冬馬「あ、てめぇは…765プロ…」
貴音「…ジュピターの天ケ瀬冬馬」
冬馬「俺の名前覚えてたのか。確かあんたは…四条貴音だっけか?」
貴音「はい。あまり面識が無いので覚えておられないかと思いましたが」
冬馬(寿司屋のインパクトがでかすぎて忘れたくても忘れられねぇよ)
貴音「先日は大変失礼致しました。私、少々ムキになってしまいご迷惑を…」
冬馬「え?ああ、別に気にして無いぜ。席の並び的にあんたの方が先に取るべきだったしな」
貴音「ですが、あの後も私は不貞腐れあなた方に寿司が行き渡らず…」
冬馬(あれは流石にぶったまげたな…胃袋ブラックホールかよ)
貴音「立場が逆で私があのような事をされれば…怒りで我を失うかもしれません」
冬馬「そんなことで我を失うのか…」
貴音「私海よりも深く反省しております。どうかお許しください」ペコッ
冬馬「お、おい…大袈裟だな。だから気にしてないっての」
貴音「何れ機会があればお詫びの印に何か差し上げようかと思っていたのですが…生憎今は」
冬馬「しつけぇなぁ…もういいっての…」
貴音「いえ、このままでは収まりがつきません。他の御二方にもいずれ必ず」
冬馬(こいつ絶対譲らないタイプだな…仕方ねぇ)
冬馬「あー、じゃあ寿司奢ってくれよ。前と同じ店で良いからよ」
貴音「そのようなことでよろしいのであれば」
冬馬「うーん、どれにすっかなー」チラッ
貴音「……」グゥゥ
冬馬「…あんた腹減ってるみたいだが何も食べないのか?」
貴音「これは私の罪です。どうかお気になさらず…」
冬馬「じゃあまずはとりあえずハンバーグ2つ」ピッピッ
貴音「……」グゥゥ
冬馬「クリームソーダとかあれば最高なんだけどな…しゃあねえか」
貴音「……」グゥゥゥ
冬馬「うめえ!やっぱり寿司屋のハンバーグは馬鹿にするもんじゃねぇな!」モグモグ
貴音「……」ゴクリ
冬馬「次はほたてにいくら…サーモンもついでに…」ピッピッ
貴音「……」ダバー
冬馬(アイドルが涎垂らすなよ…)
冬馬「……」
貴音「……」グゥゥゥゥ
冬馬「あのよ…マジで何か頼めよ。俺も気が引けて食う気が失せちまうぜ」
貴音「いえ…これは私への罰なのです。あなた方はこの苦しみを味わったのですからこのぐらいは当然です」
冬馬(俺達の何百倍も苦しんでるように見えるぜ)
貴音「……」ダラー
冬馬「…あー、もう分かった!四条貴音、俺と勝負しろ!」
貴音「勝負…ですか?」
冬馬「大食い勝負だ!制限時間無し、より多く食べたやつが勝ち!」
冬馬「負けたやつは代金を全払い、どうだ?」
貴音「ですが…それでは償いに…」
冬馬「良いんだよ!俺はこういう方が性に合ってんだ!それとも自信無ぇのか?」
貴音「無いわけでは無いのですが…」
冬馬「フン、それとも765プロはやっぱりその程度の事務所だったってことか?がっかりだ」
貴音「…そこまで言われると引き下がれません。受けて立ちましょう」
冬馬(あー、あんまり手持ち無ぇな…足りるか?)
冬馬「もう、ダメだ…」
貴音(まだ…腹6分目なのですが…)
冬馬「ちっくしょ…俺の負けか」
貴音「や、やはりここは私が…代金の大半は私によるものですし…」
冬馬「うるせぇ!俺は負けたんだ!俺が払う!」
貴音「…先ほど申し上げた通り、私はあなたにお詫びを」
冬馬「男に二言は無いぜ!」
貴音「な、ならばせめて半額だけでも!これでは何のために…」
冬馬「あー、聞こえねぇな」
冬馬(財布が軽い…)
貴音「更に借りを作ってしまいました」
冬馬「貸しだの借りだの気にすんなよ。勝負だからそういうのは無しだ」
貴音「……」
冬馬「そんな顔しても無駄だからな。諦めろ」
貴音「…分かりました。また別の形で…」
冬馬「分かってねえだろ…それじゃまたな」
貴音「はい、ではまたどこかで」ペコッ
冬馬(あーあ、また節約しねぇと…)スタスタ
貴音「天ケ瀬冬馬」
冬馬「ん?」
貴音「本日は真にありがとうございます。中々楽しかったです」ニコッ
冬馬「…!べ、別に寿司食っただけじゃねぇか!」ドキドキ
貴音「ふふっ、確かにそうですね。それでは」
冬馬(……な、何で俺はドキドキしてんだよ)
冬馬「あ、あいつ…いつの間に俺の鞄に金入れやがったんだ…それに何か用紙が…」
貴音『私のお勧めらぁめんスポットを事細かに記しておきました。
何れ機会があれば伊集院北斗、御手洗翔太と是非足を運んでみてください』
冬馬「…ばっかじゃねーの」
翔太「へぇー、こんなところにお店があったんだ」
北斗「よく見つけられたね。冬馬ってそんなにラーメン好きだったのかい?」
冬馬「俺も今日初めて来た店だ。味の保証はしないぜ」
翔太「お、おいしい…!スープに魚介類の旨みが凝縮されてる!」ズズー
北斗「麺のコシや硬さも申し分ないよ。どうすればラーメンの美味しさが引き立つか相当研究されてる…」モグモグ
冬馬「ハフハフッ!うめぇ!うめぇぞ!最高じゃねぇか!」ズルズル
北斗「…美しくとは言わないがもう少し落ち着いて食べてくれよ」
翔太「冬馬君ってやっぱり子どもっぽいよねー」
冬馬「う、うるせぇ!こうして食べる方がうまいんだよ!」
冬馬「あー、今日のラーメン屋最高だったぜ。ありゃ嵌まっちまうな」
冬馬「あいつに礼でも…あ、メルアドも電話番号も知らねーや…」
冬馬「しゃあねぇな…諦めるか」
冬馬「……」
冬馬「そうだ!765プロの事務所に行けば良いじゃねえか!」
冬馬「…やっぱやめだ。んな事で訪問したら何て言われるか。特にあの双子」
冬馬「…って何でそこまでしなきゃなんねーんだ。ばからしい」
