シンジ「…………」 (36)
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シンジ「……」
ユイ「シンジー」
シンジ「……」
ユイ「…シンちゃん?」
シンジ「えっ、…あ、ああ、母さん」
ユイ「ふふ、どうしたの?ぼーっとして」
シンジ「あはは、僕ぼーっとしてた?なんでだろ」
ユイ「ほら、早くダイニングにいらっしゃい。みんな待ってるわよ」
ガラッ
マリ「そーそー、わんこくん、早くおいでよー」
アスカ「今日は一応あんたが主役なんだから、あんたが部屋に引きこもってちゃ意味ないでしょ!」
シンジ「あ…」
アスカ「ほらっ、早く来なさいよ!」グイッ
シンジ「うわわっ、わ、わかってるから引っ張るなよアスカ!」
ユイ「ふふっ…」
シンジ「うわあ…!料理、すごい量だね」
アスカ「あんた、匂いで気付かなかったの?ほんっと、鈍感ね」
シンジ「なんかいい匂いがするなぁとは思ってたんだけど…」
トウジ「あ〜…もう、目の前にこんな豪勢な料理並べたまま待機…ホンマかなわんわぁ。ワシもう腹ペコや」
ヒカリ「だめよ鈴原!パーティが始まるまで我慢しないと」
マリ「でもほんと、このケーキなんてお店で買うより美味しそうだにゃ〜」
ユイ「ふふ…ありがとう。大事な日だから張り切っちゃった。こんなにたくさんのお友達に祝ってもらえて、シンちゃんはほんとに幸せ者ね」
ケンスケ「ねぇ、人数が揃うまでの間にさ、こないだのテレビの話でもどう?今週のあらすじ、簡単に説明するよ」
ユイ「あら、なぁに?ぜひ聞きたいわ」
アスカ「気に留めなくていいんですよおばさま。こいつ、毎週毎週ロボットアニメの話ばっかりしてるんです」
マリ「ああ…やっぱりまたあのエバンゲリオンってやつの話?」
ケンスケ「エヴァンゲリオン!今週は、ついに最後の使徒が現れて………………」
アスカ「ああもう、始まった。こうなると長いのよね相田のやつ…」
トウジ「もうとっととパーティ始めようや。シンジ、綾波と渚は?」
シンジ「さっきメールが入ってた。2人でうちに向かってるけど遅くなりそうだから、みんな揃ってたら先に始めてていいって」
トウジ「よっしゃ!ほな、乾杯といきましょか」
ヒカリ「すーずーはーら!碇くんのお父さんがまだでしょ!」
シンジ「あ…、そういえば、父さん遅いね。仕事が忙しいのかな…」
ユイ「そうね。…「今日は何としてでも早く仕事を終わらせるぞ」なんて言ってたのに、あの人ったら」
ピッ
ウィーン
ユイ「あ。父さん、帰ってきたわね」
シンジ「僕玄関まで迎えに出るよ」
アスカ「待ってシンジ。私も行く」
パタパタパタ………
ゲンドウ「…シンジ」
シンジ「お帰り、父さん!」
アスカ「おじさま、お帰りなさーい!」
ゲンドウ「…遅くなったな。すまん」
シンジ「もう、ほんとだよ。早くおいでよ、みんなお待ちかねだから」
ゲンドウ「……」
アスカ「どうされたんですかぁ?」
ゲンドウ「いや…、その、…料理はどのくらいの量だ?」
シンジ「僕たち全員でも食べきれないくらいたくさんあるよ」
ゲンドウ「…そうか。それじゃあシンジ、母さんに酒とグラスの用意を頼んでくれ」
アスカ「お酒なら、隅の方にいくつか置いてありましたけど…」
ゲンドウ「…少し状況が変わった」
シンジ「え?」
ガヤガヤ
ガヤガヤ
ゲンドウ「…今日は、よく集まってくれた。感謝する。…乾杯」
ユイ「もう…あなた。そんな乾杯の音頭じゃダメですよ」
ゲンドウ「………そうか」
ユイ「肝心なところが抜けてるじゃないですか。ほら、もう一度」
ゲンドウ「ああ」
ゲンドウ「………」
ゲンドウ「…シンジ。15歳の誕生日、おめでとう。乾杯」
一同「ハッピーバースデー!」
一同「乾杯!!」
シンジ「へへ、…ありがとう、みんな」
トウジ「よっしゃー、メシやメシー♪」
アスカ「シンジ、ジュースどれ飲む?」
シンジ「そうだなぁ、えっと、僕はー………」
ユイ「みなさん、今日はありがとうございます」
ミサト「とんでもありません。こちらこそ、お誘い頂けて光栄です」
