ベルトルト「サンタクロースはいるのか、だって?」(82)

※進撃世界になぜかクリスマスがあります。

※『サンタクロースっているんでしょうか?』を読んで浮かんだネタ。

※時期は訓練兵1年生の冬。

エレン「ああ、サンタはホントにいるんだよな!?」ガシッ

ベルトルト「……ええと、まずなんでそんな話になってるのか聞いてもいい

かな?」メガコワイヨ…

アルミン「読書中にごめんよベルトルト。実はさっきジャンが…」

エレン「『サンタぁ? そんなもん、いるわけねーだろwww』って馬鹿に

しやがったんだ!」

ベルトルト「うわぁ(予想通り…)」

エレン「もうすぐクリスマスだろ? 小さいころは毎年、枕元にプレゼント

が置いてあったよなーって思い出してさ」

エレン「ずっと欲しかった本をもらった時には嬉しかったなあ、とか、サン

タさんに手紙を書いたなあ、とか、ミカサも一緒に話してたんだ」

ベルトルト「うん(なんかオチが見えたような…)」

エレン「そしたらジャンの奴が、急に話に割り込んで来やがって…!」

ベルトルト「(嫉妬か)」

アルミン「(嫉妬だよね)」

エレン「でもあいつ、サンタなんかいるわけないって貶すだけでさ。だった

らなんでプレゼントが置いてあったんだよ!って言ったら、ごまかして逃げ

やがったんだぜ」

エレン「『そんなの決まってんだろ、そいつは…』とか言いかけてたけど、

どうせ思い付かなかったんだろ」

ベルトルト「ああー…」チラッ

アルミン「ハハ…」チラッ

ベルトルト「(たぶん、『おまえの親が置いてたんだよ』って言いそうにな

って、慌ててひっこめたんだろうなあ)」

アルミン「(僕らの家族のことを思い出して、言っちゃいけないって思った

んだろうね…)」

エレン「?」

エレン「まあ、ジャンがむかつくのはいつものことだけど。もしかしてあいつの家にはサンタが来なかったのかもしれないって思ってさ」

エレン「で、他のみんなはどうだったのかなって」

ベルトルト「なるほど。それで僕に?」

エレン「ああ。実は俺たちも、開拓地に行ってからはサンタが来てくれなかったから…」シュン

アルミン「し、仕方ないよ! あんなことがあってきっとサンタさんも大変だったんだ。別にエレンやミカサが悪い子だったってわけじゃないよ!」

ベルトルト「……(心が痛い)」ズキズキ

あれなんか改行がおかしくなってる…読みにくくてすいません

ベルトルト「…ええと、話を戻すけど、サンタクロースは本当にいるのか? って話だったよね」

エレン「ああ、ベルトルトだっていると思うよな!?」ジッ

アルミン「(ごめん。ベルトルトなら話を合わせてくれるよね?)」ジッ

ベルトルト「(プレッシャーがすごいな…)」ヒヤアセ


ベルトルト「…いるよ」

エレン「だよな!! いるに決まってるよな!」ガッツポーズ

アルミン「よかったねエレン」ホッ

エレン「…それにしても、なんでジャンはあんなこと言ったんだろうな。そりゃムカつく馬面だけど、サンタが来ないほど嫌な奴か…?」

アルミン「あれ、喧嘩ばっかりしてる割に意外と評価悪くないんだ?」

エレン「だってマルコが親友やってるだろ」

ベルトルト「なるほど」

アルミン「その一言で納得できるのはマルコの人徳だね」アハハ

ベルトルト「まあ、ジャンがそんなことを言い出した理由は予想できるよ」

エレン「ホントか? なんでだと思う?」

ベルトルト「ジャンは良くも悪くも現実主義者だから、自分の目で見たものしか信じないタイプなんだろうね」

アルミン「ああ、確かに」

エレン「サンタを見たことがないから信じない、ってことか? でも、そんなの…」

ベルトルト「うん、僕も実際に見たことはないよ。他の訓練生の中にも、見たことがある人はいないんじゃないかな」

