千早「ヘラヘラして……」(475)
P「んっ、何か言った。千早ちゃん?」
千早「……いえ」
P「あららら、何だか不機嫌そう」
千早「それより、プロデューサー、今日の仕事は」
P「んっと、今日は歌の収録だね」
千早「そうですか……」
P「いつものようにバッチリと決めちゃってちょうだい」
千早「はい」
P「嬉しくないの、久しぶりの歌の仕事なのに」
千早「そういうわけではありません」
P「だって、そんな顔してるからさ。怖いよ?」
ツンッ……
千早「っ! やめてください!」
P「っと、あぶないあぶない」
千早「プロデューサー、前から思っていましたけど私に対して馴れ馴れしいです」
P「そうかなぁ?」
P「これも俺なりの千早ちゃんとの交流なのですよ。なんたって、アイドルとプロデューサーに必要なのは信頼関係だからね」
千早「プロデューサー。私がプロデューサーと組んでいるのは仕事だからです」
P「うん、そうだね」
千早「決して、プロデューサーと親しい仲になるためではありません」
P「ごもっともな話で……」
千早「私にとってはプロデューサーは、頂点に行くために必要な手段でしかありません」
P「はっきり言うね。まぁ、その通りだけどさ」
P「ようするに、もっとドライになれってこと?」
千早「はい。それが私たちの正しい距離のはずです」
千早「お互い、深入りはされたくありませんよね?」
P「まぁ、誰にだってそういう部分はあるね」
千早「はい。だから、プロデューサーの馴れなれしい態度は嫌なんです」
千早「私の中にズカズカと無遠慮に入ってこられて」
P「ふむ……」
P「千早ちゃんの言いたいことは分かったよ」
P「でも、それって千早ちゃんの理屈だよね?」
千早「えっ……」
P「千早ちゃんは、アイドルとプロデューサーに対してこう考えている。それ自体は理解したよ」
千早「でも、納得はしていないと?」
P「そういうことだね」
P「アイドルがたった一人で成功することは、まず無理だよね?」
P「現に、千早ちゃんが埋もれていたわけだし」
千早「くっ……・そんなことはわかっています」
千早「だから、プロデューサーの力が必要なんです」
P「そう、俺も千早ちゃんを頂点につれていくために出来る限り力を貸したい」
P「そのためには互いをよく知るべきなんだよ」
千早「だから、プロデューサーと馴れあえと……」
P「どうして、そうひねて捉えちゃうかなぁ。もっと簡単に考えなよ」
P「何も最初から全部話せっていっているわけじゃないんだ」
P「千早ちゃんが俺に言える範囲で言ってくれればいいよ」
千早「でも……」
P「わかった。じゃあ、こうしよう」
P「いずれ人気がでたら、記者とかにつっこまれたこと聞かれたりすると思うんだ」
P「そういう時に、しっかり自分の言葉で話せなきゃダメなわけだから」
P「今のうちから誰かに自分の想いを吐き出す練習だと思ってさ」
千早「はぁ……そうですか」
P「分かってくれた?」
千早「理解はしました。でも、納得はしていません」
千早「でも、プロデューサーの言うことにも一理あると思います……だから」
千早「プロデューサーと馴れなれしい態度も、我慢します」
P「ありがとう、千早ちゃん」
P「じゃあ、話もまとまったし収録にいきますか」
千早「はい、そうしましょう」
P「うん、いい顔になってる」
千早「自分ではわかりません」
P「じゃあ、マシな顔になってるで」
千早「その言い方はむしろ悪いと思います……」
P「正直に言っただけだよ」
千早「ふふっ、それもそうですね」
スタジオ
千早「プロデューサー!」
P「なになに、どうしたの千早ちゃん?」
千早「歌、録り直させてくれませんか!」
P「そりゃ、またどうしてさ。聞いている分には、特に問題がなかったと思うけど」
千早「ダメなんです。今のままじゃ……あと少し、あと少しでこの歌は完成するんです」
千早「お願いです、プロデューサー。スタッフの方に頼んでくれませんか」
千早「納得するまでやりたいんです」
P「ふむ……」
千早「プロデューサー……」
P「ダメ」
千早「どうしてですか!」
P「時間……これ以上はスタジオに迷惑がかかるからね」
千早「そんな、向こうだっていいものを作りたいはずです!」
P「そうだね。でも、時間は守るべきだよ」
千早「そんなもの!」
P「ねぇ、千早ちゃん」
千早「何でしょうか」
P「千早ちゃんは、学校の提出物……宿題とかの提出期限は守ってる?」
千早「それは、もちろんですけど」
P「それは、どうして?」
千早「それは、期限を守るということが当たり前だからです」
P「何だ、わかってるじゃないの。だったらさ……」
千早「宿題と歌を一緒になんかしないでください」
