桃子「先輩!」加治木「な、なんだモモ」(219)

桃子「昨日はどこ行ってたんすか!?」プンプン

加治木(モモはなぜ怒っているんだ・・・?)

加治木「・・・昨日は久たちと映画館に行っていたが」

桃子「!? ・・・その久ってのは、もしかして清澄の部長さんっすか!?」

加治木「ああ、そうだが・・・」

桃子「・・・っ」

桃子「映画ってなに見たんすか!?」プンプン

加治木「えっと、アメイジングスパイダーマンだったかな・・・」

桃子「楽しかったっすか!?」

加治木「あ、ああ・・・」

桃子「私も見たかったっす!」

加治木「そ、そうなのか・・・」

桃子「・・・」

加治木「・・・」

桃子「私も見たかったっす!!」プンプン

加治木「こ、今度一緒に行くか?」

桃子「!?」

桃子「・・・いやっす!」プイッ

加治木「・・・なぜだ?」

桃子「自分の胸に聞いてみてくださいっす!」プンプン

加治木「・・・モモ」

桃子「・・・」ツーン

加治木「おいモモ」

桃子「・・・」ツンツーン

加治木「・・・なぜそんなに怒ってるんだ」

桃子「怒ってなんかないっす!」プンプン

加治木「いやどう見ても怒ってるだろう」

桃子「怒ってないっすからね!!」

加治木「・・・はいはい、わかったよ」

桃子「・・・ふんっす」プイッ

加治木「・・・」

桃子「・・・」チラッ

加治木「・・・なんだ?」

桃子「!?」

桃子「な、なんでもないっす!」プイッ

加治木「・・・モモ」

桃子「・・・」ツーン

加治木「昼食をとらないか?」

桃子「!?」

桃子「・・・」

加治木「どうだ?」

桃子「ひ、一人で行ったらどうっすか!?」プンプン

加治木「・・・いやお前はどうなのかと思って」

桃子「・・・わ、私は今お腹いっぱいなんす! だからお昼とかいらないっす!」プンプン

加治木「そうなのか・・・残念だ」

桃子「・・・ほんとはそんなこと思ってないくせにっす・・・」ボソッ

加治木「ん、なにか言ったか?」

桃子「・・・な、なんでもないっすよ! さっさと行ってきたらどうっすか!?」

加治木「? ああ・・・」

加治木「・・・」スタスタ

加治木(昨日はファミレスだったから、今日は趣向を変えてラーメン屋にでも行ってみるか・・・)

加治木「・・・」スタスタ

桃子「・・・」スタスタ

加治木「・・・」ピタッ

桃子「・・・っ」ピタッ

加治木「・・・」

桃子「・・・」

寝落ちしてた

加治木「・・・」スタスタ

桃子「・・・」スタスタ

加治木「・・・」ピタッ

桃子「・・・っ!」キキッ

加治木「・・・モモ」

桃子「・・・」サササッ

加治木「いやばれてるからな」

桃子「ステルっす!」

加治木「ステルスもしない」

桃子「・・・誰っすかアンタ」

加治木「すっとぼける気か」

桃子「私は桃子じゃないっすからね」

加治木「・・・ハァ」

桃子「・・・」

加治木「じゃあ今度こそ行くからな。もう知らないぞ」

桃子「勝手にすればいいっす」ベーッ

加治木「・・・」スタスタ

桃子「・・・」スタスタ

加治木「・・・」

桃子「・・・」

加治木「モモ」

桃子「行く方角がたまたま同じだけっすから」ボソッ

加治木「・・・今返事をしたな?」

桃子「へ?」

加治木「やっぱりお前モモじゃないか」

桃子「!?」

桃子「い、今のは卑怯っす!」プンプン

加治木「うるさい、負けを認めろ」

桃子「うぅ・・・」グヌヌ

加治木「一緒に行くんだろ?」

桃子「・・・っ」

加治木「だったら素直についてこい」

桃子「い、いやっす!」

加治木「この強情っ張りめ・・・ほらっ」グイッ

桃子「っ!?」

桃子「は、離せっす!」パシッ

加治木「・・・痛いな」

桃子「・・・当然の報いっす」フンスッ

加治木「・・・」

桃子「・・・」ツーン

加治木「・・・ああ、わかったよ。じゃあ勝手についてくればいい」

加治木「・・・」スタスタ

桃子「!?」

桃子「だ、だから私はついてってるんじゃないっす!」ダダッ

加治木(・・・ここにするか)

