小路綾「逆転」 (36)
綾「進路希望調査、もう出した?」
陽子「まだなんだよね」
陽子「綾、一緒に考えてよ」
綾「一人で考えなさいよ。もう二年生もだいぶ過ぎたんだから、そろそろ真剣に考えたほうがいいわよ」
陽子「うーむ」
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陽子「いや、実は心の中では決まってるんだよね」
綾「え? そうなの?」
陽子「笑わないで聞いてくれる?」
綾「え、ええ」
陽子「私、学校の先生になりたい」
綾「……」
綾「確か一年生の春もそんなこと言ってたわね」
陽子「そうそう、その時からちょっと考えてて……って、なんでそんなこと覚えてんの?
陽子「私そんなこと言ったの覚えてないんだけど」
綾「陽子との話なら、どんなに昔の事でも思い出せるわよ……」ボソッ
陽子「え? なにか言った?」
綾「な、なんでもないわ」///
陽子「私子供好きだからさ。小学校の先生とか向いてるのかなって思って」
綾「……」
綾(陽子が、学校の先生か――)
綾(そういえば、中学校に入ってすぐの時――)
~~~
陽子「綾!」
綾「よ、陽子」
陽子「掃除の登板表、全部綾が一人で作ったんだって!? すごいねー」
綾「あ、そ、そんなにすごく、ないわ」
陽子「よく頑張ったな! なでなでしてあげよう」ナデナデ
綾「……」///
~~~
綾(あの時の、陽子の手の感触――今でも思い出せるわ」
綾「小学校の先生、陽子に向いてると思うわ。幼稚園の先生でもいいかも」
陽子「そ、そうかな?」
綾「どの道、先生になるんだったら進路は大学ね」
陽子「そうなんだよなー。先生になるには頭よくないと」
陽子「でも私、やると決めたらやる性格だからね」
綾「あら。じゃあ陽子、来週のテストに向けて勉強はしっかりしてるのよね?」
陽子「……」
陽子「勉強教えてください!」
綾「そんなところだと思ってたけど」
今回はここまでになります
続きは今日20時ごろからになるかと
~陽子の家~
綾「……で、ここは神聖ローマ帝国の……」
陽子「ああ、なんかそんな人いた気がする」
綾「次は数学ね。どこが苦手なの?」
陽子「ベクトルがさっぱりです」
綾「そう。じゃあここから始めよっか――」
陽子「っはぁー。疲れたぁー」
綾「今日はいつもと違って、真剣な表情だったわね」
陽子「そう? まあ陽子ちゃん、マジモードだからね」
陽子「なんだか知らないけど、今すっごい燃えてるんだよね」
綾「目標を持つことは大事ね」
陽子「ホントにそうだな」
綾(この調子で勉強したら、もしかしたら学年上位も狙えるかも知れないわ――)
綾(私も追い抜かれちゃったりして――)
~翌日~
綾「おはよう、陽子」
陽子「……あ、綾、おはよう」
綾「今日は一緒に学校来なかったけど、朝早くから学校来てたの?」
陽子「うん。教室に来た方が家より集中できるからさ」
綾(陽子の手に、単語帳が……)
陽子「綾、古典で分からないところあるんだけど、教えてもらっていいかな?」
綾「ええ、いいわよ。どこ?」
陽子「ここなんだけどさ……」
綾「ああ、そこなら私、分かりやすい参考書持ってるわ。明日貸してあげるわ」
陽子「ああ。助かる」
~翌日~
陽子「綾。今日もうち来てもらっていい?」
綾「ええ、いいわよ」
陽子「ありがとう、実は数学のここがさ……」
綾「……」
綾(陽子の目、きらきらしてる)
陽子「……どうした? 顔に何かついてる?」
綾「……っ」///
陽子「な、なんだよ」
綾「よ、陽子って、そんなに一つの事に集中できたのね」
陽子「心外だな!」
~翌日~
陽子「ふぁ……あ。お、おはよう綾……」
綾「おはよう陽子」
陽子「ふぁ……ちくしょー」
綾「陽子、さっきからあくびばっかり。しっかり寝てるの?」
陽子「ああ、実はそんなに……」
綾「ダメよ。体は大事にしないと……」
