春香「こ、こちらスプリング。Pを発見しました!」(308)

春香「し、指示をお願いします。千早ちゃ……セブンツー!」

千早「サウザントよ! それより目標には気づかれていない?」

春香「うん、大丈夫。距離は離れてるから」

千早「なら、スプリング。目標に向かって走りなさい」

春香「えっ、走るの?」

千早「そう、いつものように「プロデューサーさんっ!」って声をかけながらよ。でないと、こっちを向いてもらえないから」

春香「う、うん……」

千早「後は適当な距離で転んで、目標の胸に飛び込むのよ!」

春香「えぇっ、わざと転ぶの!? そんなこと出来るかな?」

千早「春香、あなたなら出来るわ。いえ、あなたにしか出来ないわ!」

春香「わ、わかったよ。私、やってみる!」

千早「その意気よ」

春香「それではスプリング、ミッションを開始します」

千早「Good Luck To You!」

春香「プロデューサーさーんっ!」

P「んっ、春香?」

春香(よしっ、こっちを向いてくれた)

P「おい、春香。そんな走ったらまた転ぶぞ」

春香「だいじょーぶですよ!」

春香(よし、いまだ)

春香「わ、あわわわわっ!」

ズデーンッ!

春香「……」

P「うわっ、平気か春香!? 思いっきり前のめりに」

春香「こ、こちらスプリング……タイミングを見誤り失敗です」

春香「ガクッ……」

P「春香ーっ!」

千早「もう1回行くわよ!」

春香「また行くの?」

千早「一度失敗したくらいで諦めてはダメよ」

春香「そ、それはそうだけど……失敗すると痛いんだよ」

千早「恋に痛みはつきものって言うでしょ?」

春香「うぅ……わかったよ」

春香「プロデューサーさーんっ!」

P「んっ、春香?」

春香(よしっ)

P「おい、春香。そんな走ったらさっきみたいに派手に転ぶぞ」

春香「だいじょーぶですよ!」

春香(いまだ!)

春香「わっ、あわわわわっ!」

P「春香っ!」

春香(よしっ、タイミングはバッチリ!)

美希「ハニーッ!」

P「うわっ、美希!?」

春香「へっ?」

スカッ……ズデーンッ!

P「は、春香!」

美希「ハニー、ミキがいるのに他の女の子のことを気にするなんてダメなの!」

P「いやいや、それどころじゃないだろ」

春香「こ、こちらスプリング……スターの奇襲により失敗です」

春香「ガクッ……」

P「春香ーっ!」

千早「あのファッキン……パツキン女!」

春香「ねぇ、もうやめにしようよ」

千早「私のプロデューサーに馴れ馴れしく……」

春香「えっ!?」

千早「春香、次よ! 次こそは上手にやれる!」

春香「それ、続きの歌詞が「そんな気がするのよ」だよね?」

春香「それに、今ものすごく聞き逃しちゃいけない言葉を聞いた気がするんだけど」

千早「勝負はこれからよ!」

春香「プロデューサーさん、発見!」

春香「よ~し、こんどこそ……」

春香「ぷろ」

イヌ美「ワウ、ワウッ!」

春香「キャアアアアアッ!」

ズガーンッ!

P「んっ……って、イヌ美?」

イヌ美「ワウッ!」

P「うわあああっ!」

イヌ美「ハッ、ハッ、ハッ」

P「重い、重いって……」

響「イヌ美―っ! どこ行ったんだーっ!」

響「あっ、プロデューサー」

P「響か……はやくイヌ美をどかしてくれ。ただでさへ、大型犬なんだから」

P「うわっ、顔を舐めないでくれ!」

響「ははっ、プロデューサー。イヌ美になつかれているね」

P「笑ってないで早く……」

春香「……」

春香「こ、こちらスプリング。リューキューの番犬の妨害により失敗です」

春香「ガクッ……」

千早「三度目の正直って言うじゃない」

春香「うん……」

千早「それが、どうしてこうなってしまったの!」

春香「そんなの私が知らないよ」

春香「それより、千早ちゃん。さっき、私のプロ」

千早「こうなったら作戦を変えるしかないわ」

春香「えぇ~、まだやるの」

千早「待ち伏せ作戦でいきましょう。それなら春香が不当に転ぶ必要はなくなるわ」

春香「最初から、その作戦にしてよ……」

春香「でも、待ち伏せなんてプロデューサーさんの居場所がわからないと意味がないんじゃないかな?」

千早「安心して。プロデューサーの居場所は把握済みよ。それこそ自宅だって」

春香「えっ、ホント!? 千早ちゃん、教えて!」

千早「それは春香でもダメ」

春香「そんな~」

春香「こちら、スプリング。応答してください、ウォール!」

千早「サウザントよ! それより、配置についた?」

春香「うん……でも、本当に来るの?」

千早「プロデューサーは、この時間は仕事の休憩で公園に来るはずよ。おそらくは、そろそろ……」

春香「あっ、見えた……本当に来た、すごい」

千早「後はプロデューサーの視界に入る位置。ベンチにでも座っていれば大丈夫よ」

千早「プロデューサーは、事務所の子を見かけたら必ず声をかけるから」

千早「声をかけてもらったら、その後は上手くやりなさい」

春香「うん、ありがとう。私、頑張るよ!」

春香「スプリング、ベンチにいっきまーす!」

P「ふぅ……仕事の合間に飲むコーヒーはいいものだな」

P「んっ……あそこに座っているのは」

春香(よしっ。気づいてらえた)

律子「何をやているんですか、プロデューサープロデューサー殿?」

P「えっ?」

春香「えっ?」

律子「その様子だと、休憩中ですか?」

P「ああ……律子もか?」

律子「はい。ちょうどキリがよかったので……どうせだったら、プロデューサー殿と一緒にとろうかな……なんて」

P「竜宮小町のプロデューサーにそう言われるとは光栄だ。でも、俺の居場所なんてよくわかったな?」

律子「プロデューサー殿は、単純ですから。なんでも、お見通しですよ」

P「本当か?」

律子「えぇ、そのコーヒー。ラテですよね?」

P「うっ……当たり。ブラックは苦手でな。本当、お見通しなんだな」

律子「よく……見てますからね」

律子「プロデューサー殿、あっちのベンチが空いてますよ」

P「おっ、ちょうどいい。行こうか、律子」

春香「……」

律子「……」チラッ

春香(律子さん!)