リツコ「私たちが伺う事、事前にご連絡しておくべきでしたね…。突然人数が増えてしまってご迷惑ではありませんでしたか?」
ユイ「主人の事ですから、なんとなく予想はついていました。主人がまた無理を言って、社員の皆様に迷惑を掛けてしまったようですね…ごめんなさい」
マヤ「いえ!碇社長のご子息の誕生パーティにお呼ばれだなんて、とっても嬉しいです!」
ゲンドウ「フッ…。私の部下だからな。私の命令に従うのは当然だ」
ユイ「もう…」
ゲンドウ「まぁそう怒るな、ユイ。…そうだ、今日のことは冬月先生にも連絡してあるぞ。じきにいらっしゃるだろう」
ユイ「まぁ!冬月先生も来て下さるの?」
ゲンドウ「大学以来だからな。君も会いたがっていたし、丁度良い機会だろう」
加持「いやぁ…それにしても、いつお会いしても碇社長の奥様はお美しい」
ユイ「ふふ、…褒めてもお酒ぐらいしか出ませんよ?」
加持「この美味しい料理もほとんど奥様が作られたんでしょう?こんな料理が毎日食べられる碇社長が心底羨ましいですよ」
ミサト「…………」ギュウウウウウ
加持「いッ!?か、葛城!つねるなよ!」
ミサト「悪かったわねぇ、どーせ私はインスタントまみれの能無し女ですよ!」
加持「だ、誰もそんな事は言ってないだろ!」
リツコ「あなたたち、碇社長のご自宅でまで痴話喧嘩?…無様ね…」
ケンスケ「その時!ついに目標に接触したエヴァ初号機が!」
マリ「あーなんかややこしくてよくわかんなくなってきちゃったよー」
アスカ「放っときなさいよマリ、どーせ誰も聞いてなくったって喋り続けるんだから」
ユイ「私、少し興味あるなぁ。お話聞かせてもらえる?相田くん」
ケンスケ「あ、はい!もちろんです!じゃあ順を追って説明しますね。まず、エヴァンゲリオンっていうのは………………」
ヒカリ「シンジくんのお母さんて、本当に素敵な人ね。美人だし、料理も上手だし、気配り上手で、優しくて…」
トウジ「せやなぁ。うちのオカンなんか毎日毎日ギャーギャーうるさくてかなわんわ」
ヒカリ「ふふふ。鈴原、毎朝叩き起こされてるって話してたものね」」
ケンスケ「あぁ…俺もエヴァのある世界に産まれたかった…。エヴァのパイロットになって、世界を救うヒーローになりたかった…」
ユイ「確かに相田くんのお話を聞くとエヴァンゲリオンってとってもかっこいいわね。憧れる気持ち、わかるわ。…だけどエヴァンゲリオンの受けた痛みがそのままパイロットの子供に伝わる、っていう設定は、子供を持つ親からすると少し怖いかなぁ」
ヒカリ「そうですよね…。私は、やだなぁ。街が壊されたり、大切な誰かが居なくなる事に毎日怯えて暮らすなんて…」
ケンスケ「わかってないなぁ委員長は。そういうのも全部乗り越えてどんどん強くなっていくのがかっこいいんじゃないか」
日向「ねぇ、君たち。ちょっといいかい?」
トウジ「ん?」
青葉「こっちで人生ゲームでもしないか?」
日向「ただやってもつまらないから、最下位だった人は他の参加者のジュースをコンビニで買ってくる、なんてルールはどう?」
トウジ「おぉ〜、面白そうですね!参加さしてもらいます!」
ヒカリ「えっ、あ、…じゃあ、私も!」
マリ「なになに?!私もやる!」
アスカ「私も参加しよっかな。ね、シンジもするでしょ?」
シンジ「ん?うん、じゃあ僕も…」
ピンポーン…
マリ「…あれ。お客さん?」
シンジ「僕が出てくるよ。もうじき着くってメール来てたから、綾波たちかも」
レイ「……」
カヲル「やぁ、シンジくん。遅れてごめんね」
シンジ「2人とも、いらっしゃい。ごめん、パーティ先に始めちゃったけど…」
レイ「大丈夫。遅れたのは私たちだから」
シンジ「綾波やカヲルくんが遅刻するなんて、ちょっと珍しいよね」
レイ「…普段通らない道を通って、普段行かないお店に入ったら…道がわからなくなって」
カヲル「僕も似たような状況だったんだ。途中で彼女と偶然合流したんだけど、お互いマンションまでの道がはっきりしなくてね」
シンジ「そっか、そうだったんだ。電話で聞いてくれても良かったのに…」
レイ「誕生日パーティ…邪魔、したくなかったから」
カヲル「シンジくん、誕生日おめでとう。…これ、気に入るといいんだけど」
