八幡「ホワイトアルバム2?」 (187)

由比ヶ浜「ヒッキ―パソコンで何やってんの?うわ、なんかオタクっぽい!」

雪ノ下「ゴミヶ谷君、部室でいかがわしいゲームをするのは死んで、いえ、辞めてくれないかしら」

八幡「別にやりたくてやってるわけじゃねえよ。材木座に押し付けられたんだ。それに俺はこういうのはあんまり好きじゃねえしな」

由比ヶ浜「そうなの?でもヒッキ―プリキュア見て泣いてるんでしょ?」

八幡「ばっかプリキュアはいいんだよプリキュアは。でもこの手のゲームは大抵リア充のリア充による痴話話だからな。つまんねえんだ」

八幡「大体設定にリアリティがねえよな。黒髪ロングで近寄りがたい雰囲気の天才美少女と学校中の人気者の明るい美少女に同時に好意を寄せられるなんてありえねえよ」

雪ノ下・由比ヶ浜「……」

雪ノ下「ねえ、比企谷君」

由比ヶ浜「それ、ちょっと貸してくれない?」

八幡「……え?」

翌日
八幡「うっす」

雪ノ下「なんだ、比企谷か、ノックもせずに入ってくるなよ」

八幡「いや俺部員なんだけど……てかなに?その喋り方?」

雪ノ下「は?何言ってんのお前。別にいつも通りなのだけれ……だけど?」

八幡「いやいやおかしいよね。今言い直しましたよね」

雪ノ下「……久しぶりにさ、ピアノ、弾いてみようかなって思うんだ……」

八幡「あっそう。いいんじゃね別に……」

雪ノ下「……」

由比ヶ浜「やっはろー!」

雪ノ下「由比ヶ浜、来たのか」

八幡「おい由比ヶ浜、なんか雪ノ下の喋り方がおかしいんだが、心当たりはないか?」

由比ヶ浜「もー八幡君、私のことは、結衣がいいって言ったじゃない!もう忘れちゃったの?」

八幡(こいつもかよ……)

八幡「……いや、俺がお前を名前で呼んだことなんて一度もないんだが……葉山辺りと間違えてないか?」

由比ヶ浜「約束したのに……忘れちゃったの?」

八幡「いつするんだよ。大体俺達教室では話さないだろうが」

由比ヶ浜「ごめん……馴れ馴れしかったよね……実は私中学校の頃に……」

八幡(なんかよく分からん過去を語り始めたぞ。果てしなく嘘っぽいけど)

八幡「あー分かった、結衣って呼ぶからもう黙れめんどくさい」

由比ヶ浜「ホント!?ありがとうヒッ、八幡君!」ダキ!

八幡「うお!何すんだ」

由比ヶ浜「あ、嬉しくってつい……」

雪ノ下「……」ギリ・・・・・・

八幡(二人そろってどうしたんだ?何か言動がおかしいぞ)

八幡(それに雪ノ下が珍しく小説ではなく雑誌、しかも音楽雑誌読んでるし)

平塚「失礼する。雪ノ下、お前に荷物が届いてるぞ」

大和「ちわっす!お届け物です」

由比ヶ浜「うわ!何その大きな荷物?」

雪ノ下「グランドピアノ。ちょっと弾きたくなってさ……ネットで頼んだんだ」

八幡「いや、自宅に送れよ。なんで学校に配送するんだよ」

雪ノ下「家にはもうある……。一日16時間練習するためには学校にも一台欲しかったんだ」

八幡(音楽家にでもなるつもりですか……)

由比ヶ浜「へー!ゆきのんピアノ上手だね!」

雪ノ下「別に、全然。ずっとやってなかったから鈍りまくってる。こんなんで上手いとか言ったら本当にうまい奴に失礼だ」

八幡「俺も上手いと思うけどな。普段ピアノ聞かないからよく分からんけど」

雪ノ下「あ、ありがと……はっ、素人に褒められても嬉しくないよ」

由比ヶ浜「あ!ゆきのん照れてる!可愛い!」ダキツキ!

