鹿目まどか

失われたもの：言葉
紋章の位置：舌

-校内廊下-


ほむら「鹿目まどか。あなたは自分の人生が尊いと思う？ あなたは、家族や友人を大切にしてる？」

まどか「えぇっ？ ……えっと……み、みんな大事だよ。きっと、みんなが居なかったら、今のわたしは居ないんじゃないかな……？」

ほむら「……そう。そう思うのなら、今の自分から変わろうだなんて、決して思わないことね」

まどか「……う、うん」

まどか（……あれ？ ほむらちゃんの手に、黒い模様みたいなものが……）

-マミ宅-

ＱＢ「僕と契約してくれれば、君達の願いを何でも一つだけ叶えてあげる」

さやか「本当に？！」

まどか「願い事って……」

ＱＢ「その代わり、契約したら君達は魔法少女となって魔女と戦う使命を課される。それだけじゃないよ。願い事を叶えた“代償”として、自らの身体機能の一つを失う事になる」

まどさや「！！」

マミ「２人とも、わたしのお腹を見てくれる？」ﾋﾟﾗｯ

まどか「きゃっ///」

さやか「ま、マミさん！ いきなり何を……///」

マミ「お腹の下辺りにあるこの黒い紋様みたいなのが『紋章』と言って、キュゥべえと契約した魔法少女の証なのよ」

マミ「紋章は、代償として失った身体機能と関わりのある部位に刻まれるわ」

さやか「お腹……ってことは、マミさんは何を犠牲に……？」

マミ「……そ、それは…………」

さやか「……ああ、すいません！ ちょっと気になっただけですから！ それに、無理に教えたもらう道理は、あたしらには無いですよ！」

まどか「マミさん……」

巴マミ

失われたもの：子宮
紋章の位置：下腹部

マミ「鹿目さんと美樹さんにはキュゥべえが見えているし、魔法少女としての素質があるのは確かな事実よ」

マミ「でもね、魔法少女は常に死と隣合わせなのよ。今日の魔女は楽に倒せたけど、いつもうまくいくとは限らないわ。だから、魔法少女になろうと言うのなら、あなた達にはよく考えて欲しいの。自分の命を投げ打ってまで、そして、生きていくにしても自分の身体の大事な部分を失ってまで叶えたい望みがあるかどうか……をね」

さやか「……」

まどか「……」

マミ「……ごめんなさい、説教臭くなってしまったわ。でも、今わたしが言った事だけは忘れないでね。後戻りはできないから……」

-まどかの部屋-


まどか「…………」

まどか「ねえ、キュゥべえ。一つ聞いてもいい？」

ＱＢ「何だい？」

まどか「マミさんが代償にしたものって……何なのかな？」

ＱＢ「……契約の際に代償となる身体機能は、その本人の願いの内容、或いは本人とって大事な身体機能と深く関わってくる」

ＱＢ「マミの場合、自分の命があと僅かな所を、僕と契約して生き延びたのさ」

まどか「つまり……マミさんの願いは、ただ“生きたい”という願いだったの？」

ＱＢ「正解だ。彼女は、自分の『命を繋ぎ止める』事を願った。しかし、その対価として『命を生み出す』機能を失ったわけだ」

まどか「それって……！」

ＱＢ「人間としての生殖活動を担う部分が、彼女には無いという事だね」

まどか「……！！」

-お菓子の魔女 結界通路-


ほむら「今回の獲物はわたしが狩る。あなた達は手を引いて」

マミ「信用すると思って？」ｷﾞｭﾙﾙﾙ

ほむら「何かした？」ｽﾁｬｯ

まどか「？！ ほむらちゃんがマミさんの後ろに！！」

マミ「……！！ 一体いつの間に？！」ﾋﾞｸｯ

ほむら「わたしが用があるのはこの奥にいる魔女だけよ。あなたと争うつもりは無いけど、これ以上敵対的な態度を見せるなら、あなたの頭に突きつけた拳銃が火を噴くわ」ｸﾞﾘｸﾞﾘ

マミ「……わかったわ。お、お願いだからそれを降ろして頂戴！」ｱｾｱｾ

ほむら「…………素直ね」ｽｯ

マミ「……」ﾍﾅﾍﾅ

ほむら「今回の魔女は今までとはワケが違う。普通に挑めば無駄死にするだけよ。協力して倒しましょう」

マミ「え、ええ……」

まどか（……ほむらちゃん、やり方が強引だけど、本当は争いたくなんか無かったんだよね）

ほむら「これで全部ね……」ｶﾞｧﾝ

マミ「使い魔は粗方片付いたわ」ﾊﾞｷｭﾝ


さやか「……転校生の奴、協力したいならそう言えば良いのになぁ。ホント、素直じゃないねえ」ｸｽｸｽ

まどか「でも、仲直りできて良かったね。さやかちゃん」ﾃｨﾋﾋ

さやか「まあ、悪い奴じゃないしね……」


ほむら「魔女が来たわよ」

マミ「ええ……。あ、あれが今回の魔女？」

シャルロッテ「……」ﾁｮｺﾝ

マミ「悪いけど、一気に決めさせて！」ﾄﾞｶｯ

シャルロッテ「」ﾋｭｰﾝ

マミ「ティロ・フィナーレ！！」ﾄﾞｶﾝ

シャルロッテ「……」ｸﾞﾊﾟｱ

マミ「……え？」


さやか「ああっ……！」

まどか「マミさん危ない！」


ほむら「させないわ」ﾄﾞｼｭ

シャルロッテ「！？」ﾄﾞｯｶｰﾝ

マミ「あ……あれ？」ｶﾞｸｾﾞﾝ

ほむら「全く……世話が焼けるわね」ﾌｩ


まどか「す、凄い……。たった一発でやっつけちゃった……」

さやか「……ていうかアイツ、ロケットランチャーなんか隠し持ってたのかよ！」


ほむら「危ない所だったわね」

マミ「あ、ありがとう……」

ほむら「今度から、出過ぎた真似はしないで欲しいわ」

マミ「……はい」ｼｮﾎﾞｰﾝ

ほむら（とりあえず巴マミは生存……。後は美樹さやか、あなたね……）ﾁﾗｯ

さやか「え？ あたし？」ﾄﾞｷｯ

-ファーストフードショップ-


ほむら「話って何？」

さやか「いやあ、その……」

ほむら「……叶えたい望みがあるのでしょう？」

さやか「えへへ、やっぱバレたか。実はさ、あたしも魔法少女になろうかなーなんて思ってたんだけど、なかなか決心がつかなくて……」

ほむら「止めときなさい。あの契約は、一つの奇跡と引き換えに、全てを諦めるという事なのよ」

さやか「でも、どうしても叶えたいんだよ……。あたしの体の一部分だけで、それが叶うなら安いもんだって、そう思うんだ……」

ほむら「例え願いが叶ったとして、その後に起こるどんな事が、自分の思っていたものにそぐわない結果になってしまったとしても、あなたにはその事実を受け止められるかしら？」

さやか「……どういう意味よ」

ほむら「魔法少女になるなんて、口で言うのは簡単よ。けど、なってしまった後であれこれと悩んだり後悔したりするのは、許されないわ。例え、どんな結末が待っていようとも……。それが、本来は人の命を以てしても贖えない奇跡の代償という事よ」