レイ「…おめでとう。私からも、プレゼント」
シンジ「わあ、2人ともありがt———………あれっ?同じ包装紙だね」
レイ「…え?」
カヲル「…君、どの店で買ったの?」
レイ「…○○駅の改札出てすぐの、喫茶店の前にあるお店」
カヲル「…僕もそこだ」
レイ「…何を買ったの?」
カヲル「左胸に赤と白のワンポイントがついた青いTシャツ」
レイ「…………同じ」
カヲル「…僕が先にシンジくんに似合うと思って選んだんだ」
レイ「…それ、私の台詞」
カヲル「…………」
レイ「………」
シンジ「ま、まぁまぁ2人とも落ち着いて、どっちも大切にするから!とりあえず上がってよ!」
アスカ「あ、レイも渚もやっと来たぁ!」
レイ「…遅れてごめんなさい」
アスカ「あんたたちが来るまでケーキおあずけだったんだからね!罰としてあんたたちも人生ゲーム強制参加!」
レイ「人生ゲーム?」
アスカ「そ。最下位は他の参加者にジュースおごる事になってんの。今からスタートだから、あんたたちも駒選んで」
シンジ「あんまりお小遣い残ってないから、最下位だったら結構厳しいなぁ…」
カヲル「心配要らないよ。今日はシンジくんの誕生日だから、もし君が最下位だったとしてもお金は僕が出すさ」
アスカ「ほらほら、シンジも渚もさっさとこっち来て座んなさいよ」
マリ「レイちゃん、私の隣においでー♪」
トウジ「ケンスケ!いつまでもシンジのオカンに迷惑掛けとらんとこっち来てゲーム参加せーや!」
ケンスケ「チェッ、やっと俺のエヴァトーク聞いてくれる人が現れたと思ったのに…」
ユイ「ふふ、それじゃあ私はケーキの用意をしようかしらね。あなた、手伝って」
ゲンドウ「…ああ」
日向「よし。それじゃあ、始めようか」
ケンスケ「あ…ちょっと待って。俺、カメラ持ってきてるんだ。ゲーム始める前に、今日の記念に何枚か撮ってもいい?」
アスカ「あら!相田、たまには気が利くじゃない。撮って撮って!」
シンジ「な、なんで僕と肩を組むのさ?」
アスカ「はぁ?…クラスのマドンナ的存在であるこの私が冴えないあんたとツーショット撮ろうとしてやってんだから、ちょっとは感謝しなさいよ」
シンジ「えええええ?」
ケンスケ「よし、撮るぞー」
トウジ「どーせならセルフタイマーにでもして、全員画面に収まるように撮ったらどや?記念ならケンスケもおった方がええやろ」
シンジ「あ、それいいね」
アスカ「…………」
シンジ「あれ…?どうしたのアスカ?」
アスカ「…2人で撮るのはその後ね」
シンジ「アスカってば、どうしてそんなにツーショットにこだわるのさ?」
アスカ「…………………………、このバカシンジ」
シンジ「なんで?!」
ケンスケ「せっかくだし、シンジのパパの会社の人たちにも入ってもらおうよ」
ヒカリ「皆さん、結構酔ってるみたいね…。聞いてもらえるかしら」
アスカ「おばさま、おじさま、記念撮影しますのでこちらへ!」
ユイ「あらあら」
ゲンドウ「フッ…」
シンジ「………ふふっ」
アスカ「何よシンジ、急に笑い出したりして。気持ち悪い」
シンジ「…幸せだなぁ」
アスカ「え?」
シンジ「こんなに色んな人に祝ってもらえるなんて、僕ほんとに嬉しいよ」
アスカ「……シンジ…」
マリ「それだけわんこくんがみんなに愛されてるって事だよ。私もわんこくんだーいすきっ」ギュッ
アスカ「!? ちょっ、ちょっとマリ!何シンジに抱きついてんのよ!」
カヲル「…真希波さん」
レイ「抜け駆け」
マリ「にゃはは♪早いもの勝ちだもーん」
ユイ「シンちゃんったら、モテモテね」
ゲンドウ「…君に似たんだろう」
ユイ「あら、何を言うんですか。うふふ…」
加持「葛城、お前は飲みすぎだ」
ミサト「うへへー…加持くぅん………」
マヤ「…お2人とも、カメラの前でそんなにオープンにイチャつくなんて…不潔…」
リツコ「ほらミサト、ちゃんと立って並ぶのよ」
日向「全員画面に収まるかな?」
青葉「もう少し詰めた方がいいかもな」
ケンスケ「よし、じゃあ撮りますよー。セルフタイマーなんで、10秒後にシャッターです!」
シンジ「…」
ユイ「…シンジ」
シンジ「なに、母さん?」