冬馬「前みたいに偶然出会えるかと思ったが…うまくいかねぇな」
冬馬「……」
冬馬「そうだよな、あいつはあれでも売れっ子アイドル。そう簡単には…」
冬馬「ふぅ…腹減ったな。そういえばこの辺りにもあいつお勧めのラーメン屋があったはずだ」
冬馬「おぅ!見つけたぜ!人も並んで無いしラッキー!」ガラガラ
冬馬「…あ」
貴音「む、あまふぁせふぉうまれふぁないれふか」ズルズル
冬馬「飲み込んでから喋れよ」
貴音「天ケ瀬冬馬ではないですか」
冬馬「わざわざ言い直さなくても良いと思うぜ」
貴音「以前は御馳走していただきありがとうございます」
冬馬「何言ってやがる。代金全額俺の鞄に入れやがって」
貴音「はて…何の事でしょうか」
冬馬「……」
貴音「それにしてもこのような場所で出会うとは奇遇ですね。何故ここに?」
冬馬「いや、あんたが俺にお勧めのラーメン店を書いた紙くれたんじゃねえか。だから来たんだよ」
貴音「…なるほど、そういえばあの紙も忍ばせておいたのでした」
冬馬「大体あのメモに書いてあったラーメン屋は回ったぜ。ここは初だけどな」
貴音「そうなのですか、渡した甲斐がありました。ここでの私の一押しは大豚ダブル野菜マシマシ醤油らぁめんなのですが」
冬馬「ふーん、じゃあ普通の醤油ラーメン頼むとするか。クリームソーダは…まあ無いよな」
貴音「……」
冬馬「翔太や北斗も連れて何件か回ったがどの場所もうまいって大絶賛だった」
貴音「それは私も嬉しい限りです」
冬馬「おかげで最近ラーメン食い過ぎちまって身体に悪いぜ」
貴音「そのようなことはありません!らぁめんを食べて健康を損なうなどあり得ません!」
冬馬「いや、それはあんただけだろ…普通の人間はその内調子崩すと思うぜ。俺も気のせいか最近…」
貴音「…もしやらぁめん店の紹介はいらぬお節介でしたか?」ズーン
冬馬「え!?」
貴音「……」
冬馬「い…いや!俺もうまいラーメン食えて良い調子なんだよ!この間のライブも大成功だったからな!」
貴音「なんと!らぁめんの力が早速働いたのですね」
冬馬「ああ!これもラーメンと四条のおかげだ!サンキュー!」
貴音「ふふふ、礼には及びません。これで借りを返せたというものです」
冬馬「ふー、ごちそうさんでした!」
貴音「良い食べっぷりでしたね。大変幸せそうに見えました」
冬馬「そ、そうか。北斗達にはもっと大人しく食えって言われるんだが」
貴音「そうなのですか…ですが食の形も人それぞれ」
貴音「マナーを守り周囲に迷惑を掛けなければ後は各自の好みでは無いでしょうか」
冬馬「だろ!?俺もそう思うぜ!あいつらは一々口煩いんだよなー」
貴音「…最も頬にネギをつけたままというのはどうかと思いますが」
冬馬「…マジかよ…だせぇ…」ゴシゴシ
貴音「……」スッ
冬馬「んな!?」
冬馬(ほ、頬に手が…うわぁああああ!やべぇ!!)
貴音「お取りしました。あなたもアイドルなのですからせめて顔には気を配った方がよろしいかと」クスクス
冬馬「お、おう」ドキドキ
貴音「それでは私はこれで。まだ本日の仕事を終えておりませんので」
冬馬「そうか…何か悪いな。待たせちまって」
貴音「いえ、お気になさらず。昼食の時間は余裕を持って取ってありますから問題ありません」
冬馬「なら良かったぜ」
貴音「はい、ではまた」
冬馬「あ、待ってくれ!」
貴音「何でしょうか?」
冬馬「あの…その……なんだ……」
貴音「…?」
冬馬「あー、…今度俺達のライブがあるからよ…良かったら来ねえか?」
冬馬「あんたのラーメンのおかげで調子良いから見に来てほしいんだよ。あ、無理にとは言わないぜ!暇なら!」
貴音「……」
冬馬(う…やっぱりやめときゃ良かった…いきなり何言ってんだとか思われてるだろうな…)
貴音「楽しみにしております。ですが詳しい日時が分からぬ事には何とも…」
冬馬「え!?あ、そうだよな!あー、それならメルアド交換しようぜ!また連絡すっから」
貴音「なるほど、それは良いあいでぃあです。では早速…」
貴音「それでは、またご連絡をお願いします。失礼します」
冬馬「お、おお!じゃあな!」
冬馬「うわああああああああああああああああ!」
冬馬「勢いでメルアド交換しちまった!」
冬馬「絶対怪しまれてるだろ!!!俺は何やってんだ!!」
冬馬「ライブ見に来てくれとか急に何だよ!意味分かんねえよ!ラーメンのおかげってもう…うあああ!」
冬馬「大体何で俺はこんな必死になってんだよ!ただの765プロのライバルじゃねぇか!」
冬馬「…そうだ!俺はあいつらをねじ伏せてやるために仕方なく情報を集めてるだけだ!」
冬馬「特にあの四条貴音は得体のしれねぇやつだしこの位やらないとな!」
冬馬「……」
冬馬「何てメール送れば良いんだ…今日は楽しかったです…ってバカか!!」
[TO]四条貴音
[SUB]天ケ瀬冬馬だ
ライブの詳しい日時が分かった。
丁度2週間後の18:00から駅前のライブハウスでやる。
暇なら来てくれ。無理に来なくても良いからな。
別に予定があるならそっち優先しろよ。
暇で死にそうなら来てくれ。
冬馬「3時間もメール内容考えるとか初めてだぜ…これで良いよな。うん、送信っと」ピッ
冬馬「……」
冬馬「……」
冬馬「って待っててもそんなすぐに連絡来ねぇだろ!」
冬馬「あー、風呂でも入って来るか!」
冬馬「…まだ返事来ねぇ…何かマズかったか?」
冬馬「もしかしてマジでメールするとかキモイとか思われてるんじゃねえのか!?」
冬馬「やっちまったな…くっ…もう良い寝る!!」
ブブブ
冬馬「寝てる間に返事来てるじゃねぇかっ」
