千早「いつか」P「いつか」 (71)

P(やれやれ、これで買い出し分は一通り揃ったか。後は事務所に戻るだけ、と)

P(小鳥さんが結婚式で休んでるからな……。こういう時にはあの人の凄さが分かる)

P(ん? あそこに見えるは……)

P「おーい、千早」

千早「? あ、プロデューサー」

P「こんなところでどうしたんだ?」

千早「オフですし、本屋に行ってきました。そういうプロデューサーは……、買い出しですか」

P「その通り。小鳥さんが休みで人手がな」

千早「ああ、そういえば」

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P「確か……、今年で4回目だっけか」

千早「?」

P「ご友人の結婚式」

千早「ああ。大変ですね」

P「大人の付き合いってものがあるからなぁ」

千早「……小鳥さんはそういうお話はないんでしょうか」

P「さあ、聞いたことはないけど……。今は仕事が恋人って感じじゃないか?」

千早「……大変ですね」

P「全くだ」

千早「……ふぅ」

P「どうしたため息なんてついて」

千早「呆れたような安心したような、という感じです」

P「何が?」

千早「分からないでいいです」

P「?」

千早「…………はぁ」

P「ところで本屋では何か買ったのか」

千早「本です」

P「そりゃそうだ」

千早「?」

P「……どんな本かを聞いたつもりだったんだが」

千早「あ、ああ。……えっと」

P「?」

千早「その……、……笑いませんか?」

P「? ああ」

千早「……恋愛小説です」

P「? ああ、いいんじゃないか。年頃らしくて」

千早「いえ違います! 恋愛に興味があるんじゃなくて恋の歌を歌うときに参考になるかと思って……っ!」

P「別にそんな慌てんでもいいが」

千早「慌ててません!」

P「ああ分かった分かった」

千早「……くっ」

P「でも、意外だなぁ」

千早「え?」

P「千早が恋愛小説を参考にしようっていうのがさ」

千早「そうでしょうか……。具体的なところは私に欠けてる経験ですし、ないよりは、と思って……」

P「んー、そういうんじゃなくてさ」

千早「?」

P「千早って、凄い歌に拘りがあるじゃないか」

千早「はい」

P「で、恋愛小説なんかだと夢と好きな人を天秤に掛けたりするじゃないか」

千早「はい」

P「それで、途中で夢を諦めようとしたりするだろ?」

千早「ええ」

P「だから、好きな人のために夢を諦めてしまう登場人物の気持ちが分からないから参考にならない、とか言いそうで」

千早「ああ、確かに。昔はそんな風に考えていました」

P「やっぱりな」

千早「もう、笑わないでください……」

P「ははは。けど、昔はってことは、じゃあ今は分かるようになったのか?」

千早「……うーん、どうでしょうね。それが歌なら、きっと捨てることは出来ないと思います。ただ……」

P「ただ?」

千早「ただ、今は同じくらいに譲れないものができて。……そうですね。全く分からない、とはもう言えません」

P「ふぅん。じゃあ、もしそのどっちかを選べと言われたら、千早はどうするんだ?」

千早「迷う、でしょうね。そう、死ぬほど迷い続けて……。……選べないで、死んでしまうかも。ふふっ」

P「おいおい、俺を残して死んでしまうのか? 薄情だな」

千早「そうですね……。じゃあ、一緒に死んでくれますか?」

P「ははは、まるで昔話の悲劇みたいだ」

千早「ふふ。でも、私はハッピーエンドの方が好きです」

P「死んでしまったお姫様が王子様のキスで目を覚ます、とか?」

千早「な……っ」

P「……想像した?」

千早「し、してませんっ! プロデューサーと、き、キスなんて……!」

P「ん? 俺が言ったのは昔話。白雪姫だよ?」

千早「……、……もう! プロデューサー!!!」

P「ははは、悪い悪い」

千早「……もう」

P「……」

千早「……。……ふふっ」

