百合
書き溜めなしです。
前作「チカン電車 百合ver」
とある居酒屋
部長「こっち、店長ね。んで、こっちがバイト」
店長「どうも」
バイト「よろしくお願いします!」
部長「後のことは店長に任せてるから、じゃ」
店長「お疲れ様です」
部長「お疲れ」
バイト(……店長って、女の人なんだ)
店長(バイトって女の子だったんだ)
バイト(むっちゃ綺麗な人だ)
店長(……真面目そう。てか、大人しそう……大丈夫かこいつ)
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バイト「あの、まず何をしたらいいですか」
店長「あー、今日はやることない。帰っていいから」
バイト「え」
店長「あの部長適当だから。第一、ここにバイト来るとかも聞いてないから特に何の用意もしてない」
バイト「ええ?」
店長「てか、この店バイト代安いよ。辞めるなら今だけど」
バイト「家から近いのでいいんです」
店長「ここから何分くらいなの?」
バイト「徒歩2分くらいです」
店長「へー、下宿?」
バイト「はい」
店長「大学生だよね?」ペラ
履歴書をめくる。
バイト「はい」
店長「……化粧とかしないの?」
バイト「はい」
店長「……」
バイト「あ、やっぱりした方がいいですか?」
店長「いや、まあしなくてもいいけど」
バイト「良かった。化粧しなくてもいいって書いてたから、ここにしたんです」
店長(部長の奴、どんな求人広告出してんの)
店長「とりあえず、明日の18時に来てくれたんでいいから」
バイト「あ、でもできることがあるなら」
店長「今日の分はどうせバイト代出せないから働いても意味ないよ」
バイト「いいですよ全然」
店長(真面目か……お人好しか)
店長「じゃ、肩でも揉んで」
バイト「はい!」
店長(冗談だったのに)
店長「……えー、じゃあまあよろしく」
バイト「……失礼します」
モミモミ
バイト「凄く凝ってますね」
店長「もうちょっと強くしていいよ」
バイト「こうですか」
店長「んっ……いっ」
バイト(……わあ、なんだか色っぽい)
グリグリ
店長「イタタタタっ!」
バイト「す、すいません?!」
店長「い、いやいい。それくらいがいいから」
バイト「あ、はい」
店長「バイトはどこから来たの?」
バイト「隣の市です。実家から遠いので、大学の近くに引越しで来たんです」
店長「大学1年か、親元離れて寂しくない?」
バイト「えっと、週1くらいで実家に帰ってたりするのであんまりは」
店長「それは帰りすぎだろ」
バイト「食料が無くなったらもらいにいったりとかで」
店長「自分で料理作ってんの?」
バイト「いえ、全然できないので、どうしようかなって思ってます」
店長(……大丈夫かこいつ)
今日はここまで
食料もらいに帰れる距離なら引っ越す必要が……。無粋なツッコミですまぬ。
大学は車で一時間半くらいかかったな。3つの市をまたいだわ
>>7
友達を参考にしてます。あと、一人暮らしに憧れてる時期かなーと
店長「徒歩2分ってことは、もしかしてここの斜め前らへんにあるマンション?」
バイト「いえ、そのマンションの影に隠れてるアパートです」
店長「あの古い?」
バイト「はい。とても安かったので」
店長「いくらなの?」
バイト「1DKで、共益費と駐車場代込の3万です」
店長「……築何年?」
バイト「35年です」
店長「耐震工事とか大丈夫?」
バイト「さあ……」
店長(大丈夫か、こいつのアパート)
店長「木造?」
バイト「はい……」
店長「……家事には気をつけなよ」
バイト「怖いこと言わないでください……」
店長「いや、ホント。この近所に住んでるウチの友達のアパート、冬の乾燥した日に、ボヤって半焼したから。木造二階建て、築29年」
バイト「うそ……」
店長「まあ、実家近いし、焼けたら帰ればいいんじゃない」
バイト「……そう、ですね」
店長「?」
バイト「いえ、私の実家もアパートで……木造で築年数は……言えないくらいです」
店長「……早くお金貯めてお母さんと引越しな」
バイト「ははっ……」
店長「さ、もう揉んでもらわなくていいから。とりあえず、今日は帰ってよし」
バイト「はあ」ゴソゴソ
荷物をまとめている。
店長「じゃあ、また明日」
バイト「はい」
ガラガラ
ピシャン
店長「……」
ピポパポポ
プルルル
部長『あい』
店長「お疲れ様です。部長」
部長『さっきのバイトの子どうだった』
店長「……確かに、私もう男の子は嫌だって言いましたけど。だからって、拾ってすぐはい、て訳にはいかないんですから、急に連れてこないでください。対応に困るんですけど」
部長『だって、バイトは早く欲しいでしょ? 店長、追突事故でむち打ち状態だし』
店長「そうですけど」
店長(そもそも、ここの正社員が足りなさすぎるんだよ)
部長『面接したけどいい子だったよ。ちょっと、抜けたところはあったけど』
店長「それは見たら分かります。そういうことを言っているんじゃなくて」
部長「ごめんごめん。こっちも、バタバタしてたわけよ」
店長「はあ、まあもういいですけど」
部長「物分り良くて好きよ」
店長「喋り方キモいんでやめてもらえます?」
部長「お前、ほんと冗談通じないのな」
店長「疲れて相手する気力ないですから」
部長「ごめんって」
店長「誠意とかないんですか」
部長「だからこうしてバイト見つけてきたのに」
店長「当たり前のことを偉そうに言わないでください」
部長「ああ言えば、こう言うんだから」
店長「とりあえず、明日あの子の制服届けに来てください」
部長「はいはい」
店長「はいは一回」
部長「はい」
店長「じゃ、切りますので」
部長「はいはい」
店長「……」
プチ
店長「はー……」
ガラガラ(裏の戸が開く音)
ビールの配達屋の青年「ちわー」
店長「ああ、どうも」
配達屋「空のケースありますかー」
店長「あー、あるある」
配達屋「どこっすか」
店長「そこ……ごめん、今ちょっと持てないから運んでくれる?」
配達屋「店長腕どうかしたんですか?」
店長「あー、車に追突されてさ腕あんまり動かせない」
配達屋「マジっすか? 車運転できるんっすか?」
店長「いや、片手」
配達屋「え? それ、危なくないっすか?」
店長「慣れた」
配達屋「慣れたって、俺良かったら車で送りますよ」
店長「いや、そういうのいらないから。お前はビールだけ運んどけ」
配達屋「げえ、傷つくなー」
ガラガラ
フリーター「……」
店長「おい、こらフリーター。挨拶」
フリーター「うす……」
配達屋「よ、フリーター」
フリーター「……」
配達屋「……」
店長「めんどくさいから、配達屋はよ帰れ」
フリーター「店長……ちょっと買い出し行ってきます」
店長「ん、お願い」
配達屋「フリーター、チャリだろ? 乗っけてやるよ」
フリーター「……いい」
店長「いや、使えるもんは使っておけばいい」
フリーター「はい……」
配達屋「よしっ、じゃあ助手席乗れ」
フリーター「……うす」
店長「15分で帰ってこい」
配達屋「無茶言わんといてください」
店長「15分」
フリーター「うす……」
スタスタ
配達屋「お前も、生返事で返すなよ……ああ、って待って待って」
店長(ここに寄ってくる人間はロクなのがいないな……第一、部長は何を基準にバイト選んでんだろ)
店長(……まあ、久々の女の子でしかもおっさんウケ良さそうだし、お客も目の保養になるかな)
店長(さて、準備できるところまではするか)
ガサゴソ
店長(……腕あんまり動かないな……)
店長(事故ってから、リハビリしてんのに……)
店長(私の体が一番大丈夫か……)
ゴソゴソ、ボト
店長「いったあ……っ」
店長(握力も弱まってるし、情けなくて見せらんないわ……)
―――――――――
カツカツ
バイト「……あ、お店の電話番号聞いとかないとダメだよね」
クルっ
タタタタ
バイト「……入口じゃなくて、裏口から入らないとだよね」
テクテク
バイト「開いてる……あ」
ガサガサ
店長「っ……いっ……た」
トントントン
店長「っう………」
バイト(……)
ガサゴソ
店長「んしょっ……あっ」
ポロ。ゴトン、コロコロコロ。
店長(気を抜くとこれだよ……)
クルっ
店長「……あ」
バイト「あ」
店長「何?」
バイト「……えっと、連絡先を聞きに……」
ヒョイっ
バイト「はい、キャベツです……」
店長「どうも」
バイト「あの……腕大丈夫ですか?」
店長「まあ、大丈夫」
バイト「私、やっぱり今日手伝って……」
店長「それはダメ。帰れ」
バイト「あ……はい」シュン
店長(言い方きつかったか……)
バイト「じゃ、じゃあ連絡先だけ聞いて帰りますね」
店長「うん」
―――――――――
テクテク
バイト(そう言えば、部長が店長は事故したって言ってたっけ……痛そうだったな)
バイト(明日は……何もできないかもだけど、少しでも仕事楽にしてあげれたらいいんだけど……)
バイト(……って、生意気か)
バイト(……あ、スーパー寄って帰らないと……)
タタタタっ
とあるスーパー
バイト「……きのこ、それと牛乳と」
キョロキョロ
ドン!
バイト「あ、すいません!」
フリーター「……」
配達屋「いや、何か返事しろよ」
フリーター「すんません」
バイト「こちらこそ……」ペコリ
テクテク
バイト「……気を付けないと……あれ、そう言えば何買うんだっけ」
テクテク
バイト「ええと、牛乳と、ほうれん草と」
キョロキョロ
ドン!
バイト「あ、ごめんなさい!」
客「いえ」
フリーター「……」(遠巻きに見ている)
配達屋「何惚れた?」
フリーター「……」
フリーター(ドジっ子……初めて見た)
配達屋「何か言ってよおお」
バイト「……ああ、そうだキノコキノコ」
テクテク
バイト(シチューにするか……ビーフシチューにするか……そこが問題だね)
バイト(お母さんは白い派だけど、私は赤い派だし……あ、ナツメグ)
ヒョイっ
ポロ、ドササササ
バイト「オーノー……」
――――――
とあるアパート
カンカンカン
テクテクテク
ガチャっ
バイト「ただいまー」
バイト母「おかえりー……あらあ、鼻真っ赤」
バイト「ちょっと、寒かったよ」
バイト母「襟巻きしていきなさいって言ってるのに」
バイト「大丈夫かなって」
バイト母「いっつもそれで寒いって帰ってくるでしょ」
バイト「そうだっけ」
バイト母「そうよ……あらあ、今日は赤いのなの?」
バイト「うん。お母さん職場で何か食べた?」
バイト母「ううん、お腹空いちゃった」
バイト「作るから、ちょっと待っててね」
バイト母「はーい……じゃあ、お母さんごろごろしてる」
バイト「だーめ……洗濯物入れといて」
バイト母「もう終わっちゃったー」
バイト「じゃあ、お風呂掃除して」
バイト母「それもー」
バイト「……ゴロゴロしてよろしい」
バイト母「はーい」
バイト「……お母さん」
ザー
バシャバシャ
バイト母「なに?」
カチカチ
バイト「娘の携帯チェックしようとしないで……」
バイト母「やー、知らない番号はないかなって」
バイト「束縛する系の彼氏ですか」
バイト母「だって今日バイトの面接行くって言ってたし。知らない馬の骨があったらと思って」
バイト「ないから。そういう目的で行ったんじゃないから」
バイト母「あ……」
カチカチ
バイト「なにー?」
バイト母「知らない人……店長」
バイト「それは、バイト先の店長だよ」
バイト母「店長……」
バイト「女の人だから」
バイト母「なーんだ。つまらないなー」
バイト「……ちょっとお母さんてば」
今日はここまでです
注意書きが無いけど今回は大丈夫なの?
>>24
今回は普通の百合です
バイト母「だってねー、ご飯作りに来てくれるのはね、すっごく嬉しいんだけど……お母さんはあなたの将来が心配よ」
バイト「まだ、いいもん。そういうのは」
バイト母「ホントにそういうのに疎いんだから」
バイト「ほっといてよー」
バイト母「お母さんが若い頃は……」
バイト「もう聞いたから。何度も言わなくていいよ」
バイト母「えー」シュン
バイト「……もー、ごめんって、聞くから言って」
バイト母「聞きたいの?」
バイト「……うんうん」
グツグツ(鍋の煮える音)
バイト母「えーそんなにい?」
バイト「……はいはい」
グルグル(鍋をかき回している)
バイト母「あれはねー」
バイト「……うん、あ」
プルルル――
バイト「あ、友達からだ……そう言えば、今日家に来るんだった! ごめん、お母さん私急いで帰らないといけないから、後よろしくね! ご飯は後30分くらいで炊けるからね!」
バタバタ!