雪ノ下「うわ!放せ由比ヶ浜!何なんだお前!」

由比ヶ浜「ゆきのんも、私のことは結衣、がいいなあ」

雪ノ下「うう……結衣、いいから離れてくれ。暑苦しいって……」

由比ヶ浜「はーい♪」

由比ヶ浜「二人ともまた明日!」

八幡「おう」

雪ノ下「ああ」

八幡「全くなんなんだあいつは。いつも以上に馴れ馴れしかったぞ」

八幡(まぁ百戦錬磨のプロボッチたる俺には通用しないが。通用しないからな!)

雪ノ下「じゃ、行こうか」

八幡「珍しいな。お前が一緒に帰りたがるなんて」

雪ノ下「はぁ、どうせ同じ場所に行くんだからそりゃそうだろ」

八幡「は?何お前小町にに何か用事でもあんの?」

雪ノ下「ギターの練習。今日も私の家でしていくんだろ?」

八幡「……は?」

八幡「いや俺ギターなんてやったことないけど」

雪ノ下「原作三巻の特典でちょっと弾いてたじゃない」

八幡「メタな発言すんなよ……」

雪ノ下「大丈夫。私がお前をかっこいい男にしてやるからさ……」

八幡「いや、でも小町が夕飯作って待って」

雪ノ下「……ようやく来たわね」

都築「お迎えに上がりました」

雪ノ下「彼をトランクに」

都築「失礼」ボコ!

八幡「うっ」ガク

八幡「で、気が付いたら雪ノ下に家でギター担がされていました。」

雪ノ下「しっかし分かってたけどお前下手だなあ」

八幡「ねえこれいつまで続くの?もう帰りたいんですけど……」

雪ノ下「終電過ぎてるし、泊まって行ったら?もう学際まで時間ないんだし」

八幡「んーあと10か月はあるよね」

雪ノ下「ホラここはこうやって押さえて」

八幡「ねえ聞いてる?雪ノ下さーん?」

翌朝

八幡「結局泊まってしまった……。午前三時くらいまでギター弾かされてクソ眠い……」

八幡「おーい雪ノ下どこにいるんだ」ガラ

雪ノ下(Yシャツ一枚)「……」

八幡「……」

雪ノ下「ひっ、ひっ、比企谷君……!」

八幡「いやすまん!わざとじゃないんだ!これは不可抗力というか」

雪ノ下「すぐにドアを閉めて出てって!」

八幡「はい!」

八幡(なにこのベタな青春ラブコメ……)

八幡(家に帰る時間的余裕もなくそのまま学校に来たわけだが)

八幡「やっぱりダルいし帰ろうかな……」

由比ヶ浜「やっはろーヒッ、八幡君!」

八幡「由比ヶ……か……俺昨日風呂入れてねえから近寄らない方がいいぞ」

由比ヶ浜「んーどれどれ?クンクン……全然臭くないよ?でも髪の毛はゴワゴワだね!サブレの毛より硬いかも」

八幡(近い近い……)

八幡「そんなわけだから、じゃあな」

由比ヶ浜「あーもうまってよお!同じ教室なんだし一緒に行こうよ!」

教室

葉山「やあ、ヒキタニくん……」

八幡「……なんだよ」

八幡(葉山はいつものさわやかフェイスが曇って疲れた表情をしていた)

葉山「実は、雪ノ下さんのことなんだけど……なんか変わったこととかなかったかい?」

八幡「変わったことだ?なんか急に音楽をやり始めたけどそれくらいだな……なんかあったのか」

葉山「昨日7時くらいかな。部活が終わった後に雪ノ下さんからメールが来てね。命が惜しくばこの曲の打ち込みを完成させろとかなんとか。それで全然眠れてないんだ……」

八幡「そ、そうか……大変だな(あいつ葉山まで巻き込んでんのかよ……)」

学祭は奉仕部の名で出るのか?

