千早「72巡目の世界で」 (10)

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 ほんの少し、仮眠をしただけのはずだった。
 その間に世界は裏返り、私はチャンスを失った。




 起床と同時、直感的に世界が『巡った』事を理解する。

 「はぁ……」

 右腕に浮かんでいた数字を一瞥し、私は深い溜息をついた。
 72度。今、私こと如月千早がいるこの世界は、その回数破壊と構築を繰り返されたことになる。

 前回確認した時は、確か69度目だったから、また気づかないうちに世界が何度か滅亡していたらしい。

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 私達、765プロのアイドルは歌やダンス、演技力以外にも、一般人とはかけ離れた1つの『才能』を宿していた。

 『スタンド』

 俗に言う超能力が、可視の像を持った存在である。

 発火能力は火を吐く鳥人が起こしている。
 銃弾操作能力は小さな小人が起こしている。

 物理法則では有り得ないその現象をわかりやすくするための存在——私達は、それを『視認する力』とそれを『使役する力』。その2つを所持していた。



 『遺体』と呼ばれる存在がある。

 文字通り、生命が命を失って残った抜け殻だ。

 私達、『スタンド使い』はその一部を身体に宿している。

 どのような経緯を経てそのような力を持つに至ったかは不明だが、『遺体』は、その所持者に奇跡を叶える力を与える。

 その奇跡の発現——それが、私達が持つ『スタンド能力』だ。

 『遺体』は、その一部を宿すだけでも所持者に人智を超えた能力を与える。
 その『遺体』が複数集まれば、叶わない奇跡はないという。

 事実、この『世界が巡る』という『現象』も、『遺体』の力が起こすものだった。

 「やるしか……ない、か」

 財布とカバンの中身を確認し、私は決意を新たにする。
 状況的に、ほぼ間違いなく一人暮らし……優も、多分もうこの時代の人間じゃない。
 だとしたら、私のやることは決まっている。

 皆の身体に宿る『遺体』を集め——優を、弟をこの世に呼び戻す。ただ、それだけだ。

 「おはよう千早ちゃん。よく眠ってたね。最近寝てないの?」
 「っ……おはよう、春香。そうね……ううん、そうでもないわ。ただ、疲れていただけだと思う。ごめんなさい、心配かけて」

 人懐っこい笑顔と、頭に揺れる2本のリボン。
 その赤い紐が、私には悪魔の角に見えた。

 天海春香。
 これまでの戦いで、数えきれないほどにぶつかった、私にとって明確な『敵』といえる存在。

 そんな彼女も今はまだ、世界が『巡った』ことに気づいていないように見える。

 『遺体』を宿すことに発現した『スタンド』は『巡った世界』によって異なっている。

 今はまだ眠っているが、彼女の身体に蓄積しているその能力は恐ろしいものに違いない。

 「……今日はもう仕事が無いし家に帰るわ。お疲れ様、春香」
 「う、うん。お疲れ様。また明日ね、千早ちゃん」

 未だに『スタンド』を発現させていない春香に距離を置くように、私は足早に帰ろうとした。

 ドアを開け、階段を降りようとしたその瞬間——

 「——やっちゃったね千早ちゃん。私のスタンドは既にドアノブに触ってたんだから」

 踏み出した足が、あり得ない方向に動き、私は階段から転げ落ちた。

 勢いのついた身体の『加速』は階段に留まることを知らず——

 「『ガールズ・ビー・アンビシャス(乙女よ大志を抱け)』——その『不幸』は連鎖する」

 道路に飛び出し、そこにタイミングよく現れたトラックが、階段でボロボロになっていた私の身体にトドメを刺した。

 「ああああアアアア〜ッ! 痛い、痛い痛い痛い——ッ!」

 跳ね飛ばされ、電柱に激突してようやく私の『不幸』——春香の『スタンド』が私に与えてきたそれは終了した。

 全身の骨は粉々に砕け、原型がわからないレベルにまでボロボロになっている。打撲、打ち身、切り傷、擦り傷——無事じゃないところを探すのが簡単なほど、私の身体は終わっていた。

 終わった。
 私の、優を蘇らせる旅は、これで。

 「ふざけるな……ふざけ、ふざけないでッ! 春香——ァッ!」

 あり得ない。認めない。消えてなるものか。時よ止まれ——

 そう。時よ止まれ、汝はかくも美しい——私の中に宿る『悪魔』よ。あなたが今後も私に宿る腹づもりなら。

 「今だけでいい! 力を貸せ——ッッ!」

 咆哮と同時、私の全身を、真っ青の炎が包み込んだ。
 数百度に達している爆炎が、私の傷を『焼いて塞ぐ』。

 これは『熱』で、これは『炎』だ。
 私に『魂』を与える、地獄の業火。

 過去の世界で目覚め、これまでは使うことがなかったこの力。

 それに、名付けるとしたら——


 「これからは『インフェルノ』と呼ぶ!」


 命名と同時、放った焔の一撃が、春香に直撃した。

というわけでジョジョ×アイマスです
二番煎じを避けるために妄想を駆使した結果スタンドが一人複数とかいうとんでもない前提が出来上がってます。
独自解釈極まりない設定でやっていこうと思いますが「そんな君に敬意を表する!」という心の広いお方はどうかお付き合いくださいませ

忘れてたけどスタンド紹介

名前:インフェルノ
本体:如月千早
タイプ:装着型/本体の身を纏う青い炎
破壊力 A スピード  A 射程距離 C(10m)
持続力 B 精密動作性 C 成長性  E
能力:超高温の炎を操る。人体の傷口を焼き塞ぐ程の高熱だが本体は炎によるダメージを受けない。炎を切り離して撃ちだすことも可能。千早の『燃え上がる決意』が形になったスタンド。

名前:ガールズ・ビー・アンビシャス(乙女よ大志を抱け)
本体:天海春香
タイプ:群体型/宙に浮く無数のリボン
破壊力 D スピード  C 射程距離 A
持続力 A 精密動作性 A 成長性  E
能力:触れたものを『不幸』にする

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