか「え?」
支援
ほむら「――キュゥべえっ!」
QB「はいはい」ビュンッ
パシッ! ドサッ!
シャンシャンシャンシャン…
さやか「ああぁぁぁ―――っ!!!」
杏子「に、逃げやがった、アイツ……! ソリで!」
マミ「こっ、こらぁぁぁ――っ! 暁美さぁぁぁん!」
ほむら「――悪いけど、こっちはまだまだ仕事があるの。
じゃあね、3人とも。せいぜいささやかな幸せを噛みしめていなさい」シャンシャンシャン
さやか「ま、待てぇ――っ! このぉぉっ!!」
支援
さやか「な……何よアイツ……やるだけやっといて、結局トンズラ!?」
杏子「ヤリ逃げってか……」
さやか「…………」ギロッ
杏子「あ、いや、別に他意は……」
マミ「……2人とも、お疲れさま。……もう、帰りましょう。
鹿目さんは、私が送っていくから」
さやか「…………」
杏子「……ったく……」
さやか「……本当に信じらんない。……何よ……やっぱりアイツ……」
マミ「…………」
支援
―マミの家―
マミ「……ただいま……」
なぎさ「あ、おかえりなさい、マミ!」
マミ「……ごめんなさいね、なぎさちゃん……
……さぁ、ご飯をあっためましょう。それでその後……片付け……を……」
マミ「――え?」
なぎさ「あのですね! さっき、すっごく不思議だったのです!
いきなり全部元に戻って、しかもずーっと豪華になって……ほら!」
マミ「……つ、ツリー……こんなに大きかったかしら……キャンドルも……」
なぎさ「それに、グラタンもほっかほかで……あ、あと、これも!」
マミ「え? これは……ブドウジュース……?」
支援
支援
―さやかの家―
美樹父「お、おかえり2人とも。どこ行ってたんだい?」
美樹母「お風呂、先に入っちゃったわよ」
さやか「……あ、あれ……?」
杏子「お、おばさん、ここにあった花輪とかは……」
美樹母「花輪君? まる子ちゃんの?」
杏子「い、いや……」
さやか「だ、だってさっき、あんなに届いてたじゃん! ベッドとか茶碗とか……!
それに、部屋も……全然……変わって……」
美樹父「……? 別に何にも届いてないけどなぁ……なにか通販で頼んだのか?」
美樹母「何でもいいけど、さっさとお風呂に入っちゃいなさい。
まったくもう……ご飯食べたあと、すぐに出かけちゃうんだから……」
杏子「! な……何も、覚えて……?」
美樹母「お、覚えて、って……あ、そうだ」
さやか「!」
美樹母「さっき、買った覚えのないワインとジュースが出てきたのよ。
何か高そうよー、コレ。ラベルもフランス語っぽいし……」
美樹父「ジュースの方もブドウの奴でね。でも、見たこと無い銘柄なんだよなぁ……
『ホムッツメイド』だってさ。知ってる?」
さやか「…………」
杏子「……成程ね。……ったくもう、アイツ……」
―見滝原市街地―
恭介「……ぐすっ……うぅっ……」
仁美「……やっぱり、いいお話でしたわね、シザーハンズ」
恭介「うん……うん……!」
ホスト「かーっ、最近の中坊はマセてやがんなぁー。
あ、ところでショウさん。今日来る女の子ってどんな娘なんすか? よかったら俺にも……」
ショウさん「…………」
ホスト「……ショウさん?」
ショウさん「…………」ピッポッパ プルルル…
ショウさん「……あ、もしもし? ああ……その、さ……
……俺……お前にちょっと……謝りたくて……」
ホスト「…………えっ」
店員「はいはいはい! いらっしゃいいらっしゃーい! クリスマスにはやっぱりカーネルチキン!」
和子「あ、すみません、クリスマスバレルを……」
中沢「……はぁ……」
和子「……あら? あそこの子……もしかして……」
女「ねぇ見て、あのツリー! すっごい綺麗!」
男「そ、そうだね……ね、ねぇ、この後……なんだけど……その」
達郎「あぁめは夜更けすぅぎぃにぃ♪ 雪へと変わるぅだぁろぉ♪」
サダヲ「サイレェーンナアーイ♪ ホゥリーナァーイ♪」
支援
支援
―見滝原・上空―
シャンシャンシャンシャン…
ほむら「…………」
QB「……珍しいね。君が人のために何かするなんて」
ほむら「……自分の尻拭いをしただけよ」
QB「ふぅん」
ほむら「……物と記憶を弄るくらい、今の私には造作もないわ」
QB「……それにしては、随分とロマンチックな方法を取ったじゃないか」
ほむら「――心外ね。あなたにロマンを語られるなんて」
QB「……君のせいかな。君のオモチャにされはじめてから、どうもいろいろと変になったよ」
ほむら「…………」
支援
ほむら「…………まどかは……」
ほむら「……私が近くにいる限り、常に円環に狙われる……」
QB「へぇ、そうなのかい」
ほむら「…………」
QB「いいことじゃないか。君が悪魔の力を行使し、周囲と対立するのは……ほとんど鹿目まどかが原因だ。
彼女から離れれば、君は平穏に生きられるし、まどかも狙われる心配は無くなる」
ほむら「…………」
ほむら「……それでも……それでも、私は……」
QB「……ところで、これからソリを返しに、フィンランドに直行するんだけど」
ほむら「……え、借り物だったの? これ」
QB「あいにく、レンタルしかされてなくってね」
ほむら「…………」
QB「……どうしたんだい、ほむら」
ほむら「……フィンランド……木彫りの人形でもプレゼントしたら……
まどか、喜んでくれるかな……」
QB「……やれやれ。本当に懲りないね、君も……」
―まどかの家―
まどか「……うぅーん……」
詢子「お、起きた起きた」
まどか「あれ……ママ……?」
詢子「ったくもう、外ではしゃぎすぎだ。学校の先輩がわざわざ送ってくれたんだぞ?」
まどか「……! そ、そうだ……! ほむらちゃん……!」
知久「ほむらちゃん? あの友達の?」
詢子「さっき来たのは、別の子だったけどなぁ……ほら、髪がクルクルしてる」
まどか「…………」
チラ…
チラ…
まどか「……? あれ……?」
タツヤ「! あー! ゆきー、ゆきー!」
詢子「おっ……へーえ、なかなか粋じゃないか」
知久「うん……ホワイトクリスマスなんて、久しぶりだなぁ」
―見滝原・上空―
チラ…
チラ…
ほむら「……? これ……」
QB「……これも君の演出かい?」
ほむら「まさか……」
QB「へぇ……それじゃあさしずめ、これは君へのプレゼントかもね。
人間風に言うならば……『ささやかながら、これぐらいは』って」
ほむら「……どうかしら。突き放してるのかもしれないわよ?
『お前にやるのはこれだけだ』、って」
QB「…………」
ほむら「……さぁ、フィンランドへ急ぐわよ、キュゥべえ」
QB「はいはい」
シャンシャンシャンシャン…
~おわり~
支援
おわり 眠い
こんな遅くまで見てくれてありがと
笑いあり・ツッコミどころありと
なかなか読ませる内容でした。
面白かったです乙。
このSSまとめへのコメント
オールレンジな音楽ネタとドタバタ感がツボったw