真千早「お菓子を作る」 (9)


真「……」

千早「……」

真「千早」

千早「なにかしら?」

真「お菓子を作るんだよね?」

千早「ええ」

真「何を作る予定なのか教えてほしいんだけど」

千早「まだ決まっていないわ」

真「いっぱい材料は買ってるみたいだけど、これは?」

千早「ええ。お菓子作りに必要そうなものを全部集めたわ」

真「でも何を作るのかは決まってないんだよね?」

千早「ええ、だから手当たりしだいに買ってみたの」

真「えー」



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真「念のため訊くけど、千早はお菓子を作った事あるの?」

千早「無いわ。今日が初めてよ」

真「こういうのはボクじゃなくて春香と一緒に作ったらいいと思うんだけど」

千早「ええ。でも、春香へのプレゼントに春香の力を借りるというのは不自然でしょう?」

真「うん、それはそうだけど、じゃあなんでボクなの?」

千早「特に理由はないわ。近くにいたからよ」

真「ひどいなぁ」

千早「真は料理経験とかはどのくらいなの?」

真「あんまり……お菓子なんて作った事ないよ?」

千早「そう……」

真「そこまで落ち込まないでよ」


千早「やっぱり諦めた方が」

真「…千早」

千早「真?」

真「ここは諦めずにやろう。一緒にやったら何とかなるはずだよ!」

千早「そうね。まだ何も初めてないもの」

真「とりあえず、春香はどんなお菓子だと喜ぶかを考えてみよう」

千早「ケーキ?」

真「初めてでいきなりケーキはレベルが高すぎるような気がする」

千早「じゃあクッキーで」

真「クッキーなら簡単そうだから何とかなるかも?」

千早「ではクッキーにしましょう」



真「クッキーかぁ…春香もよく作ってくるよね」

千早「やっぱりケーキに……」

真「千早。春香のクッキーを相手に考えたらダメだよ」

千早「でも、自分のクッキーよりも美味しくないものを渡されて喜ぶかしら?」

真「味じゃないよ。こういうのはいかに心を込めたのかが大切なんだ!」

千早「じゃあ心を込めたクッキーにしましょう」

真「まずは…材料の選定から始めよう」

千早「待って、まだ大切なことがあるわ」

真「え、何?」

千早「エプロンをしないといけないわ」

真「うん、そうだね…」


真「とりあえずレシピだね」

千早「薄力粉、バター、牛乳、砂糖、塩、バニラエッセンスね」

真「一応レシピはあるんだ」

千早「前に春香が言ってたわ」

真「クッキーに塩って入れるんだ」

千早「その時春香が言ってたことをそのまま覚えているだけよ」

真「それって本当に大丈夫……?」

千早「春香の言葉を私が忘れるはずがないわ」

真「時折、千早が怖く感じるよ」


真「バニラエッセンスってボク見た事ないんだけど」

千早「残念ながら私も見た事はないわ」

真「バニラのエッセンス?」

千早「バニラエッのセンス?」

真「意味わかんないよ」

千早「バニラのエッセンスって何かしら…バニラアイスのことかしら?」

真「クッキーにアイスを入れて意味あるの?」

千早「そうかしら…もしかすると美味しくなるのかもしれないわ」

真「えー」

千早「もしかするとバなんて無いのかも知れないわ」

真「バがない?」

千早「もしかしたらニラのエッセンスの可能性があるわね」

真「ニラかぁ…たまに緑色のクッキーがあるのはニラだったんだ」


千早「はっ!」

真「ど、どうしたの?」

千早「もしかしたらバラかもしれないわ」

真「バラって……花だよ?」

千早「食べられる種類のものもあると、高槻さんが言ってた気がするわ」

真「やよい……でもバラかぁ…一応そこの花瓶にささってるけど」

千早「緊急事態よ。頂きましょう……あら、この白い花もバラかしら?」

真「それは多分鈴蘭じゃないかな」

千早「そう、じゃあ関係ないわね」

真「えっと……ニラは買いに行けばいいの?」

千早「私はニラが嫌いだから勘弁してあげましょう」

真「えー」

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