バイト「それじゃ!」
ガチャ、バタン!
バイト母「バイトちゃああーん!」ぶわっ
バイト母「ぐすん」ポツン
バイト母「お母さん、寂しい……ヨイショ」
トテトテ
バイト母「……」
グツグツ
バイト母「……味見味見」
トポポ――
バイト母「……っ」ゴク
バイト母「……我が娘ながら不味い」シクシク
バイトのアパート――
カンカンカン
バイト「ごめん、お待たせ」
友達「ううん、バイトどうだった?」
バイト「……えっと」
友達「微妙っぽかった?」
バイト「そんなことはないんだけど」
ガチャ
ギイ――
バイト「寒かったよね。入って」
友達「おじゃましまーす」
ヌギヌギ
バイト「暖房つけるね」
友達「はーい」
友達「コタツもつけていい?」
バイト「うん、いいよー」
友達「さっきさー、駅前に新しくできたケーキ屋覗いてきたんだけど……」
ゴソゴソ
バイト「なにー? チラシ?」
友達「そうそう、クリスマスのケーキ。これ見て見て」
バイト「うわあ……美味しそう」
友達「ねー。どれ食べる?」
バイト「え? クリスマスケーキ一緒に作って食べるんでしょ?」
友達「いや、私らよく考えたら料理下手じゃん。お金使って食べれないもん無駄に作るより、買った方がいいって」
バイト「……うーん。それもそうだね」
友達「二人だけのクリスマスだね……」
バイト「う、うん。そうだね」
友達「彼氏作らないでよね……」
バイト「さすがに、あと何十日かではできないというか、大丈夫だよ心配しなくても」
友達「……そう? でも、バイトに彼氏できたら私泣くわ絶対。妄想の時点で涙腺緩むもん」
バイト「そ、そんなに?」
友達「そうだよー。あんなに一緒にいたのに、別れるなんて……耐えられない」
バイト「別に友達の縁まで切らなくても……というか何を想定してるの」
友達「だってさ、よく考えたらさ、バイトに友達できる→あんまり部屋にいけない→コタツと離れ離れ→私寒い」
もぞもぞ
バイト「私じゃなくてコタツの方なんだ……コタツ買わないの?」
友達「うん」
バイト「この冬どう過ごすの?」
友達「そりゃあ、バイトの家に入り浸りー」
バイト「嬉しいけど……それで霜焼けできてるんだから、早く買えばいいのに」
友達「ノンノン。コタツないのを口実に、バイトの家に来てんのよ」
バイト「そうなの?」
友達「そうだよ」
バイト「ありがとう」
友達「うふ」
バイト「調子いいなー、もう」
友達「ごめんごめん。ほら、いいもん持ってきたから許ちて」
バイト「いいもの?」
友達「じゃーん!」
バイト「なにこれ?」
友達「とある人から頂いた……バイブです!」
バイト「バ……? なに?」
友達「……知らなくていいよ、今は」
ガサっ
バイト「箱は開けないの?」
友達「うーん、いつかバイトに彼氏ができた時に開いてもらって。この冬奇跡が起こるかも知れないし」
バイト「ないと思うけど……所でなんで今日持ってきたの?」
友達「友達が彼氏に見つかったら不味いからって、私に授けてきた」
バイト「それを、今度は私の家に置くの?」
友達「気にすんな」
バイト「もうっ」
その夜――
バイト「開けるなとは言われたけど……気になるよね」
ガサガサ
バイト「……」
ガサガサ
ペリペリペリ
パカ
バイト「……なにこれ?」
グニグニ
バイト「……ソーセージ? 食べ物? ……ゴムっぽい」
グニュングニュン
バイト「……でも、食べ物なら……こんなにたくさんスイッチはないよね」
ぐにゅー、ぐにゅんっ
バイト「わ、弾力ある……スイッチ入れたらどうなるんだろ」
カチっ
ブブブブ――
バイト「う、動いた! 気持ち悪い……なんなんだろこれ」ビクビク
ウインウインウイン――
カチ
バイト「びっくりする……」
ゴソゴソ、シマイシマイ
バイト「何に使うのか聞いておけばよかったかな……」
バイト「……きっと、ロクなことじゃないんだろうな……どこに仕舞おう」キョロ
ポロっ
ボト
バイト「あ」
グニュ
バイト「やば、足で踏んづけちゃった……壊れてないかな」
ガサガサ
バイト「……ちょっと右向きになっちゃったよ」
次の日――朝
ジャジャジャジャーン!
ジャジャジャジャーン!
ピッ
バイト「……ふぁい、もひー」
バイト母『起きんかーこらー』
バイト「おかーさん……起こさなくていいってばあ……」むにゃむにゃ
バイト母『いいでしょ別にー、遅刻しないようにね』
バイト「はーい……」
もぞもぞ
ピッ
バイト「……もすこし」
バイト「……いや、だめ……シャワー行こう」
ズルズル
ドサ――(ベッドから落ちた)
バイト「……上脱いで、下脱いで」
ヌギヌギ
パサ――
キュ――
バシャ―
バイト「冷たッ……あ、あったかくなってきた」
シャー
バイト(今日、バイトはスカートダメだよね……デニムにしておこうかな。久しぶりだけど)
シャー
アワアワ、ワシャワシャ
バイト(……ドキドキしてきた)
ワシャシャシャッ
バイト(……15分くらい前に行っておいたらいいかな……い、いやもしかしたら何か手伝うことがあるかも。店長さん大変そうだし)
バイト(30分前に行こう……急げば大学から間に合うよね)
シャー
バイト「ふう……」
キュ
カシュカシュッ
トロォ――
バイト(……あ、今日の課題忘れてたよ)ビクッ
夕方――
バイト「……17時30分。よし、ぴったりだ」
バイト「あ、自転車どこに止めたらいいかな」
ガシャン
バイト「ヨイショ……」
テクテク――
ガチャ
バイト「すいません」
店長「はい……ってはや」
バイト「あ、あの自転車どこに置いたらいいですか」
店長「ああ、赤のクーパーの後ろに隙間あるからそこに入れといて」
バイト「クーパー?」
店長「車」
バイト「あ、分かりました」
バイト「……あの、何をしましょうか」
店長「とりあえず、これに着替えて。サイズはSで大丈夫だと思う」
バイト「わあ、可愛い割烹着ですね」
店長「そう? あっちに更衣室あるから」
バイト「はい」
トテトテ
5分後――
店長「おそ……」
テクテク
ガチャ――
店長「まだ……」
バイト「ひゃあ!」
店長「ブラ見えてるよ」
バイト「あ、あの割烹着絡まって……」
店長(……呼べ)
店長「着方わからないなら、ちゃんと聞いて」
バイト「す、すいません」シュン
店長「ちょっと、じっとして」
バイト「……はい」
店長「手伸ばして。腕から入れるとやりやすいから」
店長(最初に伝えておくべきだった)
バイト「ありがとうございます……」
スッ
店長(……甘い匂いがする)
スルスル――
バイト(大人っぽい香りがする)
店長「はい、終わり。髪ぼさってんじゃん」
サッサッ
バイト「あ、ありがとうございます」
店長「で、横にリボン作って……はい完成」
バイト「……おお」
店長「可愛いじゃん。ちゃんと着れば」
バイト「そ、そんなことないで……ちゃんと?」
店長「何でもないよ」クスクス
バイト「て、店長」
店長「ところで、なんでこんなに早いわけ」
バイト「えっと、何か手伝おうと思って」
店長「今日は覚えることを教えるだけだから、別に何もしなくていい」
バイト「ええッ」
店長「返事ははい」
バイト「は、はい」
店長「あと、私じゃなくてもう一人のバイトが教えてくれるから」
バイト「入って何年くらいの方なんですか」
店長「4年」
バイト「わー、長いですね」
店長「あんま喋らないけど害はないから」
バイト(ど、どういう人なんだろ)
店長「それまでは……」キョロ
バイト(……はッ、早く来てしまったがために店長さんの仕事を増やしてしまった……)
店長「……肩、揉んでもらってもかまわない?」
バイト「……え、あ、はい」
店長「……この辺」トントン
ガタガタッ
ストン(椅子に腰掛けた)
バイト「こ、こうですか」
モミモミ
バイト「……」
店長「うん、もっと力入れていいよ」
バイト(店長さん、細い。どこ揉んだらいいの……)
モミモミ
店長「あと、肩甲骨の方」
バイト「はい」
スッ
ピト
店長「……ッ」ビク
バイト「す、すいません。指が首に」
店長「手、冷た」
バイト「冷え性なんです……このあたりでいいですか」
グリグリ
店長「いッ……つぅ」
バイト「わ?! だ、大丈夫ですか」
店長「いや、それくらいしないとほぐれないから」
バイト「肩こりやすいんですね……」
店長「いや、ちょっと、事故してから……むち打ちでこんなんになった」
バイト「……衝突されたって部長が」
店長「うん……まあ、こっちも後方注意不足だったけどね」
店長「でも、その代償はおっきかったな。バイトも車乗る時気をつけて」
バイト「はい……」
店長(仕事し過ぎて……半分寝ぼけてたとは言えない)
バイト「今も……お店には車で?」
店長「そうだけど」
バイト「運転、大丈夫ですか?」
店長「ほとんど片手。右腕は添えるだけ」
バイト「そ、そんな……バスケじゃないんですから」
店長「……運転できないほどじゃないし、他の交通手段ないしね」
バイト「あの……私にできることあったら言ってくださいね」
店長「いや、ない」
バイト「ええッ」
ちょろっと抜けます
店長「あー、だいぶ楽になった。ありがとう」
バイト「いえ」
ガラッ
フリーター「……」
店長「挨拶」
フリーター「こんにちは」
バイト「あ、こんにちは」
フリーター「……」じッ
バイト「なんでしょうか?」
フリーター「スーパーで……」
バイト「スーパー? あ……」
店長「なに、フリーター? 知り合い?」
フリーター「いえ、全く」
バイト「ええッ」ガンッ
フリーター「スーパーでぶつかっただけです」
店長「そ。フリーター、バイトに色々教えてやって」
フリーター「……」
店長「返事」
フリーター「はい」
バイト「よろしくお願いします」
フリーター「……」
店長「バイト……フリーターが、返事しない回数数えといて。その分×100円給料から天引き」
バイト「え、え?」
フリーター「なに、知りたいですか」
店長「じゃなくて、フリーターが教える。私が最初に教えたようなことから教えておいて。それと、バイトこれ」
ポンッ
バイト「メモ帳?」
店長「それに聞いたことは全部メモ取ること」
店長(こいつは……たぶん聞いたそばから忘れるタイプだろう)
バイト「ありがとうございます」
店長「バイト、あとよろしく」
フリーター「はい」
店長「じゃ」ヒラヒラ
バイト「あ、ありがとうございます」ペコ
フリーター「……」
バイト「お、お願いします」
フリーター「まず、僕はフリーター。あの人は店長。僕はどちらかというとMで、店長はどちらかというとSで、ツンデレのツンしかない」
バイト「は、はい。Sでツンしかない」カキカキ
店長「おい」
訂正:店長「フリーター、あとよろしく」
――――
――――――
―――――――――
フリーター「接客はこんな感じ」
バイト「はいッ」
フリーター「質問は」
バイト「え……と、メニューの金額ってどうやって覚えたらいいですか?」
フリーター「一番値段が高いものと、低いものだけ覚える。それ以外を客に聞かれたら、さりげなくメニュー表で提示」
バイト「さりげなく提示……と」カキカキ
フリーター「他には」
バイト「えっと……フリーターさんのお仕事はなんですか?」
フリーター「厨房兼ホール」
バイト「お料理作れるんですね。すごいです」
フリーター「僕は、材料洗ったり切ったり、店長の作ったものを盛り付けたり、そのくらい」
バイト「でも、やっぱりセンスとかいりますよね」
フリーター「全部店長が指示してる。僕はそれに従ってるだけ」
バイト「店長さん……すごいですよね」