P「?」

千早「……私は、幸運だと思います。この道を行く限り、選ぶ必要はないでしょうから」

P「どういう意味だ?」

千早「い、今は、言えません……」

P「なんで?」

千早「恥ずかしいですし……。何よりも、怖い、ですから」

P「……ふむ。よく分からん」

千早「分かられると、その……。困ります」

P「ふぅん? まあとにかく」

千早「?」

P「俺はお前がトップアイドルになれるようにサポートしていくだけさ。……お前の隣でな」

千早「……はい。今は」

P「ああ。今は、な」

千早「…………。分かってるんじゃないですか」

P「いんや? 何のことやらさっぱりだ」

千早「……もぅ」

P「……」

千早「……」

P「……」

千早「……いつか」

P「……そうだな、いつか」

千早「……、はいっ!」

一方その頃、小鳥は友人代表として新郎新婦にむけテントウ虫のサンバを歌っていたのであった。


みじかいけどおわりー

おまけ?

数年後


小鳥「あーかあーおきーろのー! いしょーをつーけーたー!」

高木「ふぅ、やはり音無くんの歌声はすばらしい……。お前もそう思うだろう黒井」

黒井「……そんなことは分かっている。だからこそあの日、この逸材を活かせなかった業界、そして私たち自身に絶望したのだ。やはり金は力だ、高木」

高木「黒井……」

黒井「ふん、酔いが回ってきたようだ。年は取りたくないものだ」

あずさ「まあまあお二方とも~。今日はそういうのはなしなしで~」

亜美「そーそー、うちの事務所のいわば投打の両輪のおめでたい日だかんねっ」

雪歩「こここことりさんああああありがとうございました! つつつぎは……」

真「がんばれ雪歩!」

雪歩「ううううう、ま、真ちゃーん……。代わってー……」

真「だめだめ! きっと雪歩ならできるよ!」

雪歩「ううううう……」

伊織「……ていうか、仕事は普通にこなしてるのに、なんで内輪の集まりであんなに緊張してるわけ?」

真美「んっふっふー、やっぱ憧れてた兄ちゃんだからじゃないのー?」

伊織「……全く、あんなののどこがいいんだか。訳わかんない」

真美「んなこといって、いおりんのうさちゃんにメイクが流れてるよー?」

伊織「んな……っ! ちゃんとハンカチで拭いっ、はっ!!??」

亜美「んっふっふー?」

伊織「ぐぐぐ……っ/// ていうかあんたたちはどうなのよっ」

亜美「亜美たちはいもーと枠だし? ねえ真美?」

真美「え? あ、うん。……そーだね」

亜美「だからこれまでどーりベタベタしほーだいなのだー!」

真美「えええっ、ちょっと亜美それは……」

伊織「……。ガキンチョ」

亜美「なにおーっ! 亜美だってちょっとは大っきくなってんだぞー!」

伊織「そっちのが困るってのがわかんないのがガキンチョっていってんのよ!」

亜美「んっふっふー? いつ亜美が"わかんない"なんていったのかなぁ?」

伊織「なっ、あんたまさか……」

真美「ちょっと亜美!?」

亜美「まあでも兄ちゃんたち悲しませるわけにもいかないしなぁ。……いもーとだしね」

伊織「……」

真美「……」

伊織真美「…………亜美、恐ろしい子ッ」

美希「むぐむぐむぐむぐ」

春香「はふはふはふはふ」

貴音「ずるずるずるずる」

美希「むしゃむしゃむしゃむしゃ」

春香「はむはむはむはむ」

貴音「ずるずるずるずる」
 
響「……あのさ、美希、春香、貴音。そろそろプロデューサーのとこに」

美希「」

春香「」

貴音「ずるずるずるずる」

美希「……は゛に゛ー゛ー゛っ゛!!!」

春香「ぷろりゅーしゃーしゃーんーーっ!!!」

貴音「ずるずるずるずる」

響「あああああああ。美希、春香、自分が悪かったぞ……」

美希「…………は゛ー゛に゛ー゛ー゛ー゛ー゛っ゛!!!」

春香「ぷーろーりゅーーしゃーーしゃーーんーーーーっ!!!」

貴音「……ふぅ。ごちそうさまでした」

響「……貴音は普通なんだな」

美希春香(音声Cut)

