幹也「お給料下さい…何でもしますから」橙子「ん?」(122)

 ― 伽藍の堂 ―



橙子「……」ペラペラ…


タタタタタ…


橙子「ん?」


ギイイイ…バタン!


幹也「おはようございます、橙子さん!」

橙子「あら。おはよう、幹也君。君が走って出社してくるなんて珍しいわね」


幹也「……」ハァハァ…

橙子「まだ出社時刻ギリギリって訳でもないけど……何かあったの?」


幹也「はぁ、その事なんですが……――出社して早々に不躾ですが、お給料下さい橙子さん」

橙子「……」

橙子「……」カチャ


橙子「――出社して、挨拶の次に出て来る言葉がそれか?……呆れて言葉が出んよ」

幹也「言葉は無理に出してもらわなくても構いませんから……お給料、お金を出してくださいよ、橙子さん」


橙子「何で?だって今日は別に給料日でも何でも」

幹也「給料日です」


橙子「……」

幹也「……」


橙子「ああ……もう一ヶ月経ったのか……」

幹也(この人、完璧に忘れてたな……)

橙子「本当に月日が経つのは早い……光陰矢のごとしとは上手く言ったものだと思わんか、黒桐」

幹也「ええ、そうですね」


橙子「そうか……私が倫敦の時計塔で人形作りに明け暮れていたのも、もう八年近くも前の事になるのか……懐かしい」シミジミ…

幹也「関係のない話で誤魔化そうとしても駄目です。それよりお給料」ズイッ


橙子「……」

幹也「言葉は無理に出さなくても結構ですけど……こっちは多少の無理をしてもらってでも出してもらいますからね」


橙子「まあ、ちょっと待て。その話は、別に朝のコーヒーを一杯飲んでからでも遅いという事はないだろう?」

幹也「コーヒーを淹れれば話を聞いていただけるんですね?」


橙子「まあ、考えてやらん事もない」(聞くとは言ってない)

幹也「ちょっと待ってください、今淹れてきます」


……………………


橙子「……」ゴク…

幹也「……」ゴクゴク…


橙子「うん、今日も良い味だ。やはり君の淹れるコーヒーは格別だね、黒桐」

幹也「何か取って付けたみたいですけど……ありがとうございます。で……橙子さん、お給料の事」


橙子「……もう。君はさっきから口を開けば『金』『金』『金』、か」

幹也「……」


橙子「私は君を金銭欲の薄い男だと思っていたんだがね……」

幹也「二ヶ月も貰える物を貰ってなけりゃそりゃがめつくなりますよ」


橙子「あー……」

幹也「今日と言う今日は払ってください、お給料」

橙子「……」


幹也「勿論、先月と先々月の分も合わせて」

橙子「…………」


幹也「橙子さんー……?」ゴゴゴゴゴ…

橙子「……………………」


橙子「……」ハァ…



橙子「……払ってあげたいのは山々なんだが。残念な事に金がない……むしろ、私が君から借りたい位で……」

幹也「本当にどうやって生活してるんですか、あなたは。どうせまた変な物買っちゃったんでしょう!」


橙子「今度のは1800年物の」

幹也「聞きたくありません!」

橙子(黒桐が声を荒げるなんて珍しいな……)



幹也「……」ジーッ… ←無言の抗議

橙子「……」

幹也「…………」ジーーッ…

橙子「…………」カチッ…

幹也「……………………」ジーーーッ…

橙子「……………………」シュボッ…


幹也「……」ガクッ

橙子「……」フゥーッ… 



幹也(何で……この人は……自分に非があるのに、ここまで堂々としていられるんだろう……)

橙子「……」 ←鉄面皮




幹也「うぅ……」

橙子「……」


幹也「そうやって……余分な物を買うお金があるなら……ちゃんとお給料払って下さいよ……」

橙子「突然の出会いだったからな……いや、君には悪い事をしたと思っているんだよ?申し訳ない」


幹也「うそだ……絶対思ってない……」

橙子「……」 ←『良く分かってるじゃないか』という顔


橙子「いつものように社員は各自で金銭を都合してくれ」

幹也「無理ですよ……流石に三ヶ月連続となれば誰も貸してくれません。……と言うか橙子さん、先月と先々月も同じ事言いましたよね?」

橙子「ふむ……」

幹也「うぅ……」



橙子「……そんなに生活に困っているのか?」

幹也「ええ、おかげ様で」


橙子「皮肉と言うのはあまり堂々と言っても効果はないぞ。……で、どうなんだ?実際の所」

幹也「……」


幹也「今はもう……毎月の食費を工面するだけで精一杯で……」

橙子「……」


幹也「もう家賃を何ヶ月か払えてないから……アパートも追い出されて……」

橙子「ほう……それは大変だな。それでそれで?」


幹也(この人、絶対面白がって聞いてる……)