加治木「・・・」チラッ

桃子「・・・」プイッ

加治木「・・・ここでいいか?」

桃子「・・・」ツーン

加治木「おいモモ」

桃子「・・・なんで私に聞くんすか?」

加治木「いやお前なあ・・・」

桃子「・・・」ツーン

加治木「・・・じゃあ質問を変えるぞ。モモはラーメン好きか?」

桃子「・・・」

桃子「ど、どっちかと言われれば好きっす・・・」ボソッ

加治木「・・・そうか」フフッ

加治木「じゃあここにする」

ガラッ

「ラッシャーイ、二名様ですか?」

加治木「はい 桃子「一名様っす」

「え?」

桃子「一名様ずつっす」

加治木「・・・」

「あ、そうなんですか。じゃあお好きなカウンター席にどうぞー」

桃子「はいっす」スタスタ

加治木「・・・まったくあいつは」

●○○○○○○○●
↑かじゅ モモ↑

加治木(まったく・・・とことん素直じゃない)

加治木「・・・」ペラッ

桃子「・・・」ペラッ

加治木「・・・モモ、決まったか?」

桃子「・・・」

加治木「モモはどのラーメンが好きなんだ?」

桃子「・・・」

加治木「・・・じゃあ私と同じやつな。すみません」

桃子「ま、待つっす!」

加治木「なんだ、もう呼んでしまったぞ」

桃子「ああもう、先輩のバカっす!」ペラペラッ

「・・・ハイ、ご注文お伺いします」

加治木「私はこの特製つけ麺を」

「ハイ、特製つけ麺がおひとつ」

「・・・お連れ様は?」

桃子「今考えてるっす! あと、お連れ様じゃないっす!」

「・・・は、はい」

桃子「うむむ・・・」

図ミスった

加治木「モモ、早くしろ」

桃子「わかってるっすよ! ちょっと黙っててくださいっす!」ペラペラッ

加治木「・・・」

桃子「・・・むむ」

桃子「じ、じゃあこれで・・・」

「はい、ねぎラーメンがおひとつ。以上でよろしいでしょうか?」

加治木「はい」

「ご注文ありがとうございます~」

加治木「なあモモ、ねぎラーメンってなんだ? 初めて聞いたが」

桃子「・・・」フンッ

加治木「無視するなよ」

桃子「・・・ねぎのラーメンっすよ」プイッ

加治木「なんだその適当すぎる回答は」

桃子「・・・店員に聞けばいいじゃないっすか」

加治木「なんだ、知らないのか」

桃子「い、いちいちうるさいっすね!」プンプン

「お待たせしました、特製つけ麺です」コトッ

加治木「ありがとう」

加治木「・・・おいしそうだな」

桃子「・・・先に食べていいっすよ」

加治木「ん、いや待つよ」

桃子「!」

桃子「か、勝手にすればっす!」プイッ

加治木「ああ、勝手にさせてもらうよ」

「お待たせしました、こちらねぎラーメンです」コトッ

桃子「どもっす」

加治木「お、きたな。じゃあさっそく食べるか」

桃子「・・・」ズズッ

加治木「・・・おいモモ」
桃子「なんれふか?」モガモガ

加治木「・・・いや、なんでもないよもう・・・」

加治木「いただきます」カチッ

加治木「・・・」ズズッ

加治木「ん、うまいな」モグモグ

桃子「・・・」ズズッ

加治木「モモ、そっちはどうだ? うまいか?」

桃子「んぐ・・・まあまあっすね」

加治木「ほう、じゃあ相当うまいってことだな」

桃子「・・・どういう理屈っすかそれ・・・」ズズッ

加治木「モモは毒舌だからな。モモがまずいといえばそれはすなわち普通なんだ・・・」ズズッ

桃子「んぐ・・・先輩、バカっすか?」

加治木「はは、かもしれないな」

加治木「・・・どれ」ヒョイ

桃子「あ、なに勝手にとってるんすか!」

加治木「ん・・・」モグモグ

加治木「ああ、ねぎラーメンのネギは油で揚げてあるのか」