アルミン「(ちょ、ちょっと! 何を言い出すんだベルトルト!?)」

エレン「…サンタ、もしかしてホントはいないのか?」

アルミン「え、エレン!」

エレン「もしかして。ホントはいないから、ベルトルトも俺に気をつかって、いるって言ってるのか…?」

アルミン「ち、違うよエレン!(せっかく納得してたのに、一体何を言い出すんだベルトルトは…!?)」


ベルトルト「いや、サンタクロースはいるよ。たとえ目に見えなくてもね」

エレン「本当だな!? だったらなんでいるって言えるんだ!?」

ベルトルト「ええと…逆に聞くけど、愛情や思いやりは存在すると思う?」

エレン「はあ? 当たり前だろ」

ベルトルト「じゃあ、愛情は何色で思いやりはどんな形をしている?」

アルミン「(あっ!)」

エレン「どんなって…そんなの、目に見えるようなもんじゃないだろ」

ベルトルト「うん、そうだね。目には見えないけど確かに存在してる」

ベルトルト「サンタクロースも、それと同じだと思うんだ」

エレン「サンタも同じ…?」

ベルトルト「そう。大切なものは目に見えないんだよ」

ベルトルト「サンタクロースがプレゼントをくれるのは、子供に喜んでほしい、笑ってほしいからなんじゃないかな」

ベルトルト「つまりそういう…『子供を幸せにしたい』っていう、妖精とか精霊みたいな存在なんだと思うんだ」

エレン「サンタは子供を幸せにする妖精…?」

ベルトルト「うん。だから見たことがあるとかないとかじゃなくて、信じるか信じないか、っていうものなんだよ」

ベルトルト「子供がサンタクロースを信じてる限り、いなくなったりしないし、死んだりしない」

ベルトルト「……って、僕の友達が言ってた」

エレン「受け売りかよ!?」

アルミン「あはは…ベルトルトにしては珍しく語るなあ、って思ってたら、友達が言ったことなんだね。ライナー?」

ベルトルト「いや、また別の友達だよ…ちょっと年上だったから、友達っていうよりお兄さんみたいに思ってたけど」

エレン「くっそー、ちょっと感動してたのに…」

ベルトルト「ごめんごめん。僕も昔、エレンと同じことを聞いたことがあって、その時にこう答えてもらったんだ」

アルミン「うん、でも、すごくいいと思うよ。確かにサンタさんを見たことがないからって、それがいないっていう証明にはならないよね」

ベルトルト「そうそう。だから開拓地のことはともかく、今年は大丈夫だと思うよ、エレン」

アルミン「えっ」

エレン「本当か!?」

ベルトルト「だってエレン、いつも訓練頑張ってるだろう? きっとサンタクロースも見てくれてるよ。もちろんアルミンやミカサのこともね」

エレン「そっか…! よし、自主トレ行ってくる! ありがとなベルトルト!」ダッシュ

アルミン「あっ、エレン…!」

ベルトルト「無理はしないようにねー」フリフリ

アルミン「……で? 一体なんであんなこと言いだしたの」

ベルトルト「ごめん。どうせアルミンのことだから、何か用意してるんだろうと思って」コワイ

アルミン「してるけど…でも大したものは用意できないよ。クリスマスカードくらいしか…」ハァ

ベルトルト「エレンは別に物がほしいわけじゃないんだし、それで充分だと思うよ。…筆跡にさえ気を付ければ」

アルミン「筆跡?」

ベルトルト「うん。『これアルミンの書いた字だろ』ってバレたら大変だからね」

アルミン「ああ~、確かにそれは最悪だね! もしかして実体験?」クスッ

ベルトルト「うん……ライナーだったんだ」

アルミン「えっ?」

ベルトルト「ライナーだったんだよ…僕の枕元にプレゼント置いてたの」

アルミン「えっ」

一旦ここまでです

ライナー…antatte…
今までホモネタで盛大に笑ってて申し訳ない気持ちになった
グーフィーのサンタの話に劣らぬ名作の予感
続き楽しみにしてる!乙乙!