フリーター「そうだね。若いのに、要領いい。覚えるのも早い。肝も据わってる」
バイト「店長っておいくつなんですか」
フリーター「25歳」
バイト「25歳……若い」カキカキ
バイト(私と小学校6年間分くらい離れてるんだ)
バイト「フリーターさんはおいくつなんですか」
フリーター「36歳」
バイト「……3」カキ、カ
フリーター「……さんじゅうろくさい」
店長「余計な話はしなくていい」
店長「終わった?」
フリーター「はい、一通り」
店長「なら、フリーターは小鉢と汁ものの下準備」
フリーター「はい」
店長「バイト」
バイト「はい」
店長「いくつ?」
バイト「え……19です」
店長「そ」
クルッ
店長(10代か……)
バイト「?」
店長「今日はこれで終わり。また、改めて連絡するから。今日はそのメニュー表のコピー持って帰って覚えてきて」
バイト「いつくらいまでに覚えるものでしょうか……?」
店長「明日」
バイト「ひゃッ」
店長「無理?」
バイト「わ、私あんまり暗記は得意じゃなくて」
店長「死ぬ気で覚えてこい」
バイト「イ……イエッサー!?」
帰宅――バイトのアパート
カンカンカン
バイト「……どうしよう」
友達「何が?」
バイト「わあ!?」
友達「人の顔見て驚くなよ」
バイト「夜にどうしたの?」
友達「いや、合コン行かんかね?」
バイト「ごーこん?」
友達「うん、兄ちゃんが面子集めてくれって。嫌だって言ったんだけど、男の沽券に関わるらしくってさ」
バイト「いいけど、私そんなの参加したことないから、何も分からないよ」
友達「いいっていいって。私ら背景みたいな感じ。ただの人数合わせ」
バイト「いいのかな、そんなノリで」
友達「いいんじゃない。とりあえず、飲食費は全部あっち持ちだから行かなきゃ損だよ」
バイト「ますます、申し訳ないね……」
友達「まあまあ、バイトも男慣れしておこ? ね?」
バイト「お母さんみたいなこと言う……」
友達「友として心配してんのさ」
バイト「……このままでいいかな、背景だし」
友達「……そのままでも、十分可愛いんだけどねえ。カジュアル過ぎるのと、ノー化粧状態なのでごーほーむ」
バイト「ううッ……」
カンカンカン
友達「久しぶりにバイトの化粧してるとこ見た」
バイト「恥ずかしいよ……」
友達「素顔じゃなくて、そっちが恥ずかしいのも珍しいなあ。大丈夫大丈夫。似合ってる」
バイト「ありがと……」
友達「自信ないなー」
バイト「友達みたいに上手くできないもん」
友達「まあ雑誌とかで研究してるし、ほぼ日課だしね」
バイト「女子力高いよ、友達は」
友達「そんなことはないけど。あ、車来たよ」
バイト「あ、クーパー……」
友達「あれ、バイト車詳しいっけ」
バイト「ううん。最近ちょっと知って」
友達「へー。あれ、兄ちゃんの友達の車」
ブロロロ――
キキッ――
ウィーン
兄友「お待たせ。寒かった? 後ろ友達ちゃんのお兄さんいるから、前と後ろに一人ずつ乗って」
バイト「はい」
バタン――ブロロロ
友達の兄「ごめん、バイトちゃん。今日は、遠慮なく食べてって」
バイト「あ、はい」
バイト(実は、今日ご飯作ってなかったから助かったかも……)
友達「私はいいけど、バイトはお酒めちゃ弱いから絶対飲ませないでよ?」
友達の兄「え、そうなの? 可愛いね」
友達「なに、にやついてんのさ。この童貞野郎」
バイト「……どーてい?」
友達の兄「……やめてよ、バイトちゃんが変なこと覚えちゃうでしょ!」
バイト「私、あんまり気にしないので大丈夫ですよ?」
友達「バイトが早く大人の女になれるようにしなくっちゃね……」
友達の兄「我が妹ながら、恐ろしい…‥」
兄友「俺は、兄弟で合コンに来れるお前らがこえーよ」
バイト「あはは……」
合コン会場――
友達「車で来なくても、歩いて行ける距離じゃんね」
バイト「ここは……」
友達の兄「まあ、ある意味被害者であるバイトちゃんが少しでも早く帰れるようにしてみました」
兄友「ここ、けっこう安いし、融通も利くんだよ」
バイト「……」
バイト(な、なんてことでしょう。まさか、アルバイト先で合コンすることになるなんてええ……ッ)
友達「バイト?」
バイト(ああ、でも今さら断れないし……)
バイト「あ、りがとうございます」
友達の兄「いいえのことよ」
ガラガラ――
店長「いらっしゃいませー」キラキラ
バイト「……」コソコソ
友達「どうして、私の影に隠れてるの?」
バイト「忘れたの……? ここ私のバイト先ッ」ボソボソ
友達「……あ」ポン
バイト「あ、じゃないよー……」プルプル
友達「すまん。勘弁してください」
友達の兄「あ、すいません。ちょっとまだ早かったんですけど、予約してた友達の兄です」
店長「かしこまりました。奥の方でお友達がお待ちです、どうぞこちらへ」キラキラ
バイト(わあ、店長さんがキラキラしてる……)
今日はここまでです
店長(何か、見覚えのある顔が……)
店長「……」じッ
バイト(見てる……こっち見てる)ドキドキ
バイト(挨拶するべきだよね……恥ずかしいけど)
店長「……」
クルッ
カツカツ
バイト(あ、奥に引っ込んだ……察してくれたのかな)
店長(まあ、後で見に行けばいいか)
ガラガラ――
友達の兄「おいすー! お待たせ」
金髪ストレート女「ごめーん先に飲んでるよー!」
茶髪巻き毛女「兄友君、こっちはやくー!」
兄友「ああ、なんだよお前ら。もう酔ってんの?」
金髪「あたしら、実はすでにハシゴなの」
茶髪「合コン緊張するし、ちょっと気合入れてたっていうかね」
兄友「お前らが緊張するとかないわ」
金髪「ひどーッ」
茶髪「私らだって、純情な乙女だっつーの」
友達の兄「みんなおもろいなー。おし、じゃあ茶髪ちゃんと金髪ちゃんの間とっぴ! バイトちゃんは奥にどーぞ」
バイト「あ……はい」
トテトテ
ストン
友達「素直に従いよって……」
兄友「友達ちゃんは、必然的に僕の横だね」
友達「そーですね」
友達(なぜ、兄の向かい側に座らなければならないのだろう)
バイト「……」ドキドキ
友達「バイト、席に着いたくらいで動揺しすぎ」
バイト「はッ」ドキィ
金髪「そーそー、適当にしとけばいいの。こいつらの頭の中なんて同じようなもんなんだから」
バイト「は、はい」
茶髪「やーん、バイトちゃん可愛いねー」
友達の兄「えー、俺はー」
友達(キモ)
金髪「もちろん、可愛いよー!」
友達の兄「わーい!」
兄友「さすが、お前は順応性高いというか……」
バイト(うう……これが合コン。目まぐるしい)
友達「ていうか、人数おかしくない?」
友達の兄「あー……たぶんもうすぐ」
ガラガラ――
配達屋「ちょりーす」
配達屋の友達「うっす」
バイト(増えた……!)
兄友「はい、これで男女比も整ったことですし」
友達の兄「飲み物は、とりあえず最初ビールにしておきますか」
バイト(と、友達さん……私飲めないよ……)コソコソ
友達(バイトさんや、最初の一口だけでいいのよ。あとは、男どもが喜んで飲むから)コソコソ
バイト(そ、そっか……)
兄友「それじゃ、みんな行き渡った? えー、独り身のみなさんに幸あれっつーことで、乾杯!」
「かんぱーい!」
バイト(……匂いからして無理な感じ)クンクン
友達の兄「かーッ! 美味い!最高!幸せ!」
ゴトン!
茶髪「大げさーッ」クスクス
友達の兄「可愛い子二人に挟まれてるだけでも男のロマンだからね!」
友達「……」
バイト「友達ッ、顔、顔ッ」
友達「はッ、うんごめん。視界にウジ虫が映ってたからつい」ニコ
バイト「あは……」ビクッ
兄友「ビール頼む人ー」
バイト「はやッ!?」
友達の兄「あ、はいはい」
バイト「ええッ?」
配達屋「あー俺も頼んます」
バイト「うそォ……すごい」
配達屋「褒められると俄然スピードが上がるねえ」
配達屋の友達「……ああ」
友達の兄「そーだな。さあ、みんなもっと我を褒め讃えよ!褒めちぎれ! ああ、金髪ちゃん!? 俺の髪を掴むとか、なんてベタなボケを!? ハゲちゃう!」
グイグイ
茶髪「単純だねー。面白いからいいけど」
金髪「えへ、あたしも、もう一杯!」
ダン!
バイト「……」
バイト(もしかして美味しい?)
バイト「……」
友達「バイト?」
バイト(……チョビっとだけ)ペロペロ
バイト「これはッ……」
バイト(味がわからない)
バイト「……」グイッ
友達「あ、バカ」
バイト「?!
バイト(し……舌がしびれる)ピリピリ
友達「……もう。はい、豆腐でも食べて中和しなよ」
スッ
バイト「あ……りがと」モグ
バイト(私にはまだ早かった……)
友達「もう、それお兄ちゃんにでもあげちゃ……いや、私が飲もう」
バイト「え? 大丈夫?」
友達「バイトと間接接吻のチャンスだしねッ」ハアハア
バイト「ひいッ」
配達屋「なになに、そこ二人だけの空間作っちゃって。お兄さんも仲間にい・れ・れ☆」
バイト「れ?」
友達「れ?」
配達屋の友達「そいつ1杯で酔えるお手軽男だから」グイッ
ゴト!
配達屋の友達「ふー……もう一杯」
バイト(こ、この人はザルというやつだ……!)
金髪「……」チラ
配達屋の友達「なに?」
金髪「……んー、お酒強い人好きなんだよね」
配達屋の友達「そうなんだ……」
バイト(ああ、こっちではすでに狩りが始まってるよッ)
友達「……ヒック」ビク
バイト「ん?」
友達「バイト……今日可愛い」
バイト「あ、ありがとね……」
バイト(あれ、なんか目が座ってらっしゃるような)
友達「普段もいいけど化粧もね、イイ」
バイト「友達、顔赤いよ?」
友達「え、マジ……」ペタ
友達「あづ」ペチペチ
バイト「私、手冷たいよ」ペタ
友達「きもちー……」
配達屋「俺もその癒し空間にい・れ・れ☆」
友達「れ、はもういいんだよ……」
バイト「ちょ、ちょっと友達……年上さんになんて口の利き方を……」オロオロ
友達「この童顔男のどこが年上なんだよ……」
配達屋「ひろい!」
バイト(ひどい?」
配達屋「俺は、これでも20代後半れすから!」
友達「れ?」
ガシッ
配達屋「ああッ! 俺のキューティクルな顎をわしづかまないでくれ!」
友達「その、れをやめんか……」
バイト「今のれ、はセーフだったような」
友達「うるひゃい! バイト!」
バイト「はいッ!?」
友達「ちゅー……!」
バイト「ひいッ」
ググググッ
友達「……いや、なの?」シュン
ググググッ
バイト「そ、そういうことじゃなくて……」
配達屋「いいな! 俺、俺から!」
ググググッ
バイト「ちょ、二人共伸し掛って来ないで……?!」
グラッ
むちゅ×2
ガラガラガラ
店長「枝豆に……」ピタッ
バイト「……あひ」
今日入ってきたバイトが、男(配達屋)と女の両方から頬っぺたにキスされていた!
店長「なりまーす」
ゴトッ
ガラガラガラ
店長は何事もなかったかのように、引き下がった!
バイト(て、てんちょおおお!? せめて、何か言ってええええ?!)
テクテクテク
店長「……ッ」
店長(……ックスクス)
フリーター(……店長が、笑いを堪えている顔をしている。珍しい。あの部屋で何が?)
店長「フリーター、ビール持って、あの部屋行ってみ」クイクイ
フリーター「……」
テクテクテク
ガラガラガラ
フリーター「……生中」
バイト「……ひッ」
今日入ってきたバイトが、男(配達屋)と女と組んず解れず絡み合っていた!
フリーター「お持ちしました」
ゴトッ
ガラガラガラ
フリーター「……」同情の目
バイト(いーやああああ!? 絶対おかしい子だと思われたああ!?)
