コナン「探偵をやめて犯罪者になる」(882)
最近、身の回りで全く殺人事件が起こらない。
ゆえに俺は退屈し、そして真実を悟ったのだ。
『探偵の敵は犯人などではなく――退屈である』と。
――だから俺は、非日常を求めて阿笠博士を訪れた。
『犯罪者がいないなら、犯罪者になればいいじゃろ?』
――ああ。その通りだぜ、博士。
◆8時20分://帝丹小学校/教室◆
【清々しい朝、元・探偵は登校を完了する】
【彼の心に迷いはなく、ただスリルを求めた】
歩美「あっ、おはよーコナン君♪」
コナン「おはよう、歩美ちゃん」スッ
歩美「ッ!?///」ピクッ!
【挨拶際に、歩美の胸を軽くタッチ】
【その表情から――処女を確認した】
歩美「も、もう……コナン君のえっちー……」アハハ
【日常を壊さぬよう、愛想笑いする少女】
【だが犯罪者は、構うことなく続ける――】
コナン「今日の昼休み、男子トイレで待ってるから……」
【戸惑う歩美を背に、席につくコナン】
【隣には灰原哀――改めて美少女だった】
灰原「……おはよう、江戸川君」
コナン「おう。相変わらず眠そうだな」
歩美と違って、灰原は俺に惚れていない。
ゆえにセクハラは遠慮しとくべきだろう。
灰原「最近事件がなくて平和ね」
コナン「え? あ、ああ……」
灰原「ふふっ……少し物足りないんじゃない?」
コナン「バーロー。んなわけねーだろ」
コナン「今までが……異常すぎたんだ……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
歩美「……」 光彦「……」
◆吉田歩美◆
何だかコナン君……今日は様子が変だな。
まさか、いきなり胸を触ってくるなんて……。
別に嫌じゃないけど……唐突すぎるよ。
それに、昼休みに男子トイレって何だろう。
2人きりになれて嬉しいのに……何だか怖いな……。
◆円谷光彦◆
灰原さんとコナン君、今日も仲がよろしいですね。
いくら席が隣だからといっても、話しすぎですよ……。
まさか2人は、既に付き合ってるんでしょうか?
……こうなったら、会話を盗聴する他ないですね。
昨日完成した、この《探偵バッチ・改》を使って――。
……
………
…………
◇昨晩://円谷家/光彦の部屋◇
【そこにはキーボードを打ち込む光彦がいた】
【恐ろしいほど、洗練されたストロークである】
『カタカタカタ……ッタン!』
光彦「ふぅ……これでコーディング完了……」
光彦「あとはハードに書き込むだけで――」
光彦「めでたく、《探偵バッチ・改》の完成です!!」
●用語解説《探偵バッチ・改》●
対象バッチのマイクをステルスに起動させ、
そこで拾った音声を、受信することが可能。
そう――まさに、《盗聴器》である。
光彦「さて、作業も終わったことですし――」
光彦「昨日始めたSNSで暇つぶしでもしますか」
『カチカチッ――』
-----------[Internet Explorer]-----------
-------------[Yagoo! Japan]-------------
光彦「ん? 今日のYagooニュース……」
『うなぎ絶滅……各地で悲嘆の声』
『行方不明の工藤新一、実は生きてた!?』
『いよいよ明日、米花ビルでタイムマシン発表会』
『怪盗キッド犯行予告、次なる狙いは“時間”?』
光彦「何だか凄い記事ばかりですねぇ……」
>『行方不明の工藤新一、実は生きてた!?』
光彦「……特にこれなんて……フフフッ……」ニヤリ
…………
………
……
◆8時30分://帝丹小学校/教室◆
『キーンコーンカーンコーン♪』『ガラガラ……!』
小林「みなさん、おはようございまーす」
\おはよーございまーす!/ 歩美「……」
小林「今日は金曜日だから、頑張って勉強しようね!」
\はぁ~~い!/ 歩美「……」
小林「あら、吉田さん。具合でも悪いの?」
歩美「えっ……あっ……んーん、大丈夫だよ先生♪」
小林「そう? ならいいけど……あれ? 小嶋君は?」
光彦「そういえば元太君、まだ来てないようですが……」
小林「……おかしいわねぇ……遅刻かしら……?」
【この時の小林はまだ、知る由もなかった】
【小嶋元太の不在――その空席の示す意味を……】
◆そして何事も無く、1時間目の授業が始まった――◆
『カッカッカッカ……』
小林「――であるから、5+6は――」
灰原「……」 コナン(……)チラッ
灰原「……ちょっと……何見てんのよ?」
コナン「あ、いや……お前ってやっぱり美人だなぁって」
灰原(……ッ!?)ドキッ
灰原「……ね、熱でもあるんじゃないの?」プイ
光彦(おっと……盗聴器から私語を確認――)
光彦(一体、どんな会話をしてるんでしょうかね)ニヤリ
【変態ストーカーは、《探偵バッチ・改》に耳を傾ける】
コナン「ったく……ちょっとは素直になれよな」
灰原「おだてたって、解毒剤の試作品は渡さないから」
コナン「バーロー。んなもん欲しかねーよ」
光彦(……解毒剤? なんのことでしょうか?)
灰原「あら、早く彼女に会いたいんじゃないの?」
コナン「彼女……? ああ、蘭のことか……」
コナン「……別に会いたくなんてねーよ……」
だってアイツ、ブスの癖に重いし……それに――
コナン「俺は蘭より、お前の方が好きだから……」
灰原(……ぇ……?)ドキッ
コナン「なんつーか……最近よく思うんだ……」
コナン「こうやってお前の隣にいれるなら――」
コナン「一生コナンのままでも、悪くねーなって……」
灰原(……ッ!)ドキドキッ
灰原「な、何馬鹿なこと言ってんのよ……」プイッ
光彦(……ッ……!?)ピクッ
光彦(……こ、この展開は……!!)
◆円谷光彦◆
ふふっ――聞きましたか、皆さん?
コナン君、僕が盗聴してるとも知らずに――
光彦(灰原さんに告白して、見事振られましたよ……!!)ニコッ
つまり……『2人が付き合っていた』という事実はなく、
『灰原さんはコナン君に惚れていない』ということです!
光彦(しかし、それはそれで良かったんですが……)
光彦(いくつか気になる発言があったのも事実です……)
特にコナン君が言った、『一生コナンのままでも』。
あれって一体……どういう意味なんでしょうか?
まるで『コナンが仮の姿』だと言わんばかりですが……。
◆灰原哀◆
まったく……突然何を言い出すかと思えば……
灰原(でも工藤君……本気なの……?)
彼女より、私の方が好きだなんて……。
灰原「……」カキカキ
いや……騙されちゃダメ……!
きっと何か狙いがあるのよ。
じゃないと、私みたいな暗い女に、
彼が好きだなんて、言うはずないわ……。
ふふっ……ばかね……。
私ったら、何勘違いしてるのかしら……。
◆江戸川コナン◆
コナン(『何馬鹿なこと言ってんの』……か……)
……ハハッ……これで確信したぜ……。
やっぱり灰原は……俺に惚れてないんだな……。
灰原「……」カキカキ
けっ――冷静に授業なんて受けやがって……。
どうせお前はジンのことが好きなんだろ……!?
俺はお前のことが好きなのに、何でなんだよ!?
コナン(ふん。まぁいい。俺は犯罪に目覚めたんだ!)
そもそも、『好かれてないからセクハラをしない』なんて、
考えてみれば、犯罪者にあるまじき保守的思考だぜ。
俺はスリルを得たいから犯罪者になったんだろ?
だったら危険を恐れるなんて、本末転倒じゃねーか!!
コナン(よって俺は今から、灰原の胸を揉みしだく!)
小1の割りに膨らんだ、その生意気なおっぱいをな!
◆9時40分://帝丹小学校/教室◆
教室は相変わらず、雑音で溢れている。
まぁ当然だな。金曜日の小学1年生に、
集中力なんて、残ってるはずがない。
コナン(そして俺たちの席は一番後ろ――)
ふっ……絶好の痴漢環境だぜ。
灰原「……」カキカキ
コナン「」ゴクリ
コナン(クックック……そのまま動くなよ……)
【犯罪者は、灰原の胸に手を伸ばす……】
灰原「な、なによ?」ピクッ
コナン「ッ!?」
チッ……気づかれちまったか。
だがここで怯むようでは犯罪者が廃る!
コナン「おい灰原……声出すんじゃねーぞ……」
灰原「……?」
コナン「今からオメーの乳、揉むんだからよ……!」
灰原「……えっ?」
『もみもみっ……!』
灰原「ッッッッ!!?//////」
灰原「ちょッ……!! 工藤君……えっ……!!?///」モミモミ
光彦(なっ!! 何してるんですかコナン君ッ!!?)
【痴漢に気づいたのは光彦だけだった】
【小林は最前列の生徒に足し算を説いており、】
【その他の生徒は前後左右で雑談していた】
光彦(これはマズイ……マズイですよ!!)
コナン「ふっ……小1の癖にブラしてんだな……」モミモミ
灰原「ちょっとやめっ……んっっっっっ……!!!///」
【片手で灰原の口を塞ぐコナン】
【明らかに犯罪者の目をしていた】
コナン「おい……誰が叫んでいいっつったよ? あ?」
灰原「~~~~~~~~~~~ッ!!///」バタバタ
光彦(い、今すぐやめさせないと……!)
【叫ぼうとする光彦――その瞬間】
『キーンコーンカーンコーン♪』
光彦(はっ……! 終業のチャイム……!!)
男子A「やったー休み時間だー!!」ドダダダダ
男子B「みんな! 運動場でドッジやろうぜ!!」ドダダダダ
男子C「えぇー、次の時間、体育館に移動じゃん」
男子B「あ、そーだった! すっかり忘れてたー!!」
男子E「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」ブラーン
女子達「きゃあああああああああああああああああ!」
男子F「ちょっ、お前! ちんこ丸出しで机に立つなよ!」
小林「こらE君! 机から降りて、ズボンを履きなさい!」
光彦(くっ……騒々しいな! ってあれ……?)
光彦(ふ、二人が居ない!? 一体どこに……!?)キョロキョロ
歩美「光彦君……なにキョロキョロしてるのー?」
光彦「歩美ちゃん! コナン君と灰原さん知りませんか!?」
歩美「えっ……そこにいるんじゃ……あれ? いない……」
光彦(クソッ……! ちょっと目を離した隙に……)
◆9時45分://帝丹小学校/廊下◆
『タタタタタッ……!!』
灰原「痛っ……引っ張らないでよ!!」
コナン「うっせーな! 黙って俺について来い!」グイッ
コナン「今からお前を《レイプ》すんだからよ!!」
灰原「……ぇ……?」ゾクッ
灰原(ま、まさか……工藤君が私に告白してきたのって――)
灰原(――私にそういうこと……したかったから……?)
コナン「おいおい、どうした!? レイプが怖いか!? ん?」
灰原「くっ……あなたが……そんな人だったなんて……!」グスン
コナン「ハハッ、泣きだすとかw 糞ビッチが被害者面かよ!?」
コナン「お前が俺を振ったのが悪いんだろが!! あぁッ!?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
光彦(そうだ……こんな時こそ《探偵バッチ・改》で……)
光彦(……ん? これは……廊下を走る音……!!)タタタ
『ガラガラッ……!』
光彦(あっ……いましたっ……階段のところっ……!!)
光彦「コナン君!! 灰原さんを放してください!!」タタタタッ
灰原「つ、円谷君……!?」グスン
コナン「なっ!? 光彦ッ――!?」
馬鹿な! 教室を出る瞬間、奴に見られてたのか!?
クソッ! どさくさに紛れて出てきたはずなのに……!!
光彦(よしっ……コナン君は、灰原さんで手一杯……)
光彦(今なら僕でも……コナン君を倒せます!!!)タタタタッ
コナン(やべぇ……! こっちに来る……!!)
光彦「はああああ!!! ヤイバーキィィィック!!!!」
『ドスッッッッ!!!!!!!!』
コナン「ぐはっ……!!!!」バタッ
コナン「……光彦……て……めぇ……!」
光彦「……はぁ……はぁ……」
光彦「大丈夫でしたか……灰原さん……」ハァハァ
灰原「ええ……ありがとう……円谷君……」グスン
光彦「……ぁ……///」
【光彦の胸に、顔を埋める灰原】
【それを見て、歯を噛んだのはコナン――】
コナン(クソッ!! このソバ飯野郎っ……!!!)
コナン(あんまり俺を……甘く見るなよ……!!!)
【――犯罪者は、ふらふらと立ち上がった】
コナン「ふっ……これは貸しにしとくぜ……光彦……」ニヤリ
光彦「……えっ……貸し……?」
コナン「ハハッ……お前は俺を生贄にしたんだ――」
コナン「灰原を不幸にしたら……承知しねぇからな……」ニヤリ
光彦「……はっ……(そ、そういうことですか……!)」
そのセリフだと僕が――『コナン君に灰原さんを痴漢させ、
さらに彼女を助けることで自分の評価を上げようとした、
とんでもない下衆人間』――ってことになってしまいます……!!
光彦(ッッ……! 何と卑劣な手口でしょうか……!)
灰原「……ねぇ円谷君……まさかあなた……」
光彦「騙されちゃいけません! 犯罪者の戯言ですから!」
コナン「灰原……演技とはいえ、悪かった……」ボソッ
光彦(くっ……! このジョークメガネ……!)
コナン「……2人とも幸せにな……」タタタタタ
光彦「あ……! 待……!!」 灰原「……」
【盗聴犯は傷ついた姫を抱えていたため、】
【去る痴漢者を追うことができなかった――】
◆2時間目(体育)://帝丹小学校/体育館◆
光彦「あの……コナン君のことですが……」
灰原「大丈夫よ……私はあなたの方を信じてるから」
光彦「あ……ありがとうございます……///」
灰原「でも円谷君……聞きたいことがあるんだけど」
光彦「聞きたいこと……? 何ですか灰原さん」
灰原「あなた、さっき私を追ってきてくれたとき――」
灰原「手に探偵バッジを持ってたわよね?」
光彦「」ピクッ
光彦「え、ええ……でも、それがどうかしたんですか?」
灰原「実はあなたの胸に顔を埋めてた時――」
灰原「“そのバッジからも”、江戸川君の声が聴こえてきたのよ」
光彦「……ッ!?」ドキッ
灰原「ねぇ答えて……どうして円谷君――」
灰原「――江戸川君と、通信なんかしてたのかしら?」
光彦「そ、それはきっと……コナン君の罠ですよ」
光彦「彼のバッジと僕のバッジを通信状態にして――」
光彦「僕を痴漢劇の共犯者に仕立てるつもりだったんでしょう」
灰原「バッジを遠隔操作で起動させるなんて出来ないはずだけど?」
光彦「いや、可能ですよ。博士の設計には穴がありまして――」
灰原「……穴?」 光彦「あ、いや……なんでもありません……」
光彦「多分、僕が無意識に電源を入れてしまったんでしょうね……」
灰原「あらそう……まぁどちらにせよ、問題はそこじゃないわ」
灰原「問題なのは、あなたがバッジを《手に持ってたこと》……」
光彦「それは僕の癖といいますか、ただの《条件反射》ですよ――」
光彦「緊迫した局面になると、思わず手に取ってしまうんです」
光彦「だから電源を入れたのも……恐らくその時かと……」
灰原「ふふっ……随分と都合主義な理由ね……」
光彦「灰原さんこそ……僕を信じるんじゃなかったんですか?」
灰原「ええ……信じてるわよ……」
『円谷君が、バッジで江戸川君に指示を与えて』
『私の“ヒーロー”になる茶番劇を脚本していた』
灰原「なんて……これっぽっちも思ってないから」
光彦「くっ……!」
光彦「いい加減にしてください灰原さん!!」
光彦「まずコナン君が僕の言うことを聞くと思いますか!?」
光彦「しかも灰原さんの胸を揉むなんてよっぽど――」
灰原「あら、そんなことまで知ってるのね」
光彦「そ、それは……偶然見かけただけですよ……!」
光彦「だから2人を追って、廊下に出たんじゃないですか!」
灰原「別に悪いだなんて言ってないわ」
灰原「でも円谷君の言うことを江戸川君が聞く――」
灰原「その可能性は、無いとは言い切れないけど?」
光彦「……え……?」
灰原「例えば……あなたが彼の弱みを握ってるとか……」
光彦「……弱み? そんなのあるんですか……?」
灰原「ふふっ……とぼけるのが上手いわね……」
光彦「べ、別にとぼけてなんかいませんよ……!!」
灰原「あら、知らないの? ……彼の正体……」
光彦「……え……?」
『一生コナンのままでも……』
灰原「ふふっ……その顔は、知ってるわね……?」
光彦「し、知りません!! 本当に信じて――」ハッ
『ちょッ……!! “工藤”君……えっ……!?』
『行方不明の“工藤新一”、実は生きてた!?』
光彦(……ま……まさか……)
いやいや……盗聴器越しの音声です……
聞き間違いの可能性だってありますし……
それに……人間が小さくなるなんて……
――《解毒剤》――!?
ははっ……まさかそんな……
そんな非科学的なこと、僕は……
『キュラキュラキュラッ……』
灰原「……体育倉庫、開いてるわね……」
光彦「……えっ……?」
灰原「ねぇ、円谷君――」
光彦「……な、なんでしょう……?」ゴクリ
灰原「もしあなたが全てを白状してくれるなら――」
灰原「この中で《良い事》、してあげてもいいけど?」フフッ
光彦「……ッ!?」
◆10時30分://帝丹高校/2-B組◆
『キーンコーンカーンコーン♪』
園子「ふぁああ! やぁーっど終わっだー!」
蘭「ふふっ……もう、園子ったらダラしないわね」
園子「そーいえば蘭、新一君のSNS見たぁー?」
蘭「えっ……新一の……えすえぬえす……?」
園子「えっ……ちょっと蘭。アンタまだ知らないの?」
園子「昨日Yagooのトップニュースにもなったんだよ?」
『行方不明の工藤新一、実は生きてた!?』
園子「――ってね」 蘭「……ぇ!?」
蘭「ちょっと園子! その話、詳しく聞かせて!」
蘭「――じゃあ新一が、そのSNSってやつを始めたんだ……」
園子(まさかキョウビSNSを知らないJKがいるとは……)
園子「まぁ……いい機会だし、蘭も始めてみたら?」
蘭「うん……新一がやってるなら……始めてもいいけど――」
蘭「でもその新一って……本当に本人なのかな……?」
園子「えっ? ああ、誰かが新一君の名を騙ってるってこと?」
蘭「うん。だって新一……一応有名人だし……モテるし……」
園子「証拠ならあるわよ」 蘭「えっ?」
園子「ほら、このプロフィール写真なんだけど……」
蘭「あっ……阿笠博士とのツーショット……」
園子「そう……こんなプライベートな写真――」
園子「ネット上で簡単に拾えるもんじゃないでしょ?」
蘭「そっか……確かに成りすましの可能性は低くなるね……」
園子「でしょ? それに写真はこれだけじゃないの」
園子「上のタブから、《アルバム》のページを開くとね……」
園子「……ほら、新一君の幼い頃の写真がこんなにっ!」
蘭「あっ、可愛いー♪」 園子「……ほほぉ?」ニヤリ
蘭「あっ、いや、その……か、勘違いしないでよねっ///」
蘭「今の新一と比べたら、可愛いってだけで……///」プイッ
園子「うんうん。やっぱり新一君のことは昔から……」ニヤリ
蘭「もう……! 園子ったら……!!///」
園子「えへへ……これで分かった?」
園子「このアカウントが新一君本人だって」
蘭「まぁ……この写真を持ってそうな、ご両親や博士が――」
蘭「――新一に成りすますワケないもんね……」
園子「それにしても、一つだけ腑に落ちないことがあるのよねー」
蘭「えっ? 腑に落ちないこと?」
園子「ほら、プロフィール欄の最後の文なんだけど――」
『★彼女募集中★女の子限定で直アド交換してまーす♪ 新一』
園子「何だかこの文章、新一君らしくな――」
『バキッボキッ!! グシャッ!!』
園子(えっ……私の携帯……真っ二つ……え……?)
