P「俺のこの耳に雪歩の声は聞こえない……」 (63)

涼「どうも、秋月涼です。よろしくお願いします」

律子「私の従兄弟……いえ、従姉妹なんです」

P「ああ。最近、急ピッチでランクを上げてる注目の新人だな。こちらこそよろしく」

涼「そ、そんな……私なんてまだ。あ、それから同じ事務所の愛ちゃん、日高愛です」

愛「よろしくおねがいしまーす!」

P「あの日高舞さんの、お嬢さんだったね。色々とプレッシャーもあるかもしれないけど、がんばってね」

愛「はい! ママはママですからーっ!! あたしは、あたしでがんばりますよーっ!!!」

P「うん、その意気だ。元気があっていいなあ」

涼「それが、愛ちゃんの長所だよね」

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律子「歌も、なかなかのものなのよね。ちょっと聞かせてみてくれない?」

涼「ほら、有名プロデューサーのPさんに聞いてみて欲しかったんだよね? 歌ってみたら」

P「あ、聞いてみたいな」

愛「は、はいっ! じゃあ……」スウッ

涼「……はっ! あ、愛ちゃん待って!! こんな狭い所でそんな本気で歌ったら……みなさん、耳をふさいでください!!!」

P「へ?」

愛「ひとつの命が生まれゆくーーーーーー!!!!!!」ビリビリビリ

ビシッ★ バリン★

P「ぎゃおおおぉぉぉーーーんんん!!!」

春香「それで、プロデューサーさんの具合は?」

小鳥「幸いにも、鼓膜に損傷はないそうよ。脳波とかも念のためにとってもらったけど、異常なしなんですって」

千早「よかった」

律子「ただものすごい大音響を間近で聞いた為に、しばらく耳が聞こえにくいらしいの」

P「え? なに?」

春香「……なるほど」

千早「しばらくって、どのくらいですか? 私、プロデューサーに歌のことで相談があったのだけど」

律子「今日一日は、聞こえにくいかもしれないそうよ。まあお医者様も、そんなに心配はいらないって仰ってたから、明日には戻っているんじゃないかしらね」

春香「そうなんですか、良かった。ね、千早ちゃん」

千早「ええ。では今日は、自主トレをしています」

P「?」

千早「ああ。ええと紙に……『今日は自主トレをしています。お大事に』」

P「ありがとう。悪いな千早」

小鳥「こんなだから、営業も無理だし電話対応も無理よね。休んだらどうかって提案したんだけど……」

P「なんだ? また休めって話か? 耳が聞こえなくても、色々とできる仕事はあるからな。今日はデスクワークをさせてもらう」

春香「私たちの為に……なんか申し訳ないです」

律子「まあお医者様も、大丈夫だろうと仰ってたし。同じプロデューサーとして、わかる部分もあるしね。好きにさせてあげるわ」

P「?」

律子「『無理しない程度にお願いしますね』……っと」カキカキ

P「ああ、わかった」

律子「じゃあ私は、代わりに営業に出てきます」

小鳥「行ってらっしゃい」

千早「……プロデューサー、一心不乱に書類に向かっているわね」

春香「ああやって、私たちのためにがんばってくれてるんだよね」

千早「そうね。そのがんばりに、私も応えないと……自主トレに行ってくるわ」

春香「がんばってね、千早ちゃん」

小鳥「……チャンスよ、春香ちゃん」

春香「え?」

小鳥「プロデューサーさんに、好きって言うチャンスよ!」

春香「えええっ!?」

小鳥「予行演習よ、予行演習。今なら言っても聞こえないし、プロデューサーさん書類に集中してるんだから、好きだって言ってみたら?」

春香「そうか……そうですね。いつか本当に告白する時のために……」

小鳥「ええ。本人を前にして、直接言えるチャンスよ」

春香「プロデューサーさん。私、プロデューサーさんが好きです。ずっとずっと私と一緒に同じ道を歩んでください……」

P「ダメだ!」

春香「ええっ!?」

P「これ、見積もりの数字おかしいじゃないか。やり直しだな」

小鳥「……よ、良かったわね春香ちゃん。告白の返事の事じゃなくて」

春香「……」

小鳥「春香ちゃん?」

春香「わかっていても、精神的ダメージが……」

小鳥「し、しっかり! 春香ちゃん」

春香「いつか、ドームで告白しようと思ってたのに……」

伊織「おはよう。あれ? どうしたの、春香」

春香「うう……プロデューサーさんに告白したら、ダメ出しされた……」

伊織「ええっ!?」

小鳥「違うのよ、伊織ちゃん。あのね……」