加治木「なるほど・・・」ズズッ

桃子「ちょっと! なに自然に私のどんぶりから直に食べてるんすか!」

加治木「ちょっとくらいいいだろ。どうせ私に奢らせるんだから」

桃子「それとこれとは話が別っす!」ヒョイ

加治木「あ、お前!」

桃子「んん・・・」モグモグ

桃子「んぐ・・・つけ麺ってこういうのなんすね。少し味濃いけどなかなか悪くないっす」モグモグ

加治木「・・・まあいいか。食べたかったら好きに食え」

桃子「言われなくってもそうするっよ・・・」ズズッ

ちょい飯

ガラッ

「アザッシタ-」

桃子「ふう・・・食った食ったっす」

加治木「値段もお手頃だしな。また来ようか」

桃子「そっすね!」

加治木「・・・」

桃子「どうしたんすか先輩?」

加治木「いや、お前いつの間にか機嫌直してたなあと思って」

桃子「!!」

桃子「だ・・・だ・・・」

加治木「だ?」

桃子「だ、誰っすかアンタ!///」ビシッ

加治木「いやそれはさすがに無理あるだろう」

桃子「も、もう帰るっす!」

加治木「いや待て待て」ガシッ

桃子「離してくださいっす!」ジタバタ

加治木「どうせまた私のあとをつけてくるんだろう」

桃子「そんなことした覚えないっすー!」ジタバタ

加治木「そしてまた私に何かたかる気だろう」

桃子「さっきのは先輩が勝手に払ったんじゃないっすかー!」ジタバタ

加治木「まあまあ落ち着けモモ、どうどう」

桃子「なんかバカにされてる気分っす!」プンプン

加治木「どうしたらモモは素直についてくるんだ?」

桃子「私はいつでも自分に正直っすよ!」

加治木「うーん、それも一理ある」

桃子「む、それはそれでまたバカにされてる気が・・・」

加治木「それで、どうなんだ?」

桃子「・・・っ」

桃子「・・・」ムム

桃子「そ、そっすね・・・」

桃子「せ、先輩が私についてきてほしいってお願いするなら・・・ついていかないこともないっすけど・・・///」

加治木「なんだ。そんなことか」

桃子「・・・えっ」

加治木「モモについてきてほしいとお願いすればいいんだな?」

桃子「ま、まあそうっすけど・・・」

加治木「じゃあ言うぞ」

桃子「・・・は、はいっす」

加治木「・・・」

桃子「・・・」ゴクリ

加治木「モモについてきてほしい」

桃子「お断りっす」

加治木「なっ!?」

加治木「なぜだモモ。私はちゃんと言ったぞ」

桃子「ちゃんと言ってないじゃないっすか。先輩のそれはお願いじゃなくてただの願望っす」

桃子「それにその・・・心が篭ってないっす」

加治木「なんだめんどくさいやつだな」

桃子「じゃあもうついてかないっす!」プイッ

加治木「わぁかった、すまんすまん」

桃子「・・・むう」

桃子「・・・ならほら、ちゃんと言ってくださいっすよ」

加治木「・・・ああ」

加治木「・・・モモ」

桃子「・・・な、なんすか先輩」

加治木「・・・」

桃子「・・・」ドキドキ




加治木「・・・!」グイッ

桃子「なっ!?」

加治木「モモ、私についてこい!」ダダッ

桃子「な、なんすかそれーっ!」ダダッ

桃子「ど、どこまで走るんすか・・・っ」タッタッ

加治木「もうすぐだ・・・っ」タッタッ

桃子「ま、まったく・・・話が違うっすよ、先輩・・・っ!」

加治木「ははっ・・・お前にはこれくらい強引な方がいいと思ってなっ」

桃子「い、いくらなんでも強引すぎるっす・・・っ!」

加治木「反省はしていない・・・っ」

桃子「ほんと自分勝手な人っすね・・・っ!」

桃子「・・・」

桃子(・・・まあ、そういうところが好きだったりするんすけど、ね・・・)