律子「……」ニタァ

春香「……っ!」

P「どうした、律子?」

律子「いえ、知人かと思いましたけど見間違えでした。さぁ、行きましょう」

春香「……」

春香「こちら、スプリング。オータムの策により失敗です」

春香「グスッ……」

千早「あのメガネ……くっ! まさか、私以外にもプロデューサーの行動を把握している人間がいたなんて」

千早「大体、なに? お見通しって、プロデューサーの理解者気取り?」

千早「プロデューサーのことを、一番理解しているのは私よ!」

千早「腹が立つ……」

千早「春香!」

春香「もうやめたいんだけど……」

千早「いいからっ!」

春香「はい……」

春香「こ、こちらスプリング。指定された場所に到着しました」

千早「わかったわ。そのままそこで待機していて」

春香「ねぇ、本当にプロデューサーさんはここに営業しに来るの?」

千早「それは問題ないわ。プロデューサーの手帳にもしっかりと書いてあったわ」

春香「えっ、あの千早ちゃん?」

千早「なに?」

春香「どうして、千早ちゃんがプロデューサーさんのお仕事の予定を把握しているの?」

千早「私は、プロデューサーの担当アイドルよ。プロデューサーの予定を把握していて当然じゃない」

春香「それ、担当の意味が違う気が……」

千早「ともかく、そこで待っていなさい」

春香「う、うん……」

数日前……

P「あれ?」

千早「どうしたんですか、プロデューサー?」

P「千早か……いや、手帳がなくてさ。落としたのかな?」

P「参ったな。今後の仕事の予定とか書いてあるのに」

千早「事務所の方を探してみたらどうですか? 灯台下暗しという言葉もありますし」

P「それもそうだな……探してみるか」

千早「私も手伝いますね」

P「悪い、頼むよ」

P「千早、見つかったか?」

千早「……」

スッ……ポイッ

千早「あっ、プロデューサー。この黒い手帳、もしかして」

P「んっ、どれだ。見せてくれ」

P「あっ、これだこれだ」

千早「デスクの下に落ちてましたよ」

P「本当か。見つけてくれて、ありがとうな」

千早「いえ、そんな気にしないでください」

千早「それより、気をつけてくださいね」

P「あぁ、これからは気をつけるよ」

千早「こちらサウザント、応答してスプリング」

春香「こ、こちらスプリング! どうぞ」

千早「準備はいい。おそらく、そろそろよ」

春香「うん……あっ、プロデューサーさん。テレビ局の人かな? 話がおわったみたい……お辞儀してる」

千早「営業が上手くいったみたいね。流石、私のプロデューサー」

千早「スプリング、プロデューサーにお祝いの言葉とお礼の言葉を」

春香「お礼の言葉? お祝いの言葉だけじゃないの?」

千早「プロデューサーが営業が上手くいったということは、私たちの仕事を取ってきたということよ」

春香「そ、そっか。私たちの仕事は、プロデューサーがとってきてくれているんだよね。これが当たり前になってたから、忘れていたよ……」

千早「分かればいいのよ。さぁ、プロデューサーの元へ、行ってあげなさい」

春香「うん! スプリング、いっきま」

?「あらあら~、ここはどこかしら?」

P「んっ?」

春香「えっ?」

P「なに、やっているんですか。あずささん……」

あずさ「あっ、プロデューサーさん。こんにちは~」

P「こんにちは~、じゃないですよ。何でこんな所にいるんですか」

あずさ「えっと、お天気もいいですし、せっかくのオフなので散歩をと思いまして」

P「それで、こんな所まで来たんですか?」

あずさ「はい~。こんな所で、プロデューサーさんと会えるなんて凄い偶然ですよね」

P「本当に偶然なんですかね?」

あずさ「ふふっ……偶然ですよ」

書き溜めなんかしてないからな

あずさ「もしかしたら、運命の赤い糸でつながっていたりして」

P「それは……まぁ、どうでしょうね」

あずさ「あら、認めてくれないんですね」

P「いいから、帰りますよ。家まで送りますから」

あずさ「は~い」

春香「……」

春香「こちらスプリング、シュニンの迷子スキルにより失敗です」

春香「まぁ、いっか……」

春香「……」

春香「……良くない」

春香「うぅ……」

>41
うん。でも、ところどころ変えてるから

千早「大きいからって、いい気になるんじゃないわよ!」

春香「いや、それを私に言われても……」

千早「それより、春香。あずささんは本当に、偶然プロデューサーの営業先に迷い込んだの?」

春香「うん。少なくともあずささんはそう言ってたよ。あずささんって、本当に方向音痴だし」

千早「甘いわね、春香。もし、それが本当ならあずささんは毎日ろくに事務所に来れないし、事務所から家に帰れるはずがないわ」

春香「えっ、じゃあ……」

千早「そうよ。あずささんの迷子は、プロデューサーに会うための口実であって……」

千早「本当は、方向音痴なんかじゃないのよ!」

春香「そ、それは……考えすぎじゃないのかな」

千早「私がプロデューサーと一緒にいるときに、連絡が来たときは……くっ!」

千早「とにかく次よ、次よ」

春香「千早ちゃん……もう私」

千早「春香、諦めたらダメよ」

春香「うぅ~、わかったよ」

春香「なんだか私、千早ちゃんに遊ばれてる気がしてきた……」

P「ふぅ、営業回り終了っと」

P「ただいま戻りました」

春香(来た。よしっ、ここから千早ちゃんの指示通り、おかえりなさいって迎えて自然に話せば)

