杉坂海「七転び八起き」 (76)

アイドルマスターシンデレラガールズのSSです。

当SSはアイドル名「ことわざ」でタイトルをつけているシリーズです。

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前回
藤居朋「まな板の鯉」
藤居朋「まな板の鯉」 - SSまとめ速報
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─ 杉坂海の家 ─

「ねぇちゃんのバカー!!!」ダッタッタッタッ

杉坂海「お、おい!?」

海の母「また喧嘩しちゃったわね」

海「ここんところ毎日だよ。どうしちゃったんだ?」

海の母「あの子も年頃だからねぇ、やっぱりお姉ちゃんが有名人だと劣等感とか、周りの目とかがあるのかしら」

海「ぐむむ・・・」


─ 事務所 ─

海「こんちゃーす・・・」

モバP(以下P)「お、海おはよう」

海「Pさん、おはよう。どうしたんだい、名簿なんか持って」

P「ははっ、丁度良かったよ。あとで電話しようか迷ってたんだ」

海「丁度良かった?」

P「実はだな・・・」


─ 20分前・・・ ─

櫻井桃華「Pちゃま、ちょっとよろしくて?」

P「ん?どうした」

桃華「次の土日が私たちの今年最後のまとまった休みだと聞きました」

P「ああ、そうだな。クリスマスまでにはイヴが、それから年末年始までは巴が中心になって忙しくなる。」

P「だから俺らのそこの休みを消費したら、その次の休みは1月の下旬。まぁ、次の土日は最後調整日って感じだ」

桃華「ちなみに・・・土日の休みはアイドル全員が休みですの?」

P「いや、何人かは合宿で出回っちゃってる」

桃華「そうですの・・・」


P「どうしたんだ?」

桃華「いえ・・・ではその残ったメンバーを全員連れてきてくださいまし。我が櫻井グループの所有する島で今年最後のバカンスを楽しんで欲しいのですわ」

P「これはまたずいぶんと・・・」

桃華「私はこのプロダクションに来て、非常に思うんですの。やっぱり、共に遊ぶのが絆を深める手かと」

P「ふーん・・・?」

桃華「な、なんですの?」

P「本音は?」

桃華「・・・Pちゃまには見透かされてますわね。まだまだ私はこのプロダクションに馴染めてるとは思えませんの。巴ちゃんや由愛ちゃん、美玲さんは年が近くてありのままの私と接してくれますわ」

桃華「ですが、例えば・・・芽衣子さんや響子さんとはなかなか意思疎通が出来てないんですの」

P(芽衣子に響子か・・・背筋が凍るなんて言ったら怒られるな・・・)


P「自分より年齢が離れている人とコミュニケーション取れてないのか」

桃華「そうですわ、皆悪い人でないのは知ってますわ。ですが・・・話すきっかけがなかなか見つかりませんの」

P「はははっ、さびしいのか?」ワシャワシャ

桃華「ち、違いますわ!もうっ、子供扱いしないでくださいまし!」

P「悪い悪い。櫻井グループの娘としてでもなく、お嬢様系アイドル櫻井桃華でもなく、ありのままの櫻井桃華として皆と仲良くなりたいのな」

桃華「そうですわ。Pちゃま、協力してくださいませ」


・ ・ ・ ・ ・ ・ 。

P「というわけで桃華が一緒にお休みを過ごしてくれる人を探しているようだ」

海「ふーん、んでウチにも行けって?」

P「海は面倒見が良いからな。海が一緒に言ってくれるならちひろさんや社長が安心するって寸法だしね」

海「Pさんは?」

P「俺も一緒に行くよ。ただ、ずっと電話の相手することになるかも・・・」

海「雪乃さんは?」

P「・・・んと、合宿なんだよね。ちなみに合宿メンバーはイヴ、雪乃さん、智香、亜季ちゃん、巴」

海「うわぁ・・・全体をまとめられる雪乃さん、子供たちをまとめられる亜季さんがいないって・・・」

P「芽衣子は勝手に歩き回りそうだし事実上、まとめ役はお前か朋だな」

海「・・・りょーかい。ウチは行くよ」

P「悪かったな、無理強いしちゃって」

海「気にしないで、ウチが頼られてるってことなんだから」

P「櫻井グループの施設に行くらしいし、そこまで気を張るようなことはしないと思うけどね」



P「んと、通常営業に戻すな?今日の海の仕事は・・・」




日が暮れて・・・。

─ 杉坂海の家 ─

海「母さん、今度の土日は事務所の仲間と旅行に行ってくるよ。今年最後のお休みだからって張り切っちゃったのが何人かいてね」

海母「へぇ、お母さんも昔は・・・」

海「ちょっと待ってくれよ。母さん話長いから!」

海母「ふふっ、ごめんね」

海「ふぅ・・・そういえばアイツは?」

海母「学校から家に帰ったきり、部屋の中に篭っちゃってる。今日はご飯食べないなんて言っちゃってるわ」

海「・・・ウチのせいなのかな」

海母「お前まで暗くなっちゃうと母さん困っちゃうよ。大丈夫、海がいない間になんとかしておくよ」

海「大丈夫なんかな・・・うーん・・・」


そうして何日か経ち、休みの日となった。

休みになっているメンバーは全員参加、見事桃華の要望に応えることができた。



─ とある名も無き島 ─



P「見事に過ごしやすい天候だなぁ・・・」

P(櫻井家の所有する自家用ジェットで櫻井家の所有する島へとやってきた)

