オタク「ボクの幼馴染ちゃんが最近イケメンと仲が良い」(163)

<学校>

オタク「幼馴染ちゃん!」

幼馴染「なに?」

オタク「今日は一緒に帰らないかぁい?」

幼馴染「悪いけど私、イケメン君と一緒に帰るから」

オタク「えっ……」

オタク(イケメンと一緒に……だと……!?)

オタク「じゃあボクも一緒に──」

幼馴染「イヤだよ」

オタク「な、な、な……!」

オタク「なんでだよぉっ!」

オタク「中学まではよく一緒に帰ったじゃないかぁっ!」

オタク「ボクよりイケメンの方がいいのかよぉっ!」

幼馴染「はぁ……」

オタク(ため息!?)

幼馴染「当たり前じゃん」

オタク「!」

幼馴染「まさか今さらになってそんなこといわれるとは思わなかったよ」

オタク「どういうことだようっ!」

幼馴染「冷静に考えてみなよ」

幼馴染「アンタ、イケメン君に勝ってるところ……ある?」

オタク「えぇっ!?」

オタク「も、もちろんあるよ!」

幼馴染「ふぅ~ん、あるんだ。じゃあ挙げてみてよ」

オタク「え、えぇ~と、えぇ~と……」

オタク「まずは体重! ボクは彼の1・5……いや2倍くらいはあるよ!」

オタク「重い方が強いっていうのは、常識だよね!」

幼馴染「…………」

オタク「もちろん体脂肪率だって負けてないハズだよ!」

オタク「彼はせいぜい数%だろうけど、ボクは30%を超えてるもの!」

オタク「知ってるだろうけど体脂肪がある方が、寒さには強いんだよ!」

オタク「ボクは地球が氷河期になっても耐えられるんだよ!」

幼馴染「…………」

オタク「他にもあるよ!」

オタク「髪の毛のフケの量だって、ボクの方が多いハズさ!」

オタク「最近は風呂よりゲームを優先してるから、髪の毛をほとんど洗ってないからね!」

オタク「ニキビの数だって、負けちゃいない!」

オタク「思春期なのに加え、ボクは脂っこいものが大好きだからね!」

オタク「顔面がちょっとした健康サンダルみたいになってるだろ!?」

オタク「そしてなによりなによりぃ~」

オタク「ボクの方が彼より圧倒的にアニメやゲームの知識があるってことさ!」

オタク「ボクがクラスのみんなからなんて呼ばれてるか知ってるだろ!?」

オタク「学校内引きこもりって呼ばれてるんだよ!」

オタク「すごいだろう!?」

オタク「学校に来てるのに引きこもりみたいなヤツっていうことなんだよ!」

オタク「ゲームは一日24時間!」

オタク「授業中に堂々とパソコンを開いてネットゲームをするボクに」

オタク「もはや先生も注意しなくなった!」

オタク「国連に例えるなら、常任理事国並の特別待遇だよコレは!」

オタク「イケメン君には、こんな特権ないもんねぇ~!」

幼馴染「──バッカじゃないの!?」

オタク「!?」ビクッ

幼馴染「あ~……もう」ハァ…

幼馴染「今さらいうまでもなく、アンタがバカだってのは分かり切ってたけどさ」

幼馴染「ここまでイッちゃってるとは思わなかったよ」

幼馴染「小中高と同じ学校のよしみでハッキリいってあげるよ、ウン」

幼馴染「キモイんだよ、アンタ!」

幼馴染「口を開けばアニメだのゲームだのばっかり」

幼馴染「たまにちがう話題を出すかと思えば、ほとんど愚痴か陰口」

幼馴染「階段を一段上がるだけで息が切れる体力のなさ」

幼馴染「もちろん勉強なんかろくにしてないから成績だって下の下」

幼馴染「オマケに得体の知れない体臭が常に漂ってるしさ」

