綾「コーヒーは、いらない」 (84)

1、綾「チョコレートソースのフルーツパフェ」


~綾の家~

綾(うーん、こっちの方がいいかなあ)

綾(ドキドキが止まらない……今から)

綾(陽子……陽子と……まだ、ちょっと信じられないわ)

~昨日~

綾「陽子、その」

陽子「なにさ、放課後教室に残ってほしいなんて」

陽子「委員会の仕事かなにか?」

綾「ち、違うの、その……」

綾「私、よよ陽子のことが……好きなの」

陽子「……友達として、じゃないよね、もっと深い意味で?」

綾「……」コク

陽子「……」

ギュッ

綾「ち、ちょっと陽子、なにしてるの」///

陽子「……綾、やっと言えたな」

綾「え?」

陽子「ずっと待ってたんだよ? 綾が私に告白してくれるのを」

綾「じゃあ、もしかして……私の気持ち、知ってた、の?」

陽子「まあ、そりゃあ分かるわな。素知らぬふりをしてたけど」

陽子「私もこれで遠慮しないで、綾とくっつけるんだ、嬉しいよ」

綾「よ、陽子……」///

陽子「あはは、もうそんな恥ずかしがらなくていいじゃん」

陽子「話はそれだけ?」

綾「え、あの、うん」

陽子「じゃあさ、明日学校休みだし、二人で遊びに行こうよ」

綾「え、それってつまり――」

陽子「デートだな」

綾「……」///

陽子「どこ行こうか?」

綾「……そ、そうね、甘いものが食べたいわ」

陽子「甘いもの……じゃあ新しく駅前にできた店に行ってみようよ」

綾「え、ええ」

陽子「うん、じゃね!」ニコッ

綾「あ、あの、陽子……」

スタスタ……

綾「行っちゃった」

~~~~~~


ガサガサ

綾(……よし、この服で行こう)

綾(しっかりキメて行かなきゃね……だって、今日は陽子との)

綾(陽子との……初デートだもん、ね)

~広場~

綾(やっぱり、まだ陽子は来てないか)

綾(それはそうよね……だって陽子だもの、遅刻ぐらいでいちいち驚いてちゃいけないわ)

綾「……」

綾(結局、答えは聞けてない)

綾(陽子は私のこと、どう思ってるのか)

綾(……好き、でいてくれてるのかな……)///

陽子「綾、やっほー」

綾「やっほーじゃないわよ、全く……30分遅れです」

陽子「ごめんごめん」

綾「フン!」

陽子「許しておくれよ……言い訳をさせてもらうと」

陽子「その……きょ、今日は着てくる服に迷ったんだよ」

綾「そういえば……」

綾(陽子、今日の服はいつものシャツにホットパンツじゃないわ)

綾(スカート、結構似合うじゃない……)

綾「……」///

陽子「その、感想が欲しいのですが」

綾「なによ! み、見とれちゃいけないっていうの!? そんな、酷いわ」

陽子「……なんか、ありがと」

綾「い、行くわよ!」

陽子「うん」

テクテク

陽子「……綾も、似合ってんじゃん」

綾「……」///

陽子「手、繋ご?」

綾「わ、分かったわよ」スッ

ギュッ

綾「いきなり恋人繋ぎ!?」

陽子「まあそりゃあ、恋人だしいいんじゃないかな」

綾「すっとぼけないでよ! こんなのは、恥ずかしい……」

陽子「……」

綾「……」

陽子「でも、嫌じゃない、だろ?」

綾「……うん」

陽子「ここだな……なんかすっごい甘そう」

綾「素敵ね」

陽子「胸やけしそうだなぁ」

綾「陽子って、甘いもの苦手?」

陽子「え? まあ、普通だと思うよ」

陽子「甘過ぎるのはちょっときついけど」

綾「そう……とにかく、入りましょ」

店員「お待たせしましたー」コトッ

綾「わぁ、すごいわよ」

陽子「チョコレートソースのフルーツパフェ……か」

綾「頂きます」ニコニコ

陽子「い、頂きます」

綾「ん、おいしい! とっても甘くて――」

陽子「うん、甘いな。すごく甘い」

綾「幸せな気持ちになるわ」

陽子「きりきりの胃袋になりそうだけどな」

綾「なによ……いらないなら私が食べるわよ」

陽子「間接キスになるよ?」

