兄「よお妹、ひさしぶり!」(302)

妹「誰ですかあなた」 ガチャンッ

兄「妹ちゃーん、お兄ちゃんだよぉ?」

兄「ドア開けてくれよぉ、数年振りに会ったのに冷たいじゃんかー」

兄「悲しくてお兄ちゃん死んじゃうよ?」

兄「わかったよ、妹ちゃんが好きなミス○ル歌うから入れてくれよぉ」

兄「誰かが救いの~手ぉぉ!」

妹「やめてください、近所迷惑でしょ!」 ガチャッ

兄「やさしいうたぁぁぁぁ! ふーぅうぅぅ!」

妹「い、いいから入ってくださいっ!」 グイッ

兄「おっ、さんきゅー」

妹「適当に座ってください」

兄「おー。ワンルームか」

妹「水です」 コンッ

兄「ビールないの?」

妹「追い出しますよ」

兄「ちぇー」 ゴクッ ゴクッ

妹「何の用ですか?」

兄「おかわり」

妹「……」

兄「あと甘い物」

妹「怒りますよ」

兄「うぇー。顔怖いよー」

妹「要件を言ってください」

兄「実はアパートを追い出されまして」

妹「それで?」

兄「しばらく妹の家に」

妹「出て行ってください」

兄「このとおり!」 ズサッ

妹「実家に帰ればいいじゃないですか、どうして私に……」

兄「帰るくらいなら死ぬよ」

妹「死ぬって……」

兄「俺嫌いだし、あの人ら」

妹「……」

兄「お願いします! どーか、どーか!」

妹「私にだって、私の生活があるんです」

兄「迷惑はかけないから!」

妹「もう迷惑なんです」

兄「……だめ?」

妹「ダメです」

兄「どうしても?」

妹「どうしてもです」

兄「……そっか。ごめん、無理言って悪かったな」

妹「……」

兄「ひさしぶりに会えて良かったよ。お前も元気そうで安心した」

妹「これから、どうするんですか?」

兄「適当にどうにかするよ。ほら、今までもそれで何とかなってたし」

妹「今いくら持ってるんです?」

兄「金? 千円札が2枚に、小銭で……」

妹「……。待ってください」 ゴソゴソッ

兄「食い物?」

妹「違います。これ、持って行ってください」

兄「あ?」

妹「今は給料日前なのでこれだけしかありませんけど、しばらくは」

兄「いらない」

妹「どうして……」

兄「金くれなんて言ってない」

妹「必要でしょう」

兄「いい。どうにかする」

妹「どうにもならないから私の所に来たんでしょう」

兄「兄貴だぞ、俺は。妹に金せがむ兄貴がいるか」

間違いなく人違い

妹「そんなこと言っても……」

兄「邪魔したな」

妹「兄さん!」

兄「またな。今度会う時は子供でも作っとけよな」 ガチャッ


兄「はぁー……どうすっかなー」 トテトテッ

妹「兄さん!」

兄「どした? 俺、忘れ物でもした?」

妹「はぁ、はぁ……行く当て……ないんでしょ……?」

兄「あるある、ありまくる」

妹「嘘はいいです!」

兄「ないよ」

妹「少し、だけですからね。何かあったらすぐ追い出しますからね」

兄「いいの?」

妹「……兄さんが行き倒れになるニュースなんて、見たくないですから」

兄「妹ぉおお!」 グリグリッ

妹「きゃっ!」

兄「お前は良い妹だぁああああっ!」 ワシャワシャッ

妹「やめ、放してくださいっ!」 バタバタッ

兄「愛してるぜぇえええええ!」 ギューッ

妹「いい加減にしてくださいっ!」 バシッ

兄「ちぇー。愛情表現じゃん」

妹「ああもう! 髪がぐしゃぐしゃっ!」

兄「いいじゃん、その方が」

妹「全然良くないですっ!!」

妹(これだから嫌なんですっ! なんでこうデリカシーがないんですか、この人は!?)