ユイ「………」
シンジ「…母さん?」
ユイ「ごめんね…」
シンジ「え?」
シンジ「………」
シンジ「………」
シンジ「………」
シンジ「………」
シンジ「………はっ…」
シンジ「…ここは?」
シンジ「なんで、急にこんな真っ暗なところに…」
シンジ「ねぇ、誰かいないの!?返事してよ!」
シンジ「父さん!母さん!?」
シンジ「アスカ、いるんだろ!綾波、返事してよ!真希波、何か言ってよ!カヲルくん、どこ!?」
シンジ「トウジ、ケンスケ、委員長、ミサトさん………」
シンジ「………」
シンジ「…なんで…、…何が起こってるんだ、……」
カヲル「…シンジくん」
シンジ「! カヲルくん!?」
レイ「碇くん…」
シンジ「綾波も!良かった…。ねぇ、でも真っ暗で何も見えないよ。2人とも、そこにいるの?」
レイ「終わりなの」
シンジ「え?」
レイ「優しい夢は、いつか覚めてしまう。その終わりが、今なの」
カヲル「夢は所詮、夢でしかない。…悲しい事だけどね」
シンジ「君たちが何を言ってるのか、よくわかんないよ」
カヲル「君の夢は、現実の続き」
レイ「そしてあなたの現実は、夢の終わりに在る。…いつだって、そう」
シンジ「…何を言ってるんだよ、2人とも…」
シンジ『…しょうがない、シェルターに行こう』
シンジ「!? …あれは…、僕?」
シンジ『………ん? うわっ!?』
キキーッ
ミサト『ごーめん、お待たせっ!』
シンジ「ミサトさん…」
ミサト『どうもありがと、助かったわ』
シンジ『いえ、僕の方こそ。えっと…、葛城さん』
ミサト『ミサト、でいいわよ。よろしくね、碇シンジくん』
シンジ『なんかするんですか、僕が』
ミサト『…』
シンジ『そうですよね。用も無いのに父さんが僕に手紙をくれるはず、ないですよね』
ミサト『そっか、苦手なのね。お父さんのこと。…私と同じね』
リツコ『例の男の子ね』
ミサト『そ』
リツコ『初めまして。私は赤木リツコ。よろしくね』
シンジ『あ…、はい』
シンジ「リツコさん…」
シンジ『これも、父の仕事ですか』
ゲンドウ『そうだ。…久しぶりだな、シンジ』
シンジ『! …父さん…』
シンジ「……父…さん…」
ガラガラガラガラ
ガシャーンッ
シンジ『大丈夫ですか!?』
レイ『ううっ…、…くっ…、はぁ、はぁ、……』
シンジ『逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ………!』
シンジ『やります…、僕が、僕が乗ります!』
シンジ「…綾波……」
ミサト『さ、入って』
シンジ『あの…。お邪魔します』
ミサト『シンジくん?…ここは、あなたの家なのよ』
シンジ『えっと、…た、ただいま』
ミサト『お帰りなさい』
ペンペン『グワッグワッ!』
シンジ『うわあああぁぁあ!?ミ、ミ、ミミミミサトさんっ!』
ミサト『ああ、彼?温泉ペンギン、ペンペンよ。うちにいる、もう1人の同居人』
シンジ「ペンペン…」
ガツッ!!!
トウジ『すまんなぁ、転校生。ワシはお前を殴らないかん。殴っとかな、気が済まへんのや』
ケンスケ『悪いね。この間の騒ぎで、アイツの妹さん怪我しちゃってさ』
シンジ「トウジ、ケンスケ…」
ミサト『今よ!撤退して!』
トウジ『転校生!逃げろ言うとるで!転校生!』
シンジ『逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃ………ッ』
ミサト『命令を聞きなさい!シンジくん!!』
シンジ『うわああああああああああ!』
ミサト『あの、バカ…!』
ケンスケ『ま、こういう実直なやつなんだ、頼むよ』
ガツッ!!!
トウジ『っ…! …これで、貸し借りチャラや!殴ってすまんかったな、碇』
シンジ『…!』
シンジ『さっきは、ごめん』
レイ『何が?』
シンジ『ねぇ、綾波は怖くないの?また、あれに乗るのが…』
レイ『どうして?』
シンジ『だって、死ぬかもしれないんだよ』
レイ『あなた、碇司令の子供でしょ。…信じられないの?お父さんの仕事が』
シンジ『信じられるわけないよ、あんな父親…っ!』
レイ『………』
パチンッ!