小松伊吹「なんか夏だー!!ひゃっほー♪」

並木芽衣子「あっ、伊吹ちゃん待ってーっ!」

P(島は南国、冬まっしぐらの日本に比べれば遥かに暖かかった。普段熱いダンスを繰り広げてるダンサーズは暑さでテンションがあがって・・・)

海「・・・・・・」

P(前言撤回。海がなんだか悩んでいる、ずっと下を向いているのに、上の空、そんな感じ)

五十嵐響子「さーさー、行きましょう!Pさん!」

P「待て待て、一応点呼とかするから!」

響子「はーい」

P(ちひろさんに「なんでプロデューサーさんばっかなんですか!!私も南国行きたい!」と大声で愚痴られた身なので、ちゃんと監督しないと・・・)


藤居朋「なーんで、ともキュービックはあたし1人なのよ」

P「悪い悪い、冬限定のユニットの方に智香が行っちゃってな。巴はお察しの通り紅白とかの準備で忙しいし」

朋「リーダーだけ休みってのはかなり心苦しいわ。P、癒してくれる?」

P「無理。今日と明日の俺はただの監視員だ」

朋「むー、ここ日本じゃないんでしょ?法律ないのなら別に─」

P「やめい。でも、心身ともに羽を伸ばしてくれ、いいな?」

朋「はいはい」


P「みんなー、集まってくれ」

P(この島には先回りで桃華が来ている。桃華と合宿メンバーを除いて8名の点呼と簡単なミーティングを済ました)

P「・・・とまぁ、俺から言えることはこれくらいだな、何か質問あるか?」

早坂美玲「なぁ・・・プロデューサー」

P「ん、どうした美玲」

美玲「水・・・くれ・・・」

P「おおおう!?!?何こんなに熱いのにフードずっと被ってるんだ!?」

美玲「これ、ウチのポリシーだから・・・」

P「調子壊しちゃ元も子もないだろバカ!みんな、とっとと移動するぞー」

美玲「ごめん」

P「水飲んで、ゆっくりしろ。しばらく俺が側にいてやるよ」

美玲「ん」


P「おんぶしようか?」

美玲「アレまでは大丈夫」



P(アレとはこの島の自然の真ん中にある大きな施設だ。なんでも櫻井グループの保養所らしいが、どう見ても高級ホテルだ)



「「「「「ようこそ、櫻井ホテルへ」」」」」


芽衣子「わ、わ、わ・・・」

P(施設に入るなり、大人数のスーツを着たスタッフにおじぎをされ、その真ん中から桃華が前に出てきた)

桃華「皆さま、ようこそおいでくださいました」

P「これは凄いな」

桃華「これでもまだ新人ですわ。ここで訓練を積み、各地の櫻井グループが経営するホテルへ配属されるのです」

P(保養所は本来、研修などに使われることの方が多い。ホテルと名乗ったのはそのためか)

P「そうだったな。俺も研修期間はひたすら挨拶の練習とかだった」

P(それでもこの一体感などはさすが大企業と言ったところか。エリートが集まって・・・)


桃華「あら?美玲さん?」

美玲「ごめん桃華・・・水くれ・・・」

P「ちょっと暑さにやられちゃったみたいでな・・・」

桃華「少しお待ちください。誰か、水を持ってきてください」

P(その桃華の発言と共にスーツを着たエリート集団は急に慌て始める)

「ええいどけぇ!水を届けるのは俺だぁ!」

「いいえ、私よ!桃華様に良い所見せるのはこの私よぉ!!」

「だぁれがただの水が必要だと言ったぁ!?日射病患者にはスポーツドリンクだろぉ!?」

ドタドタドタドタ!!!!!

P「あ、あらら・・・」

桃華「新人だと言ったはずですわ・・・」

P「最近の人にしては野心あっていいんじゃないのかなぁ・・・」

桃華「そこは評価しますわ、ですが社会に出た人間は結果が全てですわ」

P(桃華は育ちがいいのか、視点が既に大人のものだった)


由愛「今日は・・・遊んでいいんですか?」

P「今日と明日はな。それからしばらくはまとまった休みは取れないから、しっかり心身共に休めてくれ」

由愛「分かり・・・ました」

桃華「この保養所の裏にはビーチがありますわ、そこで遊びましょう。元々は水難事故時の対応用に作った場所ですが、そんじょそこらの砂浜には負けませんわ」

由愛「嬉しい・・・今年の夏は・・・みんなと海に行けなかったから・・・」

P「ごめんな、俺がもっと発言力高ければ由愛の要望も応えられたのに」

由愛「私も・・・もっとランクの高いアイドルだったら・・・」

P「・・・・・・」

由愛「・・・・・・」


桃華「(こ、困りましたわ)お、お2人共・・・」

芽衣子「ほらほら、暗い顔しないでっ!さっそく遊びに行こうよ!桃華ちゃんが困ってるよっ」

P「あ、ああ、すまない」

由愛「桃華ちゃんも・・・行きましょう?」

桃華「ええ。芽衣子さん、助かりましたわ」

芽衣子「いいのいいのー♪こんな南国呼んでくれたんだもん♪」

P(芽衣子はずっと鼻歌を歌っていた。仲間にお呼ばれされた事に、旅行好きなのが相まって常時ハイテンションと言った感じだった)

P(偏見持たずに芽衣子をまとめ役に抜擢しておくべきだったかな・・・)