ベルトルト「こっちに逃げて来たあと、僕とライナーも開拓地に送られたんだ」

ベルトルト「普段はクタクタでそれどころじゃなかったんだけど、クリスマス直前になって思い出してさ」

ベルトルト「『サンタさん、もう僕のとこには来てくれないよね…』って言っちゃったんだ」

ベルトルト「……ライナーに」


ベルトルト「(ウォール・マリアを蹴り壊した時の混乱や、その後の奪還作戦の様子を壁内人類に混じって見ていたら…)」

ベルトルト「(あの時の僕は、戦士としての任務の重さに負けそうになっていたんだろうな…あんな泣き言を言うなんて)」

アルミン「ああ…それで…」

ベルトルト「うん…ライナーだって『そんなわけないだろう! 絶対に来る!』ってフォローするしかないよね、そんなこと言われたら」

アルミン「その光景が目に浮かぶよ」

ベルトルト「でも、ギリギリになって言いだしたし、そもそも開拓地にはロクなものもないし、かなり悩ませちゃったみたいで…」

ベルトルト「結局その年は、小さな雪だるまとか雪うさぎとかをたくさん作って、ツリーの代わりに飾ってくれたらしいんだ」

アルミン「とっても素敵なプレゼントじゃないか! …あれ? 『らしい』って…」

ベルトルト「…隙間風だらけの掘っ立て小屋でも、かまどに火種が残ってたから外よりは暖かくって…」

ベルトルト「僕らが起きた時には半分以上溶けてて、何だったのかよくわからなくなってたんだ」

アルミン「あー、それは盲点だった…うわあ、せっかく頑張って作ったのに、ライナーもがっかりしたんだろうな…」

ベルトルト「うん。ぐっしょり濡れた床を雑巾で拭きながら、二人してすごく落ち込んでたのを覚えてるよ」

アルミン「いや、でも、優しいお兄ちゃんのいい話じゃないか」

ベルトルト「いや…この話にはまだ続きがある」

ベルトルト「次の年のクリスマスには、ライナーも前もって準備してたみたいでね、今度はちゃんと箱が置いてあった」

アルミン「去年のリベンジのつもりだったんだろうね」フフ

ベルトルト「カブトムシの幼虫とセミの抜け殻とカマキリの卵の詰め合わせだった」

アルミン「えっ」

ベルトルト「しかも土ごと」

アルミン「えっ」

ベルトルト「『男なら絶対に喜ぶ!』と思ってわざわざ採っておいてくれたみたいなんだけど、僕別にそういうのには興味なくて…」

アルミン「ぼ、僕もちょっと嬉しくないかも…」

アルミン「あ、でもエレンは昔そういうの集めてたし、ライナーもよかれと思ってのチョイスだよ! きっと!」

ベルトルト「うん、一生懸命集めてくれたんだろうと思うよ…このくらいの箱じゅうにみっしり詰まってたから」

アルミン「みっしり…(想像するとキツイな)」

ベルトルト「しかもそれ、すぐ枕元に置いてあったんだよ……僕の」

アルミン「えっ」

アルミン「ええと、確認させてもらうね?」

アルミン「天気占いができるレベルで寝相が悪い、ベルトルトが寝ている、すぐ枕元に…?」オソルオソル

ベルトルト「……」

アルミン「……」

ベルトルト「…朝起きたら、そのへんが土まみれで…」

ベルトルト「僕の体の下で、カブトムシの幼虫たちが潰れてて…っ」グスッ

アルミン「……」想像中

アルミン「(アカン)」

アルミン「…ベ、ベルトルト! 確かにかなり衝撃的な体験だったと思うよ」

アルミン「一種のトラウマになってしまったとしても、それはしょうがないことだ」

アルミン「でもそれは、ライナーの不器用な優しさが裏目に出てしまった結果であって…!」アセアセ

