入須「すまない、失礼する」(93)
初めてで慣れない部分ありますが、よろしくお願いします。
>>1
代行ありがとうございました。
次から投稿します。
古典部部室
奉太郎(千反田は家の用事、里志は手芸部、伊原は漫研)
奉太郎(校舎内に於いて奇跡とも言える空間を確保できたと思ったんだが…)
奉太郎「…何の用ですか、先輩」
入須「用事がなくては来てはいけないのかな?」
奉太郎「…いえ、そう言ったルールはありませんが…」
入須「…悪かった。勿論、言いたい事は分かっているよ」
奉太郎「そうですか」
入須「そうだ」
奉太郎「………」
入須「………」ガタッ
奉太郎(しれっと座ったな、この人)
入須「……」
奉太郎「………」
入須「…昼間、屋上に登っていたな」
奉太郎「昼食が購買のパンだったんですよ」
入須「そうか、今日は暑かったが」
奉太郎「日陰で」
入須「…そうか」
見てる
奉太郎「………」
入須「……ふぅ。君と懐の探り合いをするのも楽しいんだが、時間を無駄にするのも惜しい」
奉太郎「そうですか」
入須「…案外根に持つタイプかな?」
奉太郎「いえ、そんなことは」
入須「だろう? 省エネ主義者はそんなにもエネルギーを消費する事はしないはずだ」
奉太郎「…主義主張を先輩の前で口にした覚えはないんですが」
入須「聞いたんだ」
奉太郎「誰に…は、もういいです」
入須「あっさりとした引き際も、君らしさかな」
奉太郎「……ここは古典部の部室ですが?」
入須「だろうな」
奉太郎「先輩の部活は知りませんが、少なくとも古典部では無い事は分かります」
入須「そうね」
奉太郎「…いや、やめましょう。確かに時間が惜しい」
入須「気づいてくれて助かるよ」
奉太郎「で、なんなんです?」
入須「不躾だな。確かに、最初に君が言った様に用事があったんだ」
奉太郎「千反田は今日は来ませんよ」
入須「彼女じゃない、君にだよ」
奉太郎「…俺にですか?」
入須「そうだ」
奉太郎「…この間の一件で役割は終わったと思っていましたが」
入須「役者の君ではなく、君自身に用がある」
奉太郎「…役者、ですか」
入須「語弊は無いわ。確かにこの間の時点で君は役者だった」
奉太郎「……それで」
入須「そうね、まずは話しを聞いて貰いましょう」
奉太郎「あまり聞きたくないんですが」
入須「先輩の頼みよ」
奉太郎「…こういう所でそう言うんですね」
入須「言うわ。言わないタイプに見える?」
奉太郎「どちらとも。そもそも俺は先輩にそこまで詳しくないですし」
入須「そうはなってくれないのか?」
奉太郎「…何故、そう聞くんですか?」
入須「……本題を話すとしよう」
奉太郎(なんなんだこの人は…)
入須「君は以前、私の考えを言い当てたことがあったな」
奉太郎「つい最近ですが」
入須「忘れもしない。誰に見られていた訳でも無いからな、羞恥も屈辱も無いが」
奉太郎「俺は先輩に見られてましたけど」
入須「…あるいは、君はそうかもしれないな」
奉太郎(…嫌いじゃない。だが、苦手だ)
入須「言い方が悪かったか?」
奉太郎「…いえ、気にしないで下さい」
入須「そうか。 …だが、私も一つ思った事はある」
奉太郎「…はぁ」
入須「……後悔だ」
奉太郎「…あなたが?」
入須「意外そうな顔だな?」
奉太郎「それは、そうでしょう?」
入須「…私は結論の為に全ての過程を気にしないと」
奉太郎「そう肯定したじゃないですか」
入須「いいえ、否定をしていないだけよ」
奉太郎「…同義じゃないんですか」
入須「それは捉え方次第よ。少なくとも、確固たる結論ではない」
奉太郎「……それで、その内容はなんなんです?」
入須「君に悪い事をした、謝りたい…とは思っていない」
奉太郎「そうでしょうね」
入須「それでも、この関係で終わらせるのは惜しいと思ったんだ」
奉太郎「…先刻言ってましたよね? 役者は終わったと」
入須「あぁ、一つ聞いてくれ」
奉太郎「はい」
