メイド「軍用メイドロボットです!」 (97)

『ボリス分隊、ヴァシリ分隊、二階を捜索せよ』

『ディミトリよりアンナへ、屋上より突入する』

『アンナ了解、グレゴリー分隊はバルコニーより突入せよ』

『グレゴリー了解。敵影なし』

『こちらセミョン、狙撃準備よし』

『セミョン分隊、何か見えるか』

『アンナ、今のところ何も見えません』

『エレナ分隊、現在地下室を捜索中…何だあれは?』

『アンナよりエレナ、どうした、応答せよ』

『それが…あの、ロボットのようなものが』

『エレナエレナ、返答が不明瞭である、再度状況を説明されたし』

『中尉…メイドロボットと、大量の物資です』

中尉「何だこりゃ」

メイド「…………」

兵士「私には何も」

中尉「この屋敷は誰の所有だったか分かるか?」

兵士「少々お待ちください…ええと、軍事企業のモデル住宅ですね」

兵士「そしてその子は軍用ロボットのようです」

中尉「なぜ分かるんだ」

兵士「そこに説明書きが」

中尉「………」

兵士「何々…家事全般、要人警護、家庭教師…そこの専用メモリーカードを読み込んで表示したりも出来るそうですよ」

兵士「メモリーカードの内容は、電子工学…各種インフラ装置の設計図…観光ガイド、何だこりゃ、 子守唄…」

メイド「……」

中尉「綺麗な作りだな」

兵士「もしかして中尉、その気が」

中尉「無いから安心しろ」

兵士「で、どうします?起動しますか?」

中尉「そうだな…電子回路のデータは欲しいところだ」

中尉「何しろこんな状況ではな…」

兵士「………」

兵士「ですが、メモリーカードを解析すれば済むのでは?」

中尉「見たところプロテクトがかけられているし規格も知らないものだ…このロボットを使うしかない」

中尉「それに携帯を使えると言っても携帯の仕組みを理解しているわけではないだろ」

兵士「…確かに、その通りですね」

中尉「行くぞ…」ポチッ

兵士「ボタン式とは古風な…」

メイド「……」

メイド『起動しています…』

メイド『基本データの読み込み中…』

メイド『ご主人様を認識』

中尉「…?」

メイド「……」パチッ

メイド「…始めましてご主人様、軍用メイドロボウラル型、試作00号です」

中尉「…始めまして」

メイド「状況をお教えください。今日も祖国に奉仕します!祖国に栄光あれ!」

兵士「……」

中尉「祖国は…もうない」

メイド「?」

メイド「…回答の意味が理解できません」

中尉「…私は内務省中尉、君の運用試験を担当するように命令された。今日から私が主人だ。よろしく頼む」

兵士「ちょっ…中尉?」

中尉「…任務を待っている間に祖国が無くなってしまったなんて言えるか?」

兵士「…ですが…」

メイド「そうでしたか…では、よろしくお願いします、ご主人様」

中尉「…ああ」

メイド「早速ですが、私は何をすれば?」

中尉「…ひとまず家の片付けだな。外には出るなよ」

メイド「承知いたしました、ご主人様」

数ヵ月後

メイド「ご主人様、お茶の準備ができました」

主人「ああ…すぐ行く」

メイド「ご主人様、お言葉ながら今ので五回目 でございます」

主人「ああ…すぐ行く」

メイド「ご主人様!」

主人「…すまん」

メイド「…ご主人様、あまり根をお詰めになさらないでください」

主人「…ああ」

主人「みんなを待たせてしまった、すぐに行こう」

メイド「いえ、ご主人様…今回はご主人様の為だけに用意させていただきました」

主人「…どうして」

メイド「だってご主人様、使用人の方々とお会 いするとお仕事の話ばかりなんですもの」

メイド「メイドとしてはご主人様にも休息が必要だと考えております」

主人「…心配かけて悪かった、飲もう」

メイド「はい、ご主人様」

主人「ん…うまいな…」

主人「屋敷の南門はどうなってる?」

執事「はい、監視を二名立たせております」

主人「最近は襲撃が活発化している、五名まで増やせ」

執事「しかしながら中尉、人手が…」

主人「残存兵は?見つかっていないのか」

執事「偵察分隊を派遣しておりますが、最後に残存兵を見付けたのは1週間前です。それから戦闘が続きまして…」

主人「本部も補充兵を出せる状況じゃないか…くそ」

主人「はぁ…」ドサッ

主人「ありがとう、下がってくれ」

執事「はっ。失礼します」カッ

メイド「ご主人様、たまには休まれては」

主人「そうしたいのは山々だがな…」

メイド「何かお手伝い出来ることはありません か?」

主人「…歌を歌ってくれ」
メイド「ご主人様、私の歌をお聞きになりたいのですか」

主人「そうだ…いつもみたいにな」

メイド「では…」

『音楽データを読み込んでいます…』

『声帯…異常なし』

メイド「すう…」

メイド「Баю-баюшки-баю,
Не ложися на краю…」

メイド「 Придет серенький волчок
И ухватит за бочок…」

メイド「ご主人様、これは子守唄ですが…」

主人「いいんだ」

メイド「しかしデータによればご主人様の年代の方々はもっと後の時代の歌をお聞きになる と…」

主人「ポップやテクノはいい、今はそれを歌っ てくれ」

メイド「…承知いたしました」

メイド「Он ухватит за бочок
И потащит во лесок…」

主人「……」ウツラウツラ

メイド「И потащит во лесок,
Под ракитовый кусток. К нам, волчок…」

主人「……」ガクン

メイド「ふふ、ご主人様…やっとお休みになられ た」

主人「………」zzz...

