ミカサ「エレンに彼女ができた」(25)

ミカサ視点のミカエレ
地の文あります
短いです

エレンに彼女ができた
その事実を私が知ったのは、本人からでも、アルミンからでもなく、意外にもアニからだった

「私も人づてに聞いただけだけど‥あんたが知らないなんてね」

皮肉でもなんでもなく、アニは私が知らなかったことを心から驚いているようだった

「アニは誰から聞いたの」

「ミーナだよ」

「ミーナは誰から聞いたの」

「さあ?いろいろ詳しいからね、あのこは」

ミーナは男女ともに友達が多く、またそういった噂話にも耳が早い

それにミーナはエレンと班が同じだ

エレンから直接聞いたんだろうか
そう考えると少し胸が痛んだ

「その、「彼女」って、誰?」

「後輩だって。105期生。年は知らないよ」

「あのエレンがねえ。そういったことには疎そうなのに」

「女の子のほうから告白してきたらしいですよ」

いつの間にか周りに集まっていた面々が口々にまくしたてる

「皆、知ってたの」

「というか、同期で知らないのはお前くらいじゃないのか」

「ユミルったら!」

クリスタがユミルの口をふさぎ申し訳なさそうな上目遣いで私を見る

「私も今日聞くまでは全く知らなかったよ、そんな話」

「アニは別に知らなくてもいいんですよ。仲良しのミカサが知らなかったことが問題なのであって」

「サシャ!」

今度はサシャの口にクリスタが飛び付く

「‥クリスタ、私に気を遣う必要なんてない」

反応を伺うように皆が私を見ている

エレンにガールフレンドができた、そのことにたいして、よほど私が動揺すると思われているらしい

何とも思わない、と言ったら嘘になる

確かに私のエレンへの想いは、特別な感情と呼んでいいものだ

ただそれに、どんな名前をつけるべきかは、まだ私にはわからない

ましてやそれをエレンに伝えてどうこうする類いのものでもない

それに

ここ数日のエレンの様子を思い返してみる

私に何か言いたそうな素振りや、恋愛ごとに浮わついた態度、そんなものは微塵も感じなかった

私が恐れ、動揺するのは他人の噂話なんかじゃない、もっと別のことだ

それを確かめなければいけない

ーーーーー

翌日、朝食にエレンは遅れた

「寝坊だよ、二度寝したんだ、全く世話がかかるんだから」

アルミンはぶつくさ言っていたが私には好都合だった

「エレンはこれからも私たちと食事をするのだろうか?」

「え?どういう意味?」

「彼女ができたと聞いたから」

アルミンの表情が一瞬こわばったが、すぐに観念したように息をついた

「だからミカサには早く言ったほうがいいと言ったんだ。他から耳に入る前に。こういった話はあっという間に拡がるから」

どうやら私に話すことに対して多少のためらいがあったらしい

アルミンに話して私には話せない、それは私を意識してのことか


おめでたい考えをすぐに打ち消す
うるさく追求でもされるかと思ったのだろう

「相手の子のこと、アルミンは知ってるの?」

「顔と名前だけね。いいなって言ってる男連中も多かったし。可愛い子だよ。あ、ミカサほどじゃないけどね」

付け足したような最後の一言に少し笑うと、アルミンは余計なことを言ったとばかりに罰の悪そうな顔をした

ーーーーーーーーーー

しばらくしてエレンがやって来た

「あー焦ったぜ。アルミンちゃんと起こしてくれよな」

「起こしたじゃない!二度寝まで責任とれないよ!」

「アルミンに責任なんてひとかけらもない。エレンが自分でちゃんと起きなきゃだめ」

「っせーな、わかってるよ。誰だってたまには寝坊くらいするだろ」

「たまには?」

「なんだよ!」

いつもと変わらないエレンと
いつもと変わらない会話ができることに、少しほっとする自分がいた

アルミンは何も言わないでいてくれた

結局その日もエレンは何も話そうとはしなかった

私から切り出すことはできなかった

夕方、訓練が終わったあとの自由時間に、アルミンが来てそっと耳打ちしてくれた

「エレンが彼女と話してるよ」

どうする、と目で問いかける

私は頷いて立ち上がった

兵舎から少し離れた場所で、エレンが女の子と立ち話しているのが見えた

少し胸がざわつく

エレンの顔は見えない

同期の女子数人が興味深々で二人の様子を観察している

「あの子?」

「見たことないね」

皆が「彼女」に集中するなか、私はエレンを注視していた

確かめなければいけない
エレンの気持ちの行方を

確かめなければいけない
エレンが、「彼女」を見る表情を

私やアルミンと話すときのような飾らない表情か

はじめてできた「彼女」に夢中になっている緩みきった表情か

それとも

エレンが「彼女」と話しながらふと体の向きを変え、こちら側を向いた

同期と話しているときのような、いつもの表情

少し笑みを浮かべ「彼女」の話しに頷いている

いつものエレンだ

そう感じほっとするも、頭の奥に鋭い痛みを感じる

「どうしたの、ミカサ」

頭を押さえる私に心配そうにアルミンが問う

「うん、平気」

答えてその場を後にした

確かめなければいけない
エレンの気持ちの行方を

確かめなければいけない
エレンが、「彼女」を見る表情を

私やアルミンと話すときのような飾らない表情か

はじめてできた「彼女」に夢中になっている緩みきった表情か

それとも

エレンが「彼女」と話しながらふと体の向きを変え、こちら側を向いた

同期と話しているときのような、いつもの表情

少し笑みを浮かべ「彼女」の話しに頷いている

いつものエレンだ

そう感じほっとするも、頭の奥に鋭い痛みを感じる

「どうしたの、ミカサ」

頭を押さえる私に心配そうにアルミンが問う

「うん、平気」

答えてその場を後にした

ミスりました
連投すみません

「エレンはね、ミカサ」

兵舎へ戻りながらアルミンが話し出した

「あの子に呼び出されたあと、寮に戻ってきたら、皆に告白されたのかって、よってたかって追及されて‥。
他に好きな子がいないなら付き合ってやるべきだとか、勇気を出して告白した子を傷つけるのかとか、散々言われて‥」

「うん」

想像できた

囃し立てる面々、意地になるエレン、容易に目に浮かぶ

「アルミンも、何か言ったの」

「周りに流されるのはやめなよ、とは言ったけど。俺は流されてない!ってなんか怒っちゃって。かえって逆効果だったのかもしれない」

男の子のプライドというやつだろうか
時にそれは私たちを傷つける

「そういうのは、良くない、と思う」

現金なものでエレンの気持ちがあまり真剣ではないとわかったとたん、
「彼女」への同情の気持ちが沸き上がってきた


「そうだね、こういっちゃ見も蓋もないけど、あまり長続きは、しないと思うんだ」

そして今まで考えなかった「彼女」の気持ちを想像してみた

「うん、もって一週間だと思う」

「手厳しいね。まあ、僕たちは見守るしかないね」

「‥うん」

一緒に過ごす内に、少しずつお互いが大切な存在になっていくかもしれない

だけど私たちにはそんなゆったりとした時間は与えられていないのだ

エレンはそれからも相変わらずで、私に何か話すこともなく、一週間が過ぎた

そして二人が別れたという噂が耳に入った

エレンが、振られたと

短いですがここまで

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