貴音「? らぁめんは美味しいですが」

響「ははっ。貴音らしくて自分も安心だぞ」

貴音「しかし、食べても食べても満たされぬこれはなにゆえなのでしょうか……」

響「……え」

貴音「……あ、おかわりをお願いいたします。……ありがとうございます」

響「……」

貴音「……おや。湯気が、目に」

響「……ぅ、ぐす……」

貴音響(音声Cut)

あずさ「ふぅ」

律子「お疲れ様です。あのお二人のお相手は疲れたでしょう?」

あずさ「あらー、そんなことないわよー? 二人とも可愛いじゃない」

律子「……可愛い、ですかねぇ」

高木「確かに金やシステムによって一定レベルのアイドルを量産することが出来るかもしれん! だがそれは個性を平坦に慣らすだけで決して最高のアイドルを生み出すことはできん!」

黒井「突出した個性などナンセンス! 個人の感覚に頼るものに最高などありえん! むしろその一定レベルのアイドルのパッケージングをこそ大衆は望んでいることをなぜ分からんのだ!」

あずさ「ふふ、二人とも子供みたい」

律子「……言われればそう見えなくもないですが」

あずさ「でしょう? ふふ」

律子「…………あずささんは、大丈夫なんですか?」

あずさ「うふふ。慣れてるから」

律子「……あはは。それ、笑えません」

あずさ「…………。律子『ちゃん』」

律子「?」

あずさ「ごめんなさい。こんな時くらいはお姉さんぶらせてね」

律子「……」

あずさ「……泣いて、いいのよ?」

律子「……」
ギュッ

あずさ「……」
……ポンポン

律子「……っ……ぅっ……ぐっ……ふぅぅぅぅ……」
ギューッ

真「……はは、ボクも結構可愛くなれたつもりだったんだけど」

伊織「真?」

真「……みんなみたいに泣ければ、もっと可愛くなれてたのかなぁ」

伊織「……」

真「……くやしいなぁ」

伊織「まあ、そこで『悔しい』ってなれるのは、アンタだけよね」

真「……へへっ。……全然嬉しくないや」

伊織「……はい」

真「?」

伊織「……ハンカチ。使ったのだけど」

真「……。……へへっ、ありがと」
ガシガシッ

伊織「…………。やっぱアンタは男前よ……」

真「……ひどいなぁ」

やよい「うっうーっ! お色直し終わりましたーーーっ!!!」


真「うわぁ……」

雪歩「……」
ポカーン

美希「……千早さん、きれーなの」

春香「うん」

響「だな」

貴音「プロデューサーも、凛々しくていらっしゃいます」

美希「ぅ……」

春香「でも、幸せそう」

あずさ「……ですねぇ」

律子「あんなの見せられたら、祝福しないわけにはいかないわね……」

美希「律子、目真っ赤なの」

律子「さんを付けなさいさんを。……だいたい、アンタだってそうじゃない」

美希「……それは言わない約束なの」

律子「なによそれ。……もう」

やよい「きねんさつえーでーすっ! みんなまえにあつまってくださーい!!!」


亜美「亜美兄ちゃんのとーなり! 真美も来なよー」

真美「ええ!? 真美は後ろでいーよ……」

伊織「……」

美希「デコちゃん隣ずるいのちゃっかりしすぎなの!」

伊織「早い者勝ちよ! 後何回か取り直せばいいじゃない!」

美希「そのときの写真はそのときしかないの!」

響「自分も隣に行きたいぞ……」

貴音「そうですね、わたくしはお姫様だっこというのを所望します」

春香「え、それありなんですか!?」

律子「いやなしでしょ」

貴音「……面妖な」

あずさ「じゃあ、恋人繋ぎは?」

律子「駄目に決まってるでしょ!!!」

真「じゃあボクは肩を組んで!」

律子「……アウト!」

雪歩(……こっそり)