P「一緒だよ~、俺からしてみればさ」
P「宿題にしろ、歌の収録にしろ、期限までにやれなきゃ、それはいけないんじゃないの?」
千早「……」
P「ハッキリ言ってさ。じゃあ、なんでこの収録の時間内に決められなかったの?」
千早「それは……」
P「つまり、それが今の千早ちゃんの限界ってことだね」
千早「……っ!」
P「そんな怖い顔しないでくれよ。俺の言葉が気に入らないのはわかるけどさ」
P「俺にそんな風に言われたくないなら、次からどうしなきゃいけないかわかっているよね?」
千早「……」
P「千早ちゃん!」
千早「はい……」
P「うん、じゃあ戻ろうか」
千早「……」
P(ヤッベー、超暗い顔してるよ。言い過ぎたかも……)
P(でも、あのまま駄々をこねられてもどうしようもないわけで)
P(マズイよ、これは。今後の仕事に影響しかねない)
P(千早ちゃんって、自分の感情を押し殺そうとする節があるけど……)
千早「……」ズーン
P(ぶっちゃけ、出来てないんだよなぁ。空気っていうかオーラっていうか、そういうのが出てる)
P(その辺、まだ子供だよね……ダメだよ、隠すならしっかり隠さなきゃ)
P(何とかフォローしないとね)
千早「プロデューサー」
P「んっ……どうしたの?」
千早「今日は、すみませんでした」
P「何が?」
千早「私、わがままを言って」
P「千早ちゃんの気持ちはわかるよ。でもさ、千早ちゃんは仕事としてやってるわけだからさ」
千早「しょうがない……ということですか」
P「そゆこと」
千早「はぁ……上手くはいかないものなんですね」
P「だね……」
P「今は耐えるしかないよ」
千早「それしかありませんね」
P「石の上にも……何年だっけ?」
千早「三年ですね」
P「そうそう、それそれっ!」
千早「でも、プロデューサー。私、三年も待っていられません」
P「ハハッ……違いないね」
千早「笑い事じゃありません」
P「わかってるよ。俺だって、そんなに時間かけたら社長に何言われるか……」
P「千早ちゃんはどれくらい待てる?」
千早「私ですか?」
P「そうそう」
千早「そうですね。具体的な数字はともかく、待つのは短い方が」
P「いいに決まってるか」
千早「はい」
P「なるほどね。そうなると、ばんばん仕事こなして有名にならないとね」
千早「仕事の方、お願いします。プロデューサー」
P「りょ~かい。ダブルブッキングしちゃうくらいに取ってきてあげるよ」
千早「それは、どうかと思います」
P「それくらいの気持ちで臨もうってことだよ」
千早「はい……」
千早「あの……プロデューサー」
P「うん?」
千早「確かに私は、仕事をお願いしましたけど」
P「うん」
千早「どうして、水着の撮影なんですか」
P「う~ん」
千早「ごまかさないでください」
千早「どうして私がこんな……」
P「手っ取り早くファンを獲得するためには、これが一番かなってさ」
千早「私は……」
P「うんうん、歌を中心に活動したいんだよね」
P「でもさ、人気もないうちに歌中心に売り出しても聞いてくれる人が少ないだろうから意味がないよ」
P「想像してみなよ。知名度がないせいで、千早ちゃんのCDがショップで埃被る様を」
千早「……」
P「多くの人に聞かれず、ひっそりと消えていく」
P「嫌でしょ。自分の努力が否定されたみたいでさ」
千早「はい、歌がかわいそうです」
P「同じ労力かけるなら、売れる方がいいに決まってる」
P「でも、売れるためには人気が必要で」
千早「その人気を得るためにこれですか」
P「そのとーり。この活動は、千早ちゃんの歌に繋がっているんだよ」
千早「私の歌に繋がっている……」
P「そうそう。だからさ、そんなに気を悪くしないでね」
P「それに……千早ちゃん、いい体しているんだからもったいないよ!」
千早「なっ……プロデューサー!」
千早「私、自分がスタイルがいいとは思えません」
P「そのウエストラインを見せつけて、言うものかい?」
千早「見せつけてなんかいません。見えているだけです」
P「どっちでもいいよ。いい曲線だね、なぞり……っと」
千早「プロデューサー、変態みたいです」
P「そりゃあないよ、千早ちゃん」
千早「ふぅ……」
P「撮影、お疲れ様」
千早「プロデューサー、どうでした?」
P「どうって?」
千早「その、わかるじゃないですか。男の人から見て……」
P「うん……見せてもらったけど」
P「千早ちゃんの水着写真、イエスだね!」
千早「い、イエス?」
P「とても良かったってことさ。発売が楽しみだね」
千早「そ、そうですか」
千早「私でも、そういう風に思ってくれる人がいるんだ」
P「どうしたの千早ちゃん?」
千早「い、いえ……何でもありません」
>イエスだね!
