男「オレもしかしてハゲてる!?」 (55)




男「……やっぱりハゲてるよな」

母「あらまあ、お父さんに似ちゃったのかしらね。
  いい感じにMってるわね」

男「オレまだ二十歳にすらなってないのに……」

母「ていうか大学デビューするからって、髪切るついでに染めるとか言ってたけどやめたほうがいいんじゃない?」

男「そ、そうかな?  やっぱり髪によくないかな?」




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1387286641




母「髪にっていうか頭皮によくないと思う」

男「でもオレも春から大学生だぜ。それなのに黒髪なんて……」」

母「その黒髪がなくなろうとしてるときになに言ってんだか」

男「母さんなんとかしてくれよ!」

母「アンタの春からの大学費用とか一人暮らし代とかでお金無いから無理よ」

男「そ、そんな……」

母「頭皮のことだけに現実『逃避』しちゃだめよ……ぷぷっ」

男「……」






母「だいたいこれだけ便利な世の中なのに、ハゲ散らかしたおっさんがいっぱいることからもわかるでしょ?」

男「な、なにがだよ」

母「ハゲはどうしようもないってことよ」

男「そ、そんなことないだろ。育毛剤とかあるじゃん!」

母「無駄無駄。育毛剤がほんとに効くならハゲはこの世から消えるよ」

男「ぐぬぬ……」

母「ハゲっていうのは神様が決めたことなのよ、髪だけに……なあんちって」

男「……」







母「まあそんな顔しなさんな。
  薬局で五百円ぐらいの育毛効果のあるやつ買ってくるからさ」

男「マジ頼むぜ母さん」

母「最悪かつらなり帽子なりかぶればいいじゃん」

男「そんな簡単なことじゃないだろ!  くそっ! 他人事だと思って!」

母「あんまりヒステリックにならないほうがいいよ、ストレスで髪って抜けるらしいからね」

男「うぅ……嗚呼、神よなぜオレの髪にこのような仕打ちを!」





男(オレはもうすぐ大学生になるどこにでもいる普通のやつだ)

母「いや、でも18でハゲのやつはさすがにどこにでもはいないでしょ」

男「うるせーよ!  ていうか料理全般が黒いぞ!」

母「いや、だってねえ……とりあえずわかめ汁に、ひじきの和物。ひじきの煮物。
  ひじきとわかめのイタリアンドレッシングがけサラダとか、なんか髪によさげなものチョイスしたらこうなっちゃったんだもん」

男「……あのね、お母さん」

母「なんだよ若ハゲ」

男「……」ムスッ

母「おこんなよハゲんぞwwww」







男「あのなあ、髪にいい食べ物っていうのはタンパク質を作る卵とか、ビタミンが豊富にとれるサケとか。
  あと亜鉛が摂取できる納豆とかがいいらしいんだよ」

母「ふーん」

男「ふーんじゃねえよ」

母「わかめとかひじきじゃダメってこと?」

男「それはよくわからん。でも今日の夜ご飯にはそれらのもんがあんまりないだろ」

母「うるせーなあ。そこまで言うなら自分で作れよ」

男「ええーそれは……」

母「ちょうどいい機会じゃん。
  どうせこれから一人暮らし始めたら自炊しなきゃならないんだしやれよ」







男(そんなわけで色々と髪について調べたり、大学や一人暮らしの準備をしていたらあっという間に大学生になった)


男’(家は住所こそ東京だが歩いて隣の神奈川に行けてしまう場所で、しかもいわくつき)


男(母と東京で不動産屋をめぐって見つけた物件なのだが……)







母『いや、ほんとに安かったらどこでもいいんですけど、どうですかね?』

『ないこともないですけど……』

母『セパレートとか贅沢なこと言わないんで。駅から遠くてもいいですし、日当たりとか絶対に気にしません。
  ボロ小屋みたいなとこでいいんで、安いところおねがいしますよ』

男『か、母さん……』

『ええっと、そこまでおっしゃられるなら……いわくつき物件とかでも大丈夫ですか?』

男『ええー、ちょっとそれは……』

母『ああ、もう全然オッケーですよ! 住めば都、屋根さえあれば最悪いいんで』

男『……マジかよ』





男(そんなわけで、具体的にどんないわくつきなのかも知らないまま、そのアパートを借りることになった)



男「見た目はいたって普通だしなあ。キッチンもしっかりしてるから料理もなんとかできるかな」


男(オレが自分のハゲに気づいてから一ヶ月半)