幼馴染「アンタには男としての……いや、人間としての魅力がカケラもないんだよ!」

幼馴染「分かるでしょ!?」

オタク「そ、そんなぁ……!」

オタク「でも君だって昔はよくボクとアニメや漫画の話をしたじゃないかぁ~!」

オタク「ボクのことを、スッゴォ~イとかいってくれたじゃないかぁ~!」

オタク「あれはみんなウソだったのかよぉ~う!」

幼馴染「そりゃあ、昔は子供だったからね」

幼馴染「そっち方面に詳しいアンタをスゴイとか思ってた時期もあったよ」

幼馴染「アンタももう少しマトモだったしね」

幼馴染「だけど限度ってもんがあるよ」

幼馴染「普通は年をとるごとに卒業……」

幼馴染「卒業しないとしても、あまり人前でそういう話はしなくなるってもんだよ」

幼馴染「なのにアンタときたら、年をとるごとにエスカレートしてったからね」

幼馴染「ところかまわずでかい声で、ゲーム内の女の子がどうのこうの話すヤツなんかと」

幼馴染「一緒に歩きたくないの、こっちは!」

幼馴染「女としてはもちろん、人間として恥ずかしくなるの!」

幼馴染「分かった!?」

幼馴染「ていうか、分かれ!」

オタク「あうう……う……」

オタク「う、う、う……!」

イケメン「やぁ!」スッ

オタク「!」

イケメン「幼馴染君、待ったかい?」

幼馴染「ううん、ちっとも待ってないよ~!」

イケメン「そうか、よかった……」

オタク(イケメンめ……ボクの幼馴染ちゃんになれなれしく……!)

イケメン「おや、オタク君もいたのか。どうだい、君も一緒に──」

幼馴染「あ、いいのいいの。アイツは」

幼馴染「行こっ」

イケメン「……ああ、うん。じゃあオタク君、またね!」

イケメン「…………」チラッ

オタク「?」

イケメン「…………」フフッ

オタク「!!!」

オタク(ちくしょう……)

オタク(ちくしょうちくしょうちくしょう……)

オタク(あいつ、笑いやがった……!)

オタク(絶対笑ったよ、あいつ!)

オタク(イケメンめぇ~! ボクの幼馴染ちゃんと一緒に帰るだけでは飽き足らず)

オタク(ボクを笑いやがった!)

オタク(ゆ、ゆ、ゆ、ゆるさない)

オタク(ゆるさなぁ~~~~~い!)

オタク(イケメンなんかのどこがいいんだ!)

オタク(ただちょっと顔がよくて、スタイルもよくて、家が金持ちで)

オタク(運動神経もよくて、成績もよくて、性格もよくて)

オタク(ファッションセンスも抜群で、それでいてユーモアもあって)

オタク(噂によれば家事も完璧にこなすとか──)

オタク(たったそれだけじゃないか!)

オタク(その程度じゃないか! そんなヤツは世の中にいくらでもいるんだ!)

オタク(長い目で見れば、ボクの方が優れた男だっていうのはまちがいないんだ!)

オタク(まちがいないんだ!)

オタク(こうなったら……)

オタク(よぉ~し、呪いだ!)

オタク(イケメンを呪い殺してやる!)

オタク(いや、殺すのは可哀想だからインフルエンザくらいにしてやる!)

オタク(豚だか、鳥だか、牛だか、馬だかのインフルエンザにしてやる!)

オタク(やってやる、やってやるぞぉ~!)

<オタクの家>

オタク(──といってもボクはヒトの呪い方なんて知らない)

オタク(でも大丈夫、ボクにはパソコンという最高の味方がある!)

オタク(パソコンさえあれば、ボクは世界中から情報を得ることができるのさ!)