シンジ『綾波…、自分には他に何もないなんて、そんな事…言うなよ。別れ際にさよならだなんて、そんな悲しい事、言うなよ…』
レイ『何、泣いてるの?』
シンジ『……うっ、うう…』
レイ『ごめんなさい、…こういう時、どういう顔をすればいいか、わからないの…』
シンジ『笑えば…いいと思うよ』
アスカ『…で、どれがナナヒカリで選ばれた初号機パイロット?』
シンジ「! アスカ…アスカだ」
シンジ『あ、あの…』
アスカ『…ふーん?肝心な時にいないなんて、何たる無自覚』
ゲシッ
シンジ『わあっ!』
アスカ『おまけにこの警戒心の無さ。エヴァで戦えなかったことを恥とも思わないなんて、所詮七光りね』
シンジ『な、なんで式波がここにいんの!?』
アスカ『あんたはお払い箱って事よ。ま、どっちが優秀かを考えたら当然のことね』
ミサト『あら、シンちゃんも一緒に暮らすのよ?』
アスカ『えええええええ!?』
ミサト『同じパイロット同士、仲良くしなさい。これは命令よ♪』
ゲンドウ『話は聞いた。よくやったな、シンジ』
シンジ『えっ…、あ、はい…』
アスカ『私1人じゃ…何もできなかった…』
アスカ『…ナナヒカリ、ちょっとだけここにいさせて』
シンジ『あの…式波、さん?』
アスカ『特別に、アスカでいいわ。私もバカシンジって呼ぶから』
シンジ『じゃあ…、アスカは、なんでエヴァに乗ってるの?』
アスカ『愚問ね…。自分のためよ』
シンジ『今日は…父さんに、初めて褒められたんだ。生まれて初めて、褒められるのが嬉しいって思った。ミサトさんの言うとおりかもしれない。父さん、もう僕のこと、認めてくれたのかな…』
アスカ『………』
アスカ『…あんたって…ほんとにバカね』
シンジ『ん?』
マリ『ちょっと、どいてどいてーっ!』
シンジ『!?』
ドシャッ
マリ『ってて…、メガネ、メガネ………。…ああ、ごめん、大丈夫だった?』
シンジ「真希波………」
マリ『…君、いい香り。LCLの香りがする…』
シンジ『あ、あ、あの…』
マリ『じゃ、このことは他言無用で。ネルフのわんこくん♪』
シンジ『これって、スイカですか?』
加持『ああ。何かを育ってるっていうのはいいもんだよ。色んなことがわかってくる。楽しい事とかさ』
シンジ『…つらい事も、でしょう?』
加持『つらいのは嫌いかい?』
シンジ『好きじゃ、ないです』
加持『シンジくん、葛城の事は好きかい?』
シンジ『え!?あ、あの、…嫌いじゃ…ないです』
加持『…葛城を守ってやってくれ。それは、君にしか出来ない』
シンジ『……』
ケンスケ『ところでさぁ、碇。ちょっと気になる噂を仕入れたんだけど』
シンジ『?』
ケンスケ『3号機が日本に来るんだって?』
シンジ『え…僕、知らないよ?』
ケンスケ『いいなぁ、誰が乗るのかなぁ。俺にやらせてくんないかなぁ』
シンジ『ミサトさんにでも頼んでみたら?』
シンジ「! …3号機………?」
シンジ『…松代で、爆発事故…?』
シンジ「……………ねぇ、もういいよ。こんなの見せてくれなくてもいいよ」
シンジ『使徒?これが?』
ゲンドウ『そうだ、目標だ。お前が倒せ』
シンジ『目標っていったって…これはエヴァじゃないか』
シンジ『人が乗ってるんじゃないの?…アスカが…アスカが、乗ってるんじゃないの?』
シンジ「もういいよ……やめてよ…」
シンジ『!? なんだ…!?何をしたんだ、父さん!』
シンジ『父さん、やめてよ!こんなのやめてよ!!』
シンジ『くそっ!止まれよ!止まれ、止まれ、止まれ、止まれっ…!』
ガリガリガリ…
シンジ『……!何の音だ…?!』
シンジ『やめろっ!』
シンジ「やめろ…!」
シンジ「『やめろおおおおおおおおおおおお!』」
グシャッ
シンジ「……違う…違う、こんなの嘘だ、知らないよ、僕は………」
レイ「…」
カヲル「…」
シンジ「こんな世界、知らないよ…」
幼少期シンジ『またそうやって、嫌な事から逃げ出すんだ』
シンジ「なんだよ…何が悪いんだよ!嫌な事から逃げ出して、何が悪いんだ!」
ミサト『零号機!?ライフルも持たずに…!』
レイ『ATフィールド、全開!』
レイ『碇くんがもう…エヴァに乗らなくてもいいようにする!』
レイ『…だから…っ』
マリ『あいたた…、死んじゃうとこだったにゃ…。あれ…君?』
シンジ『僕はもう、エヴァには乗らないって決めたんだ。乗らないって決めたんだ…!』
マリ『エヴァに乗るかどうかなんて、そんなことで悩む奴もいるんだ…。…早く逃げなくちゃ死んじゃうよ?』
ガシャーン
マリ『パイロットごと取り込んで、零号機と融合してるんだ…』
シンジ『……!』バッ
マリ『……、あーあ…、行っちゃった…か……』
シンジ『父さん!』
シンジ『僕をこの初号機に乗せてください!』
シンジ『僕は…僕は、エヴァンゲリオン初号機のパイロット、碇シンジです!!』
マヤ『初号機、活動限界です!』
ミサト『シンジくん…!』
シンジ『綾波を………っ』
シンジ『返せ!!!!』
シンジ『僕がどうなったっていい、世界がどうなったっていい…!だけど綾波だけは!綾波だけは、絶対助ける!』
ミサト『行きなさいシンジくん!誰かのためじゃない!あなた自身の願いのために!』
シンジ「…………」
レイ「碇くん。…いつまで、耳をふさいでいるの?」
シンジ「…知らない…こんな世界…僕は……」
カヲル「シンジくん、…目を逸らしちゃダメだ。君の現実から」
シンジ「………」
サクラ『私の言葉が理解できますか?』
シンジ『…ここ、どこですか?…確か…綾波を助けて…』
サクラ『検体、拘引しました』
ミサト『了解。拘束を解いて』
シンジ『…ミサトさん…?』
アスカ『エヴァ改2号機、起動!』
シンジ『ミサトさん、初号機はどこですか!?僕も乗ります、アスカを手伝います!』
ミサト『あなたがエバーに乗る必要はありません』
シンジ『え…?じゃあ、僕は何をしたらいいんですか…?』
ミサト『碇シンジくん』
ミサト『あなたはもう、何もしないで』
サクラ『碇さんの管理担当医官、鈴原サクラ少尉です』
シンジ『鈴原って…トウジの?』
サクラ『はい、妹のサクラです』
シンジ『妹!?お姉さんじゃなくて?』
アスカ『あれから14年経ってるってことよ…バカシンジ』
シンジ『! アスカ!良かった、やっぱり無事だったんだね、アスk』
ドカッ!!