入須「私には…好きな人がいるんだ」
奉太郎「…はぁ」
入須「随分気のない返事だな」
奉太郎「基本的に聞く事も話す事も無い内容だったもので」
入須「ふふっ、そうかそうか」
奉太郎「そう言った事なら千反田辺りに話した方が…」
入須「君に話したいんだ」
奉太郎「…門外漢にも程がありますけど」
入須「感情に疎いが論理に秀でる者、今回の場合はこちらが当て嵌まる」
奉太郎「……その手は通用しませんよ」
入須「そうだろうね。だが、私だって常にそうあるわけじゃない」
奉太郎「…次にいきましょう」
入須「懸命だ。君も知っての通り私はこの性格だが、通用しない事は勿論ある」
奉太郎「少なそうですがね」
入須「そうでもないさ。ただの小娘の言う事だ」
奉太郎「そうは思いませんけど」
入須「…それは、褒めてくれているのかな?」
奉太郎「…捉え方、ではないですね。実際に俺は先輩に一度尽くした事がありますし」
入須「ふふっ、認めてくれてはいるようだ」
奉太郎「…それは、まぁ」
入須「…例えば、この手法が通用しない相手に対して君ならどう思う?」
奉太郎「……そうですね、すぐに出る結論ではないですが…」
入須「焦らなくていい」
奉太郎「………」
入須「………」
奉太郎「……避ける、若しくは、興味を持つ、か」
入須「随分結論めいた言い方だな」
奉太郎「もし俺だったら避けますよ。今まで思い通りに進んでいた所に、急にイレギュラーの発生です」
入須「では後者は?」
奉太郎「それが、先輩の結論だからです」
入須「…ふふっ、先に答えを言ってしまっていたか」
奉太郎「興味を持った末、ですか?」
入須「そう、憧れになった」
奉太郎「…それで、俺に何を」
入須「好きな人、と言ったと思うが」
奉太郎「はい」
入須「この言い方が孕んでいる事、分かるか?」
奉太郎「………?」
入須「ふふっ、疑問符が目に見えるようだ」
奉太郎「…全てが分かるわけではありませんので」
入須「機嫌を直せ。 …片想いなんだ、私の」
奉太郎「…なるほど」
入須「…では、この問題を解決する為にはどうすればいい?」
奉太郎「! 俺にその結論を出せと!?」
入須「そうよ、私の考えをよく理解している君に相談したい」
奉太郎「出来ませんよ! 最初に言った通り俺は先輩に詳しくないですから! パーソナルなデータも足りませんし…」
入須「詳しくなってはくれないのか?」
奉太郎「だから、何故そう聞くんですか…」
入須「問題解決の為だ」
奉太郎「…あまり納得が」
入須「先輩の頼みよ」
奉太郎「……分かりました。少し考えますよ」
入須「相手の事は、あまり話したくない」
奉太郎「なら、先輩に詳しくなりましょうか?」
入須「いいよ。 …スリーサイズは必要か?」
奉太郎「いりませんっ!」
入須「先輩の頼みよ」
奉太郎「……分かりました。少し考えますよ」
入須「相手の事は、あまり話したくない」
奉太郎「なら、先輩に詳しくなりましょうか?」
入須「いいよ。 …スリーサイズは必要か?」
奉太郎「いりませんっ!」
・10分後
奉太郎(血液型、誕生日、趣味、特技、長所、短所、好きな物、嫌いな物)
奉太郎(色々聞かされたが…)
入須「スリーサイズは?」
奉太郎「だからいりませんっ!」
奉太郎(何故それを聞かせたがるんだ…)
・また10分後
奉太郎(考えても、結論が出ないな…)
奉太郎(そもそも先輩やその相手じゃなくて、俺自身に一番の問題があるように思えるぞ…)
入須「ふむ…時に、君に好きな子はいないのか?」
奉太郎「……いませんよ」
入須「そうか……では君に、そう言った者が現れると思うか?」
奉太郎「そりゃ…その内、あるんじゃないですかね?」
入須「それは、いつ位に?」
奉太郎「分かりませんよ。それこそ、先輩の様に自分のやり方が通用しない相手が現れたら、憧れてしまうかもしれませんね」
入須「…逆に、通用する…した相手だと、どうだ?」
奉太郎「…どういう意図ですか?」