オーガニック的ななにかを感じた
>>76
P「チャクラエクステンション!(棒)」
千早「シュートー!!(棒)」
こうですねわかります
P「千早ちゃんは、何か食べたいものある?」
千早「どうしたんですか、急に?」
P「辛いことを我慢したいい子にはご褒美を……ってね」
千早「私、子供じゃありません」
P「いやいや。まだまだ手の掛かる子だよ、千早ちゃんは」
千早「むぅ……」
P「甘いものは好き?」
千早「嫌いでは、ありません。ただ、食べてしまうと……」
P「ウエストだったら、気にしなくていいんじゃないの」
P「千早ちゃん普段のレッスン、オーバーワーク気味だし、少しくらいなら平気じゃないかな」
千早「そうでしょうか?」
P「そうでしょうよ」
P「まぁ、肉付きのいい千早ちゃんも、それはそれでいいと思うけどね。XENO……」
千早「プロデューサー、どうかしました?」
P「いんや、何でもない」
千早「はぁ……?」
んあー(CV:清水香里)
P「まぁ、甘いものといえばスイーツフォレストにある店くらいしか思いつかないわけで」
千早「そうですね」
P「こういう時に春香がいればいいんだけどね。まっ、いっか」
P「千早ちゃんの、お好きなものを頼んでちょうだい」
千早「そうですか。では、お言葉に甘えて……」
P「俺は何にするかな……」
P「意外に値段高いんだな、こういうの」
P「千早ちゃん、決まった?」
千早「はい、これを」
P「なるほどね。じゃあ、俺はこっちにするかな」
千早「プロデューサー、もしかして私と同じものを頼もうとしてました?」
P「うん。でも、千早ちゃんが食べるみたいだから……あっ、すみませーん!」
P「……」
千早「……」
P「美味いね……」
千早「はい……」
P「……」
千早「……」ジィ
P「食べる?」
千早「いいんですか?」
P「いいよ」
P「なんか新鮮だね」
千早「何がですか?」
P「こうして千早ちゃんとゆっくり過ごしたことなんてなかったからさ」
千早「そうですね。二人でいたことも何度かはありましたけど、仕事か歌のトレーニングついてばっかでしたね」
千早「すみません、いつも付き合わせてしまって」
P「いいじゃないの。熱心なのはいいことさ」
P「俺も千早ちゃんから、色々と学ぶべきものはあったよ」
千早「そう言ってもらうと助かります」
千早「プロデューサーの迷惑になっているんじゃないか、気になっていたので」
P「ノープロブレム」
P「むしろ、あれだね。ガンガン言ってきてくれて、嬉しかったよ」
P「頼ってくれてんのかなって」
千早「その、私も少し考え方を変えてみたんです。プロデューサーの言うように信頼関係が大事なのではと」
P「なるほどね」
千早「実際、仕事は少しずつですが、軌道に乗ってきていますし」
千早「歌があまり歌えないのは、不満ですが……」
P「ごめんね、俺のやり方につき合わせちゃってさ」
千早「いえ、今日の仕事でプロデューサーの意図は分かりましたから」
千早「ちゃんと、私のこと考えてくれているんですね」
P「むしろ、千早ちゃんのことしか考えてないよ!」
千早「なっ……///」
P「なんてね、ハハハ」
千早「……」
P「あれ、どうしたの千早ちゃん?」
千早「……」
P「あっ、俺の」
千早「……」
P「ちょっ、食べ過ぎだって千早ちゃん! 俺の残りの分が」
千早「食べていいと言ったのはプロデューサーです」
P「そうは言ったけどさぁ……あぁ、全部」
千早「ごちそうさまです、プロデューサー」
P「おっと、もうこんな時間か」
千早「随分と話し込んでしまいましたね」
P「やばいな。千早ちゃん、送るよ。親御さん、心配してるだろうからさ」
千早「……っ!」
P「千早ちゃん?」
千早「あの、プロデューサー。私、一人で帰ります」
P「俺のこと気遣っているなら気にしないでいいよ?」
P「それに一度、千早ちゃんの親御さんと話したいしさ」
P「いわゆる三者面談?」
千早「あの、本当にいいですから」