メイド「流石のご主人様も寝ている時はしかめっ面ではないのですね…」

『写真を撮影します…フラッシュなし、シャッター音なし』カシャ

メイド「…お休みなさいませ、ご主人様」

使用人「中尉、失礼しま…

『警備体制:警戒』

メイド「ご主人様は現在お休みになられていま す」ギロリ

使用人「し、しかし…」

メイド「あなたはご主人様を過労で寝込ませるおつもりですか?」

使用人「そういう訳では…」

使用人「はあ…分かりました、この書類を後でご主人様に渡しておいてください」

メイド「はい、承りました」

『文章をスキャンし…

使用人「あ、スキャンはしないで直接渡すようにしてください」

メイド「…? 了解しました」

『スキャンを中止します』

使用人A「まったくあのメイドさんには敵わねえな、可愛い顔して押しが強い」

使用人B「知ってるか、あの子金持ちの身辺警護だかの為に開発されたらしいぞ」

使用人A「それならどうして戦闘に出さないんだ?」

使用人B「対人間戦闘を制限した状態でこの屋敷で運用テストをするつもりだったとか、お陰で人間は撃てないんだ」

使用人B「ロボット三原則か…だが居るだけでもありがたいもんだ」

使用人A「ロボットとはいえ格好悪いところは見せられんしな、お陰で規律が保たれる」

使用人B「出来ればアレもできたら良かったけどな!」

使用人A「モデルによっちゃ搭載されてるらしいぜ」

使用人B「マジかよ!」

使用人A「やめとけ、中尉にぶっ飛ばされるぞ」

使用人B「自分から言っといて何だが、あれだけ人間離れして綺麗だと逆になあ…」

使用人A「ま、遠征時に娼館のある拠点にも行けるしね」

使用人B「だが軍事企業がおっ始めた戦争の後で軍事企業の開発したロボットに助けられるなんて皮肉なもんだと思わねえか」

使用人A「出来れば綺麗なままでいて欲しいね… 終末前のままのな」

メイド「ご主人様…」

メイド「うふふ、子供みたいな寝顔をされています、ご主人様」

『記録を読み込んでいます…』

『検索対象:雇用歴…該当なし』

メイド「ご主人様…私にはご主人様とお会いする前の記憶がありません」

メイド「私は何処から来たのでしょうか?」

メイド「…マニュアルには会社から信号が来ると書いてありますが、今まで一度も来たことがありません…」

メイド「ですから…ご主人様…いなくなったり…しないでくださいね」

メイド「私は何をすればいいのか分からなくなってしまいます…」

メイド「ご主人様…」ソッ

『スリープモードに移行します』


主人「……ん」

主人「ずいぶん長く寝てしまったか…ん、メイド?」

メイド「………」zzz...

