あかり「百合モン……?」(129)

私の名前は赤座あかり、元気いっぱいの中学生ですっ。

あかりたちが通ってる七森中では現在百合モンブームのまっただ中。

西垣先生が発明したこの百合モンボール……!

あら不思議、このボールでゲットされた女の子はその人の百合モンになっちゃうの。

お互いの百合モンを戦わせる日々、信頼するパートナーといつかてっぺんへ行けるのを夢見て……。

廊下を歩けば百合モンボールが飛び交ってます、今日も七森中は平和そのもの――


ピュ~~~~~……コツン

あかり「あいたっ!?」

モブ「あれれれ、この女の子はもうパートナーが決まってるんだね、残念……」

あかり「こんな感じでボールを投げ付けられることもあります」シクシク

結衣「あかり、さっきボール当たってたけど大丈夫!?」

あかり「……うぅぅぅ、コブになっちゃったかも」

結衣「まったくもう投げられる身にもなって欲しいよね、……よしよし」

あかり「……結衣ちゃ~ん」スリスリ

あかり「あ、えっと、この子はあかりの百合モンさんで幼馴染の結衣ちゃんです」

あかり「成り行きでパートナーを組むことになったけど、なんだかんだで上手くやってます」ニコッ

結衣「ん、誰に説明してるのかなあかりは?」

結衣「さっきぶつけられたところ痛くない?……痛かったら保健室行こうね、連れてくよ」

あかり「ううんっ、結衣ちゃんがなでなでしてくれたから治まっちゃった」

結衣「そっかそっか、……あかりは大事なご主人様だから怪我が無くて良かった」ホッ

あかり「ご、ご主人様……!?」

あかり「結衣ちゃん、今度メイドさんの格好でもしてみる……?」

結衣「なっ!?……ただでさえ百合モンで恥ずかしいのに、そんなの勘弁してよもう」

あかり「ふふふ、顔真っ赤になっちゃった」

あかり「そうだ、歩き疲れたらボールの中に戻ってもいいよ結衣ちゃん」

結衣「ううん大丈夫だよ、それにあかりとお話しながら歩きたいし」

結衣「……心配してくれてありがと、やっぱりあかりは優しいよ」

あかり「……ぇへへ」ギュッ

結衣「っと、急に手をつないでくるなんてどうしたの?」

あかり「ゆ、百合モンとの絆を深めるためには、……仕方ないことだから」

結衣「素直じゃないご主人様を持つと大変だ」クスッ

あかり「……も、もう、あまり意地悪言わないでよぉ!」

結衣「ふふ、ごめんごめん」

あかり「……」プクー

結衣「あかり、ほっぺた膨らませて怒っても可愛いだけだよ」プニプニ

あかり「んむむむむむむっ……!」

あかり「うぅぅぅ、結衣ちゃんは百合モンさんで、あかりがご主人様なのっ!!」

結衣「うん、そうだね」

あかり「だ、だからあかりことあまりからかっちゃダメだよぉ……」プイッ

結衣「……ほんと、イジリがいがある子だ」

あかり「もう、ほんとに分かってるの!?」

あかり「百合モンバトルではお互いの関係が大切なんだから――」

結衣「分かってるよ、ご主人様のあかりに一生着いて行きます」ナデナデ

あかり「あ……ほ、ほんと?」

結衣「うん、私はあかりだけの百合モンだから、ね」

あかり「……あかりだけの、結衣ちゃん?」

結衣「なんかそう言われるとちょっと恥ずかしいかも……」

あかり「ぇへへ、なら手を握って歩いてもおかしくないよね~」ギュツ

結衣「わっ、……ふふ、ほんと嬉しそうに笑っちゃって」

モブ1「これからよろしくね、私の可愛い百合モンちゃん」

モブ2「……は、はい、お姉さま」

ワイワイ ガヤガヤ

あかり「放課後だから賑わってきたね~、あちこちで百合モンのカップルが生まれてるよぉ」

結衣「そうだね、ほんとここまでブームになるとは思わなかった」

あかり「……結衣ちゃん、百合モンボールの中身ってどんな感じなの?」