綾「フン! 残しても絶対食べてあげないんだからね!」

陽子「忙しいね」

陽子「でも私たち恋人なんだから、ゆくゆくはキスぐらい普通にするんじゃない?」

綾「……それは、そうかも」

陽子「このくらいで照れてちゃだめだぞー?」

綾「もう、なによ! さっきからかってばっかり!」

陽子「あはは、ごめんごめん」

陽子「でもさ、わたわたしてる綾って結構可愛いんだよね」

綾「か、可愛い」

陽子「うん、可愛い」

綾「……!」プイッ

陽子「あはは」

陽子「ねえ、食べさせあいっこしようよ」

綾「つ、つつきあってあげても、いいわよ」///

陽子「いちいちそういう反応するの、疲れない?」

綾「なによ、さっさと、食べさせなさいよ」

陽子「はいじゃあこのミカン、あーん」

綾「あーん……」

……

陽子「ごちそうさま」

綾「食べるのは早いのね」パクパク

陽子「……」

綾「なによ、人がもの食べてるのをじっと見ないでよ」

陽子「いやさ、いざ食べ終わってみると、くどいほど甘いのが恋しくなってきちゃって」

綾「って、言ってる間に私ももう食べ終わっちゃったけどね」

陽子「それは残念……でも」

グイッ

綾「な、なによ……顔、近いわよ」

陽子「綾……キスしよう」

綾「え!? そ、それはまだ早いっていうか、人の見てる中でするものじゃないっていうか……」

陽子「……ああ、もう」

チュッ

綾「……!」

陽子「うん、甘いね」

綾「な、ななな……」

陽子「綾、キスは初めて?」

綾「は、初めて……よ」

陽子「私も」

陽子「よかった」

綾「」クラクラ

陽子「綾ー?」

~帰り道~

陽子「そんなに怒らなくてもいいでしょー」

綾「ふん! 陽子、なにも分かってないんだから!」

綾「そ、そういうのはしっかり心の準備をしてからじゃないと……」

陽子「まあ確かにな。急すぎた」

テクテク

綾(きれいな、夕日――)

陽子「じゃあもう一回、しよっか」

綾「どうしてそうなるのよ!」

陽子「今度は綾からどうぞ」ンー

綾(目を閉じないでよ――)

綾「……」///

チュッ

陽子「……」

綾「したわよ、ほら」

陽子「うん、したね」

陽子「綾の唇、柔らかい」

綾「せ、説明しないでよ!」///

陽子「綺麗だよ……綾」

綾「ねえ、陽子……」

陽子「なに?」

綾「私のこと、好き?」

陽子「……言わなくても、分かるじゃん?」

綾「言って」

陽子「仕方ないなあ……」

陽子「私、綾のことが好き。綾が思ってるよりも多分ずっと」

綾「……うん」


1、綾「チョコレートソースのフルーツパフェ」おわり

2、綾「クリームチーズ・ティラミス」


陽子「おじゃましまーす」

綾「いらっしゃい……」

綾「今うちには誰もいないから、リビングでくつろいでていいわよ」

陽子「そうさせてもらうかな」

TV「―――――」

陽子「あっははははは! 最高!」

綾「女の子らしくないわよその笑い方」

陽子「えー? まあいいじゃん」

綾「もう……」

陽子「こんなところ、綾にしか見せられないしね」

綾「ものは言いよう、ね。見る方はたまったもんじゃないわよ」

陽子「綾、さっきから台所でなにしてるの?」

綾「ん、お菓子、作ってるの」

陽子「私のために?」

綾「……そ、そうよ」///

陽子「家に呼んでくれてありがとね」

綾「別にいいわよ」

綾(実は今日、家族皆が旅行へ行ってて、さみしかった、なんて言えない)

綾「陽子……」

陽子「綾?」

綾「なんでもないわ、キスして」

陽子「いきなりだな!」

陽子「あんまり安売りするものじゃないと思うんだけど」

綾「……」シュン

陽子「なんだよ、そんな顔するなよ……」

陽子「で、なに作ってるの?」

綾「ティラミスよ」

陽子「……ごめん、そう言われても想像できないんだけど」

綾「陽子って本当に女の子なの?」

綾「ほら、できたわ」

陽子「おぉー……」