主人「スリープモードか…」

主人「…い、意外と重いぞ、この子」

主人「それにしても本当に寝てるみたいだな…」バタン

執事「気をつけ!」カッ

主人「……」バッ

執事「中尉、おはようございます」

主人「おはよう。状況はどうだ」

執事「まず食料に水ですが、ここは食料庫だっ たお陰で捨てるほどあります…腐らなければの話ですが」

主人「問題は武器か…」

執事「我々の武装は貧弱、そして弾薬も不足し ております。人手よりも先に弾薬のせいで偵察 分隊を派遣できなくなってしまいそうです」

主人「では、探しに行かなければな…」

執事「周辺五キロは粗方探し尽くしてしまいました。もっと遠くまで行かなくては」

主人「地図を見せてくれ」

執事「しかし…探索が済んでおりませんので現在のものとはまったく異なる可能性があります」

主人「いい。見せてくれ」

執事「はっ、失礼しました」バサッ

主人「見ろ…ここから十キロ先に保安庁の弾薬庫がある」

主人「軍より先に保安庁が駆り出された。奴等のうちの何人が戻れたかは知らんが…」

執事「つまり…?」

主人「…奴等の分が残っているという事だ」

執事「…Аминь.」

主人「一キロ探索するだけでも一日がかり、十キロだと何週間かかるか分からん」

主人「私が指揮を執る、その間君はここの指揮を執れ」

執事「はっ!」

主人「メイド、メンテナンスの時間だぞ」

メイド「はっ、はい、よろしくお願いします」

主人「もう何度もやってる事だ、そこまで緊張しなくてもいいだろ」

メイド「そ、それはそうですけど…」

主人「よし、腕を上げろ」

メイド「はい…」

『腕の機能と接続を停止』

主人「外すぞ」ググ…

メイド「ん、んぅ…ひぅ…」ガチャッ

主人「ちゃんとした棒がないからカラシニコフ のクリーニングロッドで我慢してくれ」シャコシャコ

メイド「あっ…くぅ…」

主人「よし、オイル刺すぞ」プシュッ

メイド「…ふ…あっ…」ゾクゾクッ

『腕部を再接続…』

『読み込み完了』

主人「腕は終わり、次は脚だ」

メイド「は…はぃ…」カアァ

『脚部の機能を停止します』

主人「右の膝の間接からだ」シャコシャコ

メイド「……ん…あ…ふあぁ…あ…」

主人「…君の開発者は多分変態だな」

メイド「ち…が…いまっ…ふぅんっ!」

メイド「ま、マニュアルに…んんっ…よれ、ば…ぁっ…電気信号…を…っ!完全に…遮断するっ、ぁっ…機材を…つか、使うとか…!」

主人「その機材がないと電気信号がおかしく伝達される訳か」

メイド「は…はぃ…ひぃ!」

メイド「ご主人様…にっ!触られる…たびにっ…からだのし、芯が…疼いて…ピリピリするのが…っ!」

主人「えらく抽象的だな…」

主人「さ、脚も終わったぞ」

『再接続中…』

『接続完了』

メイド「ぁ…」

主人「次は胴体だ…立てるか?」

メイド「んっ…ひゃあっ!」ガタン

主人「おい!大丈夫か?」ガシッ

メイド「ふうぅんっ!」ゾクッ

メイド「ごしゅじっ…ご主人様…息がっ…みみ…にっ…!」

主人「いらん機能だな…」カタカタ

『反応を一部制限しました』

メイド「あ…そこまで嫌じゃなかったのに…」ボソッ

主人「次は胴体だ」フキフキ

メイド「ひんっ!」

主人「開けるぞ、スリープモードに」

メイド「は…はひ…」ハアハア

メイド「あの…ご主人様…」

主人「何だ?」

メイド「優しく…してくださいね?」

主人「当たり前だろ」

メイド「そうですか…うふふ」

メイド「私が整備をお願いするのはご主人様だけですからね…」

『スリープモードに入ります しばらくお待ちください』

主人「…分かってるよ」

ガチャガチャ

『修理補助機能を起動します』

『簡易スキャン中…異常なし』

主人「外見も異常なし、と…」

主人「しかし良く出来てるな、流石は日系企業だ」

主人「この配線なんか見事なもんだ…今のところ故障した事は一度もないしな」

主人「しかしまあ、いらん機能まで付けるとはな…」

主人「会話やインターネットから常時学習する機能…?要るのかそんなもん、仮にも半軍用ロボットなのに」

主人「自分で学習させるためにその機能を入れたらしいが…感情が人間と同じようにあるなら戦争は人間の物のままか」

主人「仕事も罪も押し付けられないな」ポンポン

主人「よし、スイッチを入れて…」

ブウウン

『スリープモードから復帰します…しばらくお待ちください』

ガチャッ

『起動します…五、四、三、二、一…』

メイド「おはようございます、ご主人様!」ニコッ

主人「確か起動したばかりの頃は無表情だったと思うんだが」

メイド「学習機能ですわ!」フンス

主人(愛着が沸くロボットって兵器としてはどうなんだ…?)