さやか「…………」

-上条恭介の病室-


上条「もう僕の腕は動かないんだ……！ 奇跡か魔法でもない限り……」ｸﾞｽｯ ｸﾞｽｯ

さやか「…………あるよ」

上条「……え？」

さやか「奇跡も、魔法も、あるんだよ」ﾁﾗｯ

ＱＢ「……」

美樹さやか

失われたもの：聴力
紋章の位置：耳

-教室-


仁美「さやかさん、今日もお休みなのですね……」

まどか「どうしちゃったんだろう……さやかちゃん……」

ほむら（…………最悪だわ）ｸﾞｯ

ほむら（美樹さやかは間違いなく契約した。そしてその代償はいつも、どの時間軸でも同じだった……）

ほむら（彼女に『赤い目』が出る前に、何とか対処法を考えないと……！）

-風見野-


杏子「ここいらの魔女も、殆ど狩り尽くしちまったなー」ﾓｼｬﾓｼｬ

杏子「久しぶりに覗いてみっか。見滝原をさ」

ＱＢ「マミには会わなくていいのかい？」

杏子「……ふん。アイサツくらいはしてやるか」

ＱＢ「それにしても、今日は随分と食べる量が少ないね」

杏子「あたしが小食なのは、契約した時から知ってんだろ……」

-マミ宅-


マミ「そう……。美樹さん、契約してしまったのね……」

ほむら「……“代償”が重すぎたのよ。学校には全く姿を現さず、魔女と戦う素振りも見せないわ」

マミ「この街の魔女は、わたしと暁美さんで何とかするしかないみたいね……。今の美樹さんに、魔女退治を強要させるわけにもいかないし……」

ほむら（……巴マミとわたしで、何度かテレパシーで呼びかけてみたけど、反応は皆無……）

ほむら（まどかも、彼女の家に足を運んでは面会を拒絶され……）

ほむら（この時間軸では、美樹さやかの事は諦めるしか……）

-帰宅路-


まどか「…………」ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

まどか（…………さやかちゃん……）ｳﾙｯ

さやか「ﾗﾗﾗﾗﾗﾗﾗ」ﾕﾗｧ

まどか「……？ あれ……さやかちゃん？！」

さやか「……あぁ、まどかじゃん……。元気にしてた……？」ﾌﾗﾌﾗ

まどか「わ、わたしなんかより、さやかちゃんの方が…………。！！」

まどか（今、一瞬だけ、さやかちゃんの目が赤く光った……？？）

さやか「ラララララララ」ｸｽｸｽ

-裏路地-


杏子「まさかこんな所で会うとはねえ。なあ、マミ？」

マミ「佐倉さん……」

ほむら「……佐倉杏子」

杏子「あんたがキュゥべえの言ってたイレギュラーってヤツか……。どうしてあたしの名を知ってんのさ？」

ほむら「…………丁度いいわ、佐倉杏子。『ワルプルギスの夜』を倒す為、わたし達に協力しなさい」

マミ「暁美さん！ その話は……」

杏子「おいコラ、こっちの質問に答えてねーぞ！」ｼﾞｬｷｯ

ほむら「いずれ話すわよ……」ﾇｯ

杏子「……！！ てめぇ……いつから後ろに？！」ﾊﾞｯ

マミ「……佐倉さん……お願いだから、わたし達の所に来て。この街を守るためなのよ」

ほむら「イヤだと言うのなら、実力行使に出るまでよ」

杏子「…………チッ、手札がまるで見えないんじゃどうしようもねぇ……」

ほむら「悪いようにはしないわ。グリーフシードも、不公平の無いように山分けするつもりよ」

杏子「……へっ、わーったよ。こちとら暇を持て余してた所だしさ」ﾌﾌﾝ

マミ「佐倉さん……ありがとう」ｸｽｯ

マミ「！！ この反応……魔女の結界？！」

ほむら（この魔力パターン……まさか、もう『孵化』したと言うの？！）

杏子「お？ 早速獲物のお出ましってか？」

ほむら（早過ぎよ！ 美樹さやか……！）

ほむら「二人とも、ついて来て！」ﾀﾞｯ

ＱＢ（……やれやれ。魔女を倒す事無く魔女になるなんて……前代未聞だよ）

ＱＢ（まあ、エネルギー回収はその分早く済むけどね）

ＱＢ（恐らく、彼女達では『ワルプルギスの夜』は倒せないだろう）

ＱＢ（鹿目まどかの契約無しにはね……）

ＱＢ（『おおいなる時間』が崩壊する時、魔法少女は如何にして立ち向かうのか……）

ＱＢ（見届けさせてもらおうじゃないか）

さやか「ラララ、ララララ」ｸﾙｸﾙ

まどか「さ、さやかちゃん！ どうしちゃったの？！」ｱﾀﾌﾀ

ほむら「まどか、離れなさい！」ｽﾀｯ

まどか「ほむらちゃん！！」

マミ「あれは……美樹さん……？ 一体、何をやってるの？」

杏子「おいおい何だありゃ。ていうか、あいつの耳にあるの、紋章じゃねーか。この踊ってる奴も、魔法少女なのか？」

ほむら（『赤い目』の光が強くなっている……！ そろそろ来るわ！）

ほむら「まどか！ あなたは早く逃げ……」

さやか「アハハハハッ！！」ｽﾞｵｯ

ほむら「景色が歪んでいく……！」

マミ「……！ これは……魔女の結界ね！！」

杏子「おい、あの踊ってた奴はどこ行ったんだ？」

まどか「！！ さやかちゃん、どこ？！」


オクタヴィア「ｳﾞｵｵｫｫ」


杏子「アイツがこの結界の主か……」

ほむら「こっちから仕掛けるわよ！」

マミ「鹿目さん、危ないわ！ 安全な所に下がってて！ 」

まどか「は、はい！ ……ところで、さやかちゃんは……！」

ＱＢ「それは、僕が説明してあげよう」

まどか「！！ キュゥべえ……」

オクタヴィア「ｳﾞｵｵｫ！」ﾋｭﾝ ﾋｭﾝ


マミ「手強い……！ あの魔女が、美樹さんをどこかにさらったのかしら？」

ほむら「後で話すわ！ 今はそれよりも……」

杏子「コイツ……！ 攻撃が激しいなんてもんじゃねぇぞ！！」ｶﾞｷﾝ ｶﾞｷﾝ

ほむら（いつもの時間軸より確実に強くなっている……！ まどかにだけは、危害が及ばないようにしなければ……）

まどか「…………嘘……でしょ？」

ＱＢ「本当さ。あの魔女の正体こそ、今の美樹さやかの姿そのものだよ」

ＱＢ「自らの心に負の感情を蓄積させ、それが限界に達した時、魔法少女は魔女へと変貌を遂げる」

ＱＢ「その際、元の肉体は完全に消滅し、絶望に染まりきった魂のみが現世に形を成す。それが、魔女という存在というわけだ」

まどか「そんな……！！」

ＱＢ「ちなみに、魔法少女の身体に刻まれる“紋章”は、一種の呪いが働くようになっていてね。あの紋章は、契約者の心を負の感情で蝕んでいくのさ」

ＱＢ「まあ、契約者の心の持ちようで蝕われるスピードは異なるが、いずれにせよ魔女として生まれ変わるという結果に変わりはないね」

ＱＢ「人の手には届かぬ奇跡や希望――。そして、それを叶えた者――。つまり魔法少女は、その身とその心を以て、手にした希望の対価を絶望という形で贖うのさ」

オクタヴィア「ｳﾞｵｵｱｱｱｧｧ!!」ｼｭｳｳｩｩ


杏子「はあっ、はあっ……。や、やったのか……？」

マミ「魔法少女３人でも、こんなに苦戦するなんて……」ｾﾞｪｾﾞｴ

ほむら「ハアッ、ハアッ……」ｺﾞﾎｺﾞﾎ

ほむら（先が思いやられる……。美樹さやか相手にここまで消耗するとなると、ワルプルギスの夜を相手に勝ち目は……）

ほむら（…………まどかは……無事？）ｸﾙｯ

まどか「…………」ｼｸｼｸ

ほむら（……泣いている？）

まどか「……酷い、酷すぎるよ…………こんなのって……！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

マミ「泣かないで、鹿目さん。大丈夫？」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

杏子「まさか、怪我でもしちまったのか？」

ほむら「まどか、一体どうし……」

ＱＢ「…………」ｷｭｯﾌﾟｲ

ほむら「…………まどかに何をしたの？」ｷﾞﾛｯ

ＱＢ「僕はただ、まどかに真実を話したまでだよ」

ほむら「何を吹き込んだのッ？！」ﾁｬｯ

マミ「暁美さん？ どうしたのよ一体……」

杏子「大声なんか張り上げやがって……びっくりすんじゃねえか」

ＱＢ「杏子やマミもいるようだね。良い機会だし、君達も知っておくといいよ。それに気になるだろう？ あの魔女を倒しても尚、一人の少女の姿が消えている事に……」

マミ「……う、嘘よ。何を言ってるのよ……ねえ、キュゥべえ？」ﾌﾙﾌﾙ

杏子「てめぇは……なんて事を……！　どうして今まで黙ってた？！」

ＱＢ「聞かれなかったからさ。知らなければ知らないで、何の不都合も無いからね」

マミ「魔法少女が魔女に……？　フフフッ、そしたらあたし達は……」ｽｯ

ほむら「！！　やめなさい巴マミ！」ｶﾞｼｯ

マミ「離してよ！！　魔法少女が魔女を生むなら、みんな死ぬしかないじゃない！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