陽子「じゃあいただきまーす」パクッ

陽子「うん、美味しいよ」ニコッ

綾「……」ポーッ

綾「私も、食べるわ」パクッ

綾「……ん、上出来ね」

綾(マスカルポーネじゃなくって、普通のクリームチーズで作ってみたけど)

綾(これはこれで、酸味がきいて美味しいわね……)

綾(大人っぽい感じ――)

陽子「美味しい、ホントに美味しいなこれ! 綾、すごいよ!」

綾「そんなに褒められても……」

陽子「綾が恋人でよかった!」

綾「……陽子」

陽子「なに?」

綾「……私を、元気づけて」

陽子「なにその気取った言い回し」

綾「ティラミスの元の意味よ」

陽子「……分かってたよ。綾、今日は寂しそうな顔してるもん」

綾「……だって、お父さんもお母さんも、私に内緒でお出かけにいっちゃって……」グスッ

陽子「綾はさびしがり屋さんだな。よしよーし」ナデナデ

綾「……」///

綾(陽子に頭、なでられると、なんかぼーっとしてきて……)

綾(だんだんなにも考えられなくなってくる)

綾「陽子、ようこぉ……」ギュッ

陽子「い、いきなり抱きつかないでよ」

綾「陽子、柔らかい……あったかい」ムニュ

陽子「や、手つきがいやらしいぞ!」

綾「私、今なんだか大人の気分……」

綾「ねえ……してよ?」

陽子「……もう、仕方ないなあ」

チュッ

綾「んっ……」

綾(っ、息、苦し)

綾「んんっ……」

陽子「……っぷぁあ」

綾「……」ボーッ

陽子「これでいい?」

綾「満足。とっても素敵な、いやらしいキスだったわ」

陽子「お気に召したようで」

綾「元気出たわ、ありがと」ニコッ

陽子(……こんな綺麗な笑顔、私だけのものだなんて信じられないよな)

陽子(ホントに……綾が相手で、良かった)


2、綾「クリームチーズ・ティラミス」おわり

3、綾「あめ玉」


陽子「学校、終わったー!」

綾「金曜日の開放感は皆が喜ぶところよね」

陽子「日曜日の憂鬱もな」

綾「あはは、そうね。帰りましょ」

~帰り道~

グーッ

綾「わ、私じゃないわよ!」

陽子「二人しかいないので、綾でしかありえないんだが」

綾「なによ! お腹すいてるのよ! お腹鳴らしちゃ悪いかしら!?」

陽子「わ、悪かないよ……そんな必死になるなよ」

綾「陽子にはデリカシーってものがないのね」

陽子「……ん?」ゴソゴソ

綾「なにしてるの?」

陽子「いや、ポケットになんか入っててさ」

陽子「……緑のあめ玉だ」

陽子「いつのだろう……」パクッ

綾「いつのものか分からないものをよく口に入れられるわね」

陽子「うん、おいしいから大丈夫」コロコロ

テクテク

綾「……」

陽子「……」コロコロ

グーッ

綾「……陽子、私にも、頂戴」

陽子「え? そんなの無理だよ」

チュッ

陽子「!?」

綾(ほら、早く私の口にあめ玉入れてよ)

綾「メロン味ね、美味しい!」コロッ

陽子「綾、大胆になったよな」

綾「そうかしら?」

陽子(こっちの方が恥ずかしいくらいだよ……)

陽子「……そろそろ返してよ」

綾「……うん」

チュッ

陽子「……」コロコロ

綾「じゃあ、三分ずつ交代にしよっ」

陽子「そ、そうだな」

陽子「……」

綾「ほら、そろそろ時間よ」

綾「んっ……」

陽子(綾のキス顔……可愛いよなあ)

チュッ

綾「陽子の味がする……おいしい」コロコロ

陽子「は、恥ずかしいこと、言うなよ」

陽子「……そろそろ、返してよ」

綾「う、うん」

チュッ

陽子(だいぶ小さくなってきたな……)

綾(な、なんだか、体が熱い……)

綾「ねえ、よーこぉ……早くぅ」

陽子「まだ三分たってないって」

綾「よーこ、私……」///

綾「もっと長いキスがしたい……お願い」

陽子(綾から強引に始めたくせに、おねだりしてくるとは……)

陽子「……あはは」

陽子「……じゃあ、二人で舐めよっか」

綾「え……?」

陽子「はい」ペロ