メイド「…? 如何されましたか?」

主人「…いや、今日も綺麗だと思ってな」

『対象をスキャンします』

『臓器:異常なし』

『脳:異常なし』

『引き続きスキャンを…』

主人「…何も悪いものは食べてないから安心しろ」

メイド「は、はい…」

主人「…また後でな」バタン

『対象:心拍数:正常値』

メイド「むぅ…」

主人「仕事だ、二週間で戻る」

メイド「承知しました」

『スケジュールを更新しました』

メイド「ご主人様…無理はなさらないで下さいね」

主人「ああ、大丈夫だ」

『記録を読み込んでいます…』

メイド「ご主人様、私の記録によればご主人様はいつも…長いお仕事から戻られるときはひどく憔悴されています」

メイド「それに硝煙と血液の臭いもします」

メイド「私はただのメイドですから貴方に意見することは出来ません、ですが…」

主人「やはり学習機能は無用の長物だったな」

メイド「…過ぎたことを申し訳ありません」

主人「…行ってくる」バタン

メイド「ご主人様…私は何処かおかしいのでしょうか」

メイド「ご主人様の事を考えると全身にノイズがかかったような気持ちになります」

メイド「もしご主人様が死んでしまったらと考えると…体が冷えきったような気持ちになります」

『スキャンしています…』

『異常は見られません』

メイド「体には何処も異常がないのに、ご主人様に酷く執着しています」

メイド「教本データにはご主人様の事情に口出ししてはいけないとあるのに、ご主人様の事をもっと知りたいと考えてしまいます」

メイド「何故なのでしょうか…」

メイド「ご主人様…」

使用人「こんな状況になってしまったが…これを受け取ってくれ」パカッ

女中「これは…?」

使用人「何時まで生きていられるか分からない…だから今のうちに思いを伝えておきたかった」

使用人「結婚して十年、今まで凄く幸せで…凄く世話になった。だからこれからも一緒にいて欲しい」

女中「…ありがとう、嬉しい」ギュッ

使用人「最後までお前と居たい、お前じゃなきゃ駄目なんだ」

女中「…うん」

メイド「あれは…?」

ガタン

メイド「あっ…」

女中「あら…はは、恥ずかしいところ見られちゃった」

使用人「……」ポリポリ

メイド「私も、ご主人様と共にありたいと、最近思うようになりました」

メイド「これはどのような感情なのでしょうか…?」

使用人「…それは俺たちと同じだな」

女中「えっとね、説明しにくい概念なんだけど…その…」

メイド「申し訳ありません、人の心を覗き見するのは良くないことなのですが…スキャンさせて頂けないでしょうか?」

メイド「それなら…あなたの心理状態を、データとして再現できると思いますので」

女中「いいよ、あたし達に隠すことは何もないから…あんたは?」

使用人「恥ずかしいが…まあいいよ」

メイド「有り難うございます。では…」ピピピ

『対象をスキャン中…』

『データを転送中』

『データを転送しました』

『読み込んでいます…』

『疑似体験モードに移行…心拍数増加、分泌物の配合を設定…』

「これは…何でしょうか…」

「この感覚…」

「とても暖かくて…とても嬉しくて…でも…」

「ご主人様…」

「ご主人様の言葉をもっと聞きたい…もっと知りたい…もっと側へ…」

「ご主人様、あなたは私をすっかり変えてしまいました…」

「居なくならないでください、もっと抱き締めてください、もっと触れてください…」

「ご主人様…」

女中「急に固まっちゃった…大丈夫かな」

使用人「ピオニールの集会でいきなりアメリカのポルノビデオを見せるようなもんだな」

女中「もっと上品な例えは使えないの!?」

・・・・・・・・・

主人「それじゃ頼んだ」

執事「はっ、お気をつけて」カッ

主人「…あの子を外に出すなよ、この現実を見せたくない」カッ

執事「…了解」

主人『ザザッ…通信をテストする…アンナから全分隊員へ、聞こえるか』

伍長『こちらボリス、通信良好』

兵士『こちらヴァシリ、異常なし』

兵士『こちらグレゴリー、感度良好』

兵士『こちらディミトリ、通信よし』

主人『特例につき他の者の呼応を省略。感度良好なら手を二回叩け』

主人「…よし」

主人『ザーッ…偵察分隊、作戦開始』

銃手
主人『ザザッ…ボリス、ストレロクを一人、狙撃手を一人連れてあのビルで監視してくれ』

伍長『ザッ…ボリス了解』

主人『機関銃手は一人連れてあのアパートで監視してくれ…他のストレロクは前進を援護せよ』

『『『了解』』』

伍長『アンナアンナ、こちらボリス…屋上に到達、監視を続ける』

主人『了解。我々はそのビルの前を横切る、十二時を監視せよ』

主人『全隊、カンテラを二回振るものは味方である。それ以外は…ぶちかませ』

『『『了解』』』


主人『セミョン、何か見えるか』

狙撃手『アンナアンナ、何も見えません、平安そのものです』

主人『了解、前進』

伍長『待ってください!何か見えます!』

伍長『アンナアンナ!こちらボリス、そちらの9時二百メートル先に何か見えます!』

主人『ボリス、落ち着いて目標の種別を報告せよ』

狙撃手『こちらセミョン、人間ではなく化け物のようです、排除しますか?』

主人『セミョン、頼んだ』

狙撃手『了解』バンッ

カラン

狙撃手『目標沈黙』

主人『ありがとう、進め』

伍長『アンナ、こちらボリス、そちらの六時方向に敵影…野盗です』

主人『セミョン、人数を』

狙撃手『ひとり…ふたり…五人確認』

主人『建物内に隠れたりしてないか?』

狙撃手『待ってください、見張りが一人います…横の建物の上、狙撃手、補助はなし』

主人『セミョン、VSSを使っていい、排除できるか?』

狙撃手『こちらセミョン、やってみます…位置を変えます』

伍長『こちらボリス、セミョンを援護する』

主人『各員襲撃態勢、軽機関銃手、擲弾手は用意を』

『『了解』』

狙撃手『位置に着いた、狙撃する』

パスッ…

狙撃兵『目標、沈黙…』カシャン

伍長『くそ、まずい!奴が落ちるぞ!気付かれる!』

主人『グレゴリー、撃て!』

機関銃手『了解!』ガガガガ

「何だ!?」「敵襲!」

主人『奴等を釘付けにしろ!』

ガガガガ…パパパ…

「撃ち返せ!」「殺せ!」

兵士『ディミトリ負傷!』

兵士『畜生、撃たれた!』

主人『誰でもいい、擲弾か手榴弾をぶちこんでやれ!』

兵士「グラナーダ!」ボンッ

バコンッ!