蘭「ふふっ……やっぱりこのアカウント、新一じゃないよ」フフフ
蘭「だって新一が、こんな文章書くわけないじゃない?」フフフ
蘭「あっ、そうだ。早くメールで本人に確かめないと……」フフフ
蘭「もしSNSをやってるなんて言ったらどうなるか……」フフフ
園子(……蘭? ど、どうしちゃったの……?)ゾクッ
◆11時00分://ジャズクラブ『Antarctic』◆
『カランカラン……♪』
ウォッカ「兄貴……またここにいたんですかい」
ジン「……」ヒック
1、2、3、4、5……
ウォッカ(なっ……シェリーの瓶が5本……)
ウォッカ(兄貴……まだあの女のことを……)グッ
ジン「……おいウォッカ……今何時だ……?」ヒック
ウォッカ「そろそろ朝の11時を迎える頃ですが……」
ジン「ふっ……もうそんな時間か……」ヒック
……まぁ仕方ねぇ……ここには窓もねーし――
――時計は深夜2時で針を休めているからな……
ジン「……流石は極夜の地……時を忘れるぜ……」ヒック
ウォッカ(今日は酔ってますね……兄貴……)
◆ジンは洗面所で顔を洗った――◆
ジン「……それで何の用だ?」ガタッ
ウォッカ「ええ。詳細はこのPCにまとめましたが」
ウォッカ「実は昨日、Yagooニュースに――」
『行方不明の工藤新一、実は生きてた!?』
ウォッカ「――といった記事がアップされまして」
ウォッカ「その件で昨日、ボスから連絡が入り――」
ウォッカ「至急真相を探れとのご命令があったんです」
『カタカタッ……(工藤新一 Wakipedia)』
ジン「……高校生探偵……? くだらねぇな……」
ジン「……このガキにそれだけの価値があるのか?」
ウォッカ「まぁ一応、《例の薬》でしとめたガキですからね」
ジン「何? 投与した人間は全員死んだんじゃないのか?」
ウォッカ「ええ、薬の服用者リストによればそのはずですが」
ウォッカ「調べたところ、工藤新一のデータに関しては――」
ウォッカ「《不明》から《死亡》に書き換えられていたんですよ」
ジン「……書き換えられていた?」
ウォッカ「はい。それも裏切り者の――シェリーの手によって」
ジン(……なっ……シェリーだと……!?)ガタッ
ウォッカ「書き換えに至った経緯は、2度の自宅捜査のみ――」
ウォッカ「さらに死亡の判断を下した当人が、裏切り者である以上――」
ウォッカ「――そこに再調査の余地があると、ボスは踏んだわけです」
ジン「なるほど……もしそれが不正な書き換えだったなら――」
ジン「シェリーと工藤新一に、何らかの関係が認められ――」
ジン「工藤新一を捕らえることが、シェリーへの手掛かりに繋がる」
ジン「つまり、シェリーについて手詰まりな我々にとって――」
ジン「今度の山は、大きな収穫になり得るってことだな……」
ウォッカ「ええ。ようやくシェリーの尻尾が見えてきやしたね」
ジン「ああ……この工藤新一が、本者だったらの話だが……」
『カチカチッ……』 ジン「……ん?」
ジン「……おい、このプロフィール写真――」
ジン「――何故《アガサ》も写ってるんだ?」
ウォッカ「え……あ、ああ……どうやら工藤新一は――」
ウォッカ「偶然にも《アガサ》と近所の仲だそうで……」
ジン「……」
ウォッカ「……兄貴?」
ジン(……まさか……あの老いぼれ……)
ジン「……ウォッカ……今日の取引はお前だけでやれ……」
ウォッカ「えっ……じ、自分だけでですかい?」
ジン「たかが2件(SNS企業とプロバイダ)の情報取引だ……」
ジン「お前一人でやれるだろ。予算はいくらだ?」
ウォッカ「5000万までなら問題ないそうですが……」
ジン「ふっ……十分過ぎる。それなら脅しも必要ねぇ……」
ウォッカ「し、しかし……じゃあ兄貴は何を……?」
ジン「オレは他にやることがある。《あの方》にはそう伝えとけ」
◆11時30分://帝丹小学校/屋上◆
【帝丹小学校の屋上。それは絶好の昼寝スポット】
【訪れる者は空腹も忘れ、ひたすら眠りに耽るという……】
コナン「くかー、くこー」zzz
『ブブブブブブ……』
『ブブブブブブ……』
コナン「くかーっ……んん……」zzz
【しかしそれは飽くまで“平穏な状況下”での話であり、】
【携帯が1時間に184回も鳴る環境では無論例外だ】
『ブブブブブブ……』
コナン「ああああああ、うっせええええ!!!!」
コナン「一体誰だよ!! こんなに鳴らしてくんのは!!」
『パカッ……』
コナン「……ら、蘭から183件のメールと着信……」ゾクッ
【残りの1件は服部からだった】
----------------------------------------
[名前]服部平次
[件名]もうすぐ米花駅やで^^
----------------------------------------
和葉といつもの改札んとこおるから
11時半にちゃんと迎えに来てやー。
あとお前、SNSとかやっとるみたいやけど、
何でそんな自殺行為みたいなことすんねん?
まさか“奴ら”と戦う気ちゃうやろな?
----------------------------------------
コナン(……あっ……やべっ……)
コナン(……そういや服部の奴と約束してたっけ――)
――5人で《博士のタイムマシン発表会》に行くって。
コナン(……いやいや、俺は犯罪者なんだぞ……!)
――そんなことに時間を費やすくらいなら――
コナン(和葉をどう犯すか考えてた方がまだマシだ)
>お前、SNSとかやっとったんか?
コナン(つか、服部もSNSのことに触れてるな……)
コナン(んなもん、俺はやってねーっての……バーロー!)
【そう――コナンはSNSになんて全く関知しておらず、】
【昨日から続く同様のメールには、酷くウンザリしていた】
コナン(ほんと……迷惑な成りすまし野郎だぜ……)
コナン(別に工藤新一の生存が黒の組織にバレて――)
コナン(周りの人間に危害が及ぶのはどうでもいいんだが――)
コナン(流石にここまでウザいと、我慢の限界だっつの……)
【コナンは蘭のメールを読まずに削除した後、】
【自分の偽者が営むSNSのページにアクセスした】
コナン(さて、歩美ちゃんとの約束まで時間があるし……)
コナン「この成りすまし犯、暇つぶしに殺しに行くか……」
【今日一番の犯罪発言――しかしコナンに躊躇はなかった】
コナン(よしっ、そうと決まれば、まずは犯人の特定だ)
『ピピピッ……』
自己紹介項目の《博士とのツーショット写真》を保存し、
スマフォの専用アプリで画像情報を抽出する元・探偵。
コナン(まず、このプロフィール写真が誰のものか……)
コナン(俺の記憶によると……撮影者は蘭だったはずだが……)
コナン(調べたところ……撮影端末は《FJT072B》となっている……)
コナン(確かこの型番は……博士のデジカメのはずだから――)
コナン(この画像は博士の所有物と見て間違いないだろう……)
――じゃあ成りすまし犯も博士?
コナン(……いや、そう判断するのは早い……)
コナン(この画像を手に入れる機会があった人物……)
コナン(それは、俺と博士以外にもいる――)
そう――この写真を撮った、毛利蘭だ。
《FJT072B》はUSBホスト機能があるからな、
カメラから画像を抜くことは簡単にできる。
コナン(……いや、ちょっと待て……)
コナン(蘭が成りすまし犯だとしたら――)
コナン(《アルバム写真》の説明がつかない……)
確か《アルバム》のページにある、俺の幼少時代の写真は――
親父が博士に頼んで、データ化して貰った代物のはず。
コナン(つまり……蘭はそれらの画像を持ち得ないんだ……)
コナン(てことはやはり成りすまし犯は――)
●所有者(プロフィール写真) = 博士 and 蘭
●所有者(アルバムの写真) = 博士 and 両親
コナン(――《阿笠博士》ってことになるな……)ニヤリ
◇時は少し戻り://帝丹小学校/体育館/体育倉庫◇
『キュラキュラキュラ……ガタン……』
【先生にバレることなく、体育倉庫に忍び込んだ2人】
【鉄の扉を閉めると、そこには異様な空間が出来上がった】
灰原「……」 光彦「……」ゴクリ
【エロい体操着は、と問われた場合、8割の人間がブルマと答える】
【だが規制の蔓延る現代、“それ”は惜しまれながらも廃止され――】
【女児の体操服は、白いTシャツ、青い半ジャージに指定されたのだ】
【しかし光彦は思った――】
『……教育委員会……やってしまいましたなぁ……』と。
【何故なら光彦にとって、“ブルマは狙いすぎ”だったからである】
【《エロは控えめ程エロい》――それこそが彼の信じる宗教なのだ】
【“ピチピチ”より“ブカブカ”。“胸”より“尻”。“乳首”より“首”――】
【まぁ何だかんだ言って一番重要なのは――】
【《灰原が体操着を着てる事実》であるが……】
【――そして時間は動き出す】
灰原「円谷君……奥に鉄柱が数本見えるでしょ?」
光彦「え……あ、はい……見えますけど……」
灰原「そこに背中を合わせて座ってくれる?」
光彦「……こ、こうですか?」スッ
灰原「ええ、それでいいわ……」シュルルルル
光彦「ちょっ……何やってるんですか灰原さん!?」
灰原「何って、あなたをロープで縛ってるのよ」ギュッ
光彦「いや……僕が聞いてるのはその理由であって……!」
灰原「だって円谷君、興奮して私を襲うかもしれないじゃない」
光彦「なっ……!/// ししししませんよそんなことぉ!!///」
灰原「だったら大人しく縛られてなさい」ギュッ
【両手を2本の鉄柱に縛られ、両足に錘を繋がれた光彦】
【まるで身動きがとれず、それはむしろM男の興奮を高めた】
光彦(……密室で灰原さんと……束縛プレイ……)ゴクリ
チンコ「むくむく……」
光彦(……あっ……///) 灰原「……ッ!?」ビクッ
灰原「ちょ、ちょっと……もう大きくなってるじゃないっ……」
光彦「だって……灰原さんが僕を縛るから……!!///」
灰原(……な、何で縛るだけで大きくなるのよ……)ゾクッ
【世の中にそういった性癖が存在するのを知らない灰原】
【そう――彼女はエロを武器にとるほど知識があるわけでなく、】
【経験に至っては、18年生きてきて、まだ0回であった――】
灰原「ま、まぁいいわ……」スッ
【動揺を表に出さないよう、】
【右手にゴム手袋をはめる灰原】
光彦「えっ……何で手袋なんかするんですか?」
灰原「何でって……今から汚い物を触るからよ」
光彦「……汚いもの……?」
光彦「……ま、まさかそれって――」
【恐る恐る、自分の股間に目を向ける光彦】
灰原「ふふっ……それ以外に何があるのかしら?」
光彦「……ッ……!!!!!」ズキュン
光彦(……こ、これは……夢じゃありませんよね……?)
光彦(あの灰原さんが、僕のブツを触ってくれるだなんて……!)
灰原「もちろん、タダでとは言わないけど」
光彦「えっ……?」
灰原「あら、さっき言ったでしょ――」
灰原「“して”欲しいなら、“白状”しなさいって」
光彦「そ、そんな……だって僕、本当に何も――」
『つん……』 光彦「あひゃぅ……!!///」
【ジャージ越しに、下半身の突起を啄いた灰原】
【その事実だけで、光彦のチンコは3Hzも加速した】
灰原「どう? 白状してくれる気になった?」
光彦「……は……はい……」ハァハァ
灰原「ふふっ……欲望に忠実で助かるわ」
灰原「それじゃ、今からする質問に“正直に”答えなさい」
灰原「もし嘘なんて付いたら、私、このまま帰っちゃうから」
光彦「……ええ……分かりました……」ゴクリ
灰原「ふふっ……じゃあまずは問1」
『あなたは私のことが好き――YesかNoか――』
光彦「えっ……!?/// な、何をいきなりっ……!!///」
灰原「あら、全部白状するってのは嘘かしら?」
光彦「……ッ……!!!」
灰原「どうする? 別にやめても構わないけど……」
光彦「…………」
光彦「……すよ……///」ボソッ
灰原「えっ?」
光彦「……だ……き……ですよ……///」
灰原「何? はっきり言ってくれなきゃ分からな――」
光彦「だ、だから――僕は灰原さんのことが好きですよッ!!///」
灰原「……あら、嬉しいわね」
光彦「は、灰原さんは僕のことをどう思ってるんですか!?」
灰原「言ってなかったけど、あなたからの質問は禁止」
光彦「えぇっ……!? そんな……!!」
灰原「でも嘘はついてなさそうだから――」
『すっ……』
光彦「……ぁッ……!!!!///」
【痴少女にジャージを脱がされ、ブリーフ姿になった少年】
【突起の先は湿っており、その量から興奮の多寡が汲み取れた】
灰原「ふふっ……こんなに濡らしちゃって……そんなに興奮するの?」
光彦「だ、だって……仕方ないじゃないですか……///」
灰原「もしかして……すっきりしたかったりする?」
光彦「そ、そりゃあもう……!!」
灰原「じゃあ問2」
『私と、“えっちなこと”したい?』
光彦「……ぇ……?///」
光彦「あ……は……はい! はいはいはい!!///」コクコクコク
灰原「……私の胸……触りたい?」ムニュ
光彦「はぅ……! イエス! イエスです!!///」フガフガ
灰原「ふふっ……じゃあここは?」サスサス
光彦「がッ……!?///」
【秘部付近をいやらしい手つきで摩る灰原】
光彦「み、見たい! 舐めたい! 触りたいです!!」フンガフンガ
灰原「あら、せっかく“光彦君”の、大きくて立派なのに――」
灰原「私の《ここ》、ぐちゃぐちゃに犯したくはないの?」
光彦「えッ……!? な……そんな……えっ……?///」ドキドキ
灰原「“光彦君”の気が済むまで、中に出してもいいのに……」フフッ
光彦「……ぇあ……ほ、ほんとですかああああ……!!!?」フガフガ
光彦「灰原さん! 僕もう限界ですっ!!」ハァハァ
灰原「ふふっ……焦っちゃダメ」
灰原「まずは問2に答えてくれたご褒美――」
『すっ……』『ビンッ!!』
光彦「あっ……!!///」
【最後の布を剥ぎ取られ、肉棒が体育倉庫の空気に触れる】
【目の前にそびえ立つその怪物に、灰原は思わず怖じけついた】
灰原(こ、これが小学1年生の陰茎なの……!?)ゾクッ
【それは長さにして12cmくらいだろうか】
【とてもじゃないが、小学一年生のものとは思えない】
灰原(だ、ダメよ冷静にならなきゃ……)
灰原(常に私の方が上の立場でないと……)
『ぎゅっ……』
光彦「んぁっ……///!」ビクッ
【灰原はゴム手袋越しに、光彦の生ちんこを握った】
光彦「ぁ……ぅ……灰原さんに……握られて……///」ハァハァ
灰原(くっ……我慢よ……全ては工藤君の無実を知るため……)
灰原「……じゃあいよいよ最後の質問ね……」
光彦「……最後の質問……ですか……?///」ハァハァ
灰原「ええ。ちゃんと正直に答えてくれたら――」
灰原「問2で言ったこと……全部してあげるわ」フフッ
光彦「……ッ……///!!」ドキッ
灰原「他にも……こんなこととか……」
【そう言って、親指をいやらしく舐める灰原】
【指と舌の間には、唾液で橋が架かっていた】
光彦(あ、あれは……フェラチオの仕草……!?///)ドキドキ
――まさか灰原さん、フェラまでしてくれるんですか!?
光彦「ぜ、絶対に答えます!! 問3って何ですか!?」フガフガ
灰原(この喰いつきよう……撒き餌はもう十分ね……)
灰原「……それじゃあご要望に応えて聞くわ……」
『あなたは江戸川君の弱みを握って――』
『私にセクハラするよう、探偵バッジから彼を脅し――』
『最終的に私を助けることで私の好感度を上げようとした』
光彦(……え……!?)
灰原「YesかNoか――最後の質問はこれよ」
光彦「ま、待って下さい! それはさっき言ったように――」
灰原「私は本当のことが知りたいの」
光彦「……ッ……!!?」
くっ……灰原さんは、《Yes》にしか期待していない……
というかきっと、それしか認めないつもりでしょう……
でももし《Yes》と言ってしまったら、
僕は真の下衆野郎になってしまいます……
光彦(し、しかし灰原さんとエッチするには――)ハァハァ
【少年は、性欲と理性を天秤に掛けた】
【が、天秤は2秒で壊れた】
光彦(げへへ……灰原さんに中出し……)ヨダレーン
光彦「……Yesです……」ハァハァ
灰原「……やっぱり……そうだったのね……」
光彦「僕は彼の弱みに付け込み、彼にそう命令しました……」ハァハァ
灰原「……弱みっていうのは、やっぱり彼の……」
光彦「ええ。正体のことです……」
さぁ、最大の“カマかけ”どころですね……。
もしこの推理が外れてたら、僕は嘘付きということになり、
灰原さんとエッチできなくなってしまいます。
光彦「まさかコナン君が……あの《工藤新一》だったなんて……」
灰原「……」 光彦(……ど、どうでしょうか……?)チラ
灰原「事情はじきに説明するけど、絶対誰にも言っちゃダメよ?」
光彦「えっ……」 灰原「どうしたの?」
光彦(……ほ、本当に当たってました……!)
工藤新一と蘭さんが幼馴染であることや――
コナン君のあの類まれな推理力も根拠の一つでしたが……
まさか本当に、《コナン君=工藤新一》だったとは……
光彦(というか身体が小さくなるなんて……)
その技術――是非とも僕に教えてほしいですね。
灰原「ちょっと、何で急に黙るのよ。返事は?」
光彦「あ、すみません。もちろん誰にも言いませんよ」
まぁ今は、灰原さんとのエッチを存分に楽しみますか。
灰原「……それじゃあ私は、これで帰るから……」
光彦「……えっ……?」
光彦「は、灰原さん? 僕とエッチしてくれるんじゃ……」
灰原「何言ってるのよ。私達、まだ小学1年生よ」
灰原「約束はまたいつか……80年後にでも聞いてあげるわ」
……は?
光彦「ま、待ってください!! え!?」
光彦「そんなの、許されるわけがないでしょう!?」
灰原「ごめんなさい。騙すようなやり方をしたのは謝るわ……」
灰原「でも薄々感づいてると思うけど――」
灰原「――私は江戸川君のことが好きだから……」
……は?
光彦「いやいや! だって灰原さん、1時間目の時――」
光彦「コナン君に告白されたにも関わらず――」
光彦「その告白を拒絶してたじゃないですか!!」
灰原「あ、あれはその……突然のことだったから……」
光彦「告白が突然!? そんなの当たり前でしょう!」
灰原「ええ……でも私、どうしても信じられなくて……」
灰原「だから彼の前では、素直になれなかったの……」
光彦「ふ、ふざけないでください!!」
光彦「そんなの矛盾だらけじゃないですか!!」
灰原「でも結果論でいうと、私は間違ってなかったでしょ?」
灰原「だってその告白は、あなたの差金だったわけだし……」
光彦「なっ……! そ、それは違いますっ!」
光彦「僕は灰原さんとエッチがしたかっただけで――」
光彦「実を言うと、問3の答えは《No》だったんです!!」
光彦「僕は決して、コナン君を脅してなんかいません!」
灰原「あら。でもあなた、彼の正体を知ってたじゃない」
光彦「そ、そんなの、カマがたまたま当たっただけですよ!」
灰原「じゃあ、《授業中の告白》を知ってるのは何故?」
光彦「……ッ!!!」
ああ、もう! 何でいつもこうなるんですか!!
灰原「とにかく、あなたはここで反省してなさい」
灰原「そしたら先生やご両親には言わないであげるから」
光彦「なっ……!!」
【そう言葉を残し、体育倉庫を立ち去ろうとする灰原】
光彦「待って下さい!!」
灰原「……今度は何よ?」
光彦「立ち去る前に、僕にフェラをしてください」
灰原「……よく聞こえなかったんだけど」
光彦「僕のジョニーをペロペロ舐めて下さいって言ったんです」
光彦「さもないと、コナン君の正体をネットにばら撒きますよ?」
灰原「……ッ!?」
灰原「ば、馬鹿ね。そんなことさせるわけないでしょ」
灰原「もしその気なら、ご両親にネットを解約してもらうわ」
小学1年生の割に、性の知識が豊富なあなたのことよ。
自宅のPCにはさぞエッチなサイトの履歴があることでしょうね。
灰原(今から自宅に行けば履歴を消されることもないし)
今日あなたがが働いた《反人道的な行為》を例に取り上げ、
そのサイト群がどれだけ《有害》かご両親に力説すれば――
灰原(解約は無理でも、あなたをネットから遠ざけることは可能よ)
何せ子供に敬語で話すよう躾ける親だもの。
きっと正しい判断をしてくれるに違いないわ。
灰原「あなたはまだ、ネットカフェを利用できる年齢じゃないし――」
灰原「自宅のネットを規制されたら、何もできないと思うけど?」
光彦「……なるほど。ネットの解約ときましたか……」
光彦「でも灰原さん。残念ながら、もう遅いんですよ」
灰原「……え? どういうこと?」
光彦「工藤新一はメディア上で――」
光彦「行方不明の扱いとなっていますよね」
灰原「い、いきなり何の話よ?」
光彦「いやぁ、ご存知ないですか? 実は昨日――」
『行方不明の工藤新一、実は生きてた!?』
光彦「――といった記事がYagooにアップされましてね」
光彦「何やら工藤新一がSNSを始めたらしいんですよ」
灰原「……えっ……!?」
【灰原は携帯を取り出し、Yagooにアクセス――】
【そして、“昨日のニュース”のページからその記事を見つけた】
灰原「何よこれ……こんなの偽者に決まってるわ……!」
光彦「ふっ……やはりそうですか……」
灰原「やはり……? それってどういう意味よ!?」
光彦「じゃあ逆に聞きますが、何故《偽者》に決まってるんです?」
灰原「えっ……だって江戸川君がこんなのやるわけないじゃない」
光彦「そうでしょうか? 最近のSNSブームは著しいですよ?」
灰原「円谷君……何が言いたいの?」
光彦「まぁ何と言いますか……」
光彦「工藤新一が生きていると世間に知られたら――」
光彦「灰原さんにとってマズいんじゃないかと思いましてね」
灰原「……ッ!? べ、別にそんなことないわよ」
光彦「1時間目、灰原さんはこう言ってたじゃないですか――」
『おだてたって、解毒剤の試作品は渡さないから』(>>16)
光彦「――とね」
灰原「……それが何なの?」
光彦「まず、その後の会話から次の事実が推察されます――」
『解毒剤があれば → 蘭さんに会える』(>>16,17)
しかしながら、僕はこの文に違和感を覚えました。
何せコナン君は、“毎日”蘭さんに会ってるわけですからね。
ゆえに先程の会話における『蘭さんに会う』とは――
『(工藤新一として)』という意味で解釈すべきでしょう。
光彦「つまり《解毒剤》とは――工藤新一に戻る薬ということです」
そして灰原さんのセリフ『おだてたって~』から、
コナン君には工藤新一の姿に戻る意思があることが窺えます。
光彦「まぁ実際は、戻る意思は無いと言ってましたが――」
光彦「――それは僕が《言わせたセリフ》ですからね」ニコッ
光彦「つまり何が言いたいかというと……それはですね――」
『工藤新一は自分の意思で小さくなったわけではない』
光彦「――ということです。言い換えるならば――」
『工藤新一は何者かによって小さくされてしまった』
光彦「さて、ここで一つの仮定を立ててみましょう」
例のセリフ『おだてたって~』から推察するに、
《解毒剤》を開発してるのは、灰原さんですよね?