>>39
雪ノ下「終電過ぎてるし、泊まって行ったら?もう学際まで時間ないんだし」
八幡「んーあと10か月はあるよね」

昼休み
八幡「そろそろここで昼飯食うのも辛くなってきたな……寒い」

iphone「ピロリン!」

八幡「ん?アマゾンからメールか?」

★★☆★☆☆☆ゆい★★☆★☆☆☆
話したいことがあるので今日の4時に千葉駅まで来てください

八幡「……」

八幡(雪ノ下とも顔合わせづらいし今日は奉仕部休むか……まだ由比ヶ浜の方が普段通りだしなんか分かるかもしれない)

八幡「さて、千葉にくるのもなんだかんだ久々だな……葉山との一件以来か」

由比ヶ浜「お待たせ!」

八幡「……で、何の用だよ。俺眠いんだけど」

由比ヶ浜「カラオケ、行こ!」

八幡「はぁ?なんで俺がそんなリア充の遊びをせにゃならんのだ。そういうのは三浦辺りと行けば……」

由比ヶ浜「ねえ……だめ?」ウワメヅカイ

八幡「……俺は早く帰って寝たいんだよ。いくにしてもまた今度で……」

由比ヶ浜「ゆきのんの家に泊まったからだよね」

八幡「そうだから……え?」

由比ヶ浜「知ってるよ。八幡君昨日ゆきのんの家に泊まったんでしょ。私だけ仲間外れにして。奉仕部のメンバーなのに」

八幡(何で知ってんだよ。こえーよ。あと怖い)

由比ヶ浜「ずるいよ……ゆきのんばっかり……」

八幡「あー分かった分かったから、泣くなよ。とりあえずカラオケついていけばいいんだろ」

由比ヶ浜「うん……疲れてるのにわがまま言ってごめんね……」

由比ヶ浜「♪~」

八幡(ずっとこいつ歌いっぱなしじゃん。俺要る意味なくね?)

由比ヶ浜「ふぅ。歌ったらすっきりした」

八幡「そりゃ結構。んじゃ俺もう帰っていいか?」

由比ヶ浜「あ、待って。八幡君、最近気になっていることあるでしょ」

八幡「あん?」

由比ヶ浜「……私と、それにゆきのんが変わった理由」

八幡「……」

由比ヶ浜「それをね、伝えたかったんだ。」

由比ヶ浜「八幡君、いやここは自分の言葉で言うね。ヒッキ―、私は貴方が好きです」

八幡「……由比ヶ浜、お前、何言って……」

由比ヶ浜「これが私のたった一つの秘密……。でもこれで貴方に全部知られてしまった……ヒッキ―答えてよ」

八幡「……罰ゲームだよな?どうせそこらに戸部か大岡辺りがスタンバってんだろ?」

由比ヶ浜「違う!違うよ!私は本気でヒッキ―、比企谷八幡が好きなの!」

由比ヶ浜「サブレを助けてくれた。クッキー作りでアドバイスしてくれた、他にもいろいろあったよね。出会ってからずっと、いつも不器用なやり方で私を助けてくれた貴方を愛しています……」

八幡「……」

八幡(罰ゲームだなんて本気で言ったわけじゃない……今までの付き合いでこいつがそういうことをしてきた根本みたいな連中と違うことくらいボッチの俺にもわかる。だけど俺は……)

由比ヶ浜「だめ?かな……?」

八幡「……いや別に駄目じゃない。ハハ、罰ゲーム以外で告白されたのなんて初めてだ。嬉しいよ」

由比ヶ浜「じゃあ!」

八幡「ああ、よろしくな……結衣」ボソ

由比ヶ浜「ヒッキ―!」ダキツキ

八幡(この選択は、間違ってないよな……?)

奉仕部部室
平塚「何だ雪ノ下だけか。何時まで残ってるんだお前は。さっさと帰れよ」

雪ノ下「・・・・・・・・・・・・・」ギリッ!