伊織「なるほどね、聞こえないのをいい事に普段言えない事をねえ」

小鳥「伊織ちゃんもどう? プロデューサーさんに告白してみたら?」

伊織「なっ!? えっ!!」

小鳥「演技力レッスンよ。そういう役をやる時の為に、ね」

伊織「ま、まあ本気じゃないわけだし……ちょっとからかうぐらいなら面白いかもね」

小鳥「そうそう! はい、じゃあほら、真横に立って」

伊織「あ、アンタの事……本当は好きよ。いつも素直になれないけど……本当は好きなの」

P「うむ……」

伊織「ねえ、私のこと……アンタはどう思ってるの?」

P「お金持ちのスポンサーだからな。大事にしないと」

ゲシッ★

P「痛っ! な、なんだ!? 伊織?」

伊織「アンタ……私をそんな……そんな風に……」

春香「はいはいストップ! ストーップ伊織」

小鳥「伊織ちゃんは、こっちへ来てね。うふふ、プロデューサーさんお邪魔しました。どうぞ仕事を続けてくださいね」

P「?」

春香「落ち着いて、伊織。プロデューサーさんは聞こえてないんだって」

小鳥「今のは偶然なのよ」

伊織「そ、それはわかってるけど……」

春香「まあでも、気持ちはわかるよ。なんかショックなんだよね」

伊織「そうね。本気で言われてなくても、ね」

小鳥「……じゃあ私も、いいかしら?」

春香「え? プロデューサーさんに告白してみるんですか?」

小鳥「れ、練習よ。練習」

伊織「が、がんばって小鳥」

小鳥「初めての告白にチャレンジしてみるわ」

春香(初めてなんだ……)

伊織(初めてなのね……)

小鳥「ぷっ、プロデューサーさん! 年上の女は嫌ですか? もし良かったら私と……つき合ってくれませんか!?」

P「いいぞ!」

小鳥「えっ!?」

春香「えっ!?」

伊織「えっ!?」

P「こういうボランティア的な仕事もこなして、世間に対するイメージをアップしないとな」

小鳥「ぷ、プロデューサーさんっ! それはいったいどういう意味なんですか!?」バン

P「え? こ、小鳥さん?」

春香「はいはい小鳥さん」

伊織「落ち着きなさいよ。偶然、偶然よ」

小鳥「わかってるんだけど……」

P「?」

春香「それにしても、今日は寒いね」

伊織「朝から雪ですものね。雪と言えば、雪歩と真は遅いわね、やっぱり雪で交通機関にも影響が出てるのかしら」

小鳥「ネットで調べてみたけど、多少渋滞はしてるけど電車は平常通り運行してるみたいよ」

P「……ん?」

P(今までボワーンとしていた耳が、少し治ってきた気が……)

伊織「まあ雪といっても、積もってはいないものね」

春香「あ、外を見てよ。雪がやんだね」

P(? 今、春香は『雪歩がヤンデレ』と言ったのか? 雪歩がヤンデレ……いやいや、ないなそれは。まだ耳は本調子じゃないみたいだ。もう少し様子を見るか)

真「おはよう」

雪歩「おはようございますぅ」

小鳥「あら、真ちゃんに雪歩ちゃん。遅いから心配してたのよ」

伊織「無事に着いて、安心したわ」

真「ごめんごめん。今日ほら、『ハナと梅』の発売日だったからコンビニ寄ってたらつい」

雪歩「あれ。プロデューサー、どうしたんですか? なんだか様子が……」

春香「実はカクカクシカジカで」

真「そうなんだ」

雪歩「大変だったんだね」

伊織「それでどうする? 真と雪歩も、告白してみる?」

真「こ、告白って! ぼ、ボクはちょっと……」

雪歩「わ、私も恥ずかしいよぉ」

春香「めったにないチャンスなのに」

小鳥「あ、そう言えば雪歩ちゃん。ほら、これを見て」

伊織「なに? へえ、割烹着が似合うアイドル1位に雪歩が」

雪歩「わ、私がですか?」

真「すごいや雪歩。おめでとう」

伊織「確かに雪歩は清純派だし、お茶とか和風のイメージもあるものね」

春香「このスチル、ちょっと前にゲロゲロキッチンにゲスト出演した時のだよね?」

雪歩「うん。でも……」

伊織「どうしたの?」

雪歩「私、お茶を煎れるのは得意だけど、お料理は全然なんだよ」

真「この時も、ほとんどオロオロしていたもんね」

雪歩「はうう……」

春香「じゃあこれからは、少しずつお料理していこうよ」

小鳥「そうね。選ばれちゃったんだものね」

真「料理もやってみると、楽しいしね」

雪歩「そうだね。うん、割烹着が似合うアイドルに似合うアイドルに、私なるよ」

小鳥「雪歩ちゃん、やる気ね!」

真「よっ、雪歩! 割烹着が似合うアイドル!」

P(格闘技が似合うアイドル!? 雪歩が?)

雪歩「でもほら。お茶と違って、包丁とかの刃物ってなんとなく怖くて」

真「わかるよ。でも、慣れれば大丈夫」

春香「うん。使い方を間違えなければ、心配ないから」

雪歩「そうだよね。うん! 私、包丁の扱いにチャレンジしてみるよ」

P(? 雪歩が包丁にチャレンジと聞こえたが……聞き違いか?)

伊織「じゃあ……勢いをつけるのと、度胸を身につける意味でやっぱりさっきの、やってみたら? にひひっ」

真「さっきのって……こ、告白!?」

雪歩「えええっ!?」

小鳥「そうね! いいかもね」

P(雪歩と格闘技……想像もつかないな。しかし言ってたのは真みたいだし、普段俺の知らない所でそういう練習をしてたりするのかな?)

春香「大丈夫だよ。というか、こんなチャンスそうないよ?」

伊織「アイツには聞こえてないから」

P(いや、ぼんやりとは聞こえているんだが……なんだ? 俺になにをしようっていうんだ?)

小鳥「ほらほら、がんばって!」

雪歩「う、うん……恥ずかしいけど、チャレンジしてみるよ」

P(なんだ? なにをしようっていうんだ?)

雪歩「……」

P(? 姿は見えないが、気配は感じる。雪歩、俺の真後ろに立って何をするつもりなんだ?」)

雪歩「ぷ、プロデューサー好きなんですぅ!」

P(な!? 俺が隙だらけだと!?)

雪歩「ずっとずっと、好きって伝えたかったんです……」

P(ドスッと突きをあたえたかった!?)

P(まさか雪歩がそんな!)

P(い、いや、そう言えば)



~回想~


雪歩「そうだね。うん、割烹着が似合うアイドルに似合うアイドルに、私なるよ」

小鳥「雪歩ちゃん、やる気ね!」

真「よっ、雪歩! 割烹着が似合うアイドル!」

P(格闘技が似合うアイドル!? 雪歩が?)


P(もしかして雪歩、本当に格闘技を? それをこの俺で試そうと?)

雪歩「プロデューサーは、ダメダメな私につきそってくれました。そんなプロデューサーが好きです」

P(俺の目玉を突き刺す!? 格闘技じゃないのか? まてよ……)



~回想~



雪歩「でもほら。お茶と違って、包丁とかの刃物ってなんとなく怖くて」

真「わかるよ。でも、慣れれば大丈夫」

春香「うん。使い方を間違えなければ、心配ないから」

雪歩「そうだよね。うん! 私、包丁の扱いにチャレンジしてみるよ」

P(? 雪歩が包丁にチャレンジと聞こえたが……聞き違いか?)


P(まさか包丁で目を!?)

P(ふっ……)

P(あの雪歩が、そんなことをするわけがない。何を考えているんだ、俺は)

P(きっと耳がまだ本調子じゃないんだな。ここはもう少し静観しよう)

春香「お、おおー……すごいよ! 雪歩」

伊織「な、なかなか……やるじゃない」

小鳥「最初の成功者ね」

真「今度はちゃんとプロデューサーの耳が聞こえている時にやるんだね」

雪歩「そ、そんなの……無理だよぉ////」

真「そんなことないよ! がんばってよ雪歩」

雪歩「わ、私、お茶を淹れるね」

春香「うーん、あの調子じゃあ本当の告白はまだまだだね」

伊織「私もがんばらなきゃ……」ブツブツ

P(雪歩も成長したよな、最初は俺と目も合わせてくれなかったのに……)

P(おとなしいけど、やる時はやるんだよな)

雪歩「みんな、お茶が入ったよ。はい」

真「ありがとう。寒いから温まるね」

春香「味もさすがだよ」

伊織「ほんとよね、こればっかりはウチの料理人もかなわないわ」

雪歩「そんな……おおげさだよぉ」

小鳥「ありがとう、雪歩ちゃん」

雪歩「どういたしまして。じゃあゴミを分別して……っと」

真「雪歩はそういうの丁寧だよね」

雪歩「だって大事なことだよ? ほら、ここにエコマークがついてるでしょ?」

P(な、なにいーーーっ! え、エロマークだとお!!!)

春香「なんだっけ? このマーク」

伊織「もう、知らないの? エコマークは環境保全に役立つと認められた商品につけられる環境ラベルよ」

雪歩「このマークね、私好きなんだ。この『ちきゅうにやさしい』って文字が大事だなって思うんだよ」

P(ち、ちきゃうにやらしいだとぉ!? ゆ、雪歩の口からそんな言葉が……!!!)

P(まさかそんな……しかし……)

P(雪歩はいつも、スコップを……つまり地球に穴を……)

P(地球に穴を掘る……ちきゅうにやらしい……雪歩が地球に……)

P「雪歩おおおぉぉぉーーーっっっ!!!」

雪歩「は、はいぃ!?」

春香「あれ? プロデューサーさん?」

伊織「もう耳はいいの?」

小鳥「? あ、そ、そんな雪歩ちゃんの手を……」

真「うわあ……////」

P「お、俺は雪歩にそんなことをするようなプロデュースをした事はないぞ!」

雪歩「え? え?」

P「俺は……俺はな、おとなしいけど本当は勇気があって、優しくて、可憐で、でも強いそんな雪歩が好きなんだ!」

雪歩「プロデューサー……////」

春香「そんな……」

小鳥「掟破りの……逆告白よ! ピヨオオオォォォーーーッッッ!!!」

伊織「くやしいけど……良かったじゃない雪歩」

真「今夜は赤飯だよ!」

P「だから雪歩、エロの事を考えるのはやめるんだ」

雪歩「はい……え?」

P「雪歩はエロで、地球に対してやらしいのはわかった! だが、もうやめるんだ!!」

雪歩「……あの、プロデューサー?」

P「地球が『しゅごいい! アイドルのスコップしゅごいのほぉぉぉ』とかいう展開は、やっちゃダメだ!」

雪歩「???」

P「姉妹には地球が『アイドルには勝てなかったよ……』って言いながら新しい島ができたらどうする? どうなる? 排他的経済水域が拡大するんだぞ!!!」

雪歩「?????」

伊織「ねえ……」

真「うん、よくわからないけどわかったよ」

春香「プロデユーサーさん、完全に誤解してるね」

小鳥「ピヨォ! な、なんてすばらしい妄想ピヨ!!」

雪歩「お、落ち着いてくださいプロデューサー。プロデューサーはなにか……勘違いしてますぅ」

P「そんな地球規模のオークと姫き……なに?」

雪歩「まだよく耳が聞こえていないんじゃないですか? 私、なんのことだか……」

P「へ?」

真「雪歩はエコについて話していただけですよ」

P「エコ……? エロじやなくて?」

小鳥「そんな話はしていませんよ」

P「……」

P「俺の背後から、隙だらけとか言ってたのは……?」

雪歩「それはたぶん、プロデューサーの事を『好き』って言ったのを…あっ!」

P「え?」

雪歩「……////」

P「え? あ……////」

雪歩「////」

P「////」

雪歩「好き、ですぅ。優しくて頼りがいのあるプロデューサーの事が、私……」

P「俺……は、その……うん、俺も雪歩が……」

春香「あー……残念だけど、雪歩ならいいか」

伊織「……そうね。祝福するわ、おめでとう雪歩」

真「やーりぃ! やったね雪歩」

雪歩「あ、ありがとう……ぷ、プロデューサーこれからもよろしくお願いしますぅ」

P「ああ! これからは、公私にわたって、雪歩をプロデュースするからな」

雪歩「はいっ////」

春香・伊織・真「「おめでとう雪歩!!! プロデューサー!!!」

P「い、いやあ、あ、ありがとう……かな? あ、あはは////」

春香「あれ? なにしてるんですか小鳥さん?」

小鳥「しゅごいのぉぉぉ!!! マグニチュードで地球のモホロビチッチ不連続面がマグマで熱いのおおお……え? あ、さっきの素晴らしい妄想を忘れないうちに原稿に」

P「やめてください!!!」


お わ り

以上で終わりです。
雪歩、1日早いけど誕生日おめでとう!

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