[FROM]四条貴音
[SUBJECT]四条貴音です。
諸事情で返事が遅れてしまいました。
申し訳ありません。
その日は仕事が入っております故まだ分かりません。
予定通りに終わったなら恐らく大丈夫なはずです。
私としても是非見に行きたい所なのですが…。
また追って連絡致します。
冬馬「来れるかどうかは微妙か…そうか…」
冬馬「……」
冬馬「…へ、返事来たぜ!どうだ、見たか!俺だって女とメールぐらいするんだよ!」
冬馬「…誰に言ってんだ俺は…とりあえず返事……長すぎたらキモイよな…」
[TO]四条貴音
[SUBJECT]無題
了解。
冬馬「俺はこのメールうつのにどんだけ時間かけてんだ…送信」ピッ
冬馬「……」
冬馬「……」
冬馬「…だから何携帯見つめてんだよ!きめえ!」
冬馬(……ライブ当日だが結局あれから音沙汰なしか…はぁ…)
北斗「どうした冬馬?本番前なのに顔が暗いぞ」
翔太「ホントだー。もしかして緊張してるの?前はあんなに大勢の前でも歌ったのにさー」
冬馬「ば、バッキャロー!んな訳無いだろ!俺はいつでも万全の状態だ、行くぞ!」
キャートウマクーン!! ショウターカワイイー!! ホクトーホクトー!! ピギャアアアア!!
冬馬(…観客の中に…あいつはいないか…)
冬馬(いや、関係無ぇ!俺は今このライブに来てくれた皆のために全力を出すだけだ!)
冬馬「やっぱ盛り上がったライブの後は糖分が欲しくなるな」
翔太「そうだね。あー疲れた…」
北斗「あのエンジェルちゃん達の笑顔を見たら疲れなんて消し飛んだよ」
冬馬「はいはい、ちょっくら便所行ってくるぜ」
貴音「天ケ瀬冬馬」
冬馬「んなぁ!?」
貴音「ど、どうしたのですか…あられも無い声を出して」
冬馬「お、お前仕事で来れなかったんじゃないのかよ!!連絡もねぇし…」
貴音「少々さぷらいずを…と思いまして。驚いて頂けましたか?」
冬馬「当たり前だろうが!客をどんだけ探しても見当たらなかったのによぉ」
貴音「私は気配を殺していましたので。あのように人の多い場所では容易い事です」
冬馬(やっぱこいつ分かんねえ…)
貴音「それにしても素晴らしいライブでした。私感服しました」
冬馬「ん?ああ、そりゃありがとよ」
貴音「961プロ時代よりも更に腕を磨いていますね。再び我々の眼前に立ち塞がる日も近いでしょう」
冬馬「ふっ、当たり前だぜ。おっさんの時と同じ…それ以上のレッスンをしてるんだからな」
貴音「その直向きな向上心…敵ながら天晴れです」
冬馬「そ、そんな誉めても何も出ないぜ」
貴音「何よりあなた方が楽しんでいるのが伝わって来た事が私にとっては印象的でしたが」
貴音「それに以前よりも御手洗翔太、伊集院北斗と打ち解けているのでは無いのでしょうか」
冬馬「…別に仲の良さなんか前と大して変わらねぇ気がするが」
貴音「ふふ、そうかもしれませんね」
冬馬「なんだよー…」
貴音「…は!差し入れの事をすっかり忘れていました」
冬馬「差し入れ?」
貴音「はい、くりぃむそぉだというものを…即席ですが如何でしょう?」
冬馬「く、クリームソーダだと!?」
貴音「はい、お気に召しませんか?」
冬馬「大好物だぜ!お前俺の好きな食い物知ってたのか!?」
貴音「一緒に食事をした際に何度か口走っていらしたので」
冬馬「よく覚えてるな…俺そんなこと言ってたか?」
貴音「はい、確かに」
冬馬「マジかよ…まあ良いや。ありがとよ、早速いただくとするぜ!」
貴音「どうでしょうか…?」
冬馬「うんめえ!うめえよ!マジで!」
貴音「それは安心しました。見よう見まねで作ったのであまり自信が無かったのですが」
冬馬「四条って料理の才能あるんじゃねぇか?」
貴音「めろんそぉだにバニラアイスを入れて多少果物を加えただけなのですが…」
冬馬「ばっか、その配分が最高だって言ってんだ!」
貴音「そこまで誉められると少々照れくさいですが…」
貴音「嬉しいものですね」ニコッ
冬馬「……!」ドキッ
貴音「さて…そろそろ失礼致します。いつまでも長居するわけにもいきませんし」
冬馬「え……あ、そうだよな」
貴音「後のお二人にもよろしければお渡し下さい」
冬馬「……おう」
貴音「それでは」
冬馬「…じゃあな」
貴音「歌っているお姿、普段以上に凛々しく見えましたよ」
冬馬「…は?」
貴音「何でもありません。ライブお疲れさまでした」
冬馬(どうせ社交辞令だろうが…)
翔太「冬馬君ニヤニヤしててちょっとキモーイよ」
冬馬「う、うるせぇ!」
北斗「帰ってきたらこの顔だからな…冬馬まさかトイレで…」
翔太「元気注入されちゃったとか?…うん、ボクは本人が良いならそっち系でもOKだと…」
冬馬「どうしてその方向に話が転がるんだよ!んな訳ねぇだろ!」
北斗「じゃあその大事そうに抱えてる紙袋は何だい?」
翔太「確かにただの差し入れには見えないけど…まさか道具!?」
冬馬「はぁ!?」
北斗「翔太!冬馬を抑えたぞ!!」ガシッ
翔太「よっしもーらい!」ヒョイッ
冬馬「あ、バカ!やめろ!!これはお前達にはやらねぇ!」ジタバタ
翔太「……なぁんだ、クリームソーダか…そりゃ冬馬君も必死になるよね」
北斗「冬馬がそっちの人じゃ無くて安心したよ」
冬馬「ねーよ!返せこら!」ヒョイッ
[FROM]四条貴音
[SUBJECT]四条貴音ですよ。
本日はお疲れ様です。
ファンとジュピターが一体になった素晴らしいライブでした。
機会があれば是非私達のライブにもいらして下さい。
歓迎します。
差し入れ、他のお二人への評判は如何でしたか?