平塚「あ、あんまり遅くならないようになー」

千葉駅
八幡「でも本当に良かったのか?俺なんかで。周りから見たら」

由比ヶ浜「周りなんてどうでもいいよ。私は周囲よりヒッキ―を優先したいの!ヒッキ―さえいれば幸せだよ!」

八幡「由比ヶ浜……」

由比ヶ浜って雪菜ほど校内の知名度あるの?

八幡「結局なんであんな奇行を取ったんだよ」

由比ヶ浜「そっかヒッキ―は最後までやってないから……」

八幡「あ?なんだって?」

由比ヶ浜「ううん、なんでもないよ」

八幡「まぁいいけどさ」

由比ヶ浜「それじゃあ、また明日!」

八幡「ああ、じゃあな」

iphone「ピロン!」

八幡「何だ?知らないアドレスだ。スパムか?」

比企谷君どうして今日は奉仕部に来なかったのかしら。ずっと待っていたのだけれどずっとずっと

八幡「もしかして……これ雪ノ下か?どうやって……あ、また来た」

ちなみにアドレスは小町さんから聞きました
今日もギターの練習をしましょう。家で待っています。着替えもこちらで用意してます
来てください。待ってます。ずっとまってます
雪ノ下雪乃

八幡「……うわあ」

八幡「小町も人のアドレスを勝手に漏らすなよな……ちょっと文句言ってやらにゃ気が済まん」
prrrrrrrr

小町「はーい、もしもしお兄ちゃん?今日は雪乃さんの所に泊まってくるんでしょ?やるー!」

八幡「いやおまえ人のアドレス勝手に公開すんなよ。個人情報なんだと思ってんの?」

小町「えー共通の知り合いなんだし別に大丈夫だって!」

八幡「あと別に泊まらねえよ。今から帰る」

小町「え?泊まらないの?あっちゃあ小町今日友達の家でお泊り勉強会なんだよねえ。お兄ちゃんの夕飯用意してないよ」

八幡「おいおいまじかよ」

小町「そんなわけで、雪ノ下さんのところでお世話になってねーじゃーねー」

八幡「……仕方ない。気は進まないが雪ノ下の所行くか……」

雪ノ下家
雪ノ下「今日も来たのかよ」

八幡「お前が来いっていったんだろうが」

雪ノ下「上がれよ。夕飯出来てるし」

八幡「……」

八幡「ふう、ごちそうさまでした……やっぱお前料理上手いな」

雪ノ下「褒めても何も出ないぞ。それよりも早く練習を」

八幡「悪い……もう眠気が限界だ。今日は付き合えん」

雪ノ下「そうか……」

八幡「それとさ、俺、由比ヶ浜と付き合うことにしたから……」

雪ノ下「そう……おめでとう……」ギリ・・・・・・

雪ノ下「二人でお幸せにね。もう奉仕部にも来なくてもいいわ」

八幡「おい、なんでそうなるんだよ。俺はともかく由比ヶ浜は普通に奉仕部続けたがるだろうし、今辞める理由なんてねえぞ」

雪ノ下「私に……好きな人が別の女と幸せそうにしている様子なんて、見せないで頂戴」

八幡「好きなって、おい雪ノ下、お前何言って。お前がそんな冗談いうなんてらしくないぜ」

雪ノ下「……好きでもない人に夕飯を振る舞ったり、そもそも家に入れたりはしないわ。貴方本気で行っているの?どこまで人の気持ちが分からないの」

八幡「だって、おまえ、いつも涼しい顔して、悪態ついて、俺のことなんてまるで相手にしてなかったじゃねえか……」

八幡「俺、お前に憧れてたんだぞ……だけど、お前はいつもそんなだから、由比ヶ浜の告白も受けたっていうのに……お前みたいな凄い奴が俺みたいなひねくれモノを好きになることはずっとないんだろうって」

