グシャァッ
モンスター『GYAAAAAAAAAAAAA』
勇者「……ふう」
勇者「敵の強さ自体は大した事ないんだが……」
勇者「回復している間に攻撃されるのは効率が悪いと思うようになった」
勇者「……そろそろパーティー組むか」
【最果ての街・酒屋兼・職業安定所】
勇者「たのもう」
店主『あいよ』
勇者「仲間が欲しいのだが」
店主「ここは猛者がうようよいるからね。少し欲張った人選でも、見合う武士が見つかると思うよ」
勇者「……そうか」
勇者「では…」
店主「へい」
勇者『俺より強いヤツを頼む』
| | └┐ ┌-┘ | | ヽ
| l | | l | |
| | _,,,ニニ,,_ | | l
〉-ァカ |. ヽ ヽヾ``'、,,j |
/l { | ト、\ヽゝ弋ド、ヽヽ\ j' っ
⊂ { | .iト|r=ミ、 ヽトゞチラヌ\ i |∨
ヘ、レミ! トハ トッj:}ヒj リ { ! ⊃
,___ _,. -'' ´⌒`}. ゞ-' `ー"//λ !.i
(__, `ヽ / ヘ"" ’r-、 ""u//彡ハ.l ! こ、これは>>1乙じゃなくてホイミンちゃんの足なんだから
/ / / ○ `ト、 ' ,.イ./r=ミ、i.l l 変な勘違いしないでよね!
/ / {. r-...__ ○ ヾ`,ア´.ラ,〃 } ! !.|
/ ∠,____,.ゝ. i ア 八三彡イ/ /} リ.l
ゝ.,____,,,.->、._ ゝ、_ノ (^くr' └i / .//ノノ j
Z,. -'' /`7'''┬(二` `ハ'´ヾム /彡イ /
/ ,. -''| {ヽ ヽ(二 , j //丿.ノ
`ー' ヘ ヽヽ--'`j=-^ヽ、_ノ-ー'〈 ~
店主「ゆ、"勇者様より強い"……ですか?」
勇者「ああ」
店主「なにぶん、勇者様の強さを私めは知らないものですから……」
勇者「そうか、そうだったな」
勇者「すまない。ではこう言い替えよう」
勇者「リストの中で、一番強い者を呼んでくれ」
店主「は、はあ」
勇者「……どうした? 困惑した顔をして」
店主「いや……あの、と言いますがね」
店主「"強い"。と端的に言われましても……それぞれの武人に長所がありまして、一概に誰が一番強いかとは…」
勇者「……そういうものか」
勇者「困らせて悪かったな……では、どうしようか」
店主「なら、お求めなされる職業などは?」
勇者「……そうだな」
勇者「『回復役』だな。むしろこいつ一人さえいれば後は求めていない」
店主「それは……ずいぶん強きでございますねえ」タラ
――…
店主「お待たせいたしました」
賢者♂「……」
賢者♀「見た感じ……筋肉バカの勇者ってところね」ジィ
僧侶♀「……勇者、デカイ」
勇者「……」
店主「左から順に、賢者、賢者、僧侶です」
勇者「三人とも、中々の手練れだな」
店主「それはもう折り紙付きで」ニコニコ
勇者「……」
勇者「三人共戴こう」
店主「えっ?」
勇者「……と、言いたいが」
勇者「俺は守りながら戦うのは馴れていない」
勇者「この中から一人を選ぶ。各人の詳細を頼む」
店主「へ、へい」
賢者♂「……付いていく勇者は、こちらも選ぶという事を忘れてくれるな」
店主「一人目の賢者♂ですが……」
店主「齢30、元々は他にパーティーを組んでいたのですが…」
店主「……性格に難があって、仲違いによりここに籍を置く次第となったようです」
賢者♀「……凄い筋肉ね。触ってもいい?」
店主「二人目は賢者♀……賢者にしてはかなり若いですが、実力は保証します」
店主「……ただ、此方はパーティー内恋愛のもつれにより、脱退した模様」
僧侶♀「……ギガンテスより大きいかも」
店主「最後が僧侶♀」
店主「……素晴らしい才覚の持ち主で、幼いながらも魔法をほぼ修得した才女なのですが…」
店主「……やはり、年齢が故に体躯が小さく…戦闘向きではなくどこのパーティーにも誘われません」
勇者「……」
勇者「よし」
勇者『そこの少女。俺のパーティーに入ってくれ』