ベルトルト「いや……話はまだあるんだよ、アルミン」

アルミン「これ以上!?」

ベルトルト「半泣きの僕と一緒に布団を片付けて、ぺちゃんこの幼虫とかを土に埋めながら、ライナーが言っちゃったんだ」

ベルトルト「『あーあ、サンタがこんなに面倒くさいなんて思わなかったなぁ』…って」

アルミン「うわああああああああ」

ベルトルト「ひどいと思わない? そりゃ確かに大変だっただろうけど、でも墓場まで持って行ってくれよそんな秘密は!」

アルミン「よりにもよって、そのタイミングでバラしちゃったのかライナー!」

ベルトルト「いや、本人もうっかりポロっと言っちゃったみたいで、慌ててごまかそうとはしたんだよね」

ベルトルト「でも、サンタクロースがいるって証拠に『ほらこれがサンタの手紙だ!』って出してきたのが、どう見てもライナーの字でさ…」

アルミン「そこは気付かないであげようよ」

ベルトルト「泣きながらぶったら、あっちも逆ギレして殴り返してきて…」

ベルトルト「生まれて初めてライナーと取っ組み合いの喧嘩をしたのが、去年のクリスマスの思い出だよ…」トオイメ

アルミン「そっかー…ベルトルトもけっこう最近まで信じてたんだね…(ライナーも気の毒に…)」トオイメ

ベルトルト「まあね、落ち着いて考えてみたら、僕も悪いことしたなって思ったよ」

アルミン「うん、ベルトルトの夢を守ってあげたかったんだろうね、ライナーは。…あれ?」

アルミン「そういえば、あれ何? さっき読んでた本も見たことなかったけど…」

ベルトルト「あっ(ちゃんと隠しといたつもりだったんだけど…)」

ベルトルト「まあいいや。アルミンなら言いふらしたりしないだろうし。…これだよ」ゴソゴソ

アルミン「毛糸と、…編み針?」

今日はここまで。感想ありがとうございます
明日中には終わらせる予定

いいな
温かいわ

期待

サンタクロースっているんでしょうかもいい絵本だよな

                                         ├┴┬┴┤
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                                     ├┼┤ U U .├┼┤
              サンタなんているわけないよね     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

              ∩_∩.  ∩_∩   ∩_∩         !

              ( ・(ェ)・)  ( ・(ェ)・) ((ェ)・  )         |ヾ サ ッ
              ( ⌒つ() ()と⌒ )  と ⌒ヽ
                `'(_)_). (_(_)"   (__入_ノ


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              ∩_∩.  ∩_∩   ∩_∩            あ、ドーモ
              (   ・(ェ)) (    ・) (     )
              ( ⌒つ() ()と⌒ )  と ⌒ヽ
                `'(_)_). (_(_)"   (__入_ノ

