提督「袖振り合うも」加賀「鎧袖一触よ」 (21)
提督「やれやれ、ずいぶん長引いたな……っと」トントン
加賀「…………」ンクンク
提督「加賀さん、こちらにいらしてたんですか」
加賀「…………ん」ゴクン
提督「…………?」
加賀「軍議、お疲れ様でした、提督」コトン
提督「あぁ、いえ、お気遣いいただいて」
加賀「…………」チラ
提督「…………?」
加賀「談話室、顔を出さないの? みんないるはずだけど」
提督「制服のままだと、どうしても畏まられちゃいますから。寛いでいるのに悪いし」ポリポリ
加賀「なるほど」
提督「それにやっぱり、寒い日は炬燵に限りますよね」
加賀「同感です」コクン
加賀「提督もお茶、いかがですか」スッ
提督「こ、これはどうも、ありがたく頂戴します」ササッ
加賀「…………」コポコポ
提督「…………」
加賀「粗茶ですが」スッ
提督「いただきます……と、アチチチ」ハシ
加賀「…………」ンクンク
提督「ふー、はふー」
加賀「……提督は」チラ
提督「あ、はい、なんです?」
加賀「艦隊を受け持って、どれくらいになるのかしら」
提督「……一か月、と少しですかね」ズズ
加賀「あらそう」
提督「ん、うまい」
加賀「…………」ジー
提督「…………?」コトン
加賀「それなりに経つのに、敬語、治らないわね」コトン
提督「ああ、はは、何分新米ですので、その辺は多少大目に見ていただけると」
加賀「そうね。謙虚なのは悪いことじゃないわ」
提督「ですよね。やっぱり日本人として――」
加賀「度が過ぎて、侮られなければいいのだけど」ボソ
提督「えっ……と」
加賀「…………」ンクンク
提督「あの……はい、なんかすみません」ショボーン
加賀「…………ふう」コトン
提督「…………」ズズズ
加賀「……勘違いしないでほしいのだけど」チラ
提督「はっ、はい、何ですか?」バッ
加賀「さっきの話、って言って、わかるかしら」コトン
提督「その、卑屈に見られる云々、ってやつですか?」
加賀「ええ。あれはつまり、何となくだけど」
提督「……は、はい」ゴクリ
加賀「あなたには誰にも見縊られてほしくない」
提督「……は」
加賀「……というのも、ちょっと言い過ぎかしらね」グビッ
提督「あ、あははは。光栄です、って言うべきなんでしょうか」
加賀「謙遜より、色よい返事をもらえると嬉しいわ」ジロ
提督「ぜ、善処します」
加賀「…………」トクトクトク
提督「…………」
加賀「善処って、便利な言葉ね」チラ
提督「ちゃ、ちゃんと気にかけておきます。敵に侮られない程度には」
加賀「賢明な判断です」
提督「ど、どうも」ドキドキ
加賀「……なんて、いくらなんでも言い方があるわね。ごめんなさい」ペコリ
提督「と、とんでもない。気にしてませんから」フルフル
加賀「……本当に?」ジ
提督「もちろんです」
加賀「なら、いいわ」スッ
提督「…………」ホッ
提督「あ、僕ちょっと席外しますね」スクッ
加賀「了解です」
提督「それじゃあ」バタン
加賀「…………」
加賀「ふー、ふー」
加賀「…………」スゥ
加賀「…………」ゴクン
加賀「……ふう」コトン
加賀「…………」
加賀「………………」チラ
加賀「やっぱり、少し言葉が過ぎたかしら」
加賀「……お手洗い」モジ
加賀「……でも、すぐ戻ってくるかもしれないし」チラ
――バタン
加賀「あ」
提督「あ、よかった。まだいたんですね」
加賀「はい、まだいました」
提督「うう、さぶさぶ」ゴソゴソ
加賀「外に出ていらしたんですか?」
提督「すぐそこですけどね」
加賀「……ん、なにか、香ばしい匂いが」スンスン
提督「これですよ」カサ
加賀「……なるほど。たい焼き」
提督「まだ温かいですよ。よかったらおひとつどうですか?」
加賀「お茶請けに最適ね、いただくわ。でも」スッ
提督「…………?」
加賀「その前に、少し席を外させて――と」フラ
提督「――って、危ない!」バッ
――ガシッ
加賀「…………」パチクリ
提督「だ、大丈夫ですか、加賀さん!?」
加賀「…………」コホン
加賀「足に軽度の痺れを確認、問題ありません」ジンジン
提督「そ、そうですか」ホッ
提督(……本当、動揺しない人だなあ)ドキドキ
――WC
加賀「…………」チョロチョロ
加賀「…………」
加賀「……不覚を取りました」カラカラカラ
加賀「…………」フキフキ
加賀「…………」スク
加賀(普段はのほほんとしていて、頼りない印象だけど)ガシャン
加賀(あっさり受け止める辺り、やはり殿方ということね)バタン
加賀「…………」キュッキュ
加賀(秘書艦として抜擢されたのだし、頑張らないと)ジャー
加賀「と、いけない」キュッ
加賀(あまり待たせるのも、悪いものね)フキフキ
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