―――
――――――
兄友「さって、そろそろお開きとしましょうか」
配達屋の友達「そうだな……」
金髪「あれ? 茶髪いつの間にかいない」
兄友「ああ、さっき友達の兄と一緒に出てったよ」
バイト「……具合悪くなったんですか?」
友達「違う違う。お持ち帰りされたの。代行で一足早くホテ」
配達屋「おっと、そこから先は言わせん」
友達「なんでよ」
配達屋「俺が聞きたくないんれす!」
友達「うざ。なんの権限があってこの私に指図すんの!」
バイト(この二人、まだ酔ってるよォ……)
兄友「さて、こうなることは予想済みだ。バイトちゃん、もう会計は済ませてるから。帰って大丈夫だよ」
バイト「あ、でも友達が……」
兄友「俺、実は今日飲んでたの全部ノンアルだったの」
バイト「え」
兄友「幹事が酔っちゃだめでしょ?」
友達「えらい! さすが、お兄ちゃんを従えてるだけあるわ!」
バイト「本当です。兄友さん、すごい」
兄友「幹事はみんなを無事に送り届けるのも仕事だからね」
配達屋「じゃあ、俺は友達ちゃんを無事に送り届ける!」
兄友「はいはい。じゃあ、金髪ちゃんは頼んだよ」
配達屋の友達「ああ」
金髪「……」モジモジ
兄友「さあさあ、友達ちゃんと、配達屋君は俺の車に大人しく収納されてくださーい」
友達「バイトおお! また、会おうねえええ!?」ズルズル
バイト「明日はお休みだから、また月曜ね」
配達屋「友達ちゃん、アド交換しよー」ズルズル
友達「バイトオオ!」
バイト「ばいばい……」ふりふり
配達屋「アドオオオ!」
バイト(……恥ずかしい)
兄友「一人で帰れる?」
バイト「あ、はい大丈夫です」
兄友「車でっていう距離でもないし、この二人と一緒に乗ると、バイトちゃんに被害がでそうだしね」
バイト「あはは……」
配達屋「……友達ちゃああん」グスン
友達「けッ」
カランカラン
兄友「おさきー」
バイト「はい」
バイト(……なんだか、仲良くなったんだね)
バイト(……)ズキッ
バイト(やだな……妬いてる)
バイト(……友達、彼氏作るのかな……)
バイト(……そうなったら、ヤダな)
バイト(私、何考えてるんだろ……酔ってるのかな)ポロポロ
ポタポタ
バイト(……酔ってるだけだよね)ポロポロ
カツカツ
ポンッ
店長「バイト、さっきはお楽しみ……!?」
バイト「てんちょお……」グズッ
店長(泣いてるだと、なぜ、どうして、そんなに強く肩は叩いてないはず……)
バイト「てんちょおおお……」ガシッ
ギュウ――
店長「な、なに?」
バイト「ご、ごめんなさい……ッ」
店長「はあ?」
バイト「……ごめんなざいいッ」ギュウッ
店長(いたいいたいたい!?)
店長「と……ッりあえず、バイトちょっと離してくれる?」
バイト「……う、うえええん?!」ギュウッ
ギリギリ
店長(うぐぅッ?! こいつ、痛い部位を確実に攻めてくる?!)
店長「たすッ……」
テクテク
フリーター「……」チラ
テクテク
店長「痛いんだよ! 助けろ!」
―――
――――――
奥の休憩室
店長「……ッ」
店長(折れるかと思った……馬鹿力め)
バイト「ご、ごめんなさい……つい」
店長「……さっきの男に振られたの?」
バイト「え? あ、いや」
店長(配達屋、この恨みはお前で晴らしてやる……)
店長「まあ、バカを見るよりいいんじゃない。合コンなんて、ヤリ目でくるやつばっかなんだから」
バイト「ヤリ目?」
店長「セックス目当てってこと」
バイト「セッ……」ボンッ
店長「お子ちゃまか……」
バイト「あ……」
店長「バイトは、なんで合コンなんか?」
バイト「……友達に」
バイト(友達に誘われたから。だから、言ったんだ……)
店長「友達は選ぶこと。合コンは今度は断ること。いい?」
バイト「……」ズキッ
店長(……なに、急に表情が)
バイト「そういうんじゃないんです……」
店長「……」
バイト「私、友達に彼氏ができるって思ったら……急に寂しくなっちゃって」
店長「女は嫉妬する生き物だ。それに、バイトだって、いつか彼氏を作るし」
バイト「違うんです……友達にじゃなくて男の人の方に……私嫉妬しちゃって」
店長「そりゃ、仲の良い友達を男に取られそうになったら誰だってそんなもんでしょ」
バイト「……そう、なんですか? そうなんでしょうか……」
店長(そんなことで泣き出したのか……)はあッ
バイト「そうですよね……ごめんなさい……店長、お仕事の邪魔しちゃって……申し訳ありません」
店長「いいよ、別に」
バイト「私、帰りますね……」ヨロ
店長「……」
バイト(恥ずかしい……私、昨日会ったばかりの店長に……何言おうとしてたんだろう)
テクテク
店長「バイト」
バイト「なんでしょう……」
店長「……いや、気をつけて帰れ」
バイト「はい……」ペコ
店長「あ……」
ガチャ――バタン
店長(……なんで、慰めの言葉の一つも言えないんだ)
店長(ああいうの……苦手だわ)
店長(でも、気になる……立ち入っていい話じゃないけど)
店長(いや、でもこれからここで働くんだから、プライベートくらい知ってても)
店長「う……ーん」
フリーター「店長、バイト帰りましたよ」
店長「わ、分かってる……!」ビクッ
―――
――――――
バイト「……」
ブーブー
バイト「あ……」
1件のメールを受信しました。
パカッ
バイト「……」ドキッ
件名:付き合うことになりました
パチンッ
ゴソッ
バイト「……」ドキドキッ
バイト「……」ソロッ
パカッ
本文:配達屋の――
パチンッ
バイト「……ッぅ」ズキッ
ぎゅうッパキ
バイト「……ッあ」ブンブン
タ、タ、タタタ―――
―――
――――――
フリーター「あと、全部やっときますんで」
店長「は?」
フリーター「あの子、あのまままっすぐ帰ると思いませんし」
店長「……」
フリーター「はい、上着」
スッ
店長「ちょっと……出てくる」
フリーター「……はい」
店長「……」
クルッ
タタタ――
店長(いた……って、走り出したし)
店長(そっちは家と逆方向じゃん)
店長(あ、コケた)
店長(……これって、ストーカーか?)ビクッ
店長(あ、起き上がった)
店長(え、また走るの?)
店長(……ヒールでよく走れるわ)
店長(駅に入った……)
バイト「……」
店長(どこ行くんだ?)コソッ
バイト「……ッ」
ピッ
店長(海岸に行くつもりか……)
店長(え、ていうかこのまま着いて行く必要あるのか……)
店長(……でも、うちのバイトが問題起こしたら、こっちに飛び火する可能性も無きにしも非ず……)
店長(えーい、ままよ)
チャリンチャリン
ピッ
『切符をお取りください』
今日はここまでです。
バイト「……」
――間もなく、構内に列車が到着します
バイト「……」
タタタタ――
バイト(……メニュー覚えなきゃいけなにのに何やってるんだろう……)
タ、タ、タ――
バイト(衝動的に動いちゃう所直さないと……)
ガタン、ガタ――キキキキッ
プシュー
ザワザワ――
バイト「……」
ザワザワ――
ドンッ
バイト「あいたッ……」
ザワザワ――
バイト(……でも……頭冷やして、月曜普通にしなきゃ)
カタン――
車内――
店長(……ちょっと迷ってたのか、あれは)チラ
バイト「……」
店長(……話しかけるタイミングが分からん)
店長(あー、明日の仕込みのこと伝えずに来てしまったし……)
店長(メール入れておこ)
ゴソッ
バイト「……っくしゅ」
店長(寒いんかな……)そわそわ
店長(はッ……なぜにそわそわせなあかんのや)
店長「ん?」
――1件のメッセージ
店長「……」
送信者:フリーター
件名:迎えが要りそうなら連絡ください
店長(……たまに気が利く男だな)
店長(ん……でもあいつ車じゃないし……)
店長(わ……私の車か)
バイト「……っくしゅ」
店長(……)そわそわ
店長(コンビ二でも立ち寄って、肉まんかおでんでも買うか……)
20分程経過――
店長(眠たくなってきた……今日、忙しかったしな……あ、海見えてきた……)うつらうつら
バイト「……」
スタスタスタ
―――間もなくドアが開きます
店長(冬の海で……青春か……っは)
プシュー
店長(やばい、寝過ごす所だった……)
タタタタ――
ガヤガヤ
バイト「……」
店長(お、自販機の前で立ち止まった……)
バイト「……」
財布を出して、固まっている。
バイト「……」プルプル
店長(……まさか、文無しじゃ)
そして、海岸へ
ザアッ――
――ザアッ
店長(予想通り、ここに来るとは……寒ッ)プルプル
店長(寄せては返す波の音……肌に突き刺さる凍てついた風……)ムズムズ
店長「あ……っくしゅ!」
テクテク――ピタ
バイト「?!」ビクッ
クル――
店長「?!」ビクッ
バイト「……なんだ、店長で……店長!?」ビクッ
店長「……あー、その」
バイト「……つ、ついてこないでください!」
ダッ!
店長「ちょ、逃げなくても!」
ダッ!
ザッザッザッ!
バイト「ど、どうしてここにいるんですか!?」
ザッザッザッ!
店長「バイトが泣いてたから、ちょっと気になった……というか」
バイト「こういう時はそっとしておいてください!」
店長「……本当はそうしたいよ!」
バイト「じゃあ、そうしてください!」
店長「できないの!」
バイト「なんでですか!」
ザッザッザッ!
店長「え、えっと…………て、店長だから!」ハアハア
バイト「業務で、そ、そこまでしなくてもいいじゃないですか!」ハアハア
店長(……入院生活のせいで、体力が……しんど)
店長「お前こそ店で泣きついてきたじゃん!」
バイト「そ……それは! う、うわあああん!」
ダダダダッ!
店長「はやッ!?」
バイト「ごめんなさい、確かに私があそこで泣いてなかったら、店長さんに心配なんてかけませんでした……考えなしですいませええええん………!」
店長「……いや、ちょっと待って」ハアハア
ガクッズサッ
バタ――
店長「うッ……」ハアハア
バイト「え」クル
バイト「て、店長さん!?」
ザザザザッ――
バイト「店長さん、店長さん! 大丈夫ですか!?」
ストッ
店長「はあッ……はあッ……きつ」
バイト「し、心臓でも悪いんですか?!」
店長「じゃなくて……」
店長(単純に体力がないとは言えない……)
バイト「ど、どこか休めるところを……」
店長「いや、いいしッ……」
バイト「で、でも」オロオロ
店長「や、休んでたら大丈夫ッ……だから」
店長(息一つ乱してないんですけど、この人……)
バイト「……じゃあ、あそこに小屋があるので」
ガシッ
店長「ん?」
ズルズル――
店長「……運ばれてる……?」
バイト「痛くないですか……? 大丈夫ですか?」
店長「え、あ、うん」
店長(自分より小さい女の子に、運ばれている……屈辱……過ぎる)
店長「重たくないの……?」
バイト「え、軽いですよ……?」
店長「……」
ぼろ小屋――
店長(海の家の成れの果て……的な)
バイト「……店長さん」
店長「……運ばなくて良かったのに」
バイト「す、すいません」
店長「ていうかさ、明日の宿題分かってるよね」
バイト「はい……」
店長「学生だからって、私は甘やかしたりしないから……今日やれと言われたことは、今日やること」
バイト「……はい」シュン
店長(……こんなこと言いに来たんじゃないのに……みそッかすか私は)
バイト「ごめんなさい……店長さん」グスッ
店長「……なんで、こんな所まで来たの?」
バイト「……それは、いつも落ち込んだらこの海岸で……」
店長「海岸で?」
バイト「線香花火を少々……」
店長「はあ?」
バイト「……」
トテトテ――
ガサゴソ――
バイト「……ここに、密閉してストックしてるんです」
スッ
店長「頭大丈夫か」
バイト「ひどいです……」
店長「今年一番びっくりしたわ……」
バイト「しませんか? 冬に花火……?」
店長「しない」
バイト「ううッ」
店長「夏だろ、普通は」
バイト「そうですけど……そうですね」
店長「……」
店長(こんなアホなことをするために来たバイトを追いかけてきた私が、一番アホらしい……)ガクッ
バイト「……星空って、夏より冬の方が綺麗な気がするんです。ひんやりとした空気がそうさせるんですかね」
店長「……」
バイト「そんな夜空の下でする線香花火が好きなんです」
店長「寒いだけじゃん」
バイト「そ、そうですけど……」
店長「じゃあ、さっさと花火して帰る」
バイト「……うッ」
店長「生憎、私はそういうおめでたい脳みそをしてないから、気持ちがさっぱりわからん」