雪ノ下「私がひねくれた人を好きになっちゃいけないの?目が濁った人を好きになっちゃいけないの?勝手に決めつけて、勝手にどっか行かないでよ……!」

八幡「……」

雪ノ下「……」

雪ノ下「いつまでも振り向いてもらえないから、ゲームの真似なんかして誘って……滑稽よね、本当」

八幡「雪ノ下……」

雪ノ下「私は比企谷君のことが好きよ。でも、もうそれも終わりね。全て手遅れ……」

八幡「雪ノ下、いや雪乃」

雪ノ下「何……んん……」

八幡「……」

雪ノ下「……」

雪ノ下「……最低」

八幡「すまん……帰る……」

数日後
小町「んー38.5°cじゃあまだ学校いけないね」

八幡「……」

小町「……お兄ちゃん雪乃さんと何かあったの?」

八幡「別に、なんもねえよ」

小町「だよね。だってお兄ちゃん結衣さんと付き合ってるんだし。でもびっくりしたなあ。まさか雪乃さんの家に泊まった翌日に結衣さんと付き合うことになっただなんて。もーおにいちゃんのスケコマシ!小町的にポイント低い!」

八幡「うっせえ……」

小町「……無理しないでね。午後には結衣さんがお見舞いに来てくれるから。それまでじっと寝てること。」

八幡(あれから一晩家に帰らずにふらふら千葉を彷徨った結果、風邪を引いてしまった。睡眠不足とのコンボでぶっ倒れた挙句数日こん睡状態だったらしい……)

八幡(由比ヶ浜はその間毎日家にお見舞いに来ていたとは小町の談だ。……最低だな俺)