杏子「落ち着け！　今ここでくたばってもしょうがねえだろ！！」

マミ「ううっ、うううぅぅぅぅ……！！　イヤ、もうイヤよ……！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

まどか「うっ、ううっ……マミさん……」ｸﾞｽｯ ｸﾞｽｯ

ほむら「ッ……！」ｷｯ

ＱＢ「……僕はどうやら邪魔ようだね。あとは仲良くやってくれて構わないよ」ﾃｸﾃｸ

-ほむホーム-


ほむら（…なんとか連れて帰れた……わね）ﾌｩ

ほむら「どう？　落ち着いたかしら？」

マミ「…ええ。ごめんなさいね、迷惑かけちゃって……」ｸﾞｽ ｸﾞｽ

まどか「マミさん…」

杏子「……気にすんなよ。あんな事、いきなり知らされたら取り乱すのが普通だろ……」

ほむら「“ワルプルギスの夜”が来るまで、残された時間は少ないわ。こんな状況だけど、やるしかないわよ」

マミ「…わかってるわ。わたし達が戦わなければ、見滝原の人々が……」

まどか「ワルプルギスの夜……？」

杏子「超弩級の大型魔女さ。魔法少女一人だけでは倒せない…。だから、こいつらと共同戦線組んでそいつを倒そうって話さ」

まどか「そんなに強いの……？」

ほむら（強いなんて次元じゃない……。アレはもう、『絶望』そのもの……よ）

まどか「ねえ、ほむらちゃん。キュゥべえの言ってた事、本当なの……？」

ほむら「そうよ」

杏子「……なぜ知ってた？　そして、なんで黙ってた？」

ほむら「色々あったのよ…。今まで会ってきた魔法少女は、真実を告げても誰も…信じてくれなかった。黙っていたのは、謝るわ……」

杏子「……いいよ。別にあんたが悪いわけじゃない。キュゥべえの野郎が、契約する時に何も話さなかったのが悪いんだ」

マミ「…………キュゥべえ」ｷﾞﾘｯ」

マミ「…そろそろ家に戻らせてもらうわ。大分落ち着いてきたし……」

まどか「マミさん、大丈夫なんですか……？」

マミ「心配してくれるのね…ありがとう。でも、もう大丈夫よ」

マミ「暁美さんも佐倉さんも、さっきは本当にごめんなさい。あんなに取り乱してしまって……｣ﾍﾟｺﾘ

杏子「……いいって別に」

ほむら「問題ないわ…。それより、自分の事を大切に……」

マミ「ありがとう。じゃ、わたしはこれで。佐倉さんもついて来るでしょう？」

杏子「……へっ、今日の分は、マミのうまい夕飯で許してやるよ」

マミ「…ふふっ。じゃあね、鹿目さん、暁美さん」

杏子「じゃあなー」

まどか「行っちゃったね……」

ほむら「…ええ」

まどか「…わたしも、パパとママが待ってるから、そろそろ帰るね」

ほむら「…………まどか」

まどか「なあに？」

ほむら「魔法少女になるのは……絶対にやめてちょうだいね……」

ほむら「でなければ、あなたの大事な全てを奪われるわ……」

まどか「うん。ほむらちゃんがそう言うのなら……」

ほむら「……ありがとう」

まどか「…じゃあね、ほむらちゃん」ﾊﾞﾀﾝ

ほむら「……」

≪きゃああっ！！≫


メガほむ「か、鹿目さん！」

まどか「…………」ﾎﾞﾛｯﾎﾞﾛ

メガほむ「ひ、酷い…！　どうして、こんな……！！」


ワルプルギス「ｳﾌﾌﾌ ｱﾊﾊﾊﾊ!」ｺﾞｵｵｵ


まどか「…………」ｽｸｯ

メガほむ「そんな……！　鹿目さん無茶よ！！」


≪……それでも、わたしは魔法少女だから。みんなのこと守らなきゃいけいから≫


メガほむ「…ねえ、もう逃げようよ……。誰も、鹿目さんをうらんだりしないよ……！」


≪ほむらちゃん、わたしね≫

≪あなたと友達になれて嬉しかった≫

≪あの時、あなたを助ける事ができて、今でもそれが自慢なの。だから魔法少女になって本当に良かったって、そう思うんだ≫

メガほむ「……いやぁ！　鹿目さん！　行かないで！！」


≪さよなら、ほむらちゃん。元気でね≫


まどか「…………」ﾆｺｯ

メガほむ「……！！　鹿目さあぁぁん！！！」

≪キュゥべえに騙される前の、バカなわたしを……助けてあげてくれないかな……≫


メガほむ「約束するわ。絶対にあなたを救ってみせる！　何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる！！」


≪……良かった。……ううっ！≫


まどか「…………ッ！！」ｶﾞｸｶﾞｸ

メガほむ「ああっ……！　鹿目さん！」


≪……もう一つ、頼んでいい？≫


メガほむ「……うん」ｳﾙｳﾙ


≪わたし、魔女にはなりたくない……≫

≪喋れなくなって、嫌な事や悲しい事はあったけど、守りたいものが沢山、この世界にはあったから……≫


メガほむ「……まどか……ッ！」


≪ほむらちゃん……やっと、名前で呼んでくれたね……。嬉しい、な……≫


メガほむ「……う、ううううぅぅぅっっ！！！！」ﾁｬｷｯ

ほむら「……」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

ほむら（…………夢？）ｺﾞｼｺﾞｼ

ほむら「全く、わたしは何を……」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

ほむら（決戦が近い……。果たして、魔法少女３人掛かりで倒せるか……）

ＱＢ「それは無理さ。暁美ほむら」

ほむら「…………ッ？！」ｷｯ

ＱＢ「君を含めて、マミや杏子がどれだけ力を合わせても、ワルプルギスの夜は倒せないよ。『おおいなる時間』を歪める存在を相手に、君達だけで勝てるとでも思ってたのかい？」

ほむら「……」ｷﾞﾛｯ

ＱＢ「ついでに、君は何か大きな勘違いをしている」

ほむら「…………？」

ＱＢ「僕はね、全て知ってるよ。君がどんな願いで契約したか、何度同じ時間を繰り返しているかをね」ｷｭｯﾌﾟｲ

ほむら「？！」ｶﾞﾀｯ

ＱＢ「まさか、君の事を僕が知らないとでも思ってたのかい？」

ＱＢ「幾度となく同じ時間を繰り返し、平行世界を横断してきた君なら、魔法少女の真実についても知ってるはずだよね」

ＱＢ「魔女になる兆候として、『赤い目』が出ることは……ね」

ほむら「その事と、お前の事について何の関係が……？」

ＱＢ「僕の“目”を見てごらんよ。君には何色に見えるかな？」

ほむら「…………！！」

ＱＢ「この『赤い目』はね、《神》の意思に忠実な者の証なんだよ」

ほむら「《神》って…………」

ＱＢ「この宇宙において、僕達インキュベーターより高位の存在さ」

ＱＢ「正確には、宇宙そのものが《神》と言っても過言ではないね」

ＱＢ「《神》の意思は宇宙(そら)の意思――。そして、その意思を体現する存在こそ、僕達インキュベーターなんだよ」

ほむら「じゃあ、魔女の『赤い目』は一体……」

ＱＢ「魔女もまた、《神》の意思に従っている存在という事だね」

ほむら「《神》の意思って……何よ！」

ＱＢ「そうだね。まずはそこから説明してあげよう」

ＱＢ「そもそもこの宇宙には、数多くの文明がひしめき合い、一瞬ごとに莫大な量のエネルギーを消耗しているんだ」

ＱＢ「エントロピーという言葉は、君も知ってるよね？」

ＱＢ「エネルギーは形を変換するごとにロスが生じる。このままでは、宇宙全体のエネルギーは目減りしていく一方だろう。将来、宇宙そのものが枯れ果てるのは目に見えているんだ」