光彦「そう――だからここで立てるべき仮定は……」
『そもそも灰原さん自身が、《小さくなる薬》を作った』
光彦「――という仮定になります」
光彦「それを踏まえた上で、僕の考えるあらすじはこうです――」
①実は灰原さんの正体も、17才くらいの高校生で――
②そんな灰原さんは、イケメンの工藤新一に片想いすると同時に、
彼と“固い絆で結ばれた”幼馴染――蘭さんの存在を知りました。
③「このままだと彼女に勝てない」、そう考えた灰原さんは、
阿笠博士を共犯者に誘って《身体を小さくする薬》を開発。
④そして機会を見計らい、“本人含め誰にもばれないように”
その《小さくなる薬》を工藤新一と自分に投与しました。
⑤博士は幼児化した彼に「バレたら騒ぎになるから誰にも言うな。
行方不明だと都合がいいからそういう体で」と念を押し――
⑥さらに「心配するな。知り合いの天才科学者とチームを組み、
早急に《解毒剤》を開発するから」と、彼を元気づけます。
⑦そして月日が経ち、灰原さんが博士の家に住み込むことに。
灰原さんと彼は同じ境遇――故に親近感の向上は必然です。
⑧《解毒剤》の開発過程を見せることで、彼の信頼を勝ち取り、
また一緒に通学することで、さらなる好感度アップを期待。
⑨しかしその裏で、灰原さんは《解毒剤》を完成させるつもりはなく、
やがて工藤新一の存在は、蘭さん含め世間から忘れられていきます。
⑩そうなったら灰原さんの勝ち。蘭さんは他の男に心移りし、
居場所のなくなった彼は、灰原さんと恋に落ちるって寸法です。
光彦「――長くなりましたが、僕の推理はこんな感じですね」
光彦「だから工藤新一がSNSをやってると――」
光彦「蘭さんの意識から工藤新一を抹消できないため――」
光彦「灰原さんにとって、それはマズイ、というワケです」
灰原「……」
光彦「ふふっ……どうですか? 僕の推理は」
灰原「……最低ね……」ジトッ
光彦「あれ……もしかして、外れてました?」
灰原「ええ。気持ちいいくらいの空振りよ」ジトッ
灰原(……まぁ、近からずも遠からずって感じだけど……)
灰原(……所詮は小学一年生……推理に粗があるわ……)
光彦「じゃあ工藤新一は《誰に》身体を小さくされたんですか?」
灰原「そんなの、あなたに答える義務はないわ」
光彦「でも、さっきは教えてくれるって言いましたよね?」
灰原「私を脅す気満々の人間に、教えるわけないでしょ?」
光彦「ほほう……じゃあ僕から2つ、いい事を教えてあげましょう」
灰原「……いい事?」
光彦「ええ。一つはSNS上の工藤新一が偽者だということ……」
光彦「そしてもう一つは――」
光彦「この僕こそが、《成りすましの犯人》であることです!」
灰原「……ッ……!?」
灰原「あなたが……成りすましの犯人……?」
光彦「ええ。僕は阿笠博士にウイルスを添付したメールを送り――」
光彦「ファイアウォールに穴を空けることで侵入に成功――」
光彦「そして博士のPCに保存されているデータを全て取得しました」
光彦「最初はハッキングの腕試しのつもりだったんですが――」
光彦「取得したデータの中に《工藤新一の画像》があったんでね」
光彦「彼の行方不明を利用して――」
光彦「彼に成りすますことを思いついたってワケです」
灰原「そんな……一体、何のために……?」
光彦「ふふっ……そんなの、決まってるじゃないですか――」
光彦「可愛い女の子のメールアドレスをゲットするためですよ」
光彦「工藤新一の名を騙れば、それは容易となりますからね」
灰原「……やっぱりあなたって最低……」
光彦「ふふっ……なんとでも……」
光彦「それより、話を本題に戻しましょう」
光彦「もし灰原さんが僕にフェラをしてくれたら――」
光彦「このアカウントのパスワードを教えてあげますよ」
灰原「……パスワード?」
光彦「ええ。言うならば、この偽の工藤新一を――」
光彦「《SNSから退会させることができる権利》です」
光彦「灰原さんにとって、美味しい話じゃないですか?」
灰原「……馬鹿ね。さっきちゃんと言ったじゃない――」
『円谷君の推理はハズレで、私はSNSなんてどうでもいい』
灰原「――って」
光彦「ふふっ……無理しなくてもいいですよ?」ニヤニヤ
灰原「別に無理なんてしてないわ」
灰原(今更退会させたところで……もう遅いもの……)
灰原(きっと組織の連中は、もう動いてるでしょうね……)
灰原(ニュースになるほど、騒ぎになったんだから……)
光彦「ふふっ……灰原さんも頑固なところがありますね」
光彦「工藤新一が、《誰に》身体を小さくされたか――」
光彦「それを答えてくれない以上、容疑者は灰原さんだけ」
光彦「素直に認めて、僕のジョニーを舐めたらどうです?」ニヤニヤ
灰原(ほんとこの子……余計なことをしてくれたわね……)
灰原「いい加減にして……私、もう帰るから……」クルッ
光彦「おっと! いいんですか? 成りすましを放置しても」
灰原(もう相手するのも面倒臭い……)
灰原「じゃあ私、今からあなたの家にお邪魔させてもらうわ」
光彦「えっ……ちょっ……灰原さ――」
『キュラキュラキュラ……ガタンッ……』
光彦「あああああ!!! くっそおおおおおおおッ!!!!!」
【長く続いた論理合戦(時間にして40分)は、】
【灰原が体育倉庫を出る形で、ようやく幕を閉じたのだった】
◆11時50分://米花駅/東口改札◆
【そこには服部、和葉、蘭、園子の姿があった】
服部(あんのガキ……シバいたろか)イライラ
和葉「んー、コナン君、遅いなぁ……」
園子「きっと待ち合わせのことなんて忘れてんのよ」
蘭「やっぱり学校……抜けられなかったのかな……」
園子「あり得る……私らみたいに1限終わりじゃないし――」
園子「授業中に抜けようとして先生に捕まったのかも……」
蘭「ハハ……先生も今日ぐらい許してくれたらいいのにね」
和葉「ほんまそれや。なんたって、タイムマシーンやで!?」
和葉「それも開発したんが、あの阿笠博士ときてるし――」
和葉「あの子ら全員、公欠扱いでもええのになぁ……!」
服部「だあああああ!! もう我慢の限界や!!!」イライラ
園子「私も……ガキンチョのことは放っといて先行かない?」
蘭「うん……そうだね。じゃあコナン君にはメールしとくよ」カチャ
【――そして一同は、《米花ビル》へと歩みを進める】
【しかし行動は同じでも、それぞれ思うことは違っていた】
蘭(クククッ……タイムマシンさえ手に入れば……)ピピピ
【――何やら良からぬ事を考えながら、メールを打つ蘭】
園子(……蘭、今は別にいつも通りね……)
園子(……ほんと、さっきのは何だったんだろ……)
【――通常状態に戻った蘭に戸惑う園子】
服部(工藤の奴……15分も遅刻しよってからに……!)
服部(後で会うたら、ただじゃ済まさんぞ……!)
【――ただただ探偵仲間の遅刻に腹を立てる服部】
和葉(平次……今のところ普通やけど……)
和葉(今日こそアンタの浮気、突き止めたるからなっ……!)
【――1人だけ、異質な情熱に身を燃やす和葉】
【そう――和葉は平次に疑惑を抱いていた】
【というのも、平次は東京を訪れすぎだからだ】
【特に仲の良い男友達がいるわけでもないのに、】
【長期休暇の度、隙あらば東京に足を運んでいる】
【だから和葉は悟った――東京に《女》がいる、と……】
【そして一昨日、それを決定づける証拠も発見――】
【それは平次の部屋から出てきた――】
【使用感溢れる《ディルドー》と《バイヴ》】
【だから《タイムマシン発表会の見学》は名目に過ぎず、】
【此度の東京旅行は、和葉にとって平次の女を探す旅なのだ】
和葉(平次……せいぜい今のうちに楽しんどきや……)ゴゴゴ
◆12時00分://米花ビル/某階/セレモニールーム◆
博士「オッホン! えぇー、みなさん」モジモジ
博士「今日はこのような場を設けて頂き――」
博士「本当にありがとうございます」モジモジ
博士「私が《タイムマシン》を発明した阿笠博士です」
博士「今日はみなさんに、私の17年に渡る努力の結晶――」
博士「《ブレインジャグラー》を紹介したいと思います」モジモジ
来客『おぉおおおお!! ひゅーひゅー!!!』
記者『カシャカシャカシャカシャ……!』
中森「……全員、聞こえるか! 遂に発表会が始まった!」
【――会場が歓声で沸く中、無線機に語りかける中森警部】
中森「照明班は停電に備え予備電源への切り替え準備!」
中森「監視班は来客の中から怪しい奴を探しだせ!」
中森「今度こそ、あのコソ泥を逃がすんじゃないぞ!!」
関係者A「中森さん。キッドは本当に現れるんでしょうか?」
中森「ふっふっふ……私の推理に間違いはありません!」
中森「昨日送られてきた奴の予告状を思い出して下さい」
関係者A「予告状ってあの――」
『我は時の魔術師――』
『明日、仰天の兄弟を昇天させるべく参上する』
関係者A「――とかいう、例のアレですか?」
中森「ええ。あの文章から解釈するに――」
中森「《仰天の兄弟》とは、長針と短針が天を仰ぐとき」
中森「すなわち、《犯行時刻は12時》ということになり」
中森「さらにそれを《昇天させる》とは――」
中森「《時計から針を剥がす》、という意味だと予想されます」
中森「つまりキッドは《今日の12時に、時を盗みに来る》!」
中森「そう――奴の狙いは《タイムマシン》に他ないのです!」
関係者A「なるほど。それで今日の12時から始まるこの会に――」
関係者A「あのコソ泥――怪盗キッドが現れると踏んだワケですね」
【――そんな事情を裏に、博士は発表会を進めていく】
博士「えぇー、この《ブレインジャグラー(BJ)》は――」
脳に特殊な電気信号を送ることで、
仮想世界を体感できる、魔法のような機械です。
原型は、シンドラーカンパニーの《コクーン》ですが、
私はそれをヘルメットタイプへと小型化することに成功し――
さらに、合計768ルマバイトものデータベースに、
集合知を利用した大量の《過去データ》を蓄積する手法をもって、
仮想世界に過去を実現する見通しを立てました。
データベースに蓄えられる《過去データ》は、
《BJ》を装着した人間の《過去を抽出》することで更新され、
既存の《過去データ》との整合性を保った上で保存されます。
ですから《BJ》の利用人口が増えれば増えるほど――
《過去データ》は、より《真実の過去》へと近づいていくのです。
とはいっても、《完璧な過去の復元》は100%不可能でしょう。
何故なら、「過去を提供するのは嫌だ」という人が必ずいますし、
それに江戸時代や縄文時代に生きていた人間はもういませんからね。
まぁ要するに、『不足した過去を補完する必要がある』ということです。
ですが心配はご無用。《BJ》の過去補完機能をもってすれば――
この世に溢れる様々な情報から理にかなった推測がされるため、
神でもない限り、過去の再現に違和感を覚えることはありません。
つまり、現在では数十人ほどの過去データしか集まってませんが、
今すぐ《BJ》で、タイムトラベルを楽しめるというワケです。
来客『おおおおおおおおおおおおお!!』
博士「では、次に世界線について説明しましょう」
《BJ》で時間旅行を体験するには《ID》を発行する必要があります。
IDを発行するには、《過去の提供》をして頂く必要があるのですが、
一度発行して頂ければ、そのID専用の《世界線》が生成されるため――
博士「時間旅行の際に《過去改変》が起こっても――」
『他の《BJ》端末に影響を与えない』というメリットがあり、
仮想世界では、基本的に何をしてもOKということになります。
ちなみにその《過去改変の差分データ》はサーバに転送されず、
《BJ》に挿入された《特殊なメモリーカード》に保存されるため、
そのカードさえあれば、いつでも時間旅行を再開可能です。
博士「また複数の《BJ》端末を同期させれば――」
博士「『同じ世界線を旅行すること』も出来ますので」
博士「《BJ》での時間旅行は、ハネムーンにも最適と言えるでしょう」
和葉「へぇ♪ ハネムーンに時間旅行ってメッチャ素敵やん♪」キラキラ
服部「アホ。仮想世界ってことは結局は行ってへんのやぞ」
園子「えへへ。らーん、ハネムーンだってよ」ニヤニヤ
蘭「……」
園子(……あれ……? シカトされちゃった……)
博士「では最後に何か、質問はありませんか?」
来客A「あの、私は昔のことを全く覚えてないのですが――」
来客A「そんな私でも過去データの質向上に貢献できるのでしょうか?」
博士「もちろんです。まず人間は一度体験したことを忘れません」
博士「思い出せないだけで、脳にはしっかりと記録されているのです」
博士「ですから《BJ》は、そういった記録を脳から抽出しています」
来客B「では、過去提供者のプライバシーは守られるのでしょうか?」
博士「はい。過去データの提供者には、必ず匿名が保証されます」
来客B「いや、私が聞きたいのは、そういうことではなく――」
来客B「思想や性癖、人格も抽出されるのか?ってことで……」
博士「ああ、すみません。そういうことでしたか……」
博士「もちろんそのようなことは断じてありません」
博士「NPCの性格や思考、趣味等は、蓄積された過去データから――」
博士「《BJ》が独自のアルゴリズムに基づいて推測しています」
◆20分後◆
博士「……それでは質問もなくなったようなので」
博士「30分間の休憩の後――」
博士「皆さんに《BJ》を披露――」
博士「そして体験して頂きたいと思います」
来客『オオオオオオオオオオッ!!』
『ワイワイ……ガヤガヤ……』
博士(ふぅ……やはり発表会ってのは疲れるわい……)
蘭「博士。プレゼン良かったよー」
博士「おお、蘭君……ん? コナン君はどうしたんじゃ?」
園子「ガキンチョなら学校を抜けられなかったみたいよ」
博士「そ、そうか……それは残念じゃのう……」
服部「ホンマあのガキ……絶対シバイたんねん……」イライラ
和葉(平次……やけにあの子のこと気にすんねんな……)
和葉(まさか……平次の好きな人って……)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
服部「おいコナン。今日こそはええやろ?」
コナン「な、何言ってるの? 平次兄ちゃん……」
服部「アホ! 俺はな、お前のために大人の玩具買うて――」
服部「毎日、ケツの穴広げてやっててんぞ!」
服部「はよワレのチンポここに入れんかい!」クパァ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
和葉(……ハハ……阿呆らし……)
和葉(平次がショタコンとか、絶対にありえへんわ……)
博士「……じゃあワシはトイレに行ってくるから――」
博士「蘭君達は、皆より先に《BJ》を見てて良いぞ」
園子「え!? いいの!?」
博士「もちろんじゃよ。何せ君等はワシの招待客――」
博士「それに30分後には、体験者が殺到するからの」
園子「えへへっ。やったね、蘭!」
蘭「うん……ありがと、博士♪」ニヤリ
博士「ハハハ……じゃあワシはトイレに……」タタタタ
◆12時20分://米花ビル/某階/トイレ◆
【米花ビルのトイレは高級感と清潔感で溢れていた――】
『ガチャッ!!』 博士「が、我慢の限界じゃ……!!」タタタタ
【――しかし満身尿意の博士が、その優美を台無しにした】
博士「……ハァハァ!」タタタタタ
【チャックを下ろしながら小便器前まで走る初老】
博士「漏れる漏れる漏れる……!」ジィィィ
【間に合うか? 間に合わないか?】
『しゃあああああああ……』-------->《便器》
【――流石は大人。間一髪で間に合った】
博士「……はふぅ……生き返るわい……」
【用を無事に足し、尿意から解放された博士は、】
【その安堵感に、しばし胸を撫で下ろす――】
『カチャ……』
博士「……ん!?」
【――すると後頭部に、冷たい違和感を覚えた……】
ジン「ようアガサ……元気そうじゃねーか……」
博士「……ジン!? ど、どうしてここに……!?」
阿笠の後頭部に銃を突き付ける長身男。
その唐突な出来事に、《アガサ》は戸惑った――
博士「これは……何の真似じゃ……?」
ジン「……貴様に2、3聞きたいことがあってな……」
博士「……聞きたいこと……?」ゴクリ
ジン「ああ……《工藤新一》ってガキについてだ……」
博士(……なっ……新一のことじゃと……!?)ビクッ
ジン「……その様子だと、知ってるようだが?」カチャ
博士「あ、当たり前じゃ……奴は近所に住んでるからな……」
ジン「……本当にそれだけか?」カチャ
博士「ま、まぁ少しばかりは仲良くやっていたが――」
博士「最近は行方不明らしく、何の音沙汰も聞いとらん……」
ジン「ふっ……当然だ。奴はこの俺が始末したんだからな」
博士「……な、なんじゃと!? 何故そんなことを……!」
ジン「ゆすりの現場を見られた。ただそれだけだ」
博士「くっ……そうか……奴も運が無かったな……」
ジン「ふっ……まぁそんなことはどうでもいい」
ジン「問題なのは、奴が最近、SNSを始めたことだ」
博士「……何? SNS……じゃと……?」
ジン「知らないか? Yagooが昨日――」
『行方不明の工藤新一、実は生きてた!?』
ジン「――って記事をアップしてたことを……」
博士「……何じゃって? ま、まさかそこに――」
ジン「ああ、奴がSNSを始めたと、書いてあったのさ」
博士(くっ……新一の奴め……一体何を考えとるんじゃ……!!)
ジン「そしてこれが、そのプロフィール写真……」
博士「なっ……!!!?」
博士(これは……ワシと新一のツーショット写真……!?)
ジン「……この写真を撮ったことに覚えは?」
博士「あ、ああ……少し前に、撮った記憶があるが――」
博士「そ、それが何だって言うんじゃ?」
ジン「俺は前から貴様に呆れ果てていたんだ」
ジン「タイムマシンを発明する程の頭脳を持ちながらも――」
ジン「週末にはガキどもと戯れちまう、そのヌルさにな……」
博士「……そんなこと……今は関係ないじゃろ……」
ジン「なら率直に聞くが――」
『貴様……工藤新一を匿ってないだろうな?』
博士「……ッ!!!?」ドキッ
ジン「貴様のことだ。隣人である工藤新一に情が移り――」
ジン「命からがら帰宅した奴から事情を聞いた末――」
ジン「思わず助けちまった――なんて話が有り得なくもない」
博士「ば、馬鹿なことを言うなッ!」
博士「ワシがそんなこと、するはずないじゃろ!」
博士「まず、この新一が本者だという確証はあるのか!?」
ジン「それは分からん。今、ウォッカが調査中だ」
博士「じゃあ何故、ワシにこんなことを……!!」
ジン「フッ……俺は猜疑心が強い上に――」
ジン「ウォッカの報告を待つほど、気が長くなくてな……」
博士「くっ……」
ジン「さぁ答えろ。貴様は工藤新一を――」
個室『コン……』
ジン「……ッ!? おい! そこに誰かいるのか!?」
『タタタッ!!』
コナン「死ねえええええええ!! ジンッ!!!」
ジン「何ッ!?」
【突如、個室から現れたのは――まさかの犯罪者!】
【その右手には拳銃――ではなく鉛玉が数個握られていた】
コナン(博士のプレゼンの様子(>>126)から尿意を察し――)
コナン(奴を殺すため、トイレの個室に潜んでたいたが――)
コナン(まさかジン……てめぇまでついてくるとはな!!)
2人とも……この《蹴力増強靴(MAX)》でぶっ殺してやるぜ!
コナン「鉛玉――いっけぇえええええええッッッッ!!!!」
『ズゴォオオオオオオオオンッッッッッ!!!!!』
博士「ぐはぁあああああッッ!!!!!」ピシャアアアッッ
コナン(なっ……外れたッ!? 先にジンを殺すつもりが……!)
ジン「このガキッ……!! アガサによくも――」カチャ
コナン(やべぇ……! 先に撃たれr――)
『バチバチバチッッッッッッ!!!!』『ふっ……』
コナン(な、何だ……急に照明が……!?)
ジン(くっ……《停電》だと……!?)
『……きゃあああああああああああ……!!』
ジン「……!?」 コナン(……悲鳴ッ……!?)
◆12時30分://米花ビル/某階/準備室◆
中森(くっ……真っ暗で何も見えない……)
中森(おのれ……キッドの奴めっっ!!!)
中森「おい照明班!! 早く予備電源に切り替えろ!!」
『は、はい……あと数秒で切替わります……!!』
中森(落ち着け……この階には窓がないんだ……!)
中森(それ故に昼間でも停電策が使えるが――)
中森(同時に逃走経路も限られてくるはず……!!)
中森(それに奴が誰になりすましていたか――)
中森(それはもう分かっているんだ!!)
中森(何せ奴は私の目の前で――)
中森(堂々と《BJ》に触れていたのだから……!!)
『だ……ダメです!! 電気がつきません!!』
中森「な、なにぃいいいいい!!?」
『おそらく……照明の方が死んでいるのかと……!!』
『キッドの奴は――発電所やブレーカー、照明機器でなく――』
『変電所、送電線の方に細工をしていたと考えられます!!』
『変電処理をスルーした高圧電流をそのまま流すことで――』
『館内全ての電気機器を破壊したのでしょう!』
中森(くっ……なんて大掛かりなことを……!!)
中森「……こうなったら全員懐中電灯を持って階段を張れ!!」
中森「この階には窓がない! それ故に逃走経路は階段だけ――」
中森「階段さえ張ってれば、奴を逃がすことはないんだ!!」
和葉(うわ……何か知らんけど、変なことに巻き込まれてしもた……)
和葉「平次、蘭ちゃん、園子ちゃん……どこにおるー?」タタタ
服部「……ちょっ……今はあかんて……キッドの奴が……!」ボソッ
園子「ふふっ……こんな時だから興奮するんでしょ……」ボソッ
和葉(えっ……この声……平次と……園子ちゃん……?)