あなたの喜びっぷりを見ると今でも少し笑いが込み上げてきてしまいます。
冬馬「うおおおお!メール来たああああ!俺から送るべきか悩んでたら向こうから来た!」
冬馬「テンション上がるじゃねぇか!ちくしょう!そっちのライブに呼んでくれよ!」
冬馬「…そんなに俺喜んでたか?ガキ臭いと思われたかもしれねぇ…」
冬馬「はぁ…たかがメールでこんなにはしゃぐなんて俺どうしちまったんだ」
[TO]四条貴音
[SUBJECT]無題
おう、今度はお前のライブ呼んでくれよ。
暇なら行ってやるから。
あいつらも美味しいって言ってたぜ。
あと俺の反応は忘れろ!
冬馬「こんなもんか…また1時間頭使っちまった。あいつらには差し入れあげてねぇけど送信っと」ピッ
冬馬「……」
冬馬「何だこの妙な感じ…あいつのこと考えると…」
冬馬「…まさか俺は…」
冬馬「……」
冬馬「いや、違う!俺はただ情報を…」
ブブブ
冬馬「きたあああああああああああ!メールゲッチュ!…添付ファイル?」
[FROM]四条貴音
[SUBJECT]四条貴音ですが…。
はい、次回のライブが開催される時は連絡致します。
予定が合えば良いのですが…。
そうですか。安心しました。
あの反応は忘れようにも…忘れられませんね。
新たに見つけたこのらぁめん屋…素晴らしかったです。
冬馬「連絡、絶対連絡しろよ!予定なんかこじ開けるもんだろ!」
冬馬「俺の事忘れようにも忘れられないだと!?」
冬馬「そして…この写真…店前でピースしてる四条…」
冬馬「うおおおおおおおおおサンキュー、ラーメン!」
冬馬「落ち着け…一回冷静になれ…俺」
[TO]四条貴音
[SUBJECT]ラーメン良いな
連絡よろしく頼むぜ。
俺も寿司事件は忘れたくても忘れられねぇ。
このラーメン屋うまいのか?
俺も行ってみたいぜ!連れてってくれよ!
冬馬「これ…ごく自然な感じだよな?おかしくないよな?」ドキドキ
冬馬「……いっけええ!」ピッ
冬馬「……」
冬馬「やっちまったあああ!!絶対1人で行けって思われてるだろこれ!!」
冬馬「連れてってって何だよ!!場所教えてもらうだけで良いだろうが!」
ブブブ
冬馬「メールを見るのが…怖いぜ…」チラッ
[FROM]四条貴音
[SUBJECT]四条貴音だったりします!
お互い忘れられぬのですね。
これはつまり私達の間に深い繋がりが出来たと…。
はい!こちらもお互いの予定が合い次第行きましょう。
このらぁめんの虜になること間違いないです。ふふふ。
冬馬「……」プルプル
冬馬「っしゃあああああ!!オラァ!!!」
冬馬「深い繋がり…はい!俺死んだぜ!俺今死んだ!」
冬馬「予定?合うに決まってんだろ!!どうだ!!俺だってデートに誘うぐらい出来るんだよ!」
冬馬(集合時間の12時まで後30分…流石に早すぎたか)
貴音「……」
トントン
冬馬「あ?」クルッ
冬馬「…!よ、よぉ」
貴音「こんにちは。まさかこの時間に来ているとは思いもよりませんでした」
冬馬「いや、俺も今来たところだからよ」
冬馬(人生でいっぺん言ってみたかった台詞!たまんねぇ!!)
貴音「安心しました。長い間待たせてしまったのではないかと…」
冬馬「そ、それより行こうぜ!腹減って死にそうだ!」
貴音「…何やら顔が赤いですが大丈夫ですか?体調が優れないのなら別の機会にでも…」
冬馬「べ、別に健康体だっての」
貴音「ふむ…では失礼」ピトッ
冬馬「なっ、なっ、なっ…き、急に何だよ…俺の頭がどうかしたのか?」
貴音「…やはり体温がやや高いようです。本日はもうお止めになった方が…」
冬馬「お、俺平熱が高いんだよ!全然平気だ!!早く行くぞ!」
貴音「…確かに顔色以外は別段問題は無いように見えますね。向かいましょうか」
冬馬(うわぁあああああ、触られた!!っらあああああああ!恋をはじめよう!!)
貴音「なんと美味なのでしょう…はぁ…」モグモグ
冬馬(やべぇ…普段の凛とした雰囲気とのギャップが…)
貴音「この至福の時にもはや多くの言葉は必要無いでしょう…」チュルル
冬馬(可愛いな…おいしそうに飯食う姿って悪くないじゃねぇか)
貴音「……あの…先ほどから箸が進んでいないようですが」
冬馬「!!あ、あまりにうますぎて!感動の余韻に浸ってたんだ!」
貴音「その気持ちも分かります…ですが冷めて麺が伸びてしまえば美味しさは半減です」
貴音「出来れば今の状態で食して欲しいのですが…」
冬馬「わ、分かってるっての。そんな悲しそうな顔すんなよ」
冬馬「やっぱうめぇ!お前うまいラーメン屋見つける天才だな!」ズルズル ズズー
貴音「好きこそ物の上手なれ…です」モグモグ
冬馬「それ意味合ってるか?」フーフー
貴音「言葉とは大意が伝わればそれで良いのです」ズルズル
冬馬「ごっそさん!」
貴音「御馳走様でした。真美味しゅうございました」ニコニコ
冬馬(うっ…この笑顔がたまんねぇ……ってここではい、さいならじゃ進展しねぇ)
貴音「さて…私達の目的も果たした所で」
冬馬(言え!俺…!言うんだ!!ここで!言え!)