兄「ところで晩飯食った?」

妹「はい」

兄「なに食った?」

妹「……」

兄「うわっ、コンビニ弁当!?」 ゴソッ

妹「勝手にゴミ箱を漁らないでください!」

兄「酷っ……酷い……これは……」

妹「しっ、仕方ないじゃないですか! 忙しいんです!」

兄「ていうか自炊してる気配がないんですけど……」

妹「だから忙しいんです!」

兄「……料理、ヘタだったもんな……」

妹「それは関係ないです!」

兄「冷蔵庫チェーック!」 ガチャッ

妹「あっ」

兄「うん、何もない!」

妹「勝手に開けないでくださいっ!! 怒りますよ!?」

兄「材料がないと料理もできないな。米はある?」

妹「……たぶん」

兄「虫湧いてる系?」

妹「わ、湧いてない、はず」

兄「やばげね。乾麺は?」

妹「ある、と思います」

兄「ふーん。缶詰類どこ?」

妹「流し台の下に」

兄「んー……お、ソース缶あった。マッシュルームとトマトは、ないね」

妹「あの」

兄「調味料少ないなー。いいや、ちょっと買ってくる」 トテトテッ

妹「えっ、お金ないんじゃ」

兄「だってこれから生活するのに必要だし。じゃ、行ってくるわ」 ガチャッ

妹(……お金の使い道が間違ってるっ!)

兄「ふーっ。ただいまー」

妹「おかえりなさい」

兄「おうっ」

妹「どうかしました?」 

兄「おかえり……おかえりって、良い言葉だな……」

妹「大げさです」

兄「いいなぁ……おかえりって……うん……はあ……」

妹「何で落ち込んでるんですか?」

兄「別に。ぱぱっと作っちゃおう」 ガサゴソッ

妹「……私は先に眠りますから」

兄「どぞー」

妹「おやすみなさい、兄さん」

兄「おやすみー。……ああ、おやすみって良い言葉だな!」

妹「静かにしてください」 ゴソゴソッッ

妹(兄さんと話すと疲れます……)

兄「ん~んんん~♪」

妹(……)

兄「ヒーローになりたい~、たっだ~ひっとり~♪」

妹(うるさい……)

兄「なんかやってないかなー」 ピッ

兄「……ぷはははっ!」

妹(……うるさい)

兄「おっ。そろそろかな」 ピッ

兄「よっ、よっと」

兄「かんせーい!」

妹(やっと静かに眠れる……)

兄「良いですねー、とっても良いですねー」 カチャカチャッ

兄「んぐっ。……美味いっ!」

妹(……)

兄「人間らしい食事って最高だなー」

妹(……) チラッ

兄「ん?」

妹(……!) ガサゴソッ

兄「……食べる?」

妹「べ、別に食べたくなんか」

兄「二人分あるよ?」

妹「……」

兄「人と食った方が美味いしさー、付き合ってくれると嬉しいんだけどなー」

妹「し、仕方ないですね、一口だけですよ」

妹「はふ……」

兄「水どーぞ」 コンッ

妹「はい……」

兄「美味かった?」

妹「はい……」 ホワーッ

兄「やっぱ人に作る方が楽しいな」

妹「……はっ!? こんな時間になんて高カロリーな食事を!?」

兄「いいじゃん、少しくらい」

妹「良くありません! 体重が、体重がっ!」

兄「自炊したら痩せるよ」

妹「だって……私が作ると、美味しくないんだもん……」

兄「この居候の兄、料理は結構得意ですよ?」

妹「……よろしくお願いします……」

兄「こちらこそ、どうぞよろしく」

兄「あー……寝るか」

妹「歯を磨きなさい」

兄「めんどい」

妹「兄さん」

兄「あー……歯ブラシ持って来てたかなー……」 ガサゴソッ

妹「……」

兄「うーん……ないなー……」

妹「あるじゃないですか、これ」

兄「……」

妹「兄さん?」

兄「めんどいんだよぉ……」

妹「怒りますよ」

兄「うぇ」

兄「がらがらがらがら……ぺっ」

妹「がらがらがらがら……ぺっ」

兄「うあー」

妹「……毛布とクッションしかありませんけど」

兄「問題なし」

妹「電気、消しますよ」

兄「おー。おやすみー」 ゴロンッ

妹「おやすみなさい、兄さん」 パチッ

妹(……なんだか、懐かしい)

妹(まだ小学生だった頃は、こんな感じだったっけ)

妹(……変な気分)

兄「ぐぅぅぅ~……ぐぅぅぅ~……」

妹(……私も早く寝よう)

兄「妹や、妹や。朝ですよ」

妹「うぅー……?」

兄「朝だよー?」

妹「あぅ?」

兄「時計見ようか」 ズイッ

妹「……あああああっ!?」 バサンッ

兄「おはよう、妹」

妹「どいてくださいっ!」 ドンッ

兄「うわたっ!?」 ゴロンッ

妹「ああああああっ! 遅刻、遅刻するっ!」 ドタドタッ

兄「朝ご飯は?」

妹「そんなの食べてる暇ないです!」

兄「じゃお握りにしとこう」 ギュッ ギュッ

妹「邪魔ですっ!」

兄「はーい」 スッ

兄「いってらっしゃーい」

妹「いってきますっ!」 ガチャッ

兄「お握りとお弁当入れといたからねー」

バタンッ

兄「慌ただしい朝である。まる」


妹「……すいません……」

上司「まあ、妹さんも人間だから寝坊することもあるとは思うけど、気を付けてね」

妹「二度とこんな事がないよう気を付けます……」

上司「うん」

妹「……はぁ」

妹(中学高校と皆勤賞だった私が……)