和葉(……まさか……平次が東京に作った女って……)
服部「……あ……そこ……ぁかん……///」
園子「ほら……服部君だって……気持ちよさそうじゃない……?」ギュ
服部「あ、アホ……近くに和葉がおるかもしれんのやぞ……///」
園子「ふふっ……それはそれで面白いと思うけど……」スリスリ
和葉「……平……次? ……園子……ちゃん?」
服部「か、和葉!? そこにおるんか!? ぁうっ……///」
園子「あちゃー……本当に近くにいたなんてね……」ニヤリ
和葉「ちょっと!! どういうことなん2人ともっ……!!!」
服部「お、落ち着け和葉……!!」
服部「これはやな……その……深い深いワケがあって……」
園子「そうよ――和葉ちゃんがボヤボヤしてるから――」
園子「私が先に、彼の童貞――貰ってあげたの……」
和葉「……ッ!!!?」
園子「だってズルイと思わない?」
園子「私や蘭は想い人に会いたくても会えないのに――」
園子「和葉ちゃんだけは、毎日好きなときに会えるのよ?」
園子「なのに2人とも、腐れ縁だの何だのって強がっちゃって……」
園子「見てる側としては、腹が立ってしょうがなかったわ!」
和葉「……ッ!!」
園子「だから私は服部君を寝取った……それだけのことよ……」
和葉「……そんな……ひどすぎやで……園子ちゃん……」グスン
服部「か、和葉! すまん! 魔が差しただけなんや……!!」
服部「こんな時になんやけど、俺はやっぱりお前の方が――」
和葉「もういい!! 2人で幸せになればええやろ!?」グスン
和葉「2人とも……もう私に関わらんといて!!!」タタタ
服部「和葉!!! 待てやコラッ!! 俺の話を聞け!!」
園子「ふふっ……暗闇で走ったら、危ないのにね……」
中森「……何? キッドが階段に現れない?」
『え、ええ……先程から見張ってるのですが、全く……』
中森(くっ……奴は一体どこから――)ガッ
中森「おわっ……!!」バタッ
『ど、どうしました!?』
中森「ああ、心配ない。何かに躓いただけだ……」
中森「……ったく。何なんだこの白いのは……」
【文句を垂れながら、懐中電灯を真下に向けた中森――】
中森「なっ……ナニィいいいいいいいい!!!?」
キッド「……ぅ……がぁ……」ポタポタポタ
【そこには、血まみれで倒れている怪盗キッドがいた】
~前編・完~
◆12時40分://米花ビル/某階/トイレ◆
【暗闇の中、ウォッカに電話を掛けるジン】
ジン「……ああ。例のコソ泥に巻き込まれたみてぇだ」
ジン「さっき、フロアを回ってみたが――」
ジン「全ての階段に、犬が張り付いてやがる……」
ジン「あの様子じゃ、身体検査は免れねぇだろう」
『じゃ、じゃあ、兄貴はどうやってそこから出るつもりで……?』
ジン「ふっ……心配するな。堂々と出てやるまでだ……」
ジン「まぁ……チャカはここに置いていくハメになるがな……」
『そ、そうですかい……』
ジン「……それより、例のSNSの件はどうなった?」
『あぁ……実はそれが、残念な結果になってしまいまして……』
ジン「……残念な結果だと?」
『ええ。企業から、情報を買うまでは良かったんですが……』
『結局、例のアカウントは《成りすまし》だったんです……』
ジン「……そうか……そいつは残念だ……」
『……兄貴……これからどうしやしょうか……?』
ジン「ちなみに、その成りすまし犯はどこのどいつだ?」
『……米花市○○に住む、円谷って奴だそうですが……』
ジン「近いな……じゃあ今からそこに行くぞ」
『えっ? でもソイツは、ただの一般人ですぜ?』
ジン「だが、工藤新一に成りすましたってことは――」
ジン「奴のことで何か知ってる可能性があるってことだろ?」
ジン「手掛かりのない今、そこまで無駄足にはならねーよ」
『……分かりやした。じゃあ今から米花ビルに向かいます……』
ジン「ああ……1時間以内に来い……」ピッ
◆13時00分://帝丹小学校/教室◆
『キーンコーンカーンコーン』
歩美(……昼休みの時間だ……)ゴクリ
歩美(コナン君……さっきからずっといないけど――)
歩美(もしかして……男子トイレで待ってるのかな……)
小林「……」オロオロオロオロ
歩美「あ、先生……どうしたの?」
小林「よ、吉田さん。江戸川君と円谷君と灰原さん見なかった?」
小林「保健室にもトイレにも……どこにもいないから困ってて……」
歩美「光彦君と哀ちゃんなら、体育の時ちょっと見かけたよ?」
歩美「体育倉庫の近くで、何か話してたみたいだけど……」
小林(……体育倉庫……?)
小林「分かった。じゃあ先生、体育館に行ってみるから」
小林「またその3人を見かけたら、すぐ先生に教えてね」タタタ
歩美「う、うん……(私も男子トイレ……行ってみようかな……)」
◆同刻://帝丹小学校/男子トイレ◆
歩美「コナン君……いる……?」
【廊下から男子トイレに顔を覗かせる歩美】
【返事がなかったので踏み込むことを決意した】
歩美(うぅ……誰かに見つかったらどうしよう……///)
【小便器の前を顔を赤らめながら通り過ぎ、】
【そして3つある個室の前まで足を運んだ】
[空き][空き][故障中]
歩美(この漢字……《こしょうちゅう》でいいのかな?)
歩美(何でもいいけど……この筆跡、明らかにコナン君のだよね……)
【そう――歩美はコナンの《漢字ノート》を見たことがあり、】
【その小1とは思えない達筆さ故、彼の筆跡には覚えがあった】
歩美(……よし……入ってみよ……)
『キィィィ……』
歩美(……あれ……?)
【中には誰もいない。そして何の変哲もない便器】
【疑問に思った歩美は、コナンの意図を考えることにした】
歩美(そっか……故障中の紙を張ってたら――)
歩美(誰かが興味本位で個室を開けるかもしれないもんね……)
歩美(だとすると……コナン君は何かをここに……)
『ビリビリッ……』 『……パサッ』
【少女が《故障中》の張り紙を剥がすと、】
【その裏から、何やら2つ折りの紙が落ちてきた】
歩美(やっぱり……だけど何だろ……)
歩美(この紙……何かのメッセージかな……?)
【恐る恐る、紙を開く歩美――】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
歩美ちゃんへ
君なら見つけてくれると信じてたよ。
早速だけど、今すぐ博士の家に来てくれないかな?
ちょっと助けて欲しいことがあるんだ。 コナンより
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆同刻://阿笠邸/中庭◆
【歩美がコナンのメッセージを見つけた頃、】
【当の本人は、既に阿笠邸の中庭にいた】
コナン「えーっと、確か合鍵はこの植木鉢の裏に……」
コナン「おっ……あったあった……」ニヤリ
【博士を《鉛玉&蹴力増強靴》で殺したコナンは、】
【停電の中、例の階から小さな脱出口を見つけ脱出】
【そして、帝丹小学校のトイレに書き置きを残した後――】
【何らかの目的をもって、阿笠邸にやってきたワケだ】
コナン(クックック……それにしてもツイてたぜ――)
コナン(あのフロアに、ダストシュートがあったなんてな……)
【そう――標準体型の子供が何とか通れるくらいの大きさだが、】
【米花ビルの各フロアにはダストシュートが設置されていたのだ】
コナン(フッ……元太みたいに太ってなくて良かったぜ……)
◆同刻://阿笠邸/リビング◆
【――鍵を開け、阿笠邸に靴を脱いだコナン】
コナン(……にしてもあの阿笠博士が――)
コナン(例の組織の仲間だったとはな……)
【ジンが博士を《アガサ》と呼んでいたのは、】
【《アーント・アガサ》っていう酒が由来で――】
【つまりそれが博士のコードネームだったんだろう】
コナン(くっ……未だに信じらんねぇぜ……)
コナン(昨日まで、あんなに優しかったのに……)
……
………
…………
◇昨晩://阿笠邸/リビング◇
コナン「なぁ博士ー、最近事件がなくて暇なんだ」
コナン「何かこう、おもしれーことねーのかよ?」
博士「暇なら哀君と雑談でもしてたらどうじゃ?」カタカタ
コナン(は、灰原と……夜に雑談……?)ドキドキ
博士「あ、でも哀君は地下で研究中だから忙しいか……」
コナン(……んだよ……期待させやがって……)
博士「むぅ……ワシも明日の資料を作るので忙しいしなぁ……」
コナン「博士……俺が欲しいのはそんな暇つぶしじゃなくて――」
コナン「こう、血がぐわぁって騒ぐような、刺激とかスリルなんだよ」
コナン「それこそ犯罪者を追い詰める時に匹敵するぐらいのな……」
博士「……ふむ……なるほど……だったらいい考えがある……」
博士「犯罪者がいないなら、犯罪者になればいいじゃろ?」
コナン「……えっ……?」
博士「ワシが最近作ったゲームにな――」
『探偵が犯罪者になって、世を恐怖に陥れる』
博士「――というのがあっての」
博士「それを今からプレイしてみたらどうじゃ?」
コナン「……ゲ、ゲーム……?」
博士「うむ。でも君には、刺激になると思うぞ?」ニヤニヤ
コナン(……探偵が犯罪者になる……)
コナン「……ふっ……面白そうじゃねーか……」ボソッ
博士「じゃろ? 偶にはこういうゲームも――」
コナン「博士。悪いけど、今日は帰るわ」
博士「えっ……していかんのか?」
コナン「ああ。もう遅いし、蘭を心配させちゃ悪いしよ」
博士「……??(な、なんじゃいきなり……)」
…………
………
……
◆現在://阿笠邸/リビング◆
コナン(クックック……《犯罪とはゲーム》なんだ……)
コナン(ゲームオーバーにさえ、ならなければな……)
『カチ……カチ……』
コナン「……あれ? 電気がつかねぇ……」
コナン「まさか……博士ん家まで停電してんのかよ?」
くそっ……これじゃ博士のPCを探れねーじゃねぇか……
せっかく組織の尻尾を掴んで、皆殺しにしようと思ったのに……
コナン「あれ……そういえば、米花ビルが停電したとき――」
コナン「結局最後まで、電気が復旧しなかったよな……」
コナン「確かあそこは、自家発電出来ることが売りなのに……」
―――― コナン ――――ピシュンッ!
ま、まさかキッドの奴、一時的に停電させたワケじゃなく、
ビル内全ての照明機器を破壊した上で犯行に臨んだんじゃ……
コナン(もしそうなら、電気が復旧しなかったことにも頷ける)
でも、照明を全て破壊するなんて荒技ができるのだろうか?
まさか1つ1つを爆弾で……なんてことはありえないし……
コナン(いや、待て……そもそも“見た目”は壊れてなかったんだ……)
つまり、照明の故障は――内部素子の損傷によるもの。
おそらく、内部に膨大な電流が流れたことが原因だろう。
コナン(てことは……キッドが利用したのは《高圧電流》……)
つまり奴は、比較的大規模な変電所に細工を施し――
高層ビルや工場向けの電気を変圧せずに送電することで、
米花ビルで使用中だった全ての電気機器をダウンさせたんだ。
コナン(ハハ……もしこれが事実なら、電力会社は大変だぜ……)
学校や民家等の小規模な電気事情に対しては問題ないが、
米花ビルのような高層ビルや、中規模な工場等に対しては――
変電所の復旧作業のせいで、電気の一時供給停止は免れないからな。
コナン(……ってあれ? だとしたらおかしくないか?)
コナン(もしそうなら、何でこの家まで停電してんだよ?)
コナン(……この家だって、普通の民家なんだぞ……?)
まぁ確かにココは、博士や灰原の研究施設も兼ねてるけど、
2人がやってることに《膨大な電力が必要》だとは到底思えないし……
コナン(でも事実として、《停電してる》ってことは――)
この家が、《工場並の要電力施設》に分類されてるってことだよな……
コナン(……まさか博士の奴……この家の地下かどこかに――)
コナン(《莫大な電力が必要な何か》を作ってやがるのか……?)
コナン「ククッ……ふはは……アッハハハハハハハッ!!」
コナン「博士の奴、随分と面白れーもんを残してくれたじゃねーか!」
コナン「間違いねぇ! 組織の手掛かりもそこにあるはずだ!!」
コナン「この家の地下に隠された何か――」
コナン「クックック……考えるだけでゾクゾクが止まらねーぜ……」
コナン「奴らの尻尾を掴んで、全員ぶっ殺してやるッッ!!!」ククク
【――1度罪を犯した人間は、もう元には戻れない】
【それが最大の禁忌である『殺人』ならば、尚更に……】
◆1時05分://体育館/体育倉庫◆
クックック……興奮が収まりませんよぉ……
なんたって灰原さん――あなたは僕を怒らせました……
光彦(この縄から解放されたら、レイプの刑ですからね……)
あとそれから、江戸川コナンを八つ裂きにして殺します。
だって彼は、僕からあなたを奪った極悪人なんですよ?
誰がどう見ても、死刑に決まってるじゃないですか。
光彦(ふふっ……ああ……誰か助けに来ないですかねぇ……)
『キュラキュラキュラ……』
光彦(……ん……?)
小林「つ、円谷君!? どうしてこんな――」
小林「――って、なんて格好してるのよ!!!!」
光彦(おやおや……小林先生が僕のヒーローとは……)ニヤリ
【下半身を露出させながらも、鉄柱に縛られた少年は笑った】
【明らかに動揺しながら、光彦の封印を解いた小林】
光彦「先生、ありがとうございます」
小林「ねぇ……どうしてこんな――」
光彦「あの、そこをどいてくれませんか?」
小林「これ誰にされたの!?」
小林「もしかして、虐められてるの!?」
光彦「そんなことありません。どいてください」
小林「先生、誰にも言わないから。ね?」
光彦「少しは生徒の言葉に耳を傾けて下さいよ」
小林「でも、こんなのどう見たって……」
光彦「僕は虐められてない、そう答えたはずです」
光彦「先生なのに、日本語分からないんですか?」
小林「ちょ、ちょっと……そんな言い方――」
光彦「教師なら、“どけ”くらい理解して従えよ」
小林「……ッッ!?」
小林「……つぶらや……くん……?」
光彦「ところで先生、最近やけに機嫌がいいですよね」
光彦「もしかして白鳥警部とセックスでもしました?」
小林「……えっ……」
光彦「『えっ』じゃねーよ。純情ぶってんじゃねーよ」
光彦「てめぇの穢れた穴に、ドス黒い肉棒を挿れたのか聞いてんだよ」
光彦「あと乳房は揉まれたのかよ。乳首はどうされたよ。感じたのかよ」
光彦「クンニはどうなんだよ。まさか手マンだけかよ。噴いたのかよ」
光彦「後ろの穴は使ったのかよ。奴にはどんな奉仕をしたんだよ」
光彦「手かよ。足かよ。脇かよ。奥までしゃぶったのかよ。乳淫かよ」
光彦「何回射精させたよ。顔射かよ。挟射かよ。飲んだのかよ」
光彦「中に出したのかよ。てめぇは逝ったのかよ。満足できたのかよ」
小林「ちょ、ちょっと円谷君。いい加減に――」
光彦「だったらドケやゴルァアアアアアアアアア!!!!!」
【光彦の意味不明な恫喝に、小林は思考を停止した】
【まぁ無理もない。普段敬語を使う礼儀正しい少年が――】
【全てにおいて、真逆の態度を取ったのだから……】
光彦「ふふっ……やっとどいてくれましたね……」ニヤリ
【そう言って、3時間ぶりに体育倉庫を出る光彦】
『キュラキュラキュラ……』
光彦「じゃあ先生……僕は自宅に帰るんで……」ニヤリ
小林「……あ……ちょっと待っ……」
光彦「ふふっ。さようなら」ニヤリ
『……ガシャン!』
小林「……」
小林(……何で……? どうして……?)
【もはや教師には、生徒を追いかける気力はなく――】
【現実を飲み込もうとするのに、精一杯であった……】
◆その頃://円谷家/光彦の部屋◆
【学校から出た後、一度阿笠邸に帰宅した灰原は、】
【《データ救出用OS》をUSBメモリにダウンロードし、】
【そして1時間前に、円谷家を訪れていた――】
灰原「ほら……これが証拠よ……」
[Web履歴]XVIDEOS、Xhamster、YourFileHost……
朝美「……あちゃー……本当だね……」
【両親不在のため、代わりに光彦の姉――朝美に対し、】
【弟・光彦のネットブラウジング履歴を見せつける灰原】
【何故彼女が、光彦のPCの履歴が見れるのかというと――】
【それは《データ救出用OS》の悪用によるものだった】
●用語解説《データ救出用OS》●
USBメモリやCD等から本OSを起動することで、
対象PCに保存されたデータを見ることが可能。
パスワード不要で、データにアクセス出来るため、
灰原のように、悪用しようと思えば出来るわけだ。
灰原「――これで分かった?」
灰原「弟さんを真っ当な人間に育てたければ――」
灰原「今すぐネットをやめさせないとダメだって……」
朝美「……うん……みっちゃんのためだもんね……」
朝美「今夜、お父さんとお母さんに言っとくよ」
灰原「ええ……お願いするわ」
朝美「……じゃあさ、ちょっと休憩する?」
灰原「きゅ、休憩?」
朝美「うん。だって哀ちゃん、疲れたでしょ?」
朝美「今、紅茶とお菓子持ってきてあげるからね」ニコッ
灰原「えっ……あ……ありがと……」
朝美「よしっ……じゃあちょっと待っててねー♪」
【――嬉しそうに部屋から出ていった朝美】
灰原(そういえば今日って……金曜日よね……)
灰原(何であの子……学校に行ってないのかしら……?)
【今日が平日である以上、灰原の疑問はごもっともだ】
灰原(……まぁそんなこと、私には関係ないけど……)
【灰原は深く考えず、引き続き光彦のPCに向かう――】
『カチカチッ……』
【――というのも先程、気になる項目を見つけたからだ】
灰原(……やっぱりこのフォルダって――)
《博士のデータ》
灰原(――彼が博士のPCから盗んだデータのことよね……)
灰原(……ついでに確かめるべきね……)
『カチカチッ……』
【《博士のデータ》にアクセスする灰原――】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
[博士のデータ]
├[写真]
│ ├[FJT072B]
│ ├[幼少期の新一]
│ └[ょぅし゛ょ]
├[音楽]
│ └[よつのは OST]
├[動画]
│ └[新しいフォルダ(2)]
├[書籍]
│ ├[闇の男爵]
│ └[罪と罰]
└[文書]
├[発明品]
└[日記]
├ 表日記.txt
└ 裏日記.txt ←
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
灰原(ん……この《裏日記》って、何かしら……?)
【何やら、ヤバいものを見つけてしまった……】
◆その頃://円谷家/台所◆
【紅茶を煎れるため、お湯を沸かす朝美】
朝美「ふふっ……やっぱり哀ちゃんって可愛い……!」
何かこう――大人びてて凄くクールなのに、
強がった感じの、寂しいオーラが出てて――
朝美(胸とか触った時の反応とか、見てみたいなぁ♪)
朝美(くぅ~! 想像するだけできゅんきゅんしちゃう♪)
【そう――朝美は重度のレズビアンだったのだ】
【それ故に多くの女子には距離を置かれ――】
【男子には誂われる学校生活を送っている……】
朝美(あぁ~、キスして、ギュゥッてしたい……///)
朝美(……後で後ろからハグしちゃおっと……♪)ニヒヒ
>>218
その新しいフォルダ(2)とやらをこちらに転送してはくれないだろうか
◆1時15分://毛利探偵事務所◆
小五郎「……ふぁーあ……暇だぜったく……」
【登場人物が非日常に翻弄される中――】
【眠りの小五郎だけは、いつも通りだった】
TV『か~ごめか~ごめ カゴの中のと~り~は』
TV『いついつ出会う~ 出会うなr』
小五郎「ちっ……ウゼェな……ぶっ殺すぞ……!!」
TV『――えぇー、ここで緊急ニュースです』
小五郎「……ああ? 緊急ニュースだぁ?」
TV『本日開催された、タイムマシンの発表会にて――』
TV『タイムマシンが盗まれるという事件が発生しました』
小五郎「……な……何だと……?」
コナンが暇なら小五郎はもっと暇だろうな
TV『その際に、2人の男性が被害に遭い――』
TV『少年Aは計3発の銃弾を身体に受けており重体』
TV『タイムマシン開発者である阿笠氏は――』
TV『心臓に銃弾を受けたため、即死だったそうです』
『少年A (17) 重体』
『阿笠博士(52) 死亡』
小五郎「……へ……?」ポカーン
TV『また、場所について、少年Aはタイムマシンの保管室――』
TV『阿笠氏は同階のトイレにて被害に遭遇したため――』
TV『警察は現在、これらを別の事件として捜査を進めています』
TV『さらに、少年Aがキッドの格好をしていたことから』
TV『警察は――』
『怪盗キッドの正体は少年Aである』
『タイムマシンを盗んだ犯人は別にいる』
TV『――との見解を示しており』
TV『“その人物が少年Aを拳銃で撃った”として』
TV『引き続き、捜査を続ける模様です』
小五郎「」ポカーン
TV『続いて、電力供給の一時停止についての情報です』
TV『此度の事件に関連して攻撃されたと思われる《変電所》ですが』
TV『現在、部分的な機能不全に陥っており――』
TV『○○電力は、一部の高層ビルや工場に対し――』
TV『変電所復旧のため、一時的に送電を停止する旨を発表しました』
TV『今のところ、復旧の目処等は立っていないとのことです』
TV『尚、一般家庭等には影響ありませんのでご安心ください』
小五郎「……何だよ……これ……」
阿笠博士が……死んだ……?
小五郎「ハハッ……嘘だろぉ……」
『※ 現在、停電中及び警察の捜査のため』
『《米花ビル》は立入禁止となっています』
小五郎「……ん……《米花ビル》……?」
小五郎「あれ……そういえば蘭の奴……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
明日は午前中に学校が終わるから、
その後、阿笠博士の発表会に行くの。
えっ……場所? 《米花ビル》だよ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小五郎(おい……蘭は無事なんだろうな……?)
『PRRRRRR♪ PRRRRRRR♪』
小五郎「くっ……こんな時に電話かよ……!」
小五郎「はい毛利探偵事務所! すみませんが今は――」
『毛利君! 今すぐ《米花ビル》に来れるかね!?』
小五郎「め……目暮警部!? どうしたんすか!?」
『どうしたもこうしたもない!!』
『《米花ビル》で何が起きたかは知ってるだろ?』
小五郎「え、ええ……大体は……」
『蘭君がどこかに監禁されている恐れがある』
小五郎「……へ?」
『キッドの仕業だ。奴は阿笠氏に近づくために――』
『前もって、蘭君に成りすましていたんだよ!!』
小五郎「なっ……なんですって!!!?」
『園子君の証言によると――』
『《米花ビル》に向かう時から蘭君に違和感を感じていたそうだ』
『だからキッドと蘭君は、それより前に入れ替わったと考えられる』
小五郎(……そんな……蘭……!!)