橙子「……」ニヤニヤ



橙子「で、今はどこで寝泊りしてるんだ?まさかどこか橋の下で野宿している訳でもあるまい」

幹也「……」


橙子「実家……は親御さんと喧嘩してるんだったな。なら友人の家か?」

幹也「……」


橙子「いや、これも違うか。……借りた金を中々返さない奴を泊める友人などいないだろう。となると……」

幹也「……


橙子「……もしかして?」

幹也「ええ、お察しの通り……僕は今、式の家で寝泊りさせてもらってます」


橙子「ほほう……」ニヤニヤ」



橙子「なら、急いで給料を出す必要もないだろう。来月までゆっくりと式の所で世話になれば良いじゃないか」

幹也「流石にそこまで甘える訳には行きませんよ。式にだって迷惑だろうし……」


橙子(多分、大して迷惑に感じてないと思うがな……)


幹也「唯でさえ、ご飯も式の所でご馳走になってるのに……」

橙子「なら食費も浮いて良いじゃないか」

幹也「食費はちゃんと折半にしてます。最も、作るのは全部式任せですけど……」

橙子「ふぅん……」



幹也「今日だって、食費が浮くからってお弁当を持たせてくれようとしてくれて……」


橙子(それって愛妻弁当って奴じゃないのか?)


橙子「それ、持ってきてるのか?」

幹也「いえ……気持ちは嬉しかったんですけど、返しました」


橙子「……どうして?」

幹也「……式、自分の分を作るのを忘れていたんですよ。だから、どうせ作ったのなら学校で食べたら?って」


橙子「……」

幹也「? ……何ですか、橙子さん」



橙子「はぁ……」

幹也「ど、どうしたんですか橙子さん?急に溜息付いて……」


橙子(あの面倒くさがり屋の式が……何でわざわざ人のために弁当を作ったのか、分からんのかこの朴念仁は……)


幹也「……とにかく。式にだって学校があるんだし、いつまでも居候させてもらっていちゃ彼女に迷惑が掛かるじゃないですか」

橙子「多分思ってないだろう……」ボソ


幹也「だから……早く滞納してる家賃を払って、僕は自分のアパートに戻りたいんです」

橙子「今の内に同居生活を楽しんでおけば良いのに……」ボソ


幹也「それに……式と約束したんです」

橙子「?」



幹也「もし家賃を払ってあのアパートに戻れるようになったら……今度は式がたっぷり僕の部屋で寝て良いよって」

橙子「…………」


橙子「……それ、式に面と向かって言ったのか?」

幹也「? ええ、そうですけど」


橙子(こいつの事だから別におかしな意図がある訳じゃないんだろうが……式はどう受け取ったかな)


幹也「だから……お願いします、今日お給料を受け取ったらすぐに家賃を払って、またあのアパートに戻れるようにしたいんです」

橙子「これでまた今月も彼女の所で世話になるようだと、男として格好が付かないものな」

幹也「……っ、そうです……」



橙子(式にあまり無様な所を見られたくないんだな……黒桐もそれなりに男って事か)


幹也「無理は承知の上です……橙子さん、お給料下さい」

橙子「……」


幹也「何でもしますから……!」

橙子「……」ピクッ


橙子「ん?今何でもするって言ったよね」

幹也「……」ビクッ


橙子「それじゃあ、『黒桐君』……」ニヤニヤ

幹也(今僕は、お金欲しさにとんでもない事を言ってしまったのでは……?)