勇者「頼む」ペコ
店主「勇者様っ、頭をお上げください」
僧侶♀「……」
勇者「……俺のパーティーには、まだ誰も入っていない」
勇者「不安なら、断ってもいい…」
僧侶♀「……」
勇者「だが」
勇者「仲間になってくれるというなら――…命に変えてもお前は俺が守る」
僧侶♀「……」
勇者「どうだ?」
僧侶♀「……あ、」
僧侶♀「…………」コク
勇者「……よし、今から俺たちはパーティーだ」
僧侶♀「……初めてだから、嬉しい」
勇者「なに、俺も初めてだ」
勇者「そっちの二人も、わざわざ呼び立てておいてスマナイ」
賢者♂「……必要があればまた来ると良い」
賢者♀「残念。僧侶♀ちゃんは良い話相手だったのに」
店主「では、最高級クラスの紹介料として500000Gを……」ニギニギ
【宿屋】
勇者「……そうだ、装備の調達に行こう」
僧侶♀「?」
勇者「今の装備では心もとないだろう」
勇者「俺が見繕うか? 自分で選びたいのなら装備屋にでも行くか」
僧侶♀「……ええと」
僧侶♀「出来れば、これは捨てたくないだけど…」
勇者「?」
勇者「"けんじゃのつえ"か……随分年季が入っているようだな」
僧侶♀「……」ギュ
勇者「……」
勇者「…構わん」
僧侶♀「!」
勇者「ただし、装備はキチンとしたものを持ってもらう」
勇者「小太刀程にまで短くなった杖……脇差しにでもして所持していろ」
僧侶♀「……うん」コク
――…
僧侶♀「"てんしのローブ"に……"ミスリルヘッド"?」
勇者「不恰好か?」ムゥ
勇者「見た目は気にしないんだ。年頃だろうが我慢してくれ」ポリ…
勇者「それと……」
勇者「この袋に入ってみてくれ」
僧侶♀「?」
スポッ
勇者「居心地はどうだ?」
僧侶♀「……寝袋? じゃないよね、ただの袋…」
僧侶♀「居心地は、よくわからない」
勇者「……ではそのままで体育座りでもしていてくれ」
ンショッ
僧侶♀「っ?」
勇者「こうやって背中に背負えば、守り安いだろう」
僧侶♀「……重くないの?」
勇者「背負ってるかどうかわからないくらいだ。力には自信があるんでね」
勇者「それで……どう思う?」
僧侶♀「……」
勇者「……」
僧侶♀「……」
僧侶♀「……"天才"」
勇者「っ、そうか! そうかそうか」ピョンピョン
勇者「明日は、一度街の外に出て実践といこう」パク
僧侶♀「……」コク
勇者「こうして美味い料理を食べる機会も減る」モグ
僧侶♀「……うん」パク
勇者「肉は……食べ放題だ。少し筋張って、獣臭いがな」バク
僧侶♀「……成長期だから」アム
勇者「そうだな…」
勇者「……お前が成熟するまで10年も待てば、それまでに人間側は魔物達の猛攻で更に困窮しているだろう…」
勇者「すまないが、出来るだけ命は失いたくない」
勇者「実践を少し積み次第、近い内に魔王城へ出発する」
僧侶♀「……わかった」
――…
勇者「夜は一人で眠れない?」
僧侶♀「……暗いと、一人ぼっちな気がして…」
――…
僧侶♀「……勇者様」
勇者「勇者で良い。どうした?」
僧侶♀「本当に、他にパーティーメンバーは必要ないの?」
勇者「必要はない」
僧侶♀「二人で、大丈夫?」
勇者「大丈夫だ」
僧侶♀「……ハッキリ言うんだね」
勇者「回復役さえいるのなら、俺は魔王にだってサシで勝てる」
僧侶♀「……傲慢」
勇者「そうかもしれないな」
勇者「傲慢ではなく"自信"だと俺は思うがな」
勇者「強い、負けない、救う。俺は勇者なのだから」
僧侶♀「……なら、私も信じる」
僧侶♀「勇者が自分を信じるように、私も勇者を信じる」
勇者「……そうか」
勇者「それと俺は眠い。先に寝るぞ」フワァ
【最果ての街・壁外】
魔物A『GRLLLLLLLLL』
魔物B『KSCCCCCCCC』
魔物C『GFGFGFGFGFGFGFGFGFGF』
勇者「よしっ、試しに呪文を唱えて攻撃してみろ」
僧侶♀「~~」ブツブツ
僧侶♀『"バギクロス"』
ザバザバザバザバザバザバザバザバザバ!!!!!