『一度一人で、高校のトイレに寄ったそうだから――』
『てっきりその時に入れ替わったと思ったんだがな……』
『生憎、トイレには誰も監禁されていなかったよ……!』
小五郎「……くっ……キッドの野郎……!!」
『とにかく電話じゃ埒が明かん。今すぐ来てくれ。分かったな!?』
小五郎「はい! 5分で行きます! では……!!」ガチャン
小五郎(くそっ……無事でいてくれ……蘭……!!)タタタタ
◆13時20分://阿笠邸前◆
歩美(コナン君……学校抜けてきたよ)
【学校を早退するという悪行――】
【それは歩美の胸を苦しめた……】
歩美(本当に私が……必要なんだよね……?)
【コナンが自分を求めてくれている――】
【もはやそれだけが、歩美の精神的支えなワケで……】
歩美(……よしっ……チャイムを鳴らそう……)
【インターホンに指を伸ばす少女――】
【だがその時、後ろから誰かに声を掛けられた】
蘭「……あれ……歩美ちゃんじゃない……」
歩美「ら……蘭お姉さん……!?」
【蘭の手には、ロープが握られていた……】
歩美「ど、どうしたの……そのロープ……」
蘭「えっ……ああこれ?」
蘭「何かお姉ちゃんね、怪盗キッドに――」
蘭「トイレで眠らされちゃったみたいでさ」
蘭「目が覚めたらコレで縛られてたから――」
蘭「頭にきて、引きちぎって来たの」
蘭「だって私、新一を探してるのよ?」
蘭「そんな私を縛るなんて、許せないでしょ?」
蘭「しかも携帯まで奪うとか、考えられないわ」
蘭「まぁこの縄は新一を縛るのに使えるからいいけど」
歩美「……おねえ……さん……?」
蘭「というワケだから歩美ちゃん。携帯貸して?」
歩美「……え……わ、私……まだ持ってないよ……」
蘭「は?」 歩美(……うぅ……!)ブルブル
【一度発動したヤンデレは止まらない……】
歩美(わ、話題を逸らさなきゃ……)
歩美「ね、ねぇ……何で博士ん家に来たの?」
蘭「は? 私、隣の新一の家に用があるんだけど?」
歩美「ご、ごめんなさい……(こ、怖いよぉ……)」ブルブル
蘭「歩美ちゃんこそ、何でこんな所にいるの? 学校は?」
歩美「あ、その……実はコナン君に呼ばれて……」
蘭「コナン君? 何でコナン君が博士ん家にいるのよ?」
歩美「それは……分からないけど……」
蘭「意味分かんない。てか、子供の恋愛は気楽でいいわね」
蘭「好きな人に毎日に会えるとか、死ねばいいのに」
歩美(も、もう嫌ぁ……誰か助けて……)グスン
光彦「……あれ? 歩美ちゃんと、蘭さんじゃないですか?」
蘭「あら、光彦君。こんにちは」
歩美(……み、光彦君だっ!!)キラキラ
歩美(これで蘭さんと話さなくて済む……!)
歩美「み、光彦君。先生が探してたよ」
光彦「……先生が? それはおかしいですね」
光彦「ちゃんと早退するって伝えたはずですが……」
歩美「えっ……そ、そうなんだ。ならいいんだけど――」
歩美「――って早退? 光彦君。具合でも悪いの?」
光彦「ええ、少し頭痛が……だから今は帰宅中なんです」
歩美「そうなんだ……お大事にね……」ショボン
光彦「は、はい……ありがとうございます……///」
光彦(ふふっ……やっぱり歩美ちゃんも可愛いですね)
蘭「ところで光彦君。新一見なかった?」
光彦「……え? 新一さんですか……?」
蘭「そうよ。私の恋人の工藤新一のこと」
光彦(……私の恋人……ねぇ……)
光彦(……そういえば灰原さんって――)
あれだけチャンスをあげたのに、
僕に《フェラ》しなかったですよね?
光彦(……ということはつまり――)
『江戸川コナン=工藤新一』だってことを、
蘭さんにバラしてもいいってことですよね?
光彦(……ふふっ……灰原さん――)
――僕を舐めすぎましたね。
光彦「……ああ……新一さんなら見ましたよ」
蘭「えっ……どこで? 嘘じゃないでしょうね?」
光彦「もちろん、嘘なんかじゃありません」フフフ
蘭「ちょっと!! 勿体ぶってないで教えなさいよ!!」
光彦「――コナン君です――」
蘭「えっ……?」
光彦「江戸川コナンこそが、工藤新一なんですよ」
蘭「ちょっと……何を言って……」
光彦「あれ? もしかしてないんですか?」
光彦「コナン君の中に、新一さんを見たことは……」
蘭「……!!」
歩美(光彦君……何言ってるの……?)
蘭「ある……そんなのたくさんあるわよ……!」
蘭「でも証拠はあるの?」
蘭「高校生が、小学生になった証拠――」
蘭「そんな証拠が、あなたに示せるの!?」
光彦「ハハッ……そればっかりは無理ですよ――」
光彦「――その経緯なら、お答えできますけどね」
蘭「ふふっ……じゃあ聞いてあげようじゃないの……」
蘭「新一がコナン君になった……その経緯をね……!」
光彦「ええ。まずは《誰が》新一さんを小さくしたか――」
光彦「それは何を隠そう――あの“灰原”さんなんです!」
蘭「……灰原さん? それって哀ちゃんのこと……?」ピクッ
光彦「ええ。僕らといつも一緒にいる、灰原さんです」
蘭「アハハ……何で哀ちゃんが……新一と関係あるのよ?」
蘭「もしあったとして……何で新一を小さくしたのよ!?」
光彦「ふふっ……それはですね――」
【光彦は、>>107の推理を、そのまま蘭に聞かせた】
光彦「――というワケなんです」
蘭「……ハハ……何よそれ……」
【――《恋敵》。その言葉は、蘭をより盲目にさせた……】
蘭「フザケンじゃないわよ!!! あの女!!!」
歩美「……ッ!」ビクッ 光彦「」ニヤリ
光彦(ふふっ……いいですよ……もっと熱くなって下さい……)
それで灰原さんから、コナン君を奪っちゃってくださいよ。
――そしたら僕は、灰原さんを貰っていきますから……
蘭「新一を私から奪う? アハハッ!! ばっかじゃないの!?」
蘭「そんなこと、この私がさせるワケないじゃない!!」
【元々コナンに対して、多くの疑問を抱いていた蘭】
【そんな彼女にとって、もはや証拠なんてどうでも良かった】
【新一に放置され、精神的に狂ってしまった怪女は――】
【能動的に行動できる――具体的なWhatToDoが欲しかったのだ】
【もしコナンが新一なら――これ以上待つ必要なんてない……】
【彼の居場所、そして何をすべきか……全て知ってるのだから……】
蘭「ふふ……ふふふふっ……ねぇ歩美ちゃん……」
歩美「えっ……な、なに? 蘭お姉さん……」ビクッ
蘭「さっき博士ん家に、コナン君がいるって言ったわよね?」
歩美「……うん……言った……けど……」
蘭「じゃあ今から、コナン君の童貞、奪ってくるね……」
歩美「……どう……てい……? それって何……?」
蘭「要するに、コナン君のことは諦めろって言ってるのよ」
歩美「えっ……そ、そんなの……歩美……嫌だよ……」グスン
蘭「ハハッ、馬鹿ね。アンタが嫌だろうが私には関係ないわ」
光彦(クックック……いいですね、いいですよ……)
光彦(歩美ちゃんからコナン君が消えるのも、僕としては良好です)
蘭「ふふっ。博士ん家に居れば、いずれあの女も帰ってくるし――」
蘭「新一の童貞を奪える上に灰原を殺せるなんて、一石二鳥だわ」
歩美「……え……?(灰原さんを……何て……?)」
光彦(おっと……流石にそれはいただけませんね……)
まぁ、灰原さんは僕の家に一生居てもらいますから――
――どうでもいいっちゃ、どうでもいいですけどね……。
光彦「ふふっ……じゃあ蘭さん。頑張ってくださいよ」
光彦「僕はあなたの恋愛を、一番応援してますから♪」ニヤリ
蘭「あら。ありがとう……光彦君……♪」ニヤリ
◇数分前://阿笠邸/リビング◇
コナン(――にしても遅ぇーな。歩美の奴)
ちっ……博士のシークレットベース(>>199)を探す前に、
歩美にフェラで抜いてもらおうと思ったのによ……。
コナン(……しゃーねぇ。先に探すとするか……)
まずはやっぱり地下からだよな……。
何せ『大規模な電力を要する設備』なんだ。
あるとしたら、スペース的に地下しかねぇ。
コナン(よしっ……階段を降りよう……)
◇同刻://阿笠邸/地下◇
『カチッ……カチッ……』
コナン(まだ電気は復旧してねぇか……)
コナン(じゃあこの《腕時計型ライト》で――)
=O=< ピカッ
コナン(さぁ……捜索開始だぜ……!!)
【地下にある部屋を次々と回るコナン】
【探し始めて、数分は経ったようだった】
『……ガチャン』
コナン(はぁ……この部屋も、何もなかった……)
コナン(もしかして、俺の推理が間違ってるのか……?)
[哀くんの部屋]
コナン(いよいよ最後の砦――灰原の部屋だ)
コナン(女の子の部屋に入るのは気が引けるが――)
コナン(だからといって、調べないわけにはいかない……)
コナン「へへっ……すまねぇな、灰原……」
『ガチャ……』
◆同刻://阿笠邸/地下/灰原の部屋◆
【ドアを開けると、他の部屋とは明らかに異なる空間だった】
【いかにも整理された、女の子の清潔な部屋って感じである】
コナン(……流石灰原の部屋……いい香りだぜ……)クンクン
【照明を点けて、もっと楽しみたいところだが、】
【停電の最中ともなれば、それは諦めるしかないだろう】
コナン(さて……真面目に捜査すっかな……)
【本棚の裏や壁など、隠し部屋に通じてそうな場所を探すコナン】
【しかしこれまでの部屋と同様、ハズレにしか出会えない……】
コナン(はぁ……やっぱり巨大設備とかはねーのか……)
コナン(ちっ……期待させやがって……ん?)
【諦めかけたその時、コナンは他の部屋にはないものを見つけた】
コナン(この部屋だけ……《カーペット》が敷いてある……)
【そんなもの、人が生活する部屋だから、と言えばそれまでだが】
【元・探偵がそれを捲るくらいの労力を惜しむようではいけない】
『クルクルクルクル……』 コナン「……ん……!?」
コナン「……こ、これは……!?」
【遂に見つけた――《地下二階への入り口》らしきもの】
【そして蓋を開けると――下へ続く梯子が姿を現した】
コナン「やっぱり俺は……間違ってなかったんだ――」
コナン「この下に、《組織の秘密兵器》が……!」ゴクリ
【深淵を目の前に唾を飲んだコナン。そして疑問を抱く――】
コナン「あれ……にしても何で、灰原の部屋なんかに入り口が……?」
【脳裏を過る――灰原哀が、未だ組織の一員である可能性……】
【だが冷静に考えてみれば、あっても不思議ではない話なのだ】
【なんたって灰原は、組織の仲間である博士と同居してるのだから……】
コナン「……まさか灰原の奴が……そんな……」
『ふふっ、しんいちー。この家にいることは分かってるのよー?』
コナン(……なっ!? 蘭の声……だと……!?)
◆13時25分://米花ビル付近/ポルシェ356A◆
【車内でジンを待ちながら、ボスに連絡するウォッカ】
ウォッカ「はい……結局のところ、成りすましだったワケで……」
『なんと……それは残念だ……』
ウォッカ「ええ。しかしまだ希望があるかもしれないんで――」
ウォッカ「一応、今からその成りすましの根城へ向かう予定です」
『そうか……なら結果を期待しているぞ……』
ウォッカ「……はい。ではまた後ほど、報告に上がります」ピッ
ウォッカ(……ふぅ……次は何か成果を持って帰らねーと……)
『ガチャ……』 ジン「……待たせたなウォッカ……」
ウォッカ「と、とんでもないです。自分も今来たところで……!」
【《米花ビル》から出てきたジンは、車の助手席に座った】
ウォッカ「……兄貴。よく無事で出られましたね……」
ジン「ああ。それより新しいチャカは持ってきたんだろうな?」
ウォッカ「はい。兄貴が使ってたのと同じ型のです」スッ
ジン「……よし、じゃあその円谷って奴のところへ連れて行け」
ウォッカ「ふふっ……分かりやした」ピッ
NAVI『ピピッ、カーナビゲーションシステムを起動します――』
NAVI『目的地をキー入力、または音声入力してください』
ウォッカ「えーっ、東京都米花市米花町△△ー□□ー○○」
NAVI『ピピッ、目的地を確認しました。ルート検索を開始します』
ジン「ふっ……便利な世の中になったもんだ……」
NAVI『ピピッ、ジン様のお役に立てて光栄です』
ジン「……ッ!?///」
ウォッカ(えっ……兄貴が……NAVIに名前を……?)チラッ
ジン「な、何見てんだ……さっさと行け……!///」クッ
ウォッカ「ふふっ……分かりやした」ニヤニヤ
◇時は少し戻り://円谷家/光彦の部屋◇
灰原(……まさか……この《裏日記》(>>218)って……)
【――明らかに怪しいそのファイル名……】
【『博士が組織の仲間である事実』を知っている灰原は――】
【その文書に何が書いてあるか、簡単に予想できた……】
灰原(もし、このテキストファイルに――)
『博士が組織の仲間であること』が書かれていたら――
灰原(それが円谷君に、知られてるかもしれないわ……!)
いや……私ったら何言ってるのよ……
灰原(そもそも組織の存在自体、バレたら駄目じゃない……!)
そして私達が、何をしようとしてるのかも……絶対に……
灰原(とにかく、この《裏日記》は見る必要があるわね……)
灰原(プライバシーがどうとか、言ってる場合じゃないわ)
『カチカチッ……』
【灰原哀は、味方の甘さに幻滅しながらも――】
【文書ファイルを開き、現実を受け止めようとした】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■4月9日(月)■
新一が幼児化した身体で、ワシを訪ねてきた。
恐らく厚司君が開発していた薬のせいだろう。
まさかここまで、開発が進んでいるとは……。
シェリー、君は父をも超える天才に違いない。
■4月30日(月)■
今日、シェリーが監禁室から脱走した。
恐らくダストシュートから脱出したのだろう。
つまり彼女は、自分自身に《APTX4869》を投薬したのだ。
このことに気づいているのは、ワシぐらいじゃろうか。
■4月30日(月)追記■
小さくなったシェリーがワシの家の前で倒れていた。
「ロリコンなら子供を守れ」、ワシは己の信条に従った。
彼女に《灰原哀》と名前を付け、奴らから守ることを決意。
ちなみにワシらの計画を話したところ、彼女は快く乗ってくれた。
■5月07日(月)■
APTX4869の開発が停滞している今、
組織はワシの研究により力を入れてくれるようになった。
お陰で《ブレインジャグラー》の完成はすぐそこ。
この件に関しては、組織に感謝してやってもいい。
■5月14日(月)■
駄目だ。どうしても1つだけ、バグを取り除くことができない。
『同じ時間軸に同一人物がいると強制終了』してしまうバグが……。
やはり板倉の担当モジュールを他の奴に任せたのが駄目だったか?
くそっ。あの天才プログラマーさえいれば、こんなことには……。
■5月17日(木)■
タイムマシン発表会は明日。もうバグ取りは間に合わない。
板倉の奴め。タイムマシンの完成に怖気づきやがって……。
何が『人類の為に断念した』だ。人類の害になるワケないじゃろ!
……まぁ仕方ない。明日の時間旅行体験は19世紀以前に限定しよう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
灰原(なによ……これ……)
思いっきりアウトじゃない……!
何考えてるの!? あのハゲオヤジ……!
『ガシッ!』 灰原「きゃっ!?」
朝美「えへへー。哀ちゃん捕まえたー♪」
灰原「……えっ!?」バフッ
【背後から突如現れたのは、光彦の姉――】
【彼女は灰原を光彦のベッドへと押し倒した】
灰原(ダメ……! パソコンに《裏日記》を開いたまま……)
朝美「ふふっ、可愛い! もう逃さないわよぉ♪」ニヤニヤ
灰原「ちょっと……急に……何……!」
『むにゅむにゅ……』
灰原「ひゃっ……な、な、何するのよ!?///」
朝美「んはぁ~! 可愛いぃぃいいい!!」ムニュムニュ
灰原「いやっ……お願い離して……!!!」
『ただいまー』 朝美・灰原「……えっ?」
【――そして、事態は更にカオス化する……】
『ガチャ……』
光彦「……え……?」
光彦「僕の部屋で、何やってるんですか?」
朝美「み、みっちゃん!?」
灰原(円谷君……どうして……!?)
朝美「あれ……学校終わるの早くない!?」
光彦「そんなことはどうでもいいじゃないですか」
光彦「それよりも、そちらの状況を説明して欲しいです」
朝美「こ、これはその……」
光彦「いくら姉さんといえども――」
光彦「僕の灰原さんに手を出したら許しませんよ?」
朝美「えっ……もしかして2人は付き合ってるの?」
光彦「付き合ってる? ふふっ、当然じゃないですか」
灰原「……!?」
灰原「私、あなたとそんな関係になった覚えはないわ……」
朝美「……えっ……?」
光彦「おやおや……酷い言われようですねぇ……」
光彦「僕らは一生の愛を誓った仲だというのに……」
灰原「ちょっと……適当なこと言わないでくれる?」
光彦「ふふっ。じゃあ何で灰原さんは僕の部屋にいるんですか?」
光彦「それはつまり、僕とエッチしにきたってことでしょ?」
光彦「ネットを解約させるとか、そんな名目で来といて――」
光彦「本当は僕のジョニーで、ジュブっと犯して欲しいんでしょ?」
灰原「……あなた……何も進歩してないのね……」
灰原「体育倉庫で、少しは反省したかと思ったけど……」
光彦「アッハッハ。僕のどこに、反省する要素があるんですか?」
光彦「むしろ僕にフェラをしなかった、あなたが反省するべきですよ」
灰原「……くっ……相変わらずのクズっぷりね……」
朝美(……えっ……何? なんなの? この状況……)
光彦「じゃあ反省はしないんですね?」
灰原「決まってるでしょ。するわけないじゃない」
光彦「なら致し方ありません。あなたにレイプを執行します」
灰原「……えっ?」
光彦「姉さん。あなたはどちらに付きますか?」
①僕と一緒に、灰原さんを犯すか
②灰原さんと一緒に、僕を倒すか
光彦「――2つに1つ。さぁ、いずれかを選んで下さい」
朝美「えっ……そんな、急に言われても……」
光彦「早く答えないと、姉さんの秘密をバラしますよ?」
朝美「ッ!? わ、分かった。答えるからそれだけは……!」
光彦「じゃあ5秒以内に。5、4、3、2、1――」
朝美「ど、どちらかと言えば……哀ちゃんを犯してみたいけど……」
灰原「……は?」 光彦(……ふふっ……)ニヤリ
光彦「決まりですね。じゃあ姉さん、灰原さんを抑えて下さい!!」
朝美「りょ、りょうかい!!」ガシッ 灰原「きゃっ!?」バサッ
◆13時30分://円谷家門前/ポルシェ356A◆
『キィィィッ……!』
【円谷家の門前で動きを止める黒い影――】
NAVI『目的地周辺です。運転お疲れ様でした』
ウォッカ「兄貴……どうやらここみたいですぜ」
ジン「……よしっ……隙を見て乗り込むぞ……」
『ガチャッ』『タタタタ……』『ガチャ』
ウォッカ「ん……!? 鍵が開いてます……!」
ジン「何だと……? ソイツは間抜けだな……」
ウォッカ「どうしましょう? このまま突入しやすかい?」
ジン「……ああ。構うことはない」
ジン「成りすまし犯に、地獄を思い知らせてやれ」
◆その頃://円谷家/光彦の部屋◆
光彦「へへっ……美味しいですよ、灰原さん……」ペロペロ
灰原「ひゃ……いやああああ……!」ブンブン
【光彦は、灰原のほっぺたをペロペロ舐め――】
【それに対し、唇だけは奪われまいと必死に抵抗する灰原】
【朝美は、そんな灰原を興奮全開で抑えつけていた――】
朝美「もう……みっちゃんばっかりずるい……」ハァハァ
光彦「ふふっ、心配しなくても後でやらせてあげますから」スッ
灰原「んぁっ……!?」
【お次は胸。そのぷっくりと控えめに膨らんだ乳房を――】
【コナンがやったように、我が物顔で揉みしだく光彦】
光彦「おほぉおおおおお!! なんて柔らかいんでしょう!!」
光彦「まるでマシュマロ!! いや、それ以上の何かです!!」
光彦「これは是非とも、生で揉ませていただきたい!!」
灰原「や、やめてっっ!! お願いだから……もう!!」
光彦「問答無用!! この興奮はもう止まりましぇん!!!」
光彦「姉さん! 灰原さんの服を脱がせますよ!!」
『スッ……!』
灰原「いや……いやあああああああ!!///」
【姉弟に、ブラとパンティー姿にされた灰原】
【羞恥心と恐怖が折り重なって悲鳴になる】
朝美「ふふっ。大人びた下着つけちゃって――」
朝美「背伸びする哀ちゃん可愛すぎるよぉ!///」スリスリ
光彦「あぱぱ……あぱぱぱぱあああああああああああ!!!」
光彦「止まりません……止まりませんよぉおおお!!!///」フガフガ
灰原「……もう……いやぁ……」グスン
光彦「何言ってるんですか! そんなえっちな下着つけて――」
光彦「僕とのエッチを想定してたとしか思えませんよぉお!!?」
朝美「えへへ……というかこのブラそこまで必要ないよね?」ハァハァ
朝美「ねぇみっちゃん……このブラとっていいかなぁ……?」ハァハァ
光彦「クックック。当たり前じゃないですか! 姉さん!!」フガフガ
光彦「灰原さんを丸裸にして、全身舐め尽くしま――」フガフガ
ジン「動くな」カチャ 朝美・光彦「!?」 灰原「……ッ!?」
いやああああああああああああ
ウォッカ「チッ……ガキばかりか……くそっ!」
ジン「落ち着けウォッカ。成りすまし犯が大人とは限らない」
光彦(……な、何なんですかこの怖そうな大人達は……)
朝美(……えっ……あれ、本物の銃? 嘘でしょ……?)