あかり「ずっと聞きたかったんだけど、この話題はタブーなんじゃないかと思って……」

結衣「家具付きの1LDKだよ、冷蔵庫にもたくさん食べ物が入ってるし」

あかり「わ、ワンエルディーケー!?」

あかり「百合モンボールの中身って1LDKなの!?」

結衣「うんうん、短時間だったらとっても快適なんだよね」

結衣「お風呂もあるし、クーラーも完備、それにゲームや漫画だってあるんだ」ニコニコ

結衣「タンスはお家のと繋がってるみたいだから、パンダのパジャマでごろごろしてるよ」

あかり「ぶっひぇ~……」

あかり「うぅぅぅ、あかりもそっちに行ってみたいよぉ!」

結衣「こらこらワガママ言わないの、……それに遊びたかったら私のお家に来ればいいでしょ」

あかり「……あっ、そっかそうだね、ぇへへ」

結衣「にしても西垣先生もすごいの作ったよね……」

あかり「百合モンボール、これはもうノーベル賞ものだよぉ」ニコニコ

結衣「ふふふ、そうだな」

モブ3「あ、あの黒髪の方、ちょっとよろしいですか!」

結衣「えっと、私のことですか?」

モブ3「はいっ……良かったら私の百合モンさんになって欲しくて――」

あかり「だ、ダメだよぉ、結衣ちゃんはあかりの百合モンさんです……!」ギュッ

モブ3「……そうですか、失礼しました」トボトボ

結衣「あ、行っちゃった……」

結衣「急にお願いされたらからびっくりしちゃった……」ドキドキ

結衣「でもあかりも他の人から私の百合モンになって、ってお願いされてるよね」

あかり「……」ギュッ

結衣「……あかり?」

あかり「ゆ、結衣ちゃんはあかりだけの百合モンさんだからね……」

あかり「違う人とどこかに行ったら、あかり怒っちゃうから」

結衣「あ、もしかして妬いてるのかな?」

あかり「ち、違うよぉ!!……ただ釘をさしてるだけだから」ギュッ

結衣「……ほんと、素直じゃないないんだから」クスッ

結衣「どこにも行かないよ、私のご主人様はあかりだけだからね」ギュッ

あかり「わっ……ぇへへ、結衣ちゃんにぎゅっーてされちゃった」

結衣「パートナーを組んだのは成り行きだったけどさ、……いまはあかりと組めて良かったって思ってるよ」

あかり「……ほんと?」

結衣「うん、だってあかりは私を大事にしてくれるし、いつも気にかけてくれるから」ニコッ

結衣「あかりのために私は頑張って戦うよ、……2人で百合モンマスターを目指そうね」

あかり「……うんっ!」

あかり「そろそろ1回でいいから百合モンバトルしておきたいよね~」

結衣「そうだね、練習がてら経験しておきたいかな」

あかり「その前に結衣ちゃんの技を確認しておかなきゃ……」パカッ

結衣「あ、百合モン図鑑だ、どんなこと書いてあるのかな――」

あかり「船見結衣 寂しがりや百合モン」

結衣「さ、寂しがりや……」

あかり「たかさ 160センチ 体重チョメチョメキログラム」

結衣「なっ!?」ビクッ

あかり「スリーサイズは上から……きょ、今日穿いている下着の柄……!?」

結衣「うわあああああああああああああああああああああああ!!!」

結衣「はーっ、はぁー……はぁ……」

あかり「ぶっひぇ~……、でもパートナーを知ってこその信頼関係だからね」ニコッ

結衣「プライバシーの侵害だよどう考えても!?」

あかり「ふふふ、でも見た目通りスタイルいいんだね~いいなぁ」

結衣「……絶対に他の子に言わないでね」ギロッ

あかり「はっ、はひっ!」


綾乃「あら、あそこにいるのは船見さんと赤座さん……」

千歳「ほんまやね~、綾乃ちゃん良かったら百合モンバトルやってみよか?」

綾乃「うーん……」

千歳「船見さんに赤座さん、ほんと2人とも仲がええなぁ~」

綾乃「千歳!!……ほ、本当にバトルしちゃうの!?」グイグイ

結衣「あ、千歳と綾乃だ」