アスカ『……ダメね、抑えきれない』
シンジ『なんだよ…なんなんだよ……』
シンジ『ねえアスカ、綾波はどこなんだよ?』
アスカ『知らない』
シンジ『あの時、確かに助けたんだ!』
アスカ『人1人に大袈裟ね。もうそんなこと気にしてられる世界じゃないのよ』
ミサト『シンジくん。綾波レイは、もう存在しないのよ』
シンジ『やめてください!相手はエヴァですよ、綾波が乗ってるんですよ!?』
ミサト『綾波レイはもういないのよ、碇シンジくん』
シンジ『嘘だ!だってここにいるじゃないか…!ミサトさんの分からず屋!もういいよ!』
サクラ『碇さん!勝手もええですけど、エヴァにだけは乗らんといてくださいよ!…ホンマ、勘弁してほしいわ…!!』
シンジ『父さん、』
ゲンドウ『時が来たらそこの少年と共にエヴァ13号機に乗れ。話は終わりだ』
シンジ『待ってよ父さん!まだ聞きたい事がたくさんあるんだ!父さん!!』
シンジ『ここ、本も無いんだね。本、読んでないの?』
アヤナミ『綾波レイなら、そうするの?』
シンジ『うん…よく読んでたじゃないか。好きだと思ってた』
アヤナミ『好き? …好きって、何』
カヲル『降りておいでよ碇シンジ君。話そうよ』
シンジ『あの…、話すんじゃないの?』
カヲル『ピアノの連弾も音階の会話さ。やってみなよ』
シンジ『僕には無理だよ…』
カヲル『簡単さ。君はこっちで鍵盤を叩くだけでいいんだ。弾いてみなよ』
シンジ「…カヲルくん…」
シンジ『なんだ…これ…、これじゃあ、街のみんなは…』
カヲル『この星での大量絶滅は珍しいことじゃない』
カヲル『一度覚醒し、ガフの扉を開いたエヴァ初号機はサードインパクトのトリガーとなってしまった。全てのきっかけは、君なんだよ』
シンジ『そんな…!僕は何もしてないよ!僕には関係ないよ!』
カヲル『君にはなくても、他人からはあるのさ。…ただ、償えない罪は無い』
カヲル『希望はあるよ。どんな時にもね』
シンジ『! …この人は…綾波?』
冬月『君の母親だ。旧姓は“綾波ユイ”』
冬月『君の知っている綾波レイはユイ君の複製体の一つだ』
シンジ『…そんな…』
シンジ『綾波だよね…?』
アヤナミ『そう。アヤナミレイ』
シンジ『あの時、助けたよね…!?』
アヤナミ『…知らない』
シンジ『綾波…、助けてなかったんだ………綾波…』
カヲル『………そうか、そういうことかリリン…!』
シンジ『カヲルくん、どうしちゃったんだよ!』
カヲル『やめよう…シンジくん、嫌な予感がする』
シンジ『槍が必要だって君が言ったんじゃないか!』
カヲル『やめるんだシンジくん…!』
アスカ『やめろ!!バカガキ!!!』
シンジ『なんだ…?なんだよこれ…、僕のせいなのか……?僕が、槍を抜いたから…』
カヲル『君のせいじゃない。僕が第13の使徒になってしまったからね…、僕がトリガーだ』
シンジ『カヲルくん…?』
カヲル『ガフの扉は僕が閉じる。シンジくんが心配する事はない』
カヲル『…そんな顔をしないで。また、会えるよ』
シンジ『………!カヲルくん…!!!』
グシャッ
シンジ「………」
シンジ「………」
シンジ「………」
シンジ「…どうして?」
シンジ「なんでまた、こんな世界見せられなくちゃいけないんだ…」
レイ「それが、あなたの現実だから」
シンジ「こんなどうしようもない世界が、僕の現実?」
レイ「そう。あなたの現実。あなたが生きている世界。あなたが、これからも生きていく世界」
カヲル「…心を閉じて、夢の中に逃げてばかりいても何も変わらない」
シンジ「じゃあ…現実を思い出したら何が変わるっていうんだ…。僕が逃げなくても、いくら頑張っても、結局僕や僕の大切な人が酷い目に遭うだけじゃないか…」
レイ「それでもあなたは、行かなければならない」
シンジ「嫌だ…もう嫌だ………。誰でもいいから誰か助けてよ、僕を助けてよっ…」
シンジ「もう嫌だ…死にたい…何もしたくない………」
シンジ「あんなになっちゃった世界で、一体僕に何ができるっていうんだ…」
シンジ「アスカに酷い事したんだ…、綾波も助けられなかったんだ…、僕のせいで世界がめちゃくちゃになって、トウジもケンスケも委員長もみんないなくなって…、結局カヲルくんも死なせてしまった…」
レイ「……」
カヲル「……」