P「そう言わないでよ、俺が千早ちゃんにそうしたい」
千早「いいって言ってるじゃないですかっ!」
P「……っ!」
千早「すみません、失礼します……」
P宅
P「やっちまったねぇ、俺……」
P「今までわざと無遠慮に人の中に踏み込んで、相手の感情を引き出して」
P「それに合わせて動いて、うまくやってきたんだけどさ」
P「……」
P「俺、千早ちゃんの触れてほしくないところに、踏み込んだってことか」
P「千早ちゃんの家族……あの年の子だと色々とあるとは思うけど」
P「あれは相当だ」
P「はぁ、参ったね……」
P「おはようございます」
P「千早ちゃんは、まだ来てないか……」
P「正直、ホッとした」
P「まぁ、どうせ後数分もしないうちに……」
千早「おはようございます……」
P「ねっ」
千早「プロデューサー、おはようございます」
P「あぁ、おはよう。千早……ちゃん?」
千早「……」
P(特に何も言ってこないってことは、セーフか?)
P(とは言え、気まずいな……)
P(気まずい時は、とりあえず距離を置く……)
P(とはいえ、アイドルとプロデューサー。それは無理な話で)
P(大体、それじゃあ解決にならない)
P「千早ちゃん、今日仕事終わったら時間もらえる?」
千早「……っ!」
千早「わかりました」
P「ありがとうね」
P(踏み込んでしまったなら、しっかり聞かないとな)
2200までバイト。あずさの時みたい残ってたら時間かかっても書いてくつもり
落ちてたら、縁が無かったということで
仕事中……
P(千早ちゃんの仕事の具合は、まぁまぁかな……)
P(ただ……)
千早「ふぅ……」
P「お疲れさま、千早ちゃん」
千早「はい……」
P「……」
P(素っ気ないね。でも、嫌がってるようには見えないかな)
スタジオ
P(今日の仕事は、歌の収録で終了)
P(収録は、概ね順調……)
P(俺は歌の玄人でもないから、今の千早ちゃんの歌でも十分凄いと感じられる)
P(でも、当の本人は)
千早「……くっ」
P(この間と同じって感じか)
P(残り時間も、そうない。次で終わりかな)
P(でも、このままじゃ千早ちゃんの納得のいく歌にはならない)
千早「……」
P「……ふぅ」
P「やっぱり、手のかかる子だよ。千早ちゃん……」
P「千早ちゃん」
千早「プロデューサー」
P「収録、いい感じだね」
千早「そうですね」
P「でも、千早ちゃん自身は納得のいっていないご様子だね」
千早「プロデューサーは、お見通しですね」
P「それほどでも」
P「おそらく次で最後だけど」
千早「わかっています。私自身、もうあんな思いしたくありません」
P「俺は、千早ちゃんがもう十分に仕事をこなしているからここで終わりにしてもいいんだけどね」
千早「プロデューサーっ!」
P「怒らないでよ」
P「千早ちゃん」
千早「はい、何でしょう……」
P「俺は千早ちゃんの歌について、的確な助言はできないから無責任なことしか言えないけど……」
P「しっかりと、決めてみせてよね」
千早「プロデューサー……」
千早「はい、わかりました。私の全てにかけて」
P「それ、最初からやってよ」
千早「ふふっ、それもそうですね……」
千早「~♪」
P「……」
千早「~♪」
P「すげぇ……」
P(俺でもわかるくらいに、さっきより上手い)
P(スタッフの人たちもさっきと表情が違う)
P(これが、千早ちゃんの歌なのか……)
P(千早ちゃんの歌がスタジオを支配している)
千早「……」
P「……」パチパチ
千早「えっ」
スタッフ「……」パチパチ
千早「えぇっ」
千早「プロデューサー、これは一体?」
P「ありがとう、千早ちゃん」
千早「あの、プロデューサー」
P「最高の1曲だった」
千早「プロデューサー」
P「本当、こんな実力あるならもっと早くから出してほしかったよ」
P「そしたら、俺ももっと楽ができたのに」
千早「私、一人の力じゃありません。プロデューサーのおかげです」
P「プレッシャーをかけただけだよ」