バイト「……バカにしないでください……ううッ」
店長「バカをバカにしてなにが悪い」
店長(……まあ、冬の海での星座鑑賞っていうのは悪くはないのかもしれないけど)
バイト「店長?」
店長(一人でするのはどうかと思う。第一、危ないし)
バイト「……じゃあ、ちょっと行ってきますね」
ガサガサ――
店長「ん……」
バイト「よいしょッ」
テテテテ――ドシャッ
店長(あ、こけた)
バイト「……あいたた」
バイト(なんだか、変なの)
バイト(私以外の誰かと、形はどうであれ、ここで花火を見てくれる人がいる)
バイト(後ろで見ている人がいる)
バイト「……」クル
店長「?」
バイト「店長さんもしませんか?」
店長「……」フルフル
バイト「あはは……」
バイト(呆れた顔してる……)
バイト(誰にも、お母さんにも友達にも内緒にしてたのに……)
バイト(私の秘密ばれちゃったな……)
バイト(他人からしたら、どうでもいい事なんだろうけど……恥ずかしいな)
カチッカチッ
バイト「っしょ」
シュッ――パチパチパチッ
バイト(綺麗……街灯も何もないから、きっと店長さんから見ても……)
バイト「……店長さん、ほら」ニコッ
パチパチッ――
店長「……う、ん」ドキッ
バイト「あ、ホントですか?! 良かった!」
店長「や、今のは……」
バイト「え?」
店長「な、なんでもない」
バイト「小波の音と、線香花火の音と、凄くロマンチックで……嫌なこともどうでも良くなるんです」
店長(メルヘン女……)
店長(ただの現実逃避に花が咲いただけ……と言いたいところだけど)
バイト「えへへ……」
店長「……」
スクッ――テクテク
バイト「店長さん?」
店長「一本もらえる?」
バイト「あ……はい!」ニコッ
ガサガサッ――
店長「……」
バイト「はい……」
店長「ん……」
バイト「つけますね」
カチカチ――シュッ
パチッパチパチッ
店長(……花火とか何年ぶりだろ)
バイト「……」チラッ
店長「……何?」
バイト「いえ……ありがとうございます」
店長「なぜ、お礼?」
バイト「……こんなのに付き合ってくださって」
店長「……」
パチパチッ
店長(仕事ばっかで、こんな風に誰かと過ごすことなかったな……)
店長「バイトは好きなんでしょ?」
バイト「はい……」
店長「それで、好き勝手にここで花火をしてる……」
バイト「ええ……」
店長「私も勝手にやってる、それだけだよ」
バイト「……」
店長「……なんでにやけてんの?」
バイト「あ、いえ別にそんなことは」アセッ
店長「あっそ……」
バイト「……」チラ
店長「何?」
バイト「店長さんは、いつもそんな喋り方なんですか?」
店長「そうだけど、何か?」
バイト「……ちょっと怖いです」
店長「……」イラッ
グリグリグリ
バイト「あ、痛い痛いッ……痛いですッ」
バイト「イテテ……」サスサス
店長(あたた、腕が……)
バイト「あ」
店長「今度は何?」
バイト「線香花火、いつの間にか消えてましたね」
店長「ああ……」
バイト「いつもここで、砂に埋もれて消える瞬間までじーっと見てるんです」
店長「それは悪いことをした」
バイト「いえ、いいんです……今夜は」
店長「……?」
バイト「モヤモヤしてたのがいつの間にかなくなってたんで……」
店長「そ……良かったね」
バイト「はい……いつも消えたあとは、我に返って、凄く寂しくなって寒くて、走って駅に向かってたんです」
店長「そうなんだ……」
バイト「今日は、温かいです」ニコッ
店長「……」
店長(よくも、まあそんな素敵な台詞をポンポンと口に出せるもんだね……)
プルル――
店長「ん?」
着信:フリーター
店長「……」
ピッ
店長「もっしー」
フリーター『今、どこですか』
店長「駅前の海岸」
フリーター『了解です』
店長「寒い。10分で来い」
フリーター『了解です』
店長「私の車に傷つけたら、今月の給料から色々差し引いとくから」
フリーター『……ラジャ』
ピッ
バイト「……」ぎゅるる
店長「お腹すいたの?」
バイト「はい……緊張して、あんまり食べれなくて」
店長「……あ、そうそう。私、肉まん買ってたわ。さっきコケた時に置いてきて……あ、あった」
タタタタ――
ヒョイ――
バイト「す、すいません気がつきませんでした」
店長「っしょ、はい」
バイト「え……」
店長「バイトに買ってきたの」
バイト「そ……そうなんですか?」
店長「ここで嘘つく意味もないじゃん」
バイト「ありがとうございます。嬉しいです……」
ガサガサ――
店長「……」
バイト「じゃあ、はい……半分こ」
スッ
店長「ん」
ひょい
バイト「……」モクモク
店長「……」モクモク
バイト・店長(冷た……さむ)
今日は、ここまでです。
ありがとうございます。
バイトのアパート
バイトのメモ―――
・店長は意外と優しい
バイト「……」ヒョイ
ボフ
バイト(昨日は結局家まで送ってもらってしまった……)
バイト(……なんて、恥ずかしいところを見られて……ああああ)カアア
バフバフバフ(枕を殴る音)
バイト(しかも、昨日メニュー覚えなかったからって、今日の昼に一緒に覚えるの手伝って下さるなんて……)
バイト(どんな顔して会えば……あ! 部屋、片付けないと!)
バタバタ!
ゴソゴソ!
ドゴゴ!
ピンポーン!
バイト(5分前!? ど、どうしよう、この箱はとりあえずここに収めておこう!)
グイグイ!
バタン!
はよ
タタタタ――ガチャッ
バイト「す、すいませんお待たせしちゃって……」
店長「いや……」
友達「おいっす!」
バイト「……はいいッ?」
店長「すでにこの部屋の前にいたが……呼んだの?」
バイト「……」ブンブン
友達「呼ばれずにくるのが私です」
バイト「……あはは」
店長「……私は、とりあえずこいつに店のメニューを覚えさせる義務がある」
友達「……私は、ここのコタツに入る務めがあります」
店長・友達「……」
バイト(え、何この空気……)アセアセ
店長・友達「バイト」クルッ
バイト「え、えっとォ……」ニコッ
バイトの部屋inコタツ――
店長「……」
友達「……」
バイト「あ、あの……紅茶とコーヒーどっちがいい?」
店長・友達「「紅茶」」
店長「どなたか知らないけど、真似しないでもらえる?」
友達「そっちこそ」
バイト(ど、どうして初対面でこんなに仲悪いの……?)ハラハラ
店長(……昨日の話を聞いたせいか……なぜか勝手に体が拒否反応を示している……)
友達(……なんだろ、なんかこのタイプの人苦手なんだよね)
店長「バイト……」
バイト「は、はい」
店長「メニューは……今日の夕方までに覚えないとダメ……分かっていると思うけど」
バサッドサッ
バイト「も、もちろんです!」
友達「ちょ、ちょっとこれ全部?」
店長「それが?」
友達「この間入ったばっかなんでしょ? それに、バイトの頭じゃ全部今日なんて無理だよ!」
バイト「フォローになってないよ……」
店長「無理だろうとやるしかない。あなたが静かにしていれば、多少はマシに覚えると思うけど」
友達「な……」ピキッ
バイト「あ、紅茶! 冷めないうちにどうぞッ! お菓子もあるから、ちょっと持ってくるね!」
ガタッ
テテテテ――
バイト(……こ、怖い)チラ
友達「わざわざ世話を焼きにくるなんて、暇ですね。これは独り言ですけど」ボソッ
店長「……配達屋は今日は休みのはずだけど。彼氏ほっといていいの?」ボソッ
友達「……あなたには関係ないじゃん」ボソッ
店長「彼女ができないから心配してたけど、もの好きもいたようだ」ボソッ
友達「あんなの、仕方なく付き合ってやっただけです。バイトと一緒にいる方が何倍も楽しいし」ボソッ
店長「……素直じゃない女は嫌われるよ」
友達「余計なお世話です」
バイト(意味が分からない……なんで因縁の敵みたいな感じなの……)ビクビク
店長「バイトッ」
バイト「はいッ!」ビク
友達「……ちょっと、威圧的に呼ぶの止めてくれますか? バイトびびってるじゃないですか」
バイト「や、その」
店長「社会に出たらこれくらいで喚いていられないから」
友達「だからって」
バイト「い、いいのいいのッ。店長こう見えても、すごく優しいんだよ」
店長「ばッ……」
友達「……ふーん」
店長「はー……バイト」
バイト「な、なんでしょう」
店長「そのメニューは今週中に覚えること」
バイト「え」
友達「良かったね、バイト」ニコッ
バイト「ええ?」
店長「後で泣きついてきても知らないから。じゃ」
とたとた――
バイト「ええええ?」
ガチャッ
バタン――
バイト「か、帰っちゃった」
友達「はー、疲れた。バイト、やつは何者じゃ?」
バイト「ええ?! 知ってて話してたんじゃないのッ?」
友達「さあ? なんか高慢チキだったから気に食わなくて」
バイト「……」ガクッ
友達「バイト?」
バイト「そっか、酔ってたから覚えてないんだね……あの人がうちのバイト先の店長さん」
友達「あ、だからメニューが何たらとか」
バイト「……正真正銘のバカだよ、友達」
友達「ば、バカ言うな!」
バイト「でも、どうしよう……怒らせちゃったのかな」
友達「……ごめん」
バイト「いいよ。友達がバカなのは今に始まったことじゃないし」
友達「ううッ……私たちずっとバカでいようね……」
バイト「う……うーん」
友達「ああ、ついにバイトの信用まで失ってしまった……」
バイト「あはは、もう気にしないでよ……今日バイトに行った時に謝っておくから、ね」
友達「ありがとおおおッ」
ガバッ
バタンッ!
バイト「きゃあッ!?」
カンカン――ピタ
店長(……明細票も一緒に置いてきてしまった……)
店長(取りに帰るのも癪だけど、仕方ない……)
カンカン――
テクテク
ガチャッ
店長「ごめん、ちょっと……」
ピタッ
バイト・友達「「あ」」
バイトと友達が組んず解れつ抱き合っていた!
店長「……明細票を忘れてたんだけど」イラッ
バイト「は……」ビクッ
友達「ああ、これ?」
ゴロン――スタッ
スタスタ――
友達「はい、どうぞ。案外ドジなんですね」
ぱさッ
店長「……どうも」
友達「いえ」
店長「……邪魔した」チラ
バイト「……あ」
ガチャ――バタン!
友達「……ありゃあ、あれは相当怒ってるな」
バイト「う、うん」
バイト(怒ってるっていうか……何だか、寂しそうな感じもした……)ズキッ
とある公園――
いしやーきいもおおお、やきいもおお――
甘くておいしい、おいもだよおお――
茶髪「結局、朝までカラオケコースになっちゃったね」
友達の兄「うん、もう眠すぎて、眠すぎて……茶髪ちゃんにあんなことやこんなことできなかったよ」
茶髪「もお、そんなのいつでも兄君ならおっけーだよ? それともこれから……ね?」
きゅッ――
友達の兄「……おおお!?」
ぎゅッ――
茶髪「……ふふ、焦らないでよ。好きにしていいからね」ニコッ
友達の兄「可愛い!くぁいいよおおお!茶髪ちゃああん!」
茶髪「兄君、ここ公園だよッ落ち着いてって!」
友達の兄「じゃ、じゃあとりあえず、い、行こっか……ホテル」
茶髪「うん……」モジッ
ぎゅうッ
おいしいおいしいおいもだよおお―――
とあるホテル――
ザアア――
コンコン
友達の兄『茶髪ちゃん、飲み物冷蔵庫に入れておくね』
茶髪「うん、ありがとう。もうすぐ出るから」
友達の兄『い、一緒に入って』
茶髪「だ、だめだよッ!」
友達の兄『うッ』シュン
茶髪「……お楽しみはとっておいて、ね」
友達の兄『茶髪ちゃんがそういうなら、大人しく犬になってます! わんわん!』
茶髪「もお、バカ」クスクス
友達の兄『わおーん!』
茶髪「はいはい、おすわりして待ってて」
友達の兄『ち、ちなみに今どこを洗って?』ワクワク
茶髪「変態! ……もうすぐ、大腿四頭筋の上辺りをなぞるよ……」
友達の兄『素直に太ももって言わないあたりにエロスを感じるよ!』
茶髪「あははッ」
バタン――
ファサッ
茶髪「お待たせ」
友達の兄「純白バスローブに包まれる乙女の柔肌……」ごくり
茶髪「やらしいなあ……」
友達の兄「ワン! ワン!」
茶髪「はいはい、ベッドの上に行ったらいい?」
友達の兄「わん!」
トテトテ――ボフッ
茶髪「柔らかい」ニコ
友達の兄「そう?」
茶髪「うん、ベッドで寝ないから」
友達の兄「そうなんだ……」ごくり
茶髪「お風呂から出ても、熱いや」パタパタ
友達の兄「……」チラ
茶髪「……見たい?」
友達の兄「……わん!!」
茶髪「……ふふ、よしよし」
ナデナデ――
友達の兄「……茶髪ちゃああん」
ガバッ!
