える「あのお城みたいな建物はなんですか?わたし気になります!」(133)

 

折木「はあ……あれはな、簡単にいえば男女が休憩する設備だ」

える「休憩、ですか?」

折木「俺もそれ以上は知らん。ほら行くぞ」

える「ま、待ってください折木さん!」

折木(やっぱり逃げ切れなかったな……)

える「わ、わたし何だか疲れてきました! 折木さん、休憩したくないですか?」

折木「早くしないと信号が変わる。家でゆっくり休めるし、あんな場所で休む必要なんてない。寄り道してる分、損になる」

える「じゃあ、どうして休憩のためだけにあんな大きなお城が必要なんですかっ」

折木「うっ……」

える「わたし、気になります!」

キタ⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y(。A。)!!!

折木「いいか千反田、あの休憩所は金がかかるんだ」

える「そうなんですか……」シュン

折木「金は持ってきてないからな。ほら、分かったら帰るぞ」

える「待ってください折木さん!」

折木「今度はなんだ……」

える「わたしがお金を出します! 折木さんの分とあわせて二人分!」

折木「……待て、待て待て」

える「これなら問題はないですよねっ。折木さん、何ならタクシー代もご用意します」

折木「千反田、あのな……」

える「はいっ」キラキラ

折木「……はぁ」

える「折木さん、溜息吐いてお疲れみたいです。あそこに丁度良い休憩所があります」

折木「知ってる」

える「折木さんっ!」

折木「……男を見せろと、そういう場面なのかこれは?」

折木「来てしまったな……」

える「ものすごく立派な建物です。あ、折木さん……今ちょうど他のかたが休憩に」

折木「頼むからせめて静かにしてくれ」

ウィーン……

える「あの、休憩をしたいんです!」

店員「え? あのお嬢ちゃん、ここがどういう場所だか理解してる?」

える「はいっ。なんでも、男女が休憩する場所だとか」

店員「間違ってはいないが……」

える「お金ならあります。一番短い時間で構わないので、少し休ませてくれませんか?」

店員「今回だけだぞ」

える「ありがとうございますっ。折木さん、部屋をとれました」

折木「いちいち報告しないでいい……」スタスタ

店員「……兄ちゃん」

折木「ん?」

店員「頑張れよ」

える「わあっ、見て下さい折木さんっ。すごく綺麗な部屋ですよ!」

折木「はあ、まさか千反田とこんな所に入る事になるなんてな」

える「あ、テレビがあります。ちょっと観てみませんか?」ピッ

折木「や、やめておけ! それは――」

「あぁん……ん、あはっ……激しい、ん」

える「……」

折木「だ、だからいわんこっちゃない」ピッ

える「あの、折木さん……この時間からあんな放送をしているのは、少し、刺激が強いと思うんです……」

折木「まあ、そうだな。テレビには触れないでおこう」

える「……はい」ドキドキ

部屋には興味をひくものがイパーイか

える「あ、この風船みたいなのはなんでしょう」

折木「お、おい千反田。あんまり余計なものに手を出すんじゃ――」

える「なんだかこれ、不思議です。折木さん、何か知ってます?」グニー

折木「……っ!」

える「もしかして、本当にただの風船なんでしょうか。ちょっと膨らませて……」

折木「待て千反田、それに口をつけるな」

える「えっ、どうしてですか?」

折木「……良くないからだ」

える「なにがです?」

折木「精神的に良くない」

える「……? 折木さんの言っていることが、よく分かりません」

える「それに見た感じ、ただの風船ですよ。怪しげな気配は感じません」

折木「だからって膨らませる必要はないだろう」

える「休憩所側がせっかく用意してくれたんです。これで遊ばないとお金を払った分、損になります」

折木「あ、遊ぶ……?」

える「じゃあ膨らませますね。……ん、はぁ……ふぅーっ。ん、ふぅー……」

折木「……」

える「だめみたいです……」

折木「風船じゃないからな、それは」

える「そうなんですか?」

折木(しまった!)