千早「だからですよ、プロデューサーが私の力を引き出してくれたんです」
千早「ありがとうございます、プロデューサー。私一人では、この歌を完成させることができませんでした」
P「千早ちゃん……」
事務所
P「今日は最高の1日だったね」
千早「それは言い過ぎですよ。でも、私自身も納得のいく出来に仕上げられてよかったです」
P「うん……」
P「でも、まだやり残していることがあるよね?」
千早「はい……」
千早「初めに、昨日は怒鳴ったりしてすみませんでした」
P「いや、あれは俺が悪かったんだから千早ちゃんが謝ることじゃないさ」
P「むしろ、こっちこそごめん」
千早「いいんです。プロデューサーは、私のことを心配しているだけだっていうのは分かってましたから」
P「じゃあ、やっぱり両親と……その、うまくいってないんだ」
千早「はい、それで私も家族のもとを離れて一人で暮らしています」
P「原因、話してくれるかい?」
千早「はい……プロデューサーには、話しておきたいです」
P「そっか弟さんが……」
千早「あの日から、私たち家族は壊れてしまいました」
P「……」
千早「プロデューサー、私の家族は、もう戻れないのでしょうか?」
P「そ、それは……」
千早「お願いです、ちゃんと答えてください。慰めの言葉とかじゃなくて、プロデューサー自身の気持ちを」
P「戻れないよ」
千早「……っ!」
千早「どうして、そう思うんですか?」
P「だってさ、弟さんはもういないじゃないか」
千早「……」
P「弟さんのことで、そうなったなら、それを直すには弟さんが絶対に必要さ」
P「でも、弟さんはいない。だから、千早の家族はもう……」
千早「そう……ですよね。私もそう思います」
P「そっか……」
千早「……」
千早「何ででしょうね。わかっているはずなのに、いざこうして誰かからハッキリ言われると」
千早「すみません、プロデューサー。あっち向いてくれませんか?」
千早「顔、見られたくないので」
P「うん……わかった」
千早「……」
ギュッ……
P「千早ちゃん?」
千早「振り向かないで……」
千早「今は、この背中を貸してください」
P「……」
P「千早ちゃんのためなら、喜んで……」
千早「……」
千早「すみません、見苦しいところを見せてしまって」
P「いや、むしろ貴重なところだったよ」
千早「……」
P「すいません。調子にのりました。許してください」
千早「プロデューサーって、たまに笑えないこと言いますよね」
P「なんと……」
千早「プロデューサー、今日は話を聞いてくれてありがとうございました」
P「いや、俺が元々誘ったんだけどね」
千早「それでも、言いたいんです」
P「そういうものかな?」
千早「はい」
千早「プロデューサー。また、明日もよろしくお願いします」
P「ん、また明日ね。千早ちゃん」
P「しかし、千早ちゃんにあんな事情があったとは驚いたな」
P「小さい頃に弟さんが亡くなって、家庭は崩壊」
P「そんなことがあったなら、初めて会った時のあのキツイ性格もうなずける」
P「しかし、まぁ……話を聞いてしまった以上、何とかしてあげたいね」
P「といっても、家庭の方はどうしようもないと思うけど」
P「俺が千早ちゃんにしてあげられることはなんだろうね」
P「おーい、誰か教えてくれない?」
P「……」
P「返ってこない、当たり前だけど」
P「自分で考えるしかないか……」
ほ
もう俺がちーちゃんと家族になるしかないな
ぽ
翌日
P「千早ちゃん、デートしよう!」
千早「……」
P「千早ちゃん? お~い、千早ちゃん」
千早「あの、プロデューサーの言っていることがよくわからないのですが」
P「わからないって、知らないのデート? デートって言うのはね、男と女が」
千早「からかっているんですか。そういう意味じゃありません」
千早「私が聞きたいのは、どうして私がプロデューサーとデートをしなくてはならないかという所です」
別の人?