律子「雪歩、アウトー!!!」

雪歩「あぅ……っ」

千早「……」

千早「…………」

千早「……」
ポロポロ

春雪真律伊あ亜真美貴響「」

春香「ごごごごめんね千早ちゃん! つい私たち調子に乗って」

美希「そうなの全ては律子が悪いの!」

律子「だからさんを付けなさい! というか止めてる私が何で悪いのよ!!」

雪歩「ごめんなさいごめんなさい、穴掘って埋まってますぅー」

千早「……すんっ、ちが、……違うの」

春雪真律伊あ亜真美貴響「?」

千早「……嬉しくて」

春雪真律伊あ亜真美貴響「???」

千早「事務所に入ったときは、ただ歌えればよかった。他に何もいらなかった」

千早「でも……、一生懸命プロデュースしてくれたPさんと出会って……、失いたくないと思えるものになった」

千早「そして……、みんなとこんな風に大騒ぎしていく内に……、みんなのことも……、大事に……、ぐすっ」

伊織「……ふん。今更そんなことに気付くなんて遅いくらいよ」

真「ふふ、伊織。顔が真っ赤だよ」

伊織「うるさいわねこのイケメンッ!」

真「……ひどいよ伊織」

あずさ「うふふ。でも、気持ちは伊織ちゃんと同じよぉ?」

亜美「んっふっふー。千早お姉ちゃんも亜美たちの魅力にめろめろだったってことだねー!」

真美「真美も千早お姉ちゃんのこと、大好きだよ」

響「もちろん自分もだぞ。家族と思ってる」

千早「……家族」

貴音「765プロは、家族ということですね。まことに響はよいことを言います」

響「へへ、照れるぞ……」

千早「…………プロデューサー」

P「ん?」

千早「私、…………幸せですっ!」

P「……ああ!」



深夜のテンションだと着地点がずれるずれる
黒井社長の説教?締めエンドが爆誕しかけた

P(今日は美希と一緒に仕事の打ち合わせ。この間撮った、雑誌の表紙が上がってくる日だ)

P(小鳥さんは事務所にいない。今頃は白いチャペルでウエディングドレスに身を包んでいることだろう)

P(なので雑誌記者の接客は俺たちで準備する必要がある)