貴音「今日の所は」
冬馬「ちょ、ちょっと待てよ!」
貴音「?」
冬馬「丁度映画のチケット2枚北斗に貰ったからさ!一緒に見ようぜ!」
冬馬(と、隣に座られると…緊張するぜ…肘掛は使わない方が良いよな…)
貴音「……」ボリボリ
冬馬(何か良い匂いがする…これが貴音の香りか…)
貴音「……」モグモグ
冬馬「……」チラッ
貴音「……」バリボリ
冬馬(…良い)
ビー
貴音「始まりましたね」モグモグ
ミ、ミナイデエエエエエエエエエエエエ
冬馬(人気の映画何でも良いっつったらまさかのホラー映画かよ…!)
冬馬(俺苦手なんだよ…だせぇとこ見られたら…)チラッ
貴音「め…面妖な…」プルプル
冬馬(目瞑って震えてる!何!?ホラー苦手なのか!?)
キャアアアア コカンニナニカガ
貴音「……」ビクビク
冬馬(ビビってる!超ビビってる!音だけなのに!)
ギャオオオオオオオン
貴音「……」ハッシ
冬馬(手…!!手握られた!!うおおおおおお!!)
冬馬(柔らかい!スベスベ!あったかい!!手小さい!!)
冬馬「な、中々面白かったじゃねぇか」
貴音「…天ケ瀬冬馬のいけず」
冬馬「ぇ」
貴音「あのような映画を見せるとは…どういうつもりなのですか…?」
冬馬「いや…その、お勧め映画って言われたからよ…」
貴音「もう少し考えて下さい…映画を見終える頃には日は落ちているのですよ」
冬馬「あ…ま、まあ別に大丈夫だろ。人通りも少ないわけじゃねぇし」
貴音「…駅まで送ってください」
冬馬「…!!お、おうよ!!」
貴音「……」クイッ
冬馬(俺の服掴んでる!頼りにされてる!!)
貴音「……」
ワオーン
貴音「…!!い、犬の鳴き声ですか」ビクッ
冬馬「ビビりすぎだろ…あんたのイメージ丸つぶれだぜ」
貴音「誰にでも苦手なものはあるというもの…どうしようもありません…」
ヒュウウウウ
貴音「!!…か、風の音でしたか」
冬馬「何か今更ながら、すげえ申し訳ない事したような気がする」
冬馬「着いたぜ」
貴音「…ありがとうございます」
冬馬「ちゃんと家帰れるんだろうな?」
貴音「はい、ご心配なく」
冬馬「そうか、まあ困ったら連絡しろよ。た、た、た、た、」
貴音「た?」
冬馬「た、貴音」
貴音「……」
冬馬(な、何か難しい顔してる…名前呼びは早すぎたか!?)
貴音「はい、頼りにしていますよ。冬馬」
冬馬「お、おう!!任せな!」
[TO]四条貴音
[SUBJECT]今日は悪かった
ちゃんと家帰れたか?
せっかく店紹介してもらったのに、嫌な思いさせちまったな。
悪かった。
また今度埋め合わせはするから。
あ、ラーメンは最高だったな!
[FROM]四条貴音
[SUBJECT]四条貴音…です…。
心を無にして帰りました。
はい、今後二度とあのような事はしないで欲しいです。
埋め合わせはらぁめん5杯で勘弁しましょう。
ふふふ、そうでしょう。冬馬にも素晴らしさが伝わったようですね。
以前は豚骨を食したのですが、今回の味噌もまた素晴らしかったです。
それと今日一日冬馬の歯に葱がついておりました。
冬馬「ネギ……うわああああああああ」ガンガン
冬馬「あー、今日も疲れたぜ!さっさと家に帰って…ん?」
冬馬「あ、あれは765プロのプロデューサーと…」
冬馬「貴音!?」
貴音「…?」
冬馬(ヤベッ)
P「どうした貴音?」
貴音「…いえ、何でもありません。あなた様」
冬馬「何で俺は逃げたんだ…逃げる必要なんてどこにも…」
冬馬「…貴音のやつ楽しそうな顔してやがったな」
冬馬「……」
冬馬「…プロデューサーとアイドルだし一緒にいるのは当然じゃねぇか」
冬馬「ははは!」
冬馬「……クソッ、何でイラツクんだ」
[FROM]四条貴音
[SUBJECT]四条貴音でした。
ライブの日時が決定いたしました。
丁度一月後の18時から海の公園近くの会場で行います。
765プロでは無く私の…ですが。
良ければいらしてください。
冬馬「っしゃああ!!行くに決まってんじゃねぇか!ソロライブだと尚更な!」
冬馬「1カ月も待つのが辛いぜ!」
[TO]四条貴音
[SUBJECT]分かった
予定がまだ分からねぇ。
行けたら行く。
当日また連絡する。
冬馬「良し、これならがっついてる感もねぇ」ピッ
冬馬「俺も差し入れしねぇとな!何にすっか…」
冬馬「今日の服は…俺の一押し!赤チェックだぜ!」
冬馬「あー、興奮しすぎて眠れないなんてガキじゃあるめぇし」
冬馬「あー、どんな衣装でくるんだ!?」
冬馬「何歌うんだ!?フラワーガールか?風花か?まさかのオーバーマスターソロverか!?」
冬馬「あなたがすっき♪」
冬馬「とか生で言うのかあああああああああああああ!?」
冬馬「テンション上がってきたああああああ」
[TO]四条貴音
[SUBJECT]ライブ
今日は暇だから行くぜ。
冬馬「送信…」
冬馬「待てよ…これはこの間の仕返しに俺も…」
冬馬「ふふふ、やっぱやめとくか」
冬馬(人多すぎ…観客側になるとやっぱ違うな)
冬馬(あー、開演5分前…ここまで長かったぜ…)
冬馬(サイリウムもタオルも予習も完璧!後はぶっ倒れる直前まで楽しむだけだ!)
