エレン「……サンタクロース!?」(20)
立ったら書く
カプ物
地の文あり
キャラ崩壊
世界観も崩壊
ーここまで天ぷらー
「……ふぅ…」
夕食が終わって、何の気なしに外へ出た。
食堂から離れた場所にあるベンチに腰を下ろし、もってきていたホットコーヒーを一口。
吐く息は白さを増し、瞬く間に溶けていく。
「…………………」
12月ー
壁内はクリスマスムード一色。それは訓練兵達にとっても同じで、 誰も彼もが浮ついている様を、どこか遠くから眺めている自分。
「…もう少し別れるの延ばせば良かったのかもな」
先週別れた彼女を思い出し、それを少しも後悔していない自分に薄く笑う。
元々恋い焦がれて付き合った彼女じゃなかった。 それどころか、今まで数度の恋愛をここで経験したが、どれも相手を心の底から好きになった覚えがない。
人…いや恋に無関心?
…多分そんな感じ。 けれど、結構みんな経験があるはずだと思う。 気持ちが百対百で始まる関係など無いと思うし、相手がある程度自分にとって気の許せる相手ならば、好意を受けてしまう。
そして、結局気持ちの秤が平等に吊り上がらないまま、終わりを迎える。
「…冷めてるのかな、俺…」
大体、別れる間際に言われる言葉がある。
『気持ちが見えなくて不安』
『…私のこと、好き?』
…分かるはずが無い。 自分が教えてほしいくらいなんだから…
「……ふぅ…」
急速にぬるくなったコーヒーを口に含み、真っ暗な空に吐息を吐き出した。
考えることは苦手だ、まして答えの見えない問題は… そう、例えば“自分の心”なんてものを探るのは苦手だった。
【エレン・イェーガー】
俺の名前。 数年前の超大型巨人襲撃の時に母を亡くし、父親も行方不明。その後、12歳になるまで開拓地で時を過ごし訓練兵に。 今は調査兵団に入るため毎日厳しい訓練をーーまあ自己紹介はこの辺でいいか。
とにかく、俺には恋って物がよくわからない。
小さい頃から、諦めず努力すればなんでもできると思ってた。だから恋愛だって、そのうち理解できると思ってた。
でも実際は…
熱くなれない。 のめり込めない。 一直線に物事を見れない。
それは、俺にとってはすごく悲しく、苦痛だ。
“だから”、恋をしようとする。 “でも”、冷めてしまう。
堂堂巡りの言い訳を浮かべて、打ち消していく日々。
からっぽな胸の内を否定しつつも、どこかでそれを認めている自分。
エレン「…はぁ…」
思考の狭間に堕ちていこうとする頭を数回振り、俺は一つ息をついてベンチから立ち上がった。
エレン「…そろそろ寮に戻るか。寒くなってきたし。」
誰に言うでもなく呟き、 少し残っている冷め切ったコーヒーは捨てる事にした。
食堂で火照った体温もすっかり冷えて、俺はコートの襟に包まるように体を縮めた後、その場に背を向けた。
その時――
『…きゃんっ!!』
すぐ後ろで、短い悲鳴が聞こえた。 悲鳴…と言うよりは、なにか端的で可愛らしい声。
エレン「?」
聞いた事のあるその声。気になった俺は、ゆっくり振り返る。
すると、そこには――
?「…いったたたた…うぅ~…」
…サンタがいた…
いや、詳しくは、昔アルミンから聞いた事のある“サンタクロース”のような格好をした、同じ訓練兵の女の子がいた。
エレン「…………………」
?「上手くいかないなぁ…」
思えばこれが始まりの夜。
偶然見かけたサンタと、それにまつわる様々な出来事。
12月17日、クリスマスまで秒読みのこの日。
俺たちは確かに出会ってしまった…
こんな、静かな夜に――
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