ゲームも大体こんな感じなんだよなあ

由比ヶ浜「ヒッキ―、大丈夫?」

八幡「由比ヶ浜か……来てたのか……」

由比ヶ浜「あ、だめだよ起き上っちゃ。まだ熱引いてないんだし」

八幡「……由比ヶ浜……ごめんな」

由比ヶ浜「……」

八幡「一つ目は……心配かけさせて……」

八幡「二つ目は……毎日時間取らせて……」

由比ヶ浜「もういいってば。付き合ってるんだし当然だよ。それよりも、下でリンゴ切ってもらってるから貰ってくるね!」

八幡「三つ目は……お前と、ファーストキスできなくて……本当にごめん……」

ゲーム春樹が風邪ひくところまでしかやってないんだけどここからどうしよう……

翌週
由比ヶ浜「いってきまーす」

八幡「よう……」

由比ヶ浜「あぁ!ヒッキ―だ!風邪治ったんだね良かった」

八幡「まぁな。その……お前が看病してくれたおかげだ。ありがとう」

由比ヶ浜「それで、どうしたの?こんな朝早くに」

八幡「いや、だからそれで、お礼渡そうと思って、ほらこれ」

由比ヶ浜「この鉢植えは……アザレア?綺麗な花だね!」

八幡「喜んでもらえたなら買いに行った甲斐があるってもんだ……」

由比ヶ浜「すっごく嬉しいよ!ありがとう!ヒッキ―大好き!」

八幡「おい、朝からくっ付くなよ」

由比ヶ浜「嬉しいなあ。プレゼントもそうだけど、こうして一緒に登校出来て」

八幡「そうだな……」

由比ヶ浜「ヒッキ―も復活したし、奉仕部活動再開だね!さいきんずっとお見舞いでゆきのんともしばらく会ってないし、楽しみ!」

八幡「雪ノ下……」

由比ヶ浜「ヒッキ―!部室行こう!」

八幡「あ、ああ。」

由比ヶ浜「……ヒッキ―もしかしてまだ辛いの?」

八幡「いや、そういう訳じゃねえけどな。あれだよ、病み上がりだってのに雪ノ下に罵倒されると思うと気が重いなってさ」

由比ヶ浜「あはは……流石にゆきのんもそこまでじゃないと思うけど。ヒッキ―風邪ひいたみたいって連絡したら凄い心配そうにしてたし」

八幡「……そうか……」

由比ヶ浜「やっはろー!ってあれ?部室閉まってる」

八幡「珍しいな。あいつまだ来てないのか」

由比ヶ浜「しょうがないから職員室に鍵を取りに行こう」

平塚「ん?どうしたお前等そんなところで突っ立って」

由比ヶ浜「あ、平塚先生。実は部室の鍵が開いてないんです」

平塚「開いてないって、そりゃそうだろ。雪ノ下来てないんだし」

由比ヶ浜「え?ゆきのん今日休みなんですか?」

八幡「あいつも風邪ひいたのかな……」

平塚「何だお前等聞いてないのか。雪ノ下は三学期からヨーロッパに留学に行くことになったからその準備で当分学校には来ないぞ」

由比ヶ浜「え……?」

八幡「嘘だろ……?」

平塚「雪ノ下のやつ話してなかったのか。いや実は先週の金曜日に突然きいてな。私もよく事情を把握していないからお前たちに話を聞こうと思ってたんだが……」

由比ヶ浜「そんな話全然聞いてないですよ!昨日だってメールしたのに……なんにも」

平塚「あいつも少しは周りと打ち解けられるようになったと思ったんだがなあ……全く急にどうしたんだ」

八幡(雪ノ下……逃げるのかよ……。負けず嫌いのお前が……)

由比ヶ浜「どうしちゃったんだろうゆきのん。留学するってのもそうだけど、一言言ってくれたらいいのに……」

八幡「……まぁ、言いづらかったんじゃねえの?お前等仲良かったし、貴女から離れますなんてよ」

由比ヶ浜「そうだけど……あー駄目だ電話出てくれないよ……」

八幡「こういう時こっちから追っかけても仕方ない。少し様子見ようぜ」

由比ヶ浜「……そうだね」

八幡「雪ノ下居ないんじゃ部活機能しねえし、帰ろうぜ。送ってく」

由比ヶ浜「うん……」


雪ノ下マンション前

八幡(無駄だってわかってても、待ってるなんて出来ねえよなあやっぱり。我ながらストーカーじみてる。いつからこんな風に他人に執着するようになっちまったんだ。俺ともあろうものが)