橙子「肩、揉んでくれる?」

幹也「へっ?」


橙子「へっ?じゃなくて……肩揉んでくれるように頼んでるんだが」

幹也「はぁ……そりゃ、頼まれれば揉みますけど……」


橙子「最近どうも肩凝りが酷くてな……いや、良い機会だ」

幹也「……橙子さん。本当に肩を揉めば、お給料を出していただけるんですね?」

橙子「ああ。今ここに現金はないが……何とかしよう。約束する」

幹也「……分かりました。約束ですからね」


…………
………
……



(もみもみ)


橙子「……」

幹也「……」


(もみもみ……ぐいっ)


橙子「ん……」

幹也「どうですか?」


橙子「なるほど……いや、上手いじゃないか黒桐」

幹也「ありがとうございます。橙子さん、結構凝ってますね?」


(もみもみ)


橙子「ふぅ。いや、本当に……君は凝ってる所を見つけるのが上手だな」

幹也「ええ、まぁ……」



橙子(ふむ……何かを『探す』、という黒桐の才能は……こういう所でも生かされているのだろうか)

幹也「……」

橙子(それとも単に……?)


(もみもみ……ぐりぐり)


橙子「ふぅ……」

幹也(……大分、凝りも解れてきたかな・・・・・・?)


橙子「いや、凄く心地良い……大分楽になった」

幹也「喜んでいただけて何よりです」



橙子「ここまで来たらついでだ……肩以外も頼めるか?」

幹也「と、言いますと?」

橙子「そりゃあ腰とか背中とか……後足も凝ってるな」

幹也「えっ……流石にそれは」



橙子「してくれれば給料に色を付けてあげても良いんだがな……」

幹也「分かりました、やります!」(即答)


橙子「良い返事だ。その言葉が聞きたかった」クスクス


…………
………
……


橙子「……」

幹也「……」


(ぐいぐい……ぐっぐっ)


橙子「おっ……」

幹也「……」


橙子「いや、生き返るな……」

幹也「……」


幹也(肩以外も大分凝ってるな……普段そんなに忙しそうに働いてるイメージはないのに)


橙子「はぁー……」

幹也(やっぱり人形作りって疲れるのかな……そりゃあれだけ精巧な出来の奴だもんな……)



橙子「なあ、黒桐」

幹也「はい、何ですか橙子さん?」

橙子「君、誰かにマッサージするのはこれが初めてか?」

幹也「ええ、ここまで本格的な奴は多分初めてです」


橙子「む……とするとやっぱりこれは天性の物か……?」ブツブツ

幹也「……」


(もみもみ)


橙子(大分慣れた手付きに見えるんだがな……)

幹也「ふぅ……」

橙子(初めてなのか?とすると……)



橙子「なあ、黒桐」

幹也「はい?」


(もみもみ、ぐっぐっ)


橙子「……」

幹也「……?」


橙子「やっぱり女体の扱いには式で慣れてるのか?」

幹也「ぶっ!」


橙子「……」クスクス

幹也「な、な、な……!」



橙子「どうした黒桐?『な』だけじゃ分からんぞ」

幹也「橙子さん、何言ってるんですか!止めてくださいよ本当に……」

橙子「ん?いや、マッサージは初めてだと言う割にとても上手だから、君……」

幹也「だからって……本当に初めてですよ、僕……」


橙子「ふむ、まあそれは確かだとしても……黒桐?」

幹也「……今度は何です?」


橙子「君、女の体にこういう風に触れるのは初めてじゃないんだろう?」

幹也「ファッ!?」



橙子「私の体に触れる時も、君は意外と動揺してなかったからな」

幹也「な、あ、え……」


橙子「これが今まで一度も女に触れた事もない男なら震えるなりはするよ」

幹也「ちょ、ちょっと待っ……」


橙子「という事は……式の家に寝泊りし始めた折に、君は式と」

幹也「分かりました……その話はよしましょう、はいやめ!」


橙子「む……何故話してはいけないんだ黒桐」

幹也「いやいや……今その話はマッサージには関係ないですし……」

橙子「ふむ、それもそうか。それじゃこれはまた別の機会に話すとして……」

幹也(出来ればもうこの話題はしたくないな……一度話せばずっと橙子さんにおちょくられそうな気がする……)

橙子「黒桐」

幹也「はいはい……何ですか、もう」


橙子「返事も段々投槍になってきたな……さっきからずっと手が止まってるぞ」

幹也「え?あ……」


橙子「うむ……やはり君が初めて式の体に触れた日の事を」

幹也「すいません、それだけは勘弁してください!」


(もみもみ……ぎゅっぎゅっ)