える「折木さんはこれが風船じゃないと知っているんですねっ」ズイッ

折木「し、知らない」

える「でも今さっきは風船じゃないといってました。だとしたら、折木さんは風船以外の答えを知っているはずです!」

折木「聞き間違いじゃ」

える「わたし、気になりますっ!」

折木「ま、まあそれはいいんじゃないか? その時になれば分かる」

える「折木さん、今気になるんです。知っている事だけでも教えてください」ズイ

折木「か、顔が近い。前から言おうと思ってたけどな、千反田。顔が近い……」

える「どうしても気になるんです!」

折木(聞く耳持たずか……)

える「折木さん、教えてください。お礼は今度しっかりした形でしまうから」ズイ

ムニュ

折木「お、おいおい待て待て千反田。離れろっ、離れろって」グイッ

える「え、あっ……」

折木「す、すまない千反田」ドキドキ

える「……折木さん」

折木(あ、仰向けに倒れる千反田か……)ゴクリ

折木「ち、千反田っ!」バッ

える「あ、このスイッチはなんですか?」スッ

折木「うぐっ」バフ

ウィイイイン……

える「ベッドが回ってます……これ、一体何の意味が……あれ? 何してるんですか、折木さん」

折木「……なんでもない」

える「にしても折木さん、この薄暗い照明はどうにかならないんでしょうか。目が悪くなりそうです」

折木「雰囲気作りだな……こんなもんだよ」

える「そうなんですか、折木さん詳しいんですね」

折木「……詳しくはない」

える「あ。見てくださいお風呂もあるみたいですっ。でもこっちからは透けて見えるなんて……なんだかおかしいです」

折木「浴びるのか」

える「……え?」

える「でも、見えてしまいます……」

折木「大丈夫だ、千反田。中に入ってみれば分かるが、実は透けていないんだよ」

える「……あ、本当です。鏡張りになってます!」

折木「俺はここで休んでる。千反田は汗でも流したらどうだ?」

える「えっと、それじゃあ少し失礼しますね……」

折木「……」

折木「マジックミラーだと疑わないのか、千反田は……」

シャアァァァ……

える「♪」

折木「ぶっ……ち、千反田」

える「♪」

折木「……これは、いいな」

える「さっぱりしました……折木さんもシャワーを浴びたらどうですか?」

折木「いや、俺はいい」キリッ

える「……なんだか折木さん、全てを悟ったような顔になってます」

折木「そうか?」キリッ

える「一体何があったんですか? わたし、気になります」

折木「賢者になった」

える「……?」

折木「これは分かりにくかったか……簡単にいえば、すっきりしたんだ」

える「すっきり? どこかに疲れを吹き飛ばすようなグッズがあったんですか?」キョロキョロ

折木「目の前に……」

える「え、わたしですか?」

折木「い、いや。なんでもない……少し頭を冷やしてくる」

える「それならついでにシャワーを浴びるといいですよ。冷たくて気持ちいいです」

折木「そうさせてもらおう」

シャァァァ……

える「……お、おれ、折木さん」ドキドキドキ

折木「……」

シャァァァ

える「み、見えてます……ま、まさか折木さんは気付いていないんでしょうか? ど、どうしたらいいんでしょうか、わたし」

える「見なかったことに……。いえ、でも正直に見てしまったと言わないと、わたしがすっきりできません」

バッ

える「折木さん、お伝えしたいことがあります!」ドンドン

折木「ど、どうしたんだ千反田!?」

える「わ、わたし……折木さんの裸、見ちゃいました」

折木「……しまった。マジックミラーの事を忘れてた」

える「せ、責任取ったほうがよろしいのでしょうか……?」

折木「……これは男を見せろということなのか、里志?」

折木「千反田……とにかく扉の前から離れてくれないか」

える「で、でも折木さん! わたし、こういう事はしっかりしたいんです!」

折木「着替えられないだろ……」

える「折木さん……それは違います。折木さんらしくもありません」

折木「……?」

える「いつもの折木さんなら、省エネ思考で着替える手間も惜しんで……その、責任を果たそうと」

折木「俺はそんな変態キャラじゃない」

える「折木さん、さっきの風船のこと覚えてますか?」

折木「ああ、覚えてる」

える「わたし、使い方を知ってしまいました……」

折木「……!?」

える「でも、つける練習がまだなんです!」

折木「ばっ……自分の言っている意味が分かってるのか?」

える「そのつもりです……」

折木「本気なのか?」

える「はい、折木さんさえよければ……」

折木「……分かった」

える(童貞はちょろいな……)

える「良かった。あの、折木さん、わたしがそっちに入っていいですか?」

折木「あ、ああ。今鍵をあける」

ガチャ

える「お、お邪魔します」

おしまい(笑)

-神山高校地学準備室-

奉太郎「…里志、男を見せろ…むにゃむにゃ…」

里志「ほ、奉太郎?寝言かい?しかし、男を見せろって…どういう夢を見てるんだろう」

奉太郎「俺は…変態…」

里志「奉太郎は変態で僕の夢を見てるってことか?もしかして、奉太郎にはそっちの趣味が…」

里志「しかしよく見ると奉太郎って可愛いな…」

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