─ 砂浜 ─

梅木音葉「冬の時期に・・・水着を着るとは思いませんでした」

伊吹「うぉう、音葉さん大胆な水着だなー」

音葉「そうでしょうか・・・太陽と砂浜は白のイメージがありました。一体感が・・・大事と思いまして」

伊吹「南国って言ったらパレオとかのイメージあるじゃん?それなのに真っ白いビキニって・・・」

朋「セクシーすぎてPには見せられないレベルだわ」

音葉「黒よりはいいかと思ったのですが・・・」

伊吹「黒だったら公然わいせつ罪で捕まってるね、うん。Pが前かがみになる、確実に」


音葉「前かがみ・・・?」

伊吹「え?」

響子「なんで前かがみになるんですか?」

伊吹「ごめん、聞かないで・・・。口に出した事後悔してる」

響子「朋さん分かります?」

朋「あ、あたしに振られても困るわ」


美玲「うぅぅぅぅ・・・ちくしょう、みんなと遊べないなんて」

P「明日があるだろ?無茶して病院送りになるよりはマシだって」

美玲「しょっちゅう病院送りになってるヤツの言葉は違うな・・・」

P「・・・来年の抱負は『怪我しない』でいいかな、こりゃ」


美玲「うぅぅ・・・暑い・・・」

P「ほらほら、芽衣子がジュース持ってきてくれるから。それに俺が今こうやって団扇あおいでやってるだろ?」

美玲「感謝してるけど、足りない。南国やばい。パラソルの下にいなきゃ死んでた」

P「ははは・・・」

美玲「そーいやプロデューサーは遊ばないのか?」

P「俺は、ほら、一応年末だからね、よくプロジェクトの連絡とかが来るんだよ」


美玲「大変だな、新しいプロデューサーは連れてこれないのか?」

P「なーんか規定だかなんだかで、プロダクションランクに応じてスタッフの数が決まってるんだって。だから新しいプロデューサーとか作るには俺かちひろさんが仕事を辞めないといけないんだよ」

美玲「ふーん・・・なんで?」

P「スタッフがアイドルとの間で恋愛とか起こっちゃう事例って結構あるじゃない?相手が未成年だったりして犯罪になっちゃったりね」

美玲「うん」

P「だから門を狭くして、規律を守れるごく僅かなヤツだけを取る、って感じかな」

美玲「だからプロデューサー1人なのか」

P「いや、うちはスタッフでちひろさんがいるからな。このプロダクションの『スタッフ』を雇える数は二人までです」

美玲「・・・・・・むぅ」


P「まぁ、美玲が悩む必要は無い。プロダクションランクや雇える人数はあくまで今までの成績だ」

美玲「トップアイドルが最底辺プロダクションから出ても問題ない、ってことなんだな」

P「その代わり、絶望的な忙しさになるらしいけどな」


美玲「プロデューサーって大変なんだな、テレビの前でプロデューサーって職業を見た時はなんだこの金貰うだけの豚めって思ったぞ」

P「理解してくれるだけで嬉しいよ。まだしばらくは俺1人で14人のプロデュースとマネジメントをしなくちゃならない」

美玲「プロダクションランクは簡単にはあげられないのか?上がればスタッフ増やせるんだろ?」

P「プロダクションランクをあげる方法はアイドルたちのより良い成績を残し、ファンを一定数手に入れる」

美玲「こんなに頑張ってるのにまだダメなのか」

P「そうだな、未成年のアイドルからすればまだ『頑張り』がすべてだけど、大人からすれば『結果』が大事だ」

美玲「桃華がさっき言ってたな」

P「それに1人のアイドルがファンを新規に開拓するのはすごく難しい、減らすのは凄く簡単だけどな」


美玲「いい方法はないの?」

P「方法としてはアイドルユニットを組むことだ。今までのファンがくっついてきて、なお新規が入りやすい」

P「だが、だからと言ってユニットを乱立させるのは自滅になる。ファンがどれがどの組み合わせか分からないってなったりして事務所そのものに傷が付く可能性がある」

美玲「むむむ、他にはないのか?」

P「・・・実はスタッフの数は決められてもアイドルの数は決められてない。俺が1人で30人、40人のアイドルを抱えればすぐにたどり着く」

美玲「・・・無理だろ」

P「30人は出来なくはないな。現に御三家の代表的なプロデューサーはそれぞれ30人以上はプロデュースしてる」

美玲「・・・・・・」

P「美玲?」

美玲「・・・・・・ウチはもっと頑張って結果を出すぞ。プロデューサーを楽させてやる」

P「おう、頼んだぞ」ナデナデ


芽衣子(難しい会話してて、は、入れない・・・)

P「おっと、芽衣子ありがとう」

芽衣子「はい、ジュース。テーブルも持ってこようか?」

P「頼んだ」


美玲「ズズズ・・・ふぅ・・・体が冷えて気持ちいい~」

P「それはよかった・・・ん?」

美玲「なんだ?」

P「お前日焼け止め塗ってないのか?」

美玲「いいよ、パラソルの下にいるし」

P「そうはいかない。地面からの反射光で日焼けするなんてザラだ、アイドルとして肌を大事にするのは・・・」

美玲「わー!わーっ!?わーぁぁっ!?!?////止めろぉ!触るなぁ!!」

P「だがs 美玲「自分でやるぞっ!!////」 はい」

美玲「ぷ、プロデューサーは他の子のところに行けっ!ウチばっか構ってるとロリコン言われるぞ!いいのか!?ロリコンだぞっ!?」

P「わ、分かったよ・・・俺のケータイは美玲に渡しておくな。基本的にはメールで来るから無視していいけど、□□さんのメールと普通に電話が来たらすぐに呼んでくれ」

美玲「お、おう・・・」



響子「あっ、Pさんも一緒に遊びませんか?」

P「ビーチバレーか・・・OK、最近の体の鈍りを解消するチャンスだ」


美玲(あの強盗事件からプロデューサーのことを目で追ってばかりだ。プロデューサーはケダモノだけど、ウチを体を張って守ってくれた。悪いやつじゃない)