あかり「……結衣ちゃん、気を引き締めた方がいいよ」

結衣「えっ?」

千歳「まぁまぁ、もし良かったらウチらと百合モンバトルせえへんかな~と思てな」

あかり「でもあかりたちまだ1回も経験が無くて……」

綾乃「あっ、それなら私たちだって同じよ、……バトルって言うくらいだからやっぱり怖くて」

結衣「ふむふむ……」

結衣「綾乃に千歳、良かったら私たちと百合モンバトルやってくれないかな?」

あかり「えっ!?」

結衣「もっと強くなりたいんだ、あかりと百合モンマスターを目指すために……」

綾乃「えぇ望むところよ、バトルを重ねれば強くなれるって言うし!」

千歳「ふふふ、それなら練習がてら1回やってみよか~」

あかり「……ゆ、結衣ちゃん、そんなのダメだよぉ」ギュッ

あかり「怪我だってするかもしれないし、結衣ちゃんが傷つくところなんか見たくない!」

結衣「……あかり」

結衣「……」ギュッ

あかり「あっ、……結衣ちゃん、お願いだからあかりの言うこと、聞いてっ」グスッ

結衣「ううん、それでも私は百合モンバトルをしないといけない」

結衣「いろいろな人に言われるんだ、私とあかりは幼馴染なのに接点が薄いって……」

結衣「ほんとに君たち幼馴染なの?……とか」

あかり「……そんな」グスッ

結衣「私たちが百合モンバトルを積み重ねれば、そういうこともきっと言われなくなるよ」ギュッ

あかり「……うんっ、うん」


綾乃「すごっ………………」ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ

千歳「歳納さんと綾乃ちゃんだけじゃなくて、この2人もええかもなぁ……」

あかり「ゆ、結衣ちゃん、最後にぎゅーってして欲しいな」

結衣「……了解、ご主人様」ギュッ

あかり「……♪」

綾ちと「…………」ドキドキ

結衣「あっ、えっと、そろそろ始めようか!」

綾乃「そ、そうねっ、時間も限られていることだしっ!!」

千歳「船見さん×赤座さんも要チェック、っと……」メモメモ

結衣「ち、千歳、いったい何のメモなの!!」

千歳「ヒ・ミ・ツ、やで」

あかり「結衣ちゃーん、頑張ってね~」フリフリ

千歳「綾乃ちゃん、あんま無理せえへんといてな~」


綾乃「ふふ、いいパートナーに巡り会えて良かったわね船見さん」

結衣「……そ、そうかな」

綾乃「お互いを大事に想ってるんだな、……って、さっきのイチャイチャで伝わったもの」ニコッ

結衣「むっ……い、イチャイチャなんかしてないから!」

綾乃「人間正直が一番楽なのよ、赤座さんには早めに唾付けておいたほうがいいんじゃないのかしら」クスッ

結衣「……綾乃にだけは素直うんぬんは言われたくないよ」

千歳「綾乃ちゃんも歳納さんに素直になれたらええのになぁ~」

綾乃「なっ、なっ、なに変なこと言ってるのよ千歳ぇ!?」クルッ


あかり「結衣ちゃん、杉浦先輩が油断してる今のうちに先手必勝、しめつけるだよ!!」

結衣「……!」ピクッ


千歳「ほんとは歳納さんとパートナー組みたかったんやろ~」

綾乃「そ、そんなわけないじゃないのっ!有り得ないわよ……!」

綾乃「だいたい歳納京子みたいな、自分勝手みたいな人と組むなんて……えへへ……」モジモジ

綾乃「でも歳納京子は吉川さんとパートナー作っちゃったから……ぐすっ」

千歳「……」ポタポタ


結衣「……ご、ゴメンね綾乃後ろから、急に体が動いちゃって」ギュッ

綾乃「ふ、船見さん!?」

結衣「苦しいとかあったらすぐ離すけど……」ギュッ

綾乃「ううん、そんなことない……ただ突然だったからびっくりしちゃって」

結衣「そっか、良かった……」

綾乃「……」ドキドキ

結衣「うっ……ぁ」

綾乃「ふ、船見さんどうかしたの?」