入須「何、ただの雑談だよ。考えも纏まっていないんだろう?」
奉太郎「……それはそれで、互いに興味が持てれば十分じゃないですか」
入須「…そうだな、それは重要だ」
奉太郎「…! 出そうですね、結論」
入須「……?」
奉太郎「考える考えない、通用するしない。そうではなくて、興味を持つ」
入須「ふむ」
奉太郎「互いに興味を持ち合う事で対等になり、想い合う事が出来る」
入須「では、その互いにする為には」
奉太郎「先輩のやり方に於いて、ですが…」
入須「続けて」
奉太郎「利害を捨て、尚且つ全てを曝け出す」
入須「…どういう事だ?」
奉太郎「色々考えましたが、俺はそもそも恋愛経験がありません」
入須「そう聞いたな」
奉太郎「ですが結局の所、そういった駆け引きの通用しない相手と言う部分が今回の場合重要じゃないですか?」
入須「…駆け引きの通用しない相手には、正面からぶつかれと」
奉太郎「成功の保証はありません。ですが、少なくとも無意味な駆け引きは時間の無駄になるんじゃないですか?」
入須「…保証は無し、か」
奉太郎「俺の中に成功例がありませんから」
入須「ふむ…」
奉太郎「この問題には俺たちでは結論は出せません。最終的な部分に感情が入ってしまう」
入須「…そうだな」
奉太郎「ですが、より良い方法を考える事は出来そうです。こう言った結論は、どうでしょう?」
入須「ふふっ、それは結論ではなく過程を導いただけだ。だが、納得はできたよ」
奉太郎「…そうですか」
入須「…やはり、君は特別だな」
奉太郎「またですか? もう効かないですよ、それは」
入須「本心よ。君に、嘘はもう言えないだろ?」
奉太郎「…ありがとう、ございます」
入須「…この後、空いてるか?」
奉太郎「部室で静かに本を読む時間も無くなりましたし、空いてますよ」
入須「イヤミだな。それでは、お茶に行こうか」
奉太郎「……できれば、帰りたいんですが」
入須「お茶に行こうか」
奉太郎「……あの店は避けたいのですが」
入須「私との思い出の場所だろう? ふふっ、ではご希望通り、今回は別の店にしようか」
・喫茶“四五六”
奉太郎(別の店って言っても、雰囲気は何も変わってない!)
入須「ここの抹茶も美味いんだ」
店員「いらっしゃいませ。ご注文は如何致しましょうか?」
奉太郎「…雲南茶をひと
入須「抹茶が美味いんだ」
奉太郎「…抹茶をください。一つ」
入須「二つだ。お揃いの器でな」
店員「畏まりました。少々お待ち下さい」
入須「…待っている間、想像するんだ。どのような茶を使い、どのように点てられ、どのような器で、どのような味で」
奉太郎「馳せ過ぎると、差異があった場合はガッカリするんじゃないですか?」
入須「それも含めて楽しむんだ」
奉太郎「…そうですか」
入須「ところで、君は私に何も教えてくれないのか?」
奉太郎「……教えるって、何を…?」
入須「血液型、誕生日、私は色々教えたよ。スリーサイズも」
奉太郎「最後のは違いますっ!」
入須「知りたいんだ。教えてくれないか?」
奉太郎「…はぁ。まぁ、いいですけど…」
入須「そうか。では、聞かせてくれ」
奉太郎(能力の無い人間に興味は無いんじゃなかったのか…?)
・5分後
店員「では、ごゆっくり」
入須「………」
奉太郎「………」ズズーッ
入須「…音はたてない」
奉太郎「…はぁ」
入須「見た目通り、ずぼらだね、君は」
奉太郎「すいませんね。ごく一般的な出自ですので」
入須「イヤミも言われなれたよ。君は仲の良い友人にもそう言った話し方なのか?」
奉太郎「…まぁ、たまに。冗談めいて言う事はありますが」
入須「なら、明日からは私だけにしておくんだ」
奉太郎「…どういう事です?」
入須「二人だけのやり取りにしたいんだ」
奉太郎「………? これを、ですか?」
入須「あぁ。君も言うし、私も言う。互いに対等な関係だよ」
奉太郎「…はぁ」
奉太郎(何を言ってるんだ? この人は?)