橙子「おお、気持ち良い。やっぱり君は女体を扱う事にかけてはプロ並だな」ニヤニヤ

幹也「うぅ……」



…………
………
……



 ― 伽藍の堂・外 ―



式「……」



幹也『えっ?式、お弁当作ってくれたの? そりゃあ凄く嬉しいけど……あれ?君、自分の分は作ってないのか……』

式『……』

幹也『……それじゃ僕が貰う訳にはいかないな。折角自分で作ったんだから、学校でお昼に食べたらどう?』



式「……あの、莫迦」ボソッ…


式「……」スタスタ…


…………………



 ― 伽藍の堂 ―


式「……」コツコツ

式(学校休んでまで……弁当届けにきたって言ったら、あいつはどんな顔するかな……)


式「……」コツコツ

式(ここに来た事に驚いて……次は学校を休んだ事を注意して……。でも……)


式「……」コツコツ

式(でも……最後にはお礼を言いながらちゃんと受け取る気がする。食べた後に呑気な顔で『美味しかった』って、言ってくれる気がする)


式「……」

式「……」クス…


何でホモSSを書かなくちゃいけないんですか(正論)


…………


式「……」

式(この扉の向こうに……あいつが居るのか。それに、トウコも……)


式「……」

式(お弁当を届けにきたって言ったら……きっと、トウコは冷やかすだろうな。幹也だって……もしかしたら、あんまり良い顔しないかも)


式「……」


式(でも、良いんだ……もう決めた事だから。あいつに、これを渡すって……)


式「―――よしっ……」


ギイイイ……バタン


式「幹也、弁当届けに来た……―――っ?」



式「……」

式「……」

式「……えっ?」


式(なに……これ……は……?)



橙子「はぁー……」

幹也「……」


(もみもみ……ぎゅっぎゅっ)


橙子「ああ……何度も言うようだが……本っ当に、気持ちが良い……。君は天才だなぁ、黒桐……」

幹也「そうですか……そこまで喜んでもらえると、こっちも嬉しいです」


(ぐりぐり、ぐいぐい)



式(え……なに……?何で、幹也が……ソファで橙子に覆い被さって……)※



※ドアの位置の関係上、式からはそう見える



幹也「……っふぅ……」

橙子「はぁ……いやぁ、これは良い……」


幹也「……橙子さん、一旦休憩しましょうか?」

橙子「ああ、うん……別に良いよ……」


式(幹也……あんなに、汗かいて……)


幹也(いやぁ……本当に凝ってるなぁ、橙子さん……。こっちも疲れてきちゃった……)



幹也(いやぁ……本当に凝ってるなぁ、橙子さん……。こっちも疲れてきちゃった……)


幹也「はぁ……」ムク…


式「……」


幹也「ん……あれ? 式、何でこんな所に居るのさ」

式「……」


幹也「学校は? ……もう、駄目じゃないか。成績はともかく出席日数だけは確保しときなさいっていつも言ってるのに」

式「…………」


式「……」

幹也「……式?どうしたの、そんな所で固まっちゃって……」


橙子「んー……?何だ、黒桐……式が来てるのか……?」ムクリ…


式「あっ……」



橙子「どうしたんだ式?今日もまた学校はサボりか」


式「……っ」


橙子「……式?」


式(トウコ……服が、はだけて……)※


※マッサージしている内に自然とはだけてしまった


式「…………」クッ…

幹也(今度は俯いちゃった……どうしたんだろう、式)


橙子「……」フム…


橙子(式は今……私を見て驚いたな?)



橙子「……」チラッ

橙子「あっ……」(察し)


橙子「……」

橙子(なぁるほど……式はこれを見ておかしな勘違いをした訳か……)


式「……」


橙子「……」ニマー… ←何か意地の悪い事を考え付いた時の顔


幹也「あの、式……本当にどうしたの?」

式「……」


橙子「待て、黒桐。ここは私から説明しよう」



幹也「え?橙子さんがですか」

橙子「ああ、任せてくれ」


式「……」

橙子「……」コホン


橙子「あー……式。君は今……もしかしたら、何かを誤解しているのかもしれない」

式「……」

幹也「……?」ン…?


式(誤解って……この状況をどう誤解しろって言うんだ……)


式「……」ギロッ…



橙子「……君が今何を考えているのかは分かるし、どう腹を立てているのかも分かる」

式「……」


幹也(……さっぱり分からない。式は今……女性にしか分からない『何か』……が原因で怒っているんだろうか?)


幹也「……」ウーン…

橙子(こいつはこういう事になると途端に察しが悪くなるなぁ……何かを探る事に関しては優秀な男なんだが)


式「……」

橙子「式。今日は何の日か覚えてるか?」


式「……え?」



橙子「……」

式「何の日……って……」

幹也(今日……今日……今日は何か……式を不機嫌にさせるような事がある日なのか……?)


式「……」

橙子「分かったか?」


式「……」

式「幹也の、給料日……」


橙子「そう、その通りだ」

幹也(……え?それと式の機嫌に何の関係が……?)



式「……」

橙子「それに何の関係がある……って顔だが、実はあるんだよ。黒桐が今金欠なのは知っての通りだろう?」

橙子「確か……家賃を滞納してアパートを追い出され、今は君の家で寝泊りさせてもらってるんだったか」


式「っ……」

幹也「ちょ、ちょっと橙子さんっ……」

橙子「まあまあ良いから、黙って聞け」


式(幹也の奴……そんな事までトウコに話してたのか……)


今考えながら書いてるからペース遅くなりそうなんだよなぁ…スレの流れ早すぎィ



橙子「その事をどうも黒桐は気に病んでいたらしくてな。今日は出社早々に給料を請求されたよ」

橙子「『いつまでも式の所に居ては彼女に迷惑が掛かるから』……って」


式「……」

幹也「っ……」


式「……そうなのか?幹也」

幹也「…………うん」


橙子「男の意地って奴なんだろうな……誰だって、女に情けない自分って奴は見られたくないんだろう」

幹也(人をその情けない金欠にさせたのはあなたですけどね……橙子さん……)


幹也「……」ジーッ…

橙子「……」 ←鉄面皮


式「……」

式(……私は別に、その事を迷惑だなんて思ってない……。ただ……)


橙子「……」

式(ただ……あの何でもない平凡なアパートの……ベッドの寝心地を少し恋しいと思ってた……)


橙子「で……ここからが本筋なんだが。私は黒桐に賃金を強請られたが、当然そんな物持っちゃいない」


幹也「当然って……橙子さん、あな」

橙子「黙って聴け。賃金を持っていないが……代わりに黒桐と『ある約束』をした」


展開行き当たりばったり過ぎィ!



式「……」ピクッ

幹也(約束って……あれの事ですか……?)


橙子「……」パタ…


式「……」

幹也「……」

橙子「……」


幹也「……?あの、橙子さん……何でまた急にソファに寝そべってるんですか?」

橙子「……だから。これが私と君の約束だろう?」



幹也「え……?」

橙子「……」ハァ…


橙子「『今ここに現金はないが』『何でもする』って言ったじゃないか。だから……」

橙子「私の『腰とか背中とか……後足』とか……君、色々触っただろう?」


幹也「……」

式「……」

橙子「……」


幹也「ファッ!?」

式「……」ギロリ



幹也「と、と、と、橙子さん!!何言ってるんですか!!」

橙子「何って……別に嘘は言っちゃいないだろう?さっき君と私の言った通りだ」

幹也「そうですけど!そうなんですけど!」


幹也(式が何を誤解しているのか僕には分からないけど……それでも分かる、今のは絶対に変な誤解を招く!!)


式「……」


式(嘘じゃない……か。勘違いとかじゃなくて……本当に、そうだったの?)