灰原(……な、何でジンとウォッカが……)ブルブル
ジン「……ん?」
灰原「ッ!!」ビクッ...ブルブル
ジン「おい……真ん中のガキ……面をこちらに向けろ……」
灰原(……ッッッッ!!!)ブルブル
ウォッカ「早くしろ! 兄貴の言うことが聞こえねーのか!?」ドンッ
灰原「…………」ブルブル
【恐る恐る、ジンに顔を向ける灰原――】
【余りの恐怖に目鼻からは液体が漏れていた……】
ジン「!?」 ウォッカ「!?」
ジン(な、何だこのガキ……シェリーの幼少期に瓜二つだぞ!?)
ジン(ま、まさかシェリーが小さく……)
――ってバカか俺は。人間が小さくなるワケ……
ジン(――ダストシュート――!?)ピシュン
そうだ……あの監禁室にはダストシュートがあった……
もし幼児化が可能なら、あそこから脱出できるんじゃ……
ジン「……おい貴様。名は何という?」
灰原「……ッ!!」グスン
灰原「は……はい……ばら……灰原……哀……」グスン
ジン(灰原……? 偽名か? それとも別人か?)
ウォッカ「あ、兄貴! これを見て下さい!!」
灰原(……あっ……そ、それはッ……!!!!)グスン
【――PCの画面には、博士の《裏日記》が表示されていた】
【しかも内容が内容。2人がスルーしてくれるわけもなく――】
ジン「小さくなったシェリーに、《灰原哀》と名付けた……だと?」
イヤァァァァァ
\(^o^)/
ジン「……おい、何だこれは!?」 光彦「!」ビクッ
光彦「あ、阿笠博士が持ってたデータですっ……!」ブルブル
ジン「何? ……アガサの日記だと?」
ジン「何でそんなものが、この家にあるんだ?」
光彦「それは……僕が博士のPCにハッキングして……」ブルブル
ジン「ほう……コンピュータに詳しいのか?」
光彦「え、ええ……それなりには……」ガクブル
ジン「じゃあ貴様が成りすまし犯か?」
光彦「……」ブルブル
光彦「……は、はい……」ブルブル
ジン「ふっ……正直で気に入ったぜ……」
『カチャ……』
ジン「あの世行きなのが残念だ……」
灰原・朝美「!?」 光彦「!?」
光彦「ちょ、ちょっと待って下さい……!」
光彦「ま、まさか……僕を殺すつもりですか!?」
光彦「それは僕が成りすまし犯だからですか!?」
ジン「ああ? んなこたぁ関係ねぇよ……」
光彦「じゃ、じゃあ何で……!」
ジン「貴様は人の女に手を出した――」
光彦「……ぇ……?」
ジン「ただ、それだけだ――」
『ズキュンッッッッッッッッ!!!!!』
灰原・朝美「……ッ!?」 光彦「がぁっ!?」ピシャアアア
灰原・朝美「……え……」 光彦「……ぁう……!」ポタポタ
光彦「あがっっ……くっ……ぼはぁ……ッ!」ポタポタ
朝美「……みっ……ちゃん……?」
ジン「シェリーは俺の女だ。異論はあるか?」
光彦「……しぇりーなんて……どうでも……」ポタポタ
光彦「……ただ……はいばら……さんは……」ポタポタ
光彦「……ぼくと……えっち……」ポタポタ
『ズキュンッッッッッッッッ!!!!!』
光彦「」ピシャアアアアアアアアアアア
光彦「――」ポタポタ
ジン「死んで詫びろ。ガキ」
朝美「……ぃゃ……いやあああ……いやああああ!!!」
『ズキュンッッッッッッッッ!!!!!』
朝美「っあ……ッ!」ピシャアアアアア
ジン「受け取れブス――その鉛玉は、口止め料だ」
朝美「……ぅ……」ポタポタ
鉛玉…?
もしや…
光彦「――」ポタポタ 朝美「――」ポタポタ
灰原「……ぁ……ぃゃ……」グスン
ウォッカ「あ、兄貴……これで良かったんですかい?」
ジン「構わん。シェリーが手に入った今――」
ジン「成りすまし犯なんて、どうでもいいからな……」
ウォッカ(いや、自分が言いたいのは――)
家の前に珍しい外車を駐車してる上に、
こんな真昼間に民家で計3発も発泡したら、
幾ら何でも足がつくってことで……
ウォッカ(……まぁ仕方ないか……)
兄貴、シェリーが関わると盲目になるもんな……
ジン「クックック。再開を祝おうじゃないか」
ジン「――会いたかったぜ? シェリー?」ニヤリ
灰原「……ッ……!!」グスン
灰原(……もう……ダメ……)グスン
……工藤君……助けてっ……
◆その頃://阿笠邸/地下二階◆
【遠くで助けを求められてるなんて、夢にも思わない新一は】
【むしろ自分が助けを求めたいくらいの、窮地に陥っていた】
『新一ぃ、そこにいるんでしょ?』ドゴオオン
『あれ、いない? 何で!? どうして!?』
【タイトルをつけるなら『闇鬼ごっこ』――】
【停電の中、捕まったら終わりの命がけ……】
コナン(くっ……捲れた《カーペット》のせいでバレたのか――)
コナン(蘭の奴、どうやらこの《地下二階》にいるようだ……!)
【ライトを付けたら見つかる。そんな恐怖の中――】
【最善策を模索しながら逃げ続けるコナン……】
コナン(にしてもデケー部屋だな。学校の体育館以上あるだろこれ)
真ん中には、これまた超デカイ機械が置いてあるし、
おそらくこの機械が、組織のすげー秘密兵器なんだろうな……。
くっ……明かりさえつけられたら、これが何か分かるのに……。
『新一ぃいいい!! どこ!! どこなの新一!!!』ドゴン
『出てきなさい新一! 私、今なら裸よ!! ねぇ新一!』
コナン(おいおい蘭の奴、マジで狂ってんじゃねーのか……)
『ドンッ』
コナン(いてっ……何だ?)
コナン(あ……端まで来ちまってたか……ん? 梯子?)
コナン(こっち側にも、出入口があるのか……)
コナン(……よし……とにかく今は上に逃げよう)
【梯子を登り、《地下二階》からの脱出に成功したコナン】
【蓋を開けて辿り着いた場所には、どこか覚えがあった……】
コナン(ん? 何かここ来たことあるような……)
【《時計型ライト》を付けたコナンは――】
【その部屋、その事実に驚愕した……】
コナン「なっ……《父さんの書斎》じゃねーか!!」
【間違いない。この本の数、机の配置、独特の匂い……】
【優作お気に入りの古時計は13時45分を指していた】
おい待てよ……てことは、ここは俺ん家の地下一階で……
つまり《工藤邸》と《阿笠邸》は《地下二階》で通じてて……
その《地下二階》には《黒の組織の秘密兵器》があって……
コナン「……これらをまとめると……要するに……」
『俺の父親――工藤優作も――組織の仲間ってことじゃ……』
新一の家キター?
この>>1青山剛昌じゃね?
???「その通りだよ新一……」
コナン「!?」ビクッ
???「いや、今はコナンというべきか……」
コナン「だ、誰だ!?」
【声のする方へ、ライトを向けたコナン――】
【するとそこに、架空の大悪党が浮かび上がった】
闇の男爵「私の唯一にして、最高のバカ息子よ」
コナン「ナ、ナイトバロンッ……!?」
闇の男爵「クックック……ナイトバロンか……」
闇の男爵「もはや、悪の代名詞だな……」
コナン「……なんだと……?」
闇の男爵「我々の俗称なのだよ、《ナイトバロン》は」
コナン「……俗称? 黒の組織のか……?」
闇の男爵「ああ。ちなみに正式名称は《クローバー》――」
闇の男爵「綴りは《Clover》でなく、《鴉の酒場(CrowBar)》と書く」
闇の男爵「――洒落が効いてるだろ?」
コナン「バーロー。んなことはどうでもいいんだよ」
コナン「まさかてめぇ……組織のボスか……?」
闇の男爵「いかにも。機械の癖にやるじゃないか」
コナン「あぁ? どういう意味だ!?」
闇の男爵「クックック。機械のように、常時何かに従い――」
闇の男爵「自分では何も考えないカスのような人間って意味だよ」
コナン「な、なんだとてめぇ!!」
コナン「俺が何も考えない人間なワケないだろ!!」
コナン「俺は探偵をやめて、犯罪者になると決めたんだ!」
コナン「だから俺は、お前を殺して――」
コナン「《黒の組織》のボスになってやるぜッ!」
闇の男爵「……息子が父親を倒すと……?」
コナン「ああそうさ! 立派な王道じゃねーか!」
コナン「俺が機械なんかじゃねーことを証明してやるよ!」
闇の男爵「ほう。それで私を倒した後、どうするつもりだ?」
コナン「はっ? んなもん決まってるじゃねーか!」
コナン「この下にある《組織の秘密兵器》を使って――」
コナン「この世の人間を皆殺しにしてやるのさッ!!」
闇の男爵「……ふっ……ハッハッハッハッ……!」
闇の男爵「《組織の秘密兵器》? だからお前は三流なのだよ」
コナン「なっ、なんだと!?」
闇の男爵「まぁいい。時間も無くなってきたことだ」
闇の男爵「そろそろ本題に入ることとしよう」
コナン「……本題?」
闇の男爵「ああ。私がこの場所に来た理由……それは――」
『お前に、自首をするよう説得するためなのだ』
コナン「……は? この俺が自首だと……?」
闇の男爵「……そうだ……」
コナン「ハハッ、バーロー! 寝言は寝て言いやがれ!」
コナン「常識的に考えて、自首をするのはてめぇの方だろ」
コナン「悪の組織を束ねる分際で、どの口が言うんだよ!」
蘭「新一…私…風邪ひいちゃうよ…」
闇の男爵「ふん……これだから恣意的解釈は……」
コナン「恣意的解釈……? どういう意味だ?」
闇の男爵「悪は常に悪とは限らない、ということさ」
闇の男爵「一度悪とは何か、考えてみたらどうだ?」
コナン「……あ? てめぇ、誰に向かって――」
闇の男爵「お前は阿笠博士を殺した――そうだろ?」
コナン「ッ!?」
闇の男爵「他人の罪よりまず、自分の罪を考察しろ!」
闇の男爵「そして自分で自分を裁判に掛ける――」
闇の男爵「もしその判決が有罪なら――」
闇の男爵「その罪を余生で、精一杯に償え!」
闇の男爵「それがお前にとっての最善策だ!!」
コナン「……はぁ? 俺は博士を殺して後悔なんかしてねぇよ」
コナン「むしろ最高な気分――達成感で溢れてるぜ!」
コナン「誰が好き好んで自首なんてするかよ!」
闇の男爵「ふっ……そうか……それは残念だ……」
闇の男爵「阿笠博士を殺したことは――」
闇の男爵「お前の法律では、《無罪》なんだな……」
コナン「たりめぇだ。バーロー」
コナン「俺は生半可な気持ちで犯罪者になってねぇんだよ」
闇の男爵「……なら聞こう。お前にとって《悪》とは何だ?」
コナン「俺にとっての《悪》? はっ、んなもん――」
『この俺を退屈させる、この世の全てに決まってるじゃねーか』
コナン「だから俺のやってる事は、言わば《正義》だ」
『《悪》を倒すのは《正義》と、相場が決まってるだろ?』
闇の男爵「愚かな……そんなもの、《正義》とは言わない」
闇の男爵「《正義》とは、真に《貫けること》――」
闇の男爵「お前のそれに、一貫性なんてものがあるのか?」
闇の男爵「殺人に対して、死ぬまで後悔しないと言い切れるのか?」
闇の男爵「ただの《暇つぶし》に、それだけの責任が取れるのか?」
コナン「あっ? うっせーな! 暇つぶしのどこが悪いんだよ!」
コナン「俺は何があっても、絶対に罪悪感なんて覚えねぇ!」
コナン「だから俺の犯罪は《正義》だ! 異論は認めねぇぞ!」
闇の男爵「ふん……まるで説得力がない」
コナン「黙れ! つーかてめぇの《悪》こそ何なんだよ?」
コナン「まさかそんな格好して――」
コナン「道徳の授業で習うような《悪》じゃあるめぇよな?」
闇の男爵「ふっ……私にとっての《悪》か……?」
闇の男爵「……そんなもの、ずっと昔から変わってない――」
闇の男爵「私にとっての《悪》――それは私自身だよ」
コナン「……あ? てめぇ自身が《悪》だと……?」
闇の男爵「ああ。時は20年前に遡る……」
父親に影響されて探偵ごっこを始めた高校生の私は、
ある時、人体実験を行う組織の存在を知ったのだ。
まぁその組織こそが、今の《クローバー》なワケだが、
私は当時、阿笠博士と協力して、奴らを追っていてね。
次第に奴らを潰すことに、生きる意味を見出していったのさ。
コナン「……は? テメェはそこのボスなんじゃねーのかよ?」
闇の男爵「まぁ話は最後まで聞け。私は奴らを倒そうとしたが――」
闇の男爵「そんなことが一介の高校生や中年に出来るワケないだろ?」
だから私はこう考えたのだよ。
『奴らを倒すには、奴らの上に立つしかない』
『対立組織が存在しない以上、奴らの仲間になり――』
『奴らのトップに立つことが、何よりベターである』とね。
コナン「へぇ……内部から奴らを潰そうとしたってワケか?」
闇の男爵「ああ、その通りだよ」
闇の男爵「そうと決まれば話は早かった――」
私は『組織から博士に勧誘のオファーがあった』ことを利用し、
博士が『私を組織に入れること』を組織加入の条件にすることで、
私と博士は闇の組織《クローバー》に潜入することができたんだ。
闇の男爵「ちなみに私は、この《ナイトバロン》の仮装でな……」
ハハハ。お陰で組織の連中にはずっと白い目で見られてたよ。
だが奴らを完璧に欺くには、犯罪者になるしかなかったのだ。
だから私は、誰よりも非情になるため、この仮装を選んだワケさ。
闇の男爵「まぁその甲斐もあり、最初はただの雑用だったが」
闇の男爵「私の有能さは、ゆっくりと組織に広まり始め――」
闇の男爵「私が《闇の男爵》を執筆して賞を受賞した頃には――」
闇の男爵「コードネーム《ラム》が《闇の男爵》に取って代わった」
……そしてそこから5年――すなわち今年のことだよ。
闇の男爵「私がようやく《クローバー》4代目首領になれたのは」
闇の男爵「また私がボスになることで――」
闇の男爵「組織には《ナイトバロン》という異名がつき――」
闇の男爵「もはや《クローバー》は、表記上まで悪の象徴となった」
コナン「……へぇ……中々すげぇことやってるじゃねぇか……」
闇の男爵「ふふっ。まぁここに至るまで、何度も苦労したがな……」
闇の男爵「オホン……話を続けよう」
ところで組織には、毎年《晩餐会》という定例の会があってな、
それは述べ500人の組員が集う、たった一つのチャンスであり、
その開催日時及び場所は、ボスが決める体となっているんだ。
闇の男爵「そして私は今年、この開催場所を――」
《阿笠邸》と《工藤邸》にしようと思っている。
私が《工藤優作》であることを、皆に公表してな……
コナン「何っ? 何でわざわざ、そんなことをするんだ?」
コナン「せっかく今まで、悪の象徴として成り上がってきたのによ」
闇の男爵「ハッハッハ……新一よ、忘れてはいないか?」
闇の男爵「私は組織を倒すために、組織に入ったのだぞ?」
闇の男爵「私は《晩餐会》で、全てを終わらせるつもりだ」
そろそろキッドが出てくる予感
闇の男爵「そして、そのための《兵器》こそが――」
闇の男爵「お前の言う《組織の秘密兵器》――」
そう――《充電式超巨大電力放出装置》なのだよ!
18年前に《工藤邸》と《阿笠邸》を同時に建てた際――
私達はそこに《地下二階》を設け、ソイツを作っていたのだ!
闇の男爵「装置の完成には13年も要したが――」
闇の男爵「5年間も電気を蓄える時間があったから問題ない」
この《充電式超巨大電力放出装置》の凄いところは、
電気を蓄え続ければ、限度なしに放出ボルテージが上がることで、
試算すると、『6600ボルトの電圧で5年間充電』した場合、
700億ボルトの出力で対象を攻撃することが可能なのだ。
闇の男爵「おおよそこれは雷の70倍の電圧にまで昇る」
コナン「な、なんだって……!!」
闇の男爵「そして私達はこれを《晩餐会》にて放電することで――」
闇の男爵「私を含めた、悪の象徴《ナイトバロン》を――」
闇の男爵「この世から永遠に葬り去るつもりなのだ!!」
コナン(くっ……狂ってやがる……)
闇の男爵「分かったか? これが私と博士の《正義》だ!」
コナン「へっ……とんだ酔狂だぜこりゃ……」
闇の男爵「私はこの20年間、確かに罪を山ほど犯した」
闇の男爵「だがそれは、根本に組織を倒すという――」
闇の男爵「一貫した強い意思があったからだ!」
闇の男爵「いくら公の法が、私を《大悪党》だと言い張ろうが」
闇の男爵「私は私の法で、自らを《無罪》と判決したんだ!」
闇の男爵「つまり、私は《大正義》。異論は認めない!」
闇の男爵「お前の薄っぺらい《正義》とは格が違うだろう!?」
コナン「……何? てめぇも自分で自分を裁いてるじゃねぇか!」
コナン「この俺と、何がどう違うってんだよ!?」
闇の男爵「お前の場合、ろくに《考えてない》だろ!」
闇の男爵「いいか新一。私が言いたいのはな――」
《真の悪》とは、《考えない》こと――
そして《考えた上での犯罪》つまり《一生貫ける犯罪》は――
公上罰を受けることになるが、決して《犯罪ではない》ことだ!
闇の男爵「むしろ《正義》。全世界に誇っても良いくらいさ!」
コナン「ああああああ! うぜえええええええええ!!!」
コナン「何なんだよてめぇ!!」
闇の男爵「さぁ、今一度問おう。お前は博士を殺したが――」
『それは“一生”、絶対に“後悔しない”と言えるのか!!』
コナン「……ッ!」
『一時的な欲求に従い、何も考えずに殺したんじゃないのか!!』
コナン「……くっ……!!!」
闇の男爵「さぁ答えろ機械!!!」
コナン「バ、バーロー! 俺が後悔するわけ――」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
博士「新一。ゲームを作ったからやってみてくれんか?」
博士「新一。ほら頼まれておいた物、作っといてやったぞ」
博士「新一。新しい発明品が出来たんじゃ。試してくれないか?」
博士「新一。どうしてワシを殺したんじゃ? 理由を教えてくれ」
博士「新一。新一。新一。新一……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コナン「ああ……あああ……ああああああああああ!!!!」
コナン「……あ……ああ……」
闇の男爵「新一……1日だけ時間をやる」
闇の男爵「そしてもし自首する気になったなら――」
闇の男爵「警察に行く前に、私に会いに来てくれ……」
闇の男爵「その時は私もこの仮面を取って――」
闇の男爵「最後に“親子として”、再会しようじゃないか……」
【そう言って、闇の男爵はコナンに背を向ける……】
闇の男爵「だが1日じっくりと考えた末――」
闇の男爵「それでも『一生後悔しない』と言い張るのなら――」
闇の男爵「己の《正義》に従って、この私を殺しに来い!」
闇の男爵「さすればお前を《邪魔者》と見なし――」
闇の男爵「私は仮面を取らず、“《ナイトバロン》として”――」
闇の男爵「躊躇なく、お前を殺すことだろう……」
【最後に強く言葉を放ち、書斎を立ち去る闇の男爵……】
【余韻を残す優作の声に、コナンはただただ沈黙していた……】
~中編・完~
◆14時00分://工藤邸/優作の書斎◆
コナン「……」
【――優作が立ち去った後、コナンは一歩も動けないでいた】
【非日常が始まって、もうすぐ6時間が経とうとしている】
コナン(俺……何でこんなことしてるんだ……?)
【我に返ったらしく、自分が分からなくなったコナンは――】
【今更になって、今日起こったことを整理することにした……】
①俺は非日常を求めて、まず歩美ちゃんと灰原の胸を触り、
②灰原に関しては、振られた衝動でレイプをしようとした。
③それから阿笠博士を殺すために、米花ビルに場所を移し、
④トイレで待ち伏せすることにより、博士を殺すことに成功。
⑤その後、組織を潰すため調査目的で博士の家に趣き、
⑥秘密兵器の存在を見つけたところで、蘭の追跡を確認……
コナン(ん……? 蘭の追跡……?)
『カチャ』【――同時に《地下二階》への蓋が開く……!】
蘭「ふふっ、新一。みぃーつけたぁ♪」
コナン「なっ……!?」
【――そこには、ロープを持った素っ裸の蘭が立っていた】
コナン「うあッ!? うあああああああああ!!!」タタタタタ
【悲鳴を上げ、走りだすコナン……!】
蘭「待ちなさい新一!! 絶対に逃さないわ!!」タタタタタ
【暗闇の中、綺麗なフォームで追いかけてくる蘭……!】
コナン(こええええええ! てか、今更思ったけど――)
コナン(何で蘭に、俺が新一だってバレてんだよぉ!?)
【だがそれを彼女に聞く暇なんてあるはずもない】
【コナンは書斎を抜け、階段を登り、1階に逃げ込む!】
蘭「新一! いい加減、この中にチンポ入れなさいよ!!」クパクパ
【しかし流石は運動神経抜群の怪女――】
【差はどんどん縮まっていき、捕まるのは時間の問題だ!】
コナン(くっ……誰か……助けてくれぇええええ!!!)
『ガチャ……!!』
【コナンはそう願いながら、工藤邸の玄関を辛うじて出る!】
【するとそこには――】
目暮「蘭君! その子は新一君じゃない! やめるんだ!!」
【――目暮を筆頭に、複数の警官、そして毛利小五郎がいた!】
>蘭「新一! いい加減、この中にチンポ入れなさいよ!!」クパクパ
クソワロタwwwwww
急展開キタ━━━━━(((゚∀゚)))━━━━━!!!!