入須「…昼食は、いつもどうしてる?」
奉太郎「…弁当なら教室で食べてますけど」
入須「私は中庭だ」
奉太郎「……はぁ、そうですか」
入須「…明日は待っているから、来るのよ」
奉太郎「……え?」
入須「来れない場合は事前に連絡を。携帯は?」
奉太郎「あ、いや、持ってないんですが」
入須「では2-Fまで口頭で」
奉太郎「…あのー、今断っても
入須「明日は待っているから」
奉太郎「………」
奉太郎(なんなんだ、この人は…)
いいね
・20分後
店員「ありがとうございましたー!」
入須「今日はありがとう。助かったよ」
奉太郎「…いえ、別に」
入須「……利害を捨て、曝け出す。そうだったな?」
奉太郎「…そう、言いましたね」
入須「ふふっ、結論からして、イヤミだな」
奉太郎「…そうですね」
入須「……君は、私の物になれ」
奉太郎「……え?」
入須「いや…違うな。互いに対等に…」
奉太郎「………」
入須「君は、私の隣を歩くんだ。明日から」
奉太郎「……あの、よく意味が」
入須「…ずぼらで鈍感では、良い所が無いよ」
奉太郎「……上手く整理できません」
入須「なら、明日まで良く考えることだ。 …またな」
奉太郎「………」
奉太郎(………何を、言われたんだ?)
あ・た・し♪さんがログインしました
名前を入れて下さいさんがログインしました
名前を入れて下さい:こんにちは
あ・た・し♪:やほー♪
あ・た・し♪:うまくいったみたいね
名前を入れて下さい:先輩のおかげです
名前を入れて下さい:ただ彼には
名前を入れて下さい:上手く伝わったかどうか
あ・た・し♪:二人きりではっきりした言葉を伝えたなら
あ・た・し♪:あのバカでも気づくでしょ
名前を入れて下さい:私は彼に嫌われています
名前を入れて下さい:言葉を伝えて逃げ帰ってしまいました
名前を入れて下さい:不安です
名前を入れて下さい:私の考えを気にも留めない人は何人かいましたが
名前を入れて下さい:私の考えを解いた
名前を入れて下さい:理解してくれた人は、初めてなんです
あ・た・し♪:じゃあ、ひとつイイ事教えようか?
名前を入れて下さい:なんですか?
あ・た・し♪:あした弁当いらないってさ
おまけ
入須「来たか」
奉太郎「まぁ、言われましたので」
入須「そうか……嬉しいな」
奉太郎「! ……そういう顔も、できるんですね」
入須「? どういう顔だ?」
奉太郎「……いえ、なんでもありません」
入須「…? そうか」
奉太郎(可愛いじゃないか、ちくしょう)
おわり
最後の行が見えない
以上です。ありがとうございました。
入須先輩のssが少なかったので自家発電させて貰いました。
原作はだいぶ前に読んだきりなのでおかしい部分があるかもしれませんが
無視していただけると嬉しいです。
支援してくださった方、ありがとうございました。
>>76
できれば見てくれると
入須「手品は好きか?」
奉太郎「…どちらとも」
入須「そうか」
奉太郎「…好きなんですか?」
入須「意外か?」
奉太郎「そうですね、イメージには」
1レスで終わらないのがこの二人
入須「…正直だな」
奉太郎「……指を見ててください」
入須「…なんだ?」
奉太郎(大変古典的だが…)スッ
入須「指が動いた!」
奉太郎「うっ……先輩、近いです」
入須「すごいな!」キラキラ
奉太郎(……恥ずかしいな、これは)
入須「君を動かす事はできるんだ」
奉太郎「もう、嘘は聞きたくないんですが」
入須「言わないよ。 …それに、言ったとしても、君は気づいてしまうだろう?」
奉太郎「…あまり自信はありませんが」
入須「能力の有る人間は」
奉太郎「それもいいです」
入須「君の心は、どうやれば手に入るんだろうな?」
奉太郎「……は?」
入須「渡せ」
奉太郎「いや…無理ですよ」
入須「何故だ?」
奉太郎「…それより、対等になるんじゃなかったんですか?」
入須「! …そう、だったな」シュン
奉太郎(……駄目だ。可愛いと思ってしまう…)
入須「なら、どうすればいい」
奉太郎「自分で考えてください。女帝さん」
入須「イヤミを言うな」
奉太郎「……いや、それも先輩が…」
入須「……うるさいな、君も」プクー
奉太郎「…だいぶ参ってますよ、俺も」ボソッ
入須「…なんだ?」
奉太郎「なんでもありませんっ!」
ありがとうございました。
入須先輩が増える事を祈って…
それでは、おやすみなさい。
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