男(オレはとにかくハゲ防止のためにいろいろなことを調べて色々なことをやってきた)


男(食事、睡眠、湯シャン。頭皮マッサージ。しかしどれをやっても髪の毛は増えなかった)



男(それどころかオレのハゲはさらに進行した)



男(前髪前線はおでこの凄まじい侵攻に消耗し、後退していく一方でどんどんやられ朽ち果てていった)



男(そして抜けていく髪のような憂鬱を引っさげて、ぬけるような青い空のもとオレの大学生活が始まった)


男(とりあえず初日は帽子をかぶって大学へ行った)





女「ガイダンス長くてダルイよね」

男「そうだね」

女「ていうかその帽子、家政婦のミタさんみたいだね」

男「そ、そうかな?」

女「うん。なんか帽子をかぶりなれてないように見えるなあ」

男(さすが女はこういうことに鋭い)

男「大学デビューで帽子かぶろうと思ってさ」

女「なにそれ。だったら髪染めたりパーマかけたりすればいいじゃん」

男「あははは、そうだね」





男(緊張して頭皮が汗をかいているのがわかった)

男(たぶん今帽子を取ったら、ハゲ散らかしてるだろう)

男「……はあ」

女「この大学って体育必修なんだってね。ダルイよねー」

男「え……マジ?」

女「うん。あはは、もしかして運動苦手?  顔色超悪くなったよ、うける」

男「いや、体育は苦手じゃないけど」

男(嘘だろ。どうすんだよ、サッカーとかバスケとかやったらオレの髪は一瞬で……)

男(いや、諦めるな。オレはまだ若い。がんばればきっと……)





男(オレの育毛ライフが始まった)



男(自分がハゲだと自覚してからというものの、色々とハゲのつらさがわかったことがある)

男(まずその1)

男(常に人の視線が気になる)

男(オレはM字ハゲだがまだなんとか隠そうと思えば隠せるのだ。しかし、一歩間違えればハゲであることがバレる)

男(そのため絶えず人の視線をきにしなければならなくて、外にいると落ち着かない)

男(その2。スマホとか手鏡とか、とにかく自分の髪型をチェックできるものが手放せない)





男(そう、ちょっと歩いただけでも髪型というのは変わるものだ)

男(そしてその度、髪型をチェックしなければハゲを隠し通すことはできない)

男(しかしだ。かならずしも髪型のチェックができるとはかぎらない)

男(だから、インカメや鏡の代わりになるものは必須だ)

男(その3。風が吹くと死にたくなる)

男(昔だったら風が吹いていたらきもちいい、ぐらいにしか思わなかったのに今じゃその風はオレに憂鬱を運ぶだけ)

男(髪が風でなびいたら急いで髪チェックだ)

男(髪は女の命とか言うが、髪がないのは男にとっても余裕で致命傷だ……)


男(そのほかにも心から遊びを楽しむとか、自分の家だと鏡を見るのがいやになるとかあるが、こんなもん挙げていけばキリがないので割愛)

男(とにかく今は前向きにがんばるしかない)


今日はここまで

このssはハゲと向き合うスレです

今日もハゲと向き合うためにさいかい



男(とりあえずまずは湯シャンだな)

男(湯シャンとは、シャンプーやコンディショナーを使わず髪を洗うことである)

男(しかしこれをやると問題があるのだ)

男「髪がべっとりしてボリュームがでない……」

男「髪が余計に少なく見えるぞ……」

男(シャンプーなどに頼らないことで抜け毛を防ぐことができ、さらに髪質まで変えられるらしいが……)

男「これじゃあハゲであることがバレてしまう……」





大学


男「と、とりあえず帽子をかぶってりゃ大丈夫だな」

男(帽子は直射日光を避け、髪を守る効果がある)

男「さらに人の視線も帽子が妨げてくれるからな、帽子バンザイだぜ」

女「なにブツブツ言ってんの?」

男「う、うわあああぁ!?」

女「いや驚きすぎでしょ。まるで朝起きたら髪の毛全部抜けてたみたいなリアクションだね」

男「え!?」ドックンドックン

女「なんか私まずいこと言った感じ?」

男「な、なんにもだよ!」








女「……」

男「……な、なんだよ。ジロジロ見んなし!」

女「もしかして髪の毛さ……」

男「……っ!」

男(まさかこれだけのリアクションでバレたのか!?)