冬馬「うおおおおおお、たかねええええええええ!!」
冬馬「うおおおおおおおおおお!!」ブンブン
冬馬「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」ブンブン
冬馬「ハーイ!ハーイ!ハイハイハイ!」ブンブンブンブンブン
冬馬「ウォォォォ!ハイ!ウォォォォ!ハイ!」ブン ブン
冬馬「ふぉおおおおおおおおおおおお!」ブンブンブン
ガッ
冬馬「あ、スイマセン」
冬馬「フォフォフォフォ!」ブンブンブン
冬馬「フフゥ!フフゥ!フフゥ!」
冬馬「いええええええええええええい!」ブンブンブン
冬馬「ふぅ…いいステージだった。掛け値なしに」
冬馬「ったく何であんなに歌うまいんだよ!」
冬馬「あの如月千早の蒼い鳥まで自分の歌にしちまうし…すげぇぜ!」
冬馬「けしからん衣装まで着やがって!全く最高だぜ!」
冬馬「俺が来たって気付いてるかなあいつ…」
冬馬「貴音のことなら『すべてお見通しです』とでも言いそうだぜ」
冬馬「よしっ!ちょっと顔見に行くか!この差し入れを持って…」ドキドキ
冬馬「夢の中で また包んで~♪」
冬馬「あー、ちょっと緊張してきたぜ。喜んでもらえると良いが…」
冬馬(ん?ちょっとドアが開いて…)コソッ
P「良くやったな、貴音!」
貴音「私の力だけではありません。ライブスタッフや応援して下さる方々…そしてあなた様がいたから最高のライブになったのです」
P「おいおい、俺は大したことはしてないぞ。一番頑張ったのは他の誰でも無い貴音だ」
貴音「いえ…あなた様が側にいたから私は今回も最後まで全力でやり通すことが出来たのです」
P「そう言われると照れくさいが…ありがとうな。貴音も可愛くて美人で最高だったぞ」
貴音「そ、そのような事をおっしゃられると…私は…」モジモジ
P「だって事実だろ?」ナデナデ
貴音「…あなた様はいけずです。また私をからかって」カァー
P「からかってないって。それより顔が真っ赤だぞ、疲れで熱でも出たのか?」ピトッ
貴音「ぁ…ぅ…」
P「ふむ…やっぱりちょっと熱っぽいかな?」
貴音「…あなた様」ギュッ
P「うおっ!?急にどうした!?」
貴音「お、お返しですよーだ」
冬馬「……」ダダッ
冬馬「そうか…俺なんか眼中に無かったんだ」
冬馬「ははっ、そりゃ当然だよな。何度か飯食ったぐらいで何舞い上がってたんだ…」
冬馬「男として見られてたかどうかも怪しいぜ」
冬馬「ばっかじゃねぇの…マジで」
冬馬「こんなんだから北斗や翔太にも…」
冬馬「……」
冬馬「あー、やめだやめだ!あいつはただの敵、それだけだ」
冬馬「向こうも俺の事をそのぐらいにしか思ってくれてねぇだろうしな」
冬馬「……」
冬馬「あのプロデューサーか…確かに良い奴だな」
冬馬「……」
冬馬「クソッ…ちくしょう…!」グスッ
[FROM]四条貴音
[SUBJECT]四条貴音だぞー!
本日は何か予定が入っていたのでしょうか?
今回のライブは自惚れかもしれませんが私の持てる力を十二分に発揮できたと思います。
冬馬にも是非見ていただきたかったです。
よろしければ、再びライブを開催する際はご連絡しますが。
冬馬「……」
[TO]四条貴音
[SUBJECT]無題
そうか、それは良かったな。
連絡は別にしなくて良い。俺はあんたと馴れ合うつもりは更々無い。
冬馬「これで良いんだ…これで…!」
[FROM]四条貴音
[SUBJECT]馴れ合い…ですか。
そうですか…。承知しました。
私だけ招待されたままなので冬馬にも私のライブを…と思っていたのですが。
話は変わりますがまた新たならぁめん屋を見つけたのですが…今度如何ですか?
[TO]四条貴音
[SUBJECT]無題
ラーメンなんか1人で食いに行けるだろ。
そういうのが馴れ合いって言ってるんだよ。俺たちは敵同士なんだ。
冬馬「……」ピッ
冬馬「あー…こういう所がダメなんだろうな俺」
冬馬「…もうどうでもいいか。寝て何もかも忘れちまおう」
ブブブ
冬馬「…あ、メール来てるな…もう見たく…無ぇや。消去…っと」ピッピッ
ブブブ
冬馬「またあいつ…」
[FROM]四条貴音
[SUBJECT]四条貴音…です…。
美味しいくりぃむそぉだとらぁめんが出てくる店を見つけました。
冬馬なら喜ぶと思うのですが。
今度御一緒しませんか?
冬馬「プロデューサーとでも行けば良いだろ…」
冬馬「それとも好きだからそんなの恥ずかしいってか?」
冬馬「……」
冬馬「もうこれからメールが来ても何もしないで良いか…」
冬馬「返事するのも内容見るのもきついぜ…」
冬馬「…それなら着信拒否…か」
冬馬「……」
冬馬「あ…」
貴音「…お久しぶりです」
P「お、お前は天ヶ崎竜馬じゃないか!こんなところで出会うなんて!」
冬馬「……」
P(あ、あれ?)