茶髪「きゃッ……優しくしてね」
友達の兄「……う、うん」
友達の兄「……むちゅー」
茶髪「……ん」
ゴソッ
パリッ――
友達の兄「ん? パリッ?」
茶髪「ごめんねー」
ピトッ――パリッ
友達の兄「わ、わおおおおおん!?」ビリビリッ
茶髪「犬みたいな間ぬけ面」ニコッ
友達の兄「あひ……」ガクツ
茶髪「……さーて」
ガサガサ
バリバリ
茶髪「今時マジックテープの財布ってどうなのよ……」
バリバリ
茶髪「しかも、やだホテル代とタクシー代くらいしか残ってない」
ぽいツ
茶髪「使えないじゃん」
ゴソゴソ――(服を着ている)
茶髪「……っしょ」
ファサッ
茶髪「ばいばーい」フリフリ
ガチャンッ
友達の兄「……わん」ビリッ
茶髪「……はあ、睡眠削ったのに得たものがこれっぽちだなんて」ガクッ
茶髪「顔が良かっただけにおしいっつーかね……えい」ケリッ
コロン――(石ころ蹴った)
コロロ――ボテッ
店長「……ん?」
茶髪「あ、やば。すいませーん」ニコッ(営業スマイル)
店長「……いえ」
茶髪「あ、昨日の」
店長「ああ、昨日はどうも」ニコッ(営業スマイル)
茶髪「昨日は騒いじゃってごめんなさい……料理もすごく美味しかったです」
店長「いえ、またいらしてください。では」ペコッ
茶髪「はい」ペコッ
テテテテ――
店長(酔うと性格変わるのかな……この子。昨日と印象が全然違う)
茶髪「あ、そう言えば」
ピピピピ――
茶髪「金髪はどうしたかな……」
プルルル
茶髪「……でないじゃん、あいつ。何やってんの」
茶髪「まあ、あいつは普通に合コンでいったわけだし……お楽しみ中かもね」
茶髪「……どうでもいいか。眠いし、寝に帰ろ……」
タタタタ――
カンカン――
茶髪「眠い……あ、やば視界がぼやける。年取ると夜更かしできなくなるっつーか」
茶髪「……でもこうでもしないと……はあ」
ガチャッ
茶髪「……」
バイト「ええ?!」
友達「おお!?」
茶髪「はああ!?」
クルッ――チラ
茶髪「……あ、部屋間違えた。ごっめーん」フリフリ
バタンッ
茶髪「……あれ、昨日合コンに来てた子じゃん。……同じアパートとか……住所バレしちゃった……ま、害は無さそうだしいっか」
テクテク――ピタ
茶髪「……」
ペラッ(ドアの前の張り紙を外した)
『最終催告書。先日から再三に渡りご請求しております………滞納により……送電をお断りさせて……』
茶髪「あららー」
コンコン――
バイト「……誰だろ」
ゴソゴソ
バイト「さむ……」
とてとて
友達「……バイト、みかん剥いていい?」
バイト「はいはい」
スポスポッ
カチャン(鍵をかけていた)
ガチャッ
バイト「はい?」
茶髪「はろー、今晩泊めてくんない? 電気止められちゃったのよ」
バイト「……」
友達「お?」
バイト「ええ!?」
ちょっと抜けます。
茶髪「たかだか1万3000円くらい滞納してたからって、止めなくてもいいじゃんね」
バイト(みかん……)そッ
――ヒョイ、ムキムキ、パク
友達「そうだね、訴えてやればいいよ」
モグモグ――
バイト(みかん……)そッ
――ヒョイ、ムキ、パク
茶髪「何言ってんの、こっちが捕まるっつーの」
モグ、モグモグ――
バイト(……ぐすッ)
友達「じゃあ、早くコンビ二行けよ」モクモク
茶髪「金がないんだっつーの」
友達「いくらないの」
茶髪「……明後日にはまとまったお金が入る予定」
バイト「あの、それまでは?」
茶髪「……」
友達「……」もくもく
バイト「……」
茶髪「なんとかなるでしょ。今までもこんな感じだったし」
友達「で、こんな風にバイトの所に世話になるのを繰り返すわけ?」
茶髪「3日くらい寝泊りするだけだって」
バイト(日数が増えた……)びくッ
バイト「私は、全然構わないんだけど……でも、それって家族の人心配しないかな……」
茶髪「しないしない」
友達「……へー」
バイト「ホントに……そうなの?」
茶髪「うん」
バイト「……もし、茶髪ちゃんが一人でそういう風に勝手に結論づけてるなら……」
友達「バイト……」
バイト「私、茶髪ちゃんをここに泊めれない……」
茶髪「はあ? さっき構わないって言ったじゃん」
バイト「……お節介だと思うけど、この部屋はわたしが一応世帯主なので……」
茶髪「だから、心配とかしないって、うちの親は」
バイト「……なら、報告とかは」
茶髪「しても無駄無駄」
友達「……なして?」
茶髪「できないの」
バイト「え?」
茶髪「うちの親、ま、母親だけどさ、言ったって心配なんてできない。去年、脳梗塞してから喋れないんだよ」
友達「……マジで」
茶髪「マジマジッ。御年70よ」
友達「あんた何歳だよ」
茶髪「20歳」
バイト(25くらいだと思ってた……)
茶髪「上に40の兄がいてさ、そいつが面倒見てるわけ」
バイト「そう……なんだ」
友達「大変だねえ」モグモグ
バイト「ごめん……」
茶髪「……同情するなら」
友達「コタツ貸せ」
茶髪「……まあ、そういうこと。慰みものになりたくて話したんじゃなくて、ここを借りるにあたっての礼儀として話したの。同情とか気持ち悪いからやめてよね」
友達「可哀想に……よちよち。はい、おみかんお食べ」ナデナデ
グイッ
茶髪「はッ? ちょ、やめッうぐ」
ドタバタ――
バイト「……紅茶入れるね」
スクッ
バイト(……)
とぽぽぽ――
夕方――
バイト「じゃあ、バイト行ってくるから」
友達「はいはい……」
バイト「帰るときは、いつも通りポストに鍵を……って、今日はいいんだったね」チラ
友達「うん、そうだね」チラ
バイト「まさか、奨学金で同じ大学通ってたなんて……」
友達「だねえ……可愛い顔して眠っとるわ」
ツンツン――
茶髪「むにゃ……ん……さん」
バイト「?」
友達「……なになに?」
ツンツン――ギュウ
友達「お?」
茶髪「おかあ……さ……」
友達「……はいはい。よちよち」
茶髪「むッ……」ムスッ
バイト「……」
トテトテ――
バイト「よしよし……」ナデナデ
茶髪「……ん」にこッ
バイト・友達「……」
バイト「今のは……」
友達「秘密にしといてやろう」
バイト「うん……」
今日はここまでです。
>>100
まあ焦りなさんな
夜――
茶髪「……」パチ
ムクリ
キョロキョロ
茶髪「ここどこ……あ」
茶髪(……そっか、電気止められて……)
茶髪「……」チラ
茶髪(もうこんな時間か……)
茶髪(あの二人、私を置いて外出するとか……さすがに無用心すぎるでしょ)
ガタッ
茶髪「……っしょ」
茶髪(とりあえず……金目の物はっと)
ウロウロ
茶髪(……だいたいタンスの中にってのが定石だけどさ)
テクテク
ガタガタ――
茶髪(あったし……ばあさんかあいつ)
茶髪(へそくりの隠し方がなってないねえ……しかも黄色の長財布)
パカ――
茶髪(……ちッ。何にも入ってないじゃん。つまんないの)
パラッ――パサ
茶髪(ん? 何か落ちた……)
ペラッ
茶髪(……友達の写真じゃん……)
茶髪(……へー……そういうこと)
茶髪(いい趣味もってんじゃん……)
テクテク
茶髪(このクローゼット……何か怪しいのよね)
キイ――
茶髪(箱?)
茶髪(……)
ヒョイ――パカ
茶髪「……これは」
――グニグニ
茶髪「くッ……あははッアははッ!?」
茶髪(……帰ったらこれで遊んでやろッ……クスクスッ)
茶髪「……」グー
茶髪(お腹すいた……)
茶髪(ひと稼ぎしに行くか……お兄ちゃんからお駄賃程度しか稼げてないし……)
茶髪(そもそも、こんなボロアパートに暮らしてる女子大生を当てにするのは間違い……)
街――
茶髪「お兄さん、ちょっといいですか?」
眼鏡の男「え?」
茶髪「……この当たりってどこか軽く休憩できるところってありますか?」
眼鏡の男「……えっと、すぐそこにカプセルホテルがあるよ」
茶髪「あ、そうなんですね……私、最近こっちに引っ越してきたばかりで……」
眼鏡の男「そうなんだ」
茶髪「……ええ、それで道に迷って……なのでもし良ければ案内してもらえませんか? お忙しければかまいません……」
眼鏡の男「それくらいなら別に……」
茶髪「ありがとうございますッ」
ペコ――
テクテク――
茶髪「この辺りは……暗いのでちょっと心細かったんです」
眼鏡の男「君、大学生? この辺りは風俗街だし気をつけたほうがいいよ」
茶髪「ええ、なので、お兄さんみたいな人がいてくれて本当にほっとしました。それに、凄くかっこいいですし……」ボソッ
眼鏡の男「や、やだな。褒めても何も出ないよ」
茶髪「い、いえ。そういうのとかではなくって……ホントに」
眼鏡の男「え? ……あ、ここだよ」
ピタ――
茶髪「あ、本当にありがとうございます」ペコ
眼鏡の男「いえいえ……じゃあ、気を付けて」
クル――
茶髪「あ、待ってくだ」
ガツッ――(石に躓いた)
茶髪「きゃッ……」
ドサッ――ぎゅ
眼鏡の男「と、大丈夫?」
茶髪「はい……」
ぎゅ――むにゅ
眼鏡の男「……」ごくッ
茶髪「……あッ、いたッ」
眼鏡の男「ど、どうしたの?」
茶髪「今ので足をくじいちゃって……どうしよ」
眼鏡の男「……良ければ、部屋まで肩貸そうか?」
茶髪「そ、そんな悪いです……一人でも」
フラッ――
茶髪「いたッ……」
眼鏡の男「ほら、捕まって……」
茶髪「すいません……」
―――
――――――
カプセルホテルとある一室
眼鏡の男「荷物ここに置いておくよ」
茶髪「何から何まで……ありがとうございます」
眼鏡の男「いや、どうせ暇だったしいいよ」
茶髪「……あの」
ギュウ―――
眼鏡の男「どうしたの?」
茶髪「……えっと」
眼鏡の男「言ってくれないと分からないよ?」
茶髪「こっちに来て、こんな風に誰かに優しくしてもらったのって初めてで……」
むにゅ――
眼鏡の男「……」ごくッ
茶髪「良ければ、お礼がしたくて……」
眼鏡の男「ど、どんな?」
茶髪「……」
プチプチ――パサッ
眼鏡の男「……あ、ちょ、ちょっと」
茶髪「……こっちに来て、まだ友達もできてなくて……寂しくて」
ヌギヌギ――ファサッ
眼鏡の男「……」ドキドキ
茶髪「ここで、一緒に温まっていきませんか……?」
ギュウ――
眼鏡の男「……あ、あの」ゾクゾクッ
茶髪「……お願い」
プチ――
眼鏡の男「……分かった」
茶髪「……」
眼鏡の男「後悔しないのかい?」
茶髪「お兄さんとなら……」
眼鏡の男「……じゃあ、ベッドに行こうか」
茶髪「はい……」
ギシッ
茶髪「……ここ、凄くドキドキしてるんです」
スッ――サワ
眼鏡の男「……ああ、ホントに」ゾクッ
茶髪「早く……触ってください」
眼鏡の男「……その前に、君の唇の味から」
ソロ――
ビリッ――
眼鏡の男「ビリッ?」
ピトッ――ビリビリリッ
眼鏡の男「あじゃぱッ!?」
ガクッ――
茶髪「……あーら、いい男がヨダレ垂らして台無しだねー」
ゴロン――
茶髪「……さって」
ゴソゴソ――
茶髪「ひー、ふー、みーっと…私に触れたんだから、お代は高くつくよ……」
ペラペラペラ――
茶髪「……っしゃ、後よろしくね。お・に・い・ちゃんッ」
ペチペチ――
眼鏡の男「……あがッ」
ガチャ――バタン!
とある居酒屋―――
バイト「……」ブツブツ(皿を洗いながらメニューを覚えている)
店長「……何呟いてんの。怖いんですけど」
バイト「あ、メニューを覚えようと思って」
店長「っそ。偉いじゃん……しょッ」
ガシャッ
バイト「て、店長、洗い物は私が持ってきますから……」
店長「いいよ。これくらいできるから」
バイト(……普通を装うとしてるけど、若干、動きが硬いのですが……それを言うと、店長の性格上、逆上してしまうのかな……)
フリーター「店長、無理せず奥に引っ込んでいてくださぶほッ」
店長「お前に心配されるようになったら御終いだ。無駄口叩いてないで、自分の仕事しろ」
フリーター「……叩かないでください」
店長「はい?」
フリーター「なんでもないっす」
バイト「……」ビクビク
フリーター「日常茶飯事だから」
バイト「そ、そうなんですか」
店長「はい、散れ散れ」
バタバタ――
バイト「……っしょ」
常連客「お、新入りちゃん……可愛いねー、名前は?」
バイト「えっと……」
常連客「んー? 聞こえないにゃー?」
ズイッ
バイト「えとえと……」
バイト(ひ、ひえー……顔近いよう……お酒臭いよう)ビクッ
ダンッ!