オタク(さっそくインターネットでアドバイスをもらおう!)カチャカチャ

オタク(BIPPERはボクの味方さ)カチャカチャ

オタク(彼らのアドバイスはいつも正しいんだ!)カチャカチャ

オタク(えぇ~っと、イケメンを呪う方法を教えろ、大至急……っと)カチャカチャ

イケメンを呪う方法を教えろ

1 名前:以上、名無しにかわってBIPが送る 2012/06/12(火) 17:03:21.43 ID:KImO+oTA0
 大至急


2 名前:以上、名無しにかわってBIPが送る 2012/06/12(火) 17:07:15.97 ID:USo/800+0
 交番の前で全裸になって「私を捕まえてごらんなさい!」と警官に叫ぶ



オタク「これだ!」

<交番>

オタク「私を捕まえてごらんなさい!」

警官A「…………」

警官B「…………」

オタク「私を捕まえてごらんなさい!」

警官A「…………」

警官B「…………」

オタク「私を捕まえてごらんなさい!」

警官A「…………」

警官B「…………」

30分後──

父「申し訳ありません! 本当にご迷惑をおかけして……!」

母「息子には厳しくいっておきますので……」

警官A「今日のところはこれだけで済ませますが、二度とないようにして下さいよ」

警官B「今度やったらしかるべき処置をとりますからね」

父「はい! 二度とないようにいたします!」

母「ありがとうございます……」

オタク(どうしてこうなったんだろう?)

<オタクの家>

父「このバカ息子がっ!」ボカッ

オタク「いったぁ~い!」

父「なにがいったぁ~い、だ!」ボカッ

オタク「二度もぶった! オヤジにもぶたれたことないのに!」

父「俺がお前のオヤジだ!」

オタク「知ってるよ」

父「いいか、次あんなマネしてみろ! 家を追い出すからな!」

父「家を追い出すどころじゃない、親子の縁を切るぞ!」

オタク「はぁ~い」

父「まったく、いったいだれに似たんだか!」

父「裸で交番の前で叫ぶなんて、わけが分からん!」

母「ううっ……なんでこんなことを……」ポロポロ

オタク(母さん……泣いてる……)

オタク(さすがのボクも母さんの涙には弱いのである)

オタク(ちくしょう、一体ボクがなにしたっていうんだ……)

オタク(ボクはネットで調べたとおりに、イケメンに呪いをかけようとしただけなのに)

オタク(ムカつくなぁ……)

オタク(これもみんなイケメンのせいだ……!)

オタク(母さんが泣いたのもイケメンのせいだ……!)

オタク(イケメンがボクから幼馴染ちゃんを取ろうとするから悪いんだ……)

オタク(だったら今のうちに幼馴染ちゃんをボクのモノにしてやるぅ!)

オタク(誠意を込めてプロポーズすれば、きっと幼馴染ちゃんだって……!)

翌日──

<学校>

オタク「幼馴染ちゃん!」

幼馴染「なに?」

オタク「ボク、幼馴染ちゃんが好きなんだ!」

オタク「すっごくすっごく好きなんだ!」

オタク「イケメンのモノになんか、なって欲しくないんだよ!」

オタク「お願いだよぉ、ボクを好きになっておくれよう!」

幼馴染「…………」

>>48
>オタク「二度もぶった! オヤジにもぶたれたことないのに!」

母「!?」ビクッ

幼馴染(こいつ、まだ自分の身の程ってもんが分かってないの?)

幼馴染(あ~もう、うっとうしいなあ……)

幼馴染(でも、変な振り方するとこいつ何しでかすか分からないしなぁ……)

幼馴染(自分の無力さを思い知らせてやるように仕向けた方がいいかもしれない……)

幼馴染「いいよ」

オタク「本当かい!?」

幼馴染「ただし」

オタク「ただし!?」

幼馴染「イケメン君よりも全ての面でかっこよくなれたらね」

オタク「!!!」

幼馴染「どう、やれる?」

幼馴染「全ての面でイケメン君を超えるんだよ?」

幼馴染「24時間夢見てる時もアニメとゲーム漬けのアンタに、そんな覚悟がある?」

幼馴染(ふん、あるわけないよね)

オタク「…………」

オタク「あるっ!」

幼馴染「え!?」

オタク「今こうやって、幼馴染ちゃんに想いを伝えてやっと気づいたんだ!」

オタク「いいよボク、幼馴染ちゃんのためならなんだってやるよ!」

幼馴染(マ、マジ……!? ったくめんどうなことになったなぁ……)

幼馴染「ふぅん、じゃあやってみせてよ」

オタク「望むところさ!」

幼馴染(フン、できっこないよ)

オタク「────!」ゾクッ

オタク(ん、なんか今、鋭い視線を感じたぞぉ?)

イケメン「…………」ギロッ

オタク(うぅっ、これは!? イケメンめ、すごい殺気を放っている!)

オタク(これはイケメンなりの宣戦布告ということかぁ!?)

オタク(ついに本性をあらわしたなぁ~!)

オタク(いいだろう、イケメン! ボクは君よりかっこよくなってみせるぅ!)

<オタクの家>

オタク(パソコンは封印して、と……)

オタク(漫画もフィギュアもゲームもカードもDVDも全部売ってこよう!)

オタク(レアなのもあるし、店を選べばけっこうな金になるはずだ!)

オタク(そして売ったら、そのお金でファッションを整えるんだぁ!)

オタク(ニキビも治さないといけないし)

オタク(おっとぉ、痩せるのも忘れないようにしないとね!)

オタク(やるぞぉ~!)

<トレーニングジム>

オタク「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ」グッグッ

オタク「ひっ、ひっ、ひっ、ひっ、ひっ」グイッグイッ

オタク「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」ギチッギチッ

オタク「へっ、へっ、へっ、へっ、へっ」ガチャガチャ

オタク「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ、ほっ」ギッギッ

オタク(よぉ~し、いっぱい汗をかいたぞぉ!)

<美容院>

美容師「へい、らっしゃい!」

オタク「ボクをメチャクチャかっこよくして下さい!」

オタク「原型を留めないくらいにねぇ!」

美容師「ふっ、てやんでえ! 任せておきな!」

美容師「アンタを別人にしてやるからよ!」

オタク「うんっ!」

美容師「だがよっ、いくら外見を変えてもアンタが変わらなきゃ意味はねぇっ!」

美容師「ちゃんと己を磨くんだぜぇっ!? べらぼうめえ!」

オタク「分かったよぉ!」

<オタクの家>

オタク「喋り方も変えないとなぁ」

オタク「もっとハキハキ喋れるようになるために、発声練習だ!」

オタク「声優になったつもりでぇ~!」

オタク「あ! え! い! う! え! お! あ! お!」

オタク「か! け! き! く! け! こ! か! こ!」

オタク「さ! せ! し! す! せ! そ! さ! そ!」

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・

父「なにやってるんだ、あいつは……」

母「なんでも自分改造だとか……」

父「ま、交番で暴れるよりはマシか……やらせとこう」

母「そうですね」

<図書館>

オタク「幼馴染ちゃんと釣り合うには、頭だってよくないとな」ガリガリ

オタク「イケメンはたしか成績10位以内だったはず」ガリガリ

オタク「ボクだって10位以内に入ってみせるぞ」ガリガリ

オタク「ゲームをやり込む要領で、勉強しまくってやる!」ガリガリ

利用客「君、図書館では静かにしてね」

オタク「あ、すみません……」

オタク(しまった、テンションを上げすぎたか……ハハ)

オタク(独り言のクセも直さないとな)

<学校>

女生徒A「ねぇ、オタク君、最近急にかっこよくなったよね。すんごく痩せたし」

女生徒A「人が入れ替わったようにしか見えないんだけど」

女生徒B「そうだよね。アンタなにか知らないの? 小学校からの知り合いなんでしょ?」

幼馴染「なにも知らないよ」

幼馴染「それに……どうせすぐ元に戻るでしょ」

幼馴染「典型的なリバウンドパターンだよ、アレは」

女生徒A「え~そうかな?」

女生徒B「あいつ、徹底的に自分を改造してるみたいだよ」

女生徒B「きっと、なんかすごい目的があるんじゃないの?」

幼馴染(オタク……)

数ヶ月後──

オタク(ボクは変わった……変わることができた……)

オタク(体重を半分以下にまで落とし、筋肉質な体を作り上げた)

オタク(成績もベスト10とまではいかないが、ドベから上位になった……)

オタク(ハキハキした喋り方をするようになって、人当たりもよくなった気がする)

オタク(でも──これだけやっても、ボクはイケメンにまったく敵わない)

オタク(イケメンが男としての通知表がオール5だとしたら)

オタク(ボクはせいぜいオール4止まりだろう)

オタク(だけど、幼馴染ちゃんとイケメンの進展具合が分からない以上──)

オタク(このタイミングしかない!)