結衣「いや、あの、綾乃をぎゅっとしたときにいい匂いがふわっとしてきて……」

綾乃「っ……!?」

結衣「……な、なんか、変な気分になりそ、う」ギュッ

綾乃「あわわわわわわわわわ……」

>>49 訂正です

結衣「苦しいとかあったらすぐ離すけど……」ギュッ

綾乃「ううん、そんなことない……ただ突然だったからびっくりしちゃって」

結衣「そっか、良かった……」

綾乃「……」ドキドキ

結衣「うっ……ぁ」

綾乃「ふ、船見さんどうかしたの?」

結衣「いや、あの、綾乃をぎゅっとしたときにいい匂いがふわっとしてきて……」

綾乃「っ……!?」

結衣「……な、なんか、変な気分になりそ、う」ギュッ

綾乃「あわわわわわわわわわ……」


あかり「……」

綾乃「こ、こんな不純な行為は絶対にダメよっ!!」

結衣「……でもこれが百合モンバトル」ギュッ

綾乃「あっ……ぅ」

結衣「次は綾乃のターンだよ、早く私に攻撃してね」

綾乃「み、耳元で呟いちゃだめぇ……」ビクッ

綾乃「千歳、早く私に攻撃の命令して!!」

千歳「あ~、やっと綾乃ちゃんが歳納さんにデレてもうた……」ポタポタ

結衣「百合モンはご主人様の命令なしじゃ動けないから……お気の毒だけど」

綾乃「そ、そんなぁ……」グス

結衣「あかり、次の命令よろしくね」ギュッ

綾乃「あっ、……やぁ……んっ」

あかり「あ……うん、結衣ちゃん次はすいとるだよっ!」

結衣「……!」


結衣「ゴメンね綾乃、ご主人様の命令は絶対なんだ……んっ……」カプッ

綾乃「っ!?」

結衣「ちゅっ……あむ……んっ……」

綾乃「だ、だめだめだめっ、首筋に跡が残っちゃうからぁ……!」ビクッ

結衣「ぷはっ……あ、綾乃の首筋真っ赤っ赤になっちゃった」

綾乃「はっ……っ……んんっ……」


あかり「……」ギリッ

千歳「あかん、ついいつもの癖で妄想の世界に!」

結衣「あはは……おかえり、千歳」

綾乃「はっ……はー、ひっ、千歳ぇ、いい加減にしなさいよっ!!」

千歳「綾乃ちゃん、首筋がなんか赤いけど虫さされでもしたん?」

綾乃「うっ、うるさいっ、早く命令出してよお願いだから……」

結衣「……いま思うと、スゴイことしちゃったかも」カァー

綾乃「はいは~い……ほな綾乃ちゃん、船見さんにつぼをつく!」

綾乃「……!」

結衣「ツボをつく……、どんな攻撃なんだろう」ゴクッ

綾乃「ふ、船見さん、やっぱり百合モンバトルとはいえ不純な行為はいけないナイアガラよ……」モジモジ

結衣「っ!?」

綾乃「今度からあまり過激なことをしている子を見つけたら罰金バッキンガムしないといけないわね」

結衣「ぷっ……ふふっ……!」

綾乃「さ、さっきまでの私はたじたじタージマハルだったけど……」

綾乃「あまり生徒会をナメてもらったらぶーぶーブータンなんだからねっ!」

結衣「くふふふっ、ふっ……あっ……っ」ピクピク


千歳「あー、つぼをつくって、船見さんの笑いのツボってこと……」

あかり「ゆ、結衣ちゃん……」グスッ

あかり「結衣ちゃん頑張って、ファイトだよっ!!」

千歳「そうやね赤座さん、どっちもファイトや、頑張ってな~」


結衣「ファイトッ、ファイトのあれを言われたらもう無理っ、ひっ……」

綾乃「頑張るのよ私、ファイトファイトファイファイビーチでこの学校の風紀を守るの!」

結衣「っ!?……あははっ、ひっ……くふふふっ、ふっ……!」

結衣「ぷふっ……ふっ……ふふふっ……けほっ……ぶふっ!」ピクピク

綾乃「ふ、船見さんどうしちゃったの!?私が付いてるから心配はノンノンノートルダムよ!」

結衣「げほっ、いきできない、はぅ、はっ、っ……げほっ……あははっ!」


千歳「恐ろしい技や綾乃ちゃん、でも船見さんにしか効かなそうやけど」

結衣「ひゅっ、……けほっ……ひっ……げほっ!」