P「どうしてって、そんな理由なんてないよ」
千早「理由がないって」
P「一々、なすことすることに理由なんかつけてたら、肩が凝っちゃうよ。あっ、千早ちゃんは」
千早「……」キッ
P「……理由がなくても、何かしたいときってあるでしょ?」
千早「そう……ですね。たまに何も考えず、歌を歌いたい時は確かにあります」
P「そそっ、ようはそれと一緒ってわけ」
P「千早ちゃんとデートしたいから、デートに誘ってるのですよ」
千早「何かプロデューサーが言うと、軟派みたいです」
P「それは心外だね」
P「それで、千早ちゃん。ご返答はいかに?」
千早「プロデューサー。私に気を使わなく」
P「ドワオッ!」
千早「キャッ! ぷ、プロデューサー、いきなり大声を出さないでください。びっくりするじゃないですか」
P「あぁ、ごめんごめん。ちょっとね……それで、千早の返答は」
千早「ですから、私に気を」
P「ドワオッ!」
千早「キャッ!」
P「んっ、何か言った千早ちゃん? もう一回言ってくれないかな?」
千早「……」
千早「プロデューサーって、けっこう強引なんですね」
P「俺のことを分かってくれて嬉しいよ」
千早「はぁ……いいですよ。プロデューサーのデートの誘い、お受けします」
P「さすが千早ちゃん。千早ちゃんなら、そう言ってくれると信じてたよ」
千早「白々しいですね」
P「そう言わないでよ」
P(俺が千早ちゃんにしてあげれることなんて、一緒にいてあげること位なんだし……)
ほ
数日後
P「さて、デート当日なわけでして」
P「待ち合わせ10分前。遅れちゃマズいと急ぎ足で来たけれど」
千早「……」
P「相手は、すでにいましたとさ」
千早「……」
P「音楽プレイヤー片手に、待機中」
P「MDって、まだあったんだ……」
P「よっ、千早ちゃん」
千早「あっ、プロデューサー」
P「今時、MDってどうなの?」
千早「最近の音楽プレイヤーは、よくわかりませんから」
P「MP3プレイヤーも、もう最近っていうほどでもないけどね」
千早「えむぴーすりー?」
P「さて、じゃあデートにいきますか」
千早「あの、プロデューサー。えむぴーすりーって」
P「さっ、行くよ。千早ちゃん」
千早「あっ、プロデューサー!」
P「千早ちゃんの服を選びにレッツゴー!」
千早「えぇええっ!」
千早「……///」
P「う~ん、いいね」
千早「そんなに見ないでください、プロデューサー」
P「スカート、似合っているよ千早ちゃん」
千早「スカートなんて、ステージの衣装で見ているじゃないですか」
P「それとはまた違うんだよ、これが」
千早「……」
P「これからの時期に必要だと思い……このチョイス」
P「純白のサマードレス」
P「麦わら帽子もセットでどうぞ」
P「はい、千早ちゃん」
千早「あっ、はい……どうですか?」
P「……」
千早「プロデューサー?」
P「すみませーん、送風お願いします。髪をなびかせたいんで」
千早「撮影じゃありませんよ」
P「いい買い物だった……」
千早「あの、良かったんですか? これ、けっこう高かったと思いますけど」
P「千早ちゃんが着れば、値段以上の価値になるさ」
P「現に、試着した千早ちゃん最高だったし」
P「ちゃんと着てよ、サマードレス」
千早「はい……」
千早「プロデューサーからの贈り物……」
千早「……」
ギュッ
P「中の服、皺になっちゃうよ……」
千早「風が気持ちいいですね」
P「うん……」
千早「プロデューサー、今日はありがとうございます」
P「お気に召してなによりです」
千早「……」
P「どうしたの?」
千早「プロデューサー、私なんかに気を使って」
P「ドワオッ!」
千早「キャッ!」
P「だからさ、そういうのじゃないんだよ」
P「そんなに深読みしなくていいって」
千早「それじゃあ、どうしてプロデューサーは私にそこまでしてくれるんですか?」
P「それは、俺が千早ちゃんのプロデューサーだからさ」
P「俺は、プロデューサーとして千早ちゃんの力になってあげたいんだ」
千早「プロデューサーだから私に尽くす」
P「そのとーり」
千早「プロデューサーだから……それだけですか?」
P「……」
P「答えにくい質問だね……」
P「パスを使いたいんだけど」
千早「ダメです」
P「タイムを」