ＱＢ「そこで《神》は、宇宙の寿命を延ばすため、熱力学の法則に縛られないエネルギーを欲した」

ＱＢ「そのエネルギーを探し出し、回収するのが、僕達インキュベーターの役目だ」

ＱＢ「僕達の文明はね、知的生命体の感情をエネルギーに変換するテクノロジーを発明したんだ。ところが、当の僕らが感情というものを持ち合わせていなかった」

ＱＢ「当然だよね。《神》の命令のみを忠実にこなす僕達には、感情なんていう余計なものは与えられていないんだ」

ＱＢ「そういうわけで、この宇宙の様々な異種族を調査した結果、君達人類を見出したのさ」

ＱＢ「人間における第二次性徴期の少女の、希望と絶望の相転移――。その感情から得られるエネルギーの総量は、予想以上のものだったよ」

ＱＢ「僕達は早速、このエネルギーを利用しない手はないと思ったよ」

ＱＢ「しかし、問題が一つあったんだ」

ＱＢ「《神》は、自らの失敗作――つまり人類を、全て粛清しようと考えていたのさ」

ＱＢ「事実、君達人類は、宇宙で最も多くの感情エネルギーを生み出すのと同時に、この宇宙で最も多くのエネルギーを消費するんだよ」

ＱＢ「人間の個体数と繁殖力が成せる結果という事だね」

ＱＢ「言ってしまえば、《神》にとって、人間ほどこの宇宙で邪魔な存在は無いわけだ」

ＱＢ「しかし僕らも、せっかく見つけたエネルギーの原石を、このまま見捨てるわけにはいかなかった」

ＱＢ「人間の少女から生じるエネルギーを搾取しつつ、人間を確実に減らす方法――。そこで考案されたのが、魔法少女システムなんだよ」

ＱＢ「希望を求めた少女の姿――すなわち魔法少女が、自らの心を絶望に染まらせ魔女となるその瞬間、膨大なエネルギーを発生させる」

ＱＢ「僕達はそのエネルギーを回収し、宇宙の延命に充てる――」

ＱＢ「そして魔女は、自ら結界を張りその中へ人間を招き寄せ、殺す――」

ＱＢ「インキュベーターによるエネルギーの回収、及び、魔女による人類の抹殺――。それこそが、《神》の意思なんだ」

ＱＢ「故に魔女も、僕達インキュベーターと同じく、《神》の意思の代行者として、『赤い目』を持っているのさ」

ＱＢ「違いを挙げるとすれば、魔女は魔法少女の成れの果ての存在なのに対し、僕達インキュベーターは、《神》の『特命』を受けた存在だということだ」

ＱＢ「『特命』の内容とは、宇宙を永遠に生き延びさせる事――。それこそが、僕達の存在意義であり、この地球にやって来た目的でもある」

ＱＢ「それに僕らは、《神》の『特命』を受けた存在として、この世界の“真実”を知る事ができる」

ＱＢ「暁美ほむら。君が繰り返してきた時間の中で、君だけが平行世界の記憶を持ち越しているわけじゃないんだよ」

ＱＢ「どの時間軸においても、君がしてきた数々の行動の情報は、僕に筒抜けだったのさ」

ＱＢ「勿論、君が何度繰り返しても、全て失敗に終わるとわかっていた上でね」

ほむら「…………ッ！！」ﾜﾅﾜﾅ

ＱＢ「さて、僕達は有史以前からこの惑星に干渉し、数多の魔法少女を魔女へと転生させて来たわけだが……」

ＱＢ「希望で始まり、絶望で終わる――。そろそろ、そのサイクルも終わりを告げる時が来た」

ＱＢ「木星の第４衛星で強力なエネルギー反応が確認されてね。これがまた、エントロピーを覆すエネルギー源らしいんだ」

ＱＢ「それはさておき、新しいエネルギーが見つかったと判明した瞬間、《神》はいよいよ、全地球人類の粛清を開始したわけだ」

ほむら「まさか……それが……」

ＱＢ「その通り。『ワルプルギスの夜』による人類滅亡計画こそ、《神》の本願なのさ」

ＱＢ「『ワルプルギスの夜』の正体は、絶望に身を委ねて魔女に成り果てた魔法少女達の思念の集合体であり、それがいつしか、『おおいなる時間』を歪める力を持つに至ったんだ」

ＱＢ「『おおいなる時間』とは、『時間』・『空間』・『次元』の３つを示す概念――。『おおいなる時間』があるからこそ、世界は運行している」

ほむら「『時間』と『空間』はそれぞれの世界に個別に存在しているが、『次元』は平行して存在する別の世界とも共有している……でしょ？」

ＱＢ「ご名答。『おおいなる時間』が崩壊すればどうなるか、君なら容易に想像できるだろう？」

ほむら「この世界と同じ『次元』を共有する、あらゆる可能性の平行世界が滅ぶ……？」

ＱＢ「正解だね。そしてその平行世界には、必ずと言っていい程、人類という種が存在するんだ」

ＱＢ「“人類の粛清”と、前に僕は言ったけど、《神》の本来の目的は、“世界の破壊と再生”なんだよ。人類の粛清は、人類が存在しない世界に作り変える事と同義なんだよ」

ＱＢ「つまり、『ワルプルギスの夜』は、この星の歴代魔法少女の無念を掻き集めて、《神》が意図的に作り出した魔女ということさ」

ＱＢ「ところが、君が僕と契約した瞬間から、事は変わり始めた」

ＱＢ「鹿目まどかを救う――。その願いから発現した『時間』を操作する魔法は、過去の可能性を切り替えることにより、『時間遡行』という一点に限り、君も一種の平行世界を横断できるようになったんだ」

ＱＢ「まあ、その結果は君が痛い程知ってるだろうけど、奇跡的にワルプルギスの夜を倒せても、その後に待っているのは鹿目まどかの魔女化だったね」

ＱＢ「『おおいなる時間』を歪める程の存在を打ち倒す魔法少女が魔女になれば、僕達も見た事が無い規模のとてつもない量のエネルギーが期待できるし、何よりも越える最凶最悪の魔女が誕生するとなれば、世界を一瞬で消し飛ばしてくれるだろう」

ＱＢ「そもそも、君は疑問に思わなかったのかい？　どうしてまどかが、ワルプルギスの夜を倒せる程の魔法少女になれたのか……」

ほむら「……？」

ＱＢ「魔法少女としての潜在力は、背負い込んだ因果の量で決まる。君が時間を巻き戻してきた理由は、鹿目まどかの安否であり、同じ理由と目的で幾度も時間を遡るうちに、幾つもの平行世界の因果線をまどかに絡ませてしまったんだ」

ＱＢ「君が繰り返してきた時間の中で循環した因果の全てが、鹿目まどかに繋がり、彼女に史上最強の魔法少女になる素質を与えていたのさ。全ての元凶は、まどかを想う君自身の行動にあったんだよ」

ＱＢ「全く、大した手柄だよ暁美ほむら。君のおかげで、まどかを史上最悪の魔女として完成させてくれたんだ」

ほむら「……そんな…」ｶﾞｯｸﾘ

ＱＢ「ああ、言い忘れてたけど、君との会話は全て、僕を発信源としてテレパシーでまどかにも聞こえているよ」

ほむら「何ですって……！！」ﾋﾞｸｯ

ＱＢ「この会話だけじゃない。君のこれまでの平行世界での記憶を読み取り、ビジョンとしてまどかの脳内に送りこんどいたよ」

ほむら「！！　なんて余計な事を……っ！」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

ＱＢ「まどかに真実を知っておいてもらえたら、契約の動機に繋がるんじゃないかと思ってね」

ＱＢ「彼女のことだ。あの性格からして、君を助けずにはいられないだろう？」

ほむら「…………ッ！！」ﾊﾟｧﾝ

ＱＢ「そう簡単にやられると思ったかい？」ﾋｮｲ

ほむら「チッ……！」ﾋﾞｷﾋﾞｷ

ＱＢ「ここまで君と話したのは初めてだね。まあ、僕から言えることは全て言い尽くしたし、あとは頑張ってくれ」ﾃｸﾃｸ



ほむら「…………」

-まどかの部屋-


まどか「……うっ…うっ………」ｴｸﾞｯ ｴｸﾞｯ

まどか（…ほむらちゃん……今までずっと、わたしの為に……！）ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