陽子「うん、わかってる」
~テスト当日~
陽子「よーし、頑張るぞー」
綾「……」
綾(陽子のやる気が移って、私も気合入れて勉強しちゃった)
綾(もしかしたら、学年トップ10くらいには入るかも)
綾(入ったら、きっと陽子ほめてくれるんだろうな……)
綾「……」///
~放課後~
陽子「あんなにテスト用紙が埋まったのは高校入って初めてだよ!」
綾「よかったわね!」
陽子「ホントに、もっとほめてほめてー、っ、げほっ、げほっ」
綾「風邪引いたの?」
陽子「どうやら、そうらしい……」
綾「テストだから無理して学校来たんじゃないわよね」
陽子「大丈夫大丈夫。陽子ちゃん風邪で寝込んだことほんとにないから」
綾「確かに、ずっとそうだったって言ってたけど……」
綾「テストはまだあと三日あるんだから。あまり無理しちゃダメよ」
陽子「分かってるって」
~テスト二日目~
陽子「ごほっ、ごほっ」
綾(昨日より、せきが酷くなってるわ……)
~テスト三日目~
綾「おはよう、陽子」
陽子「……」zzz
綾「陽子?」
陽子「……? ああ、綾か……」
綾「相当体調悪そうよ?」
陽子「大丈夫大丈夫」
陽子「……チーン」
綾(ああ、陽子のことが気になって、テストに集中できない……)
~テスト最終日~
綾「今日で最後だからね。陽子、頑張るのよ」
陽子「ああ……」
綾「陽子……。無理そうなら保健室で休んでてもいいのよ」
陽子「いや……受けるよ」
綾「陽子……」
陽子(頭ががんがんする……のどが焼けるように痛い)
陽子(でも……受けなきゃ)
陽子「……」カリカリ
陽子(ほら、こんなに問題が解ける。頭は働く。あと三つだ、頑張れる)
……
キーンコーンカーンコーン
綾「陽子!」ダッ
陽子「うーん……」グッタリ
綾「陽子、大丈夫?」
陽子「はは、大丈夫じゃ、ないわ」
綾「おでこ出して……熱っ!」
綾「ものすごい熱じゃない! いつから熱あったのよ!?」
陽子「実は、二日目からずっと……」
綾「無理しちゃダメって言ったじゃない! もう……」
陽子「でも、テスト受け切ったよ」
陽子「全部、なかなかできたよ」
陽子「だからさ……ほめてよ」
綾「……」
綾(確かに、陽子はとても頑張ったわ……)
綾「……よし、よし」ナデナデ
陽子「……」
~~~
陽子「よく頑張ったな! なでなでしてあげよう」ナデナデ
綾「……」///
~~~
綾(はっ! これ、あの時の逆――)
綾「」ドキドキ
綾(って……なんで、私が緊張してるのよ!)
綾「ほら、保健室行くわよ。立って」
陽子「う、うん」フラッ
綾「ふらふらじゃない。一人で歩ける?」
陽子「ん……」ギュー
綾「っっ!」
陽子「ふらふらする……ごめん、肩貸してくれ」
綾「や、陽子、そんなにくっつかなくても……」///
陽子「ごめん……今日だけ、今日だけ甘えさせてくれ」
綾「あ、あの、その……」///
綾「うーん」バタッ
陽子「あ、綾の方が倒れちゃった」
~次の週~
陽子「……」フルフル
綾「どうしたのよ陽子、そんなに震えて」
陽子「……こんな成績取ったの、初めて」
綾「やったじゃない! これで一つ、夢に近づいたわね」
陽子「綾には及ばなかったけどな」
綾「ええ、まあ……」ドヤァ
綾(学年5位だったわ……)
陽子「ちょっとは謙遜しろよ」
綾「でも陽子、それだけ点数が取れたのは、陽子がすごく努力したからよ! 誇りにしていいわよ」
陽子「いいや、それだけじゃない」
綾「え?」
陽子「いろいろ教えてくれた、綾のおかげだよ」
陽子「テストを休まなかったのは、綾に教えてもらったのがもったいないと思ったからなんだ」
綾「え? あ……」///
陽子「これからも、よろしくな」ニコッ
綾「わ、わかったわよ」///
おわり
ありがとうございました
2ch規制辛い
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