アルミン「ベルトルト、編み物なんてできたんだ?」

ベルトルト「最近始めたばっかりだけどね。書庫にこんな本があったんだ」ヒョイ

アルミン「なになに…『初心者でも簡単★素敵なニット~棒編み編~』? …なんでこんな本が置いてあったんだろう」

ベルトルト「もしかしたら、誰か昔の訓練兵の私物が紛れ込んでたのかも知れないね」

アルミン「ああ、女子訓練兵も多いもんね。そうかも」

アルミン「でも、なんでいきなり編み物始める気になったの?」

ベルトルト「いや…僕、成長期みたいで…急に背が伸びたから、服がみんな小さくなっちゃって…」

アルミン「そういえば、入団したてのころは、ここまで見上げなくても話せた気がするよ」

ベルトルト「シャツとかはどうしようもないけど、セーターなら小さくなったのを編み直せば着られるかな、って」

アルミン「なるほど」

アルミン「僕からしたら羨ましいけど、そこまで背が伸びるのが早いと大変そうだね」

ベルトルト「うん…まあ、やってみたら案外楽しかったよ」

ベルトルト「新しいセーター買うより足りない分の毛糸買った方がずっと安いし」

アルミン「確かに、経済的でいいね」

ベルトルト「実は、今着てるのもそうやって、古いの解いて編み直したやつなんだ」

アルミン「そうなの!? ぜんぜんわからなかったよ!」

ベルトルト「いや、色が黒いから目立たないだけで、裏側から見たら編み目とかガタガタだよ」

アルミン「それにしてもすごいよ。何でも器用にこなすとは思ってたけど…」

アルミン「あれ、でも今編んでるこれって、新しい毛糸だよね? すごく柔らかいし…」

ベルトルト「うん。編むのに慣れて来たから、ちょっといい毛糸買ってみたんだ」

アルミン「マフラーにしては幅が広いし短いし…今度は何編んでるの?」

ベルトルト「セーターだよ。これは後ろ身ごろ」

アルミン「えっ、セーターなの? これが?」

ベルトルト「ええとね、セーターはいきなりこんな形で編むんじゃなくって、パーツごとに編むんだ」

ベルトルト「胴体部分の前と後ろ、袖をそれぞれ別に作って、最後に毛糸で綴じるんだよ」

アルミン「へええ、知らなかったなあ…」

ベルトルト「前身ごろと後ろ身ごろはもう編めたから、今は袖を編みかけたところなんだ」

アルミン「…ねえ、これ、ベルトルトにはちょっと大きくない?」

ベルトルト「えっ」ギクッ

アルミン「成長を見越して大きめに編んだのかとも思ったけど、丈はちょうどで幅だけ大きいみたいだし…」

ベルトルト「そ、そうかな?」

アルミン「…もしかして、ライナーに?」

ベルトルト「……」

ベルトルト「…目ざといね、アルミン…」ハァ

アルミン「さっきの話を聞いたからね。もしかして、クリスマスの贈り物にするのかなって」

ベルトルト「あ~…墓穴掘っちゃってたか…」

アルミン「別に隠すことないのに」クスクス

ベルトルト「いや…ほら何となくさ…」

アルミン「まあ、何となく内緒にしたい気持ちも分かるよ。ごめんね余計なこと聞いて」

アルミン「(ジャン辺りに聞かれたら、盛大に揶揄されそうだし)」

ベルトルト「いや…いいよ。アルミンなら黙っててくれそうだし」

ベルトルト「やっぱり、リベンジは確実に決めたいからね」

アルミン「えっ?」

ベルトルト「えっ?」

アルミン「えっとごめん、確認させてね?」

アルミン「……なんでリベンジ?」

ベルトルト「いやほら、さっきも言ったじゃないか。僕がもらったプレゼントの話」

ベルトルト「今年はぜひ、あれと同じ気持ちをライナーに味わってもらいたくって」

アルミン「ちょっと不器用なお兄ちゃんとサンタさんを信じる弟の心温まる話じゃなかったの!?」

ベルトルト「最悪の形で真実を暴露された子供が復讐を遂げることでトラウマを克服し、大人になる話だよ」

アルミン「思いのほか根に持ってた!!!!」

一旦ここまで。なんとか今日中に終わらせたい

>>38 あれいい話ですよね。実話だっていうのがすごい
>>39 AA可愛いな!ありがとう

アルミン「…まあ、ベルトルトが意外に素直じゃないタイプだってことは覚えておくよ」

ベルトルト「ええー? なんでそんな話になるんだい」

アルミン「だって、こんなにいい毛糸でセーター編んであげるのが、なんで復讐なのさ」クスッ

ベルトルト「…アルミン、君は何もわかっていない」

アルミン「男のツンデレにも需要があるみたいだよ、最近は」ニッコリ

ベルトルト「???」

ベルトルト「(アルミンってたまによくわからない事言いだすなあ…)」

ベルトルト「…何か誤解があるようだから言っておくよ」

ベルトルト「アルミン…ちょっと想像してみてほしい」

アルミン「うん?」

ベルトルト「…セーターってさ、編み物の中ではかなり難しいんだよ」

ベルトルト「マフラーだったら、まっすぐ編めばいいだけだし、適当なサイズでも誰でも使えるけど、セーターはそうはいかない」

ベルトルト「この本には型紙もついてたけど、それだけじゃ駄目なんだ」