千歳「これはちょっとアカンな、船見さん笑いすぎて過呼吸になっとるかも」

綾乃「そ、そんな過呼吸だなんて!?」

綾乃「えっと、ビニール袋があればいいのよね……えっと、えっと……!」ゴソゴソ

結衣「ひっ……ひ……ひゅっ……」

千歳「船見さん、いま保健室の先生連れて来るから待っててな!!」

あかり「池田先輩、ここはあかりに任せてもらえますか?」スッ

千歳「赤座さん……?」

あかり「昔テレビで見たんです、過呼吸の人への応急処置を」

千歳「でもいまビニール袋とかは無いんよ?……どうするつもりなん」

あかり「ようは結衣ちゃんに二酸化炭素を吸わせればいいんです……」

結衣「はっ……はっ……っ……ふっ……」

あかり「ゴメンね結衣ちゃん、あかりがもっといい命令を出してれば」グスッ

あかり「だからっ……」チュッ

結衣「っ……ふっ……っ……」

あかり「ふっー……あむっ……ん……」


千歳「な、なるほど、船見さんに直接チューをして二酸化炭素を送り込む!!」ボタボタ

綾乃「あわわわわわわわわわ……」ドキドキドキドキドキドキドキドキ

あかり「ぷはっ……」

結衣「……」

結衣「……あ、あれ、ここは私いままでなにを」

あかり「結衣ちゃん、良かったぁ気がついてくれたんだね!!」ガバッ


千歳「良かった、船見さんの呼吸治まったみたいやね」ボタボタ

綾乃「あ、あなたは鼻血をどうにかしなさいよっ!!」

千歳「おかしいなぁ~、今までは鼻血が出るの綾乃ちゃんと歳納さんの妄想だけだったのに」

綾乃「そ、それがそもそもおかしいのよっ!!」

綾乃「……でも、この2人の百合っぷりを魅せつけられたらしょうがないかもね」

千歳「……せやなぁ、しばらくは結あか推しでいこかな」

結衣「えっと、それじゃこのバトルは私の負けってことで」

あかり「……」ギュッ

綾乃「勝ち負けなんてないわ、私たちも足りないものが分かったから」

綾乃「……いろいろと学ばさせて貰ったわ、あなた達にはね」

千歳「せやね、船見さん次戦うときは耳栓でもしてたほうがええかもな~」

結衣「……もう綾乃とは絶対戦いたくない」ボソッ

綾乃「そ、そんなぁ!?」

千歳「あははっ、船見さんにとっては死活問題やからな~」

結衣「……ゴメンねあかり、私が不甲斐ないせいで」

あかり「ううんっ、そんなことないよ!」

結衣「やっぱりまだまだ力が足りないのかな、もっと強くなりたい」

結衣「あかり、明日からはいろいろな人とバトルをしよう」

あかり「……えぇ」

結衣「きっと実戦の経験が私には足りないんだ……」

あかり「……うん」

結衣「絶対にあかりを百合モンマスターに導いてみせるよ!」ガシッ

あかり「あっ……ぇへへ、それなら明日からも頑張ろうね」

あかり「それじゃ今日はもう疲れたでしょ、ボールに戻ってね」

結衣「うん、……お休みなさい、あかり」ニコッ

シュルルルル……ポン!

あかり「お疲れ様、ほんと不思議なボールだよね……」

あかり「なんかね、結衣ちゃんが百合モンバトルしてるのを見ると……」

あかり「あかり、とってもイライラするんだ」ギリッ

あかり「こう、胸の奥にモヤモヤがかかって、とっても嫌な感じ」

あかり「……でも結衣ちゃんは、あかりのためにバトルしてくれてるんだよね」ニコッ

あかり「それなら我慢しなきゃね、……信じてるよ、結衣ちゃんはあかりだけのモノって」

次の日からあかりと結衣ちゃんの百合モンバトル地獄の連戦が始まりました。

結衣ちゃんはもともとの素質というか、天然のジゴロだけあってみるみる力を付けていったんだよぉ。

一戦終えるたびに向けられる、あの爽やかな笑顔。――それを見るたびに、あかりは複雑な気持ちになって。

ほんとは楽しんでるじゃないのかな、あかりのために戦ってるの?