P「だから美希、そこでぐだーっとしてる暇があったら手伝ってくれ」

美希「?」

P「いや、?じゃなくてだな」

美希「ハニー、ミキ眠いの」

P「眠くても仕事だからな?」

美希「うん、だからがんばって起きてるの」

P「うん、えらいぞ」

美希「だから、手伝わなくてもいいよね?」

P「いやそれはない」

美希「えー」

P「本当に頼む、猫の手も借りたいくらいなんだ」

美希「小鳥、お仕事だもんね」

P「ブライダル紙の表紙撮影前の打ち合わせの時にスカウトされたんだよな」

美希「うん、アラフォー女子サイキョーの婚活特集でドレス着に行くんだって」

P「小鳥さんが聞いたら泣くぞ。アラサーだアラサー」

美希「?」

P「サーとフォーじゃお前、鮭お握りと塩お握りくらい違うぞ?」

美希「ミキ、どっちも好きだけど」

P「……こないだ俺が間違えて作ってきたお酢お握りと塩お握りくらい違うぞ?」

美希「そいつは大問題なのっ!」

P「やっぱまずかったのかあれ。その割りにはきれいに食ってたけど」

美希「愛のなせるワザじゃないかな」

P「はいはいありがとう」

美希「というわけでハニー。ミキ、結婚したいの!」

P「いきなりだなぁ」

美希「思い立ったがキチジツなの!」

P「ふむ」

美希「ちょうどここにウエディングドレスもあるし!」

P「それは仕事の衣装だな」

美希「ミキ用のオーダーメイドだからくれるって」

P「豪儀だなぁ」

美希「これで邪魔する者はなくなったの、結婚するの!」

P「残念ながら日本の法律という最大級の邪魔者がいるんだ」

美希「なんとかして、ハニー!」

P「俺にどうせいと」

美希「ミキをさらうの」

P「未成年者略取になるな」

美希「愛があればなんとかなるんじゃないかな」

P「残念ながら愛はそんなに万能じゃないんだ」

美希「……ホントに残念なの」

P「ああ、全くだ。というわけで諦めろ」

美希「んんー、……じゃあ、今じゃなくていいから結婚して?」

P「まだ食い下がるか」

美希「だって大好きだもん、諦めないの」

P「あー……。……そうだな、いつかな」

美希「五日?」

P「姑息な聞き違いをする子は好きじゃないなー」

美希「わ、わかったのっ! うん、いつか」

P「ああ。……その時はまあ、考えるさ」

美希「考えるだけじゃダメなのッ! グタイテキに!」

P「あーわかったよ。その時お前がそのつもりでいるのなら結婚してやるよ」

美希「やったぁっ!」

P「えらい喜びようだなぁ」

美希「ミキの気持ちはフヘンだから、これはもう婚約といってカゴンではないの」

P「……んなおおげさな」

美希「ミキ婚約したってファンに言うね?」

P「アウト」

美希「?」

P「お前と結婚する前に、俺はお前をトップアイドルにする義務がある。故にそういう言説や行動はNGだ」

美希「……むぅ、わかったの」

P「うむうむ、物分かりのいい子は好きだぞ」

美希「えへへ。じゃあ、誓いのキスっ」

P「……さっぱりわかってねーじゃねーか」

美希「んー、でもでも、ちゃんと約束してほしいのっ」

P「……はぁ。指切りしてやるからそれで我慢しろ」

美希「ん。ゆーびきりげーんまーん」

P「嘘ついたらハリセンボン呑ーます、と。……」

美希「……」

P「美希? ……そんなに力入れたら指が切れないんだが」

美希「やなの」

P「なんで?」

美希「もっとハニーとベタベタしたいからっ」

P「……ストレートだなぁ」

美希「えへへ」

一方その頃、小鳥はウエディングドレスを着ると婚期が遅れるという話を、必死に迷信だと自らに言い聞かせているのであった。


おわりー

P(今日は珍しく完全オフ。かねてからやよいに頼まれていた、やよいの家のプレゼントを含めたクリスマスの買い出しに付き合うことになった)

P(当日のパーティにも誘われたが残念ながら仕事なので断った。小鳥さんに空いているかと聞かれたので代わってあげることにしたのだ)

P(学生時代もバイトの時はよく代わってくれと頼まれたなぁ、懐かしい……。おっとそれはともかく)