貴音「私達これかららぁめん屋に行くつもりなのですが…」
冬馬「……」
P「そうだ、一緒にどうだ?」
冬馬「行かねえよ。あんたらと遊んでる暇は無い。じゃあな」スタスタ
貴音「……」
P「相変わらずツンツンしてるなぁ。…どうした貴音?」
貴音「いえ…」
冬馬(はぁ…相変わらず仲良しごっこが好きなんだな。765プロは)
冬馬「…何か最近調子が今一だ」
冬馬「こんな時はやっぱサッカーでストレス解消に限るぜ」
貴音「……」
冬馬「何でこんなところにいるんだ…ほとんど誰も来ねぇグラウンドだってのに」
貴音「御手洗翔太、伊集院北斗に冬馬の最近の動向を教えてもらったので」
冬馬「あいつら…」
貴音「…何故、ですか?」
冬馬「は?」
貴音「何故…そんなにも冷たく…」
冬馬「……」
貴音「…理由も分からずに……あまりに辛い…」
冬馬「…俺は元から馴れ合いなんか大嫌いなんだよ」
貴音「では、何故以前は私と共に食事をして下さったのですか…?」
冬馬「……」
貴音「何故私をライブに招いてくれたのですか…?」
冬馬「そんなのは…ただの気まぐれだ」
貴音「私にはそうは思えません」
冬馬「あんたに…俺の何が分かるんだ」
貴音「確かに私は今はまだ冬馬の事をほとんど何も分かっていないでしょう」
貴音「ですが…だからこそより深く知りたいと思う相手と友人になるのではないですか?」
冬馬「それが…嫌なんだよ。友達…だとか仲間だとか…」
貴音「……」
冬馬「もう…俺に関わらないでくれ」
貴音「え…?」
冬馬「正直うんざりだ。あんたと顔を合わすのも」
貴音「そうだったの…ですか…」
冬馬「ああ、俺たちはただの敵同士。会話はステージの上だけで十分だ」
貴音「…分かりました。最後に渡しておきたいものがあります」
冬馬「…何だよ」
貴音「最近冬馬の調子が優れないとのことで…くりぃむそぉだを…」
冬馬「……いらねぇ」
貴音「そう…です…か…」
冬馬「…ああ。あばよ」
冬馬「あれから1週間経つが…どんどん罪悪感が増してく…」
冬馬「もう…最低すぎるぜ。何もかも…」
北斗「全く最低だぞ。女性を悲しませるなんて…それも俺達が以前迷惑をかけたエンジェルちゃんに」
冬馬「…は?」
翔太「そんなんだから冬馬君は冬馬君なんだよ」
冬馬「な、何でお前らが知ってるんだよ!?」
北斗「そりゃ何があるか気になって見に行ったからに決まってるじゃないか☆」
翔太「急に貴音さんに冬馬君のこと聞かれたら…もう尾行するしかないじゃん」
冬馬「ああああああああ!!くそおおおおおおお」
翔太「結構きついこと言うよねぇ。ちょっと驚いちゃったよ」
冬馬「……ああ、俺は最悪の糞野郎だ。自分でもビックリするぐらいのな…」
翔太「じゃあ謝っちゃえば良いじゃん。ごめんなさいって」
冬馬「…簡単に言ってくれるじゃねぇか」
北斗「好きな相手だから余計気まずいんだろ?」
冬馬「ああ…」
冬馬「ってはあああああああああああああああ!?」
翔太「え?好きじゃないの?」
冬馬「は?は?意味わかんねぇ!どうしてそうなんだよ!!」
北斗「今まで相手までは分からなかったけど好きな人がいるって事は丸分かりさ☆冬馬の行動を見ればね」
翔太「えー、北斗君知らなかったの?冬馬君が貴音さんのライブに行った事」
北斗「ライブは知らなかったな。…つまり冬馬は好きな子猫ちゃんほどいじめたくなるタイプだろ?」
冬馬「……」プルプル
翔太「つまり…失恋して」
北斗「逆切れしてるって訳だね」
冬馬「ああ…」
翔太「擁護しようが無いよ…」
北斗「うん…正直フォロー出来ない…」
冬馬「うっせえ!そんなの分かってんだよ!!」
翔太「…ここまでしちゃったなら告白しかないね」
北斗「ああ。自分の誠意を見せるしかない」
冬馬「こ、告白だと!?」
翔太「だってそうでしょ?貴音さんはいきなり訳も分からずこんなことされたんだから」
北斗「自分の気持ちを包み隠さず話すのが今出来る唯一の償いだと思うよ」
冬馬「……」
翔太「冬馬君はこのままでいいの?本当にそう思ってる?」
北斗「自分の気持ちも伝えず、相手を傷つけたまま終わりで本当に良いのか?」
冬馬「……俺は……俺は……」
冬馬「俺は常に…真っ向勝負だ!どんな事でもな!そんな終わりで良いわけねぇだろうが!!」
翔太(うわぉ、あっさりのってくれた)
北斗(ちょろすぎるな)
翔太(どうなっても楽しそうだね)
ごめん 一時間弱席外す
保守してくれたら有難い
[TO]四条貴音
[SUBJECT]無題
あんな事言っといて虫が良すぎるのは分かってる。
だけどお前にどうしても直接伝えたい事がある。
1週間後の俺達のライブに来てくれ。場所と時間はあの時と同じだ。
ライブ後に…話す。
冬馬「……」
冬馬「……」ピッ
冬馬「…後は…俺が出来る事をするだけだ」
冬馬「…来てくれたのか。返事が無いから来てくれないかと思ったぜ」
貴音「…はっきり申しますと…実はこの場に来たくはありませんでした」
貴音「あのような事があった後で…私は本当にこの場に来て良いものなのか…それさえも不安でした…」
冬馬「だろうな…」
貴音「ですが…私も冬馬とこうして話したかったのもまた事実」
貴音「あなたが私にどうしても伝えたい事…とは一体」
冬馬「……」
貴音「……」
冬馬「愛してる、愛してるいつか未来で。僕が君に誓うから」
貴音「…『恋をはじめよう』…ですか?今日のライブでも歌っていた…」
冬馬「……」スー
