女提督「艦娘にセクハラされて辛い」(136)
女提督が力で勝てない艦娘達にセクハラされるお話って需要あるん?
その後、朝食を取った女提督は不知火を引き連れて執務室へ。
「工廠に行くんですよね?」
「はい。司令には工廠の役割を知って貰います。
まず簡単に此処で説明するので聞いて下さい」
不知火は言うと執務机に座る女提督の前に立つと、机の上にB3サイズのプリントを置く。
プリントには4つの項目があり、それぞれに『建造』『解体』『開発』『廃棄』とあった。
「説明するので聞いて下さい」
「はい」
不知火はプリントを指差しながら説明し始める。
「まず、建造です。
建造とは、艦娘を、正確に言えば艦娘の装備である艤装を作ります」
「え、艦娘って艤装をつけたまま発見されるんじゃないんですか?」
「まさか」
女提督の発言に不知火が鼻で笑いながら答えた。
「私達が見つかった時はこの体のみです。
最初は陸軍の武器兵器を使用していましたが、駆逐艦ですら50口径機関銃を軽々と扱えます。
なので、艦娘のサイズに合わせた武器兵器を開発しました。
また、艤装は私達は特殊な力があるので、それを増幅させる装置でもあります」
女提督が不知火の説明を聞いてへ~っと感心した。
提督とは言え着任するまでは艦娘自身については全くと言っていいほど教えられていない。
『海の上を走り回れるスゲー強い女の子』と言うイメージしかないのだ。
「取り敢えず、次に進みます。
次に、解体ですが、これは余剰な艤装を解体し資材に回します。
なので、艤装が余った場合は此方で解体するのも手ですね。
ただし、解体した艤装はなくなるので、不必要に解体しすぎると戦力低下になりますのでお気を付けを」
不知火の説明を女提督はホウホウと頷きながら聞いていく。プリントには注意書きを書き込んでいた。
「次は開発です。
此方は、艤装の為の装備を作ります。艤装には基本となる砲や推進装置等が積まれています。
しかし、場合によってはそれでは戦力不足になるので、更なる強化が出来るのです。
ただし、各艦級によって装備出来る物と出来ない物がありますので、それは別紙に纏めてあります」
「態々ありがとうございます」
女提督が深々と不知火に頭を下げると、不知火が目を少しだけ大きく開いていた。
「……いえ、それが秘書艦である私の仕事ですから」
「いえ、でも、ありがとうございます」
女提督の言葉に不知火はゴホンと咳払いをして、続きをと告げた。
「つぎに、廃棄です。これは、まぁ、余剰に開発した装備を廃棄します。
その際に僅かばかりの資源も入手出来ます。まぁ、雀の涙ですが。
此処までに質問は有りますか?」
「あの、艤装を持っていない艦娘って今、居るんですか?」
「ええ、いますよ。
艦娘専用の兵舎で寝泊まりしています。なんなら後で見に行きますか?」
「はい、見に行きます」
女提督が頷くと、不知火は手元のスケジュール帳に何かを書き込む。
「では、早速工廠に向かいます」
女提督は制帽を被り、身形を整えてから、執務室の外に出た。
司令官たるも常に服装には注意せよと、今朝不知火に言われたからだ。
工廠は横須賀海軍工廠、今でいう横須賀海軍施設、またの名は横須賀基地だ。
横須賀基地は米軍の管理下に置かれているが、現在、残ってる米軍はイージス艦が3隻しかいない。
他の空母は全て深海棲艦にやられていまい、沈没したか修復不可能として廃棄された。
その為、日本政府が米国政府に掛け合って、艦娘の母港とする事に決定した。
「ここが我が横須賀鎮守府の横須賀工廠です。
因みに、私は浦賀船渠で造船されました」
「へ~
浦賀船渠、通称は浦賀ドックですね」
「はい。横須賀工廠からも水雷艇等の造船を依頼されていたので。
他にも鈴谷、阿武隈等色々な水雷艦が建造されました」
「へぇ~」
二人は工廠の中に入る。
工廠の中には繋ぎを着た技師が居り、様々な作業をしていた。
「主任を」
不知火は近くにいた技師に告げると、技師は無線でどこにかに連絡を取る。
もともとは大型船舶を修理するための場所である。艦娘と言う小さな少女達の為に使用するにはあまりにも広すぎるのだ。
「普通の艦艇も作っているんですね」
入口から中を見ている女提督が誰に言うでもなく告げる。
「ええ、そうですね。
通常のタンカーや貨物船だと攻撃されると沈んでしまうので、ある程度の被弾も耐えられる様に改装してます」
暫く技師と談笑していると主任がやって来る。
技師はではこれでと挨拶をして自分の持ち場へ向かった。
主任は50代を過ぎた男だ。
「アンタが、新しく入った提督か?」
「はい、女提督と言います」
女提督は主任に敬礼をする。主任はそれに宜しくと告げて工廠内部を見渡した。
「ご覧の通り、此処は艤装作ったり装備作ったりする場所だ。
上からはアンタに此処の使い方を教えてやるよう言われてる。
まぁ、俺は口下手だから、実際に見て貰った方が早い」
主任はそう言うとオイと近くにいた技師を呼ぶ。技師は直ぐに駆けつけた。
「DD艤装用意」
主任の言葉に、技師は無線でどこかに連絡した。
「DDとは?」
不知火が珍しく女提督を見た。
「駆逐艦の略称よ。英語では駆逐艦をDestroyerと言うから、DDと名付けられたわ。
因みに軽巡がCLで重巡がHL、空母がACで軽空母がLAC、戦艦がBBね」
「聞いたことありませんね」
「ええ、艦娘のクラス分けをする際に日本が独自に決めましたから。
一応、表向きは全員『護衛艦』として表記してますから、内部でしか呼んでません」
日本は軍隊を持たないのだ。勿論、自衛隊から国防軍への改名運動もあったが、左翼側が頑なにして譲らなかった為に、艦娘達は全員『護衛艦』と言っている。
「ほら、あぶねーからお嬢ちゃんたちもこれ被ってな」
俄かに忙しくなった工廠内部で主任が二人にヘルメットを差し出した。
工廠の壁には『作業中はヘルメット、安全ベルトの確認を』とでかでかと書いてある。
工事現場と同じである。
「まぁ、1時間もすれば出来てるからよ。次は開発部に付いて説明する。
遅れないようについて来いよ」
主任はそう告げると歩き出した。
その後を二人は付いて行く。ちょっとした工場見学の様で楽しかった。
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