まどか（でも酷い……！　こんなの、ほむらちゃんが報われないよ……！）

まどか（……わたしは…………どうしたらいいの……？）

まどか「………ほむらちゃん……！！」ｸﾞｽｯ ｸﾞｽｯ

-マミ宅-


杏子「……なあ、マミ」

マミ「……何かしら？」

杏子「本当に、戦うのか？　ワルプルギスの夜と……」

マミ「何言ってるのよ……。放っておけば、多くの人が犠牲になるのよ」

杏子「そりゃあそうだけどよ……何かこう、滅茶苦茶不安なんだよな……」

マミ「らしくないわね……。何かあったの？」

杏子「胸糞悪い夢を見たんだ……。みんなが死んじまう夢を……」

マミ「夢……？　ひょっとして、ワルプルギスの夜の？」

杏子「……まあな。疲れてるせいかなって、思ったんだけど、妙に現実に起こりそうで気持ち悪りィ……」

マミ「…………勝ちましょう、必ずね」ｷﾞｭｯ

杏子「……ああ。弱気になってたよ、すまねえ……」ｷﾞｭｯ

杏子「でもよ、あんたは戦えるのか……？　かつて魔法少女だった奴らと……」

マミ「わたしだって、迷いはあるわよ……。でも、今は共に戦ってくれる仲間がいる……暁美さんと、そして、帰ってきてくれたあなた……。今まで独りだったわたしにとって、これ程まで嬉しい事はないわ……」