美玲(もうこの事務所に来てしばらくだ。今も信頼してるけど・・・もっと信頼した方がいいのかな・・・)

芽衣子「美玲ちゃーん?」

美玲「うわわわわっ!?驚かすなッ!!」

芽衣子「はははっ♪はい、テーブル持ってきたよ」

美玲「ん」

芽衣子「・・・美玲ちゃん、プロデューサーのこと好き?」

美玲「す、すす、っすすすすす!?」

芽衣子「す、だけじゃ伝わらないよ?」


美玲「・・・好きだなんて分からない。けど信頼はしてる」

芽衣子「へーっ、さっきプロデューサーを見てた目は私と同じだったけどなーっ♪」

美玲「・・・好きなのかな」

芽衣子「それは私にも分かりませんっ」

美玲「・・・どうすればいいと思う?」

芽衣子「うーん・・・と、もっと一緒にいてプロデューサーのことを知ればいいと思うなー」

美玲「ウチはプロデューサーに迷惑かけたくない、アイツはプロデューサーって仕事をやってるからこそ、輝いてるのかもしれないし」

芽衣子「私よりかっこいい考えかもね」

美玲「へ?」

芽衣子「私はもっと単純。一緒に仕事して、この人だったら何もかも任せられるって感じて、いつの間にか好きになってた」

美玲「・・・・・・」

芽衣子「一緒に旅行行ったりして、いつの間にか新婚気分だったのかもねっ♪」


美玲「理屈・・・じゃ、無さそうだな」

芽衣子「Yes!人を好きになるのに理由はいらないよ」

美玲「・・・・・・」

芽衣子「美玲ちゃんは私のライバルになるのかなー?」

美玲「知らないっ。同じ事務所内に敵なんて作りたくなかった」

芽衣子「ふふふっ、まぁ、プロデューサーがどう動くか次第かなー」

芽衣子「プロデューサーが全員と付き合う!なんて言っても、別に驚かないよ」

美玲「は、ハレンチだぞッ!!」

芽衣子「そうかな?プロデューサーって仕事はアイドルって女の子の願いを全部叶える最強の魔法使いだよ?」

美玲「魔法・・・使い・・・」

芽衣子「もし、私たちが醜い争いなんてせず、それぞれプロデューサーの事を想ってたら、きっとその願いは叶えてくれる」




芽衣子「かもねっ!んじゃ私も遊んでくるー!」

美玲「うーん・・・」



─ ビーチバレー中 ─

海「・・・・・・」

P「オーライオーライ!はい、響子!」

響子「任されました!えーいっ!!」

伊吹「なんのっ!音葉っ!」

音葉「・・・たぁっ!!」

海「・・・・・・」

響子「きゃっ!!」

P「響子、どこトス上げてるんだー!」

響子「ごめんなさーい!」

P「とりあえず返す!オラッ!」

伊吹「へっ、アウトボール!P、力入れすぎ・・・って海!?」

響子「海さん!?」

海「へっ・・・?」


バシーン!!!