女「帽子で髪の毛ぺたーとなってるの気にしてんでしょ!」

男「へ?」

女「私の友達でもそういう人いたからねー」

男「そ、そうか……」





男(この女……びびらせやがって)

女「ちょっと見せて」

男「……え?」

女「だから帽子をとってって言ってるの」

男「な、なんでだよ」

女「いや、思い返して見るとまだ一回どんな髪型してるか見たことないなと思って」

男(や、やばい……頭皮がこの状況に焦って汗をかいてる!)

男(ああ……残り少ない髪の毛たちが、帽子という名の檻の中で熱にちぢれていく!)

女「はやくとりなよ。バカにしないからさ」

男(ど、どうする……!?)







男(ここで拒絶するのはむしろ危険か……ああ、やばい……こうしている間にも髪の毛たちが……)

女「あーもうめんどくさいなあ! それっ!」



帽子「ふぁさー」



男「あっ……」

男(帽子がとられてしまった…

男(帽子から解放された髪の毛が風にさらされていく……とられた帽子に引きずられるようにオレの髪は……)

女「……」

男「……」






男「……」

女「……」

男「帽子返せよ」

女「…………あ、ご、ごめん」

男「……いや、頭下げなくていいから帽子を返せよ」

男(女の目はまるで自分の父親と母親がエッチしてる場面を初めて目撃した幼児のようだった)

友「あれなにやってんのお前ら?」

女友「あ、男が帽子かぶってないとか珍し……え?」

男「……」





男(オレのむき出しになったおでこにささる視線は、まるで質量があるかのようだった)

女友「え、えっと……」

女「あっ! ぼ、帽子かえすね!」

友「ちょっとまった」

男「……どうした?」

友「いやどうしたじゃねーよ」

男「……なにが?」

友「お前頭キてね?」





友「えちょやばっwwww若ハゲってやついわゆるwwwww」

男「……」

友「これあれだよねwwwwwハゲだよねいわゆるwwwww」

女友「ちょ……ちょっとやめなよそういうの」

女「そ、そうだよ! ごめんね男くん! ぼ、帽子をいつもかぶってたのはそういうことだったんだよね?」

男「ぁ……」

友「ちょwwwwガチへこみしてんじゃんwwwww」

男「あ、あはは……お前ら友みたいに笑えよ、女とかもさ」

友「そうだってwwwwwこれあれじゃん気まずい空気じゃんwwwwいわゆるwwww」







男「あーごめんオレ帰るわ……」

女「あ、うん……」

女友「あ、あたしら全然そーゆうの気にしてないから、あはは……」

男「お、オレ大丈夫だから……」

友「ちょっと待てよ。さすがにごめん、調子に乗ってたわ」

男「いやいいんだよ。オレもハゲであること隠しててつらかったからさ、ばれてよかった」

友「まあじゃあとりあえずカラオケいかね? なんか気まずいし」

男「でも……」

友「カラ館かどっかなら安いだろうからオレ金出すよ、オレのおごりいわゆる!」

女「……じゃあいこっか」

男(死にたい)





カラオケ


友「いらないwwww髪をぉwwwwwすててしまおぉーwwwwwww」

男「……」

女「……」

女友「……」

友「ハゲてるモンスターwwwwwハゲてるモンスターwwwwこの広いおでこの上をwwwwww」

男「……トイレいってくるわ」

友「おけwwwww」






男「くそっ!くそっ!なんだよ!」

男「あいつオレよりブサメンなのに!」

男「髪型だけちょっとキマッてるからって調子こきやがって!」

男「……やめよう」

男「落ち着かないと……ストレスでさらにハゲちゃうからな」

男(帽子かぶってたら絶対あいつよりオレのほうが女受けいいのに……)

男(あの女二人たちも……)




男「戻るか……」

…………………………

男「オレもなにか歌うか……ん?」



友『ぶっちゃけお前らハゲってどーなのよ?』

女『正直ね、チビ[ピザ]ハゲの三代ダメ要素なんかで一番アウトなのがハゲだと思う』

女友『そーなんだよねー。ハゲってなんかいじれないしねー』

女『そうそう。ちっちゃいとか太ってるとかそういうのとはなんか次元ちがうじゃん、ハゲって』

友『たしかにwwwwww』

女『夏とか海とかプールとか誘えないよね』

女友『それは残酷だわー、必死にデコに髪の毛くっつけて生きてるヤツに海行けはないわー』

友『お前頭にわかめついてんじゃん……って髪の毛かーいwwwwww』

女『……ふふっ、あはははダメ面白いあはははははは』



男「……帰ろう」






……………………………………



男「……はあ」トボトボ

男(ハゲってつらいんだな……)