シンジ「父さんも、ミサトさんも…もう、誰も僕を必要としていないんだ…。僕なんか要らないんだ、僕が帰る場所なんてもうどこにもないんだ」
カヲル「…それは違うよ、シンジくん」
シンジ「違わないよ! …綾波も、カヲルくんも…もう、居ないじゃないか…。…あの世界には、母さんだっていないじゃないか。僕が生きてたって…喜ぶ人なんか、1人もいないじゃないか」
レイ「いいえ。あなたが帰る場所は、まだあるわ」
カヲル「君を待っている人もね」
シンジ「…そんなの、嘘だ」
カヲル「夢はいつだって心地の良いものさ。望んだとおりの世界を見せてくれる事も多い。…だけど、君はまだ生きている。夢の世界に縋っていても、現実は変わらないよ」
シンジ「現実なんて知らない…見たくない…。僕も要らない…みんな要らない…ただ苦しいだけなら、もういっそ全部無くなればいいんだ」
レイ「本当に、そう思うの?」
シンジ「……………」
レイ「…あなたが居なくなれば、あなたの可能性は全て消えてしまう」
カヲル「だけど、君が生きている限り、いつだって希望は残っている」
レイ「あなたの幸せも、あなたの世界も、あなたが居るから意味がある」
シンジ「……………」
レイ「あなたの為の世界は、同時に他の誰かの為の世界でもある」
カヲル「君が自分の世界で自分の幸せを願ったように、他の誰かも同じように、自分の世界で自分の幸せを願っているんだ」
レイ「…そして、自分の幸せのために、あなたを…碇くんを、必要としている誰かの世界は、確かに存在する」
カヲル「…さあ、時間だ。行こう、シンジくん」
シンジ「……………」
レイ「碇くん」
カヲル「シンジくん」
シンジ「……怖いんだ…。真っ暗で何も見えない。この先、どうやってどこに進めばいいのか全然わかんなくて、…怖い…怖いんだよ…」
シンジ「君たちはさっき言ったよね。自分の幸せのために僕を必要としている誰かの世界があるって」
シンジ「僕も同じだった。…僕の世界には必要だったんだ。綾波や、カヲルくんや、トウジや、ケンスケや、委員長や…他にもきっと、たくさんの人が………」
シンジ「必要だった誰かが欠けてしまった世界で、僕はどうしたらいいのか、わからない…」
シンジ「だけど僕が居なくなる事で、今の僕と同じように迷う誰かがいるなら、…僕は………」
シンジ「………僕は…」
シンジ「ねぇ…2人とも、最後に姿を見せてよ」
カヲル「……」
レイ「……」
シンジ「…これで、お別れなの…?」
レイ「………」
カヲル「………」
シンジ「………」
レイ「碇くん、…行ってらっしゃい」
カヲル「きっとまた、いつか会えるよ」
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シンジ「………はっ…!」
シンジ「…ここは…?」
シンジ「………知らない、天井だ…」
ウィーン
サクラ「…おはようございます、碇さん」
シンジ「!」ビクッ
サクラ「朝食、持って来ましたよ」
シンジ「…あなたは…。………ここ、は…?」
サクラ「はぁ…もう、何言うてるんです。昨日式波大尉と一緒にヴィレに戻った事、忘れてしもたんですか?」
シンジ「………」
サクラ「…悪いですけどね、私、ちょっと怒ってるんですよ。…あんだけ、エヴァには乗らんといて下さい言うたのに、結局乗ってもうてあんな事になってまうし」
シンジ「………」
サクラ「昨日お話した通り、今日は葛城大佐にネルフで起こった事を洗い浚いお話して頂きます。後で式波大尉がお迎えに来られますんで、朝食はきちんと食べて下さいね」
シンジ「………。…綾波…。…カヲルくん…」
サクラ(…はぁ…。帰って来てからずっとこんな調子。こらアカンわ…)
ウィーン
アスカ「………」
サクラ「あ!式波大尉、お疲れ様です!」
アスカ「ガキシンジ。さっさと朝ご飯食べなさいよ。すぐにでも葛城大佐のところに行かなきゃならないんだから、早くして」
シンジ「………」
アスカ「ほらもう、いつまでそんな抜け殻みたいな状態でいるつもりなのよっ!」
シンジ「………」
ウィーン
マリ「わんこくんお目覚めかい?おっはよーう」
シンジ「………」
マリ「まったくもう、相変わらずだにゃ〜…。あ、そだ。鈴原少尉ー、赤木博士からお呼び出しだよ」
サクラ「あ、ホンマですか!えっと…」
アスカ「いいわよ、こいつのことは私に任せて。無理矢理にでもご飯食べさせたら首に縄つけてでも葛城大佐のとこに連れてくから」