P「モールにオーナメント、……、買うのはこれで全部か?」

やよい「……えっとえっと。はいっこれで全部ですっ!」

P「……けど、本当にいいのか? 少しくらいなら出すぞ?」

やよい「ダメです。私お姉ちゃんだから自分で出さないとっ」

P「ふむ、なるほどな」

やよい「そのお金でプロデューサーのお部屋、いーっぱい飾り付けしてくださいっ」

P「ああ、ありがとう。でも、大人はクリスマスの飾り付けはしないからなぁ」

やよい「そーなんですかっ!?」

P「まあなぁ」

やよい「……じゃあじゃあ、私も大人になったら飾り付け卒業しなきゃダメなんですか?」

P「そう決まってる訳じゃないけどな」

やよい「ぅぅ? でもでも私が大人になってもかすみはまだ子供でかすみが大人になっても……」

P「はいストップ。だから別にしたいならしてもいいんだ」

やよい「……でも、ふつうはあまりしないんですよね?」

P「まあな」

やよい「飾り付けとかしてたらクリスマスーって感じがしてすっごい楽しいのに、なんでやめちゃうんだろ」

P「大人は色々あるんだよ」

やよい「そうなんですか」

P「ああ。……それじゃあ荷物も増えてきたし、一旦車に荷物を置こう」

やよい「う? もう帰るんじゃないんですかー?」

P「どうせ今日はオフだしな。せっかくだしご飯を食べていこう」

やよい「あ、……でも私、お金もうあんまりなくって……」

P「いいいい。ご馳走するよ」

やよい「えっ!? そんなのダメです! プロデューサーのお金なのにっ」

P「やよいがお姉ちゃんとしてプレゼントしたいように、俺もプロデューサーとしてご馳走したいんだよ」

やよい「……。じゃあ、ありがとうございます!」

P「ん、やよいはいい子だ」
ナデナデ

やよい「……えへへっ」

P「どうだ、おいしいか?」

やよい「すっごくおいしいですっ。こんなにおいしいの、はじめてですっ」

P「それはよかった」

やよい「いつも食べるご飯もおいしいけど、今日はもーっとおいしかったですっ!」

P「そうかそうか。でも、最近はグルメリポートの仕事も入ってるし、ここなんかよりいい店でいっぱい食べてるだろ?」

やよい「?」

P「違うのか?」

やよい「お仕事はお仕事だし、すごーいおいしーいっ! っていう風にはならないかなーって」

P「じゃあ、いつものって」

やよい「みんなと食べるご飯ですっ」

P「なるほどな」

やよい「はいっ!」

P「……それより、おいしかったと」

やよい「はいっ!!」

P「……なるほど、な」

やよい「?」

P「そういえば、プレゼントの方は買い終わったのか?」

やよい「はいっ。買うのはぜーんぶ揃いました!」

P「そうか、じゃあこれでお開きかな」

やよい「あ、でも……」

P「どうした?」

やよい「……えっと」

P「ここまで付き合ったんだから最後まで聞くぞ?」

やよい「プレゼントなんですけどー……」

P「どうした? やっぱりお金が足りなかったとかか?」

やよい「いえそうじゃなくて、……買えないものがあったなーって」

P「ん?」

やよい「……かすみと長介が、お兄ちゃんがほしいって」

P「……そいつは難題だな」

やよい「はいー……。あっ、でもでもお父さんとお母さんが」

P「?」

やよい「お父さんとお母さんが笑いながらじゃあプロデューサーさんに聞かないとって言ってましたっ」

P「…………なるほど」

やよい「プロデューサー、お兄ちゃんになってくれるんですか?」

P「多分お父さんお母さんが言ったのだとやよいのお兄ちゃんにはなれないな」

やよい「? でも、長介とかすみのお兄ちゃんになるんですか?」

P「そうだなぁ」

やよい「……」

P「納得いかない?」

やよい「…………ちょっと、だけ」

P「ははは。でも、もしちゃんとそうなったのなら、きっとやよいはもっと喜んでると思うぞ?」

やよい「?」

P「大人になれば分かる」

やよい「???」

P「まあそれはさておき、今その方法は難しいな」

やよい「難しいですか?」

P「そうだなぁ」

やよい「そうですか……」

P「……」

やよい「……」
シューン

P「はぁ」

やよい「?」

P「……いつか」

やよい「いつか?」

P「やよいがその意味を知って、ちゃんとそうなっていいと思ってくれるなら。長介たちの兄ちゃんになってやれるかもしれんね」

やよい「大人になったら?」

P「そうだな」

やよい「……えへへ、がんばりますっ」

一方その頃、小鳥はなぜもう一言誘える勇気がなかったのかと自分で自分を責めているのであった。


おわりー

アイドルのネタよりも小鳥さんのネタの方に困ったり

P(今日は真と今後の方針について打ち合わせだ。……正直、気が重い)

P(今回提案する方針は、きっと真の考えるアイドルとは違ってしまっているから)

P(それでも、プロデューサーとして、俺は……)