ベルトルト「先に着る人のサイズをちゃんと図って、目の数を増やしたり減らしたりして調整しなきゃいけない」

ベルトルト「プレゼントの中でも、特に『貴方のために作りました』っていう性質が強い代物だ」

アルミン「うん、そうだね…?」

ベルトルト「まずは毛糸を選ぶところからだ」

ベルトルト「相手の好きな色とか、似合う色を選んで、デザインを考える」

ベルトルト「首回りはもう少し詰めようかなとか、肩幅はもう少しゆったりさせた方がいいかなとか」

ベルトルト「相手の着心地がいいように、ひとはりひとはり、思いを込めて編み上げる」

ベルトルト「これだって太い毛糸でざっくり編んだけど、それでも2週間以上かかってる」

ベルトルト「手間暇かかる分、なまじ高価な品物を贈るより大変だ」

ベルトルト「だから、たとえ下手でも、もらったら贈ってくれた相手への感謝は大きくなる」



ベルトルト「※ただしくれたのは男」



アルミン「」

ベルトルト「あれだよね、可愛い女の子からもらったらすごく嬉しいよねきっと」

アルミン「」

ベルトルト「この本にも、『手編みのセーターで彼のハートを射止めちゃおう♪』とか書いてあったし」

アルミン「」

ベルトルト「毛糸もけっこう高いやつ買ったし、我ながらなかなか上出来だと思うし」

アルミン「」

ベルトルト「そういうあれこれを一瞬で台無しにする made by 男 という現実」

アルミン「」


アルミン「」

アルミン「……いや、いやいやいや……」

アルミン「そりゃよく知らない男の人からいきなり渡されたら、何て言うかビックリするだろうけど…」

アルミン「親友とか幼馴染がくれるんなら、別に嫌じゃないと思うよ…?」

ベルトルト「うんまあ、正直そこを狙ってるからね」

アルミン「えっ?」

ベルトルト「『ありがたいとは思いたいけど、正直すごく微妙な気分』」

ベルトルト「まさに去年の僕の気持ち」

アルミン「ああー…」


ベルトルト「最初はプレゼント自体を微妙な品物にしようかとも思ったんだけど」

ベルトルト「正直、あの衝撃に匹敵する品物を思いつかなくって…」

アルミン「(思いつかなくてよかった)」

ベルトルト「それで、由来を考えるとしょっぱい気持ちになっちゃう路線で行こうかと思って」

アルミン「素直にプレゼントすればいいのに…」

ベルトルト「いま反抗期だから」テヘヘペロ

アルミン「自分で言うとすごく嘘っぽいよ」

アルミン「(ていうか反抗期の対象がライナーだっていうことについては、疑問に思ってないんだな)」

アルミン「……うん、まあいいや」

アルミン「ベルトルトの目指してる方向はわかったよ」

アルミン「上手くいくといいねって言っていいかはわからないけど、頑張ってね」

ベルトルト「ありがとう、アルミンもね。そっちは2人分だし」

アルミン「うん。やっぱりカードだけじゃ寂しいからね。他にも何か考えてみるよ」

ベルトルト「そういえば、市場でもプレゼント用に、手ごろな小物とかアクセサリーを売ってる露店が出てるらしいよ」

アルミン「へえ、次の休みにでも探しに行ってみようかな。情報ありがとうね」

ベルトルト「どういたしまして」ヒラヒラ

ベルトルト「…さて、消灯まであと一時間…」

ベルトルト「クリスマスは10日後か…」

ベルトルト「毛糸は…この前まとめ買いしたから、…あと12玉か。充分だな」

ベルトルト「……」ウーン

ベルトルト「…よし、頑張ろう」

ベルトルト「……」アミアミアミ…

なんとか24日中に一区切りついた…!
レスくれた人たちありがとう
エレンもベルトルトも、ウォール・マリア崩壊時点で10歳とか11歳だったけど、
平和な世界なら、サンタにプレゼントもらってるような歳なんだよな…と改めて思った

微妙に中途半端なところで終わったので、後でこっそりクリスマス当日の話も書くかも

今更ながら、おまけのクリスマス当日ネタを投下しに来ました
保守してくれた人ありがとう

――12月25日――

エレン「ふわぁ…う~、今日も寒いな…」

エレン「…っは! そうだ! サンタは!?」ガバッ


枕元『カード付きの小さな紙箱と、大きな紙袋』


エレン「っっっっっしゃーーーー!!!」ガッツポーズ


エレン「アルミン! なあ起きろよアルミン!」ユッサユッサ

アルミン「さっきの声で起きたよ。おはようエレン」

ジャン「…っだー! おいこら、せっかくの休日だってのに朝っぱらから騒いでんじゃねぇよこの死に急ぎ野郎!」

エレン「これが騒がずにいられるかよ! ほら! 見ろよこれ!」バッ

アルミン「あ、ちゃんとサンタさん来たんだ? よかったねエレ…ん?」

マルコ「おはよう。あれ、プレゼントふたつもあるんだ?」

エレン「おう! 目ぇ覚ましたら枕元に置いてあったんだ!」

コニー「マジかよ!? ちくしょー俺も頼んどくんだった! どうせ訓練所には来てくれねーだろうと思って油断したー!」ジダンダ

アルミン(おかしい…僕が用意したのはカードとクッキーだけだし、夜中にそっと置いた時も他には何もなかったぞ…?)