サクラ「すいません、よろしくお願いします!」
タッタッタッタッタ…
ウィーン
マリ「ほら、わんこくん。ちゃんと食べなきゃダメだぞー」
シンジ「………」
アスカ「ったく…ほんとに手間のかかるガキね。食べないなら無理矢理捻じ込むわよ?」
シンジ「………」
アスカ「……。…コネメガネ、ガキシンジと一緒だったあいつはあれから何か喋った?」
マリ「初期ロットちゃん?んーん、いくら尋問してもずーっとだんまり。あの子にはわんこくん以上に色々と聞いとかなきゃいけないことが沢山あるんだけどにゃー」
アスカ「……、そうね…」
マリ「じゃ、私は大佐のとこに戻るよ」
アスカ「ええ。こっちもすぐ連れて行くわ」
マリ「ん。じゃーね〜、わんこくん♪」
ウィーン
アスカ「………」
シンジ「………」
アスカ「………」
シンジ「………」
アスカ「…とっとと食べなさいったら。あんた、昨日ここに戻ってから何も食べてないでしょ」
シンジ「…要らない………食べたくない…」
アスカ「ばっかじゃないの。いいから食べなさい!さっきも言ったとおり、無理矢理にでも捻じ込むから!」グイッ
シンジ「……うぐっ、…………う、っ…うう、ううう………」
アスカ「! ちょ、…どうしたの、なんで泣くのよ…」
シンジ「…ううっ………ひっく…」
アスカ「…そんなに強く掴んだつもり、なかったけど…加減が出来てなかったかもしれないわね。謝るわ」
シンジ「……違う…違うんだよ、アスカ…」
アスカ「え?」
シンジ「…僕、多分ここに帰ってからついさっきまで、夢を見てたんだ」
アスカ「夢?」
シンジ「すごく優しくて、幸せな夢だったんだと思う…。だけど、なんとなくそんな気がするだけで、どんな夢だったのか全然思い出せないんだ」
アスカ「………はぁ?…夢なんて、そんなもんでしょ」
シンジ「…わかってる…。…だけど…どうしようもなく悲しいんだ。心に何か大きく穴が空いたみたいな感じがする…」
アスカ「…。忘れて正解よ、そんなの」
シンジ「………」
アスカ「今は夢なんか見てる暇もない世界だって事、もうあんただってわかってるでしょ。夢なんかに縋ってないで現実を生きなくちゃ」
シンジ「そう……だよ、ね…」
アスカ「…はぁ…。あんたってなんなの、ほんとに」
シンジ「ごめん…」
アスカ「帰って来てからもずっと、綾波だのカヲルだのって、あんたはそればっかり。自分の事ばっかり。もっと周りに目を向けなさいよ。周りがどうなってるのか、どんな考えてあんたを見てるのか、もっとちゃんと前向いて知る努力しなさいよ」
シンジ「………」
アスカ「…。…この私が、14年もあんたなんかのこと、…待ってやってたのに…」
シンジ「………え…」
アスカ「………」
シンジ「………」
(僕が帰る場所なんてもう無いんだ)
(僕が生きてて嬉しい人なんか、1人もいないじゃないか)
(いいえ。あなたが帰る場所は、まだあるわ)
(君を待っている人もね)
(そんなの、嘘だ)
(あなたの為の世界は、同時に他の誰かの為の世界でもある)
(君が自分の世界で自分の幸せを願ったように、他の誰かも同じように、自分の世界で自分の幸せを願っているんだ)
(…そして、自分の幸せのために、あなたを…碇くんを、必要としている誰かの世界は、確かに存在する)
シンジ「……………」
シンジ「…アスカ………」
シンジ「僕…ここにいてもいいのかな…。…また、歩き出せるのかな…」
アスカ「………」
アスカ「…知らない。だってそれはあんたの事でしょ。私に聞かないで、自分で考えなさいよ」
アスカ「ここにいてもいいかどうかなんて、そんなの私は知らない。…でも、あんたがここにいたいなら、好きにすればいいんじゃない」
シンジ「………」
アスカ「…ほら。ご飯、食べて」
シンジ「………」
シンジ「うん」
アスカ「………」
アスカ「…シンジ」
シンジ「…何?」
アスカ「ずっと言いそびれてたから、今言っておくわ」
アスカ「お帰りなさい、シンジ」
シンジ「…ただいま、アスカ…」
おわり
レスありがとうございます。
>>1、BDを何故かVDって書いてしまっている…恥ずい…orz
脳内修正よろしくお願いします。
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