魔物'S『GYAAAAAAAAAAAAA』
勇者「……ほう」フム
僧侶♀『"バギクロ… 勇者「待て待て」
僧侶♀「?」
勇者「俺が言うのも難だが、間を開けずに瀕死の敵へ最大呪文を連発しようとは……中々の鬼だな」
勇者「それに、攻撃呪文を使わせておいて悪いが……お前には回復呪文以外は求めない」
勇者「今のはもしもの時に自衛が可能かを見たくてやらせたんだ」
勇者「攻撃呪文を使って、回復呪文が唱えられる数が減るのは御免だからな」
僧侶♀「……わかった」
――…
魔物『GYAAAAAAAAAAAAA』
勇者「……よし、今日はここらで切り上げよう」
僧侶♀「……」ハァ、ハァ
勇者「明日は少し遠くまで行く。キャンプをし、翌日街に戻って回復…」
勇者「……そして、身支度を整え…魔王城へ向けて出発する」
僧侶♀「……うん」コク
勇者「……袋の方はどうだ?」ユサ
僧侶♀「……意外と乗り心地は悪くない」
勇者「……それは良かった」
僧侶♀「……ねえ」
勇者「?」
僧侶♀「どうしてあの時、勇者は私を選んだの?」
勇者「……なんだ急に」
勇者「"回復系の最大呪文は僧侶"って、ガキの頃からの常識だったからな」
僧侶♀「……」
僧侶♀「……それだけ?」
勇者「ああ」
勇者「でなければ幼い子供など連れて行かん」
僧侶♀「……そう、だよね」
――…
勇者「大分、こなれたな」
僧侶♀「うん」
勇者「では街に帰るか。明日にはこの街を去る」
僧侶♀「……うん」
勇者「……どうした? 流石に疲れたのか」
僧侶♀「……」フルフル
僧侶♀「……勇者」
勇者「? なんだ」
僧侶♀「"おんぶ"、して」
勇者「おんぶ? 今しているだろう」
僧侶♀「ちがう……袋で背負うんじゃなく…」
僧侶♀「……背中で、おんぶしてほしいの」
勇者「……それくらい構わないが」
――…
勇者「……どうだ?」
僧侶♀「……うん、あたたかい…」ウト
勇者「そうか……」
――…
勇者「……では、出発だ」
僧侶♀「……」コク
勇者「持ち物も、装備も……問題無いな」
僧侶♀「怪我も無し。敵無し。憂い無し」
僧侶♀「それじゃあ……」
スッ…
ガシッ
勇者「待て」
僧侶♀「?」
勇者「街の門から外へ出る時には、ジャンプして境界線を超えるんだ」
僧侶♀「……?」
勇者「……おまじないみたいなものだ。凱旋で帰ってくる時も、同様だ」
僧侶♀「勇者がそう言うなら……」
僧侶♀「……せぇのっ」
ピョンッ×2
スチャッ
僧侶♀「……これでいいの?」
勇者「よし。これで負ける要因は無くなった」
僧侶♀「おまじないに頼るなんて意外とかわいいとこあるんだね……」ボソ
――…
勇者「ふんっ」
グシャァッ
魔物『GYAAAAAAAAAAAAA』
――…
勇者「むんっ」
ドクシャアッ
魔物『GYAAAAAAAAAAAAA』
――…
勇者「はっ」
メメタァッ
魔物『GYAAAAAAAAAAAAA』
勇者「……よし。調子は良い様だな」
僧侶♀「……本当に強いね」
僧侶♀「魔王だって一人で倒せるのかも」
勇者「……お前がいれば、必ず勝てる」
僧侶♀「……そ、そう…」
――…【野営キャンプ】
バチ、バチッ…
勇者「……確認しておきたい事がある」
僧侶♀「?」パク
勇者「仮に、魔王をあと一息まで追い詰めたとする」
僧侶♀「? うん」
勇者「そこで俺が瀕死となった場合は、俺に構わず……魔王を攻撃するんだ」
僧侶♀「……」
勇者「俺の命と、魔王を倒した事で失わずに済む命…」
勇者「……天秤にかけずとも一目瞭然だろう」
僧侶♀「……」
勇者「まだ幼い時分には難しい判断かもしれない」
勇者「だがこれも仮にだが、同様の状態でお前が瀕死となった場合は…」