「ぐあ…」「くそ…」


兵士「…反撃が止みました」

主人『ボリス、どうなった?』

伍長『こちらボリス、ハハ…一網打尽です』

「うああ…」「痛ぇ…」

主人『…楽にしてやろう』

ダダッ…ダンッ

主人『各員、使えるものがあったらもらっておけ』

兵士『金もですか?』

主人『ここにあっても腐るだけだからな』

兵士『チッ、しけてやがるぜ』バサッ

主人『…屑どもに同情する気はないが、認識票か手紙があったら私に渡せ』

伍長『お優しいですね、"ご主人"様』

主人『善行を積めば天国に行けるらしいぞ。こいつらのお陰で天国に行けるなら安いもんだ』

兵士『ヘへ、まったくで』

兵士『お、こいつ良いもん持ってんな…』ガチャガチャ


主人「………」

主人「すまん、さっきのはやせ我慢だ」

伍長『…申し訳ありません、中尉』

主人『いいんだ、それより前を見ていてくれ。襲撃が怖い』

主人『そろそろか…ボリス、カンテラを』

伍長『了解』グルグル

チカチカ

主人『…味方だ、総員警戒を解け』

兵士『ひゃっほう!あの拠点には娼館があるぜ!』

兵士『マジか!久しぶりの女だ!』

主人『…そろそろ日が落ちる、明朝出発』

主人『あまり破目を外すなよ』

伍長『了解!中尉もどうですか?』

主人『私はいい…すっからかんになりたくないからな』

伍長「あのメイドが怖いのですか?」ニヤニヤ

主人「さっさと行け!」

拠点

主人「……」ビシッ

士官「…」ビシッ

士官「内務省中尉同志、久しぶりだな。無事で何よりだ」

主人「お久しぶりです閣下、閣下こそお元気で何よりです」

士官「今回はどうしてここまで出張って来たんだ?」

主人「軍の弾薬を貰おうかと」

士官「あそこか…我々はまるで兵糧責めにでも会っているようだな!」

主人「軍、保安庁、警察…どれかと連絡が取れれば良いのですが」

士官「噂によれば内務省の特殊部隊が本部とその周辺のアパートを接収して要塞を築いているらしいぞ」

主人「何と!…そこがあれば我々の拠点にいる避難民を移動させられる」

士官「だが確認がとれない内は夢物語でしかないな。
それよりも目下対応しなければいけないことは沢山ある」

士官「アカにナチに盗賊、そしてアナーキスト!」

士官「ここはクソと敵に事欠かないな!しかも最近はサイコ野郎まで加わったと来たもんだ」

主人「やはり宗教団体が勢力を増していますか」

士官「それだけ我が国には弱い人間が多いという事だ!
まったく、共産党時代のように宗教キチガイは弾圧すれば良かったんだ」

士官「奴等の武器は狂信と洗脳、後は矢と化け物だという報告が上がっている」

主人「矢ですか…?」

士官「矢といっても侮るなよ、ボウガンだ。しかも毒が塗ってある。化け物はどっかのクソ企業が離しやがったのを繁殖させたんだな」

主人「…気を付けます」

士官「貴官が行くつもりの倉庫、あそこをそのサイコどもが狙っているらしい。信者は電波でも教祖は正気だって事だ」

士官「気を付けろよ、貴官の認識票を拾いに行くなんて御免だ」

主人「はっ!有り難うございます、閣下」カッ

士官「うむ、健闘を祈る」カッ

兵士A「昨日は最高だったな!三番の女がすげえいい女でな…」

兵士B「五番は腹に線が出てるババアだったぞ…クソ、もっといい女を抱くまで死ねるか」

兵士A「ツイてない奴だな…次は半額奢ってやるよ」

兵士B「おっ…言ったな…第二拠点の高級店に行ってやろうか」

兵士A「前言撤回、欲の皮が突っ張ったお前にはババアで十分だ」

兵士B「冗談だってば!そりゃないぜ…」

主人『ザザッ…全員ここからは警戒区域だ。貴を引き締めて行け』

『『『了解』』』

主人『第四前哨駐屯中隊より第三拠点の兵士諸君へ、護衛感謝する。そちらの無事を祈る』

護衛『ありがとう。貴官らの作戦遂行を願っている』

技術者「……」チョイチョイ

主人『どうした?』

技術者「……」トントン

主人『ザザッ…全員、周囲を警戒しながら待機せよ』

主人「通信は切ったぞ、何か用か、ヤポンスキー?」

技術者「あんたの所のメイドロボットだが、企業の試作品なのは知ってるよな」

主人「ああ、もちろん」

技術者「俺はあそこに勤めてたんだ」

技術者「それで率直に言うが…あの製品は欠陥だった」

主人「むしろ優秀だと思うが?」

技術者「基本的にはな。だが学習機能を強化するあまり感情に似た要素を持ってしまった」

技術者「ロボットが感情を持つのはよろしくない…命令に違反することだってあり得る」

http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1385746286