男(ちょっと前まではハゲてるオヤジとか見ると、よくこいつら頭皮さらして生きてるよなあとか思ってたけど)

男(ていうかぶっちゃけチンコだしてんのと変わんなくね、とか思ってたけどむしろ恥部をさらしてあんだけ堂々としてるんだ……)

男(オレなんて恥ずかしくて死にそうだ……)

大家「あ、これはどーも」

男「……ども」


男(うちのアパートは目の前に大家の家があるからよく大家と会う)








大家「珍しく帽子をかぶってないんですね」

男「……もういいんです」

大家「はあ……そうですか。ところで」

男「なんですか?」

大家「最近部屋で変なことありませんでした?」

男「……髪の毛」

大家「!」

男「髪の毛がよく抜けるんですよ……あはは」

大家「……そうですか」








大家「それ以外ではなにかありますか?」

男「ないです」

大家「そうですか。安心しました」

男「はあ!? オレの髪の毛がなくなろうとしてんのに安心しただと!?」

大家「あ、いや、そういうことではないですよ?」

男「ああもういいよ! あんたみたいなフサフサにはスカスカのオレの気持ちなんざわかんねーよ!」

大家「す、すみません」

男「けっ!」



………………………………



男「風呂入るか……」

男(だが風呂に入って頭を洗えば当然……)

男(だが頭皮の汚れは抜け毛に直結する!)

男「ここで引くわけにはいかないっ……」シャーシャカシャカ



髪1『ああーやめて私で抜かないで!』

髪54『あっ……そんなに爪を立てたら頭皮から……っ!』

髪178『抜けました』



男「ちくしょおおおおおおおおっ!」

男「なんでみんなそこで抜けるんだよおおおおおおおお!!!」

男「はぁはぁ……指に髪が絡みついてる……」




男「排水溝に流れる髪がこんなにも切ないなんて……」

男(んん!?)

男「排水溝に恐ろしいほど髪の毛が……」

男「オレの抜けた髪にしては多すぎるし……妙に長いな……」

男「……」

男「……」

男「はは……」

男「抜けた髪を頭皮にくっつけてなにやってんだオレは……」






……………………



男「……はあ」

男「……さっさとメシ食って寝よう」

男(明日起きたらまた髪の毛が減ってるのかな……)

男「……おやすみ」





…………………………



男(寝起きは憂鬱さが半端ない)

男(髪の毛が寝癖でぐしゃぐしゃになりおでこが見えてしまうからだ)

男(しかし髪を整えねば……まあ整えたとこでハゲなんだが…………あれ?)

男「こ、これは……!?」


男「か、髪の毛が増えてないか!?」





男(そう、オレの髪の毛は増えていた)

男「しかしいったいどうして増えたのか……検討もつかない」

男「……まてよ」

男(昨日オレは排水溝に絡みついていた髪の毛を頭皮にくっつけたりしたが……まさかそれか?)

男(いやいやそんなはずは……だがそれしか思い当たることがない……)

男「とりあえず風呂場見てみるか」









男「うわっ、なんだこれ」

男(オレは思わず声を出してしまった。なぜなら)

男「排水溝に髪の毛絡みすぎだろ……ていうかおおっ!」

男「こんなに髪の毛が……いや、でもこれもしかして頭皮にまたくっつくんじゃね?」

男「……」ソー……ピタッ

男「……あっ、くっついた……くっついたぞ!」

男「す、すごい! あれだけスカスカだった頭皮にこんなにぎっしりと髪の毛が!」

男「はは……夢みたいだ!」

男(よしあの糞ヤロウを見返してやる……っ!)






大学


男「やあおはよう」

友「ハゲ……じゃなかったwwwwおはよwwwwえっと……まあいいや」

友「ていうか帽子とれよwwwwwお前ハゲてんの知ってからさwwww」

男「……ハゲてる? 誰が?」

友「お前しかいねえよwwwww」

男「これを見てもそんなこと言えるか?」ファサー

友「……え? な、なんでそんなに髪の毛あんだよ……お前の頭皮に!」

男「……ふっ、あれは世を忍ぶ仮の姿だっただけさ」

友「はっ? いみわかんねーし」






男「ていうかお前ってさ」

友「なんだよ」

男「なんか髪型のせいでブサイクで売れない韓国人俳優みたいに見えるわ」

友「は?」

男「ちょwwwwおこんなよwwwww」

女「ああ、言われてみると」

女友「うん、なんか目の細さといいわかるわー」

男「ぶっっっさいくって言われないだけよかったなwwwwww」

友「……」

男「wwwwwwwwwwwwww」







男(それからオレは排水溝にたまった髪の毛をつけまくった)