春香「おかえりなさい、プロ」

真美「兄ちゃん、おかえりーっ!」

P「おっ、ただいま真美」

真美「兄ちゃん、真美めっちゃ退屈していたんだよー」

真美「だから、遊ぼうよ」

P「いやっ、俺帰ってきたばっかりで疲れているんだけど」

真美「まぁまぁ、そんな固いこといわずにさ」

真美「遊んでくれないと……それっ!」

P「くっ、うはははは! やっ、やめろ、くすぐるんじゃない」

真美「うりうり~遊んでくれるまでやめないよーっ!」

P「わ、わかった。降参だ。遊ぶから……ハハハ、やめてくれ。お腹が痛い……」

真美「さすが兄ちゃん。わかってるー!」

春香「……」

春香「こちら、スプリング。テールのパワーに押し切られ失敗です」

春香「うぅ……」

真美「あっ、そうだ! 兄ちゃん兄ちゃん!」

P「んっ……どうしたんだ?」

真美「どうせだったら、亜美も呼んでいいかな? さっきこの近くにいるってメールきたんだ」

P「あぁ、全然かまわないぞ。電話するなりして、呼んでやれ」

真美「りょーかい。ほんじゃ、ちょっと電話してくるね」



真美「よっと、ピ、ポ、パ……あっ、つながった」

真美「こちらジェミニ1。ジェミニ2、おーとー願います!」

亜美「こちら、ジェミニ2。どったのー?」

真美「あっ、目標をゲットしたから亜美も一緒にあそぼーよ!」

亜美「ホント、遊ぶ遊ぶ!」

真美「でも、本当に効くとはビックリだよ」

亜美「何がー?」

真美「亜美の言ってた後出しじゃんけん作戦。先に手を出したリボンを見事にかんぷーだよ!」

亜美「でしょう。亜美、これ考えた時、めっちゃイケてるって思ったもん」

亜美「みんな、兄ちゃんのこと好きなのはわかるけどさ」

真美「自分のこと、ばっかりだよね。アピールのし過ぎは、興味が減って逆効果だって兄ちゃんも言ってるのにね」

亜美「うんうん。さじ加減が大事ってことですねー、はい」

真美「まっ、真美たちは皆から兄ちゃんのことをそういう風に見てないって思われてるよね」

亜美「せいぜい、遊び相手感覚って思われてるよね」

真美「だから、好きに動けるんだけどね」

亜美「皆をだまして、兄ちゃんを横から奪う……かっこいーね!」

真美「うわぁ、亜美。今、めっちゃ悪い顔してるでしょ?」

亜美「真美の方もね~」

真美「うんうん、じゃあ兄ちゃんと一緒に待ってるから」

亜美「ほ~い」

千早「春香……」

春香「はい……」

千早「負けちゃダメじゃないの!」

春香「うん……でも、あれは」

千早「パツキン女だったら、プロデューサーにまとわりつくテールもアップも関係なく仕掛けるわよ」

春香「美希ちゃんは、その……図太いから」

千早「まぁ、後悔しても意味がないわ。大切なのは未来へと羽ばたくことよ」

春香「あぁ……うん。次もやるんだね」

春香「千早ちゃん、プロデューサーさん。本当にこの本屋に来るの?」

千早「えぇ、プロデューサーは仕事が終わるとそこの本屋によって雑誌を立ち読みするわ」

千早「私達の雑誌での写真映りや記事をチェックしているのよ」

春香「へぇ~、そうなんだ」

春香「そういえば、この間プロデューサーさんの机の上にあるカレンダー、赤い丸がついていたっけ」

千早「赤い丸……なにそれ?」

春香「うん、この間ね。私の特集を組んでくれた雑誌があったの」

春香「それで、その雑誌の発売日が赤い丸がついていた日付と一緒だったから」

千早「そ、そう……初耳だわ」

千早「と、とにかく頑張ってね、春香」

春香「うん、私頑張る」

千早「……」

千早「プロデューサーの机、カレンダーっ!」

千早「赤、黒、黄色(亜)、黄色(真)、ピンク、オレンジ、白、若草色、紫、えんじ色」

千早「あった……って」

千早「これは、リューキューの色、スカイブルーじゃない!」

千早「青は、青はどこ!?」

千早「青はどこよおおおぉおおおおっ!」

ガシャーンッ!

千早「ハァハァハァ……」

千早「いけない、落ち着かないと。プロデューサーの机、ぐちゃぐちゃにしてしまったわ」

千早「片付けないと……」

千早「あら……カレンダーがめくれて、次の月に……」

千早「あっ、青い丸」

千早「ふふふっ……もう、プロデューサー」

千早「……」

千早「ほっ……」

春香「……」

春香「遅いなぁ、プロデューサーさん」

春香「千早ちゃんの言う通りならもう来てもいいのに……」

春香「もしかして、千早ちゃんの予想?が外れたのかな」

春香「でも、さっきまで全部的中してるからなぁ」

春香「もうちょっと待ってみよう」

春香「プロデューサーさん、来ないなぁ」

春香「やっぱり外れたのかも」

春香「ちょっと千早ちゃんに連絡してみよう」

春香「こちらスプリング。ブルーバード、応答願います」

千早「サウザントよ。でも、それもいいわね」

春香「あっ、そう……」

千早「プロデューサーが来ない?」

春香「うん。さっきからずっと待っているんだけど」

春香「今日は、寄っていないのかな?」

千早「それはないわね。もう、プロデューサーのチェックは一種の習慣だから」

春香「そうなんだ。う~ん、でも……」

千早「春香、私を疑っているの?」

春香「ち、違うよ。そんなわけない」

千早「少し待っていて、私も現場に急行するわ」

千早「本屋までこっちよね……」

千早「プロデューサー、一体どこに」

千早「……っ!」

千早「あっ、あれは……プロデューサー」

千早「でも、なんでゲームセンターから?」

P「ったく、何で俺が……」

伊織「しょうがないじゃない。友達、誰も捕まらなかったんだから」

P「だったら、竜宮のメンバーで撮れよ。プリントシールくらいさ」

伊織「竜宮のみんなとは仕事で十分一緒に写ってるわよ」

伊織「どうせ、あんた暇でしょ?」

P「俺にだって用事ってものがな……」

伊織「なに、この伊織ちゃんとのツーショットが気に食わないわけ」

P「そうは言ってないけどさ……」

P「俺が付き合う必要はどこにも」

伊織「うっさい! 下僕は、下僕らしく主人の命令を聞きなさいよ!」

伊織「でも、私の事情に付き合わせて、あんたの時間を取っちゃったのは癪だけど事実だわ」

伊織「だから、お詫びと言っちゃなんだけど、車を用意しておいたわ」

P「えっ、でも俺の家ってけっこう遠いぞ?」

伊織「車なんだから、大したこと無いわよ」

伊織「ほら、待たせちゃ運転手に悪いから行くわよ」

ガシッ……

P「っと、手を掴むなよ」

伊織「だったら、さっさと歩く!」

P「わかったよ……」

伊織「~♪」

千早「……」

千早「こちらサウザント。オデコサンシャインのイレギュラーにより失敗」

千早「くっ……」

千早「春香、ごめんなさい」

春香「い、いいよ。千早ちゃんのせいじゃないから」

千早「でも、私がもっと早くに気づいていれば……」

春香「ホントに気にしなくていいよ」

千早「このミスは必ずフォローしてみせるわ!」

春香「えぇ、まだやるの。もう、こんな時間だよ?」

千早「そうね。チャンスはまだあるわけだし」

千早「今はお互い、明日のために英気を養いましょう」

春香「うん、それがいいよ」

千早「春香、また明日」

春香「うん。また、明日」

飯を作ってくる

ガチャ

千早「ただいま」

千早「おかえり、千早」

千早「プロデューサー、帰ってきていたんですね」

千早「あぁ、仕事が早めに終わってね」

千早「そうだ、夕飯を作っておいたんだ」

千早「私のためにですか? 一人で先に食べてくれていてもよかったのに」

千早「飯は、誰かと食べる方が美味しいものさ」

千早「プロデューサー……」

千早「因みに、メニューは、ご飯と野菜炒めと生姜焼き」

千早「プロデューサー。それ、昨日の残り物ですよ」

千早「ははは、そうだった」

千早「次はちゃんと作ってくださいよ」

千早「カップラーメンとか?」

千早「プロデューサー……」

千早「冗談、冗談だよ。だから、そんな顔しないでくれ」

千早「もう……早く食べましょう」

千早「へぇ、今日は春香がそんなことを」

千早「はい。プロデューサーの気を引きたいらしくて」

千早「ははは、可愛いじゃないか。そうやって、気持ちを向けてもらえるのは嬉しいよ」

千早「笑い事じゃないですよ。あの子、押しが弱いから何度も何度も邪魔が……くっ」

千早「なんだか娘を心配する母親みたいだな」

千早「そうなると、プロデューサーは父親になりますね」

千早「ちっ、千早!?」

千早「ふふっ、冗談です」

俺「」でやるのはただのネタだが
千早「」でやられるとちょっと怖いな

千早「でも、どうして千早は春香の恋を応援するんだ?」

千早「春香は、私の親友ですから」

千早「世界でただ一人、春香だけは私のプロデューサーと共にいることが許されているんです」

千早「プロデューサーの隣に、私と春香。鳥は両翼がそろってこそ、羽ばたくことができるんです」

千早「なるほどな。お前たちは俺の翼だ……みたいな感じか」

千早「はい、三人そろえば……」

千早「どこまでも、羽ばたいていけます!」

千早「そうだな……それなら千早には頑張ってもらわないとな」

千早「はい、任せてください」

ガチャ

春香「ふぅ……今日は疲れたなぁ」

春香「明日もお仕事か……」

春香「……」チラッ

春香(プロデューサーさんとの写真……)

春香「お仕事、いっぱい頑張れば、プロデューサーさん、ほめてくれますよね?」

春香「……」

春香「よしっ、明日も頑張るぞ私。オッー!」

春香「おやすみなさい、プロデューサーさん!」

春香「んっ……」

春香「……写真に向かって何やってるんだろ、私///」

千早「心機一転!」

春香「あ~たらしい朝が来た!」

千早「今日も頑張るわよ、春香!」

春香「うん、任せて千早ちゃん」

千早「春香、調子良さそうね」

春香「うん……そのプロデューサーさんから元気を分けてもらったから」

千早「そう、良かったわね。私もよ……」

春香「えっ、千早ちゃんも?」

千早「えぇ……とっても」

春香「それで、今日はどうするなの?」

千早「そうね。春香、お菓子は持ってきているかしら?」

春香「あぁ、うん。皆にあげようと思って焼いてきたケーキがあるよ」

春香「千早ちゃんにもあげるね。はい」

千早「ありがとう。んっ……美味しい。春香、これ、ちゃんとプロデューサーにあげなさい」

春香「あっ、もしかして……」

千早「プロデューサーのお腹をものにすれば、春香の勝ちは絶対的よ!」

春香「でも、料理が得意な子は他にもいるよ?」

千早「同じ舞台で戦う必要なんてないわ。春香はあくまでお菓子で攻めればいいのよ」

春香「そっか、それなら私でもいけそう。やってみるね!」

春香「プロデューサーさん」

P「うん、どうした春香?」

春香「お仕事、進んでますか?」

P「う~ん、まぁまぁボチボチかな」

春香「あんまり無理しないでくださいね」

千早(今よ、春香!)

春香「あっ、そうだ……プロデューサーさん。疲れた時は甘いものって言いますよね?」

P「まぁ、実際そういうものだしな」

春香「私、お菓子作ってきたんですよ。良かったら……」

P「いいのか?」

春香「はい、それはもう!」

千早(よくやったわ、春香!)

千早「勝った……」

律子「それはどうかしら?」

千早「……っ!」

千早「昨日は……」

律子「あら、あれは偶然よ。公園にきたら、たまたまプロデューサー殿がいたというだけ」

律子「春香も大変ね。あなたのおせっかいに付き合うことになっているんだから」

千早「くっ……それより、さっきの言葉はどういう意味?」

律子「攻めすぎるのも不味い……ということよ」

春香「プロデューサーさん、まだありますよ」

P「おう……しかし、あれだな」

春香「なんですか?」

P「こう甘いものばっかり食べてると、ちょっと口直しに苦いものが欲しくなるよ」

春香「あっ、だったら私、お茶を」

コト……

P「ん……このお茶は?」

雪歩「ぷ、プロデューサー、どうぞ……」

P「雪歩……」

雪歩「……」ニコッ

P「このお茶……」

雪歩「プロデューサー、食べてばっかでしたから」

雪歩「もしかして、お邪魔でしたか?」

P「いやっ、そんなことない。ありがたく貰うよ」

P「……」ズズッ

雪歩「どうですか?」

P「うん。ぬるくもなく、熱すぎない丁度いい温度だ。とても飲みやすいよ」

P「あと、茶葉変えた? なんだか、いつも飲んでるのより心なしか味が違う」

雪歩「いい茶葉が手に入ったんです。それで……」

P「あぁ、なるほどな。ありがとうな、雪歩」

雪歩「いえ、そんな……」

P「お茶の味なんて大して変わらないものかと思っていたけど、違うんだな」

雪歩「そうですよ、ブレンドとかでも大分違いますよ」

P「そっか、今度試してみるよ」

雪歩「あっ、だったら私が一緒に茶葉を選ぶの手伝ってあげますよ」

P「本当か。雪歩がいてくれると心強いよ」

雪歩「えへへ……」

P「日程とか決めておこうか?」

雪歩「そうですね。一緒に決めましょう」

P&雪歩「……」ワイワイ

春香「……」

春香「こちらスプリング。スノーのお茶に、全て持っていかれてしまいました」

春香「うぅ……」

千早「……」

律子「春香がプロデューサー殿にお菓子を食べさせすぎたから、こういう結果になった」

律子「あれだけ甘いものを食べれば、どんなお茶もいつもと違う味わいになるでしょうね」

千早「まさか萩原さんは!?」

律子「さぁ、そこまでは分からないわ。ただ大事なのは、雪歩がプロデューサー殿とデートの約束を取り付けたということよ」

律子「……データの見直しが必要ね」

千早「くっ……策士、策におぼれるなんて」

亜美「真美、真美……」

真美「どしたの、亜美?」

亜美「ゆきぴょんのあれって、要は亜美たちのやった後出しじゃんけんだよね?」

真美「それに近いんじゃないかな」

亜美「実際、目の前でやられると超有効だってわかるね」

真美「真美たちも気をつけないと……」

亜美「うんうん」

律子「あんた達、何しゃべってるの?」

亜美「な、なんでもないよーっ!」

千早「困ったわね。まさか作戦が失敗に終わるなんて……」

春香「ごめんね、千早ちゃん。私のせいで」

千早「後悔をするくらいなら、次の手を考えましょう」

春香「う、うん。凄いね、千早ちゃんは全然諦めてない」

春香「私なんか……」

千早「……」

千早「春香、元気だせって」

春香「千早……ちゃん?」

千早「落ち込むなんて春香らしくないよ」

千早「春香には、笑顔が似合っているんだからさ」

春香「ぷっ……千早ちゃん。それ、プロデューサーさんの真似?」

千早「えぇ、そうよ……プロデューサーなら、春香にこんな風に声をかけるだろうから」

春香「そうだね……ありがとう、千早ちゃん」

千早「お礼は、俺に言ってほしいんだけど」

春香「くすっ、またプロデューサーさんの真似。ありがとうございます、プロデューサーさん」

千早「それを聞けば、プロデューサーも喜ぶわね」

春香「本当かな~」

千早「本当よ」

千早「萩原さんは、プロデューサーと二人きりになる時間を手に入れたわ」

春香「う、うん。約束したね」

千早「なら、こちらも約束をかわしましょう」

春香「それってデートとかの?」

千早「えぇ、二人きりの時間と言うのはやっぱり二人の距離を縮めるのに最適よ」

春香「なるほど~」

千早「とりあえず、お昼ご飯の約束でもしてきたらどうかしら?」

春香「そうだね。私、やってくる……あっ、でも千早ちゃんはいいの?」

千早「私のことは気にしないでいいわよ。会おうと思えば、いつでも会えるわけだし」

春香「それもそっか。じゃあ、私、行ってくる!」

千早「頑張って、春香」

やよい「うぅ~、困ったな」

P「どうしたんだ、やよい?」

やよい「実は、今朝寝坊しちゃってお弁当を作る時間がなくて」

やよい「お腹すいちゃって……」

P「財布は無いのか?」

やよい「あるには、あるんですけど……」

P「むぅ……これじゃあ昼飯もままならないな」

やよい「はい……」

親が帰ってきたので、飯。作った飯を喜んでくれるといいが

春香「プロデューサーさーんっ!」

P「どうしたんだ、春香?」

春香「プロデューサーさん、お昼ご飯いっしょに食べませんか?」

P「あぁ……」チラッ

やよい「うぅ~」

春香「どうかしたんですか?」

P「やよいが寝坊して弁当をつくりわすれたらしくてな」

春香「もしかして、朝ごはんも?」

やよい「はい……抜いちゃいました。力がでません」

やよい「プロデューサー、私のことは気にしなくていいですよ? 私が寝坊したせいですし」

P「バカ言うな。こんな状態のやよいを放っておけるわけにないだろ」

春香「プロデューサー、やよいも連れていきましょう」

P「春香……」

春香「やよい一人だけを仲間外れなんて出来るわけないじゃないですか」

やよい「春香さん……でも、私お金が」

春香「心配しなくていいよ。プロデューサーさんが奢ってくれるって」

P「なっ、は、春香!?」

春香「いいですよね、プロデューサーさん?」ニコッ




P「はぁ~、仕方ない。よしっ、俺に任せてくれ! 男の甲斐性ってやつを二人に見せてやる!」

春香「ごちそうさまです、プロデューサーさん!」

やよい「プロデューサー、いいんですか?」

P「気にするな。普段頑張っているご褒美だ。ただ、他のみんなには内緒な?」

やよい「はっ、はい。シーですね、シー」

春香「こちらスプリング。べろちょろの不調により、二人きりのお昼ご飯は失敗です」

春香「でも、こういうのも良いよね」

P「春香、なにしてるんだ?」

やよい「うっうー! 春香さん、早く早くーっ!」

春香「あっ、待ってくださーい!」

千早「随分と、お昼ご飯に時間がかかったわね……」

春香「あぁ、うん…・・ちょっとね」

千早「それで、なんでもいいから次の約束はしたの?」

春香「あっ……」

千早「春香……」

春香「ごめんごめん。つい……」

千早「ちなみに高槻さんは、夕飯の買い出しの手伝いの約束を取り付けたわよ」

春香「えぇ!? それ、いつ?」

千早「さっきよ……」

春香「うぅ……」

千早「でも、プロデューサーと一緒にご飯を食べれたわけだしよかったじゃない」

春香「う、うん……」

千早「なら、一歩前進じゃない」

千早「気を取り直して、次よ。次!」

春香「うん、わかった」

千早「スプリング、状況は?」

春香「あっ、うん。大丈夫だよ」

千早「レッスン、もうすぐプロデューサーが見に来ると思うわ」

千早「良い所を見せて、プロデューサーの気を引くのよ」

春香「そんなのでうまくいくのかな?」

千早「何か言ったかしら?」

春香「なっ、なんでもない」

千早「春香……がんばれよ!」

春香「あの……プロデューサーさんの真似、あまり似てないよ」

千早「……」

P「おーい、みんな。やってるか?」

春香「あっ、プロデューサーさん」

P「おっ、春香。調子はどうだ? またレッスンでこけたりしてないか?」

春香「そ、そんなことあるわけないじゃないですか」

P「本当か?」

春香「も、もちろんですよ」

P「よーし、それじゃあ一度通しでやってみてくれ」

春香(頑張れ、私! ファイトだ、私!)

千早(プロデューサー……しっかりと私を見ていてくださいね)

春香(よしっ! ノーミス、完璧! アピールもばっちり!)

千早(プロデューサー……)

P「おっし、みんなバッチリだな。中でも、すごく良かったのは……真だな」

春香&千早(えっ?)

真「ぼ、僕ですか?」

P「あぁ、ダンスがかなり良かった」

響「くっそーっ! ダンスでは、真に負けたくなかったぞ!」

P「響も響でよかったけど、1歩足りなかったな」

P「真、よく頑張ったな。歌の表現もよく出来てたぞ」

P「お姫様もやれば出来るじゃないか」クシャ

真「わわっ、やめてくださいよ、プロデューサー、みんなが見てます」

美希「いいな~、真くん」

春香「……」

春香「こちらスプリング、プリンスのダンスにより作戦失敗です」

千早「……くっ」

春香「う~ん、困ったな。私の全力が負けちゃうなんて……」

春香「ねぇ、千早ちゃん。次はどうするの?」

千早「プロデューサー……」

千早「何処にいるんですか? 声を聴かせてください」

千早「優しい声で、千早って呼んでください」

春香「おーい、千早ちゃん?」

千早「プロデューサー……」

春香「千早ちゃん!」

千早「……っ!?」

千早「は、春香……」

春香「しっかりしてよ、千早ちゃん」

千早「ごめんなさい、春香。少し取り乱していたわ」

春香「次はどうするの?」

千早「そうね……」

春香「こちら、スプリング。スーパーに到着しました」

千早「いいかしら、そのスーパーはプロデューサーが食材を買いためする時に使うわ」

春香「プロデューサーさん、ここのスーパーを使うんだ。あっ、本当だ。けっこう安い」

千早「冷蔵庫の残りを見る限り、おそらく食材を買いにくるのは今晩よ」

春香「そうなんだ。じゃあ、私はここで待てばいいんだね」

春香「でも、この間みたいにプロデューサーさんが来なかったらどうするの?」

千早「その時は、諦めるわ。また明日、頑張りましょう」

春香「う、うん……わかった」

春香「あっ、プロデューサーさん!」

春香「えっ……あれは」

貴音「すみません、貴方様。こんな私用に付き合わせてしまいまして」

P「気にするなよ。どうせ、俺もここに寄るつもりだったわけだし」

P「しかし、ビーフシチューにはまったのか?」

貴音「いえ、そういうわけでは……」

P「それじゃあ、なんでまた?」

貴音「その……もっと美味しく作れるようにしたいのです」

P「ビーフシチューをか?」

貴音「はい……」

P「へぇ、こだわるんだな。前に食べたときでもかなり美味しかったのにな」

貴音「もっと、喜ばせてあげたいですから……」

P「?」

貴音「あの……貴方様」

P「何だ?」

貴音「この後、お時間は……」

P「あぁ、平気だぞ」

貴音「それなら、今宵は私のびーふしちゅーの研究に付き合ってくれないでしょうか?」

P「俺が?」

貴音「はい。貴方様は、私が以前に作ったものを食べているので」

P「なるほどな。俺に比べてみてほしいというわけだ」

貴音「はい。もちろん、貴方様が無理と言うなら」

P「付き合うよ。貴音のビーフシチュー、ただでご馳走になれるのはラッキーだしな」

貴音「まぁ……ふふっ、貴方様は現金なお方なのですね」

P「貴音たちみたい高給とりじゃないんだ」

春香「……」

春香「こちらスプリング。目標はシルバーと共に行動中。介入の余地なく……失敗です」

春香「……」

千早「作戦失敗!?」

春香「ごめんね、千早ちゃん」

千早「シルバー、やってくれるわね……」

千早「でも、これは嬉しい誤算ね」

春香「えっ、千早ちゃん。何か言った?」

千早「いえ、何でもないわ。春香、あなたは今日はもう戻りなさい」

春香「う、うん。わかった」

千早「ごめんなさいね。実家通いなのに付き合わせてしまって」

春香「気にしなくていいよ。だって、千早ちゃんが私のことを本気で考えてくれているんだもん。感謝はしても、責めることなんかできないよ」

千早「春香……」

春香「私のほうこそゴメンね。プロデューサーさんの真似、にてないとか言っちゃって。少しイライラしてたみたい」

千早「いいわ、気にしてないから」

千早「私の方こそ、ごめんなさい。春香の気持を考えずに……」

春香「も、もう、そういうのはいいよ。このままじゃ、お互いずっと謝りっぱなしになっちゃう」

千早「ふふっ、そうね……」

春香「じゃあ、千早ちゃん。私、そろそろ帰るね」

千早「春香!」

春香「んっ?」

千早「おやすみ、春香」

春香「……」

春香「千早ちゃん、やっぱり似てないよ」

千早「ふふっ、私もそう思う。それじゃあ、また明日」

春香「うん。おやすみ千早ちゃん」

千早「さて、私もそろそろ帰らないと……」

千早「でも、その前に」

千早「シルバー、あなたが稼いでしまった時間。有効に使わせてもらうわ」

千早「私とプロデューサーとの距離をもっと近づけるために」

千早「これで、大丈夫ね」

千早「千早、俺の部屋で何をしたんだ?」

千早「プロデューサーと私のつながりを強くするおまじないです」

千早「おまじない? 千早でもそういうの信じるんだな」

千早「わ、私も……その……女の子ですから」

千早「ふ~ん」

千早「も、もう帰りましょう」

千早「そうだな、帰ろうか。俺たちの家に」

千早「はい、プロデューサー」

P「ただいま……っと」

P「けっこう食べたな」

P「風呂入って、さっさと寝るか。ついでに歯磨きもすまそう」

P「んっ?」

P「これ、俺の歯ブラシだよな? その割には、新しいというか……毛先がきれいというか」

P「う~ん、買い換えたっけ?」

P「まぁ、気にしてもしょうがないか。磨く分には問題ないわけだし」

P「そういえば、最近は春香とろくに話してないな」ゴシゴシ

P「春香は、我慢強い子だから色々とため込んでるものがあるかもしれないし」ゴシゴシ

P「やよいと飯を食べにいった時も、あまり話してあげれなかったし」ゴシゴシ

P「……アイドルの心のケア、しっかりやらないとな」ゴシゴシ

P「んぐっ……ブクブク、ぺっ!」

P「よしっ、明日は春香を中心のプロデュースをするか!」

千早「おはよう、春香」

春香「あっ、おはよう千早ちゃん。なんだか、調子よさそうだね」

千早「ふふっ、そうかしら?」

春香「すごい顔が活き活きとしてるもん」

千早「春香には、わかってしまうのね」

春香「だって千早ちゃんは私の親友だからね!」

千早「……春香、今日も頑張りなさいね」

春香「うん。私は絶対にプロデューサーさんのことあきらめないよ!」

千早「その想い、プロデューサーに届くはずよ」

春香「ありがとう、千早ちゃん」

P「おはようございます!」

春香「あっ、プロデューサーさん!」

美希「ハニー、おはようなのーっ!」

美希「ねえねえ、ハニー! 今日はミキをプロデュースしてくれるよね?」

真「プロデューサー! 今日、僕すごく調子がいいんです。プロデューサーがプロデュースしてくれたら、完璧な仕事をしてみせますよ」

真美「兄ちゃん、兄ちゃん~!」

千早(私のプロデューサーに、話しかけていいのは春香だけよ)

P「悪いな。今日は春香って決めているんだ」

春香「えっ、わ、私ですか?」

美希「えっ~、そんなのズルいの。ねぇ、春香変わって?」

春香「だ、ダメだよ。プロデューサーさんが決めたことなんだから」

真「まっ、それじゃあしょうがないよね。今日は春香に譲るよ」

真美「ちぇ~」

P「今日は、よろしくな」

春香「あっ、はい……よろしくお願いします」

千早「春香、春香」チョイチョイ

春香「んっ、どうしたの千早ちゃん?」

千早「今日の作戦よ……」ヒソヒソ

春香「えっ……こ、告白!?」

春香「そ、それはいきなり過ぎるんじゃないかな?」

千早「よく考えてみなさい、春香」

千早「現状、プロデューサーのみんなへの好意は大して差はないわ」

千早「なら、そうそうにジョーカーを切って勝負を決めてしまったほうがいい」

千早「今のままじゃ、春香は周りの子たちに押され流されうまくいかない」

春香「うん……いままで散々だったもんね」

千早「なら、このタイミングでしかけるしかないわ」

春香「そう……なのかな」

千早「これを逃したら、もう無理ね」

春香「……っ!」

春香「わかったよ、千早ちゃん」

春香「私……プロデューサーさんに告白する」

千早「そう……覚悟をきめたのね」

春香「うん。私、歌もダンスもこの事務所の中では1番じゃないけど……」

春香「プロデューサーさんを想う気持ちならだれにも負けない自信あるから」

千早「あら、それは私にも?」

春香「もちろんだよ! これは千早ちゃんでも譲れない」

千早「それを聞いて安心したわ」

千早「春香、私が言ってあげられることは一つしかないわ」

千早「しっかりやりなさい」

春香「ありがとう、千早ちゃん!」

千早「Good Luck To You!」

春香「スプリング! 作戦を開始します!」

P「今日は、スイーツフォレストの特集だ」

春香「えぇ、本当ですか!? 嬉しいな~」

P「お菓子をいっぱい食べれるからか?」

春香「はい、それはもう!」

P「あまり食べ過ぎるなよ?」

春香「うっ……わかってますよ」

春香「そうだ、プロデューサーさんも食べましょうよ」

P「お、俺もか? そりゃあ、取材の時にスイーツを食べるのは、少しだけだし残るだろうけどさ」

春香「だったら、残った分を私とプロデューサーさんでわけましょうよ」

P「まぁ、春香がそれでいいなら構わないが……」

春香「よしっ!」

P「うん? どうした、春香?」

春香「いえ、なんでもありませんよ」

春香「はい、プロデューサーさん」

春香「あーん」

P「……」

春香「プロデューサーさん。あーん」

P「……」

春香「プロデューサーさん!」

P「あ、あーん」

春香「美味しいですよね?」

P「あぁ、そうだな」

P(は、恥ずかしい。番組スタッフさん、そんなニヤニヤした目で見ないでくれ)

春香「えへへ……」

P(春香は、春香で自覚がない様子……)

春香「プロデューサーさん、あーん」

P「甘いものは別腹というが、まだいけるのか?」

春香「なに、言ってるんですか? まだまだいけますよ!」

P「うえ……」

春香「ぷ、プロデューサーさん! 今のうえって、なんですか!? うえって!?」

P「春香のお菓子好きを褒めているんだ」

春香「あっ、プロデューサーさん。休憩みたいですよ」

P「そうか……それじゃあ近くの公園にでも行かせてもらおう」

春香「どうしてですか?」

P「甘いものを入れ過ぎで……胃が。芝生の上で大の字になりたいんだ」

P「うっ……」

春香「わわっ、プロデューサーさん!」

P「……」

春香「大丈夫ですか、プロデューサーさん?」

P「だいぶ楽になったよ。ごめんな、ここまで来るのに肩かしてもらって」

春香「いえ、もとはと言えば私のせいですし……ごめんなさい、はしゃぎすぎちゃいました」

P「気にしなくていいよ。それより春香」

春香「はい、なんですか?」

P「足、痺れてないか?」

春香「大丈夫ですよ、これくらい。へっちゃらです」

P「伊達にレッスンしてないってわけか」

春香「そうですよ。私、本当はすごいんですから」

P「そうだろうな。なら、その春香に膝枕をしてもらっている俺はとんでもない贅沢者だな」

春香「プロデューサーさんだけの特等席ですよ。ファンの人たちにはできません」

春香「プロデューサーさん、風が気持ちいですよ」

P「あぁ……」

春香「……」

P「……」

そろそろ辛くなってきた

P「なぁ、春香……すまなかったな」

春香「どうしたんです、突然?」

P「春香の相手、全然してなかったことだよ」

P「春香はしっかりしているから……っていうか、あまり手の掛からないから」

P「どうしても、春香のことを放置気味になってしまうんだ」

春香「プロデューサーさん……」

P「酷い奴だよな。みんなをトップアイドルにするとか言っておいて、アイドルをおろそかにしてしまうなんて」

春香「確かに、プロデューサーさんは酷い人かもしれませんね」

P「うっ……はっきりと言われると辛いな」

春香(皆の気持ちに気づかないところとか……)

春香「でも、プロデューサーさんは私のことを忘れたわけじゃありませんよね?」

P「当たり前だろ」

春香「それって、私のことを気にかけてくれていたってことですよね?」

P「そりゃあそうだ」

春香「なら、いいじゃないですか」

春香「プロデューサーさんの想い、ちゃんと私に届いてますから」

P「春香……」

春香「プロデューサーさん。プロデューサーさんには、私の想いは届いてますか?」

P「……ごめん」

春香「そう……ですよね。私、何も伝えてないですからね」

P「俺は……知りたい。春香の気持ちを……想いを……」

春香「……んっ」

P「……」

春香「……」

P「……」

春香「ぷはっ……」

P「息、止めてたのか?」

春香「だって、初めてでしたから」

春香「プロデューサーさん、私の気持ちは届きましたか?」

P「あぁ……確かにな」

P「なぁ、春香……キス、してもいいか?」

春香「はい、いいですよ」

春香「んっ……」

P「周りに見られてないかな?」

春香「私は、見られたって平気です」

春香「きっと、プロデューサーさんが守ってくれますから」

P「世間にばれた時は、二人きりで逃避行としゃれこむか? ジェット機チャーターして」

春香「無人島にバカンスですか? プロデューサーさん、それは美希の曲ですよ」

P「あはは、そうだった……」

ゴメン、完全に寝てた

春香「プロデューサーさん……」

P「ん?」

春香「好きです」

P「……」

P「知ってるよ」

春香「プロデューサーさんは、どうですか?」

春香「プロデューサーさんの気持ち、伝えてください」

P「さっきのが……」

春香「ちゃんと言葉で言ってくれなきゃ、女の子は嫌ですよ」

P「……」

P「春香……」

春香「はい」

P「俺は、君のことが好きだ」

P「お菓子が好きな可愛らしい所も、よく転んでしまうドジな所も、リボンが似合う所も」

P「君の全てが愛おしい」

春香「……」

P「春香……」

春香「はい」

P「俺は、君のことが好きだ」

P「お菓子が好きな可愛らしい所も、よく転んでしまうドジな所も、リボンが似合う所も」

P「君の全てが愛おしい」

P「俺には、力も何もない。でも、世界中のだれよりも君を愛せる自信がある。だって、俺は君のプロデューサーだから」

P「だから、春香。俺の気持ち、受け取ってくれ」

春香「はい……」

P「ありがとう、春香……」

春香「……」

こちらスプリング……目標の獲得を確認、作戦大成功です!


fin

千早「そう……春香、おめでとう」

千早「えっ、私のおかげ?」

千早「よして、私は春香に何もしてあげられなかったわ」

千早「プロデューサーを手に入れたのは、まぎれもない春香自身の力よ」

千早「それでも、ありがとう?」

千早「春香……あなたって、本当にお人好しね」

千早「えぇ、それじゃあプロデューサーによろしくって言っておいて」

千早「春香、本当におめでとう……」

千早「……」

千早「……」

千早「あの、プロデューサー」

千早「どうした、千早?」

千早「港に行きませんか? 海がみたいです」

千早「あぁ、構わないぞ」



千早「……潮風が気持ちいいですね」

千早「髪を傷めるらしいけどな」

千早「プロデューサー。春香、プロデューサーと結ばれたそうですよ」

千早「そっか。よかったな……」

千早「これで、俺と千早と春香の3人ってわけだ……羽ばたく準備は出来たってわけだ」

千早「プロデューサー、違います。全部が終わったんです」

千早「……」

千早「プロデューサー」

千早「うん、知っていたよ。俺がプロデューサーでも、なんでもないってことは」

千早「私、プロデューサーに気持ちを伝えることができない臆病者です」

千早「だから、春香に自分を映して……そういうことだろ? でなければ、あんなに必死にならないさ」

千早「やっぱりプロデューサーには、わかってしまうんですね」

千早「当たり前だろ。俺は千早から生まれたんだからさ」

千早「春香と俺が結ばれた時に、そうすれば千早は幸せなはずだった」

千早「でも、私は春香とプロデューサーが幸せそうにする姿を想像したら……春香を、親友を許せそうになかった」

千早「そこで、俺が出来たってことだよな? 俺に依存すれば春香への憎しみも薄れる」

千早「そうです。最初は、演技の延長でやってみただけで」

千早「でも、気が付いたら必死になっている自分がいて……」

千早「千早の歌に対する表現力が、演技の表現力につながって……それの結果かもな」

千早「はい……」

千早「最初はうまく出来ませんでしたけどね」

千早「それはそうだよ。だって、俺は千早の持つ俺との記憶と俺に対するイメージで作られた」

千早「出来そこないのプロデューサーだからな」

千早「そうです……私が作り出した、とっても稀薄な存在でした」

千早「だからこそ、よりプロデューサーの存在を確かなものにするために」

千早「俺の部屋、行動、予定、口調、服装、癖……おおよそ考え付く俺の全てを取り込もうとしたよな」

千早「はい……だって、そうすればプロデューサーはいつも私のそばにいてくれることと同じですから」

千早「でも、いないんです」

千早「どれだけやっても……プロデューサーはいないんです」

千早「いるはずなのに……声を返しくれるのに、そこにいないんです」

千早「千早、それは当たり前じゃないか」

千早「だって、俺はそこにいないだから……」

千早「千早だって、わかっているんだろ?」

千早「……」

千早「今こうして、俺と喋っているのだって千早の頭の中で構成した脚本やら台本を……」

千早「そこに載っている台詞を読み上げているだけだろ」

千早「千早、いまの俺の言葉……千早の口から出ているんだぞ?」

千早「千早が全部、考えて喋っているんだ」

千早「プロデューサー……私、一人芝居をしているんですね」

千早「……あぁ、このやり取りさへ芝居だ」

千早「どうしようもないですね、私」

千早「そんなことないよ」

千早「こうやって、プロデューサーに慰めの言葉を言わせているあたりが」

千早「もう……終わりにしないといけないのね」

千早「プロデューサー、お別れです」

千早「うん、俺もそれが一番いいと思う」

千早「プロデューサーと過ごした時間、夢のような時間でした」

千早「俺もだよ。でも、夢はいつか覚めるものだから」

千早「くすっ……プロデューサー、気障すぎです」

千早「千早が言わせているんだよ」

千早「それもそうですね」

千早「なぁ、千早。俺のことは忘れろよ。いや、俺のことは忘れちゃいけないんだけどさ」

千早「あぁ、ややこしいな」

千早「分かってますよ、プロデューサー」

千早「プロデューサーは消えてしまいますけど、プロデューサーは確かにいますから」

千早「なんだか、それだと用済みって感じだな」

千早「すみません。私が弱いばっかりに……」

千早「そっか……ならさ、せめてものお詫びに歌ってくれないか」

千早「春香の隣にいるプロデューサーじゃなくて、千早の一番近くにいたプロデューサーである俺のために」

千早「はい……私の最高の歌を」

こんなに辛い気持ち、初めて感じちゃった

映画やドラマみたいな、キレイゴトと違う

ホントにバカな私、後悔先に立たず

時間が戻せるなら、少しはマシになれる?

広い世界で一人、あなたが好きでよかった

そ・れ・だ・け

思い出をありがとう、勇気までもらえた

悲しみや切なさ、今日で全てサヨウナラ

吹き抜ける秋風、涙腺も枯れたし

行き慣れた通りを、胸を張って歩いてみる

千早「この気持ちを今あえて言葉にするなら……『ありがとう』……かな?」

愛嬌でごまかす、恋愛はできない

次こそは上手にやれる、そんな気がするのよ!

千早「……」

千早「プロデューサーの家の鍵……」

千早「それと、プレゼントしてくれた指輪」

千早「……」

千早「ごめんなさい、プロデューサー」ギュッ

千早「……えいっ!」シュッ

ボチャンッ!

千早「……」


さようなら、プロデューサー……


fin

終わらせて良かった。途中で、春香も歪んで「I Want……プロデューサーさん」みたいな流れにしようと思ったけど収集つかなくなるだろうと思いやめた。
春香かわいいよ、春香

>302
落としてしまった奴だが、これで色々妄想してくれ。いつか、やり直したいと思っているから

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