千早「直ぐに答えてください」
P「保留で」
千早「絶対にダメです」
P「ルールブックないかな?」
千早「ありません」
P「俺は、千早ちゃんから家族の話を聞いた時に、千早ちゃんに何かしてあげられないか考えたんだ」
P「そうしたらさ、思いついたのがこれ」
千早「デートですか。でも、それがどうだって言うんですか」
P「まぁ、デートに限らずさ。こうして、そばにいてあげられたらいいかなってさ」
P「千早ちゃんと一緒にいて、思い出を作っていきたいんだ」
千早「私との思い出……」
P「誰かが言っていたんだ」
P「人生はクローズアップで見れば悲劇だけど、ロングショットで見れば喜劇だって」
P「弟さんを失って、今までの辛かった時期の思い出を全て笑い飛ばせるような思い出を」
P「弟さんのいた頃に負けない位の楽しい思い出を、千早ちゃんと積み重ねていきたい」
P「だから、千早ちゃん……」
P「……」
P「君の一番近くで、君を支えさせてくれないかい?」
千早「プロデューサー……」
千早「私は、プロデューサーの力でここまで来れました。そして、これからは今以上の舞台へと羽ばたいていきます」
千早「でも、鳥がずっと羽ばたくことは出来ません」
千早「疲れてしまった時、辛い時に羽を休めるための、止まり木が必要なんです」
千早「私は、プロデューサーのそばにいる時が、一番心がやすらぎます」
千早「だから、プロデューサー……」
千早「私を支えてくれる止まり木になってくれませんか?」
P「だから、千早ちゃん……」
P「……」
俺「君の一番近くで、君を支えさせてくれないかい?」
P「俺は千早ちゃんを支えたい」
千早「私はプロデューサーに支えてほしい」
P「何だか、それだといつも通りじゃないかな。もっと、こう……」
千早「いいえ……そんなことありませんよ」
千早「だって、私はプロデューサーのこと……」
P「んっ……!?」
千早「好きですから……」
P「……不意打ちはズルいよ、千早ちゃん」
千早「ふふっ……」
P「千早ちゃんに先越されちゃったね……」
P「こういうのは、男からしっかり言いたかったのに」
千早「プロデューサー、今からでも遅くないですよ」
千早「私、プロデューサーの気持ちをちゃんと聞きたいです」
P「……」
P「好きだよ、千早ちゃん……」
千早「はい、私もです」
P「これからもよろしくね」
千早「はい、プロデューサーとなら何処までも」
俺「好きだよ、千早ちゃん」
数日後……
P「千早ちゃんと二回目のデート」
P「この間みたいに待たせないように、待ち合わせの公園に早く来たけど」
P「少し早く来すぎたか……」
P「こんなことなら、俺も千早ちゃんみたいに音楽プレイヤー持ってくるべきだった」
P「暇だなぁ……」
~♪
P「うん……何か聞こえる」
P「これは、笛の音?」
~♪
P「向こうの方から……時間もあるし、ちょっと行ってみよう」
女の子「……」
~♪
P(この音は、あの女の子が演奏しているのか……)
P(上手だな……なんて言うか優しい音色だ)
女の子「……」
女の子「ふう……」
P「今の曲、何ていうの?」
女の子「えっ」
P「今の演奏した優しい曲、何て曲?」
女の子「あっ、あの……」
P「そんな慌てないでよ。何もとって喰うわけじゃないんだから」
女の子「は、はい……」
P「上手だね、フルート」
女の子「そんな、私のなんて……」
P「いやいや、凄かったよ。他の人の演奏は知らないけど、君の演奏はかなり上手いんじゃないの?」
女の子「よ、幼少の頃からやっていましたから」
P「なるほど納得。上手いわけだ」
俺の尺八も吹いてよ(ボロン
P「君の演奏、俺の大切な人と合わせてみたら面白くなりそうだ」
女の子「はぁ……」
P「うん、歌がとんでもなく上手い子でさ」
女の子「そうなんですか。そんな人なら私も一度合わせてみたいですね」
P「合わせてみる? もうすぐ来ると思うけど」
女の子「すみません、この後用事が」
P「なんだ、残念。でも、しょうがないか」
P「引き止めてごめんね、えっと……」
女の子「ゆかり、水本ゆかりです」
P「ゆかりちゃんか。素敵な演奏をありがとう」
ゆかり「はい、それでは失礼します」ペコッ
毒針!
| | /⌒ヽ 出た!ワンパンKOの毒針!