妹「はぁ……」

妹(兄さんが余計な事してないといいけど)

同僚「妹ちゃん、ご飯食べ行こ?」

妹「今日はお弁当があるので」

同僚「妹ちゃんが!?」

妹「……作ったのは兄です」

同僚「そ、そっか……良かった……」

妹「失礼です」

同僚「いや……うん……お、お兄ちゃんなんていたんだ?」 

妹「一応」

同僚「どんなお弁当なの?」

妹「どんなのなんでしょう」 パカッ

『妹ちゃんLOVE』

妹「……」 カポッ

同僚「今何か」

妹「なんでもないです。なんでもないですから早く行ってください」

同僚「う、うん……」 トテトテッ

妹「……」 パカッ

『妹ちゃんLOVE』

妹「……」 カポッ

妹(ご飯とふりかけと海苔に厚焼き卵だけなのは……冷蔵庫に何もないんだし、当然だけど……)

妹「……」 パカッ

『妹ちゃんLOVE』

妹「えいっ」 グチャグチャッ

妹「まったくもう。あむっ」 モグモグッ

妹「……」 カタカタカタカタカタッ

同僚(指先の残像が!?)

妹(兄さんを一人で家に置いていたら何をするかわかりません。定時で、絶対に定時で!)


妹「……ただいまっ!」 ガチャッ

兄「おかえりなさいませ」 ズサリッ

妹「余計な事はしませんでしたか?」

兄「特には」

妹「……」 チラリッ チラリッ

兄「本当に何もし」

妹「クローゼットが開いてる……」

兄「お兄ちゃん的に勝負下着くらい買った方がいいと思うの」

妹「」 ブチッ

妹「兄さん……あなたにはプライバシーやデリカシーの意味がわからないんですか……?」

兄「だって妹ちゃんが心配だったから……お兄ちゃんは同性愛も否定しないタイプだから安心してね!」

妹「私は男の人が好きなんですっ!」 バシッ

兄「わたっ!? お兄ちゃんは暴力反対だよ!?」

妹「一度しか言いません。私の物に勝手に触らないでください」

兄「はーい」

妹「はぁ……」

兄「あ、そうだ。食材買いに行こう」

妹「えっ。ああ、忘れてました」

兄「お兄ちゃんも無から有は作れないのです」

妹「着替えますから待っててください」

兄「はいはーい」

風邪がぶり返して寝てた。保守に報いる程度に頑張りたい

妹「服はこれとこれで」

兄「ダサいなー」

妹「何か言いましたか?」 ギロッ

兄「最強の武器を鞘に収めたままにしておくようなものだな」

妹「武器って何ですか」

兄「おっぱい」

妹「出て行きなさい」

兄「いやだって、せっかく良いもの持ってるのに、そんな服じゃあなー」

妹「良いんです。私は胸に寄ってくる人なんて嫌なんです」

兄「うーん……お兄ちゃんにはわかんないよ」

妹「わからなくていいですから、別に」

妹「鍵閉めますから先に出てください」

兄「あいあいさー」 ガチャッ

妹「……」 ガチャガチャッ ガチャンッ

兄「からぁっ、かっぜぇーが、吹いたならぁ♪」

妹「兄さん、これ」 チャリッ

兄「んあ?」

妹「合い鍵です」

兄「……おー、合い鍵かー……」

妹「なんでまた落ち込んでるんですか?」

兄「色々な。うん、色々」 チャリッ

妹「今度から出かける時にはきちんと鍵を閉めてくださいね」

兄「あいあいあいさー」

妹「どのくらい必要なんですか?」

兄「二万はいかないだろ。……あ……米袋、担いで帰るのか……」

妹「兄さんは男の子でしょう」

兄「えへへー」

妹「……」

兄「汚い物でも見るような目はやめてー」

妹「ねえ、兄さん。これからどうするつもりです」

兄「どうしようかねー」

妹「私だって、兄さんを追い出したりしたくありません」

兄「うん」

妹「でも、嫌なんです。ずるずると頼られるのも、人に頼るのも、嫌いなんです」

兄「妹は真面目だよね」

妹「からかわないでください」

兄「誉めてるんだよ。俺には真似できないし」

妹「……考えておいてください」

兄「うん」

妹「それと! いいですか、私が留守中に変なことしないでくださいね」

兄「変なこと?」

妹「私の下着を漁ったりしないでください」

兄「でも洗濯物畳んだら入れないとだし」

妹「それくらいは認めます」

兄「んじゃ気を付ける」