ねぇ結衣ちゃん……。

向日葵「櫻子、船見さんにあまえる、ですわっ!!」

櫻子「……!」

櫻子「船見せんぱ~い、今度また麻婆豆腐作って下さいね!」スリスリ

結衣「うん、それくらいならお安いご用だよ」

櫻子「えへへっ、なら今度お家に行っちゃおうかな~……なんて」

結衣「ふふふ、大室さんならいつでも歓迎だよ」

櫻子「やったぁ~、お腹空かせて行きますからあたし!」

結衣「はいはい」クスッ


向日葵「……」ギリッ

あかり(向日葵ちゃんもきっとあかりと同じような気持ちなんだろうな~)

櫻子「あ、百合ポイント的に今回は私あたしの勝ちですね!」

結衣「あ……やっぱり、甘えられると弱いのかな私」

櫻子「ひっまわり~、船見先輩に勝っちゃったよ!!」

櫻子「えへへ、ご褒美としてナデナデされてもいいよん?」

向日葵「……ずいぶんと楽しそうですわね、櫻子」ギロッ

櫻子「ひっ、向日葵どうしちゃったの……」

櫻子「あたし、向日葵のためにがんばって戦ったんだよ!?」

向日葵「……そう、櫻子は私のために、私のために」ブツブツ


あかり(分かるなぁ向日葵ちゃんの気持ちが、痛いほど分かるよぉ)

結衣「あかり、次は京子とちなつちゃんのペアと戦うよ」

あかり「……うん」

結衣「次こそはあかりに喜んでもらえるように、勝ってみせるから」ニコッ

あかり「ぇへへ、頑張ってね結衣ちゃん……はぁ」

あかり「……そろそろ、心の中で何かがぷっつりと千切れそう、かな」

あかり「でも結衣ちゃんはあかりのために戦ってくれてるんだから、あかりのために……」ブツブツ

あかり「マスターが信じないとダメだよね、ふふふ」

あかり「……はぁ」

ちなつ「……京子先輩、頑張って下さいね」

京子「はいはーい、ちなちゅのためにごらく部ブラックを倒してみせますよん♪」

結衣「おいコラ、勝手に変な名前付けないでよ」

京子「くふふ、結衣にゃんと戦うことになるとはねぇ」スリスリ

結衣「まぁ顔見知りとはだいたいは勝負しちゃったからね」

京子「まー、結衣みたいなへたれには負ける気がしないけどね……」

結衣「……きょ、京子にだけはへたれとか言われたくないんだけど」

京子「おいおい、あたしは結構場慣れしてるから手強い――」

結衣「んっ……」チュッ

京子「っ!?……んっん、んん!!」


あかり(なんかもう技の命令しなくても勝手に始まってるし)