冬馬「俺は…貴音、あんたが好きだ」
貴音「……」
冬馬「……」
貴音「…それは真ですか?」
冬馬「ああ、あんな事言った後に何言ってるんだと思うかもしれねぇが…」
冬馬「冗談でも何でも無い。本気だ」
貴音「…私も…冬馬の事は」
冬馬「いや、違う。俺の好きとお前の好きは全く違うんだ。分かってる」
貴音「……」
冬馬「だけど…言わなきゃ俺の気が済まない。言わせてくれ」
貴音「……」
冬馬「貴音、俺と付き合ってくれ」
貴音「……」
冬馬「……」
貴音「…冬馬の気持ちを知ることが出来てとても嬉しいです。そして私などを選んでくれてありがとうございます」
冬馬「……」
貴音「…ですが…私では冬馬の気持ちに応える事が出来ません。申し訳ありません…」
冬馬「そう…か…」
冬馬「……」
冬馬「…なんてな!なーに暗い顔してんだ!俺の完璧な演技に引っかかったな!」
貴音「はい?」
冬馬「ハハハ、自分でも驚きだぜ!あの四条貴音も騙されるぐらいだからな!」
冬馬「ドッキリ大成功!ってか」
貴音「……見事に騙されました」
冬馬「腹痛いぜ!貴音の鳩が豆鉄砲食らったみてぇな顔、中々拝めねぇぞ」
貴音「……」
冬馬「…あー、ホント。笑いすぎて泣けてきやがったぜ」
冬馬「…色々悪かったな。酷い事言っちまって」
貴音「いえ、気にしておりません。何か事情があったに違いが無いのですから」
冬馬「貴音は…優しすぎるな。程々にしといた方が良いかもしれねえぜ」
貴音「どういう意味でしょうか…」
冬馬「…世間には身の程知らずなバカがいっぱいいるって事だ」
貴音「……」
冬馬「さてと…言いたい事も全部言えたし、解散だな」
貴音「…本来なら最初に言うべきでしたが」
冬馬「ん?」
貴音「本日のステージも素晴らしかったです」
冬馬「…へっ!当然だろ」
冬馬「あー、あと…最後に一言、逃げるんじゃねぇぞ」
貴音「逃げる…とは?」
冬馬「飯に誘うなら俺なんかよりも一緒に食いたい奴がいるんじゃねぇか?」
貴音「…!」
冬馬「俺みたいに逃げたら碌な事にならねぇからな。ぶつかっていけ」
貴音「…ふふっ、あの方から逃げているように見えるのですか。私もまだまだですね」
冬馬「…精々頑張るんだな」
貴音「分かっています。あの方は皆に好かれていますから」
冬馬「…じゃあな、他の連中に絶対負けんなよ!!絶対にな!」
貴音「冬馬」
冬馬「あ?」
貴音「ありがとうございます」ニコッ
冬馬「っ…」プイッ
冬馬「あぁ…!」グスッ
P「あー、一体何なんだ…」
貴音「どうしたのですか?」
P「いやな、いきなり冬馬君に『貴音を悲しませたら俺が殴る』とか言われてさ」
P「まず悲しませるの意味が分からんし…仮にそうなっても彼が俺を殴る理由も分からないし…」
貴音「私を悲しませる人にあなた様は見えたのでしょう。もっと私を大切にしてください」
P「大切にしてるぞ!765プロのアイドルは皆俺の大事な仲間だ!」
貴音「…あなた様はいけずです」
P「何故」
P「そういえば前に貴音のライブに行った時差し入れ渡すの忘れてたとか言ってたぞ」
貴音「冬馬…やはり来てくれていたのですか」
P「んでこれを貴音に渡してくれって頼まれたんだが」
貴音「何でしょうか…中々大きな物ですが」ガサガサ
冬馬「あー、お前らいつまで言ってるんだよ!」
翔太「だってあの楽屋裏戻ってきた瞬間の冬馬君の男泣き!結果は分かってたのにさー」
北斗「人はああいう経験を経て成長していくんだから恥ずかしい事じゃないさ☆」
冬馬「う、うるせぇ」
翔太「でもあの手作りフィギュアを渡したんでしょ?手渡しじゃ無いにしてもその勇気はすごいね」
冬馬「その言い方明らかにバカにしてるだろ」
北斗「それも1週間であのクオリティ…ある意味尊敬に値するよ」
冬馬「前作ってたやつベースにしたから完成が早かっただけだ!勘違いすんな!」
翔太「好きな人と恋敵のウェディングフィギュアってのもどうかと思うなー」
冬馬「もう、俺は気持ちを吐きだしてふっきれたぜ。後はあいつが幸せなら満足だ」
北斗「うん、冬馬は少しだけ大人になったのかな」
翔太「1ミリぐらいね」
冬馬「なんだと、このチビ」
貴音「こ…これは…!」
P「何だった?」
貴音「み、見てはいけません!とっぷしーくれっとです!」
P「えぇー、見せてくれよー」
貴音「…強いて言うなら…私とあなた様の未来が描かれた物…ですね。これ以上は言えません」
P「占い本か何かか?」
貴音「その時が来れば…あなた様にも見せてさしあげます」
P「その時?」
貴音「私、皆には負けませんから!」
P「…うん!何か良く分からんが頑張れ!」
貴音(冬馬、きっとあなたなら…素晴らしい人に出会えるはずです)
765プロライブ
冬馬「いええええええええええええい!」ブンブンブン
冬馬「お前ら、この後楽屋裏に行くからな!今回のフィギュアは力作だぜ!」
翔太「あ、うん…ドンビキだよ。本人だともっとヒクんじゃないかな」
北斗「これで何個目だ…流石に迷惑じゃないか?正直神経を疑うレベルだぞ…」
冬馬「何言ってやがる!そんなはず…あ!貴音が俺を見たぞ!手振ってくれたぜ!」
翔太「…なんだか別の方向にもふっきれちゃったよ」
北斗「本人が幸せなら良いのかもしれない…多分ね」
冬馬「うおおおおおお、たかねええええええええ!!」ブンブン
終わり
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