こっちはどうすんだよ

主人「"無能な働き者"よりはいいんじゃないか」

技術者「時として合理的でない命令に従わなければいけない時だってあるからな」

主人「おかしな命令なら反抗された方がいいんじゃないか」

技術者「これは人権だとか独自性とかの話じゃない。軍隊に使役されるロボットの話だ」

主人「…なるほど」

>>57
反応がなくて寂しいのでやめました

主人「ああ、それで?」

技術者「姉妹機がこの都市のあちこちに散らばってしまった…そしてあの子たち…」

技術者「…いや、あの製品には過去数十年間の人間の知識が記録されている」

技術者「ああ…言いにくいんだが、その…例のサイコどもがそれを手に入れた可能性があるんだ」

主人「…まずいな」

技術者「ああ、ヤバい。下手に感情があって、善悪の判断力が半端にある状態だと…」

主人「洗脳に引っ掛かっているかもな…」

主人「設計図やらが駄々漏れなわけだ」

技術者「そしてあれはメモリーカードを再生できるようになっている」

技術者「警察とあの子達の企業が週末戦争前に提携を結んだのを覚えているか?」

主人「ああ、そういえばうちの署にもロボット用のメモリーカードが…あっ!」

技術者「大規模な資金投入もあってあのメモリーカードはあちこちで使われていた。企業、図書館、学校…」

技術者「あの子がいるだけでそこにアカデミーと士官学校の首席卒業者がいるようなもんだ」

技術者「ひょっとしたら人間を攻撃する事まで出来るかも知れない」

技術者「"ご主人様"にこれを言うのは心苦しいんだが、余裕があったら姉妹機をなんとかしてほしい」

技術者「型番はヴォルガ型、髪の毛が真っ白、というより銀色だな」

主人「うちのロボットは黒髪だが…」

技術者「例のヴォルガ型は日本に輸出するつもりで作ったからな…まあそういう事だ」

主人「…了解、教えてくれてありがとう」

主人「欠陥品か…それならあの子は私が守らなきゃいけないわけだ」

・・・・・・・・
機械娘「失礼します」ガチャ

教祖「君か…」

機械娘「教祖様、最近政府の犬どもの行動が活発になっています」

機械娘「そして耳よりな情報が。どうやら内務省の第三前哨にメイドロボットがいるようです」

教祖「君と同じメイドロボットが…」

機械娘「いかが致しましょう?」

教祖「ふむ…破壊するか捕まえろ」

機械娘「承知しました」

教祖「週末の日が来た。じきに混沌の世が来る…そして夜明けも。だから我々は皆を助けて導かねばならない」

機械娘「そのためのこの宗教ですか…」

教祖「そうだ。宗教は心の支えになる。人々を一致団結させるのだ」

教祖「週末後私は宗教を始めた。一ヶ月後に黒人が来た。二ヶ月後にはネオナチが来た。私は彼らを受け入れた…」

機械娘「教祖様の愛は止まることを知らないのですね」

教祖「いかにも。それゆえにロボットである君も受け入れたのだ」

機械娘「ありがとうございます、教祖様」

教祖「三ヶ月後、彼らは共に酒を酌み交わした…」

教祖「私は確信したのだ。宗教こそが夜明けへの道だと…」

教祖「親愛なる同志よ、そして神の僕よ…励むのだ。より一層!」

バタン

信徒「同志、その部屋は…」

機械娘「私の信心に何か疑問でも?」

信徒「い、いえ、しかし…」

機械娘「教祖様は私のような物にも説教をしてくださる。だから私は教祖様と会話するのだ」

信徒「え、ええ…」

・・・・・・・・・・・

屋敷

メイド「どうして出ては駄目なのですか?」

女中「ご主人様から言い付けられておりますので」

メイド「でも…園丁の方たちが…」

女中「あれはただ脚立から落ちただけです」

園丁「そうだぜ嬢ちゃん、心配しないでくれ、逆に恥ずかしいからな!…いてて」

『対象をスキャン中…』

『怪我…出血、脚部…』

メイド「その傷は明らかに打撲ではありません!何かに噛まれたものですよ!」

園丁「…放し飼いにしてる犬に噛まれたんだよ」

『データを検索中…』

メイド「嘘です!そんなに大きい犬がここにいるはずがありません!」

園丁「俺が良いって言ってるんだ!放っておいてくれ!」バタン

メイド「あ…」

メイド「……分かりました、外には出ません。その代わり何かお手伝いを」

女中「…じゃあ、観光案内を」

メイド「少々お待ちください、それは確か一週間ほど前に」

女中「実はご主人様から休暇を頂きまして、本当は一週間前に出発するはずが明日になってしまったのです」

使用人「そうそう、んで俺たちバカだからさ、教えられてもすぐに忘れちゃうんだよ!だからまた…頼むよ」

メイド「…承知いたしました」

『アプリケーションを起動中:観光案内』