マミ「だから戦える。それにわたしは、この街を守る魔法少女ですもの」ｸｽｯ

杏子「愛と勇気が勝つストーリーか……悪くねぇな」ﾍﾍｯ

マミ「頑張りましょう、佐倉さん」

杏子「バーカ、こちらこそだよ」

――――決戦前夜――――




-ほむホーム-


ほむら「…………」

ほむら「……眠れないわ………」ﾎﾑｯ

ほむら（……わたしの中の“時間”が失われた時から、知っていたはず……）

ほむら（自らの“時間”を失うということは、己の肉体の成長を永久に破棄するのと同じ…………でも、何かが足りない気がする……）

ほむら（いくら考えてもしょうがないわね……）

ほむら（いよいよね……。もう慣れたけど……）

ほむら（……勝つわ、必ず……！」）ｸﾞｯ

ほむら「まどか……！！」ｳﾙｯ

ＱＢ（……暁美ほむら。君は確かに、あの時に願いを叶えたんだよ）



――彼女に守られるわたしじゃなくて、彼女を守るわたしになりたい――。



ＱＢ（結果として、鹿目まどかを“守る”為の力は手に入れたけど、それは決して、彼女を完全に“救う”という結末には至る事は無いんだ）

ＱＢ（契約代償として失った“時間”は、何も肉体の成長だけじゃない。君自身の、時の歩みが失われたのさ）

ＱＢ（鹿目まどかを守る――。そのために、同じ時間を繰り返す――。同じ時間を繰り返す事は、そこから先の未来へは進めない――。）

ＱＢ（無限に繰り返す時間の中でまどかを守り続ける事が、君の願いの本質であり、その代償は、まどかを守る為に、無限に繰り返す時間の中に囚われ続ける事――）

ＱＢ（君の願いと代償は、表裏一体ということだ）

ＱＢ（尤も、君自身にその自覚は無いようだけどね）

ＱＢ（君が、この終わらない連鎖に終止符を打つとすれば、それは自らの願いを裏切る時だね）

ＱＢ（つまり、まどかを守り続ける事を諦めた瞬間、君の魂は絶望に染まり、魔女として生まれ変わる）

ＱＢ（暁美ほむら。君程、ここまでなかなか楽しませてくれる魔法少女は、未だかつていないよ）

ＱＢ「“今回”のワルプルギスの夜を相手に、君がどういう行動を取るのか、楽しみにしているよ」

――――決戦当日――――


ほむら「……来てくれたのね」

杏子「何だよ、あたしらが尻尾を巻いて逃げるとでも思ったか？」

マミ「こんな時に、お家でじっとしていられるものですか」

ほむら「あなた達……」

マミ「鹿目さんは、ちゃんと避難できてるかしら？」

ほむら「あの子なら今頃、学校の避難所にいるわ。ご家族も一緒よ」

杏子「後顧の憂い無し……ってか。　派手にやってやろうじゃねえか」

マミ「力を合わせて、必ず勝ちましょう！」

ほむら「ええ。そのつもりよ」

ほむら（事前の打ち合わせは十分してきた……。後は、相手の出方次第ね……）

ほむら（今回は巴マミと佐倉杏子までいる……。ここまで恵まれた条件で負けるわけにはいかないわ！）

ほむら（そういえば、ここに来るまでの道中、まどかに会ったけど……）

ほむら（とても悲しそうな顔をしていたわ……）

ほむら（わたしの力になりたいと、助けたいと言ってくれた……涙まで流して……）

ほむら（本当に優しすぎるわ……。わたしには眩しすぎる程に……）

ほむら（でもね、あなたが戦う必要は無いのよ。だって、あなたはわたしが守るから）

ほむら（だから、あなたはあなたのままでいて――。）








――今度会ったらさ、ちゃんとお礼がしたいんだ。だから、必ず帰って来てね、ほむらちゃん――。








ほむら（わたしもよ、まどか。あなたがいてくれたから、今のわたしがあるのよ）

ほむら（……必ず、あなたの元へ帰るわ。約束よ）

杏子「……何だ？　空が赤く……染まっている？」

マミ「この感じ……もの凄く嫌な感覚に包まれるわ……」

ほむら「ヤツが来る証拠よ。二人とも、戦闘準備を！」



５


４


３


２


１



ワルプルギス「ｳﾌﾌﾌ ｱﾊﾊﾊﾊ! ｱﾊﾊﾊﾊ!」ｺﾞｳﾝ ｺﾞｳﾝ

マミ「あれが、ワルプルギスの夜……！」

ほむら「使い魔の強さも尋常じゃないわ！　注意して……？！」

ほむら（何？　何なの？　あんな姿の使い魔は、今までの時間軸では見た事が無い……）

ほむら（でも……この全身を駆け巡るこの悪寒は……）

杏子「なあ……あれが使い魔なのか？　あの、赤ん坊の姿をした奴らが……」



使い魔「ｱｰ ｱｰ」

使い魔「ｱｳｱｰ ｱｳｰ」

使い魔「ｳｱｰ ﾝｱｰ」

ほむら「……！　攻撃が来るわよ、気を付けて！」



使い魔「」ﾎﾞﾎﾞﾎﾞﾎﾞ

使い魔「」ﾊﾞﾁﾊﾞﾁ

使い魔「」ｷﾞｭｵｯ



杏子「あいつら……！　光弾を撃ってきやがったぞ！」

マミ「くっ……！　こちらも反撃よ！」ﾊﾞｷｭﾝ ﾊﾞｷｭﾝ

ほむら「厄介ね……」ﾄﾞｶﾞｶﾞｶﾞ

杏子「……！！　おい、何だよあれは……」



使い魔「ｱｰﾝ」ﾊﾞｸﾝｯ

使い魔「ｷｬｯ ｷｬｯ」ｶﾞﾌﾞｯ

使い魔「ｱｳｰ」ﾌﾞﾁｨｯ



マミ「まさか、そんな……！　逃げ遅れた人を……」

ほむら「食っている……？」

マミ「酷い！　こんな事って……！！」ｶﾞｸｶﾞｸ

杏子「…うっ……、見てらんねえ……！」ｵｴｪｪ

マミ「早く数を減らさないと、犠牲者が増えるだけよ！」

杏子「ちっくしょお……。このガキ共、ぶった切ってやる！！」ｽﾞﾊﾞｯ ｽﾞﾊﾞｧ

ほむら（倒してもまた新しいやつが出現する……。本当に捌き切れるのかしら……）ｶﾞｧﾝ ｶﾞｧﾝ

マミ「キリがないわ……！」ﾊｱ ﾊｱ

ほむら「無尽蔵に湧いてくる……。このままでは……」

杏子「？！　マミ、危ねえッ！！」

マミ「え？」


――ﾄﾞｯｺﾞｵｵｫｫﾝ


マミ「きゃああっ！！」ﾄﾞｼｬｱ

ほむら「やられた？！」

杏子「おい！　大丈夫か？！」ﾀﾞｯ

マミ「うう……」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

ほむら「……！！」ﾊｯ

杏子「マミ！　後ろだ！！」

マミ「………うぅん、何……？」ｸﾙｯ



使い魔「ｳｱｰ」ﾆﾀｧ



ほむら「避けてエエェェェッッ！！」

マミ「…………あ……」



――ﾊﾞｸﾝｯ



マミ「」ﾌﾟﾗｰﾝ

杏子「うわあああぁぁぁぁ！！！」

ほむら「よくも…………よくも……！！」ﾄﾞｶﾞｧﾝ



使い魔「ｱｳ」ﾍﾞｼｬ



杏子「なあ…………ウソだろ、マミ？」ｶﾞｯｸｼ

ほむら「杏子！ しっかりしなさい杏子！！」



使い魔「ｱｳｱｳｱｰ」ｱﾝｸﾞﾘ



ほむら「ちぃっ……！ 邪魔よ！」ｽﾞﾄﾞﾝ



使い魔「」ﾎﾞﾝｯ



ほむら「杏子！ 聞こえているなら早くその場から動いて！！」

杏子「…………？」



使い魔たち「「「ｷｬｯ ｷｬｯ」」」ﾜﾗﾜﾗ



ほむら（まずい……！ このままでは、佐倉杏子が囲まれる！！）

――ｷﾞｬｰ ｷﾞｬｰ

――ﾊﾟｷﾝ、ﾓｸﾞﾓｸﾞ

――ﾊﾞｸﾝｯ、ｺﾘｺﾘ



杏子「……人は食われる……マミは死ぬ…………」

杏子「何もかもが狂ってやがる…………ここは地獄だ……」ｸｽｸｽ

ほむら「邪魔よ！ 邪魔よ！！」ﾊﾞｧﾝ ﾊﾞｧﾝ

ほむら（使い魔達が、動かない杏子に集中している……！）



使い魔たち「「「」」」ｸﾞｼｬ ｸﾞｼｬ



ほむら（時間停止の魔法も残り少ない……このままではジリ貧……！）



使い魔たち「「「ｱｳｰ ｱｳｰ ｱｳｰ」」」ﾆﾔﾆﾔ


杏子「…………囲まれたか……」ｽｯ

杏子「なあ、マミ……。独りってのはどんなに辛いんだ……？」

杏子「せっかく会えたのになあ…………お互いに……」ﾎﾛﾘ

ほむら（……ッ！ 杏子の姿が見えない！）

ほむら「杏子！ 返事をして！！」



使い魔「ﾊｰｲ」ｽﾞｵｯ



ほむら「し、しまっ……」


――ﾄﾞｯｺﾞｵｵｫﾝ


ほむら「きゃああっ！！」ｽﾞｻﾞｱｯ ｶﾞﾗｶﾞﾗ

ほむら（うう……。瓦礫が……挟まって…………う、動けない！！）

ほむら（……ッ！ あの光は……まさか……！）

杏子「ひとりぼっちはさみしいもんな………。いいよ、一緒にいてやるよ、マミ…………」ﾊﾟｱｱｧｧ

ほむら「杏子！ や、やめ…………！」

杏子「…………」ｶｯ


――ｽﾞﾄﾞｵｵｵｫｫﾝ


使い魔たち「「「」」」ｼﾞｭﾜｯ



ほむら（……自爆………、した……のね………）ｶﾞｸｯ

ほむら（残っているのはわたしだけ……）

ほむら（……でも、もう動けない……。魔力も限界、ね…………）ﾁﾗｯ

ほむら（……わたしも、食われるのかしら…………あいつらに……）ｿﾞｿﾞｯ



使い魔たち「………………」ﾌﾜﾌﾜ



ほむら（……？ 使い魔達が空に上がっていく……？）

ワルプルギス「ｱﾊﾊﾊ! ｱﾊﾊﾊ!」ｽﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ



ほむら（……アイツの上空に、歪みが………）

ほむら（『おおいなる時間』が、崩れようとしているのね……）

ほむら（……今回も、倒せなかった…………）

ほむら（時間遡行も作動しない……なんて………）

ほむら（でも、繰り返せば繰り返す程、それだけまどかの因果が積み重なって……）

ほむら（今までわたしがしてきた事は、結局…………）ｳﾙｳﾙ

ほむら「………………」ﾊｯ

ほむら「………そう、そういうことなのね…………」

ほむら（わたしの“時間”が奪われた時から、全てが始まってたのね……）

ほむら（まどかを守り続ける…………決して終わらない時の中で……）

ほむら（こうして負け続けても、また巻き戻してまどかを守る為に戦う……）

ほむら（それが、わたしの願い…………）

ほむら（違う、違うわよ！ わたしはただ、あの子を救いたくて…………！）

ほむら（わたしは一体……何の為に……）ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

ほむら（……永遠に、まどかを救う事は叶わないと言うの…………？）

ほむら（……滑稽だわ、暁美ほむら。あなたは、まどかが救われる事の無いこの無意味な時間を、ずっと繰り返してきたのね……）

ほむら「……ううっ、うううぅぅっっ！！」ｳﾜｰﾝ

-避難所-

まどか「わたしの……願い…………」

まどか（……それは、きっと…………）



――――まどか…………！



まどか「…………！」ﾊｯ

まどか（……ほむらちゃん……今行くよ！）ﾀﾞｯ

ほむら「まどか……まどか…………ごめんなさい……！」

ほむら「……あなたとの約束を………守れなくて………！」

ほむら「本当に……ごめんなさい…………！！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ






――――もういいんだよ、ほむらちゃん。






ほむら「………………まどか……？」

まどか「…………遅くなってごめん、ほむらちゃん……」

ほむら「……どうして……あなたが…………」

まどか「ほむらちゃん……わたしね、ようやく叶えたい願いを見つけたの。だから、その為にこの命を使うね……」

ほむら「……ま、まさか…………！」

まどか「……キュゥべえ、いるんでしょ？」

ＱＢ「君なら、良い決断をしてくれると信じていたよ」ﾋｮｺｯ

ほむら「や、やめて……！ そうしたら、あなたは………！！」

まどか「……本当に、ごめんね」

まどか「今までずっと、ずっとずっとほむらちゃんに守られてきたから、今のわたしがあるんだよね。そんなわたしが、やっと見つけた答えなんだ」

まどか「だから、信じて。絶対に、絶対に今日までのほむらちゃんを無駄にしたりはしないから」

ほむら「まどか……」

ＱＢ「幾多の平行世界の運命を束ね、因果の特異点となった君なら、どんな途方もない望みも叶えられるだろう」

まどか「……本当だね？」

ＱＢ「勿論さ。君にはそれだけの力が宿っている」

ＱＢ「さあ、鹿目まどか。その身とその心を代償にして、君は何を願う？」

まどか「わたしは――」

まどか「全ての魔女を生まれる前に消し去りたい。全ての世界、過去と未来の全ての魔女を、この手で」

ほむら「……！！」

ＱＢ「その願いは………。そんな願いが叶うとすれば、それは時間干渉なんてレベルじゃない！　《神》の意思に対する叛逆だ！！」

ＱＢ「……まさか君は…………新たな《神》に成り替わるつもりなのかい？！」

まどか「神様でも、何でもいい。わたしはただ、希望を信じた魔法少女を、絶望で終わらせたくない。最後まで、笑顔でいて欲しいの」

まどか「それを邪魔するルールなんて、壊してみせる。変えてみせる。これが……わたしの願い……」

まどか「さあ、叶えてみせてよ。インキュベーター！！」ﾋﾟｶｱｱｧｧｧ

鹿目まどか

失われたもの：存在
紋章の位置：遺伝子

ほむら「ううっ！！　まどか……！」

ほむら（眩しい……！　なんて光なの……）



ワルプルギス「ｱﾊﾊ…ｱﾊﾊ…ｱﾊ……」ｽﾞｽﾞｽﾞｽﾞ



ほむら（……ワルプルギスの夜が、歪みの中へ呑まれていく………？）

ＱＢ「魔女という存在が無くなった今、『ワルプルギスの夜』は消滅する。彼女の願いは成し遂げられた――」

ＱＢ「だが、これで終わりではないようだ」ｼｭｺﾞｵｵｫｫ

ほむら（な、何？　また眩い光が……！）

ほむら「き、きゃあぁぁっ！！」

-宇宙-


ほむら「………ここは……」


≪まどかがもたらした新しい法則に基づいて、宇宙が再編されているのさ≫

≪魔女を消し去る――。その壮大過ぎる願いを叶えた代償に、彼女が背負う事になる“紋章”の呪いの量がわかるかい？≫

≪一つの宇宙を作り出すに等しい希望が、遂げられた。それはつまり、一つの宇宙を終わらせる程の絶望をもたらす事を意味する≫

ほむら「そ、そんな……」

ほむら「酷い……酷すぎるわ……！」

ほむら「それじゃあ、あの子の願いは……！！」



――――ううん、大丈夫。



ほむら「……ま……まどか？」

まど神「わたしの願いは、全ての魔女を消し去る事――。本当にそれが叶ったんだとしたら……」

まど神「わたしだって、もう絶望する必要なんてない！！」ﾋﾟｶｱｧｯ

ほむら「う、ううっ？！」

≪――まどか。君の人生ははもう……始まりも終わりも無くなった≫

≪君が生きた証も、その記憶も、もう何処にも残されていない。君という存在は一つ上の領域にシフトして、ただの概念に成り果てたんだ≫

≪もう誰も君を認識できないし、君もまた誰にも干渉できない。それが、今の君という存在なのさ≫



ほむら「何よ、それ……！」

ほむら「これがまどかの望んだ結末だっていうの？！　冗談じゃないわ！！」

ほむら「これじゃあ、死ぬより酷い……もっと酷い……！」



――――これで良いんだよ、ほむらちゃん。



ほむら「…………まどか？」

まどか「これからのわたしはね、いつでもどこにでもいるの。だから見えなくても、聞こえなくても、わたしはほむらちゃんの側にいるよ」

ほむら「あなたは……それでもいいの？　わたしは……あなたのこと、忘れてしまうのに？」

まどか「ううん。諦めるのは、まだ早いよ」

まどか「ほむらちゃんはこんな場所までついてきてくれたんだもの。だから元の世界に戻っても、もしかしたら、わたしのこと憶えていてくれるかも」

まどか「はい、これ……。ほむらちゃんが持っててくれる？」

ほむら「あなたの……リボン……？」

まどか「大丈夫。きっと大丈夫。信じようよ」

ほむら「ま……どか……」

まどか「だって魔法少女はさ、夢と希望を叶えるんだから。きっとほんの少しなら、本当の奇跡があるかもしれない……そうでしょ？」

ほむら「ま……まどかッ！　行かないで！」

まどか「ごめんね……わたし、みんなを迎えに行かなきゃ」

まどか「いつかまた、ほむらちゃんとも逢えるから。それまでは、ほんのちょっとだけお別れだね……」ｽｳｩｩ

ほむら「まどかあぁぁっ！！！」ｽｳｩｩｩ

――改変後 世界――





-見滝原-


杏子「……さやかは？　おい、さやかはどうした？！」

マミ「……逝ってしまったわ。『円環の理』に導かれて……」

マミ「美樹さん……最後の一撃に全ての力を使ってしまったのね……」

杏子「バッカヤロ……自分が消えちまってどうすんだよ……！　やっと……友達になれたのに……」

マミ「それが……魔法少女の運命よ。希望を求めた因果が、この世に呪いをもたらす前に、わたし達はああやって消え去るしかないのよ……」

杏子「……また、“二人”になっちまったな……」

マミ「ええ……。せっかく増えた仲間がいなくなるのは……とても辛いわよ……」

――円環世界――




まど神「どこ……？　どこにいるの？」ｷｮﾛｷｮﾛ

さやか「うーん……見つからないねえ……」

なぎさ「世界中のどこを探してもいないのです」

まど神「そんな……」

さやか「神様であるあんたが見つけられないなんて……。こりゃあ、ただ事じゃないよ」

なぎさ「元気……出してくださいなのです」

まど神「…………うん」

まど神（…………どこに……行っちゃったの……？）

まど神「……ほむらちゃん…………！！」ｸﾞｽｯ

････････････････････

･･････････

･････






ほむら「…………」


ほむら（あの子と別れを告げた後、わたしは……）

ほむら（……ダメね。思い出せない……）

ほむら（…星が綺麗……。真夜中かしら……）


ほむら「……」ﾁﾗｯ


ほむら（手にはしっかりと、あの子のリボンが……あるわ）

ほむら（夢……じゃないのね…………）

ほむら「まどか……」ﾎﾛﾘ

リボほむ「さて…と」ｽｸｯ

リボほむ（見慣れた街並み……？　ちょっと雰囲気が変わったのかしら……）ｷｮﾛｷｮﾛ

リボほむ（佐倉杏子と巴マミは…………寝てるわよね）ﾌｩ

リボほむ（こんな深夜に、外にいるわけが……）

リボほむ（わたしの魔法は……）ｷｭｲｲﾝ

リボほむ（…黒い……弓？）ﾊﾟｼｯ

リボほむ（形は……まどかが使っていたのと似ているわ……）

リボほむ（…………？！）ﾊﾞｻｯ

リボほむ（つ、翼が生えた？！）ﾊﾞｻﾊﾞｻ

リボほむ（これで、飛べるってことかしら……）

リボほむ（……ところで、左手の甲についてる紫色の宝石は一体……）



――ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ



リボほむ「…………！」

リボほむ（空が……歪み始めた……？！）

リボほむ「一体、何が……」



ワルプルギス「ｳﾌﾌﾌ ｱﾊﾊﾊ! ｱﾊﾊﾊ!」ｺﾞｳﾝ ｺﾞｳﾝ



リボほむ「な……！！」

リボほむ（ワルプルギスの夜が、あの歪みから出てきた？！）

リボほむ「どうして……どうして生きてるのよ！！」

リボほむ（あの時、まどかの願いで消え去ったはずじゃ……！）

リボほむ（……待って。そもそも、ここは本当に見滝原なの？　さっきから、見た事も無い建造物ばかりが見えて……。それじゃあ……ここは、ここは一体…………）

リボほむ「……ここは…………一体どこなのよ？！」











――新宿――

魔法少女まどか☆マギカ


第１３話　「救いも、何も、ないんだよ」

暁美ほむらは戦った。

かつて、人類そのものを滅ぼそうとした存在と。

　

何もかもがわからない場所に辿り着いてもなお、彼女には戦う理由があった。

最愛の人が願った祈りを、ここで終わらせるわけにはいかない――

そして、長きに亘る自らの因縁に決着をつけるために。



高高度の戦場を舞い、光の矢を放つ。

翼を生やした少女の姿は、まるで、救世に現れた天使のように美しく、神々しい。



しかし、人は誰しも、その姿に気付くことはない。

人智を超えし事象は、何らかの形でその歪みを正しい方向へと修正され、収束する。

故に、彼女がいるこの世界には、神、天使、悪魔などという存在はあってはならないのである。











常軌を逸した戦闘の末“舞台装置”を倒したほむら。

世界を救った少女の血で、塔は赤く染まった。

ワルプルギス「ｱﾊ…ﾊ ｱ…ﾊﾊ……」ｶﾞﾗｶﾞﾗ　ｶﾞﾗｶﾞﾗ



リボほむ「……や、やった…………」ﾊｱ ﾊｱ

リボほむ（ついに……倒したわ……！）ｾﾞｪ ｾﾞｪ

リボほむ「…ううっ……」ﾖﾛｯ

リボほむ（……力が…入らない……）ﾌﾜｯ

リボほむ（魔力は……限界…か）

リボほむ（翼が消えていく……。このまま、墜ちてゆくのね…………）ﾋｭｵｵｵｫｫ

リボほむ（…もう……疲れたわ……）

リボほむ（このまま墜ちて死ねば………あの子に逢えるかしら……）ｺﾞｵｵｵｫｫ

リボほむ「…………まどか……」

リボほむ（待っててね。今すぐ、わたしも行くから……）

リボほむ（あなたに逢える……。こんなに嬉しいことはないわ………）

リボほむ「……まどか、わたしね――」






――ｸﾞｻｱｯ ﾌﾞｼｭｳｳｳｩｩｩｩ






リボほむ「」ｸﾞｯﾀﾘ

PUELLA MAGI MADOKA MAGICA

to

Magica Replicant

>>140
はい、ただほむらは好きじゃないので報われない終わりかたにしました

2003/6/12

新宿副都心に突如として大規模なスーパーセルが発生。
同時刻、東京タワー頭頂部に突き刺さった少女の遺体と謎の黒い弓を発見。
黒い弓は政府により回収、保管される。



2003/12

新宿を中心として、全身に黒い紋様が浮かび上がる謎の奇病が発生。致死率は100％。



2004/04

感染者の中に、凶暴化し非感染者を襲う者（レギオン）が出現。



2004/06

奇病を『黒紋化症候群』と命名。
この奇病の原因は不明だが、感染者は『凶暴化』、『死亡』のいずれかが訪れる同一の病であると発表。

政府が『新宿封鎖計画』を実行。
新宿が物理的に隔離される『エリコの壁』を設置。
感染し凶暴化した人間（レギオン）に対する鎮圧続行の声明が出される。

>>146の訂正


2004/10

政府が『新宿封鎖計画』を実行。
新宿を物理的に隔離する『エリコの壁』を設置。
感染し凶暴化した人間（レギオン）に対する鎮圧続行の声明が出される。



2005/12

レギオンに対する自衛隊、自警団による駆除が進行。
白塩化症候群の感染拡大は一時的に沈静化したと発表。



2006/05

『黒い弓』を狙った研究施設への襲撃事件が勃発。
この事件以後、自衛隊の行動が過激化。



2007/10

新宿衛星写真に奇妙な黒点が映る。



2008/02

『エリコの壁』が内部から破壊される。
壁の内側より、大量のレギオンの群れが流出し人々を殺戮。
また、レギオンの統率者である『レッドアイ』も確認され、自衛隊との交戦が始まる。

2008/05

黒紋化症候群の感染が関東全域に拡大。



2008/09

政府機関及び皇居を九州に移転。



2008/10

黒紋化症候群の感染拡大により本州全土が戦場化。
自衛隊は本州に残りレギオンと応戦。
九州、北海道、国外への逃亡を図る者が続出する。



2009/01

日米共同戦線宣言を発表し、日米両政府は軍事協定を締結。
共同戦線を張ったことで人類側が優勢になる。



2009/03

次第に防戦に傾いたため『新宿壊滅作戦』を実行するが、戦果は上げられず。



2009/08/06

新宿への核攻撃が行われる。
しかし、この核攻撃の衝撃で黒紋化症候群の感染が全世界に広まる。

2010/02

中国でレギオンの発生を確認。



2010/03

世界各地で黒紋化症候群の感染が猛威を振るう。



2010/06

黒い弓の調査研究により、本来この世界には存在し得ない素粒子『魔素』を発見。
『魔素』は黒い弓を構成している物質であり、黒紋化症候群の原因と判明。
『魔素』の研究結果により、この世界とは空間を別にして存在する異世界の存在を肯定した『多元世界説』が立証される。



2010/11

『研究所襲撃事件』が勃発し、黒い弓が奪取される。



2014/03

黒紋化症候群への対策として、ヒトの魂を抜き出す『ゲシュタルト計画』が始動。
ヒトの身体から魂を分離・結合させる実験に成功する。

2014/05

魔素を媒介に多元世界からエネルギーを得て、“無から有を生み出す”技術である『魔法』が確立される。
ただし、魔法を使用できるのは、多元世界を分ける壁を越える力を得た『ゲシュタルト』のみ。
また、とりわけ魔法を上手く扱える存在として、第二次性徴期の女性からゲシュタルトになった者がこれに該当する。



2014/11

魔法の使用に秀でた者達として、『魔法少女』の育成・訓練を開始。
レギオンとの戦闘を試みる実験を開始するも、作戦はほぼ失敗。
作戦に参加した少女のゲシュタルト達が、自我の呵責に耐え切れず精神崩壊を起こす。



2016/02

黒紋化症候群の進行を遅らせる薬品『ルシフェラーゼ』の開発に成功。
薬は若い者により効果を発揮することが判明。



2016/05

世界中から身体能力の高い10代の若者（主に女性）が集められ、ルシフェラーゼを投与した精鋭部隊『十字軍』を結成。
『十字軍』はレギオンとの戦いに駆り出され、一定の戦果を収める。



2016/12

より効率的に身体能力が高い子供を確保するため、少年少女達ををスカウトする『ハーメルン機関』を発足。
随時、魔法少女と十字軍の部隊が結成され運用される。

2025/01

ヒトの生体情報を元にしたゲシュタルトの器として「レプリカント」の技術が確立。
ゲシュタルトをレプリカントに結合させる実験に成功する。



2030/03/01

第13次十字軍及び魔法少女の活躍でレギオンのリーダーであるレッドアイが全滅。
全レギオンの統率が失われるが、黒紋化症候群は蔓延し続ける。



2030/05

ゲシュタルトは一定時間が過ぎると知性や自我を失い狂暴化した『崩壊体』になり、さらに時間が経過すると死に至ることが判明。
これを回避するために、崩壊体になる前のゲシュタルトを封じ込める技術として『ソウルジェム』が開発される。
宝石のような物体にゲシュタルトを封じ込める実験が開始。



2030/08

封じ込められたゲシュタルト達がソウルジェムを突き破り暴走する事態が続出。
ソウルジェム内部で崩壊体となったゲシュタルトは、より強力な個体になることが判明。
特に少女のゲシュタルトがソウルジェム内部で崩壊体化した個体は、他の崩壊体を統率する存在として『魔女』と呼称される。
『魔女』は全ての崩壊体の中で最強の力を兼ね備えており、多元世界と繋がる異空間である『結界』を展開し、結界の中にヒトを招き寄せて殺害する。



2030/09

崩壊体の増加と魔女の発生によりソウルジェムの開発が中止される。



2032/02

ゲシュタルト化とレプリカントの技術が一般公開される。
世界中の人間をゲシュタルト化し、レプリカントを作り出すというシステムを半永久的に続ける『レプリカントシステム』が構築される。
レギオンの駆逐とレプリカントシステムの継続を、レプリカントの本能及び活動目的として組み込む。
半永久的に動き続ける『アンドロイド』を作り、レプリカントシステムの管理者として世界各地に配置。



2032/03

ゲシュタルト計画が最終段階へ移行。
世界が黒紋化症候群の脅威から脱するまでゲシュタルトは冷凍睡眠に入る。
限られた予算のため、ゲシュタルト化は一部の特権階級を優先に行われる。
レプリカントは病の原因である魔素を集めることをアンドロイドに指示される。
集めた魔素はアンドロイドの元で異世界へ放出。



2033

本のような器にゲシュタルトを組み込むことに成功し、13冊の『封印の書』が作られる。
『黒の書』と『白の書』の同時起動で生じるエネルギーを利用し、ゲシュタルトを各々のレプリカントへ回帰させる『黒の書計画』が立案・開始される。
崩壊体化を防止するためには、ゲシュタルト化してもなお自我を維持できる安定個体（オリジナル・ゲシュタルト）の魔素の注入が必要であることが判明。
国の救済支援策と偽り、食糧や薬目当てで集まった人々に黒の書のクローンを与えてゲシュタルト化させ、崩壊体化しない個体を探し出す。

2053

ホムラとマドカがゲシュタルト化する。
逃げ込んだＣＤショップにて崩壊体に襲われ、黒の書のクローンを使いゲシュタルト化する道を選択。
ホムラが、ゲシュタルトになっても安定した個体『オリジナル・ゲシュタルト』と認められる。
ハーメルン機関が、マドカに特権階級しか受けられないコールドスリープを1000年間受けさせる代わりに、ホムラから魔素の提供を求めホムラがこれを受諾。



2076

システムの継続と魔素の回収を続けていたレプリカント達に主体的な意思が芽生える。



3000～

レプリカント達が独自の文明・文化を形成する。
ほとんどのレプリカントが自我に目覚め、元となったゲシュタルトの人格とは無関係に環境の影響を受けて成長するようになる。



3288

ゲシュタルト達が覚醒しゲシュタルト化した人々が目を覚ます。
しかし、自我を得ていたレプリカント達は彼らを『マモノ』と呼び、己の肉体を奪う者として敵視するため、レプリカントとゲシュタルトの対立が始まる。



3300～

レプリカントとゲシュタルトの戦いが本格化。
ゲシュタルト達はレプリカントの体に戻るため、黒の書計画による『復活の儀式』を目指すが、ホムラの魔素を取り込んだにも関わらず崩壊体となるゲシュタルトが出現し始める。
この現象に違和感を感じたゲシュタルト・ホムラは独自に行動を開始。



3361/3465

ゲシュタルト・ホムラがクローンではないオリジナルの黒の書を入手。
全ゲシュタルトを一斉にレプリカントに回帰させる『黒の書計画』を実行するため、アンドロイドのキョウコ＆マミはレプリカント・ホムラに白の書の入手と『封印されし言葉』の収集を誘導する。

レプリカント・ホムラの手により悪魔（ゲシュタルト・ホムラ）が死亡。



33XX/34XX

レプリカント・マドカが黒文病の進行・悪化により死亡。



33YY/34YY

オリジナル・ゲシュタルトの喪失により、全ゲシュタルトが崩壊体化。



33ZZ/34ZZ

レプリカント・システムの停止により最後のレプリカントが死亡。