京子「ぷはっ……あっ、ぅ……結衣……」ギュッ

結衣「場慣れしてるとか言って、キスされただけでこれだもんね」

京子「だ、だって、不意打ちなんてズルいもんっ……」

結衣「京子は私のペースに任せてればいいの、昔はそうだったでしょ」ギュッ

京子「……うんっ、えへへ」

京子「……もう一回結衣としたいかも、キス」

結衣「ふふ、肩の力抜いてリラックスしてね、怖くないから」

京子「……」ギュッ


ちなつ「京子先輩は私のことが好き、京子先輩は私のことが好き、京子先輩は私のことが好き……」ブツブツ

あかり(これはちょっとあかりももう耐えられそうにない、かな)ギリッ

結衣「……やっぱり京子は可愛いな、子供の時からずーっとね」ギュッ

京子「結衣はあたしのこと、ずっと見守っててくれたよね」

結衣「きっと近すぎたんだよ、私たちは」

京子「でもお互いにとって大切な人には変わらない、よ」ニコ

結衣「……京子、京子」チュッ

京子「んっ、ああっ……ゆぃ……ん……」ギュッ


ちなつ「ゴメンねあかりちゃん、私はもう限界みたい……」ポロポロ

あかり「うん、あかり百合モンバトルの真理に気がついちゃったんだ」

あかり「これ、トレーナーにメリットないね」

結衣「あのあかり、いま京子と百合モンバトルしてるんだけど……」

京子「ち、ちなつちゃん、この首輪はなんなの!?」

あかり「ちなつちゃんと話し合って決めたんだ、ふふ」

ちなつ「お互い百合モンのしつけが足りないって、ことで意気投合しちゃって」

あかちな「ねー……」

あかり「いまの結衣ちゃんはね、わんわんと同じなの」

あかり「本能のままに可愛い子とイチャコライチャコラしてね」

あかり「……だから、首輪を付けてあかりがしつけしてあげる」グイッ

結衣「あっ……く、苦しいよあかり、急に引っ張らないで!」


京子「ひっ……」ガタガタガタガタ

あかり「ねぇ結衣ちゃん、わんわんは二足歩行なんかで歩かないよね?」

結衣「わ、わたしは人間だよ、あかり……」グスッ

あかり「人間は首輪なんか付けたりしないよ、それにちゃんと理性があるから」グイッ

結衣「あっ、ひ、そんなに強く引っ張らないでっ……」ペタッ

あかり「そうそう、手足を使ってハイハイして歩こうねこれから」

結衣「ひっ……」ブルブルブルブル


京子「わ、わたしっ、私が好きなのはちなつちゃん一人だよっ!」

ちなつ「……知ってますよ、私も京子先輩のこと好きですから」

京子「……」ホッ

ちなつ「好きだからたくさんお仕置きしてあげます」

京子「!?」

京子「お、お仕置きってなに、なんのこと!?」

ちなつ「……京子先輩、壁に手を当ててお尻をこっちに向けて下さい」

京子「いやだっ、嫌だよそんなの!!」ブルブル

ちなつ「……ふーん、なら結衣先輩とあかりちゃんみたいにしますか?」

京子「えっ?」チラッ


あかり「さぁ結衣ちゃん、このまま校内をたくさんお散歩しようね」グイッ

結衣「せ、せめて普通に歩かせて、お願いあかり!」

あかり「可愛いのは変わらないけど、結衣ちゃんはあかりの百合モンじゃなくて……」

あかり「モノ、だから、モノに拒否権なんかないよね、ふふ」グイグイッ

結衣「やだっ、助けて、誰か――」

バタン……

京子「そっちのお仕置きでお願いします……」シクシク

ちなつ「はいっ♪」

京子「うぅぅ、あたしこれから何されるの……」

ちなつ「京子先輩は悪くない、悪いのは全部このお尻なんです」

京子「ち、ちなつちゃん……?」

ちなつ「すぐに元の尻軽じゃない純粋な京子先輩に戻りますから、ふふふ……」

スパァン!

京子「いっ!?」

ちなつ「コレに懲りたらもう他の子にちょっかい出さないで下さいね」スッ

スパァン、パァン!!

京子「ち、ちなつちゃんっ、お尻叩くのやめて、お願いだからっ!」グスッ

ちなつ「あ、そうだ確か物置にハリセンがあったかな……」

京子「いやぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ……」

~数日後~

あかり「結衣ちゃんの好きな人は?」

結衣「あかりだよ」

あかり「……ぇへへ、結衣ちゃんが世界で一番好きな人は?」

結衣「あかりだね」

あかり「ふふふ、結衣ちゃんは大人になったら何になるのかな?」

結衣「あかりのお嫁さん、かな」ニコッ

あかり「……」ニコニコ


京子「こわっ、完全に調教されちゃってるよ結衣!!」

ちなつ「あ、京子先輩……」

京子「ちなつちゃんちなつちゃん、ちなつちゃん!!」スリスリ

ちなつ「わっ、もぉ~、ほんとに甘えん坊なんだから」

ちなつ「今日はこの媚薬を試してみましょうね、ふふふ」

ちなつ「はい、あ~ん……」

京子「あっ……ん、……あ、またとろ~んってしてきた」ギュッ

ちなつ「京子先輩は、もう私抜きじゃ生きていけませんよね?」

京子「うんっ、ちなちゅちゃんが、いないと無理だよ」ニコッッ

京子「……♪」スリスリ

ちなつ「……ふふ、ふふふふ」

私の名前は赤座あかり、元気いっぱいの中学生ですっ。

あかりたちが通ってる七森中では現在ヤンデレブームのまっただ中。

西垣先生が発明したこの百合モンボール、それは嫉妬を引き起こすための道具でした。

あら不思議、このボールでゲットされた女の子はその人の百合モンになっちゃうの。

お互いの百合モンを戦わせる日々、それはまさに寝とり寝取られの応酬。

廊下を歩けば女の子の怒号が、しつけをする声が飛び交ってます、今日も七森中はドロドロそのもの――

おしまい

前に投下したSSを肉付けしちゃいました、蛇足だったかもしれませんごめんなさいお休みなさい。

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