男(髪の毛は面白いぐらい増えていった)

男(髪の毛のことを気にしなくなったオレは充実した大学生活を送ることができた)


男(なぜ頭皮に髪の毛がつくのか。どうして排水溝に髪の毛があるのか、とか深いことは考えないことにした)

男(まあいわくつき物件だからだろうが、むしろそれにはそこを進めてくれた不動産に感謝したい)



男「けどちょっとこの髪の毛長いし切るか……」

男(……というわけで美容院にきた)

美容師「じゃあ切りますね」

男「おねっしゃす」



美容師「お客さん髪の量多いなあ」

男「はは、ほんとボリューミーで困っちゃうんですよ」

美容師「いやあ羨ましいっすわー」

男「ははははははは」

美容師「とりあえず切ってきますねー」

男(美容師さんのもつハサミがオレの髪を切ろうとしたときだった)


美容師「……っ」




男「ん……?」

美容師「あ……あぁ…………」カタカタ

男「どうしました?」



美容師「ぁぁぁあ…………ああああああああああっ!!」


男「へ!?」

美容師「」ブクブク

男「あ、あぁ……美容師さん!?」

男(なんで泡吹いて倒れたんだこの人……)






男(そのあとオレは警察につれていかれ、事情聴取を受けた)

男(そしてその帰り。オレは大家さんのもとを訪ねた)

大家「はあ、それで話ってなんですか?」

男「あの……オレの部屋ってどうしていわくつきなんですか?」

大家「……それは」

男「おねがいします、おしえてください!」

大家「……なにかあったのですか?」

男「ええ、ちょっと……」

大家「……実はあの部屋は前の人が自殺してるんです」






男「自殺……?」

大家「はい。それでね奇妙なことに排水溝に髪の毛が現れるんですよ」

男「……」

大家「あっ……そういえば」

男「なんですか?」

大家「似ているなあと思ったんです。彼女の髪の毛に」

男「……」

大家「あなたの髪、彼女の髪質にそっくりだ」

男「……そうですか」





男「ちなみにその女性はどういう自殺を?」

大家「首吊りです」

男「まあ自殺ですからね。そんなとこですか」

大家「首吊り自殺ですが、これがちょっと変わった自殺でして……」

男「変わった自殺?」

大家「その女性はとても髪の毛が長くてお尻に届きそうなぐらいでした


大家「そして首吊りに使ったのは、その長い髪の毛です」

大家「自分の髪の毛で自らの首をしめたのです」

男「……」






男(大家さんの話を聞いたあと、オレはその日は寝ることにした)

男(あんなことがあったけど、あっさり眠れた)

男(ただ夢の中で髪の毛が首にまとわりつくような感覚に何度も襲われた)

男(そして次の日。目覚めたオレは首をなにかに締め付けられような感覚が気になって、洗面台へ行った)


男「……な、なんだこれ」


男「首に髪の毛が……巻きついている……!」




男「……な、なんだって言うんだ……!」

男(首にまとわりついた髪の毛をほどいていてふとオレは気づく)

男「なんでこんなに髪の毛伸びてんだ……?」

男「首にまとわりつくって……長くなりすぎだ」

男(まさか例の自殺した人の、のろい……!?)

男「だが……こんなもんハサミで切ってしまえば……!」

男「いや、でも……」

男(もしかしたらあの美容師のように髪の毛を切ろうとしたら……)




男「髪を切ったら危険かもしれない……」

男「だが切らなかったら髪に首をしめられて死ぬかもしれない……!」

男「……ど、どうすりゃいいんだよ!?」

男(オレはただ……ハゲてるのをどうにかしたかっただけなのに……!!)


男「そ、そうだ! 髪の毛……あの排水溝になにかヒントがあるかもしれない……風呂場の確認だ!」



男(オレは風呂場を見て……悲鳴をあげた)






男「あ、あああああああああ…………」

 
男(風呂場の予想外の光景に体は軟体動物のように力を失って、オレは床に座り込んでしまった。 )

 

 風呂場の床や壁は、夥しい量の髪の毛で埋め尽くされていた。


   

 おわり



おわりだ
実はこれ前にVIPでもちがう形で建てたんだよね
それを今回ssとして投下しました

見てくれた人はありがと

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom