ちなつ「ノックアウト・ゲーム?」
あかり「相手を思いっきりぶん殴って、気絶させられるか挑戦するゲームだよ!」
ちなつ「えっ」
結衣「あっ、ちょうどよかった。あかりにちなつちゃん、ちょっと話が―――」
あかり「……ふッ!」
ゴスンッ!
結衣「がぱっ……!?」
バタッ……
結衣「…………」 ピクピク
ちなつ「あ……」
ちなつ「あかりちゃあああああああああああああああああああん!?」
あかり「いたた……。えへへ、人を思いっきりぶん殴ると、拳よりも
手首の方が先に痛めちゃうんだね……。ねんざしちゃったかも……」
ちなつ「ああっ! ゆ、結衣先輩が白目を剥いて痙攣してる!」
結衣「がぶっ! がぶっ!」 ぶくぶくぶく……
じょじょじょじょじょ……
あかり「うわあ、結衣ちゃん、おしっこ漏らしちゃった……。
ってうんちのニオイもするし、もしかして全部出ちゃったのかな?」
ちなつ「はやく保健室に! ああ! でも頭を強く打ったみたいだから
動かさない方が良いのかも!? あ、あかりちゃん!」
あかり「……じゃあちなつちゃん、行こ?」
ちなつ「はぁ!?」
結衣「がぶっ! がぶっ!」 ビクンッ! ビクンッ!
ちなつ「結衣先輩を放って行くの!?」
あかり「うん」
ちなつ「はあ、しょうがないなあ……」
結衣「……! ……!」 ピクピク
あかり「ちなつちゃん、あかり手首にシップ貼ってもらいたいから
保健室まで付いてきてくれる?」
ちなつ「はいはい。だったら殴らなきゃいいのに」
(次の日)
担任「皆さんもニュース等で既に知っていると思われますが、
先日、亡くなられた2年の船見結衣さんについて……」
ちなつ「…………」 ガクガクブルブル
あかり「あっ、結衣ちゃん死んじゃったんだー。悲しいなあ」
担任「警察の調べでは、船見さんは校舎内で何者かに頭を
強く殴られたことによる脳挫傷が原因で亡くなったとされ」
担任「近年、欧米で話題となっている『ノックアウト・ゲーム』との
関連性を詳しく調査している状況とのことです」
担任「船見さんについて、詳しく知っている生徒がいたら、
どの先生にでもいいので、教えてください。以上です」
ざわざわ……
向日葵「うそ……。船見先輩が亡くなったなんて……」
櫻子「……あかりちゃん、何か知ってる?」
あかり「あかりも今、初めて知ったよー。悲しいなあ」
ちなつ「はぁっ……! はぁっ……!」 ガタガタガタガタ
(ごらく部部室)
ガラッ
ちなつ「あっ……」
京子「…………」
あかり「京子ちゃん、先に部室に来てたんだね」
京子「あかり……」
あかり「?」
京子「その手首の貼ってある湿布……どうしたんだ?」
あかり「あ、これ? 昨日ねー、あかり転んじゃってー。
その時に右手をねんざしちゃったんだよー」
あかり「ね? ちなつちゃん?」
ちなつ「えっ!? えっと……。そ、そうそう!
あかりちゃんてほんとドジでー!」
京子「…………」
京子「私……今、最低のこと、思っちゃった……」
あかり「?」
京子「もしかしたらあかりが……結衣を殺したんじゃないかって……」
ちなつ「っ!」 ビクッ!
京子「その手首の湿布を見ただけで……
あかりが結衣を、殴ったんじゃないかって……」
京子「ごめん。あかり……。
あかりはそんなことする子じゃないって、分かってるのに……」
あかり「…………」
あかり「ううん。あかり、京子ちゃんの気持ち、分かるよ」
京子「あかり……?」
あかり「大切な親友が、誰かに殺されちゃったんだよ。
そんな状況で少しでも疑いがあれば……誰だってその人を疑っちゃうよ」
ちなつ「あかりちゃん……」
あかり「あかりも、結衣ちゃんが誰かに殺されちゃって
本当に悲しいよ。でもきっと、一番悲しいのは京子ちゃんだから」
京子「あ、あかりぃ……!」 ぽろっ
京子「うわあああぁぁぁぁぁぁぁん……!」 ぎゅっ
あかり「京子ちゃん。今は、誰も見てないよ。あかり達も誰も、
今の京子ちゃんを見てない。だから、安心して」
京子「結衣いいいいぃぃぃぃぃ……! あああぁぁぁ……!」 ぽたっぽたっ
SS速報に投稿できないだろこの内容
次レスで閉めます
あかりは、ノックアウト・ゲームで1つのことを知った
それは、命の重さである
目の前で京子ちゃんがむせび泣く姿を見て、あかりはようやく、
結衣ちゃんの命を奪ったという事実を自覚したのだった
一体いつから、あかりは人を人として見なくなったのだろう
あの時、結衣ちゃんの顔面を思いっきりぶん殴った瞬間、
あかりの頭の中には『ノックアウト・ゲーム』への興味しか、なかった
きっと、インターネットやテレビのニュースで見たときに覚えた
ショッキングな感情に、心が惑わされていたからだと思う
たったそれだけ
その感情という歯車が、噛み合ってはいけない歯車に噛み合ってしまった
あかりの中で、間違ったシステムが歩きだしてしまった
もう止まらない
きっとあかりは今までの人生の中で、人の命について深く考えたことが
なかったんだと思う。だから、噛み合うはずのない歯車が噛み合ってしまった
失敗してから、あかりは命の重さに気付いてしまった
決して許されない、失敗を代償にして
ごめんなさい
この言葉が、遅すぎる時が来るなんて
おわり
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