綾「舌出して、どういうこと」

陽子「舐めなよ」

綾「そ、そんなこと」///

陽子「早くしなよ、溶けちゃうよ?」

綾「あ……うん」ペロッ

陽子「……っ」

綾「陽子ぉ……れろ、れろ」

陽子「れろ……ちろちろ」

綾(あっ……そんな、陽子の舌の動き、とってもいやらしくて)

綾(擦れて、とっても気持ち、いい――)

陽子「溶けちゃったね。おいしかった?」

綾「うん……とっても」///


3、綾「あめ玉」おわり

4、綾「コーヒーは、いらない」


陽子「はい、カレールーと、あと牛乳」

綾「ありがとね、買い物付き合ってくれて」

陽子「全然大丈夫だよ」

綾「なにかお礼しないとね」

陽子「……じゃあさ、このデパートに新しくできたお菓子屋さん行ってみようよ」

綾「珍しいわね、陽子からお菓子が食べたいなんて」

陽子「その……」

陽子「意外と甘いものも、悪くないかな、って最近思うようになってさ」

綾「そう」

レジ「ありがとうございましたー」

綾「じゃあ行きましょ」

陽子「あ、荷物持つよ」

綾「そんな、いいわよ」

スッ

陽子「それなら、こうしよう」

綾(二人で、一つの袋を……)

綾「……なんだか、嬉しい」

陽子「夫婦みたい、かもね!」

綾「……」グイグイ

陽子「そんな早足になるなよ、おい、なんだよ!」

綾「……」///

店員「いらっしゃいませー」

綾「陽子はどれにするの?」

陽子「うーんと、じゃあ、これ」

綾「ふーん……じゃあ私は苺のやつにしよっと」

陽子「ありがとね、おごってくれて」

店員「お待たせしましたー」

綾「あそこの椅子に座って食べましょ」

陽子「……」

陽子(どう見ても、一人用のスペースしかないんですけど)

綾「ほら陽子、隣に座って」

陽子「お、おう……その」

綾「なによ」

陽子「ち、近くないか?」

綾「なに言ってるのよ、このくらいで」

陽子「……」

ピトッ

陽子(ああ……綾と密着してる)

陽子(あったか……)

綾「……陽子! なにしてるの! ちちちち、近すぎるわよ!」グイッ

陽子「えっ」

綾(でも、もう一回陽子に近づきたい……)

綾「よ、陽子」

陽子「な、なんだよ」

綾「その……ぎゅって、して」

陽子「クレープ持ってるんですけど……」

陽子「しかたないなあ、じゃあ食べ終わったらしたげるよ」

綾「……うん」

陽子「頂きま……す」パクッ

綾(陽子のぬくもり陽子のぬくもり陽子のぬくもり)

陽子「……」パクパク

陽子(ちょっとなんか、緊張してきたな)

陽子「ご馳走さま。じゃ、行こっか」

綾「陽子ぉ……」ジー

陽子「分かった、分かったよ」

陽子「まったく、こんな公衆の面前で……」

ギュッ

陽子「これでいい?」

綾「……うん」

綾(陽子の、におい……いい香り)

陽子「……コーヒーでも、飲みに行こうか」

綾「い……嫌よ!」

陽子「なんで?」

綾「折角の陽子の香りが、消えちゃうじゃない!」

陽子「……」

綾「……」///

陽子「そうだな、確かに」

陽子「……それに、」

綾「それに?」

陽子「折角の甘い甘いキスが、苦い味になっちゃ嫌だもんな」

綾「え……」

チュッ

綾「あ……」///

陽子「なんだよ、いつもは綾の方からせがんでくるのに」

綾「……っ、ばか」スタスタ

陽子「おい、綾、なんだよ!」

綾(陽子、メープルシロップの味がした……)

綾(もう……陽子ったら、私をからかって)

綾(それでも……この甘い甘い日々は、素敵だわ)

綾(うん、とっても、言葉にできないくらい)

陽子「おーい!」

綾「……ふふっ」

綾「コーヒーは、いらないわ」


4、綾「コーヒーは、いらない」おわり

ずっとただいちゃいちゃしてるだけの話が書きたかったんです
桜trickに触発されたわけじゃないんだからね!

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