オタク(ボクは幼馴染ちゃんに改めて告白する!)

<学校>

オタク「幼馴染ちゃん」

幼馴染「なに?」

オタク「あとで二人きりで話がしたい」

オタク「放課後になったら──体育館裏に来てくれないか?」

幼馴染「……分かった。いいよ」

オタク「ありがとう。じゃあ待ってるから」

放課後──

<体育館裏>

幼馴染「話って……なに?」

オタク「幼馴染ちゃん」

オタク「君にイケメンよりかっこよくなったら、好きになってあげるっていわれてから」

オタク「今日までボクはボクなりに頑張ってきた」

幼馴染「うん、ハッキリいって三日坊主で終わると思ってた……」

幼馴染「アンタは本当にかっこよくなったよ」

オタク「ありがとう……」

オタク「だけど現時点では、まだボクよりイケメンの方が全てにおいて上だ」

オタク「でも、いわずにはいわれないんだ」

オタク「幼馴染ちゃん……」

オタク「ボクと……付き合って欲しい……!」

幼馴染「…………」

幼馴染「あれから、アンタがどれだけ努力してきたか私もよく知ってる」

幼馴染「今の姿だけじゃない……頑張ってるアンタの姿もとってもかっこよかったよ」

幼馴染「でもごめん、オタク……」

幼馴染「私、やっぱり……イケメン君の方が好きなんだ……」

オタク「……そっか」

オタク「ありがとう! 正直に答えてくれて!」

オタク「ボクは満足だよ」

幼馴染「ごめんね……」グスッ

幼馴染「ごっめーんwwww あんた元々がマイナスだったから、
    ちょっとカッコよくなったってはっきり言って赤点だしwww」

オタク「…………」

幼馴染「じゃ、私イケメンとデートだから。二度と視界に入らないでね?
    あ、なんだったら死んでもOKだよwww葬式でないけどねぇwww」



その日、オタクは首を吊った


終わり

オタク(ボクの恋は終わった……)

オタク(でも、いつかこの失恋がいい思い出になる日も来るはず)

オタク(ありがとう、幼馴染ちゃん)

オタク(ボクがこうして変われたのが、君のおかげだということはまちがいないのだから)

オタク(ちょっと悲しいけど、これがボクの青春なんだ)

オタク(すぐに立ち直ってみせるさ)

オタク(まあ、少しくらい泣いてしまうかもしれないけど……)

<学校>

イケメン「やぁ、オタク君」

オタク「ん?」

イケメン「君は本当に変わったよね」

イケメン「これも幼馴染君のおかげ……なのかい……?」

オタク「いや……君のおかげでもあるかな」

イケメン「えっ!?」

オタク「ボクは一方的にとはいえ、君をライバル視した」

オタク「石ころがダイヤに勝とうとするような無謀な勝負だったけどね」

オタク「でもまったく相手にならないとはいえ、君を目指して頑張ったからこそ──」

オタク「今のボクがあるのだと、ボクは思っているよ」

イケメン「そうだったのか……」

オタク「それに……君からの宣戦布告もあったしね」

イケメン「宣戦布告?」

オタク「ボクが数ヶ月前に幼馴染ちゃんにコクった後」

オタク「君、ボクを睨んだだろう」

オタク「幼馴染ちゃんを取られたくないがゆえの行動なのか」

オタク「あるいは男としてボクなんかに負けるかよってことだったのかは分からないけど」

オタク「アレがボクの心に火をつけたのはたしかだったよ」

イケメン「そういえば……そんなこともあったな」

イケメン「色々お話を聞かせてくれてありがとう」

イケメン「じゃあ……僕も本当のことを話そうかな」

イケメン「君が気になったから幼馴染に近づいたんだよ」的な

オタク「本当のこと?」

イケメン「あの時僕は、君を睨んだわけじゃない。幼馴染君を睨んだんだ」

オタク「え、そうだったの?」

オタク「イケメンよりかっこよくなれ、なんていってるから腹が立ったとか?」

イケメン「ううん、そうじゃない。あれは……純粋な嫉妬だったよ」

オタク「嫉妬?」

イケメン「だって僕、ずっと昔から──君のことが好きだったんだ」

オタク「え」

キテナイ━━(゚_゚)━━!!

イケメン「ずっとずっと好きだった……」

イケメン「だから君の気を引こうと、君の視界に入ろうと」

イケメン「君がよく見ていた幼馴染君に接近した」

イケメン「時折君に微笑みかけたりもした」

イケメン「でも君が僕に振り向いてくれることはなかった」

イケメン「それどころか、幼馴染君は僕の想い人である君から告白されるし」

イケメン「あのままでも十分かっこよかった君に“かっこよくなれ”なんていうから」

イケメン「ものすごく腹が立って……つい睨んでしまったんだ」

イケメン「だから……君を睨んだわけじゃないんだよ」

オタク(ちょっと待て、どういうことなんだこれは)

イケメン「君はこうしてイメージチェンジをしてしまったけど」

イケメン「君は今でも僕にとっての理想のヒトだ」

イケメン「こうして君の横に座っているだけで、胸の鼓動がどんどん速まっていくんだ」

イケメン「ああ……」ドクンドクン

オタク「あ、あの……」

イケメン「なんだい?」

オタク「君、男だよね?」

イケメン「そうだよ」

オタク(そうだよ、ってアンタ……)

幼馴染「なぁ~んだ、やっぱりそうだったのか」ザッ

オタク「幼馴染ちゃん!?」

イケメン「聞いてたのかい!」

幼馴染「ゴメン、盗み聞きするつもりはなかったんだけどね」

イケメン「今のやっぱり、っていうのはどういうことだい?」

幼馴染「イケメン君は私と二人でいる時、いつも上の空だったから……」

幼馴染「きっと他に好きな人がいるんだろうなぁ……ってことは分かってた」

幼馴染「まさかオタクだとは思わなかったけどね」

幼馴染「ねぇ、私たち三人このまま付き合っちゃわない?」

オタク「へ?」

幼馴染「オタクは私が好き、私はイケメン君が好き、イケメン君はオタクが好き」

幼馴染「私たち、最高のトリオじゃない!」

イケメン「たしかに……いいかもしれないね!」

オタク「え、ちょっと待って」

幼馴染「三人で色々やってみようよ! きっと楽しいよ!」

イケメン「そうだね、そうしよう! 色々やってみよう!」

幼馴染「二人だと組み合わせは一通りだけど」

イケメン「三人なら組み合わせは三通り! いや四通りか!」

幼馴染「つまり楽しさも四倍!」

幼馴染&イケメン「しゅっぱぁーっつ!」

オタク「あの……」

こうして時は流れ、10年後──

<アパート>

幼馴染「行ってらっしゃーい! お仕事頑張ってねー!」

イケメン「行ってきま~す!」

オタク「行ってくるよ!」

幼馴染「ほら、アンタも二人に挨拶して」

子供「いってあっしゃーい」

幼馴染「ふふ、だいぶ言葉を覚えてきたね」

今ボクは、幼馴染とイケメン、そして幼馴染が産んだ子供の四人で同棲している。

ボクは幼馴染が好きで、幼馴染はイケメンが好きで、イケメンはボクが好き、
という三角関係は10年間まったく変わっていない。

子供はボクとイケメンのどちらの子の可能性もあるが、
どちらの子供なのかはたしかめていない。

なぜなら、たしかめる必要がないからだ。

ボクも幼馴染もイケメンも、みんなこの子の親だ。
三人分の愛情を注がれているこの子は、普通の子供の1.5倍幸せなはずだ。

ちなみにボクは今幸せか、と問われたらまちがいなくこう答える。



最愛の人と最高の恋敵と一緒に暮らせてとても幸せだ、と──



【END】

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月06日 (火) 23:56:58   ID: RHv1aMXO

Fuckとしか言い様のないSSでした

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