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内
コナン「め、目暮警部……! おじさん!!」
蘭「はぁ!? コナン君は新一よ! すっこんでなさい!!」
目暮「くっ……おいコナン君! 早くこっちに来るんだ!」
蘭「絶対に逃がさないわ!!」タタタタ
【一向に追跡をやめない蘭に小五郎が動く――】
小五郎「やめろらあああああああん!!!!!!」
蘭「……ぇ……!?」 『スッ……』
『ドスッッッッッッッッッッッッ!!!!!!』
【小五郎は、得意の一本背負いを蘭に食らわした】
蘭「くはっ……!!」
小五郎「はぁはぁ……もう休め……蘭……」
小五郎「キッドに縛られて、怖かっただけだろ……?」
小五郎「だがもう大丈夫だ。俺がついてるから……!」ギュッ
蘭「がぁ……がぁああ……!!!」
【裸の蘭を、優しく抱き寄せる小五郎――】
【そんな小五郎の愛を感じてか、蘭は少しだけ大人しくなった】
蘭は裸だけどなwww
コナン「警部さん……どうしてここに……?」
目暮「ああ。歩美君から通報があったのだよ――」
『蘭君が、新一君の家で、君を襲おうとしてる』
目暮「――とね」
コナン「あ、歩美ちゃんが……!?」チラッ 歩美「……」
目暮「ああ。普通ならそんな通報、無視するところだが――」
目暮「丁度我々は、蘭君を探していたところでね」
目暮「急いでこの場に駆けつけたってワケさ」
コナン「……そ、そうなんだ……」
歩美「コナン君、助けが遅くなってごめん……」
歩美「近くのおばさん家まで電話を借りに行ってたから……」
コナン「……えっ……?」
歩美「トイレの張り紙(>>189)って、こういうことだったんだよね?」
歩美「コナン君、歩美に助けて欲しかったんだよね?」
コナン「あっ……それは……」
【眩しすぎるくらいに純粋な、歩美の瞳……】
【犯罪者は、直視することが出来ずに目を逸らした……】
歩美「……えっ? もしかして違った?」
コナン「いや……なんというか……それは……」
【……その瞳は少し、コナンの毒を消したのかもしれない】
コナン「……ごめん!! 歩美ちゃん!!」
歩美「えっ……?」
コナン「俺……どうかしてた……!!」
コナン「女の子の胸を勝手に触るなんて――」
コナン「絶対やっちゃいけないことなのに……!!」グスン
歩美「……コナン……君……?」
コナン「ごめん……本当に……ごめん……!!」グスン
【今のコナンは歩美に痴漢したことを後悔していた】
【それ故に彼は己の裁判で、有罪の判決を下し――】
【そしてひたすらに歩美に頭を下げ続けた……】
【『それが最善策だ』……優作の声が聞こえた気がした……】
歩美「か、顔を上げてよ。そんなのコナン君らしくない」
歩美「確かにいきなり触られて、少し困っちゃったけど……」
歩美「そこまでされたら、別の意味で困っちゃうよぉ……」アセアセ
コナン「歩美ちゃん……許してくれるのか……」グスン
歩美「うん♪ でも次からは絶対にしちゃダメだからね」ニコッ
コナン「……ごめん……本当に……ごめんっ……!」グスン
歩美「アハハ……もうやめてってば」
【歩美は優しかった。罪が赦されるとは、犯罪者も運が良い……】
『PRRRRRRRR♪ PRRRRRRRRRR♪』
【少し離れた場所、突然鳴り響く着信音】
目暮「おお高木か。蘭君は無事見つかっ――」
目暮「何!? キッドの意識が戻っただと!?」
目暮「わ、分かった。今すぐ向かう。奴に隙を見せるなよ!」ピッ
やっとキター!
歩美「コナン君、キッドだってさ」
歩美「もう私のことはいいから、行ってきたら?」
コナン「……え?」
歩美「私、蘭お姉さんがこうなったの、キッドのせいだと思うの」
歩美「だからコナン君、キッドに会ったら言っといて――」
『いくら格好良くても、女の子を縛るなんて最低だよ』って。
コナン「……い、いいのか? 歩美……」
歩美「うん♪ ほらほら、早くしないと警部さん行っちゃうよ?」
コナン「……わ、分かった……じゃあ行ってk――」グイグイ
歩美「あ、でも明日は博士とキャンプだから――」
歩美「それまでには戻ってこなきゃダメだからねー♪」ニコッ
コナン「……ッ」ズキッ
【……少女の笑顔を見て、犯罪者は何も言えなかった……】
◆14時30分://米花総合病院/某室◆
『ガラガラ……』
高木「あっ、目暮警部」
目暮「キッドはどうだ? 逃がしてないだろうな?」
佐藤「大丈夫です。ベッドで大人しくしています」
キッド(黒羽快斗)「……」
目暮「……ほう……思ったより若いじゃないか……」
高木「ええ。僕もびっくり――ってあれ?」
高木「警部、コナン君も連れてきたんですか?」
目暮「ハハ……本人があまりにしつこく言うのでな……」
目暮「毛利君が来れない代わりに、特別に連れてきたんだよ」
コナン「えへへ……」 高木「あ、あははは……」
中森「まさかお前が……キッドだったなんて……」
コナン「あれ? 中森警部、その人と知り合いなの?」
中森「ああ。娘の幼馴染なんだよ、コイツは……」
中森「おい小僧……何でキッドなんかやってたんだ?」
快斗「フン……親父の敵を取るためさ……」
中森「……なにっ!? 父親の敵だと?」
快斗「8年前、俺の親父――黒羽盗一が死んだのは知ってるだろ?」
中森「あ、ああ……だがマジック中の事故死だったはずだが?」
快斗「違う!!! 親父は事故死なんかじゃない!!!」
中森・目暮・高木・佐藤・コナン「……!?」ビクッ
快斗「親父は……殺されたんだよ……何者かになッ……!」
中森「な、何を言ってるんだ!? お前の父親は事故死だと……」
快斗「……くそっ……これだから警察は嫌いなんだ……」
【……病室に重く伸し掛かる、キッドの呟き……】
快斗「……まぁいい。どうせ知らないと思うが――」
快斗「元々《怪盗キッド》は、俺の親父が始めたものだった……」
中森「何っ!? それは本当か!?」
快斗「ああ。だから正確には、俺は2代目キッドってワケさ……」
快斗「なんたって、キッドを続けていれば――」
快斗「親父を殺した犯人を誘い出せるかもしれねぇだろ?」
快斗「だから俺は2代目キッドとして、暗躍することを決めたのさ」
中森「ほう……じゃあ何か? タイムマシンを盗もうとしたのは――」
『過去に戻り、父親を殺した犯人を見つけるためだとでも言うのか?』
快斗「ふっ……まぁそんなところだ……」
快斗「だが実際、タイムマシンの説明を聞いてガッカリしたぜ」
『あの仕組みだと、親父を殺した犯人、又はそれを知る人物が――』
『あの《BJ》とかいうヘルメットを頭に装着しない限り――』
『俺の知りたい過去は《仮想世界》に出来上がらないからな』
快斗「だから正直言って、落胆は隠せなかったよ……」
快斗「まぁその油断のせいで、こうして病室で寝てるワケだけどな」
中森「ふっ……残念だったな」
中森「いくらそんな身の上話をされたところで――」
中森「俺はお前を見逃す気は毛頭ないぞ」
快斗「わぁーってるよ。だが盗みを働いた事に関しては――」
快斗「俺だって、後悔する気は毛頭ねぇからな」
中森「なっ!? なんだとぉおおおお!?」
コナン(……そうか……コイツにも自分の《正義》――)
コナン(ちゃんと墓まで持っていける――)
コナン(揺るぎない《正義》が……あるんだな……)
コナン(……それに比べて俺は……)
中森「クックック。その根性、ムショで叩きなおしてやるぜ」
コナン(……ははっ……無駄だよ中森警部……)
ソイツは俺のような、よくいる犯罪者とは違う……
考えつくされた、己の《正義》に従ってやがるんだ……
コナン(……脱獄してでも、怪盗はやめないだろうぜ)
目暮「オホン。えぇー、快斗君と言ったね」
目暮「君を撃った犯人については覚えていないかね?」
快斗「ああ、うっすらとなら覚えてるぜ」
快斗「暗闇とはいえ、赤外線眼鏡を掛けていたからな」
目暮「ほ、本当か!? どんな奴だった!?」
快斗「んーっと……痩せた子供……だったかな?」
目暮・高木・佐藤「こ、子供!?」
佐藤「け、警部。米花ビルから脱出できると思われる経路は――」
佐藤「階段、エレベータを除くとダストシュートしかありませんでした」
佐藤「彼が言ってることは、嘘ではないかもしれません!」
目暮「そ、そうだな……他には何かあるか?」
快斗「あと銃を握ってた。俺と一緒で赤外線眼鏡も」
快斗「恐らく停電の事態を予測してたんだろうな……」
快斗「ハハッ。冷静に考えれば滅茶苦茶頭の切れるガキだぜ」
高木「警部。銃と言えば、例のフロアから一丁だけ発見されました」
目暮「なんだと!? それは本当か!?」
高木「ええ。ただ、一発も打たれた形跡がないので――」
高木「快斗少年、阿笠氏両方の事件において関係ないかと……」
目暮「はぁ? 何だそりゃ……?」
高木「僕も何が何だかさっぱり……」
佐藤「そういうのって、余計に迷惑ですよね……」
目暮「ああ……しかしどうしたものか……」
『PRRRRRRRR♪ PRRRRRRRRRR♪』
目暮「ん? 電話……誰からだ?」
中森「ったく。病院なんだからマナーモードくらいしとけタヌキ!」
目暮「あぁ!? 誰のせいでこんな苦労をしてると思ってるんだ!」
高木「ま、まぁまぁ……とにかく出てみましょうよ目暮警部」
ほす
『おう。おっさん! 久しぶりやな』
目暮「む。誰かね君は? どこかで聞いたような声だが……」
『ハハハ。忘れてしもたんか? オレやオレ、服部や』
目暮「なんだ服部君か……一体どうしたというのかね?」
『いや、今、阿笠のオッサンの助手とおんねんけどな――』
『あのヘルメット盗みよった犯人が分かるかもしれん言うとって――』
『こら警部に教えたらなアカン思て電話したっちゅうワケや』
目暮「な、なにィ!? 犯人が分かるかもだと!?」
コナン・高木・佐藤・中森「……!?」
コナン「ね、ねぇ警部! それってどういうこと!?」
『ん? そこにくど……やのうてコナン君おるんか?』
『なら早いわ。警部はん、今からその子連れて来てくれへんか?』
目暮「えっ……コナン君をかね?」
『そうや。ソイツがおらな、この事件は解かれへんからな』
目暮(……どういうことだ?)
◆15時30分://《BJ》中央サーバー第一管理室◆
【目暮警部一行は、服部からの提案に同意して――】
【ここ、タイムマシンの中央サーバ管理室にやってきた】
『ウィィィン』
服部「おっ、来よったか」
関係者A「あ、役立たずの警部じゃないですか。お久しぶりです」
中森「ぐぬっ……久しぶりって、さっきまで一緒にいましたよね?」
関係者A「あはっ、そうでしたっけ? それは失礼しました」
関係者A「いやぁ、あなたが余りにも役立たずだったから――」
関係者A「体感的に1年くらい、存在を忘れてたもんで」
中森「この……!!」ブチッ
関係者A「アッハッハッハ! 冗談ですよぉ、中堀警部」
中森「ぬぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」イライライラ
高木「ま、まぁまぁ、2人とも……」
目暮「ふん。馬鹿が……」
目暮「して服部君、犯人が分かるかもとはどういうことかね?」
服部「ああ、それならこっちのオッサンが説明してくるわ」
目暮「ほう……あなたは?」
関係者B「はい。私はこの管理室の室長をしている者ですが――」
関係者B「今から2時間程前にこちらのログを見つけましてね」
[ ID ]25.32*.71.24*.103.41
[TIME]logged in at 13:50/18/05/2012
[PAST]15:32/18/05/2011
目暮「ん? 何ですかこれは?」
コナン「ねぇこれ、誰かが《BJ》を使ってるんじゃない?」
関係者B「おお、よく分かったね坊や」
佐藤「えっ、じゃあまさかこのIDって……」
関係者B「はい。《BJ》端末は現在2台しか作ってなく――」
関係者B「しかも、ココに置いてあるものと――」
関係者B「発表会に出展したもので全てなんです」
関係者B「つまり今、《BJ》にログインしている人物は――」
関係者B「《BJ》端末を盗んだ人物、ということになります」
目暮「おおお! じゃあ今なら犯人の居場所が……!」
関係者B「いえ……残念ながらそれは……」
目暮「えっ……分からないんですか?」
関係者B「はい。博士はプライバシーの保護を重視しておられて」
関係者B「《BJ》では、こういったログから決して――」
『利用者の個人情報を特定できない仕様になっているんです」
高木「じゃ、じゃあどうやって犯人を特定するんですか?」
関係者B「もちろん、方法はあります」
関係者B「少しばかり危険が伴う方法ですけどね」
目暮「構いません。警察に危険は付き物――」
関係者B「でも死ぬかもしれませんよ?」
目暮「……!?」
関係者B「私が考えている方法とは――」
『《BJ》の同期機能を使って、犯人のいる《世界線》に行くことです』
目暮「犯人のいる……《世界線》?」
関係者B「ええ。というのも犯人は1年前に時間旅行しており――」
関係者B「その《世界線》には、犯人が『2人』いるはずですから」
中森「なるほど。要するに『2人いる奴が犯人』ってことだな?」
関係者B「はい。現実世界に手掛かりが残っていない以上――」
関係者B「こちらの仮想世界で犯人を探す方が効率的かと……」
佐藤「うん……不本意だけど、それが最善策ね……」
高木「ええ……僕もそう思えてきました」
関係者B「ですが、先程も言ったようにこの方法には危険が伴います」
目暮「死ぬかもしれない……というやつか」
関係者B「はい。現在、《BJ》には致命的な仕様――」
『仮想世界に同一人物がいると、端末が強制終了する』
関係者B「――といった、言わばバグがあるんです」
中森「ほう……端末の強制終了が、最悪死に至る……と?」
関係者B「ええ。1年前というと、皆さんは存在していますから」
関係者B「《BJ》端末が強制終了してしまう可能性があるんです」
佐藤「えっ、ちょっと待って。じゃあ犯人も危なくない?」
関係者B「そうですね……ほんと、いつ強制終了が起こるか……」
目暮・高木・佐藤・中森「……え?」
コナン「ねぇ……それ、急いだ方がいいんじゃないの?」
目暮「そうですよ! 何を悠長なことを言ってるんですか!」
目暮「今すぐ私をその世界に送り込んで下さい!!」
服部「待てやおっさん」 目暮「!?」
服部「タイムリープすんのは、そこのボウズや」
コナン(……えっ……)
目暮・高木・佐藤・中森「……コ、コナン君!?」
服部「なんたってこのボウズ、1年前にはおらへんかったからなぁ」
目暮・高木・佐藤・中森「……は!?」
ストーリー的には1年たってないのか
服部「――っちゅうんは冗談やとして」
目暮・高木・佐藤・中森「……はぁ?」
服部「ホンマの理由は、犯人が子供やからや」
高木「えっ……何で君がそんなこと……」
服部「アホ。脱出経路がダストシュートだけで――」
服部「そのダストシュートが子供しか通れないとあっちゃ――」
服部「犯人は子供しかないってことになるやろ」
高木「えっ……あ、そうだね……」
服部「相手が子供なら、こちらも子供――」
服部「同じ視線に立てるっちゅうんは、結構有利やと思うで」
高木「な、なるほど……一理あるかも……」
コナン「(おい服部。何だよその滅茶苦茶な論理は)」
服部「(アホ。んなもんコジツケで、ホンマの理由は最初のやつや)」
服部「(お前やったら、機械が勘違いしてくれるかもしれんやろ?)」
服部「(お前が工藤新一とは同一人物じゃないってな……)」
【そして結局、コナンがタイムリープすることに……】
関係者A「よしっ、じゃあこのヘルメットを装着してくれ」
コナン「……分かった……」 『シュポッ』
コナン「……おじさん、被ったよ」
関係者B「よしOKだ」
関係者B「今回は特別に、緊急用IDでログインするから――」
関係者B「君の過去は《BJ》には吸い取られない」
関係者B「だから安心してね」
コナン(……過去を吸い取られないってことは、つまり――)
『仮想世界の過去は、オレの知らない過去ばっかり』ってことだな。
コナン(よし……これは重要な手がかりになりそうだ……)
関係者B「じゃあ出発するよ。ログアウトジェスチャーはどうする?」
コナン「んーと……じゃあ手を3回叩いたらでお願いします」
関係者B「『手を3回叩く』だね。分かったよ」ピピピピ
関係者B「よし! 設定完了! それじゃ頼んだよコナン君!」
◆タイムリープ中(1年前)://帝丹小学校/正門前◆
コナン「……ここは……帝丹小学校か……?」
コナン「すげぇ……めちゃくちゃ細かく再現されてるぜ……」
【無事タイムリープに成功したコナン――】
【感覚としては、現実と比べて遜色はゼロだった】
コナン(取り敢えず、犯人は子供だってことは分かってるんだ)
コナン(まずは小学校の中から探すとするか――)
◆タイムリープ中://帝丹小学校/校庭◆
コナン(――って、時間帯的に生徒が残ってるわけねーよな)ハハ
【時間はまもなく16時を迎えようかとしてるところで】
【校庭には、友達とサッカーをする生徒がちらほらいた】
コナン(アイツらはどっちなんだろうな……)
①《BJ》の過去補完機能によってリアル度を向上させてるだけなのか
②それとも、実際に誰かの記憶を再現したものなのか
コナン(……話を聞いてみるか)
コナン「なぁお前ら。ちょっといいか?」
少年A「何? 僕達今、サッカーの練習中なんだけど」
コナン「君たちって何年生なの?」
少年B「4年生だよ。何か文句あっか?」
コナン(凄いな……会話に全然違和感がない……)
コナン「いや、何でもないよ。サッカーを続けてくれ」
少年B「ふん。変な奴だな……」タタタ
コナン(やべぇな……これじゃ、聞き込みなんて意味ないぞ……)
コナン(いや……オレの知ってる奴に聞き込みすれば或いは……)
コナン(よし……蘭の家にでも行ってみるか)
◆タイムリープ中://毛利探偵事務所前◆
【小学校を出て、毛利探偵事務所前に来たコナン】
コナン(にしてもこの再現度は凄いな……)
コナン(米花市の街並みに、全く違和感を感じない……)
コナン(ん? 違和感を……感じない……?)
―――― コナン ――――ピシュン!!
コナン(よく考えれば、それっておかしいじゃねーか!)
俺は《BJ》に、“過去”を提供してないんだぞ……!
つまり、今まで過去を提供した奴の中に――
米花市を知ってる奴がいるってことだ……。
コナン(まぁソイツが例の犯人かどうかは分からないが……)
なんたって過去提供者は、犯人の他に数十名いるらしいからな。
おそらくその数十名ってのは、組織の仲間だと思うけど……。
コナン(よしっ……とにかく事務所に突入してみよう……)
◆タイムリープ中://毛利探偵事務所◆
『ガチャ……』
コナン(あ、やべ。インターフォン押すの忘れてたぜ)
小五郎「ああ? 何だお前……?」
コナン(お、おっちゃん!?)
コナン「あの……これはその……」
コナン「お、お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」
小五郎「……は?」
コナン「おらおらおらおらおらおら!!」ドカドカドカ
【執拗に、壁を蹴るコナン】
小五郎「なっ……! この糞ガキッ!!!」
『ドスッッッッ!!』 コナン「くはっ……!」
【小五郎にぶっ飛ばされたコナン】
小五郎「ちっ! 唯でさえ競馬に負けて苛ついてるってのに」
小五郎「二度と来るんじゃねぇぞ!!」 『ガチャン!!』
コナン「けほ……けほ……やった……ぜ……」
おっちゃんの顔は、おっちゃんの顔だった……!
言動も趣味もおっちゃんのそれだし、間違いねぇ……!
コナン(つまり犯人は……おっちゃんを知ってる人物……!)
……いや、待て。おっちゃんは全国的に超有名人じゃねーか……
犯人がおっちゃんを知ってたところで、その情報に価値はない……
コナン(……じゃあ有名人じゃなきゃいいのか……)
――歩美ちゃんの家にでも、行ってみるかな……
◆タイムリープ中://吉田邸門前◆
コナン(凄い……ここの再現度も完璧だ……)
『ピーンポーン♪』
『……はい。誰ですかー?』
コナン(えっ……? これ、歩美の声じゃねーか……)
組織の仲間が、歩美を知ってるワケねーし……
つまり犯人は……歩美を知ってる人物――
コナン(って俺はアホか! タイムマシンを発明したのは誰だよ!)
コナン(歩美のことをバリバリ知ってる、阿笠博士じゃねーか……!)
くそっ……また俺は意味のない情報を……
『……あれ? もしもーし?』
『……はぁ……今日は変な人が多いな……』
『さっきも《痩せた元太君》みたいな人がいたし……』
コナン(えっ……なんだって!?)
元太キタ━━━━━(((゚∀゚)))━━━━━!!!!
コナン「歩美ちゃん! 今何て!?」
『ふぇ!? いや、こっちの話です!!』ブチッ
コナン(くっ……! 切られてしまった……!)
だが、今確かに歩美は《痩せた元太》って言ってたよな……。
つまりこの世界には《痩せてない元太》もいるってこと……。
コナン(じゃあタイムマシンを盗んだのは――)
――元太ってことか……?
◆タイムリープ中://小嶋酒店◆
【元太の家に、超特急でやってきたコナン】
コナン「おばさん! ちょっといい!?」
元太母「あら、坊やどうしたの?」
コナン「ここに《痩せた元太》が来なかった!?」
元太母「痩せた元太……? やだ……あれやっぱり……」
元太父「ああ……幻覚じゃなかったのかもな……」
コナン「えっ!? 来たの!?」
元太母「ええ……あなたは元太の友達?」
コナン「え……あ、うん。そうだけど……」
コナン「その痩せた元太は何か言ってなかった!?」
元太母「ええ……なんかね――」
『鰻重を食わせろ』
元太母「――って、物凄い形相で言ってきたわ……」
コナン(……鰻重だと!?)
コナン(確か現在では、鰻は絶滅(>>14)していて……)
―――― コナン ――――ピシュン!!