『プロジェクターを起動中』

『都市データを読み込んでいます』


メイド『ごほん…それでは不肖ながら観光ガイドを始めさせていただきます』

パチパチ

メイド『この都市は…歴史と風格に満ち溢れ…』

「……………」

メイド『また八月には…短い夏を利用した夏祭りが…』

「……………」

メイド『この宮殿は数百年の歴史を誇り…第一代皇帝は…』

園丁「………」コソコソ

「……………」

メイド『このような美しい都市で…市の中心にはこのような川が流れ…名前の由来は…』

「……………」

メイド「…?」

メイド「皆様、どうして涙を流されているのですか?」

「違う違う、これは単に眼にホコリが入っただけ」

「明日に観光に行けるのが嬉しくてさ」

メイド「…人は、悲しいという感情を感じた時に涙を流すと聞きました」

メイド「皆様は悲しいのですか?」

「……………」

「ああ、悲しい」

「ちょっ、ちょっと!」

メイド「何故悲しいのですか?」

「その観光案内は少しバージョンが古いからかな」

メイド「そ、そうでしたか!申し訳ありません!」

メイド「あの、差し支えなければ現在どうなっているか教えて頂けないでしょうか?」

「…何もない、全部消えた」

メイド「…すみません、私は謎かけはあまり得意ではないのですが」

「…そうだな、これは単なる謎かけだ。邪魔して悪かった、続けてくれ」

メイド「良かった…では続けさせて頂きます」

…………………

使用人「どうしてこんな事になっちまったんだろうな」

女中「さあねぇ。ちょっと前まであんなに綺麗な町だったのに」

使用人「排気ガスまみれの都市がか?」

女中「でも私たちの故郷だった!」

使用人「………そうだな」フーッ

使用人「今じゃ廃墟と屑野郎と化け物しかねぇ」

女中「…タバコある?」

使用人「マホルカだけだ」

女中「それでいいよ」

使用人「ほらよ」シュボッ

女中「ん…」

女中「……」フーッ

女中「前はさ…こんなに不味いタバコじゃなくて、もっと美味いのがいくらでもあったよね」

使用人「これはきっと天罰だな。タバコがにがーい味になるタイプの」

女中「ふふ、何それ」

使用人「俺にもわからん」

使用人「神よ赦したまえ、だ」スッスッ

女中「十字の切り方間違えてるよ、あんた」

使用人「そりゃそうだ、俺のじいさんは共産党員だったからな」

・・・・・・・・・
機械娘「教祖様、内務省の部隊が保安庁の武器庫に向かったようです」

教祖「そうか…撃退せよ」

機械娘「…教祖様、無礼を承知でお聞きします。なぜ我々はあそこの火器を使用しないのですか?」

教祖「鉄砲こそが我々を堕落させ、終末戦争に追いやったものだからだ」

機械娘「しかし教祖様、鉄砲があればもっと戦いやすく…」

教祖「黙れ!いつからそんな口を聞くようになった!私の言うことに従え!」

教祖「ゴホッ…ゴホッ!」

機械娘「教祖様!大丈夫ですか!?」

教祖「う、うむ…少々興奮しすぎたようだ」

機械娘「薬を注入させていただきます」

教祖「ああ…頼む」

バタン!

信徒「同志、奴等が武器庫を漁っています!」

機械娘「静かにしろ!教祖様の前だぞ!」

信徒「も、申し訳ありません同志」

教祖「構わん、そんなことは些細なことだ」

機械娘「どうすればいいのでしょうか…」

教祖「第二支部の支部長が元軍人だったはず。彼に指揮を執らせるのだ」

機械娘「はい。第二支部の支部長に指揮を執らせろ!」

信徒「はい同志、直ちにかかります!」

機械娘「…私も行こう」

・・・・・・・・

主人『突入準備…バイザー下ろせ』

ガチャン

主人『恐らく爆発物がある、出来るだけ発砲はするな』

主人『セミョンはディミトリとあのビルの上で見張れ』

『セミョン了解』『ディミトリ了解』

主人『ボリスはストレロクとリャダボイを二人ずつ連れて後ろに回れ』

『ボリス了解』

主人『後は私に着いてこい』

『『『了解』』』

狙撃手『セミョン、位置に着きました』

主人『よし。ボリス、準備ができたら報告を』

伍長『こちらボリス、少々草が生い茂ってまして…くそ、邪魔だ…』ガサゴソ

伍長『よし…ボリスよりアンナ、全員配置に着きました』

主人『五秒前…』

ガチャッ

ピャーチ
『пять』

チッ
チィトゥリ
『четыре』

ガシャッ…

トゥリー
『три』

チッチッチッ…

ドヴァ
『два』

アジン
『один』

ダヴァイッ!!
『давай』

『行け行け!』

『制圧しろ!』

伍長『こちらボリス、裏口を制圧!』

主人『こちらアンナ、正面には敵影なし!』

主人『フラッシュバン、行くぞ!』シュッ

バンッ!!