海「いたたたた・・・・・・」

伊吹「もうPのノーコン!!」

P「ご、ごめん・・・頭当たったけど海、大丈夫か?」

海「ウチがボーッとしてるのが悪いんだ。・・・ちょっと頭冷やしてくる」

P「そ、そうか・・・」

伊吹「海、大丈夫かな?一緒に行ってくるよ」

P「お願いするよ」


─ シャワールーム ─

伊吹「どうしたん海?普段から苦労、疲労が顔に出るタイプだったけど」

海「そんなにひどい顔してる?」

伊吹「そりゃもう」

海「はぁ・・・、もっと自分が強ければって泣きたくなっちゃうよ」

伊吹「はははっ、同感。あたしももっと強くなりたい」

海「ちょっとね、家族の事とアイドルの事で板ばさみになったんだ」

伊吹「・・・あ~、あたしはパス。家族関係の問題は大人ってかPに相談して」

海「ここまで来て、投げやりかい!」

伊吹「ははっ、大声出せた♪」

海「なっ・・・」

伊吹「あたしらエキサイトダンサーズに暗い顔は似合わないよ!Pに全部吐き出しておいでよ」

海「・・・うん、そうする」


─ 浜辺 ─

P「海、大丈夫かなぁ」

芽衣子「普段から私を頼って!ってスタイルだもんね、自分からは言えないのかもっ!」

P「ふむ、ありえるね」

芽衣子「あとで私がいろいろ話してみるねっ、エキサイトダンサーズのリーダーだしねっ!」

P「こういう時だけリーダー面してるとみんなにそっぽ向かれるぞ?」

芽衣子「えっ、そんなぁ」

P「冗談だ。海には俺が話を聞くよ。あの海がボーッとするくらいだ、おそらく重大なことだろう」


桃華「Pちゃま、楽しんでますか?」

P「うん、2人も不調者いるけど、みんな楽しんでるよ」

桃華「美玲さんと・・・」

P「海だ」

桃華「なるほど、海さんは確かに保養所に来た時も顔つきが変でしたわ」

ピポパポ・・・

P「メールか?」

桃華「ええ、海さんにマッサージとアロマセラピーをお願いしておきましたわ。あとで“Pちゃまが”話すとき、少しでも心が落ち着くようにしておきますわ」

P「え、なんで俺が海と話そうとしていることを・・・」

桃華「Pちゃまの性格は分かりやす過ぎですわ。Pちゃまの良い所であり悪い所、私はしっかりと理解していますわ」

P「あはは・・・」

桃華「ところでPちゃま」

P「?」

桃華「この浜辺が『ヌーディストビーチ』だと言ったら?」

P「   は   ぁ   っ    !     ?     」



その後、日が暮れるまで皆は遊んでいた。

芽衣子や朋はこれでもかと遊んでいた。普段控えめな音葉や由愛もはしゃいでいたし、いい休みになっただろう。

ちなみにヌーディストビーチは冗談だそうだ。ただし、桃華がこの浜辺をヌーディストビーチと決めたら、その瞬間・・・

いや、考えるのはよそう。そもそもヌーディズムはリラックス法とかに使われるものだ、卑しいものではない。


そして・・・夕食を食べた後・・・。


─ 女性部屋 ─

海(年少組・・・14歳以下の子たちは温泉に行った。皆、口揃えて巴ちゃんがいれば、と悔やんでいた。仲がいいね、あの子たち)

海(そして残りのメンバーはというとなぜかベッドの上で全員で正座していた)

海「なにやってんの・・・?」

朋「恋バナ+猥談」

響子「海さんも入りますか?」

海「いや・・・いいよ」

海(正直、気が滅入ってる)

海「ってか、15歳混じっていいのかな?」


響子(15)「だ、大丈夫だと思います!」
朋(19)「ほら、響子ちゃんも大丈夫言ってるし」
芽衣子(22)「高校生ならこういう話に興味津々でしょー」
音葉(19)「(首を縦に振る)」
伊吹(19)「海ってば心配しすぎー、Pのマネ?」

海「ああ、うん・・・心配したウチがバカだった」

芽衣子「でねでねっ、Paプロの洋子ちゃんが自分のプロデューサーに色仕掛けしたらしくてね」

伊吹「え?健康第一の洋子さん、そんなチャレンジャーだったっけ?」

芽衣子「なんかお酒入っちゃったらしくてね、もう自分のプロデューサーラァァァァブ!!って感じになったらしい」

芽衣子「あ、でも、その代償は悲惨だったらしいよ」

響子「悲惨?」

芽衣子「うん、押し倒してキスしたんだけど、その床になぜか画鋲がびっしり!」

響子「ひっ!?」

伊吹「いったそー・・・」


芽衣子「そのプロデューサーの背中が傷だらけになっちゃったけど、キスが頭の中で最優先になっちゃったんだろうねっ、傷の痛みは後で来たみたい」

朋「あー・・・確かに男性はそうなっちゃうわよねぇ・・・」

音葉「なぜ・・・?」

朋「医療系の番組で見たんだけどさ、男性と女性で脳の作りが違うのよ。女性は右脳と左脳を繋ぐパスが太いとかなんとか」

響子「太いとどうなるんでしょうか?」

朋「物事を二つまとめて出来たりするらしいの。電話しながら料理したり、爪切ったりってみんな経験あるでしょ?」

伊吹「あるあるー♪」

朋「男性はそれがやりにくいの。中には出来る人いるはずだけど、少なくともPは出来なかったわ」

音葉「ひとつの事しか出来ないから・・・誠実に見られるのかもしれませんね・・・」

朋「だからキスとか・・・まぁ、“本番”とか・・・ね?男性が集中してる時に背中を血が出るくらい引っ掻いても、終わるまで気付かないってよく漫画で見ない?」

響子「わわわ////」

芽衣子「痛みも忘れて自分に夢中になってくれるってそれはそれで嬉しいよねっ」

伊吹「猿と勘違いされるんじゃない?」

   ・
 
   ・

   ・


海(知ってる知識でちょっとだけ茶化してみようか)

海「そーいや性欲ってある日を境に男女逆転するんだってねー」

朋「? それがどうしたの?」

海「ほら、高校生の時に男子が女の子の話ばっかしてたりしなかった?」

芽衣子「あ、あったあったー♪」

海「でも芽衣子さんとか朋さんの歳になると高校生の時に比べると男性ってそこまで性に関する話をしないんだって」

海「同時に20歳を超えるくらいになると男性と女性の性欲が逆転、男性は下がる一方で女性は30歳ちょっと前ぐらいまで上がるんだって」

音葉「聞いたことがあります・・・人間は子供が産める年齢の周期が男女で違うとか・・・」

伊吹「はー↑生き物としては高校生の時が男の子供が産める時期なんかねー」

海「まぁ、そういうことを聞いたところで」


海「Pさんの恋バナって聞かないだろ?」

朋「!?」

響子「!?」

芽衣子「!?」

伊吹「そーいやそうだね」

音葉「!?」


海「もしかしてさー、もうPさん性欲枯れてるんじゃない?」

朋「」グサッ
響子「」グサッ
芽衣子「」グサッ
音葉「」グサッ

伊吹「はははっ、Pってば、婚期過ぎてたのかー!早く結婚しないと子供残せないじゃん」

海「もしかしたら、だよ」

海(今ので黙ったのがPさんだいすきクラブのメンバーか)


海「さてと、ちょっと外の空気を吸ってくる」

伊吹「海、もう大丈夫なの?」

海「マッサージとか受けたからね、朝よりは気分良いよ」

伊吹「ふーん、無理はしないように!」

海「分かってるって」


─ 何時間か前・・・ ─

海『マッサージありがとうございます』

『いえいえ、私もまだまだ場数が少ない未熟者でして。有名人の方にマッサージするのは初めてでいい経験になりましたよ』

海『有名人だなんて、そんな・・・』

『おっと、忘れるところでした。杉坂様、P様より伝言を承っています』

海『Pさん?』

『“夜に二者面談だ、場所はそちらが指定していい”だそうです』

海『場所って言われてもなぁ・・・』

『保養所の裏がオススメです。静かで月が見える所があります』

海『ありがとうございます、そこにします』


─ ホテルの裏の崖 ─

海「確かにここは良い眺めだなぁ」

海(崖の下にはジャングルがあって、その向こうに海があって、上には月。立って胸を張れば飛んでいる気分になれそう)

P「おーい、うみー!」

海「こっちだよ」

P「はーっ、保養所の裏にこんなところが」

海「マッサージしてくれた人が教えてくれたんだ」

P「なるほど、この島の生態系を壊さないようにジャングルはほとんど手をつけてないんだな」

海「すごいよね、真後ろにはホテルみたいなのが建ってるのに」


P「さてと、海。俺が二者面談立てた理由、分かってるよな?」

海「う、うん・・・」

P「気持ちが沈んで、顔に写ってた。ずっと考え事でもしてたのか?」

海「い、いや・・・その、うん」





海「このままアイドル活動してていいのかな、って思えてきちゃってね・・・」




P「何があった」

海「うぉぅ!?Pさん凄い雰囲気」

P「茶化すな。仕事に影響が起きるレベルの問題となるなら態度を変える」

海「(仕事モードになってる・・・)・・・弟と喧嘩しちゃってね。理由ははっきりしてないんだけど」

P「理由もナシに喧嘩することはないだろう」

海「母さんが言うには常にアイドルってか有名人の姉と比べられる劣等感とか、そこらではないか、って言ってる」

P「学校でイジメでもあったのか?」

海「いや、そんなはずはないよ。今日学校行くの確認してるし、友達を家に呼んで遊んでる・・・」

P「なら問題は家族にあるな・・・」


海「・・・やっぱりウチがアイドルやってるせいかな・・・?」

P「んー・・・そうだな、俺は弟の立場が少し分かるな」

海「え、なんなんだい!?一体どうしてだい!?」


P「焦るな。俺も同じ感情を朋の時に味わったんだよ」

海「え、朋さん?」

P「俺と朋は従兄妹だ。それだけ距離が近かった」

海「うん」

P「だから、朋をアイドルとして育てている時、“従妹”である朋と、“アイドル”である朋をどう区切りをつけていいのか分からなかった」


P「どっちも同じ朋なのにな・・・」

海「“姉”である杉坂海と“アイドル”である杉坂海・・・」

P「俺の憶測でしかないけど、弟君はお姉ちゃんがお姉ちゃんでないように見えてるんだろう」

海「・・・なぁ、Pさん。ウチ、どうすればいいと思う?」

P「そうだな・・・海はまだアイドル続けたいか?」

海「もちろん。信頼できる仲間と頂点目指したい。こんな気分になれるなんてアイドルなる前なんて考えられなかったよ」

海「でも・・・家族もまた大切・・・」

海「できることなら家族に理解してほしいよ」

P「そうだなぁ・・・コレ限りは海がひたすらに弟君に自分は変わってないってことを伝えるしかない」

海「ウチはウチ、姉である杉坂海でしかないってことをか」

P「七転び八起き。1度だけじゃなく何度も諦めずにいつも通りの海を見せて繰り返してればすぐ理解してくれるさ」

海「うん、そうしてみるよ。いつものウチを見せる」


海「ちょっと、肩が軽くなったよ」

P「これでダメだったらまた話してくれ。俺だけじゃない、みんな海の味方だよ」

海「よし、そうとなったらまずは家族に電話してみるかな」

ガサゴソ・・・ポロッ・・・

海「ああっと、ケータイが・・・」

P「!? ダメだ海そっちは危ない!!!」

海「へ?うわっ・・・」

P「ああっ、クソッ!!!」


─ 崖下 ─


海「う、うぅん・・・」

海(あれ、ウチは・・・どうしたんだっけ?)

海(たしか・・・崖の上に・・・そうだ、ケータイ落としてキャッチしようとしたら足を滑らして・・・)

P「うぐっ・・・・・・」

海「Pさん!?」

P「うみ・・・ぶじか・・・?」

海「うん・・・」

海(そうだ、落ちそうになったウチをPさんが飛び込んで抱きかかえてそのまま・・・)

海(どうやら木が一度クッションになったのとPさんが庇ってくれたおかげでウチは擦り傷ひとつで済んだみたい)


海「Pさんは大丈夫かい!?」

P「マズい」

海「え?」

P「・・・ここ(お腹を指差す)」

海「えっ・・・ああっ!?」





海(Pさんが指す場所、わき腹には子供の腕ぐらいの太さの枝がグサリと刺さっていた)