勇者「……俺は魔王を倒す事に意識を向け続ける」
僧侶♀「……」コク
勇者「俺たちは世界を救う為に、彼の地へ向かうんだ」
勇者「自己を犠牲にする事を躊躇わない……それが、勇者とそのパーティーの心構えだ」
僧侶♀「……わかった」
――…
勇者「……っ、毒をもらった」
僧侶♀「……毒消し草は、もう数が少ない…」
僧侶♀「後で眠って回復すればいいから、キアリーを使うね」
勇者「……頼む」
――…
勇者「……魔物の数が増えてきたな…」
僧侶♀「……うん」
勇者「しかし数だけだ。敵ではない」
僧侶♀「勇者、強いから……無理をしすぎてい… 勇者「それは俺が決める」
勇者「ここまで長い旅を一人で乗りきってきたんだ……経験から知っている」
僧侶♀「……ごめんなさい」
――…
勇者「……毒系が多いな」
僧侶♀「……キアリー、唱えるね」
勇者「……すまない」
――…
勇者「……見えた、魔王城だ」
僧侶♀「どうする?」
勇者「まだ少し離れているが、ここで野営をとる」
僧侶♀「……」
勇者「眠っていようが、近づく魔物は容赦なく俺たちを襲ってくる」
勇者「……10分もあれば深い穴や土豪を作る事が出来る」
勇者「最後の、落ち着いた睡眠になるだろう……お前は安心して寝るがいい」
僧侶♀「……ありがとう」
勇者「構わない」
勇者「俺は3時間もあれば全快する」
勇者「見張りは任せておけ」
僧侶♀「……うん…」ウト
勇者「……」
勇者「(やはり少女には負担が大きいか……)」
僧侶♀「(明日は勇者の役に立たないと……)」
――…
僧侶♀「……ん…」
僧侶♀「……朝?」ムニャ
僧侶♀「……」
僧侶♀「……」
僧侶♀「! 勇者っ」ハッ
僧侶♀「いまっ、何時?」アタフタ
『おう、それだけ元気があれば大丈夫だな』
僧侶♀「っ?」
勇者「なに、少し野草を取ってきていたんだ」
僧侶♀「……よかった…」
勇者「心配するな。この隠れ場所が目に届く範囲にはいた」
僧侶♀「ちがう…」
僧侶♀「……勇者に、置いていかれたと思って」エヘ
勇者「……そんな事はしない」
勇者「大切な回復要因だからな」
僧侶♀「……」
僧侶♀「……うんっ」ニコ
――…【魔王城】
勇者「……よし」
僧侶♀「鍵が、かかっているみたい」
ドガーンッッッ!!!
僧侶♀「!」
勇者「入るぞ」
僧侶♀「豪快……」
僧侶♀「気付いた魔王が来ちゃうかも?」
勇者「探索せずに始めから魔王戦が出来るなら楽でいい」
僧侶♀「他の魔物も一斉にかかってきたらいくら勇者でも……」
勇者「……そうだな」
魔物A~Z『GYAAAAAAAAAAAAA』
僧侶♀「……集まってきたね」
勇者「……魔王戦までに、減らせるだけ減らす」
勇者「城内にいる魔物、全てをたたきのめすつもりでいろ!」
僧侶♀「……うんっ」
――…
勇者「……毒がキツいな」
僧侶♀「毒消し草……使うね?」
――…
勇者「アモールの水……毒消し草は…無い、か」
僧侶♀「たくさん宝箱があるね」
勇者「そりゃあ魔王の城だからな、たくさんあるだろう」
勇者「とりあえず常に体力は満タンにしておく……」ンック
僧侶♀「……」ゴク
勇者「思ったより敵が強くないな……」
僧侶♀「……勇者は、本当に人間?」
勇者「こう見えてもな」
僧侶♀「強すぎるよ」
勇者「だからここにいる」
僧侶♀「でも」
僧侶♀「ちょっとだけ、怖い…かも」
勇者「……よく言われる」
勇者「どっちが魔物かわからないってな」ハハ
勇者「……お前も、歳の割には強い」
勇者「帰ったら、鍛えてやる」
僧侶♀「……ソレ。約束、だからね」
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