| ∥ /⌒ヽ -__ __ ( ゚∋゚)
| ∥ (゚∈゚ ) ─_____ ___ / )/⌒ヽノ´ヽ /⌒ヽ
|∧ 从ノ (ミ_(⌒\ ヽ _ ___ //⌒ヽ 〈 ト )(ミ-=ー(゚∈゚ ) ̄ ̄ )
( (≡ ̄ ̄ ̄ ̄三\ ⌒ノ ノ) / ( ゚∋゚)\) |'" ヽ二⌒V ⌒ヽ ̄ /⌒ヽ
|(つWつ  ̄ ̄\ ⌒彡) ノ =_ (ミ/ ヽ/⌒) |\/ i ヽ ト > (゚∈゚__)
| \つ-つ \,__,ノ ノ ノ ミ二二__ノ. | /| ノ | 彡´ /⌒ )
| | ) / / ≡= `´ _) i. | ) / |\/i ミイ //
| | / ノ ____ γ___ノノ | ノヽミ |. ノ | ノ | ( (
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P「水本ゆかりちゃんか……」
P「フルートを演奏しているわけだし、音感とか良さそうだな」
P「益々、千早ちゃんと組ませたくなってきた」
P「それに、けっこう可愛いかったな」
?「誰が可愛いかったんですか?」
P「そりゃあ、ゆかりちゃんに決まって……」
?「……」
P「あの、その美しいお声はまさか……」
千早「……」
P「千早ちゃん……」
P「千早ちゃん、早かったね。待ち合わせの時間まで、まだけっこうあるのに」
千早「早めに行動すれば、何か起こった時にもしっかり対応できますから」
P「なるほど、しっかりとした対応ね」
千早「はい、それはもう……」
P「いや、あの……女の子をプロデュースしていると自然と色んな女の子に目が向いてしまい」
P「そう、職業病ってやつだよ、これは」
千早「……」
P「ダメ?」
千早「ダメに決まっているじゃないですか」
千早「本当ひどいですね、プロデューサーは」
千早「私のことを忘れて、別の女の子に夢中になって」
P「うぐっ……」
千早「……せっかく着てきたのに」
P「もしかして、千早ちゃん……」バッ
千早「……」
P「純白のサマードレス……」
千早「……」
P「綺麗だ……」
千早「……っ!///」
千早「ゆかりさんという人の方が可愛いんじゃないんですか?」
P「千早ちゃんが一番だよ」
千早「調子がいいですね」
P「嘘はつけないんだ」
P「ごめんね、悪かった」
千早「……」
P「このとーりっ!」
千早「しょうがないですね」
千早「だったら……」
千早「今日のデート、思い出に残るものにしてくださいね」
P「……あぁ、まかせてよ」
P「今日のデートも、その次も、そのまた次も、千早ちゃんの思い出に残してみせるよ」
P「それこそ、二人が年をとっても思い出して語れるくらいのね」
千早「プロデューサー……」
P「言ってて、ちょっと恥ずかしくなってきた。さぁ、行こうよ、千早ちゃん」
千早「プロデューサー、その千早ちゃんってもうやめてくれませんか?」
P「ん、どうしてさ?」
千早「私、プロデューサーと対等な関係ですよね」
P「うん、そうだね」
千早「だから、いつまでも千早ちゃんって子ども扱いされるのは……」
P「えっ……それは」
千早「……」
P「俺にとって千早ちゃんは、千早ちゃんなわけで」
千早「ふふっ、いいですよ……楽しみは後にとっておくことにします」
千早「いつか、その時がきたら、ちゃんと千早って呼んでくださいね」
P「その時って……まさか」
千早「ふふっ……このサマードレスに負けないくらいに、白いウエディングドレス。楽しみです」
P「は、ハハハッ……」
千早「プロデューサー!」
P「なっ、なんだい」
千早「二人で私に最高の思い出にしましょうね!」
大好きです!
fin
書き終えれてよかた。でも、最後みたいな呼び捨て流れになるんだったら、Pの春香っていう発言は春香ちゃんにしておくべきだった。
そういや、サマードレスで思い出したけど真が着てるやつなかったけ?
>>459
乙
真の白ワンピっていったらアニマス17話のED?
>>463、464
あぁ、たぶんそれだ。
しかし、こんな思いつきで書いてるスローペースに付き合うとは。やっぱりお前ら、訓練されているんだな
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