桃子「・・・っ///」

加治木「ハァ、ハァ・・・着いたぞ」

桃子「ハァ、ハァ・・・こ、ここは・・・」




桃子「映画館・・・?」

加治木「ああ・・・お前行きたそうにしてただろう?」

桃子「・・・」

加治木「・・・どうした? 感動でもしたか?」

桃子「・・・っ」

ポカポカ

加治木「いたっ・・・なにするんだ」

桃子「っぐ・・・ば、バカじゃないっすか! なに自惚れちゃってるんすか!」
ポカポカ

加治木「や、やめろってモモ」

加治木「もしかしてイヤ・・・だったか?」

桃子「・・・っぐ」ゴシゴシ

加治木「モモ・・・お前まさか泣いて・・・」

桃子「・・・ば、バカっすね! 泣くわけないじゃないっすか!」

加治木「・・・」

桃子「イヤかどうかっすか・・・? そんなの・・・」





ダキッ

桃子「嬉しいに決まってるじゃないっすか!」

加治木「も、モモ・・・」

桃子「っぐ・・・先輩、先輩・・・っ!」

加治木「モモ・・・」ギュ

桃子「・・・っ」

桃子「・・・」ギュ

加治木「・・・」




加治木「・・・モモ、落ち着いたか?」

桃子「・・・っ・・・はいっす・・・」

加治木「・・・そうか」

桃子「先輩・・・私、寂しかったんす・・・」

桃子「もっと先輩に構ってもらいたくって・・・ただそれだけだったんす・・・」

加治木「モモ・・・」

桃子「今日は失礼な態度とってごめんなさいっす・・・」

加治木「もういいんだ・・・それに、ひょっとして私もお前に謝らなきゃならないんじゃないか・・・?」
桃子「・・・っ」

加治木「・・・お前が今日怒ってたわけを、どうか聞かせてほしい」

桃子「・・・」



桃子「昨日・・・何の日だったか覚えてるっすか・・・?」

加治木「・・・昨日? ・・・ん、いや・・・」

桃子「ふふ・・・やっぱり忘れられてたんすね」

桃子「先輩・・・昨日の7/26は、」

桃子「私、東横桃子の誕生日っすよ・・・?」

加治木「・・・え?」

桃子「思い出してくれたっすか?」

加治木「いや・・・えっと、そうだった・・・のか?」

桃子「・・・なんすか、その今初めて聞きましたって言いたげな顔は」ムスッ

加治木「・・・今初めて聞いたぞ」

桃子「なっ、そんなの嘘っすよ! 絶対話したことあったっす!」

加治木「いや、さすがの私も同じ部員の誕生日は忘れないと思うぞ」

加治木「つまり私が覚えてないということは、そもそも私はモモから誕生日を教えてもらってなかったということだ」

桃子「そ、そんなことありえないっす! 私が先輩に誕生日教えないはずないじゃないっすか!?」

加治木「そうは言っても、私たちはまだ3ヶ月程度の付き合いだぞ?」

桃子「あ、なんすかそれ! ひどいっす!」

桃子「大事なのは時間じゃなくて、その時間をどうやって過ごしたかだって先輩も言ってたじゃないっすか!」

加治木「そ、そんなこと言ったか・・・? いやいや、というか話がどんどん逸れてってるぞ・・・」

桃子「私は絶対話したっすからね!」プンスカ

加治木「・・・わ、わかったわかった。私が悪かったよモモ」

桃子「・・・ふんっす」プイッ

加治木「昨日してやれなかった分、今日は一日かけてお前に付き合ってやるから」

桃子「・・・」

加治木「それじゃダメか・・・?」

桃子「・・・っ」

桃子「と、特別に認めてやらないこともないっす・・・///」

加治木「モモ・・・」ホッ

桃子「その代わり・・・」

加治木「・・・なんだ?」

桃子「来年も、再来年も、その次も・・・!」

桃子「ずーーーーーっと、私の誕生日を祝ってくれるって・・・そばにいてくれるって約束・・・してくれるっすか?」

加治木「・・・ああ、もちろんだ」ニコッ

桃子「・・・っ」ドキッ

桃子「じゃあ、先輩・・・今日は私をとことん連れ回してくださいっす」

加治木「わかった。任せておけ」

桃子「・・・っ///」

桃子(期待してるっすからね・・・先輩)

加治木「それじゃあ、とりあえず映画館入るか」

桃子「あの先輩・・・私、映画はやっぱりいいっす」

加治木「ん、急にどうしたんだ?」

桃子「だって・・・映画館は先輩のすぐ傍にはいられるっすけど、先輩とお話できなくなるじゃないっすか」

桃子「私、今日は少しでも長く先輩とお話していたいっす・・・!」

加治木「モモ・・・」

加治木「よし、わかった。じゃあ近場のショッピングモールをブラブラ歩くか?」

桃子「・・・はいっす!」ニコッ

それから私たちはモール内を飽きずにグルグルと回って、ウィンドウショッピングを楽しんだ。

何かを買ってもらったりとかそういうことは特になかったけれど、
それでも先輩と一緒に話しながら、アイスを食べたり、お洋服を見たり、ゲームをしたりする時間は、なにものにも代えがたい最高の“誕生日プレゼント”といえた。

そして日も沈みかけ―――

桃子「今日は楽しかったっす、先輩」

加治木「それはよかったよ。私もここまではしゃぎ回ったのは久しぶりだ」

桃子「それじゃまた、他の人が知らない先輩の顔を私が一人占めしたってことっすね」

加治木「ま、まあそうなる・・・のか」

桃子「・・・へへ、やったっす」グイッ

加治木「おわっ! も、モモ・・・っ!///」

桃子「一回くらいこういう恋人つなぎってやつ、してみたかったんすよね・・・っ!///」

加治木「は、恥ずかしいなこれ・・・///」

桃子「先輩、顔真っ赤っす・・・///」

加治木「お、お前だって・・・!///」

桃子「・・・へへ・・・///」





ギュ

ウイーン

「いらっしゃいませ」

加治木「・・・さ、モモ。好きなの選べ」

桃子「えー! ど、どれにしようか迷っちゃうっすよー!」パアァ

桃子「あ、これおいしそう! あ、これも!」

加治木「・・・ふふ」

桃子「先輩はどのケーキがいいと思うっすか!?」

加治木「私はいいんだよ。今日はお前のお祝いなんだから、お前が好きなように選べ」

桃子「じ、じゃあ・・・このフルーツタルトのやつにするっす!」ビシッ

加治木「じゃあ、これふたつお願いします」

「はい、ありがとうございます」

桃子「んぐ・・・おいひいっす!」モグモグ

加治木「ほら、口のとこクリームついてるぞ」

桃子「あ、どうもっす・・・///」

加治木「しかしこれ本当においしいな。今度ケーキを買うときは、またあのお店にお世話になろう」

桃子「次は先輩の誕生日っすね」

加治木「ああ、そうだな。いつか知ってるか?」

桃子「12/21っす」

加治木「そ、即答だな・・・教えたことあったか?」

桃子「先輩のプロフィール情報はすべて網羅済みっす」

加治木「すべて・・・?」

桃子「もちろんスリーサイズも空で言えるっす」

加治木「なっ・・・! モモっ!」

桃子「大丈夫っすよ。二人だけの秘密っす♪」

加治木「うぅ・・・///」

加治木「夏とはいえ、もうさすがに暗くなってきたな」

桃子「・・・」

加治木「・・・モモ、そろそろ・・・」

桃子「イヤっす!」

加治木「・・・モモ」

桃子「もっと先輩と一緒にいたいっす! お話していたいっす!!」

加治木「・・・モモ、わがまま言うんじゃない。明日からだってまた会えるだろう」

桃子「・・・っぐ」

加治木「こら泣くな。お前には涙は似合わないぞ」

桃子「・・・私、今最高に幸せっす」

加治木「・・・」

桃子「でも・・・一度先輩から離れたら、もう二度とこの幸せが感じられないんじゃないかって、不安で・・・」

加治木「・・・モモ」

桃子「・・・バカなことだってわかってるっす。だって永久に残り続けるものなんてないんすから」

加治木「・・・」

桃子「・・・」

加治木「・・・モモ」

桃子「・・・」

加治木「・・・抱きしめてもいいか?」

桃子「・・・えっ」

ギュ

桃子「・・・せ、先輩・・・」

加治木「・・・どうだ? 今、モモは何を感じてる?」

桃子「・・・安心感・・・喜び・・・それから・・・」

桃子「・・・先輩のことが大好きって気持ちっす」ギュ