コナン(何だ……そういうことだったのか……)
……元太……おめぇはそこまでして……
コナン「……おばさん。その元太は今どこにいるの?」
元太母「なんか《米花リバー》に行くって言ってたけど……」
コナン「……分かった。ありがとうおばさん!」タタタ
元太母「あっ、待って!」
コナン「……え?」
元太母「坊やは一体……何者なの……?」
コナン「……江戸川コナン――探偵さ!」
元太母「……探……偵?」
コナン(……あ……)
【思わず飛び出たそのセリフには――】
【辞めたはずの《探偵》という単語が入っていた……】
元太おまえ……
◆タイムリープ中://米花リバー◆
【――そこには、痩せ細った裸足の少年……】
【河流に入って、何やら魚を探してるようだった】
コナン「おい元太。そんなんじゃ鰻は取れねーぞ……」
元太「なっ……コナン!? どうしてここに……!?」
【その言葉を聞いた瞬間、犯人が元太であると確定した】
【何故ならこの世界に、俺を知ってる奴なんているはずないのだから】
コナン「お前は阿笠博士のタイムマシンを盗んだ……そうだろ?」
元太「へっ……だからどうした!?」
元太「俺は後悔なんかしてねーぞ!」
コナン「……!?」
元太「鰻は俺の命なんだ。俺は死ぬまでこの世界で生き続けるッ!」
コナン「……ッ!!」
コナン(こんな小さな子供でも……こんな立派な《正義》を……)
……それなのに……俺は……俺という奴は……!
元太「……ん? おいコナン……何泣いてんだお前……?」
コナン「お前……鰻のためだけに銃を覚えたのか?」
元太「ああ」
コナン「鰻のためだけに、キッドを利用したのか?」
元太「まぁな」
コナン「鰻のためだけに、キッドを撃ったのか?」
元太「おい、うぜぇぞコナン」
コナン「本当に一生、後悔しないか?」
元太「だからするわけねぇって言っただろ!」
コナン「……元太ッ……!!!!」
元太「な、何だよ急に……?」
コナン「お前はその犯罪を誇っていい!」
元太「……はぁ?」
コナン「世間はお前のことを絶対に許さない!」
コナン「もちろん俺だって1ミリも認めちゃいない!!」
コナン「だがお前だけは……大いに胸を張っていいんだよ!!!」
元太「お前……なんかキメェぞ……」
コナン「ははっ……それはおめぇの体型のことだ……」
コナン「早いとこ鰻をたらふく食って、元の体型の戻れよな……」
元太「……俺を捕まえねーのか?」
コナン「いや、捕まえるさ。今からログアウトして――」
コナン「警部達にお前が犯人だったことを伝えるつもりだよ」
元太「何っ!? お前言ってることが滅茶苦茶じゃねーか!」
コナン「バーロー。俺はお前を認めるなんて言ってねぇし――」
コナン「それにお前と同じように、俺にも《正義》があるんだ」
《犯罪者》を捕まえるために全力を尽くすという《正義》がな……
元太「くっ……この野郎……!!」
元太「逃がしてたまるかよッ!」
【川岸においてある凶器を取りに行く元太――】
【その隙にコナンはゆっくりと掌を3回叩いた……】
コナン「あばよ……孤独なヒーロー……」
◆18時00分://《BJ》中央サーバー第一管理室◆
【タイムトラベルを終え、現実に帰ってきたコナン】
【どうやら彼の中で、何か得られたものがあったようだ……】
コナン「……ふぅ……(脳みそが熱い……)」
服部「おっ、目ぇ覚めたようやで」
目暮「コナン君! それで犯人は分かったのかね!?」
コナン「うん……分かったよ……」
『犯人は……小嶋元太だった……』
【――コナンは目暮達に真実を伝えた――】
高木「そんな……あの元太君が……」
服部「なるほど……鰻が絶滅したストレスで痩せとったから――」
服部「あのダストシュートから逃げられたっちゅうワケか……」
佐藤「うっ……そんな……いやあああああ……!!」グスン
コナン「あのさ、目暮警部……」
目暮「な、何だねコナン君?」
コナン「……実はキッドを撃った犯人だけじゃなくて――」
コナン「……博士を殺した犯人も分かったんだけど……」
目暮「……ぇ……?」
全員『な、なんだってー!!?』
服部「おい工藤! やのうてコナン! はや教えろ!」
目暮「そうだぞコナン君! 是非とも教えてくれたまえ!」
コナン「うん……勿論教えるけど――」
『3時間だけ、時間をくれないかな……?』
高木「えっ……ど、どうして……?」
服部「ほんまや! そんなん言うとる場合ちゃうやろ!」
目暮「むぅ……理由は何だね? コナン君」
コナン「ごめんね警部。理由は言えないんだ……」
コナン「でも必ず、今日の9時までには教えるから……」
目暮「し、しかしだな……」
コナン「絶対に……教えるから……」
目暮「うむむ……そこまで言うなら仕方ない……」
目暮「じゃあ9時までには、警視庁舎に来るんだよ?」
コナン「うん……ありがとう……目暮警部……」
服部「(おい工藤! 何やねんそれ!)」
コナン「(ハハ……お前こそ、その顔の痣は何なんだよ?)」
服部「(こ、これは和葉と園子に殴られ――ってアホか!)」
服部「(んなことはどうでもいいから、さっさと教えろや!)」
コナン「(ハハッ……心配すんな服部……)」
コナン「(9時になったら、全部教えてやっからよ……)」
◆19時00分://工藤邸/リビング◆
【――1時間後、自宅にて優作を待つコナン】
コナン(親父にはココに来るようメールを送っといた……)
コナン(遅くても8時までには来てくれるだろう……)
【およそ30分前、優作にメールを出したコナンだが、】
【そんな彼には、メールを送る方法が2通りあった――】
①組織のボスのアドレス《#969#6261》にメールを出す方法。
②父親のメールアドレスにメールを出す方法。
【この2択は、まるで優作の問いに対する選択肢のように思えた】
【①を選んだら殺し合い、②を選んだら自首、といった感じに……】
コナン(まぁ結局、俺が選んだのは……)
『ガチャ』
【コナンの思考を遮る形で、玄関のドアが開く――】
闇の男爵「……待たせたな……新一……」
コナン「いや……俺もいま来たところだよ……」
【どうやら《ナイトバロン》が到着したようだ】
闇の男爵「結局、1日も時間を使わなかったみたいだが?」
コナン「ああ。だが俺は、この意思に後悔しないと誓えるぜ」
闇の男爵「そうか……なら話は早い。早速聞かせてもらおうか」
『お前にとっての《正義》というやつをな……』
コナン「ふっ……そんなの言うまでもない……」
『俺の《正義》は、探偵として人を救い続けることだ』
コナン「……俺が間違ってたよ……親父……」
コナン「博士を殺しちまって……後悔しまくりだぜ……」
闇の男爵「……そうか……なら自首してくれるんだな……?」
コナン「ああ……俺は自分の罪を認めてる……」
コナン「自首することが、きっと最善策だ……」
初めのキチガイっぷりが嘘のようだな
闇の男爵「ふっ……ならお前と最後の対面をしよう」
闇の男爵「探偵と悪ではなく、もちろん、父と子として……」
コナン「ああ……」
闇の男爵「――と、言いたいところだが」
闇の男爵「残念ながらそれはできないな……」
コナン「……え……?」
【そう言いながら、仮面を取る《ナイトバロン》――】
【その仮面の裏には、変声機らしきマイクがついていて……】
闇の男爵「なんたって“俺”の正体は――」
新一「《工藤新一》なのだから……!!」
コナン「……ぇ……」
コナン「……はああああああああああ!!?」
な、なんだってぇぇぇぇ
えっ
コナン「な、何なんだよお前はッ!!?」ガクガク
新一「まぁ厳密に言うと、10年後のお前だけどな」
コナン「……10年後の……俺……!?」ブルブル
新一「ああ。俺は博士のタイムマシンでこの時間軸に来たのさ」
コナン「タイムマシン……だと……?」ガクガク
【……確かに思い当たるフシはいくつかあった……】
まず奴は、書斎に現れるタイミングがピッタリすぎた。
まるで俺が13時45分(>>352)に来ることを知ってたように……
さらに俺が博士を殺したことを何故か知っていた……(>>374)
加えてそれが暇つぶしだったことも知っていた……(>>379)
それに今思えば、暇つぶしが《悪》とは限らない……
それが後悔しない暇つぶしならば、十分に《正義》と言える。
奴は、俺が後悔することを知っていたから自首を勧めたんだ……
つまり奴は……俺以外の……何者でもない……
コナン「……まさか……そんな……」ブルブル
『“機械”の癖にやるじゃないか』
コナン「うわあああああああああああああ……!!」
新一「ちなみに言っとくが――」
新一「俺が親父のフリをして話した内容は全て本当のことだぞ」
コナン「……ぇ……?」
10年後のお前――すなわち俺は、
10年前、親父から親父の全てを聞いたんだ。
だが当時の俺は、以前までのお前のような奴でな。
親父がボスだと聞いて、親父を殺すことしか頭に無かった。
コナン「……それで……親父を殺したのか……?」
ああ。俺は親父を不意打ちで殺した末、10年間ずっと――
《ナイトバロン》に成りすますことで組織のボスであり続け、
そして、ひたすら罪を犯しまくるという生活を送っていた。
新一「だがある日を境に、唐突に冷めてしまってな……」
そしたら今まで感じなかった《罪悪感》を感じるようになり――
酷い時で3日間くらい全く眠れない日が続いたんだ……
新一「酷いもんだぜ? 毎日掻き毟り、叫んで、壁を殴って……」
ロクに考えも持たずに、ただ何となく罪を犯してたせいさ……
心を支える強い信念がない人間は、いつか必ず孤独に陥る……
新一「そう――犯罪者になるには、相応の覚悟が必要だったんだ」
それこそ、俺達の父親・工藤優作のようにな……
新一「だから俺は……この世界にやってきたんだ……」
過去の自分に自首をさせ――
手遅れになる前に、罪を懺悔させるためにな……
コナン「……」
【一度冷静になり、脳内を整理するコナン……】
コナン(待てよ……俺が仮想世界のNPCなら……)
この世界での俺の思想、思考、趣味、性癖は――
全部機械によって作られてるものってことだよな……?
じゃあ今、こうして考えてるのも俺ではなく機械で……
コナン「うぅ……うあああああああああああ!!!」
新一「……ちなみに親父は別の場所にいるから安心してくれ」
新一「この世界線では、親父も野望を達成できるだろうよ」
コナン「……お前……何でそこまでして……」
新一「ああ……俺だって意味のないことくらい分かってる」
所詮この世界は現実ではなく、仮想の時空――
そんな世界で自首したって、現実は何も変わらねーからな……
コナン「……じゃあ……何で……」
強いて言うなら……仮想世界の過去の自分を変えることで――
自分のアナザーライフの存在を、確かめたかったのかもしれない……
新一「俺にも別の人生があったんだってことをな……」
コナン「……」
【新一の目は充血しており、その下にはクマが出来ていた】
【彼が眠れない日々を送ってることは本当らしい……】
新一「ふっ……じゃあそろそろお別れの時間だ……」
コナン「……ぇ……」
新一「最後にもう一度確認するが――」
『お前は本当に……自首するんだな?』
コナン「あ、ああ……それは変わらねーけど……」
新一「そうか……なら良かった……」
『きっとそれは、お前にとっての最善策になるよ……』
コナン「ま、待て……現実に帰ってどうするつもりだ……?」
新一「……ハハッ……おいおい……」
新一「探偵の癖に、聞かなきゃわかんねーか?」
新一「お前を自首させて、俺は心辺整理を済ませたんだ――」
新一「現実に帰って何をするかは……察してくれよな……」
コナン(……ま、まさか……)
コナン「……後悔はしないんだな……?」
新一「バーロー……おめぇには言われたくねぇよ……」
コナン「ふっ……そうか……なら好きにしてくれ……」
新一「……じゃあこれでサラバだな、過去の俺――」
新一「いや、『もう一人の俺』と言うべきか……」
コナン「ああ……一生のお別れだ……」
新一「……コナン……」
コナン「……ん?」
新一「現実は、いつもひとつ……だぜ?」
コナン「……」
コナン「バーロー……何当たり前のこと言ってんだ……」
新一「……ハハッ……それもそうだな……」
【……そして新一は、この世から姿を消した……】
コナン(……ん……?)
【新一のいた場所に手紙を見つけたコナン……】
【どうやら新一からの最後のメッセージのようだ】
コナン(……えーっと……なになに……)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
もう一人の俺――江戸川コナン へ
俺はこの仮想世界からログアウトしたが、
あと2時間くらいは、《BJ》を起動したままにして――
新機能・自動進行モードでプレイすることにする。
つまりお前は、プレーヤーである俺がいなくとも、
あと2時間だけはその世界で行動できるということだ。
是非その間に警視庁に行き、自首をしてきてくれ。
工藤新一より
P.S.
お前が《闇の男爵》でなく――
《父親》にメールを送ってくれたことから、
俺は前もって、お前にプレゼントを用意しといた。
もうじきそこに来るだろうから、楽しみにしとけ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コナン(ん……? プレゼントって何だ……?)
『ピーンポーン……』
コナン「!?」
【静寂に鳴り響く、インターフォンの奏】
【もしかして……プレゼントとやらが来たのか……?】
【コナンは思考を巡らしながら玄関へと向かう……】
『ガチャ……』
コナン「……ぇ……?」
灰原「……工藤君……」
コナン「は、灰原……!?」
灰原「あの……私……」
コナン「新一に……会ったのか……?」
灰原「……ええ……」
コナン「そうか……まぁとにかく上がれよ……」
◆19時30分://工藤邸/リビング◆
コナン「そりゃ驚くよな……この世界が仮想世界だなんて……」
灰原「そうね……さっきから頭が痛いわ……」
コナン「てかお前、どうして《闇の男爵》に会えたんだ?」
灰原「話せば長くなるけど――私、ジンに捕まって――」
灰原「それで、組織のボスの元に連れて行かれたのよ」
コナン「……えっ?」
【灰原は組織に捕まるまでの紆余曲折を――】
【嘘偽りなくコナンに聞かせた……】
コナン「そうか……光彦のせい――」
コナン「いや、元はと言えば俺のせいか……」
灰原「……え?」
コナン「光彦は……俺を脅してない……」
コナン「俺は俺の意思で……お前に酷いことをしたんだ……」
灰原「……えっ? あなたが……?」
コナン「ああ……悪かった……灰原……」
灰原「で、でも円谷君は授業中の会話を知ってたのよ?」
コナン「それはきっと、盗聴でもしてたんだろう」
コナン「何にせよ全て俺が悪い……すまなかった……」
灰原「い、いいわよ……別にもう何とも思って――」
コナン「嘘つくな……だってお前……泣いてたろ……?」
灰原「あ、あれはその……」
コナン「……あれは?」
灰原「……馬鹿……そんなことも分からないの?」ボソッ
コナン「……え?」
灰原「好きな人にあんなことされたら――」
灰原「誰だって、泣きたくなるに決まってるじゃない」
コナン「……」
……へ?
好き? 灰原が……この俺を……?
コナン「なっ! 何言ってんだよ!?///」
コナン「お前、今日の授業中、俺を振ったじゃねーか……!///」
灰原「馬鹿ね。授業中に告白する人間がどこにいるのよ」
灰原「はぐらかすくらいしか、方法がないじゃない」
コナン「んなこと言われたって……!」
灰原「それに私が今までどれだけ――」
灰原「蘭さんと楽しそうにしてるあなたを見てきたと思ってるの?」
灰原「信じろって言う方が無理な話でしょ」
コナン「じゃ、じゃあ! 何で今更信じてくれたんだよ?」
灰原「それは……10年後のあなたから聞いて……」
コナン「は!? 俺よりアイツの方を信じたってのか!?」
灰原「な、何よ! アイツの方って……どっちもあなたじゃない!」
コナン「……」 灰原「……」
灰原「……ちょっと……何で黙るのよ……?」
コナン「いや、怒った灰原も可愛いなーって」
灰原「……はぁ? ば、馬鹿じゃないの!」
灰原「急に何言って――」
コナン「ははっ、照れてる顔も可愛いぜ」
灰原「くっ……うっさいわねっ……」プイッ
コナン「……」
【しばし灰原を見つめるコナン――】
【そして真剣な口調で彼女を呼ぶ】
コナン「灰原。ちょっとこっちを向いてくれ」
灰原「何よ。どうせまた誂うんでしょ?」プイッ
コナン「いや……ここからは真面目な話だ……」
灰原「……え……?」
コナン「俺は阿笠博士を殺した――」
コナン「それは10年後の俺から聞いてるよな?」
灰原「……ええ……聞いてるわ」
コナン「じゃあ何でお前は、そのことに触れないんだ?」
コナン「お前にとって、博士は命の恩人なんだろ?」
コナン「言わば俺は、憎き敵になるんじゃないのか……?」
灰原「……そうね……」
灰原「確かに博士は私の恩人である上に――」
灰原「あなたは取り返しのつかないことをしたわ」
コナン「……」
灰原「でもね、博士がロリコンだってこと、あなたは知ってた?」
コナン「……え? 博士がロリコン……?」
灰原「ええ。お風呂に盗撮カメラを仕掛けたり――」
灰原「私が着替えをするとき、部屋に入ってきたりされたわ」
コナン「なっ……! なんだと……!?」
灰原「あとは偶に下着を盗まれる程度ね……」
灰原「まぁ直接何かされたりはなかったから――」
灰原「まだ救いようのあるロリコンだけど……」
コナン「そんな……博士が……」
灰原「でも勘違いしちゃダメよ……」
灰原「だからと言ってあなたの罪が軽くなるわけじゃないから」
コナン「ああ……それはちゃんと分かってる……」
灰原「ただ私が言いたいのは――」
『あなたが思ってる程、私は博士を慕ってなかったってこと』
灰原「……それとあとは《BJ》についてもね」
コナン「《BJ》? あの機械に何か問題あるのか?」
灰原「ええ……あの機械は、はっきり言って有害なの」
灰原「実は私、あの機械の開発には少し携わっててね」
灰原「――まぁもちろん、組織にバレない程度だけど」
灰原「前から《BJ》の完成には、少し抵抗があったの」
コナン「……それが“有害”だからか?」
ええ。《BJ》は人間の脳をフルに稼働させて――
仮想世界を現実であるかのように錯覚させる機械だけど、
そもそも人間の脳ってのは、そんなにタフじゃないのよ。
灰原「その証拠に、10年後のあなたはこう言ってたわ――」
『10年後の世界では、《BJ》利用者が10億人以上いる』
『しかし、それと同時に《BJ》利用者の40%が――』
『――脳死でその一生を終えているんだ……』
灰原「――ってね」
コナン「……ま、まじかよそれ……!!」
灰原「全部ホント」
灰原「もちろん私の他に、《BJ》の有害に気づいてた人はいたわ」
灰原「中でも板倉ってプログラマーは一味違ってて――」
灰原「彼は組織に対し、ただ一人、勇敢に立ち向かった人間よ」
灰原「でも博士は、自分と組織の夢のため、最後まで開発を続けたわ」
灰原「だからこの件も、私が博士に嫌気が差した理由の一つよ……」
コナン「じゃあお前は、俺のことをそこまで恨んでねーのか……?」
灰原「……そうね……まぁ軽蔑はするけど、恨んではいないわ……」
コナン「……そうか……ハハッ……俺はほんと運がいいな……」
灰原「馬鹿ね。だから最後にあなたを見送りにきたんじゃない」
灰原「恨んでたら、10年後のあなたの命令なんて無視してるわよ」
コナン「そうか……お前は10年後の俺からのプレゼントだもんな」
灰原「何? 私を物扱いするわけ?」ジトッ
コナン「ハハッ……わりぃわりぃ……」
【そして――】
コナン「じゃあそろそろ行ってくる」
灰原「……ええ。警部さんが待ってるものね」
コナン「灰原。あの……その……何だ……」
灰原「?」
コナン「いや、なんというか……」
コナン「俺がちゃんと罪を償って帰ってこれたらの話なんだが――」
灰原「ふふっ……何かしら?」
コナン「だから……その日が来たら……その――」
灰原「工藤君」
コナン「えっ?」
『……ちゅ……♪』
コナン「……ぇ……」ポカーン
灰原「それ……初めてだから……///」
コナン「……えっ……あ……えっ!?///」ドキドキドキ
灰原「私、工藤君のこと、いつまでも待ってるから……」
コナン「は、灰原……お前……///」
【無言で見つめ合う2人――】
【そこに言葉は要らなかった】
灰原「……ほら、早く行かないと――」
灰原「目暮警部に怒られるわよ?」
コナン「……ああ……そうだな……」
コナン「じゃあ灰原! 俺、絶対に戻ってくるから!」
灰原「何言ってんのよ。戻って来なかったら抹殺よ?」
コナン「ははっ……わぁーってるって」
コナン「あ、でも……抹殺もされてみたいかも……」
灰原「……バカ……///」
【見送る灰原を背に、コナンは工藤邸を出発する】
【向かうは警視庁――彼の人生は、始まったばかりだ】
◆現実(2時間後)://米花ビル/屋上◆
新一「……2時間経過……」
新一「……ゲームクリアーだ……」
【《BJ》の電源を落とし、メモリーカードを抜く新一】
【その中には、新一の変えた過去が記録されている】
新一「ふっ……俺のアナザーライフ……か……」
【そう呟くと、遺書の隣にそのメモリーカードを置いた】
新一(……意味なんてない……ただの自己満足……)
『……何一つ、現実は変わっちゃいないんだ……』
【フェンスを飛び越え、その下を見下ろす新一】
【その高さに目眩を覚えたが、罪悪感は更にそれを上回った】
新一(人生に手遅れなんてない……そう言った奴が居たっけ?)
新一(ハハッ……ソイツはどんだけ狭い世界で生きてんだろうな)
【――新一は重心を前方移した】
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考えろ。後悔したくなきゃ、考えるんだ……
手遅れになってもしらないぞ
今のままの生き方でいいのか?
棺桶まで持っていける《正義》はあるのか?
考えろ。後悔したくなきゃ、考えるんだ……
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『……グシャッッッ……!!!!』
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過去は絶対に、変えられない。
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コナン「探偵をやめて犯罪者になる」・完
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