アルミン「ね、ねえエレン、どんなプレゼントか開けてみない?」

エレン「おう、そうだな。どれ…」ゴゾゴゾ

エレン「やった! こっちの箱はクッキーの詰め合わせだ! 後でみんなで食おうぜ」

コニー「マジかよ! おまえ太っ腹だな!」

エレン「俺はカードももらったしな」

カード『いつも訓練を頑張っているエレンへ、去年と一昨年は来れなくてごめんね。メリークリスマス! サンタクロースより』

エレン「…ヘヘ」テレテレ

マルコ「よかったね、エレン」ニコ

ジャン「…っけ、お子様は単純だよなぁ」

マルコ「はいはい、自分がプレゼントもらえなかったからって拗ねるなよジャン」

ジャン「はぁ!? ちっげーし! 別にそんなんじゃねーし!」

エレン「…あれ、カードの裏にメモもくっついてた」キイテナイ

エレン「『P.S.ミカサとアルミンの分も置いていきます。エレンから渡してあげてね』? …こっちの袋か?」ガサガサ

アルミン「えっ!?(僕は書いてないぞそんなの!?)」

エレン「あ、毛糸の帽子だ!」

コニー「お揃い…じゃないのか。これだけ先っぽにボンボンが付いてる」

マルコ「茶色にベージュのラインが入ってるのは同じでも、ちょっとずつデザインが違うんだね。よくできてるなあ」

ジャン「こっちのは毛糸の花が飾りについてるしな…(これがミカサのか…)」


エレン「なあ、これとこれならどっちがいい? アルミンが好きな方選んでいいぞ」

アルミン「え、え、ぼ、僕のも?」

エレン「? 当たり前だろ、アルミンだって訓練頑張ってたし、サンタ楽しみにしてたじゃねぇか」

アルミン「うん、いや、そうだけど、まさか僕ももらえるなんて思ってなくて…」

ベルトルト「…別におかしくはないよ。エレンが二人の分も一緒にお願いしてくれてたんじゃないの?」

アルミン「! ベルトルト!」

エレン「あ、起きてたのか。おはよ」

ベルトルト「あれだけ騒げば目が覚めちゃうよ。おはよう」クス

アルミン「(まさか…いや、そうだ、この毛糸には見覚えがある!)」


コニー「しまった、サンタ騒ぎで今朝の寝相見るの忘れてた!」

ライナー「今日は180度回転して足が枕に乗ってたぞ。ちなみにうつ伏せだった」

ジャン「掛け布団はどうなってた?」

ライナー「すっぽり包まってたから足首から先しか出てなかった」

コニー「ゆうべ寒かったもんなー」

ジャン「…ってことは、今日は晴れるけど北風が強いな」

コニー「つまり今日も一日寒いんだな! あったけー格好しとかねーと」

マルコ「最近すっかり的中率高くなったよね、ベルトル天気予報」

アルミン「冗談半分で寝相と天気のデータを取ってたら、ホントに法則が見えて来たからね」

ベルトルト「…(解せぬ)」


コニー「…あーっ!? ライナーんとこにもプレゼントが置いてある!」

「「「!?」」」

ジャン「嘘だろ!?」

マルコ「あ、ホントだ!」

エレン「ライナーもサンタにお願いしてたのか?」

コニー「えーっ、どう見てもアウトだろライナー。『いい奴』だけど『子供』じゃねーもん」

ライナー「いやお前と2歳しか違わないからな?」

アルミン「……」ジーッ

ベルトルト「……」フイッ



ライナー「まあ、落ち付けお前ら。俺がもらえたのには理由がある」

コニー「理由?」

エレン「だから、サンタにお願いしたんだろ?」

ジャン「お願いした程度でライナーがOKになるんなら、『子供』なんて条件最初からいらねえだろうが」ハッ

エレン「なんなんだよお前はさっきから。サンタ馬鹿にすんな!」

ジャン「俺がバカにしてんのはサンタじゃねーよバーカ!」

マルコ「…また始まった」ハァ

コニー「もうほっとこうぜ」

コニー「で、理由ってなんだ?」

ライナー「去年と一昨年は俺たちも開拓地にいたんだが、こっちもエレンたちと似たような状況でな」

エレン「まあ、とてもクリスマスなんて祝えるような状況じゃなかったからな。しょうがねえよ」

ライナー「で、サンタが来ないままでかくなった俺の分まで、今年は頼んでてくれたみたいだな、ベルトルトが」

ベルトルト「っ!?」ビクッ

コニー「ベルトルトが?」

エレン「俺がミカサやアルミンの分もお願いしてたのと同じか」

ジャン「へえ、意外だな。お前もサンタさん待ちだったのかよ」

マルコ「へえ…(察し)よかったね、ライナー」

ライナー「まあな」

アルミン「……」ジーッ

ベルトルト「……」メガオヨグ

エレン「なあ、ライナーのは中身なんだ?」

ライナー「開けてみるか。今、ここで」ガサガサ