P「ってことで、お前のファン層は大きくAとBに分けられる。Aは女性で特に……」

真「はい」

P「いわゆるまこギャルといわれているような層。要するに『王子様』な真のファンだな」

真「はい……」

P「方向性としてはジャ○ーズファンに近い、な。数的にはまだまだ及ばないが」

真「……ぅぅ」

P「そしてB。これは男性・女性のくくり関係なしに真の歌を評価する層だ」

真「……」

P「しかしこれもやはり激しいシャウト系……、つまり“カッコいい”系の曲が支持を集めている」

真「…………はい」

P「真の希望で入れた、アイドル系の曲は……。……残念ながら振るわない結果に終わった」

真「………………はい」

P「……続けて、いいか」

真「……はい」

P「……真が、女の子らしさや可愛さに憧れを持っているのはよく分かる」

真「……」

P「真の提案した曲も、ライブの衣装や演出も、ちょっとした冒険やリサーチのつもりでいくつか採用してみた」

真「……はい」

P「結果は……。知ってるよな」

真「……はい」

P「そしてそれは、今までだからできたことで、これからは厳しいと思う」

真「……」

P「今までなら知名度も高くない分、逆に活動内容にある程度の幅、遊びを持たせることもできた」

真「……」

P「これまでならその遊びがいい方に作用する可能性も高かった。どんな形でも名前を売る方が大事だった」

真「……」

P「しかし、今はイメージを固めなければならない時期に来ているわけだ」

真「……」

P「結局のところ、真の認知度が高まってきた結果、イメージからのぶれはノイズになってしまうんだ」

真「……」

P「それは、トップアイドルを目指す上で回り道になる」

真「……」

P「もう、菊地真ってのはな、ただの無名アイドルじゃない。ファンにとっての憧れの王子様なんだ」

真「……」

P「……」

真「……そうですか」

P「……質問は」

真「…………ありません」

P「そうか」

真「……」

P「……すまん。力不足で」

真「……いえ」

P「……」

真「……一つ」

P「?」

真「一つ、聞いていいですか」

P「……ああ」

真「……プロデューサーも、ボクのこと男みたいって思っていますか? 可愛いところなんてないから、そういう売り方をするんですか?」

P「それは違うっ!」

真「……」

P「……違うよ、真。俺にとって真は魅力的な女の子だ。……ただ、ファンが望む姿とそれが違うだけだ」

真「……」

P「アイドルはファンのためのもの。ファンに夢を与えるための存在なんだ。だから」

真「……」

P「……だから、俺の気持ちなんて関係ない」

真「……」

P「もちろん、その方針を取り入れるかはお前の自由だ。いやなら断ってくれて構わない」

真「……」

P「俺には無理だったが、……もっと、お前が思うとおりの魅力を引き出せる奴もいるかもしれない」

真「……」

P「…………。だから、担当を外してほしいのなら、言ってくれ」

真「……そんなこと、言えるわけないじゃないですか」

P「っ」

真「プロデューサーはボクのために一生懸命考えてくれたんだ。それに……」

P「?」

真「……それに、そんな辛そうな顔をしてるから」

P「……見捨てられない、と?」

真「いやそうじゃなくて! ……ボクと離れるのが辛いって思ってくれるのなら、……嬉しいなって」

P「…………」

真「ふふっ」

P「……なるほど」

真「……はいっ。じゃあこれで話は終わりですね。……さーっ、今度から頑張るぞーっ!」

P「……。でも、本当にいいのか?」

真「へへっ、これでボクも覚悟が決まりましたから。……色々と」

P「?」

真「今後とも、よろしくお願いします!」

P「……ああ、わかったよ」

真「へへっ」

P「……どうした、機嫌いいな? 色々きついこと言ったつもりだが」

真「いえ? なんでもありません」

P「ふん?」

真「……いつか」

P「?」

真「いつか、ボクがトップアイドルになった時に、聞いてほしいことがあります」

P「……なること確定か」

真「プロデューサーが、してくれるんですよね?」

P「まあな」

真「……その時のためにボクの可愛いは取っておきます。あなただけのために」

P「…………、光栄だな」

真「へへっ。……いつか、覚悟しておいてくださいねっ」

P「……ああ、いつか」

一方その頃、小鳥は一人寂しくこたつに潜り込みチーズはんぺんをつまみに黒霧を呷っているのであった。


おわりー
予想以上に真をしゃべらせられなかった

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