加治木「・・・奇遇だな。私も同じようなことを考えてた」

加治木「モモがそばにいると、なんだか心がリラックスできるんだ。素の自分をさらけ出すことができるというか・・・」

桃子「・・・先輩・・・///」

加治木「あと・・・モモは柔らかくてフニフニしてて、気持ちいい」

桃子「・・・先輩のスケベ」

加治木「そ、そういう意味じゃないっ! モモがすごくかわいいってことだよ!」

加治木「とにかく私はモモと一緒にいると幸せってことさ」

桃子「・・・嬉しいっす」

加治木「・・・モモ、永久に残り続けるものなんてないのかもしれない」

加治木「でも、ヒトってのはすごいよ・・・こうして好きな人と体を寄せ合うことで幸せをまた作り出してゆける」

桃子「・・・っ」

加治木「・・・私はずっとモモのこと好きで居続けるよ。だから安心していい。私がいる限り、モモを不幸になんかさせやしない」

桃子「・・・先輩」

加治木「・・・なんだ?」



桃子「・・・ありがとうっす」ギュ

東横邸前

加治木「・・・それじゃあまた明日な」

桃子「・・・はいっす。今日は楽しかったっす」

加治木「また二人でどこか行こうな」

桃子「楽しみにしてるっすよ!」

加治木「ああ」

桃子「・・・あ、先輩。少しだけここで待っててもらっていいっすか?」

加治木「構わないが」

桃子「すぐ戻るっすー!」ダダッ

加治木「転ぶなよー」

ガチャ

桃子「お、お待たせしましたっす・・・」

加治木「いや別に大したこと・・・って」

加治木「・・・っ!?」

桃子「えへへ・・・ど、どうっすか?」

桃子「これ昨日のために買ったワンピースっす・・・結局着る機会逃しちゃったんすけど、先輩にはどうしても見てもらいたくて・・・」

加治木「・・・」

桃子「・・・せ、先輩?」

加治木「え・・・あ、ああ! いや、すごく似合ってるよモモ!」

桃子「ほ、ほんとっすか? 嬉しいっす!」クルン

加治木「・・・」ゴクリ

加治木(い、一瞬見とれてしまった・・・)

桃子「・・・先輩」

加治木「なんだ? モモ」

桃子「・・・あ、あの・・・」モジモジ

加治木「・・・?」

桃子「・・・わ、私とその・・・きっ・・・///」

加治木「・・・き?」

桃子「・・・きっ・・・きっ・・・///」

加治木「・・・」

桃子「・・・きっ・・・きぃっ・・・///」カアァ

加治木(おもしろい顔だ・・・)

桃子「ぷはぁっ・・・!」

桃子「も、もう・・・いつまで待たせるんすか!?」プンスカ

加治木「・・・ん? 待たせるってなにをだ?」

桃子「・・・」

桃子(この人はどんだけ鈍感なんすか・・・)ハァ

加治木「おいモモ、今さりげなく先輩をバカにしなかったか?」

桃子「・・・」

加治木「モモ」

桃子「・・・ああもう、うるさいっすね!」ズイッ




チュ

桃子「ん・・・っ///」

加治木「・・・んんっ・・・///」

桃子「・・・んん・・・ぷはっ・・・///」

加治木「っ・・・はぁ・・・はぁ・・・も、モモ・・・!」

桃子「へへっ、うるさい口はこうやって塞いじゃうっすからね・・・///」

加治木「まったく、お前というやつはいつも強引で・・・!」

加治木(まあ、お前のそういうところに引かれたってのもあるが・・・)

桃子「それじゃ先輩、おやすみなさいっす!」

加治木「・・・ああ、おやすみモモ」

ダダッ

――――まったく、先輩ってば鈍すぎっすよね。

ダダダッ

後輩にリードさせるなんてちょっと情けないっす。

ガチャ

だけど――――

タタッ

そんな先輩も含めて、私は大好きになったんすよね。
ガララッ

桃子「先輩!」



桃子「大好きっすよ!!」



初めてのキスは、少し甘酸っぱかった。


カン

長い間付き合ってくれてありがとう。最後の方はほんと遅くなってごめん!

かじゅモモ成分が枯渇してたので自ら燃料投下。反省はしていない。

頼むから咲SS減らないでくれー
乙でした

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