妹「次やったら怒りますからね。絶対に怒りますからね」

兄「……勝負下着は買おうな」

妹「兄さんっ!」

兄「きゃー、怖いよぉー!」 トタトタッ

兄「んー」 キョロキョロ

妹「何を探してるんですか?」

兄「まだなんとも。スーパー来るとさ、色々見たくなるじゃん?」

妹「なりません」

兄「あれ買ってこれ買って、メニューはこうして、って」

妹「……わかってて言ってるでしょ」

兄「多分な、神様は俺と妹で良い所を分けたんだな」

妹「そんなわけないでしょう」

兄「いや、どうだろうな……でも神様は、ちょっと分け方を間違えたんだろうなー」

妹「どういう意味です?」

兄「お前は自慢の妹だってこと」 ワシャワシャッ

妹「だから、やめてくださいっ! もうっ、もうっ!!」

兄「ふ……ふぅ……ふぅ……」 ズリズリッ

妹「手伝いましょうか?」

兄「べ……べつに……? 全然……平気だし……」 ズリズリッ

妹「引きずるとビニール袋に穴が」

兄「ふ……ふぉおっ!」 グイッ

妹「無理しなくても」

兄「うおおおおおおっ!」 ドスッ ドスッ ドスッ

妹「慌てると転びますよ、兄さん!」

兄「……おぇ……」 ヨロッ

妹「何がしたいんですか……」

兄「……半分……持って……」

妹「まったく……最初からそうしようって言ってるじゃないですか」

兄「冷蔵庫、収納完了しました!」

妹「そうですか」

兄「では私めが夕食の用意をしている間に、どうぞ妹様はお風呂へ」

妹「いえ。私も兄さんを手伝います」

兄「いえいえ、一人で充分でございます」

妹「でも」

兄「はやく行った行った」 グイグイッ

妹「……すいません」

兄「俺はありがとうの方が好きだなー」

妹「あり……がとう」

兄「どういたしまして!」

妹「変なこと、しないでくださいね」

兄「なにが?」

妹「……何でもありません」

妹(……昔から兄さんが苦手) スルスルッ

妹(話していると、いつの間にか兄さんのペースになって) プチッ

妹(私の方が上手く話せなくなって) スルリッ

妹(兄さんのだらしない態度が、苦手) ガチャッ

妹「ん……」 キュッキュッ ジャーッ

妹「はー……」

妹(なのになんだか、兄さんがいると私まで、あんな風に楽しく生きられる気がして)

妹(……辛いです)

兄「スーパーに貼ってあったこれ」 スッ

妹「店員募集?」

兄「応募してみようと思います」

妹「履歴書、証明写真は?」

兄「それは持ち歩いてるぜ」

妹「えと、頑張ってください」

兄「うん。生活費くらい妹に払えるようにはするから」

妹「……」

兄「払うから。で、家事も俺がやる。どっちもちゃんとする」

妹「私もできる範囲で手伝います」

兄「いいんだよ。居候は俺なんだから」

妹「私は兄さんに家事をさせたいからいてもらってるわけじゃありません」

兄「俺がやりたいからやるだけだよ」

妹「……」

兄「いやか?」

妹「少し、嫌です」

兄「俺さ、人の世話するの好きなんだよ」

妹「嘘です」

兄「本当。頑張れる奴を応援するのが好きなんだよ。だからお前の世話できると嬉しい」

妹「……」

兄「ダメか?」

妹「そんな言い方されたら、断る方が悪いみたいじゃないですか……」

兄「あー、ごめん」

妹「……やるなら両方、ちゃんとしてください」

兄「約束する」

妹「ならいいです。……私も、兄さんを応援しますからね」

兄「ん、まあ。それよか明日も遅れたら大変だろ、早く寝ようぜ」

妹「……おやすみなさい、兄さん」

兄「おやすみ」 パチッ

妹(……時々、とても暗い顔を、私の知らない顔をする)

妹(その理由を尋ねたいけど、尋ねてはいけない気がする)

兄「ぐぅぅぅぅ~……ぐぅぅぅぅ~……」

妹(……やっぱり気のせいかな)

ID:Wszk1prVOって最近流行の保守アラシ?

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

キチガイ飽きたん?

>>291
召喚スンナよw

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