常連客「ん?」
店長「生中です。バイトに手出しら死刑ですよ」ニコッ
常連客2「よ! 店長の死刑頂きました!」
パチパチパチ――
店長「はいはい、今日は酢ものサービスしてあげますから黙って男同士で飲み明かしてください」
常連客「愛情はブレンドしたかにゃー?」
店長「してません」ニコッ
常連客2「店長の営業スマイル頂きました! スマイル0円! スマイル0円!」
バイト(酔っ払いって……こんな感じなんだ)ビクビクッ
店長「バイト、早く次行く」
バイト「はいッ」
営業後――
女性客「バイトちゃーん、また来るねー。店長、バイトちゃんに優しくしてあげてよー」フラフラ
店長「はいはい、また家でゲロらないでくださいね」
女性客「やーん、それ二人だけの秘密でしょー!」
店長「代行呼んどきましたから、早く帰ってください。ありがとうございましたー」ペコリ
バイト「ありがとうございましたー」ペコリ
女性客「もお、ありがと!」
ちゅッ――(投げキッス)
店長「……」
ペシッ――
女性客「ばかあ!」
ガラガラガラ――ダダダ!
バイト「い、いいんですか」
店長「うん」
店長「さって、片付け15分で終わらして、さっさと帰るよ」
フリーター「無理でぶほッ」
バイト(また叩いた……)ビクッ
店長「やれ」
フリーター「はい」
バイト「は、はい!」
ダダダダ――
バタバタ――
ガチャガチャ――
店長(いっ……)
店長(はあッ……)
バタバタ――
―――
――――――
―――――――――
バイト「て、店長終わりました!」
店長「よし、終わったら帰れ」
フリーター「うす」
バイト・フリーター「お疲れ様でしたー」
店長「ん」
ガラガラ――
テクテク
バイト「店長さんは……いつ帰られるんですか?」
フリーター「1時間後くらいには帰ると思うよ」
バイト「そうなんですか……」
フリーター「アルバイトはさっさと帰らせて、残業させない……店長の方針」
バイト「ありがたいですけど、でも」
フリーター「バイト、店長は仕事だから。同情するようなことじゃない。帰りが早くなるに越したことはない」
バイト(でも……腕があんまり使えないし……仕事もやりにくいんじゃ)
フリーター「仮に、自分の手に負えないなら、店長は配分してくるから。心配しないで」
バイト「……はい」
フリーター「じゃ、僕はこっちだから」
バイト「お疲れ様でした」
フリーター「……お疲れ」
バイト(……フリーターさんは、慣れると良く喋ってくれるんだ……)
バイト(店長……そう言えば、酔うとどうなるか気になる……はッ、私何考えてるんだろ……帰ろ)
トボトボトボ――
今日ここまでです
もうちょっとだけ続けます
茶髪がいつ痛い目みるのか考えたら心配
バイトのアパート――
ガチャ
バイト「ただい……こ、これは」
茶髪「あ、おかえりー。早かったじゃん」
バイト「この匂い……茶髪ちゃん、料理作れたの? じゃなくて、ど、どこからこんなお金を……」
茶髪「はあ? 食費くらいはあるっつーの」
バイト「そうなんだ……それは?」
茶髪「これ? 見ての通りシチューだけど。文句ばっか言ってると食べさせないよ」
バイト「……た、食べたいです」
茶髪「てか、あんた冷蔵庫にろくなものないんだけど」
バイト「えへへ……」
茶髪「女子力低いんじゃないの」
バイト「茶髪ちゃんには言われたくないような……」
茶髪「へー……こんなもの持ってる女に言われたくないんですけど」
ガサガサ――ぐにゅぐにゅ
バイト「え? あ、もうッ……それせっかく仕舞ったのに」
茶髪「動揺しないんだ」
グニグニ――
バイト「ちょ、ちょっと頬っぺたにひっつけないで……肌触りあんまり好きじゃないんだよ」
茶髪「あんた、まさかこれが何か知らないってんじゃ」
バイト「これ、何?」
茶髪「……教えてあげてもいいんだけどね」
バイト「?」
茶髪「そもそも、誰にもらったの? 彼氏?」
バイト「友達だよ。彼氏はいません……」
茶髪「なに、あんたらやっぱりそっちの気が?」
バイト「なんのこと?」
茶髪「いや、まあいいわ。夕飯の後に教えてあ・げ・る」
バイト「なんだか……怖い」
茶髪「……怖くない怖くない」ニコッ
バイト「……」ビクッ
―――
――――――
―――――――――
バイト「美味しい……美味しいよこれ!」モグモグ
茶髪「当たり前でしょ」
バイト「帰ったら温かいごはんが待ってるって、幸せだね……私、今、三国一の幸せ者だよ」ニコッ
茶髪「……」ドキッ
バイト「茶髪ちゃん?」
茶髪「言い回しがババア臭い」
バイト「ひどいよぉ」
茶髪「あんたと友達ってさ、どういう関係なの」
バイト「え? ……ま、まいべすとふれんど?」
茶髪「なぜ片言……」
バイト「急にどうしたの?」
茶髪「ちょっと興味沸いたの」
バイト「……特に普通だよ」
茶髪「……へー」ニヤニヤ
バイト「明日、学校行く前に友達の家によるんだけど……茶髪ちゃんは」
茶髪「あたしは遠慮しておくわ……二人の間に割って入るなんてねえ」
バイト「どういう意味……?」
茶髪「どういうって、そういう意味しかないでしょ」
バイト「だから……」
茶髪「これさ……落ちてたんだけど」
ペラ――
バイト「それッ?!」
茶髪「友達の写真……ごめんねえ、見る気はなかったんだけど。目につくところに落ちてたからさあ」ニヤニヤ
バイト「……仕舞っておいたのに」
茶髪「あんたさあ……」
バイト「やめて……言わないで」
茶髪「いつからなわけ?」
バイト「もう、違うから……」
茶髪「なに? 失恋? 告ったの?」
バイト「……聞かないでよ」
茶髪「あんた、未練たらたらな顔で何言ってんの」
バイト「か、顔に出てる……?」アセッ
茶髪「今はね……友達のやつがいたときは、特に変わりなかったけど」
バイト「そっか……良かった」
茶髪「何、やっぱり振られたんだ」
バイト「違うよ……違うけど、同じようなもの、なのかな」
茶髪「言ってみなさいよ」
バイト「引かない?」
茶髪「内容による」
バイト「でも……こんなこと誰にも言えないよ」
茶髪「誰にも言えないってストレス貯めるよりさ、まさかこいつにって言う奴に言ったほうが案外すっきりするんじゃない?」
バイト「どうして、会ったばかりなのに……」
茶髪「面白いから」
バイト「やっぱり言わないッ」
はやく茶髪を処分したい
茶髪「ごめんごめん。あんたの弱みを握っていいように使ってやろうなんて考えてないって」ニヤニヤ
バイト「もう怒る気力も沸かないくらい全部洗いざらい言ってくれたね」ビクビクッ
茶髪「言葉のあやだって」
バイト「茶髪ちゃんが、まさかこんな人だったなんて」
茶髪「外面だけは自信あるのよね」
バイト「……茶髪ちゃんの方が心配だよ」
茶髪「外見に騙される方が馬鹿なの。自分の価値観で勝手に理想像作ってオナってる人間はみんなね」
バイト「オナ?」
茶髪「うふッ……それも含めて、この後、教えてあげる」
バイト「……え、遠慮しておきます」
茶髪「あんたみたいなのがしっかり知識もってないから、変な男にひっかかるのよ」
バイト「ど、どういう……」
茶髪「その前にしっかりしつけといてやらなきゃ」
バイト「いい、いいよッ」ブンブン
―――
――――――
―――――――――
茶髪「……ほら、じっとしてなさいよ」
バイト「……や、やめ」
うにうに――
茶髪「はーい、ご飯でちゅよー」
バイト「な、なんでこんな流れじゃなかったのにッ」ビクビクッ
茶髪「さっさと口開けなさい」
バイト「や、やだ」
茶髪「これはね、上の口につっこんだり下の口につっこんだりする代物なわけよ」
バイト「し、下の口?」
茶髪「正しく清く使ってなんぼ」
バイト「これは清くないって思うんだけどッ?」
茶髪「いいから」
ズボッ――
バイト「あばごあッ?!」
ジタバタッ
茶髪「歯を立てない」
バシッ――(お尻を叩いた)
バイト「?!」
ジュポジュポ――
バイト「あにすりゅの?!」
ジュポジュポ――
茶髪「あっははあはッ!」
―――
――――――
―――――――――
茶髪「あははッ!? ひあははッ?!」
バイト「顎が外れるかと……」
茶髪「いやいや、あんた案外のりのりだったじゃん」
バイト「のってないよ!」
茶髪「憂さは晴れた?」
バイト(うッ……意味わからなくてしんどいことさせられたのに……心なしかどこか吹っ切れたような気持ちがするよ……)
バイト「……別に」
茶髪「へー、まだ足りないなんて」
バイト「そういう意味じゃなくて」ビクッ
茶髪「じゃあ、次は下の口にもつっこんで……」
バイト「……?」ビクビクッ
茶髪「ふッ……お楽しみはとっておかないとね」ニコッ
バイト「け、結局何がしたかったの……?」
茶髪「楽しけりゃそれでいいのよ」
バイト「……う」ガクツ
翌日――
バイト「……」
ムクッ
バイト(顎が痛い……筋肉痛?)
バイト「……ふあ」
グイッ――
バイト「ん?」
茶髪「……すー」
バイト(……あれ、茶髪ちゃんベッドで寝てたはずなのに……落っこちたのかな)
茶髪「うん……」
バイト(寝顔は天使……)ホッ
茶髪「……さん」
バイト「……」
茶髪「お……」
バイト(色々あるんだ……よね)
バイト「……茶髪ちゃん、朝だよ」
茶髪「……あと、1日」
バイト「……あはは」
トントントン――
バイト(色々買ってきてくれてる……ありがたい)
茶髪「……ふああ」
バイト「あ、おはよう」
茶髪「さむっ……こたつぅ」
トテトテ――ゴソゴソ
バイト「もお、手伝ってよ」
茶髪「昨日の残りあるじゃん」
バイト「……ほとんどないから、作ってるの」
カチっ――
茶髪「えーなに、目玉焼きに味噌汁にって……主婦だねえ」
バイト「……っしょっと」
とぽぽぽ――
バイト「はい、どうぞ」
ゴトっ――ゴトっ
茶髪「目が覚めたら朝ごはんがある幸せ……」
バイト「昨日のお礼も兼ねて」
茶髪「あんたって……ほんとお人好し」ボソっ
バイト「え?」
茶髪「いや」
バイト「はい、じゃあいただきます」
茶髪「いただきます」
ヒョイっパク――
茶髪「うっ……」
バイト「どうしたの?」モグモグ
茶髪(食べれないことはない……食べれないわけではない……でも、そう一言でいうならこれは)
茶髪「まず」
バイト「えええ!?」
とある国立大学――
バイト「走って走って!」
友達「ま、待って」
茶髪「はっ、あいつの体力どうなってんのっ」
バイト「共通科目の先生はネチネチしてるって有名なんだから」
友達「遅れて入るくらいならいっそ」
茶髪「ばっくれる?」
友達「ありかな」
バイト「なしだよ!」
ブーブー
茶髪(ん? ライン? 誰?)
――ピコっ
金髪:今、どこですか?
茶髪:大講義室の近く
金髪:出席はつけときましたから
茶髪:サンキュ
金髪:今度はダブらないようにしてくださいよ
茶髪:あんた、それ他の奴にバレると色々面倒くさいんだから
金髪:わかってます
茶髪:じゃあ、また後で
金髪:待ってます
大講義室裏口――
バイト「……ついた!」
茶髪「あー……しんど」ハアハア
友達「ジュース……買う?」はあはあ
バイト「もう、早く入るの!」
ガチャ――
茶髪「じゃ、あたしはこっちだから……」
スタスタ――
バイト「あ、うん」
友達「あれ……金髪じゃん」
バイト「ホントだ」
友達「世の中狭いね」
バイト「ホントに……」
友達(……どっかで見た顔だと思ってたけど、まさかあの金髪か)
バイト「友達?」
友達「あ、いや」
黒髪ショート「あ、二人共こっち席とっといたよ」
バイト「ありがと、ごめんね」
黒髪「ついでに出席も」
友達「女神様、ありがとう」
黒髪「いいよ。今日は徳を積む日だから」
友達「……」
バイト「……」
友達「今度は何の新興宗教に騙されてるの?」
黒髪「失礼だね。人をミーハー扱いして」
友達「だって、前は○○は人の一生を決めるとかなんとかって」
黒髪「それは飽きたので」
バイト「止めて大丈夫なの?」
黒髪「引き止められたよ。不幸になるとか、やらなければ家族不和が起きるとかって」
友達「あんたも懲りない女よのお」
黒髪「人生の軸を探しているだけなんだけどね」
バイト「ぶれぶれだよ……」
黒髪「じゃあ、バイトにはある? 人生の軸」
バイト「えっと……」
友達「私の軸はバイトだよん。バイト一筋この道4年」
黒髪「ああ、高校からの付き合いだっけ。バイトの唯一のモテ期が、これか」
バイト「二人共……授業中だからもっと静かに」
黒髪「逃げたな」
友達「バイトが冷たい……」ううっ
バイト(そんなこと言われても……友達の馬鹿……)
黒髪「教授の話を真面目に聞くのも、自分への奉仕か……」
友達「あんたはそうでもしないと勉強できんのか……」
所変わって――
金髪「茶髪先輩、起きてください」
茶髪「あんた、先輩ってつけるなって言ってるでしょ」
金髪「……すいません、茶髪先輩」
茶髪「……そんなんだから虐められんのよ」
金髪「でも、茶髪先輩が守ってくれるじゃないですか」
茶髪「飽きたら止めるから」
金髪「茶髪先輩がいないと、私生きていけません」
茶髪「真顔で、何を気色悪いこと言ってんの」
金髪「だって、本当のことですもん」
茶髪「この間の男は」
金髪「先輩の真似をしても、男の良さは分かりませんでした。むしろ、生理的に無理」
茶髪「せっかく誘ってやったのに……あんたは」
金髪「無理なのものは無理です」
茶髪「そ……あ、今日は私昼で抜けるから」
金髪「分かりました」
茶髪「自分で対処しなよ」
金髪「はい」
茶髪「……」チラ
金髪「……」
―――
――――――
―――――――――
休憩――
黒髪「先週のトイレットペーパー散乱事件さ、犯人の目星がついたみたいだよ」
バイト「あれ、もったいないよね。ほんとに」
友達「心配するのはそこじゃないけどね」
黒髪「そして被害者の方も」
バイト「被害者? 被害があったの?」
黒髪「私の情報筋では……被害者は金髪」
友達「……黒髪。時と場所を選んで」
黒髪「へっ」クル
金髪・茶髪「……」
黒髪「うわっちゃ……ご、ごめんよ」
金髪「……」ふい
茶髪「あの子怒らせると、怖いんだからね」クスクス
バイト「ご、ごめんね!」
金髪「……本当のことだし別にいい」チラ
友達「……あんた」チラ
金髪「……」
カツカツカツ――
いったん抜けます
乙。
国立大学ってあれでしょ?国立(くにたち)音楽大学的な。
>>159
ベタ過ぎて吹きました
黒髪「怒らせちゃったみたいだ」
友達「今ので積んだ徳がおじゃんになったんじゃない?」
黒髪「……と、友達、何か買ってきましょうか」
友達「どんな徳の積み方だよ」
バイト「……私、ちょっと」
友達「バイトが行くことじゃないって」
バイト「……でも」
黒髪「真実を語るには早すぎた……」
友達「お前さんの口と信念の軽さには脱帽ですわ」
黒髪「こうなったら、金髪の靴でも温めに……」
友達「馬鹿だろ」
黒髪「そうだよ?」
友達「……」
バイト「……」
お昼休み――
――食堂裏のベンチ
金髪「……茶髪先輩」もぐもぐ
(自主制作した茶髪人形を横に置いて、お昼ご飯を食べている)
金髪「……私も一緒に連れていってくれてもいいのに……」もぐもぐ
ガシ――ポチ
茶髪人形『泣くな、頑張れ』
(中に別の人形を入れている)
金髪「はい、頑張ります……」
ポチ――
茶髪人形『不死鳥のように何度でも』
ポチ――
茶髪人形『おめえの飯は最高』
金髪「ありがとうございます……」
ポチ――
茶髪人形『す、好き……って何言わせ』
金髪「……うひょっ」
ザッザッ
金髪「はッ」
ブーツ女「誰かと思えば、金髪じゃない」
パンプス女「一人飯で独り言で一人芝居?」
スニーカー女「頭大丈夫?」
金髪「三馬鹿……」
ブーツ女「……いきなり馬鹿呼ばわりってひどいじゃん。せっかく一緒にご飯食べてあげようと思ってたのにさ」
金髪「ノーセンキュー……」
パンプス女「あんたのその社交性の無さのせいで、友達できないってそろそろ気づきなよ」
金髪「なんで、あんたたちにそんなこと言われなくちゃいけないのよ」
スニーカー女「わかんないかな。ちょっと前まで同じグループだったよしみだって」
金髪「人にモノを頼むときは、もうちょっと腰を低くしてから来てよ」
ポチ――
茶髪人形『帰れ! 三度目くらいには会ってやる!』
パンプス女「きも……」
金髪「はあ?」
スニーカー女「あんた、どんどん人間離れしていってるけど大丈夫?」
金髪「少なくとも、あんたらと誰かを貶めたりしてないから大丈夫」ニコッ
パンプス女「あんたのその笑った顔……むかつくわ」
ブーツ女「金髪、あんたが茶髪に余計なこと吹き込むから……」
金髪「あんたらがパシッてた理系男子君は、今じゃ立派な茶髪せ……茶髪のあっしー君よ」
ブーツ女「人のものは取るな……取られたら3倍返し」
金髪「……こわ」
パンプス女「あんたが茶髪とつるまないって言うなら……ちゃらにしてあげるんだけどね」
金髪「……」
ポチ――
茶髪人形『欲ばかり吐く人間は嫌いだ』
パンプス女「……」
スニーカー女「……」
ガシッ!
金髪「ああ?! 茶髪先輩に何するの!?」
スニーカー女「……」
ぽいッ――
ポト――ポチ
茶髪人形『吐くなら愛を吐きな』
茶髪人形『……』ガクッ
金髪「ああッ……」ヨロ
ブーツ女「……あんたの良いところって、ホント顔だけだよね」
金髪「……あんたの良いところって探したくないよね」
ブーツ女「また、巻き巻きにされたいんだ……?」
金髪「また、水ぶっかけてやろうかしら……?」
友達「その時、因縁の対決が始まろうとしていた……そこに颯爽と現れる私」モグモグ
ブーツ女「な……?!」
金髪「ちょ?!」
―――
――――――
バイト「あれー? ここにあった私のパイナップル知らない?」
黒髪「私の、杏仁豆腐が忽然と消えた……神隠し……?」
バイト・黒髪「……」
バイト「……友達は?」
黒髪「トイレって……」
バイト・黒髪「……」
ブーツ女「ちょっと、なんでまた友達がいるわけ」
金髪「呼んでないんだよ帰れ」
友達「もう、戻れない!」
ブーツ女「馬鹿……ちょっと、スニーカーとパンプス、こいつどうにかしてよ」
友達「あ、ちょ」
がしッ――
友達「やめ」
がしッ――
ズルズル――
ブーツ女「はあ……」クル
ダダダダ――!
金髪「こんな寒い所いつまでもいてたまるか!」
ポチ――
茶髪人形『す、好き……って何言わせ』
金髪「あ……間違えた」
ダダダダ――!
ブーツ女「……逃げられたし」
ぽいッ――
友達「わとと……」
スニーカー女「邪魔しないでよ……」
パンプス女「あんたには関係ないでしょ……」
カツカツカツ――
友達「……」
バイト「友達……人のデザートだけ食べてどこに言ってたの?」
黒髪「こら、人の楽しみを奪ってどこに行っていた!」
友達「……ごちそうさまでした」
バイト「……反省の色が全く見えない」
黒髪「むしろどこか満足気……」
友達「お……」
バイト「お?」
黒髪「お……?」
友達「お腹すいた」
今日はここまでです
国立駅周辺題材に何かssが書けそうですね
どこかの空き教室
ガタンッ
金髪「友達のやつ……何考えてるのかしら」
グウー
金髪「……あの三馬鹿のせいで……お弁当食べ損ねたわ」
ポチ――
茶髪人形「……」
金髪「あ、あれ?」
茶髪人形「……」
金髪「壊れちゃった…ボタン押しすぎたのかな」
ポチ、ポチ、ポチ、ポチ、ポチ――
とあるラウンジ
黒髪「おまいさんは人のデザートを何だと思ってるんだい」
友達「お前のものは俺のもの的な」
バイト「こらこら……」
黒髪「てか、さっきのってブーツ女の取り巻き1号さんと、2号さんだったけど、何かあった?」
友達「いや、ちょっと……」
バイト「どうしたの?」
友達「むしゃくしゃして、正義を執行しに」
黒髪「……喧嘩か!」
バイト「……喧嘩はだめだよ?」
友達「のー! 違う! 何もしてないあるね!」
バイト「ホントに?」
友達「ちょろっと見に行っただけだって。バイトのCカップに誓う」チラ
バイト「ひゃあッ?!」ビクッ
黒髪「目だけで感じさせるとは恐ろしい女よ……」
バイト「ちょ、ちょっともー……」
黒髪「最近の友達の言動って、バイトへの愛が溢れんばかりというか拍車が掛かって変態というか……」
友達「おっと、この気持ちがバイトにバレる前にうまくカモフラっとかないとね」
バイト「ちょッ」ドキッ
黒髪「解説どうも」
バイト「と、友達、変な噂が広まったらどうするの……」
黒髪「私は一向に構わない。むしろ、もっとやれ」
バイト「……いやいや」
友達「やれやれ」
黒髪「お前が言うなってね」
友達「ですよね」
バイト「……はあ、もお」
友達「……」チラ
ガタッ
友達「さて、これ以上一緒にいると襲っちゃいそうだから、次の授業行くわ」
黒髪「え、もうそんな時間?」
バイト「た、大変……次、実験だった」
黒髪「友達の指紋消さないようにね」
バイト「そんな試薬使う実験じゃないからね……」
友達「じゃ、お先にー」
黒髪「そんじゃ私もー」
タタタタ――
バイト「あー、早いー……ッ」
とある実験室
ガラガラ――
バイト(やばい、準備に手間取っちゃった……ぎりぎり)
シーン――
バイト「あれ? 誰もいない」
バイト「……」
ガサガサ(スケジュール帳を取り出す)
バイト「……きゅ、休講……」ガクッ
バイト「……あれ?」キョロキョロ
バイト「友達? どこ行ったの?」
どこかの空き教室――
ポチポチポチ――
コンコン――
金髪「ッ?!」
ボトッ(人形が落ちた)
バタタ、ゴン、ガタタ!(教卓の裏に隠れた)
ガラガラ――
友達「……ちわー」
友達「……」チラ
友達「おー、こんなところに人形があるねー」ヒョイ
金髪「ちょっと! それに触らないでよ!」
ガタタ!
友達「なんで教卓の裏にいるのさ」
金髪「なんでもいいでしょ……」
友達「……話があるんだけど」
金髪「なに、さっきのことなら礼なんて言わないから」
友達「やだなー、そう言うんじゃなくって。茶髪先輩のこ・と」
金髪「茶髪先輩になんの用?」
友達「……まあ、なんていうかね、兄が怒り狂っちゃてて」
金髪「カモになったあんたのアホ兄が悪いんじゃない。嘘かどうか見抜けなかったそいつの落ち度」
友達「うーん、アホなのは否定しないんだけど……アホなりに悩む所もありまして」
金髪「……つまり、茶髪先輩に謝らせろって言いたいの?」
友達「お、話が早い」
金髪「あんたには、確かに、頼んでないけど二回借りはあるけど……」
友達「うんうん」
金髪「それとこれとは別。私は茶髪先輩を売り渡す真似はしないの」
友達「……そっか」シュン
金髪「それに今日は先輩いないのよ、残念だったわね」
友達「また、やってるの……?」
金髪「余計なことに首突っ込まない方がいいよ」
友達「……」
渡り廊下――
カツカツ、ピタ
友達「……」
友達(どっちが、首突っ込んでるんだか……ん?)
――中庭を見下ろす
バイト「……」キョロキョロ
友達「……と、探してら。可愛いねえ」
バイト「……」キョロ
タタタタ――ドテっ
友達「あ、こけた……おーい!」
バイト「っしょ……あ、ともだちー……休講なの教えてよーっ」ウルウル
友達「ごめんごめん。あと、黙っていなくなってごめんねー、すぐ下行くから」
友達(……もし、バイトに被害が及ぶようなことがあったら……)
バイト「早くきてねー……っ」ウルウル
友達「はいはーい」ヒラヒラ
友達(……許せないなあ、きっと)
カツカツカツ――
今日はここまでです
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