P「木にぶつかった時・・・刺さった」

海「ああっ・・・ああ・・・」

P「うみ・・・起こしてくれないか・・・ゴホッゴホッ」

海「起こしても大丈夫なのか?」

P「腹の中がぐるぐると渦巻いてる。きもちわるい・・・」

海「ぬ、抜いた方が!」

P「バカ・・・穴を塞ぐモノないのに抜いたら出血多量で・・・ゴホゴホッ・・・死ぬ」

海「な、ななにか方法はないのかい!?」

P「ケータイは・・・?」

海「そうだケータイ!!」


海「うっそ、壊れちゃってる・・・」

P「俺のケータイは・・・部屋に置いてきちゃった・・・」

海「連絡する方法が絶たれた・・・?」

P「くっそ、救急に処置の仕方も聞けないか・・・ごほっ・・・ごほっ・・・」

海「Pさんっ!!」

P「横になってた方がいいのか、立った方がいいのか・・・」

海「こ、こういう時は傷口を心臓よりも高くするってのが・・・」

P「そうだったな・・・」

海(Pさんはなんとか体を動かし、木の根っこを腰の下にあるようにした)

P「いたい・・・いたい・・・」

海「なんも出来ないのか、ウチ・・・」

P「・・・あきらめない。俺はさっき七転び八起きって・・・教えたばっかだぞ・・・」

海「七転び八起き・・・うんっ!!!」


海(考えないと・・・この崖はパッと見20m、やや反り立っていてウチがロッククライミング経験者じゃない限りは登れない)

海(崖沿いに歩いていく・・・時間はかかるが海岸に出ることが考えられる・・・だけど、Pさんの体力がそこまで保つか分からない)

海(Pさんを見殺しなんて、ウチには出来ない・・・となると、この崖の上にある保養所に声を届かせるしかない!)



海「誰かっ!!助けてくださいっ!!!けが人が居るんです!!!」

海「だれかぁっ!!気付いてください!!」

海「だれかぁぁぁ!!」


─ 女性部屋 ─

由愛「ただいまです・・・すっきりしました」

桃華「ただいま帰りましたわ・・・ってなにが起こったんですの?」

4バカ「「「PさんPサンPsan・・・」」」

伊吹「なんか・・・うん、わっかんない!!」

美玲(ウチもあの仲間になったのか・・・)

桃華「あら?海さんはもう行かれましたか?」

伊吹「あれ、なんで海が外出たの知ってるの?」

桃華「Pちゃまが海さんのメンタルケアがしたいと顔に書いてあったので、お手伝いしたのですわ」


伊吹「へぇ、じゃあ海はPとデート中かー」

朋「ちょぉっと伊吹ちゃん?話があるんだけどぉ?」

響子「言葉を選んだ方が身のためですよ?」

伊吹「へ、へい」

桃華「でも、すぐ姿が確認できるよう、こちらで場所を指定させていただいたのですわ」

朋「どこよ!!」

桃華「この部屋の窓から見えるところですわ」

芽衣子「ん~?誰もいないけど」

桃華「おかしいですわね、ベランダに出てみましょう。もしかしたら視界の範囲外にいるのかも」


─ ベランダ ─

美玲「おい、誰もいないぞっ!」

朋「ホントに海ちゃんがPとデートしてるの?」

桃華「デート・・・とは言いませんがお話はしているはずです」

響子「もう終わって帰ってる途中ってことなんじゃないですか?」



音葉「ちょっと・・・静かにしてもらえませんか?」


「─────っ!!────!!」


音葉「何かを恐れている音が聞こえます、恐怖と危険が入り混じったような・・・」

伊吹「え、ホント!?」

音葉「これは悲鳴?」


「─っ!!────っっ!!!」


響子「ホントだ、聞こえますよ!」

朋「ねぇ・・・もしかして、だけど・・・海ちゃんたち落ちたんじゃ・・・」

桃華「っ───はやく助けにいかないとっ!!」

ピポパポ・・・

桃華「桃華ですわ!至急捜索用のヘリをお出しなさい!人が崖から落ちましたわ!!」

芽衣子「私たちもいこっ!!」

由愛「はい!」

美玲「ライトは!ライトはどこだよ!!」


─ 崖下 ─

海「誰かぁっ!!!だれかぁ!!!!」



海「はぁっ・・・はぁっ・・・」

海「10分以上は声出してるな・・・近くに人がいないのかな・・・」

P「・・・・・・ずぅぅ・・・!」

海(Pさんはさっきから喉に絡まる・・・たぶん血で呼吸がしづらくなっている)

海(早くしないと・・・)

海「Pさん!すぐ助けが来るから!」

P「あぁ・・・いたいのは慣れないけど・・・」



海「誰か助けてくださいっ!!!崖の下にいますっ!!!」


5分後・・・。

海「まだ・・・まだダメなのかな・・・」

P「うみ・・・」

海「どうしたPさん!!?」

P「さむい・・・いたい・・・」

海(血が流れすぎたんだよなコレ・・・どうする!?ここからは気力勝負になっちまう・・・)

海(どうしよう・・・このままじゃ本当にPさんが死んで・・・!)

海(せめて気を楽にさせないと!!)

海(なにが・・・何ができる!?)




朋『だからキスとか・・・まぁ、“本番”とか・・・ね?男性が集中してる時に背中を血が出るくらい引っ掻いても、終わるまで気付かないってよく漫画で見ない?』



海(ハッ・・・!?いやいや!バカ言ってる場合か杉坂海!!)