主人『突入しろ!』

兵士『敵影なし!』ガチャッ

兵士『クリア!』ガンッ

主人『突入から三十秒…状況を報告せよ』

伍長『こちらボリス、現在廊下を捜索中、今までに敵影なし』

狙撃手『こちらセミョン、二回を監視中。突入部隊を確認』

主人『了解、一回はクリア、二階を捜索せよ』

主人『コンスタンティン、レオニード、ミハイルは入り口を固めろ』

『『『了解』』』

伍長「中尉、人っ子ひとり居ませんや」

主人「まだ手付かずか…ツイてるな」

主人『各員バックパックに詰められるだけ詰め込んでおけ』

兵士「うげえ…この重さをしょって帰るんですか」

主人「今回の補充で武器に余裕ができればバギーの材料集めがはかどるだろう。そうすれば足ができる」

伍長「明日のために歩け!ですね」

兵士「しかし燃料はあるんで?ガソリンは貯めとくだけじゃ酸化して使い物にならなくなりますぜ」

主人「大丈夫だ…メイドのお陰で酸化防止剤が大量に置いてあった」

兵士「え!?あの子ガソリンで動いてるんですか?」

主人「いや、電気だ。発電にもガソリンが必要だからな…そのガソリンを酸化させない為らしい」

伍長「うちの国とは思えないくらいアフターサービスがしっかりしてますね」

兵士「どうせ外資系でしょうよ」

主人「あの広場でハンバーガーとジーンズが買えるようになった時にこの国の企業は変わるべきだったんだ」

伍長「ま、全てが消えちまったこの状況で今さらどうしようもありませんや」

主人「…休憩は終わりにしよう。無駄話をしてしまった」

『ザザッ…中尉!』

主人「どうした?」

兵士『祭壇のようなものを発見!』

伍長『どれどれ、うわ…』

伍長『世の中には関わらない方がいい人種がいるな。電波野郎と警官だ』

伍長『中尉、見ない方がいいと思いますよ…』

主人『無駄口を叩くな!…今行く』

伍長『俺は止めましたからね…』

主人「これは…悪趣味だな」

兵士「…神よ」

主人「この首は誰のだ?」

兵士「胴体をトイレで発見しました」

主人「この制服…連邦保安庁だな」

主人「何処の誰かは知らんが同じ公務員がやられるのはぞっとしないな」

兵士「…彼は神を信じず我らに銃を向けた。それゆえに天罰が下された…」

兵士「いずれ善と悪の戦いの果てに救世主が現れる…その時を地下に籠りて待ち望む…なんだこりゃ」

伍長「その救世主様はいつ現れるんだろうな。もう読むなよ、お前までおかしくなる」

主人「最近神が我らに使者を使わされた…金属の女神である…金属の女神?」
…」

伍長「中尉!」

主人「あ、ああ、すまん」

主人「どうやら最近指導者が変わったりで混乱しているようだな」

伍長「知りませんよ、サイコどもの事なんて」

主人「…そうだな」

『掃除アプリを起動』

メイド「ご主人様はご無事でしょうか…」サッサッ

『食器ふきを開始』

メイド「やはりどんなお仕事をされているのか、非常に気になります…」フキフキ

メイド「気になって気になって仕事が手につかない…」テキパキ

『目標を拭き掃除します』

『目標:泥汚れ パワー:弱』

メイド「ということがないのがプログラムの悲しいところですね」ゴシゴシ

メイド「…悲しい?何故私は今、悲しいなんて言ったのでしょうか」

メイド「…この感情もプログラムでしょうか…?」

女中「ちょっといい?」

メイド「ええ、構いませんが」

女中「えっと、探してる曲があるんだけどタイトルが分からなくて」

メイド「では…ハミングしてくださいますか?データベースを検索してみます」

女中「ちょ、ちょっと恥ずかしいわね…」

女中「こほんっ…~♪」

メイド「とってもお上手ですよ」ニコッ

女中「見え見えのお世辞はいいから!」

メイド「やはり分かってしまいますか」

女中「やっぱりお世辞だったのね…」ガクリ

メイド「い、いえ、そうではなく…」

女中「ふふ、冗談よ。あなたも随分表情が豊かになったわね」

メイド「私たちは人の表情を見てどんな状況でどのように筋肉を動かしているかを感知し、それを表現しています」

女中「じゃあ…あなたがそこまで表情豊かになったのはご主人様のせいなのね!」

メイド「…そうかもしれません」

メイド「まだ教わってない事が沢山あります、ご主人様…」

『音声データを検索中…』

メイド「五件見つかりました。絞り込むために冒頭を歌います…」

メイド『~♪』

女中「あ、それそれ!」

メイド「これでよろしいのですか?ちょっと古い曲ですが…」

女中「あたしじゃなくて避難民の人達が聞くんだよ」

メイド「…避難民?」

女中「あっ…、あはは…そうじゃなくて、お客様にお聞かせしてあげたいんだ」

メイド「了解しました。後程向かいます」

女中「あはは…よろしくね」


メイド「…避難する人が出るような状況なのですか…?」

伍長「まったく、さっきはとんでもないもん見ちまった」

兵士「早く忘れましょう…」

主人『全員警戒…互いに援護しながら進めよ』

主人『ボリスは二人連れて少し前に行っててくれ』

伍長『ボリス了解』

狙撃手『こちらセミョン、位置に着きました』

主人『了解、六時方向を見張れ』

主人『さ、行こう…』

主人『全員、注意して進め…』

兵士「くそ、悪い予感がしやがる…」

兵士B「滅多なこと言うもんじゃねえよ」

兵士「こんな宝の山を他の奴等が放っておくか?まだ政府の人間にも敵にも会ってねえんだぞ」

主人『口を動かす前に目を動かせ』

兵士『了解、中尉殿…』

ドンッ!!

兵士『12時で爆発!』

主人『全員散開!!』

伍長『隠れる場所を探せ!』

兵士「くそッ!何だってんだ!」


『背信者達に告ぐ!繰り返す、背信者達に告ぐ…』

『君達は包囲されている、改宗か懲罰か選びたまえ』

主人『ボリス、セミョン、誰か見えるか?』

伍長『アンナ、こちらボリス、ここからは何も見えません』

狙撃手『こちらセミョン、敵影確認できません!』

主人『全員そのまま!様子を見ろ』

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