ピンポーン

??「はい」

八幡「あれ?ここ雪ノ下さんの御宅じゃ」

陽乃「あれ?もしかして比企谷君?ひゃっはろー久しぶり―!」

八幡「陽乃さん?なんでここに?雪ノ下は一人暮らししてるんじゃ」

陽乃「今日は留学の準備手伝いだよ。まあ立ち話もなんだし上がってきなよ」ガラガラ

八幡「は、はい」

八幡「お邪魔します……」

陽乃「あがってあがって、今雪乃ちゃんは買い出し行ってていないけどね」

八幡「本人いないのに上り込んじゃだめなんじゃ……」

陽乃「気にしない気にしない。きっと驚くよ!」

八幡「はぁ」

陽乃「で、今日は何しに来たのかな。比企谷君」

八幡「雪ノ下が留学するって聞いて……でも連絡とれなかったから」

陽乃「それでわざわざ家まで来たの?」

八幡「でも、何でいきなり」

陽乃「いきなりでもないけどね。うちの親はずっと雪乃ちゃんをもう一回留学させたかったみたいだし」

陽乃「それに、雪乃ちゃんがそうした理由は、比企谷君、君が一番よく知ってるんじゃないかな?かな?」

八幡「……何を知ってるんです」

陽乃「私は別になんにも知らないけどねえ。その反応は図星、か。やっぱりね」

八幡「……」

飯食ってくるわ

雪ノ下「ただいま。姉さんが飲みたいって言ってた商品売ってなかったわよ」

陽乃「雪乃ちゃんお客さんだよー」

雪ノ下「姉さん、家主がいないのに客をあげるのはどうかと思うわよ……」

八幡「……よう」

雪ノ下「比企、谷君……」

八幡「久しぶり、だな……」

雪ノ下「……そうね」

陽乃「あーそうだ私明日のゼミの準備しないといけないんだった忘れてたー。ゴメン雪乃ちゃん私帰るね。比企谷君ごゆっくり」

雪ノ下「ちょっと!姉さん!」

八幡「待ってくださいよ!」

陽乃「おやすみー」

八幡「……」

雪ノ下「……」

雪ノ下「……何しに来たの?」

八幡「留学するんだってな」

雪ノ下「ええ」

八幡「俺の、せいか?」

雪ノ下「思い上がらないで頂戴。私が自分のために自分で考えて、自分で決めたことよ。何故あなたのような目の腐った人が出てくるのかさっぱりわからないわ」

八幡「そうかい……」

雪ノ下「まえまえから提案はされていたのだけれどね。ちょうどいい機会だし行こうって思ったのよ」

雪ノ下「姉さんは地元志向の人だから私は海外で活躍したいし、文系理系どちらにして英語は必須だし、向こう限定のパンさんグッズも集められるし」

雪ノ下「好きな人を、諦めきれるもの」

雪ノ下「どうして……どうして来たのよ……!拒絶したのに……!貴方は由比ヶ浜さんと付き合っているのに……!何で……何でよ……!」

八幡「雪ノ下……俺は確かに由比ヶ浜と付き合っている。だけどな、俺はお前が好きなんだ」

八幡「始めはただ綺麗だったから憧れた。お前の生き方が、他人を寄せ付けない気高さと圧倒的な能力の高さに」

八幡「でも、関わっていくうちに、それだけじゃないって分かった。負けず嫌いなところ。意外と不器用なところ、頑張り屋なところそんな新たな一面を発見するたびに俺はお前に魅かれていったんだ」

八幡「始めはただの偽りだったのかもしれない。だけど、今のこの気持ちは、偽りなんかじゃないんだ!雪ノ下、俺はお前を愛している……!」

雪ノ下「比企谷君……私も……貴方のことが……好きよ」

八幡「……」

雪ノ下「……ん……ん……あ……くあ……」

八幡「今度は、拒絶しないんだな……」

雪ノ下「最低ね……私」

八幡「俺もだ……」

翌朝
雪ノ下「比企谷君、いつまでも死体のように寝ていると遅刻するわよ」

八幡「……ん、もう朝か、おはよう、雪乃」

雪ノ下「改めてそうやって呼ばれるのはなんだか恥ずかしいわね……」

八幡「身体は、大丈夫か?」

雪ノ下「ええ、もう痛みは引いたわ。それよりも朝ごはん作ったから、一緒に食べましょう」

八幡「なあ、やっぱりお前留学するのか?」

雪ノ下「ええ。言ったでしょう?もともとするつもりだったって。今回のことはその最後の一押しでしかないの」

八幡「そうか……寂しいな」

雪ノ下「貴方がそんなことを言うなんてね。五月ごろの貴方に教えても絶対に信じないでしょうね」

八幡「そっちこそ、そんな幸せそうに笑えるだなんて信じないだろうな」

雪ノ下「……先に行くわ。鍵はポストに入れておいて頂戴」

八幡「分かった」

八幡(俺と雪乃は結ばれた。でも付き合うことはしない)

八幡(昨日、二人で話し合って決めたことだ)

八幡(最低な二人が、由比ヶ浜にできるせめての贖罪、いや自己満足の言い訳だ)

八幡(今日、由比ヶ浜とは別れる。雪乃も正直に事の顛末を話すために今日は登校するらしい)