P「はぁっ・・・うっく・・・はぁぁ・・・」

海(キスなんて!今やったらPさんの呼吸止めて・・・体力奪って・・・殺しちまう!!)

海(でも・・・今のウチには・・・)

海(・・・・・・)


海「ねぇ・・・Pさん・・・」

P「なんだ・・・?」

海「い、今どうしてもさ・・・Pさんにキスして欲しい・・・って言ったらどうする?」

P「・・・・・・」

海「いいいいいい、いややっぱ忘れて・・・////」

P「・・・いいよ」

海「うぇ?」

P「アイドルの・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・海には・・・後悔なんて似合わない」



P「やってほしいなら・・・おいで、海」


海「う、うん・・・////」





海(Pさんの顔に自分の顔を近づけて・・・)


─ 次の日・病院 ─


「一命は取り留めました。あとは意識が戻るのを待つだけです」

一同「「「「ふぅ・・・」」」」

桃華「よかったですわ・・・見つかるのがあと少し遅ければどうなってたことやら・・・」

朋「海ちゃんの声がよく響いたってことよね、“泣いてなければ”見つからなかったかもねー」

海「え?・・・ああ、うん」

響子「怪我ばっかしてますけど、ちゃんと生きて帰ってきてますよねPさん」

朋「今回ばかりはやばかったみたいだけどね。お腹にグサー!だもん」

伊吹「海の決死の叫びがPを救った!みたいなー」

海「よしてくれよ、ウチが落ちた時にPさんが庇ってくれたんだ。助けてくれたのだったら助けるのは当然だと思うな」

響子「雪乃さんの時も美玲ちゃんの時も庇ってましたね。正義感強すぎというか、無鉄砲というか・・・」

朋「そのくせ心配性とか困っちゃうわ。自分のことを優先にしないといつか死ぬわね」


海(Pさんにキスされたの後、すぐに桃華ちゃんが呼んだヘリコプターがやってきて、ウチとPさんは助かった)

海(どうやらウチの助けを呼ぶ声がみんながいた部屋まで届いたらしい、やってみるもんだね)

海(ヘリで搬送された後はウチは念入りな消毒。Pさんは緊急手術の末、事なきを得た)

海(みんな薄情なことを口走ってるが、心配で全員徹夜明けの状態だ。無理もない)

海(そして、ウチは・・・)


─ 病室 ─

海「Pさん、朝だよ」

P「・・・・・・」

海「・・・」

P「・・・・・・すぅ」

海「寝息か・・・起きるのはもうすぐだね」



海「Pさん、横座るよ。聞こえてないだろうけど」

海「みんな他の部屋を借りて寝ちゃってるよ。ウチら心配かけちゃったね」

海「・・・親に怪我したことを言ったらこっぴどく怒られたよ、家族のことで悩んでたのに、バカだねウチも」

海「ねぇ、あの時さ・・・」


─ 崖下 ─

P『おいで、海』

海『う、うん』

P『・・・ん・・・』

海『ちゅっ・・・んっ』


海(Pさんは間髪入れずにウチの唇を奪った。こちらの意図が伝わったかどうかは分からないけど、しっとりとじっくりと唇を触れ合わせる)

海『チュゥ・・・んんぅ・・・』


海(最初は意識を保たせるために、ってやった事なのに)


海『んっ・・・んん、ちゅ、ちゅ・・・』

P『!?』


海(なーんか、安心するってか、ウチも乗り気になっちゃって・・・)


P『んー!んーー!!』


海(気付いたら・・・)


P『    』チーン

海『Pさん!?Pさぁん!?死んじゃイヤァァァァ!!!!』


海(窒息させるまでキスしちゃったんだよねぇ・・・)



─ 病室 ─

海「なぁ、Pさん。あの時の安心感ってなんだったんだろうねぇ」

海「・・・・・・」



海「・・・恋の一種なのかな」

海「つい何日か前までは・・・響子とかの事笑ってたのになぁ・・・」

海「あ、ナイショだよ、これは。芽衣子さんになんて顔されるか」

海「・・・よくよく考えればPさんモテモテだね、もしかして、Pさんは淫魔なんじゃないかい?」


海「Pさん、寝てるんだよね・・・」

海「・・・あの時の安心感、本当に恋か確認させてもらうよ」

海「七転び八起き。家族の事もこの恋っぽい事も、納得するまで何度でも確かめさせてもらうんだから・・・」




海「そーっと・・・ちぅ・・・」


Pさんだいすきクラブ一同「P(さん)起きt・・・」


海「!?」

響子「海・・・さん?」

海「こ、っこれには深い訳がっ!!!!?」


PDC一同(疑惑のまなざし)

海「ひぃぃ・・・!!」

P「すぴー」zzZZ




後日、海は雪乃に呼び出されたらしい・・・。




終わり。

以上です。読んでくれた方はありがとうございます。

「七転び八起き」とは何度失敗しても立ち上がることです。

今回は家族の視点でお話作ろうかなーと思ったんですが、断念していつもの流れに。
名前がないとお話浮かびにくいというか、なんというか。

さて、次回は

・西川保奈美「男子三日会わざれば刮目して見よ」

です。その次の回に

・大原みちる「牛を馬に乗り換える」
・喜多見柚「渡る世間に鬼はなし」

のどちらかを予定しています。

次回は保奈美ちゃん、多分、デレマス界で知られてないランキング上位にいるキャラクターです。
ちょっと遅くなるかも・・・。

ではまた。

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