橙子「いや……まさか君があんなに『上手い』とは思わなかった。私の『心地良い』『所』をすぐ見つけてしまうんだものな」

幹也「ちょっとちょっとちょっと……」



橙子「『初めて』だと言ってたが……『女体の扱い』に『慣れてる』と感じたよ。『プロ並』だと思った」

幹也「ストップストップストップ!!」


橙子「何だ黒桐?何か間違いでもあったか?」

幹也「ありませんけど……ありませんけど……何やら悪意を感じます!」


橙子「気のせいじゃないか?」

幹也「嘘だ……絶対嘘だ……」

橙子「……」 ←『やっぱり良く分かってるじゃないか』という顔」



式「……」


幹也「あ……式……」




式(間違いはない……のか。そうか……間違いであって欲しかったけど……)


幹也「……」


式(幹也の汗も……トウコのはだけた服も……全部、間違いであって欲しかったけど……)


式「……」ズリッ…


幹也「式……?」


式(私はただ……もう一度……もう一度のあの部屋の、あのベッドで……)


式「っ……」クルッ…タタタ…


式(こいつの寝惚けた顔を見ながら、一緒に寝たかった……だけなのにな)


ギイイイ……バタン



幹也「……」

橙子「……」コホン…


橙子「とまぁ、こういう風に式が勘違いしてはいけないから、私が説明を買って出た訳だが……見事に誤解されてしまったな、黒桐」

幹也「あなたって人はぁぁぁー!!」


橙子「落ち着け、黒桐」

幹也「これが落ち着いていられますか!何してるんですか橙子さん!見事に誤解されちゃったじゃないですか!!」」


橙子「えーとまぁ……ほら、良く言うだろ?『誰にだって失敗はある』」

幹也「今のは故意じゃないですかぁぁぁー!!」



橙子「……」

橙子「さっきからよく叫ぶな……君にしては珍しい」

幹也「ああっ……物事の本筋からこんなに外れたコメントは初めてだ……!」


橙子「叫ぶのも良いがな、式が心配なら早く追いかけた方が良いぞ、黒桐」

幹也「言われなくたって……!今日はもう退社させてもらいますっ!構いませんね?」ササッ

橙子「ああ、別に構わんよ。しっかり見つけて来い」

幹也「式っ……!」タタタ…


ギイイイ……バタン


橙子「……」



橙子「……」クキッ…コキッ…

橙子「おお、凄い……あんなに酷かった体の凝りが完全に解れてる……」


橙子「……」コキ…コキ…

橙子「体が軽い……なるほど、後で黒桐には感謝しなくちゃな……。約束どおり、給料にも色を付けといてやろう」


プルルルル……


橙子「ん?」


プルルルル……



橙子「……」カチャ


ガチャッ…


橙子「はい、蒼崎ですけど」


…………


橙子「はい……はい……ええ、ありがとうございます。それでは……」


ガチャッ……


橙子「……」

橙子「……」カチャ


橙子「驚いた……まさかこのタイミングで入金とは……」

橙子(しかし……こんな仕事、請けた覚えが……あれ?いや、請けたような気もするが……) ←前の仕事はすぐ忘れる 

橙子「……まあ、あって困る物でもないから、貰っておこうか」

橙子「……」スッ…カチ…

橙子「……」シュボッ…


橙子「……」フゥー…

橙子(今頃あいつら……どこ走り回ってるのかな)

橙子「……」


橙子(しかしまあ……今回あった事を一言で纏めようとすれば……)

橙子「天災は忘れた頃にやってくる……って奴か」 ←違う


幹也と式のいざこざは自分が引き起こした人災という事を棚に挙げる橙子さんであった。
この後……幹也には正式に給料が支払われ、何とか家賃も返す事が出来た。
ただ……今回の事で式が受けた衝撃は大きく、幹也は説得にてこずり……最終的に肌と肌で語り合う事になった。


式「おまえの言う事が正しいって言うんなら……オレにも同じ事をしてみせろっ!!」

幹也「えぇーっ……?」



橙子さんメインのSSがやっと書けたので良かった(小並感)
今回は珍しくエロもホモも無かったんだよなぁ……一回で完結出来て本当に良かった

ところで最近になってようやくらっきょにエロは似合わない事が分かった……お疲れ様した!

式と織のエロはもう書き飽きて……許してください、何でもしますから!
ところで次のらっきょSSはいつになるか未定だけどベストを尽くせば結果は出せる…(震え声)
スレタイは『式「」』にする予定す

(橙子さんのエロを)出そうと思えば(式・鮮花との4P以外に方法は無い……)

地の分を書けないからあまりエロさを期待してはいけない…(戒め)本当に地の分書けるようになれば…
最後に、未来福音映画化おめでとう、後伽藍の洞の病人服の式可愛い

乙した

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