ベルトルト「……(なんか妙にいたたまれない)」

コニー「…お、すっげーあったかそうだな!」

マルコ「手編みの…ベストだね。サイズもライナーにちょうどよさそうだ」

ジャン「…へえ、今年のサンタは編み物にでもハマってたのかね」ニヤニヤ

アルミン「(あの時はセーターにすると言っていた。後は袖だけだったし、間に合わなかったはずはない。つまり、袖になるはずだった毛糸の行方は…)」ジーッ

ベルトルト「……」ヒヤアセ

エレン「ライナーもいいもんもらえてよかったな!」

ライナー「ああ、色も気に入ったし、手触りもいいな。ありがたく着させてもらおう」


ベルトルト「……(おかしい、なんでそんなに普通に気に入ってるんだ…!?)」

ベルトルト「(まさか僕からだって気付いてないとか? …いや、さっきの発言からしてもそれはない)」

ベルトルト「(なんでちょっと嬉しそうに着てるんだよ! 「似合うか?」とか周囲に聞かなくていいから!)」

ベルトルト「(それ編んだの僕だよ!? クリスタとかじゃないんだよ!?)」

ベルトルト「(しかもマルコやジャンまで薄々察したみたいだし! ジャンのゲス顔は後で殴るとしてもマルコの優しい笑顔が痛い!)」

ベルトルト「(うわあああああ、なんでこっちが一方的に気まずくなってるんだ…!)」orz


アルミン「(悶えてる悶えてる)」

アルミン「(ライナーのはあれだ。昔僕が描いた似顔絵をプレゼントした時のお父さんと同じ反応だ)」

アルミン「(あのちょっと目を細めてプレゼントを見つめる表情とか、にやけそうになるのを堪えてる感じの口元とか)」

アルミン「(今にも「こんな素敵なプレゼントをくれるなんて、大きくなったなぁ」とか言いだしそうな…)」

アルミン「(たまに弟扱いしてるとは思ってたけど、まさかの父親目線…!)」

アルミン「(しかも、ベルトルトは自称反抗期の真っ最中。…正直どこが反抗期なのかさっぱり分からなかったけど)」


アルミン「(……うん、悶えたくもなるわ)」ガッショウ

エレン「? ベルトルトなに丸まってるんだ? 今から二度寝するのか?」

アルミン「うん、エレン、ちょっとそっとしといてあげよう?」肩ポン

エレン「でも、ベルトルトまだ自分のプレゼント開けてないだろ。せっかくなら二度寝する前に見てみろよ」

ベルトルト「えっ!?」ガバッ

コニー「なんだ、気付いてなかったのか?」

ジャン「おいおい、起きてると思ってたら新手の寝相か?」

マルコ「ほら、これ。枕元の壁にピンでぶら下げてあるよ」

ベルトルト「あ、ホントだ…なんで…」

エレン「そりゃ、ベルトルトの寝相対策だろ」

ジャン「普通に置いといたんじゃ、つぶされちまうかもしれないしな」

コニー「へー、サンタってそんなとこまで考えてくれるのか。スゲーな!」

ライナー「まあな」ドヤァ

アルミン「(わぁドヤ顔)」

コニー「で、中身はなんなんた?」ワクワク

エレン「他のに比べて小さいよな。座学の教科書くらいか?」

ベルトルト「ちょ、ちょっと待って…」ガザガザ

ベルトルト「…革の、ブックカバーだ」

マルコ「へえ、いいねこれ。開かないようにベルトも付いてるんだ」

ジャン「ああ、そういやお前もよく本読んでるよな」

アルミン「(ベルトルトの好みをバッチリ押さえた品物選びといい、寝相対策といい、リベンジする気だったのはライナーも同じか…)」チラッ


ベルトルト「……っ(これじゃただのプレゼント交換じゃないか…!)」ギリィ

ライナー「(10年早い)」ニヤニヤ

アルミン「……」

アルミン「(今回のは、最初からどう転んでもライナー得、だったのか…)」

アルミン「(うん、あれだね。エレンが何あげたってミカサは喜ぶだろうし、ライナーもそういうタイプだろうしね)」

アルミン「(付き合いが長いんだから、ベルトルトもこうなることを予想しとくべきだったよね)」

アルミン「(なまじ手間暇かけた分、精神的ダメージが大きくなってるしね本人)」

アルミン「(…でもまあ、傍目にはただ微笑ましいだけなんだけどね)」

アルミン「よかったねベルトルト」ニコ

ベルトルト「…………ありがとう」

ライナー「どういたしまして」

ベルトルト「君に言ってないよ!」カオマッカ

アルミン「あはははは」


小ネタを長引かせましたがこれにて終了
だいたい12巻の描き下ろしでベルトルトの末っ子オーラが半端なかったせい
読んでくださった方、感想くださった方、ありがとうございました

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