八幡「俺もそろそろ行くかな……」

教室
由比ヶ浜「あ、ヒッキ―、遅かったね。風邪がぶり返したのかと思って心配したよ!」

八幡「ああ。ちょっとまぁ、いろいろあってな」

由比ヶ浜「そうなんだ。でも、これが無駄にならなくてよかった!はい!」

八幡「……」

由比ヶ浜「御弁当だよ!……あぁ!ヒッキ―今食えるのか?とか思ったでしょ。これでもすっごく練習したんだからね!」

八幡「……あのさ、大切な話があるから、昼休みに部室に来てくれないか?雪ノ下も今日は来る!」

由比ヶ浜「え?ホントに?やったあ!三人でお昼なんてすごい久しぶりだね!こんなことならゆきのんの分も作っておけばよかったかな……楽しみだなぁ」

八幡「……」

昼休み
部室
由比ヶ浜「ゆきのーん!久しぶり!会いたかったよぉ!」

雪ノ下「そうね……」

由比ヶ浜「でも酷いよ!黙って留学決めちゃうなんて!私びっくりしたんだからね!」

雪ノ下「ごめんなさい……本当に」

由比ヶ浜「でも、冬休み中はまだこっちにいられるんだよね?クリパとか初詣とか三人で行こうね!あ!温泉とかもいいかも!」

雪ノ下「……」

八幡「……」

由比ヶ浜「……あれ?折角三人そろったのになんか雰囲気暗くない?」

八幡「……あのさ、由比ヶ浜、今朝、俺大事な話があるっていったよな?」

由比ヶ浜「……ヒッキ―?」

八幡「本当に悪い。由比ヶ浜、俺と別れてくれ……」

由比ヶ浜「え?え?ヒッキ―何言ってんの?あ、わかった!ドッキリだね!二人で私をからかってるんでしょ!やだなあもう一瞬びっくりしちゃったよ」

八幡「俺は、お前が、由比ヶ浜がいながら、雪ノ下とキスをした……それ以上も。俺はお前と付き合う資格がない最低の男だ……」

由比ヶ浜「もーどっきりはいいから!ねぇ、ゆきのんも何か言ってよ!」

雪ノ下「……」

由比ヶ浜「ゆきのん……?」

雪ノ下「ごめんなさい……由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「嘘、だよね……だって私ヒッキ―に告白して、返事貰って、え……意味分からないよ……何これ……」

八幡「本当にすまん……いや、すいませんでした……」

雪ノ下「すいませんでした……」

由比ヶ浜「……酷い……酷いよ……こんなの、……うっ……さっきまであんなに楽しかったのに、うっ……何で?なんでこんなことになっちゃうの?」

八幡「……」

雪ノ下「……」

由比ヶ浜「……さよなら……」ダッ!!

八幡「ごめんな……由比ヶ浜……告白してくれた時に嬉しかったのは本当だぞ……」

クズ主人公と言えば紳士じゃない方の純一がいるだろ

セカンドシーズン(小声)

1/5
成田空港
雪ノ下「それじゃあ……そろそろ」

八幡「ああ、向こうでも元気でな。風邪ひくなよ」

雪ノ下「こないだ風邪ひいたばかりの人に言われると、何故か説得力があるわね」

八幡「……雪ノ下」

雪ノ下「……もう、会うこともないだろうけど、元気でね比企谷君。……愛してるわ」

八幡「俺もだ……」

雪ノ下「……ん……さようなら……」

八幡「ああ……」

八幡(もう二度と会うことはない。彼女の言う通りだろう)

八幡(俺達は幸せになってはいけない。二人して由比ヶ浜を裏切った俺達に、そんな資格はない)

八幡(曇り空にまた新たに一機の飛行機が飛び立つ。雪ノ下を乗せて)

八幡(そしてここには一人の最低野郎だけが残ったのでした)

???「飛行機、行っちゃったね……」

八幡「……由比ヶ浜、来てたのか」

由比ヶ浜「やっはろー……終業式以来、だね」

八幡「……そうだな、久しぶりだ」

由比ヶ浜「うん……」

由比ヶ浜「ゆきのん、本当に留学しちゃったんだね……いまいち現実感ないなあ。私海外なんて行ったことないよ」

由比ヶ浜「やっぱりゆきのんには敵わないや……」

八幡「……」

由比ヶ浜「でも、もういないんだよね。ゆきのん」

由比ヶ浜「だからさ……ヒッキ―、私とやり直そうよ」

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